●かんべえの不規則発言



2007年12月






<12月2日>(日)

○金曜、土曜と連日10時間睡眠。これぞ最大の贅沢というものである。昼間は喪中欠礼の手紙の宛名書き。ああ、めんどくさい。

○日曜日は地元の防災訓練へ。南関東をM7.2の直下型地震が襲ったという想定で、地域の町内会が集められて訓練を行う。煙中体験訓練やら、仮説トイレの組み立て訓練、炊き出し訓練などが行われる。災害救助犬の捜索訓練が行われているところを見物する。しっかり訓練された犬というものは、つくづく賢い生き物でありますな。

○かんべえはバケツリレーに参加。二列に並んで、水の入ったバケツを運ぶわけだが、バケツをジグザグに渡すというのがコツなのであります。もっとも、これはあらかじめ訓練だと分かっていて、そのために駆り集められた人たちが参加するからできるのであって、実際に火を目の前にしたら、消火するより先に逃げ出そうとするでしょうな。バケツリレーと同時に、水パックを投擲して消火する訓練も行われたが、こちらはどこにでもあるレジ袋に水を入れて火に向けて投げる。どうやら、こっちの方がはるかに簡単で、効果があるように思いました。

○今日の訓練は10以上の町内会が参加したので、かなりの大人数であった。それにしても、柏市はおそらく全国でも若年人口が多い都市だと思うが、こういう場所に集まるのは高齢者ばかりであります。かんべえ(47歳)が「若い人」にされてしまうのは、なんとも困ったもので。まあ、防災訓練は滅多にない体験ができるので、日曜の朝に政治討論番組を見て過ごすよりも有益であるかもしれません。大きなお世話か。


<12月3日>(月)

○タクシー料金が今日から値上げ。たまたま乗ったら、初乗り料金が710円だった。運転手さんが、「すいませんねえ」と。朝から乗せたお客さんのほとんどが知っていた、という。まあ、別段腹を立てるようなことではありません。最近、道を知らない運転手さんが減って、低姿勢な方が増えたような気がする。ただの気のせいかもしれませんが。

○面白いもので、横並び社会の日本では、コストを価格に転嫁することが難しい。だからできるところまで値上げを我慢しようとする。「空気読め」というやつだ。先月くらいから、とうとうガソリン価格が我慢しきれなくなった。とうとうタクシーも来てしまった。次はスーパーマーケットの番でしょう。こうなると「物価が上がるのはしょうがない」という空気が醸成されてしまう。物価を上げるなら、今ですな。ということで、横並び体質がちと心配である。日本経団連は、賃上げOKといってますけれども。

○新語・流行語大賞は「ハニカミ王子」(石川遼選手)と、「(宮崎を)どげんかせんといかん」(東国原宮崎県知事)だそうで。以下、こんなところが並ぶ。

大食い(ギャル曽根さん)▽(消えた)年金(舛添要一厚労相)▽食品偽装▽そんなの関係ねぇ(小島よしおさん)▽鈍感力(渡辺淳一さん)▽どんだけぇ〜(IKKOさん)▽ネットカフェ難民(川崎昌平さん)▽猛暑日(瀧沢寧和・埼玉県熊谷市直実商店会会長)

○日中安保対話でご一緒した自衛隊OBの皆さまから、ご近所の町内会ご一行様まで、何かというと「あのギャル曽根っ子はすごいよねえ」という話が出てくる。とにかく彼女が画面に出てくると、そのままチャンネルが変えられなくなってしまうという視聴者は少なくないようだ。彼女の場合、単に大食いというよりは、とっても楽しそうに食べているので、ワシもつい見てしまう。一時期はやった「フードファイター」よりは、この方がずっといいと思うけどなあ。

○昨晩に続き、今宵も北京五輪予選に見入ってしまう。昨日の試合は長かったけど、最後まで目が離せませんでした。ハラハラしましたなあ。今日の試合も良かった。ひたむきな努力が実ったという感じで、ホッとしました。星野ジャパンは強いっす。よかったね、1位通過。

○短期決戦に弱い、といわれていた星野監督ですが、はっきりした「情の采配」ぶりがプラスに働いているように思えました。だいたいコーチに盟友の田淵と山本浩二を指名しちゃうんだから、その時点で勝敗よりも男の友情を優先しておるわけです。(3塁コーチに山本はないっしょ)。小細工なし、気持ちで行こう、という星野流が、選手から見れば非常に分かりやすいし、納得性もあったんじゃないでしょうか。

○こういうリーダーのあり方は気持ちがいいですね。少なくとも、政界では失われて久しい感覚であります。


<12月4日>(火)

○お昼に松尾文夫さんを囲む研究会へ。『銃を持つ民主主義』の英訳本を携えて、3週間にわたる全米プロモーションツァーの成果を拝聴する。日本人が書いたアメリカ論が、英訳されてアメリカで出版されるということは、それ自体が奇跡的なことだと思います。その一方で、かのトックビル以来、外国人が書いたアメリカ論を受け止めてくれるのが、アメリカ社会の懐の深さでもあります。

○間近に見てきたアメリカ大統領選挙については、「ブッシュなき共和党は、そんなに弱くもないのではないか」というのが松尾さんの見立てでありました。不肖かんべえとしても、「2008年は民主党の勝利が確定している」という意見よりは、こちらの方がはるかに現実的な見方だと思います。「仮にヒラリーが大統領になる場合は、本来、有利なはずの議会選挙で民主党が苦戦するだろう」というご意見も、きわめてアメリカ政治においてはありがちな現象だと思います。

○午後、新潮社『お家さん』の著者である玉岡かおるさんが来社。旧日商岩井の前身である鈴木商店の歴史について、あれこれとお話しする。かんべえとしては、この本が描いた日本植民地時代の台湾の描写が気になるところで、どんな風に取材したのかなどを伺う。たまたま今日、日台次世代対話でお世話になっている台湾の歴史学者、林呈蓉さんから「本が到着しました」との連絡あり。台湾における鈴木商店の足跡は、現地でも良く知られているらしいのだけど、やはり歴史は民間よりも官界が中心に描かれるので、この本はフィクションとはいえ台湾の歴史を知る貴重な資料になると思います。

○日清戦争の後の下関条約において、李鴻章が「台湾は化外の地」と言ったことは、今日では「清王朝は台湾を自国の領土と認めていなかったから」という解釈がもっぱらです。ところが、『お家さん』の描写によれば、「あれは日本への台湾割譲をあきらめさせるために、敢えて言ったこと」なのだそうです。その後の李鴻章の悔しがり方から考えると、そっちの方がはるかに説得力がある。その辺の怨念が、今日になっても生き残っていて、中台統一が共産党の悲願となっていたりする。(早く成仏してもらいたいところでありますが)。

○夜は商社業界の調査畑の忘年会。いろんな分野に一家言のある人ばかりなので、ウンチクを聞いているだけでも面白い。「来年、ヒラリーが大統領になると思う人」ということで手を挙げてみたら、きれいに半々に分かれました。ちなみにかんべえの意見は"No"であります。先行逃げ切りは難しいレースだと思うのですよね。

○と、こんな風にいろんな人に会いながら、年の瀬は過ぎてゆくのでありました。


<12月5日>(水)

