●かんべえの不規則発言



2022年6月 






<6月1日>(水)

この記事がとっても面白い。日経Book Plusのインタビューで、応えているのは小泉悠さん。よくあるタイプの読書案内なんですが、そこはさすがに小泉さんなので、ひとつひとつの本に関するウンチクがとっても深いのである。

〇実は個人的に受けてしまっている部分があって、それがこの写真のネクタイなのである。これ、たぶん5年前にモスクワでワシが進呈したネクタイだと思う。

2017年秋の日露専門家会議の際に、小泉さんと初めてお会いしたのである。そのとき小泉さんが、「しまった、ネクタイを忘れてきたあ!」と慌てていた。別にノーネクタイで会議に出てもどうってことはないのであるが、ロシアのインテリゲンちゃんたちは皆さんネクタイをしているので、ちょっと気遅れしたのかもしれない。そこで、「じゃあ、これをあげよう。おっ、似合うじゃん」などというやり取りがあったのである。

〇ときは流れて、小泉さんは東大先端研の専任講師となり、ウクライナ戦争とともに大ブレイクして、今ではTVに出ずっぱりみたいな状態になっている。そこでワシ的には、こんな講演会のネタを開発したのである。


「最近、よくテレビに出ている小泉さん、昔、モスクワでネクタイを差し上げたことがあるんです。そのうち、あのネクタイをした小泉さんがテレビに出るんじゃないかと、ひそかに楽しみにして見ているんです」


〇先月、とっても久しぶりに小泉さんに会ったところ、彼は真顔でこんなことを言うんです。


「いつぞやのネクタイ、借りっぱなしになっていて申し訳ございません」


〇いやいや、あれは差し上げたものだから、気にしなくていいですよ。どんどん使ってください。私はまた、テレビであのネクタイを見たいな〜と思っているくらいですから、と言ったら、こんな返事が返ってきた。


「いや、それだったら、実はもう2〜3回は使ってますけど」


〇そりゃあ、そうだろう。ワシだってさすがに全部見ているわけじゃないし。たまたまこのインタビュー記事で、懐かしい柄を発見してしまった。どうってことはない、普通のネクタイなんですけど、なんだかとっても嬉しいんですよねえ。


<6月2日>(木)

〇以下は私的なメモ。


*人が死ぬということは大事件である。偉大な人が死ぬと時代が変わる。力のある人が死ぬと、国境線や政権や株価など、いろんなことが変わる。そうでない人が死んでも、周囲の景色が変わる。

*誰かに死なれて、初めて気づくことがある。ああっ、あれはそういうことだったのか。ええっ、そんなの聞いてなかったぞ。しまった、俺は何という恥ずかしいことを・・・・みたいなことが判明する。もちろんすべて手遅れである。

*ゆえに誰かが死んだときは、「こんなことをしたらかえって迷惑だろう・・・」などとは考えずに、自分ができる最大限のことをすべきである。そうしておけばもっとも後悔が少なくて済むし、迷惑をかけた相手もたぶん許してくれる。

*もうひとつ、誰かが急に死んだときに、「ああ、これを伝えておけばよかった」と思うことがある。もちろん間に合わないのだが、そういうのはおそらく、死んだ相手も似たようなことを考えているんじゃないだろうか。うん、とりあえずそういうことにしておこう。


〇以上、余計な詮索は不要である。明日は「モーサテ」に出没します。


<6月3日>(金)

〇朝に「モーサテ」に出た日は、なんとなく1日が気の抜けたようになる。と言っても、誰かに責められるような話ではないと思う。午前3時起きなんだし。

〇ということで、後はなるべく雑用に当てるのだが、その合間にふと読み始めた『外交』の最新号が面白い。よくよく見たら、これはネット上で無料公開中ではないか。外務省、なかなかに太っ腹である。