○年末恒例のエコノミスト懇親会である。日本経済新聞社とテレビ東京、日経センターの3社の共催である。

○考えてみれば、不肖かんべえは先月号の『諸君!』で日経の悪口を散々言いふらしている。これは敵地に乗り込むようなものではないのか。いやいや日経の記者というものは、面と向かって紙面の悪口を言っても、「あはははは、その通りなんですよ」というタイプが多いので、たぶん大丈夫だろう。とタカをくくって出かける。もちろん、ワシの読みは正しくて、「読みましたよみました。あはははは」みたいな反応が多かったのである。

○ホテルオークラ別館での大パーティーである。まとめて大勢の人に会えるのでありがたい。特に金融界の人は、しょっちゅう勤務先が変わったりするので、こういうときが名刺交換のチャンスとなる。主催者の挨拶が短いのもありがたい。政治家では、中川さん渡辺さんが来てました。経済政策をめぐる旬の話題は、「埋蔵金」であるようですな。結構なことです。

○特別会計の中には、財務省がヘソクリにしているお金が数十兆円単位である。にもかかわらず、「財政再建のために消費税増税が必要だ」と言っている。これって、ケシカラン話ですよね。もちろん、ヘソクリは1回使ってしまえばそれで終わりなので、いざというときのために残しておくという財務省の考え方は、財政当局としては正しいと思う。

○政府にとっての恐怖のシナリオは、来年4月の予算関連法案において、民主党が「赤字国債の発行を止める」という暴挙に出ることであった。その場合、平成20年度予算は赤字国債抜きで執行しなければならず、20兆円程度の穴が空く。そこで財務省は、泣く泣くヘソクリに手をつけることになるのだが、そこで初めてヘソクリの存在を知った国民がなんと思うか。「バカヤロー、何が消費税だ。人にお願いをする前に、ちゃんと裸にならんかい!」と怒ったのではないか。

○「埋蔵金」は、増税派に対する上げ潮派の攻撃という性質を持っていますが、この問題が表面化したお陰で、自民党にとってのリスクシナリオは回避されつつある。いやはや、政治は奥が深いのであります。

○さて、立食パーティーで実のある話をするのは難しい。今宵、交わされた無数の話の中で、ひとつメモしておきたいのは、関志雄さんが「中国投資公司に拠出された2000億ドルは、外貨準備から切り離されるのかどうか」と言っていたこと。つまり中国は、SWFは民間資金である、と言い張りたいので、そのためには外貨準備を減らさなければならない。以前に中国の民間銀行に外貨準備が資本注入されたときは、ちゃんとその分が減ったという。だとすると、今回は1兆4000億ドルが1兆2000億ドルになるのだろうか。そのうちIMFのデータに反映されるでしょう。これって、中国版の埋蔵金でしょうかね。

○最後に宣伝。日本貿易会の2008年度貿易動向調査の予測が発表されました。こちらをご覧ください。2008年度の輸出は91.0兆円、輸入は74.8兆円。そして経常黒字はなんと31.3兆円であります。ド迫力の数値であります。今日のテレビ東京のインタビューでは、かんべえは「2008年の日本経済は前年比85点」と申し上げましたが、外需はあいかわらず強いのであります。


<12月6日>(木)

○昨日の問題について、金融ジャーナリストのK記者からご説明をいただきました。

(1)2000億ドルは外貨準備とはカウントされなくなる。

(2)人民銀行が持つ外準と交換するための資金を 「特別国債」を発行して調達する仕組みは、ある意味で民間資金の活用。ただ、調達コストに見合ったリターンを得るのはハードルが高い。「収支をトントンにするには、少なくとも1日3億元の利益確保が必要」との報道あり。

ソース:http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-29111020071129 

(3)日経金融新聞では、「特別国債の発行で過剰流動性を吸収することにもつながる」という見方を披露していましたが、「特別国債を発行することで、中国財政部が本件にかかわる上で発言力を強めたいのではないか?」との指摘もあり。

4)統計上の数字もさることながら、ブラックストーンが対中投資でもすれば、中国に二次環流する可能性もあり。

○しみじみSWFの問題は奥が深いです。

○ところでK記者ったら、いつのまにかぐっちーさんに食い込んでいるではないか。そしてぐっちーさんは、なんと実名で書いちゃっているではないか。まーったく、油断も隙もない。


<12月7日>(金)

♪アメリカ経済が
♪サブプライム問題で
♪いよいよ大変だ。
♪でも、そんなの関係ねえ。そんなの関係ねえ。はい、オッパッピー!

●参考資料:
http://pickitup.blog75.fc2.com/blog-entry-1158.html 

○最近流行の「デカップリング」という議論は、要するに上記のようなことなのですな。新興国経済はアメリカ離れを始めている。だって、ドルは他国通貨に対して、恒常的に下落を続けている。元はといえば経常赤字の垂れ流しが問題であるから、つまりは自業自得。当然の理屈として、世界経済におけるアメリカ経済のシェアは低下の一途をたどる。だからサブプライムのような問題が生じたとしても、BRICsなどの新興国経済は自律的な成長軌道に乗っていて、"Ocean Pacific Peace"(オッパッピー)をエンジョイすることができる。

○かくして世界経済の中心は、先進国からエマージングへと移りつつある。そうなると、G7なりOECDなりといった先進国が作った仕組みは、以前ほどの有効性を持ちえなくなる。例えば産油国や中国が設置するSovereign Wealth Fundsは、先進国の言いなりにならずに、賢い投資をしたいと考えている。アブダビ投資庁は、恩着せがましくシティグループに75億ドルを出資し、11%という高い利回りをゲットした。そういう人たちに向かって、透明性が大事だとか、金儲け以外の邪悪な目的を持ってはいけないよ、などと説教をするのは、暖簾に腕押しもいいところであろう。

○それどころか、「民主主義なんて何のこと?」「汚職腐敗は当然オッケーよ」「グローバルスタンダードなんぞアホらしい」、という彼らの論理が、これからの世界経済に広がってくるかもしれない。何しろ彼らは、「先進国の流儀なんて、そんなの関係ねえ」と言い切れる立場である。以前であれば、「オラオラ、アメリカさまに輸出がしたければ、素直に言うことを聞くんだな」と脅しをかけることができたが、今では「フフン、お客は他にもいっぱいいるんでね」と逆襲されかねない状況にある。

○この図式、少し前に田中明彦先生が『新しい中世』で描いた安全保障の世界の話に似ている。何のこっちゃ?と思われた方は、下記のようなレクチャー資料をご参照ください。主要先進国では、「戦争なんてとんでもない」という世界ができつつあるのに、「近代圏」(ロシアや中国)や「混沌圏」(スーダンやエチオピア)では、前世紀的な権謀術数政治や、プーチン式の勢力均衡外交が幅を利かせている。かくして先進国は、国際テロリズムや地域紛争の動向を始終、警戒しなければならなくなった。つまりは、「朱に交われば赤くなる」である。

●参考資料:http://web.sfc.keio.ac.jp/~kenj/security2/2007/04/post_5.html 

○さて、こういう世の中にあって日本がとるべき道は何か。本当にデカップリングが起きているのなら、「脱米入亜」が魅力的な選択肢となるだろう。ワシらも一緒に、「そんなの関係ねえ」と歌って踊ればいいという理屈である。が、日本のようなナイーブな国が、「近代圏」や「混沌圏」の経済と四つに組んだ商売ができるとはとても思えない。せいぜい食い物にされるのが落ちでしょう。日本経済はやはりG7やOECDの中にいた方が居心地がいい。

○もちろん日本社会にもアジア的な前近代性がビルトインされていて、ときには「グローバルスタンダードにはついていけねえ」と思う瞬間がある。その一方で、島国特有の情の濃いこまやかな日本社会は、本格的にすさんだ大陸国家の作法にはどうしても馴染めないところがある。要は、国際標準とアジアの間を行きつ戻りつするのが日本の道であって、それが"Ocean Pacific Peace"(オッパッピー)への道なのではないだろうか。

○なんていう馬鹿話を突然思いついたのは、きっと今日、寝言さんと先崎くんの3人でランチしたからでしょう。あの2人の組み合わせは、いい刺激になるんだよな。


<12月9日>(日)

○「オッパッピー」が気になってあれこれ検索しているうちに、こんなサイトを発見してしまった。

●日本語俗語辞書:http://zokugo-dict.com/ 

○かんべえと同じように、知識に著しい偏りがあり、世間の流行りごとに疎い方にはお役立ちだと思います。皆さま、以下の2007年注目の俗語のうち、いくつご存知でしょうか?

KY  どんだけぇ〜  オッパッピー  がばい  干物女  格差婚  鉄子  ネットカフェ 難民  炎上  もてぷよ  

SKN  クリパ  シングルベル  ディスる  オトメン

○なんと「そんなの関係ねえ」を略して「SKN」というのだそうです。これを転じて「SKN野球」という用法もできているとか。これなんぞ、「デカップリング野球」と言い換えてもよいかもしれませんね。

○先日、ある米国通の人から、「ねえ、"Foreclosure"って、どんな意味だっけ?」と聞かれて驚いたことがあります。昨今はサブプライム問題により、空家に"Foreclosure"(差し押さえ)という看板がついている風景が目立っている。ところが普通に辞書を引くと、foreclosure=「質流れ」みたいな意味が書いてあって、ピンと来ない。しみじみ「言葉は生きもの」なのであります。


<12月10日>(月)

○埋蔵金伝説。もともと民主党は気づいていたのですよね。2005年に「特別会計改革案(直嶋プラン)」というものがあったのです。財政融資資金特別会計から20兆円、外国為替資金特別会計から7兆円など、都合7会計の積立金を活用して、国債残高を33兆円縮減するというアイデアが盛り込まれていました。が、この埋蔵金は、文字通り忘れられてしまう。

○時は流れ、今年の参議院選挙で、子育て支援や農家直接補償などのバラマキ政策を裏づけするために、民主党は補助金の削減などで財源が調達できるとマニフェストに書き込んだ。素人が見てもすぐ分かる机上の空論であったが、これに噛み付いたのが自民党の財政改革研究会である。11月21日に出た「中間とりまとめ」の中で、以下のように酷評している。

http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2007/pdf/seisaku-026.pdf 

民主党主要政策では、補助金の一括公付金化や特殊法人等の原則廃止等により総額で15兆円を超える財源が捻出できるとの具体的な根拠のない提言がなされている。これに関しては、下記の問題があり、いわゆる「霞が関埋蔵金伝説」の類の域を出ないものである。

○おっしゃる通りで、補助金のカットや公務員人件費の削減で、何兆円ものフローを確保しようというのは、あんまり現実的な発想ではない。だが、「埋蔵金伝説の類」と切り捨てたところへ、中川前幹事長が「特別会計の中にストックとしての埋蔵金があるではないか」と鋭く突っ込みを入れたわけである。こっちの方はリアリティがある。

○与謝野さんは、7日夜のテレビ番組でこんな風に反撃した。

「仮に埋蔵金伝説が真実だとしても、金持ちのボンボンが家財を売りながら生活しているのと同じだ。すでに眠っている金は出しているので、確信を持ってそういう金はないと言ってよい」

○これはあんまりお上手な理屈ではない。埋蔵金は、たしかに使えば消える1回限りのカネである。しかし遊んでいるカネ(家財道具)があるのだとしたら、そんなものは即座に売り飛ばすべきである。何しろ日本政府は借金漬けなのだから。たとえて言えば、8000万円の住宅ローンを抱えている家庭で、家の中から500万円相当の有価証券が出てきたようなものだ。その分のローンを減らした方がいい。借金返済に勝る財テクなしである。

○まして、「国民に消費税をお願いする前に、政府が裸になれ」という議論がある。これを言われ出したら、はっきり言って増税派に勝ち目はなくなる。財務省は賢いから、そうなるまえに手を打つと思うけれども。

○こんな風に、「埋蔵金論争」は、「財政再建派」(与謝野)対「上げ潮派」(中川&竹中)のサスペンデッドゲームである。いつものことながら、経済政策の論争は野党が絡むよりも、自民党内でやってもらった方が面白い。


<12月11日>(火)

○ロシアのプーチン大統領が、自分の後継者にメドベージェフ氏を指名しました。たまたま今日、当社OBのロシア研究家、月出さんの話を聞く機会がありましたので、印象に残ったことを簡単にメモしておきます。

●「プーチンは院政を目指す」と言われているが、本当にそうするかどうかは当人次第である。今年の夏には、「大統領なんて、装甲車に乗せられたゴキブリみたいなものだ。何も見えやしない」とぼやいていたそうだ。ひょっとすると、大統領を辞めた後は自由を満喫したくなって、小泉さんみたいな余裕綽々の人生を送るかもしれない。

●プーチンが後継者に指名するのは、当初はシロビキ派のイワノフだと思われていた。ところがシロビキ内部で紛争があり、リベラル派にチャンスが回ってきた。シロビキ派が強権体質、反大企業、製造業重視、産業政策志向であるのに対し、リベラル派は民主的、親大企業、金融重視、市場主義志向である。ゆえに西側メディアはこの決定に好意的だが、ロシアにおけるリベラル派の本質はきわめてダーティである。

●リベラル派の実態は、その昔、ペテルブルグでプーチンと一緒に悪さをして私財を肥やした連中である。彼らは過去に後ろめたい部分があるために、結束力がある。彼らにとっては、プーチンが完全引退してもらっては困る。むしろ「院政をひいてもらわないと、自分の将来が不安」なのである。

●もっともメドベージェフも大統領になると、毎日の仕事をいちいちプーチンにお伺いを立てるわけには行かなくなる。やがては独自色が出てくるだろう。人間は権力を握ると変わるものだ。あるいはメドベージェフも、権力の味を覚えるかもしれない。ロシアに二頭政治はない。かといって、プーチンがエリツィン一家にけっして逆らわなかったように、メドベージェフもプーチンをないがしろにするようなことはないだろう。ロシアの権力者は、意外と後生が良いものだ。

○月出さんらしいアイロニカルな語り口で、ロシア政治のディープな話を堪能しました。プーチンという人は、見た目どおりにクールな人のようですね。少なくとも彼は、自らの引き際に際して「俺がいないとこの国はダメになる」などとは考えていないらしい。国や企業を滅ぼすのは、得てしてそういう我執のあるリーダーですから、その一点だけでも彼は合格点をあげて良い指導者なのではないでしょうか。


<12月12日>(水)

○お世話になっているTさんのお母様が亡くなられたので、告別式に出かける。半年前に自分の母の葬儀をやっているので、他人事とは思えなかったもので。しかもウチの母と同じ昭和8年生まれだったそうで、その半生を聞けば典型的な昭和ヒトケタ世代。要するに、我慢をした、明るかった、子供を育てた、偉かった、というニッポンの母でありました。我らが世代としては、感謝あるのみです。