〇パラパラと読み始めるのだが、いい論文が多い。全部を読んだわけではないので、そこんとこよろしく。


「戦後」秩序 再構築の条件(岩間陽子) とにかく格調が高い。こういう議論を待っていた。巻頭論文とはこんな風にあるべき。


核使用を防ぐために必要なこと(高橋杉雄) 最近、TVで人気大爆発の防研室長。なるほど核抑止とはこんな風に考えるのか、と勉強になります。


ウクライナ戦争は米中新冷戦をどう変えるか(松田康博) 中国の眼から見ると事態はこんな風になっている。なるほどウクライナ情勢は中台関係を変えつつある。


〇この雑誌、時間をかけて読む値打ちがあります。田中明彦編集長はJICA理事長就任で退任されるようですが、引き続きいい論考を送り出してほしいと思います。


<6月4日>(土)

〇先日、BS-TBSの「報道1930」を見ていたら、渡部恒雄さんがこんなことを言っていた(5月31日分)。


「今のロシアとウクライナは、暴走している2台のクルマみたいなもの。こういうときは高速道路のOff-Rampみたいに、降り口を作ってあげなきゃいけない。2台のクルマがすぐに高速道路を降りられる保証はないけれども、何度でも辛抱強く用意する必要がある」


〇あれ、いい言葉ですねえ、とナベさんに言ったら、「いろんな人に受けちゃってるんですけど、Highway Off-Rampってのはこういうときによく使われる表現なんで、海外の新聞ではよく出てくるんですよ」と教えてくれた。

〇なーるほど、"Off-Ramp, Ukraine"で検索してみると、たくさん引っかかる。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」とはまさにこのこと。後でグーグル翻訳して読んでみよう。


●Finding an Off-Ramp in Ukraine (The National Interest)


●Russia-Ukraine ‘off-ramp’: potential plan drafted by Cambridge peace negotiator (University of Cambridge)


●Is this Putin’s ‘off ramp’ out of Ukraine? (The Spectator)


〇それではどういう「出口」であれば、ロシアとウクライナは高速道路(戦争状態)を降りられるのか。

〇まず、ウクライナ側としては、@「2月24日以前の国境に戻す」というチョイスがあり、その場合はクリミアと東部2州の一部が戻ってこない。A「クリミアも取り戻せ」という強硬論も当然、あるところだろう。もっともここ数日の動きを見ると、ロシア軍が攻勢に出ているので、B「まずは停戦して、それから交渉を」という和平論もあるところ。西側の応援団としては、@がアメリカとカナダ、Aが英国とポーランドとバルト諸国、Bが独仏伊、といったところになる。G7の一員、日本はここでどう判断しますかね?

〇問題はロシア側である。昨日行われた日本記者クラブでの兵頭慎司さんの記者会見によれば、「プーチン大統領は東部2州の完全制圧を諦めきれないだろう」とのこと。そうでないと、国内への説明がつかない。そしてルハンスク州はほぼ制圧したものの、ドネツク州は「あと4割」が残っていて、ロシア軍がそこまで掌握することはけっして容易ではない。今みたいな猛攻撃は、とてもではないが長くは続けられないのだそうだ。

〇何より今のロシア軍には、いろんな構造問題がある。兵が足りていない、指揮命令系統の混乱、多くの犠牲を出してしまった、などである。それでは総動員令が出せるかと言えば、5月9日にできなかったものを、今からできるとは思えない。逆に言うと、プーチンさんはさすがに今の状況が飲み込めているらしい。だったら開戦の決断はなんだったのか。あの頃は長テーブルを使っていたけれども、やっぱりコロナで判断がくるっていたのか。

〇戦況が長期化すると、ロシアにはほかにもいろんな問題が出てくる。戦費は足りるのか、世論の動向はどうか、2024年大統領選挙の前哨戦は来年秋には始まる、などなどと考えると、やっぱり年内のどこかでOff-Rampのチャンスがある感じだろうか。

〇などと考えていたところ、プーチン大統領はトルコを訪問してエルドアン大統領の停戦協議に乗るらしい。最初のOff-Rampはイスタンブールということになりそうだ。しかるにトルコはまがりなりにもNATOの一角。にもかかわらず、ロシアから兵器を買ったり、ナゴルノ・カラバフ紛争ではアゼルバイジャンの側に立ち、お前は一体どっちの味方なんだ!てなところがある。

〇このことを称して、ナベさんは「トルコ=峰不二子説」を唱えている。しょっちゅうルパンを裏切るけれども、ルパンはあっけなく「ふ〜じこちゃん」を許してしまうし、気がつけば彼女は仲間に戻っている。まあ、地の利があまりにもセクシーなものだから、誰も本気で敵に回せないといったところだろうか。