○それ自体は普通の葬式だったのですが、弔電披露の段でちょっとしたサプライズがありました。「衷心からお悔やみ申し上げます」式の定型的な弔電が4〜5本紹介された後で、「尊敬するXX県議殿」と、喪主に対する呼びかけから始まる、とてもとても長い電報が披露されたのである。

○この電報がちょっとしたものであった。喪主のこと、喪主の母である故人のこと、亡くなられたときの様子などを切々と語りかけるのである。思わず場内はシーンとするし、喪主とその夫人の目には涙が浮かんでいる。空気が程よく湿ったところで長文は終わり、はてさて誰が書いた弔電だったのかと誰もが気になって仕方がなくなったところ、最後に読み上げられた送り主の名は、「新党大地代表、鈴木宗男」でありました。

○某新聞論説委員長と某出版社広告部長と一緒に帰る道すがら、ついついこんな話になりました。

「ムネオはやっぱりたいしたヤツですな」

「本人が来るよりもインパクトがありましたよ」

「やっぱりムネオとかナベツネとか、全国的にあだ名で呼ばれるような人はただもんじゃないですな」

○考えてみれば、弔電なんていくら長くたってコストは知れているのである。でも、あれは本人が何度も推敲して、自分でペンを執って書いたのでしょう。そして今日の参列者は、誰かれ構わずに「驚異の弔電」について語っていることでしょう。かくしてムネオ伝説が全国に流布することになる。かくいう当方もここで紹介して、ついついその片棒を担いでしまう。しょうがないわなあ、感動しちゃったんだもの。


<12月13日>(木)

○ハンク・ポールソン米財務長官が訪中している。第3回米中戦略経済対話(SEDV)を終えたところである。ご参考までに申し添えるならば、米中の協議には、以下のような歴史的な経緯がある。

●2005年3月:ライス国務長官が訪中し、定期戦略対話の開催を決定。

●2005年8月1日:初の米中戦略対話、北京

*ゼーリック国務副長官/戴秉国外務次官

*”Responsible Stakeholder”論の誕生

●2005年12月7〜8日:第2回米中戦略対話、ワシントン

*ゼーリック国務副長官が辞任。ポールソン財務長官が就任

●2006年12月14〜15日:第1回の米中戦略経済対話(SEDT)、北京

*ポールソン財務長官/呉儀副首相

●2007年5月22〜23日:SEDU、ワシントン

●2007年12月12〜13日:SEDV、香河


○ついでにいえば、SEDVで討議されたのは、以下のような内容ではないかと推察する。このこと自体、どうということではない。まあ、どうぞご自由に、ってな感じである。


●信頼に基づく貿易 ――食品と製品安全

●経済発展のバランス ――人民元の上昇ペース


●エネルギー節約 ――バイオ燃料の共同開発


●金融分野の改革 ――WTOの開放目標


●環境の持続可能な発展 ――リサイクルゴミの輸出入管理


●二国間投資 ――保護主義への対応、SWF問題?


○ところがポールソン長官は、東京に立ち寄ることなく帰国するらしい。それってとんでもない話であって、日米財務当局同士の協議は必要ないんですか、と文句を言いたくなるところである。だって昨日は、米欧5中央銀行が緊急声明を発表し、サブプライム対策を17日から実施すると決めたところじゃあないですか。よもや日本の協力が要らないとでも? それとも、日本は安全パイだから、黙っていても助けてくれるとでも?

○とは言うものの、ポールソン長官の立場になって考えてみると、日本を素通りしたくなる気持ちも分からんではない。なにしろ、日本における彼のカウンターパートは、あの額賀福志郎財務大臣である。ご自分の保身で精一杯の人に、サブプライム問題の相談を持ちかけても、あんまり実りある会談にはならんでしょう。せめて渡辺金融担当大臣がお相手できればいいのだが、あいにく行革担当大臣としての業務が山場を迎えている。情けないけれども、ジャパン・パッシングは正当化されてしまうのである。

○こんな哀しい現実を噛み締めていると、ああ、もうちょっとしっかりした財務大臣が欲しいものだとしみじみ思う。今、仮に往時の田中角栄のような辣腕大臣がいたら、こんな風に言ってくれるんじゃないかと、ついついあられもない夢想をしてしまった。

     ◆         ◆         ◆

「ハロー、ハンク。ハゥアーユードゥーイング。北京の空気はうまいかね?」

「ああ、ミスタータナカか。久しぶりだな。どういう風の吹き回しだね」

「あんたがなぜそんなに中国に足繁く通うのか、少々調べさせてもらったよ。あんた"アジ専"で年増が好きなんだって? まあ他人の趣味に口出しはできないが、それにしたって呉儀さんはどうかと思うがね」

「な、なにを言うんだ」

「いやね、妙齢のアジア系女性がお好みであれば、トーキョーにもいいのが一杯いるぞ。わが国の元防衛大臣なんかはどうだね。呉儀さんよりはいけてるし、英語もうまいからあんたと話しが合うと思うがね」

「失敬な。誤解もいいところだ」

「まあ、そう怒るなよ。とにかくトーキョーに立ち寄らずに帰るって法はないぜ。あんた、こないだウチの可愛い三人娘に声をかけてくれたそうじゃないか。サブプライム救済基金に50億ドルずつ出してほしいって? あいにく、ウチの娘たちは引っ込み思案でな。ここはひとつ、御大自らがお出ましになって、キチンと挨拶をしてもらわないと、出せるものも出せなくなるじゃないか」

「それはどういう意味かな。俺がトーキョーに立ち寄れば、おたくのメガバンク3行がすんなり150億ドル出してくれるとでもいうのかね」

「そいつは虫が良すぎるんじゃないか。いくら財務大臣といえど、自国の民間金融機関にカネを出せと強制するわけにはいかないね。ま、政策投資銀行を使ってみてもいいが、いいとこ20億ドルくらいかな。それにしたって、手ぶらで帰るよりはマシだろうが」

「おとなしく聞いてれば、ずいぶん強気なことを言うじゃないか。サブプライム問題を放置しておくと、お宅の経済も一緒に沈没すると、よもや知らないわけではないだろうな」

「そこだよ。ウチは10年前にしみじみ学習したんだよ。火事場泥棒に罪はないってことをね。悪いのは火事を出した方だ。火事を助けに来たヤツが、少々いい目を見るのは当然のことなんだ。長銀、日債銀のときは、つくづくあんたたちにお世話になったものだ」

「まあな。あの頃の日本はオイシイ市場だったよ」

「ところがだ。今度は火事を出したのはあんたらの方だ。それを助けに行くわれわれが、ちょっとばかりいい目を見ることが悪いとは言わんだろう。民間金融機関としては、サブプライム救済基金なんぞにカネを出してもあんまり儲からんし、そもそも面白くないじゃないか。どうせなら、お宅の焦げ付いた金融機関にダイレクトに出資させてもらいたい。あんたさえその気になれば、今すぐ中山素平君に電話して、100億ドルくらい用立てするぞ」

「ひゃくおく? アブダビ投資庁より上か。大きく出るじゃないか」

「まあな。その代わり、ROAで10%以上は保証してもらうがね」

「今度は日本がハゲタカになるというのか。ずいぶん出世したもんだな」

「おっと、そんなにアコギなことを言ってるつもりはないぜ。われわれが黙っていると、あんたが勝手にチャイナマネーに転んで、アメリカの国益を損ねるんじゃないかと、そっちが心配だから言っているんだ。痩せても枯れても、同盟国だからな」

「ずいぶんコストが高い同盟国だな」

「そう言うなよ。ウチだって米国債を一杯持ってるんだぜ。お宅が引っくり返ると困るんだ。ひとつ共存共栄で行こうじゃないか」

「そっちの言い分は分かった。明日、飛行機を横田基地に向かわせるとしよう」

「オーケー。トーキョーが誇る三ツ星レストランを予約して待っているぞ」

     ◆         ◆         ◆

○われながら妄想もいいところであるが、政治の混迷やらリーダーシップの不在やらという現実が、しみじみ悲しいのである。


<12月15日>(土)

http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200712140004a.nwc 

(フジサンケイビジネスアイ:環境や金融開放で一致・・・戦略対話閉幕/「人民元」進展なし)


○上の写真を見ていると、ハンクはやっぱり「アジ専&年増好き」なんじゃないかと思えてきます。ま、人間、何を動機付けにしようが、それで仕事が捗るのであれば、結構な話ではありますが。

○アメリカの財務長官は、得てしてウォール街で功なり名遂げた人が就任します。ポールソンもその一人です。日本でいうなら、竹下内閣が大タブこと田淵節也野村證券会長を大蔵大臣にするようなもの。昨日までのプレイヤーを、今日からは審判にしてしまうわけで、大胆と言えば大胆。その一方で、金融で世界を睥睨するアメリカという国の利益を守るためとあれば、これはベストなやり方といえるでしょう。

○しかし、昨日まで私利私欲を追っていた人を、今日からは国家のために働かせるというのは、けっして簡単なことではないと思われます。「ルービン回顧録」を読んでみても、この人は何故、大好きなニューヨークを捨てて、嫌いなワシントンに出かけていったのか、その動機付けの部分があんまりよく分からない。

○先日、元外資系証券勤務の方から伺った話で、ホントかどうかちょっと怪しいのですが、どうやら裏技があるらしい。ウォール街で財を成した人は、株を山ほど持っている。ところが財務長官になった瞬間に、株の売り買いはできなくなる。普通はそこで運用も含めて誰かに委託して、自分が手出しできないようにしなければならない。ところがもっと簡単な方法がある。それは長官就任の直前に、全部株を売らせてしまう。ただし非課税で。

○これってすごく合理的な方法だと思います。中には売りたくない株もあるでしょうけれども、非課税でいいのであれば喜んで売るでしょう。ついでに、全額を財務省証券にしてしまえば、財務長官として「強いドル、強いアメリカ」を守る強力なインセンティブになるでしょう。「そんな特権を許すのはケシカラン」と言って怒る人もいるでしょうが、それで優秀な人材を登用でき、真面目に仕事をしてもらえるのなら、アメリカとしては安い投資ではありませんか。

○ひるがえって考えてみると、現役の間は安月給にとどめておくけれども、退任後に天下りしてガッポリ稼げるというわが国特有の官僚制度も、ひとつのインセンティブ供与の方式だったわけですね。官僚の天下りを減らすのは良いとしても、代わりのご利益を何か用意しておかないと、優秀な人材は霞が関には来てくれないということになります。そんな調子では、ハンクやルービンたちには到底太刀打ちできないと思うのですけどね。


<12月16日>(日)

○うーん、信じられないことが起きるものである。不肖かんべえは来年で人生4度目の年男であるが、長生きしていると「これだけはないだろう」と思っていたことが、案外と実現しちゃうかもしれないのである。

http://www.kitanippon.co.jp/contents/knpnews/20071215/8893.html (北日本新聞)


●富山中部など候補9校 選抜高校野球21世紀枠、来月3校決定 (2007年12月15日)

 日本高野連は14日、来春の第80回選抜高校野球大会(来年3月22日から13日間・甲子園)の21世紀枠候補校9校を発表した。北信越からは富山中部が選ばれた。大会に出場する3校は、一般選考と同じ来年1月25日の選考委員会で決定する。

 ほかに選ばれたのは地区別に武修館(北海道)大曲工(東北=秋田)安房(関東・東京=千葉)成章(東海=愛知)畝傍(うねび)(近畿=奈良)華陵(中国=山口)富岡西(四国=徳島)長崎商(九州=長崎)。

 21世紀枠は大会の特色を出すために平成13年の第73回大会から導入され、今回で8回目。都道府県秋季大会のベスト8進出校(参加校数が128校以上の9都道府県はベスト16進出校)の中から、過疎や部員不足など困難な条件を克服したチームや練習法などで他校の模範となるチームを選ぶ。

 富山中部は秋季県大会で強豪校の氷見やシード校の砺波を破って4強入り。グラウンドをサッカー部や陸上部と共有して練習に励んでいることや、学業と野球の両立を推進している点などが評価された。県高野連は20日、同校で表彰式を開く。

 来春は記念大会のため、例年より1校多い3校を選出。@北海道、東北、関東・東京A北信越、東海、近畿B中国、四国、九州から1校ずつが選ばれる。



○「21世紀枠」などという生ぬるい制度は、本来、高校野球における実力主義の否定であろう。あるいは「夏ほど盛り上がらないセンバツ」を梃入れするために、毎日新聞が商業的な意図で取り入れた制度であろう。いってみれば、定員割れしそうな大学がAO入試を取り入れて、「本学は人物本位の選考である」などと主張するような胡散臭さがある。

○が、わが母校がそんなのに引っかかって、甲子園に行けちゃうかもしれない。ワイルドカードもいいところである。だいたいが文弱を絵に描いたような高校である。野球部には特待生もいないし、専用グラウンドもないし、選手もたぶん野球よりは進学が大事だと思っているはずである。そんな学校が本当に甲子園に出てしまったら、真面目に野球に打ち込んでいる学校に失礼ではないだろうか。いや、20対ゼロくらいで1回戦負けしそうなので、見るのが怖いという気もする。(←典型的な富山県人的ネガティブ発想)。

○とはいえ、決まるのはまだ先だという。うーん、こんな風に気を持たせて、関心を集めようという算段だな。その手に乗ってしまうのが悔しい。


<12月17日>(月)

○元台湾特派員のK記者が来社。ランチしながら、米中関係の行方などを論じた結論は、「台湾をどげんかせんといかん」。

○夜はぐっちーさんほかと密談。ワインをあけながら、当面の国際金融を論じた結論は、「サブプライムをどげんかせんといかん」。

○どちらも2008年の課題でありますなあ。知らん振りして、1年寝て過ごす方が賢いという見方もありそうですが。

○それにしても、ぐっちーさんは毎朝5時には電話で起こされる、というのは大変でありますな。お互い、若くありませんので、この季節は無理せずに行きたいものであります。

○なお、「21世紀枠」の決定方式について、純正野球ファンさんから貴重な情報をお寄せいただきました。深謝申し上げます。普通だったら望み薄らしいのですが、今年に限って脈があるかもしれないとのこと。まあ、宝くじみたいなものだと思っておりますが、この宝くじは当たるとOBが寄付金をドカンととられる仕組みだったりして。


<12月18日>(火)

○この国の世論というものは、ホントにしょうがねえなあ、てなことを先週から感じている。

○消えた年金の追跡がうまくいっていないらしい。そんなこと、誰だって予想してたことなんだから、素直に御免と言えばいいところを、舛添厚生労働大臣が妙に突っ張って世間の顰蹙を買う。さらに福田首相が、国会の再延長が決まって油断したのか、木で鼻をくくったような答弁をして火に油を注いでしまう。「5000万件を照会する」とは言ったけど、「5000万件を解明する」とは言ってないのだと。あんた、自分の子供がそういう屁理屈を言ったら、親として真剣に怒るでしょうが。