〇エルドアンのホンネは、「早く停戦して、またロシアから大量の観光客が来てくれないと、リラ安のせいで経済が回らない」みたいなことではないだろうか。まあ、動機が不純なことを咎める必要はない。大事なのはOff-Rampを用意することであります。


<6月5日>(日)

〇今日は町内清掃の日である。昔はダービーと重なるから困ったものだと思っていたのだが、最近は安田記念と重なるようになった。町内会の役員における競馬好きの比率が上昇したせいだろうか。

〇掃除のメインは「ドブさらい」である。一昨年はコロナでお休みしたために、去年は膨大な汚泥がたまっていて作業が大変だった。今年はそれに比べれば楽ちんである。やっぱり、こういう作業は休んじゃいけません。

〇いちおうコロナだということで、皆さんマスクはしているのだが、「密にならないように」的な配慮はほとんど忘れられている。まあ、正常化が進んでいるのだから結構なことである。そもそもこれで3年、ウチの町内で感染者って出たのだろうか?

〇時節柄、打ち上げのようなことはない。昔はそれこそ、昼前に一同でビールを飲んでいたものなのだが。高齢者が多いので、そこはなかなか難しいですなあ。

〇清掃は午前9時からということになっているのだが、吉例により8時半には皆動き出している。どうしてこんなにモチベーションが高いのよ、とかねがね不思議であったが、これは集会所に近いうちの周囲だけの現象であるようで、他の班ではちゃんと9時からやっているらしい。でも、来年もきっと8時半からやっちゃうよなあ。経路依存性、おそるべし。


<6月6日>(月)

〇この秋の政治日程はこんな感じになるのですな。


米中間選挙(11/8)


G20サミット(インドネシア・バリ島、11/15-16)

ASEAN首脳会議、東アジアサミット(カンボジア、月内)

APEC首脳会議(タイ、11/18-19)


〇G20サミットと、東アジアサミットと、APEC首脳会議が3連荘になりそうなんですな。この3つの会議は、「日・米・豪・韓・中・ロ・インドネシア」の首脳が重なるわけですが、果たしてここにプーチン大統領が来るか、その場合はアメリカなどがボイコットするのか、という問題が生じます。

〇インドネシアが面白い動きをしていて、G20にはロシアはもちろんウクライナの代表も呼ぼうとしている。4月に行われたG20財務相会合では、本当にウクライナの財務大臣が来ている。ひょっとするとバリ島でプーチンとゼレンスキーが顔を合わせるかもしれない。これはインドネシアなりに用意している"Off-Ramp"ということになる。

〇まだまだ先の話ですが、東南アジアで行われる3つの国際会議、誰と誰が顔を出すのか、まことに興味深いところであります。


<6月7日>(火)

〇ボリス・ジョンソン首相が与党内の不信任投票を生き延びました。与党議員数359人のところ、信任が211、不信任が148、かろうじてクリアしましたが、党内の4割強が不信任という事実は重そうです。

以前にも書いたことがありますけど、彼は自分のことを「許されキャラ」だと思っている節がありまして、実際、独特の愛嬌がありますよね。ユーチューブで話題になっているのは、「紅茶をどうぞの映像」で、まあ、こういうのが上手な人なんです。それから、ウクライナ情勢に関するこの発言なんかも、いかにもわかりやすくて、庶民政治家という感じです。

〇ただし、実際のジョンソン首相はいい家柄の出だし、オックスフォード卒だし、いかにも英国の政治家なのである。でも、言動は不規則で、私生活も破天荒で、あの変な髪形も含めて「ワルぶっている」ようなところがある。「カワイイやつじゃん」という気もするが、「アイツだけは許せない」と思っている人も増えている。

〇そもそも今回の「パーティーゲート」(コロナでロックダウン中に、首相官邸内ではしょっちゅうパーティーを開いていた)は、ルールを決めた人が「俺は特別だからいいの」と振舞っていたことが問題なのである。いかにもボリスがやりそうなことなんで、ここは必死でお詫びするしかないのであるが、「またかよ」という感もある。