○今年5月に「消えた年金」問題が浮上したとき、安倍政権の支持率はいきなり10%落ちた。あれから半年、いろんなことがあったために、すでに忘却の彼方だったのかもしれない。が、今回も、福田内閣の支持率は、きれいに10%落ちた。それも本質論ではなくて、単に謝り方が下手だっただけ、というところが特にアホらしい。14年ぶりの越年国会なんだから、与野党はともにやせ我慢の連続で、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ばなければならない。特に年金問題は、特大級の地雷と心得て行動しなければならない。

○このところ世論は、年金問題と医療問題、それに食品偽装問題にだけ反応する。要するに自分の身の回りのことにしか興味がないらしい。外交や財政といった国家の問題や、産業政策や教育といった未来の問題には全然反応しない。情けないことだが、団塊世代が60代にさしかかるということは、こういうことであったのか。あるいは若い世代が、ケータイの画面に入るサイズのことしか頭に入らないようになると、国家も未来も視界から消えてしまうのか。くだらないとは思うけれども、政治をする側は、「国民はそういうものだ」と思って仕事をするしかない。

○ということで、福田内閣は「食品表示監視Gメン」を作るのだそうだ。「生活安全プロジェクト」を作って、消費者の安心を保証するらしい。狙いとしてはいいけれども、これでウキウキと予算を申請する各省庁の姿が目に浮かぶようで、正直、頭が痛い。自分の安心を政府に保証してもらわなければならないとは、どういう時代なんだろう。耐震偽装で壊れたマンションや、賞味期限切れ食品で病気になった人の話は、あんまり聞かないんだけどなあ。


<12月19日>(水)

○韓国新大統領に李明博氏が当選。大阪生まれだそうですね。どんな人なのか、これからいろいろと紹介されるのでしょう。大統領就任式は2月25日。来年誕生する新しいリーダーの一人となります。

○こんな風にニューフェイスが登場する機会が、これから来年にかけて多くなるでしょう。日本に近い国だけでも、これだけ揃っているのですから。

●3月2日のロシア大統領選(メドベージェフ)

●3月22日の台湾総統選(謝長邸か馬英九)

●11月4日の米国大統領選(ヒラリーか、オバマか、エドワーズか、ジュリアーニか、ロムニーか、マッケインか、トンプソンか、ハッカビーか、それ以外の誰か)

○日本の周辺国の指導者が総取り替えに近くなります。当然、政策も変わってくるので、六カ国協議の雰囲気なども、ずいぶん変わるでしょうね。とまあ、そのこと自体はかなり前から分かっていて、2008年は大変な年になりますよ、といわれてきた。韓国大統領選挙は、その先陣を切る感じであります。

○ひょっとすると日本も解散・総選挙があって、政権交代が起きるかもしれない。でも、それで誕生するのが小沢首相だとしたら、これはニューフェースではありませんな。それはさておき、New Faces, New Policiesの年がいよいよ近づいてまいりました。



<12月20日>(木)

○そういえば、少し前にこんなことを書いておりました。

●国富ファンド(SWF)にご用心(07/10/1)

http://markets.nikkei.co.jp/column/rashin/article.aspx?site=MARKET&genre=i2&id=MMMAi2001002032007 

ちょっと意地の悪い想像をしてみよう――。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライム)問題で、同国の大手投資ファンドが大きな損を抱えていることが判明したとする。このままでは金融市場の大混乱は必至だが、もはや利下げでは間に合わない。急いで外からフレッシュマネーを入れる必要がある。が、他の金融機関も、手元流動性はそれほど潤沢ではない。1998年のロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)経営破たんの際は、日本風で言う「奉加帳」を回して素早く事態を収拾したのであるが……。

 こういう場合、米国議会ではモラル・ハザードに対する批判が厳しいので、「公的資金」の注入は論外である。それでも金融当局としては、救済資金をどこからか引っ張ってこなければならない。さて、ポールソン財務長官は、誰に電話をすればいいのだろうか?

 これが80年代であれば、米財務省は迷わず日本の大蔵省に「泣き」を入れたことだろう。が、今の日本政府には、そんなマネーもなければガッツもない。大量の資金を持っていて、トップダウンで迅速な決定ができ、なおかつ秘密が守れそうな相手は誰か。おそらく電話の相手は中国、ということになるのではないだろうか。



○こんなに早いとは驚きましたね。しかも相手が他ならぬモルガンスタンレーですから。ぐっちーさんの今日の嘆きは胸に突き刺さります。他方、中国投資公司(CIC)としては、緒戦をブラックストーングループでしくじった後、こんな大物を釣り上げることができたとは望外の成果というものでありましょう。先月、北京を訪れた際に聞いた、「中国はわれわれから見ると、あまりにも準備が整わない段階で踏み出します。でも、失敗から急速に学んで成長します」という親中派エコノミスト、S氏の言葉を思い出しました。

○かんべえ、思わず今日は滅多に読まないFTを読んじゃいましたが、この記事が納得でしたね。"CIC's opportunistic deal is lesson learnt" この取引の立役者となった、3人を紹介しています。

(1)モルガンスタンレー北京所長のMs.Wel Christianson。香港生まれ、米国の大学を出た弁護士。

(2)CICのトップであるMr.Gao Xiqing。デューク大学法学部卒。

(3)そしてモルガンスタンレーのCEO、Mr.John Mack。今回はボーナス返上で危機突破を目指す。

○この3人で、パパッと話を決めてしまった模様です。John Mackの腹心であったWel Christiansonが、昔からGao Xiqingを知っていて、という簡単なストーリー。記事によれば、「米国当局におけるハイレベルでの議論はあった」ということですので、やっぱり“アジ専”ポールソン長官が先週、訪中した際にこの話は「落ちて」いたのでしょう。

○記事の中身もさることながら、かんべえが唸ってしまったのは、この記事についている3人の「顔写真」なんです。(あいにくネット版を見ても写真は出てません。念のため)。Ms.Wel Christiansonは美人ですし、Mr.Gao Xiqingはいかにもやり手といった面構えですし、Mr.John Mackに至っては、中年の性格俳優のような深みのある顔をしています。こういう顔をした人たちは、日本の金融界ではあんまり見かけないんですよねえ。日本の3大メガバンクのトップは、どんな顔をしてましたっけ? 日本でも少し前には、大タブさんや黒澤頭取みたいな迫力のある顔があったのですけども・・・。

○金融の世界で「米中融合」が進み、日本が置いてきぼりになってしまうのは、やはり人材の差ではないかと思って、ちょっとユーウツになりました。


<12月21日>(金)

○先日、広島からの客人からこんな言葉を教わりました。「札仙広福」。つまり札幌―仙台―広島―福岡という地方中核4都市のことなのですね。それぞれが北海道―東北―中国―九州を代表している。景気も悪くないし、人口も増えているし、元気もある。日本経済を盛り上げていく鍵のひとつは、この「札仙広福」が握っていると思います。

○で、この4都市の中では、やはり福岡の繁栄ぶりがいちばんであるとのこと。かんべえも今年2回行きましたが、まさしく実感ですね。やはり空港と新幹線の便が良いことが強みです。そういえば、今年は広島と仙台にも1回ずつ行きました。札幌はしばらくご無沙汰してますね。何か用事ができないかしらん。

○4都市の中では、広島がやや元気がないのではないか、とご心配でした。4都市はすべてプロ野球チームがあるのだけれど、それを見ると一発で分かるとのこと。なるほど、札幌の日本ハムファイターズは見事に2年連続の優勝。仙台の楽天ゴールデンイーグルスは、マー君入団と最下位脱出で盛り上がり、オールスターゲームでは組織票が集まるほど。福岡のソフトバンクホークスは、王監督のもとで完全に地元に定着している。なにせ西鉄ライオンズというご下地がありますからね。

○そこへ行くと、広島カープの現状はありゃ何じゃ、ということになる。来年はとうとうエースと4番打者が取られてしまう。FAのたびに情けない思いをし、まるで阪神タイガースの植民地状態(ワシが謝って済む話ではないが、一応ゴメンナサイ)。しかも若手を育てることに関しては、おそらく12球団一の能力を持ち、外国人選手を発掘することでも定評がある。それでもチームの成績は振るわないし、観客動員数でも今ひとつである。これはいかがなものか。

○考えてみれば、広島は有力選手がFA宣言をする直前に、トレードに出してしまえばいいんじゃなかろうか。そうすれば、わが阪神タイガースとしても、必ず見返りの選手を出さなきゃいけなくなる。その方がずっとお得だと思うのですが、それってやっぱり広島市民的には許されないことなんでしょうか?


<12月24日>(月)

○上野の国立科学博物館で「大ロボット博」を見てきました。まあ、予想した通りの内容ですが、これは楽しめます。いろんなロボットが紹介されていますが、単に歩く、とか作業をするに留まらず、楽器を演奏する、食事を手伝う、警備を行う、そして可愛らしくて人の心を癒す、まで、実に様々な動きを見せてくれます。

○特にこのロボットには仰天しましたな。アザラシ型メンタルコミットロボットの「PARO」です。頭や喉をなでると、気持ち良さそうに目を開けてこっちを見ます。一台35万円だそうですけど、これ、ちょっと欲しいかも。とりあえず、ウチの娘には馬鹿ウケでした。

○世界中で、役に立たないロボットを作るのは日本だけだそうです。からくり人形の古い伝統があって、手塚治虫という偉人が出て、ガンダムみたいなシリーズができて、産業用ロボットでは世界の最先端を行き、しかも大企業が巨費を賭けて大真面目に人型ロボットを作っている。日本人にはロボット好きの遺伝子が流れているようです。

○今日はなかなかに好天で、出歩くには良い日でありました。上野はイチョウの落ち葉がキレイでしたね。最近になって気づいたんですが、東京はしみじみイチョウが多い。そういえば、東京都も東京大学もイチョウのマークであったような。ごく自然に風景に溶け込んでいるために、あんまり気がつかないのであります。


<12月25日>(火)

○財務省の平成20年度予算の説明会に呼んでもらいました。冒頭、財務省側から説明があり、それを拝聴した民間側からは真っ先に名古屋の某M教授が手を挙げて、「財政再建は待ったなし。消費税も大いに上げるべし」という大応援演説をぶつところまでは、まったく昨年と同様。その後は社会保障制度についてのやり取りがあって、「積立方式と賦課方式」などについて議論があった。

○で、かんべえが聞きたかったのは例の「埋蔵金」についてである。当欄の12月10日(月)で述べたように、これは財務省にとって分の悪い議論だったと思う。案の定、そのすぐ後にこんな報道があった。


●財融特会の積立金10兆円取り崩しを正式発表 財務省
2007年12月12日20時02分
http://www.asahi.com/politics/update/1212/TKY200712120404.html  

 財務省は12日、財政融資資金特別会計の積立金のうち10兆円を取り崩し、08年度に国債の返済にあてると正式発表した。金利変動リスクに備えて特会の総資産の10%を積み立てるとしている政令を近く改正し、積立率を5%に引き下げて対応する。財政投融資は、政府が財投債を発行して調達した資金を特殊法人などに長期固定金利で貸し付けるが、長期債の発行が増え、金利の上昇で逆ざやとなるリスクが減ったという。

 財務省は06年度にも同特会の積立金を12兆円取り崩して国債の返済にあてたが、一度限りの措置だった。今回は積立率を引き下げたため、来年度以降に剰余金が出た場合は返済に回る。


○財政融資資金特別会計は、「埋蔵金」の一丁目一番地である。ここをすかさず「見切って」きたのが、財務省の鋭いところである。逆にいえば、外為特会だの、他の細かな特会などに手をつけるのは、あんまり筋がいいとはいえない。今日の説明(あいにく、分厚い資料を会社に置いてきたので、細かな点は自信がないのだけれど)によれば、9.8兆円分の国債を返済することによって、金利のリスクを低減できたし、国債管理政策上のメリットもあったということなので、「いやあ、良かったじゃないですか。使って良かった埋蔵金」という印象だった。

○ところが民間側の某著名エコノミストから、「一般予算の国債は減るかもしれないが、その分、財政投融資で運用していた分も消えるので、これは差し引きゼロではないか。こんなことで、トータルの支払い金利が減るような説明をするのはまことに遺憾」という意味のコメントがあり、一気に分からなくなってしまった。

○かんべえなりの理解でいくと、財務省は一般予算で借金をする傍らで、財政投融資では貯金を運用をしている。これをチャラにするのは、「子会社の利益を本社に付け替えるようなもの」である。少なくとも連結決算すれば、P/L上は同じことになる。ただし貯金と借金を両建てでしているのは、あんまり賢いことではなくて、「借金返済に勝る財テクなし」である。B/Sを圧縮することができるのなら、そういう機会は見逃すべきではないと思う。

○もっともこれは、かんべえが企業会計の発想に毒されているからであって、もともとつぶれることのない政府の財政においては、「せっかく利回りが出ている貯蓄を清算すべきでない」という発想の方が正しいのかもしれない。もっとも埋蔵金を使ったことで、金利上昇リスクに備えることもできたのだし、増税に対する国民の理解を得る手続きをひとつ果たしたことになる。ついでに言っちゃうと、旧日商岩井時代に地獄のような資産リストラを体験した身としては、「本当に財政が破綻状況なのであれば、この際、どんどん清算して身軽になった方がお得だと思いますよ」と思うのである。

○今後の「埋蔵金」の使い方については、「特別会計にいくら余裕を見るべきかを慎重に考えて使う」という回答でした。財政当局としては妥当な線だと思います。「霞が関に埋蔵金はない」(与謝野)というのは事実に反しますし、そうかといって「埋蔵金は一銭残らず使え」(中川)というのも極端過ぎる考え方といえます。両者の間を取ることで、一般会計(P/L)の健全化を図ると同時に、国債管理政策(B/S)の適正化を考慮することができたとすれば、「埋蔵金論争」は実り多かったといえると思います。

○最後にちょっと番組宣伝。今年の締めくくりに、日経CNBCで「ザ・経済闘論」という番組が予定されています。12月28日(金)の午後1時〜3時の生放送。これが本年の、かんべえの仕事納めとなる予定です。

http://www.nikkei-cnbc.co.jp/program/special/keizaitouron.asp 


<12月26日>(水)

○本来ならば、誕生月の10月に受けるべき成人病検診を、今年も年の瀬が押し迫った今日になって受ける。似たようなことを考える人が多かったと見えて、今日の人間ドックは混んでおりましたな。たっぷり2時間かかってしまいました。

○来年4度目の年男となる不肖かんべえ、すでに身体のあちこちにガタが来ております。中年男の衰退は「目、歯、○○」に始まるというのは、なるほどよくいったものでありまして、老化をひしひしと感じる今日この頃。もともと低いのが自慢だった体脂肪率も、いよいよ23%と最高値を更新し、来年は危険水域入りが予測されます。

○ただし、本日は忘年会シーズンの末期ということもあり、これでいい数字が出たら大威張りして良いのではないかという気もする。なにしろ、今夜も六本木で忘年会のハシゴ(ふぐ料理+バー)。明日は赤坂でハシゴ(イタリアン+韓国)の予定。うーん、これは自業自得以外の何ものでもないですな。

○ところで、今年の年末の賑わいは、昨年以上ではないかという気がする。景気の先行きが懸念される昨今ながら、夜の街の消費動向はちょっとだけ改善しているのかもしれません。世の中にはワシのような人が多いのかな?