〇しかるにもっと悩ましいのは、保守党内にボリスの代わりが見当たらないことである。ジョンソン政権の支持率は29%。そして労働党もあいかわらず冴えないのである。どうするんだ英国政治は。この大変な時期に、まことに困ったことなのである。


<6月8日>(水)

〇先日、さるところで「経済脳と安保脳」みたいなお話をしていたところ、「日本企業も昔の経営者の方が偉かったし、国家意識があったのではなかったか」と痛いところを突く質問を頂戴してしまった。

〇そこで咄嗟に、こんなお答えをしたのである。

〇昔の日本企業には、「系列取引」という習慣がありました。系列会社であるからというだけの理由で、同じ製品やサービスに対して、よそより高い値段で支払っていたわけです。今ではさすがに見かけなくなりましたが、この系列取引という制度、経済安全保障という観点からすれば、まことに優れたリスクヘッジだったと思うのです。

〇つまり系列企業には「泣き」が通じるわけです。そもそも普段から高い口銭を払ったり一緒にゴルフをしたりしているので、「ウチとオタクの間じゃないの。何とかしてよ」と言われると、頼まれた方も断れない。それくらい昔の日本企業はウェットだったのです。今風に言えば、サプライチェーンにリダンダンシーがあったから、非常時でも融通が利いたのである。

〇この「ケイレッツ―」は、1991年頃のアメリカでは「日本の不公正慣行のひとつ」と見なされ、ジャパンバッシングのネタにされたこともある。ところが1990年代に「株主資本主義」が全世界的に浸透すると、たちどころに消え去ってしまった。そりゃそうだ。他所と同じ製品やサービスを、「系列企業だから」と言って高い値段で買ってたら、株主様に叱られますわな。

〇ということで、透明だけど余裕のない取引が一般的になったので、今の日本企業には「いざ」というときの備えが乏しくなっている。だったら系列取引を復活すべきかと言えば、それはやっぱりあり得ない話だと思います。例えていえば「政治家が小粒になったから、中選挙区制に戻せ」みたいな話です。

〇今日はたまたま神戸製鋼さんの社友会の皆様を相手に、リモートで講師を務めたのでありますが、昭和の頃の日商岩井ではこんな風に教わったものです。「神戸製鋼と帝人さんは親戚みたいなものだ」。理不尽なことも多かったけれども、あれはあれで古き良き時代でありました。


<6月9日>(木)

〇今朝の産経新聞「正論」蘭に寄稿しました。


「2024年には世界経済明るく」


〇月曜日に入稿して木曜日に掲載というのは、この媒体としては早い方なんですが、何度も書き直したくなって往生しました。変化が速いですからなあ。しかるにしょっちゅう変わるようでは「正論」とは言えないわけでして、そこはどこか「デーン」としていなければなりませぬ。似合わないけど。


<6月10日>(金)

〇ハッと気が付いたら、うちの近所にはあじさいを植えている家が多い。それも白いやつ、赤いやつ、青いやつ、紫色のやつとさまざまである。それが雨に濡れているのは、なかなかに風情のある風景ではあるまいか。

〇柏市から流山市にかけては、なぜかあじさいの名所が多いです。梅雨のうっとおしい時期に眼を楽しませてくれて、しかも比較的長く咲いていてくれる。あじさい、良いではないですか。こんなことを言い出すのは、ワシらしくないという気はするけれども。


<6月12日>(日)

キネマ旬報柏シアターにて『ドンバス』(2018)を見る。いや、本来であれば『トップガン〜マーヴェリック』を観なければならぬのであるが、今日は小泉悠先生が劇場に来てトークショーをしてくれるというのだから、地元民としてはそっちを優先しなければなるまい。

〇この映画館、かつては普通に繁盛していた駅前の映画館なのだが、シネコン全盛時代とともに寂れてしまい、たしか2010年頃に閉館してしまう。それを名画座みたいな形で営業しているのだが、普段は閑散としていることが多い。今日はどれだけ入るのだろう。イズムィコ先生の人気はいかばかりか。