<12月28日>(金)

○昨晩は、会社の忘年会と、10月のソウル会議の打ち上げが両方とも赤坂であったので、ハシゴしちゃいました。そうしたら、案の定、武貞親分はソウルのみならず赤坂にも詳しくて、とってもディープな二次会に行ってしまいました。いやあ、飲んだ呑んだのんだ。最後の方はほとんど意識がなく、お金を払った記憶もない。でも今朝、財布を見ると1万円ほど減っているので、たぶん払っているのでしょう。よくまあ、あんな状態で電車で家に帰ったものであります。

○今日は起きると頭がモーロー。朝風呂に入って酒を抜こうとするも、テキメン二日酔い。重い後頭部を抱えて出社。こんなんで、日経CNBC「経済闘論」の生放送に立ち向かうのだから、われながらいい度胸である。とっても久しぶりに伊藤洋一さんと会ったのだけど、残念ながら出演するパートが違うので「絡み」がなかった。残念。(あの二人を組ませると危ない、局側に思われているのかもしれない)

○放送が終わってから、日経本社内でテレビスタジオと同じ階にいるT論説委員を呼び出してお茶。対内証券投資(いわゆる外国人買い)が、今年7月末からずっとネット売り越しになっていて、総額3兆円程度になるとのこと。2005年に「9・11総選挙」で日本株を買った人たちが、今年の参院選では日本株を売っている。「改革できない日本は売り」という、非常に分かりやすい展開ですな。ということで、今日の大納会も下げて、2007年は5年ぶりに「年間で下落」となりました。

○テレビ東京恒例の忘年会へ。なんと今朝の「モーサテ」に出ていたぐっちーさんも来ていた。ジュースを片手に、いろいろ立ち話をした中で、面白かったのが「金融商品取引法」関連のネタ。

●銀行で投信を買おうとすると、説明を聞くだけでたっぷり2時間かかる。

●70歳以上の人は、一人では株取引をしてはいけなくなった。福田首相は71歳だから、誰かがついていないと株が買えない。

●FXの口座開設が非常に難しくなってしまったので、来年は主婦による外貨投資が減って、その分、円高になるだろう。

●金商法で銀行は大騒ぎをしているが、証券会社は「別に今まで通り」で対応をしている。証取法で叩かれ慣れしているからだろう。

○うーん、これって笑うところなんでしょうか。

○会社に戻ると仕事納めで、あちこちで酒盛りが始まる。うー、お酒はもう沢山だあ。と、こんな感じで2007年最後のWorking Dayが過ぎていく。


<12月30日>(日)

○年の瀬を迎えているのですが、今年はアイオワ州党員集会が年明け3日に迫っています。つまりあと4日しかない! ということで、以下、アイオワ州の最終状況をチェックしておきましょう。

○まず民主党側から。

http://www.realclearpolitics.com/epolls/2008/president/ia/iowa_democratic_caucus-208.html#polls 

○12月中旬には、オバマがトップに立ってヒラリーの心胆を寒からしめましたが、ちょっとスパートのタイミングが早かった。むしろここへ来て勢いが出てきたのはエドワーズである。99あるというアイオワ州すべての郡を訪問したというから、力の入れ方が他候補と違う。さらに2004年もここで好成績を残しており、戦い方を心得ている。

○アイオワはコーカスであり、「誰を選ぶべきか」という議論を2〜3時間もやったあとで、誰を支持するかを皆の前で発表しなければならない(共和党は秘密投票)。この特殊性から、過去に何度も番狂わせが生じている。1位エドワーズはあり得ない話ではない。というより、ヒラリーやオバマが3位になっても、ちっとも驚くべきことではない。

○次に共和党側。

http://www.realclearpolitics.com/epolls/2008/president/ia/iowa_republican_caucus-207.html#polls 

○ちっともワケ分からんぞ、という混戦模様。ハッカビーとロムニーが激しい先陣争いをし、トンプソンとマッケインが少し離れて後を追う。ジュリアーニがこの州を捨てたのは賢かった。なにせアイオワ州は、「アイツ、ニューヨークから来たんだって」と聞いた瞬間にそっぽを向かれるようなお土地柄ですので。まあ「マジソン郡の橋」と「フィールズ・オブ・ドリームス」ですから。

○ハッカビー旋風がどこまで続くかは、準備不足もあってちょっと「?」です。ロムニーの1位通過の方がありそうですね。むしろ注目は誰が3位になるか。トンプソンもマッケインも、ここで3位を逃すと次以降が苦しくなる。しかもリバタリアンのロン・ポールが意外と人気がある。普通なら泡沫候補で終わりそうなところが、ネット上で支持が集まって「究極のロングテール候補」などと呼ばれている。トンプソンやマッケインがその後塵を拝することになったら目も当てられない。共和党にとっては、アイオワ州の戦いは「生き残りゲーム」の様相を呈し始めている。

○かんべえはマッケイン乗りなので、このアイオワ州を何とか3位で乗り切り、次のニューハンプシャー州予備選で「復活神話」再現となることを期待しております。2000年の選挙では、マッケインはニューハンプシャー州でブッシュを破り、あわや大番狂わせを演じそうになりました。しかしブッシュもさるもの、次のサウスカロライナ州予備選で宗教的右派の票を取り込み、党の指名を確実なものにしたのでありました。

○アイオワ州はあくまで緒戦ですから、これですべてが決まるわけではない。ここからニューハンプシャー州経由、2月5日のスーパーチューズデーに向けて、どんな物語が生まれるかという点に注目しなければなりません。「もうヒラリーで決まりなんでしょ?」などと言う素人さんは、軽く無視して差し上げましょう。

○ちなみに、この世界の定番、クック・ポリティカル・レポートでは、12月19日時点で以下のようなご託宣をしている。

Today, Charlie Cook givevs Mitt Romney a 50 percent chance of winning the GOP nomination, Rudy Giuliani and John McCain each a 20 percent chance and Mike Huckabee a ten percent chance. On the Democratic side, Charlie gives Hillary Clinton a 60 percent chance at winning the nomination, Barack Obama a 30 percent chance, and John Edwards a ten percent chance. Democrats continue to have a 60 percent chance of winning the White House.

●共和党:ミット・ロムニー:50%、ルディ・ジュリアーニ:20%、ジョン・マッケイン:20%、マイク・ハッカビー:10%

●民主党:ヒラリー・クリントン:60%、バラク・オバマ:30%、ジョン・エドワーズ:10%

○ただし共和党対民主党の確率は4対6。さすがはプロ、という読み筋であります。






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by Tatsuhiko Yoshizaki