〇今朝の8時45分から指定席券販売というから、念のために8時37分に映画館に到着してみたところ、既にワシの前には36人の行列ができていた。むむむむむ。この映画館が満席になるのは、確か1998年の『タイタニック』以来ではあるまいか。小泉人気、おそるべし。

〇映画は2014年以降のドンバス(ウクライナ東部2州)で起きていることを淡々と描いている。そこは、もう不条理そのものの世界である。しかもどこからどこまでがフィクションで、どこから先がリアルなのか境界がわからない。明らかに演技の部分もあるが、懲罰兵を皆でいたぶるあたりはどう見てもガチでやっているとしか思えない。

〇地下シェルターの過酷な生活ぶりとか、目の前でクルマが爆破されたときの衝撃感とか、人民政府の理不尽な要求に屈しなければならない状況とか、「ああ、これは本当にこういうことが日常的に起きているんだな」ということは嫌でもわかる。ただし、「俺はいったい何を観てしまったんだ?」というモヤモヤ感が残る映画である。

〇まあ、そこは映画が終わった後に小泉悠さんがいろいろウンチクを語ってくれるのを聞くと、かなりスッキリした。そうでなかったら、あまりお勧めできる映画ではないわなあ。だって悪夢を見そうなんだもん。

〇質問のチャンスがあったので、「ご近所のご出身とのこと、柏から松戸にかけて好きな場所はどこか?」とお尋ねしてみた。これで「ホワイト餃子」とか、「ボンベイのカレー」みたいな返事があればネタになるなあ、と思ったのだが、イズムィコ先生の答えはさすがであった。


「六実の出身なので、海上自衛隊下総航空基地が近い。上空を飛ぶP3Cの音を聞くと懐かしく感じる」


〇さすがは軍事オタクなのであった。そういえば海自OBの川村提督は、よく成田空港まで利根川沿いをご一緒する間に、「昔はよくこの上空を飛んでたんだよねえ」と言っておられたものである。幼き日の小泉少年は、それを見上げていたのかもしれぬ。ええ話やないか。


<6月13日>(月)

〇本日、お昼に会社の外へぶらりと出た際に目撃したもの。

〇その1。はとバスの観光ツァー。ただしインバウンドではなく、ほとんどは日本人観光客で、都民割りを使った方々ではないかと思いました。まあ、いいんです。今日はお天気も良かったので、バスの2階から見る景色は格別であったことと拝察します。

〇その2。「吉野家」と「はなまるうどん」の前の長い行列。サラリーマンが、早くもランチ代を節約し始めた気配がある。この間に、ワシが秘かに愛用していた「仙台牛タンの店」が閉店しておった。さびしいのう。

〇経済活動というものは、常に半径100m以内で観察できる。データを見ているだけでは足りないものがあります。


<6月14日>(火)

〇新潟エネルギー市民懇談会の講師で新潟市へ。人口80万人、日本海側随一の大都会である。信濃川の河口がまことに雄大である。ここからだと、佐渡島って本当に目の前に見えるんですなあ。

〇コロナのご時勢なんで、なかなか人が集まる会合もできず、今回は久しぶりに開かれた由。「席を立っちゃダメ」とか、「ビール注いじゃダメ」などのお約束があるとはいえ、いちおう懇親会もついている。ありがたいことである。新潟のお酒をいただいちゃいました。

〇今年の夏は花火大会も復活するとのこと。新潟や長岡の花火はきっとド迫力でしょうなあ。そういえば、ワシはまだ新潟競馬場と月岡温泉に行ったことがない。まあ、入場制限がなくなってからでいいと思うけど。

〇ちょっとずつ喪が明けつつある日本列島。お先にいろいろ尋ね歩くのは役得というものでしょう。明後日は奈良に出没します。


<6月15日>(水)

〇今日で通常国会はおしまい。たちどころに参院選モードとなりますが、以下はヒラヒラとどこからか舞い降りてきた数字。


自 41+19=60

立 12+6=18

維 4+9=13

公 7+7=14

(以下略)


〇要は与党が圧勝の勢いでありまして、と言っても違和感はまったくありませんわな。願わくばもうちょっと野党第一党が頑張って、それに失望した有権者がわけのわからない少数政党に雪崩れ込むことがない方が望ましいと、個人的には考えるものであります。

〇そこで気になるのは、明日になると衆院区割り「10増10減」案が政府に勧告されるらしい。東京都の選挙区は5つも増えるから、いったいどんな形になるのか、都内選出の現職議員さんたちは戦々恐々と言ったところだろう。ゲリマンダーっぽいことも、きっとあるのでしょうなあ。

〇そこで気になりますのは、参院選で自民党が圧勝した場合、ちゃんとこの区割りを実行するんでしょうかね。衆院議長は極めてネガティブでありましたけど、くれぐれもそれがネグられることがないように望みたいものです。

〇次の更新は土曜夜or日曜朝となりますが、よろしくご了承のほどを。


<6月16日>(木)

〇産経「正論」懇話会で奈良市へ。こちらに呼ばれるのは2012年、14年に続いて3回目である。だから記憶はあるけれども、とっても久しぶりなのである。

〇京都駅から奈良駅へのJR線が、まことにのどかな風景である。思わず寝落ちしてしまう。考えてみれば、奈良は水が潤沢にあるわけではない。交通の要所というわけでもない。防衛に格別有利だったとも思われない。それでもこの地にはかつて首都がおかれて、「やまとは国のまほろば」と呼ばれていたのであった。なぜそうなったのか。タモリさんに解き明かしてもらいたいものである。

〇ちなみに奈良行きには、京都駅から近鉄線を使う方が便利であるらしい。関西の「私鉄優位」の感覚は、関東在住者にはなかなか慣れないものなのである。(実際に、その翌日のJR西日本は接触事故でダイヤが乱れまくっていた。これ、首都圏だったら皆が確実に殺気立つパターンなのだが、関西の人たちは概して落ち着いているようであった。JRの東西格差って、意外と大きいのね)

〇会場は、たいへんお懐かしやの奈良ホテルである。木造建築の由緒ある建物で、何べん来ても、いいところであります。皇族方はもちろんのこと、アインシュタインやチャップリンも泊ったし、谷崎潤一郎や三島由紀夫が小説の舞台にも使っている。

〇「有事の世界経済を読む」というお題でお話をさせていただく。当「正論」懇話会もコロナ下でご苦労が多かったようであるが、今宵は懇親会もちゃんと行われる。いやはや、一昨日の新潟もそうだったけれども、当たり前の世の中が戻りつつあることに励まされる思いがする日々であります。

〇ところで、やっぱり高市さんは地元では人気があるのね。そこはいちおう「産経新聞」ファンの集まりでもありますから。


<6月17日>(金)

〇奈良ホテルは、ご当地の歴史的建造物から徒歩圏内にあるので、朝食後にぶらりとホテルの外へ出てみた。写メを撮りながらの散策である。

〇すぐ近くが奈良公園である。鹿がいっぱいいる。まったく人を恐れない。なんでも1000年前から放し飼いになっているらしく、むしろ人の方が遠慮しなければならない。フンも落ちているから、お足元にはくれぐれも注意が必要である。最近はお客が減って、名物の鹿煎餅を買ってくれる人も減ったはずなのだが。

〇以前に来たときは、興福寺に立ち寄って国宝・阿修羅像をじっくり見ることができた。今回は少し歩くけれども、東大寺を目指してみることにする。奈良国立博物館(もちろんまだ開館していない)を通り過ぎて向かうと、あっけなく20分程度で到着してしまう。

〇大仏様を見るのは、中学生の修学旅行のとき以来である。そのときの印象は、「たいしたことねえなあ」であった。まあ、ガキの時分であるし、ガキが大勢集まって物見遊山をするわけだから、修学旅行で何か人生で有意義な経験ができる、なんてことは滅多にないものだ。そもそもほとんど覚えていないくらいである。逆に、「あのとき行ったから」と思い込むことで、後半生に足が遠のくとしたら、まことにもったいないことと言えよう。

〇見ればまだ朝8時にもかかわらず、ちゃんと修学旅行が来ておる。聞けば東大寺は、午前7時半から開館しているのだそうだ。立派なものである。観光都市・奈良にとっては、この修学旅行こそがメシのタネである。そして今月後半からは、インバウンドも少しずつ回復するだろう。逆に言えば、あなたたち今までよく耐え忍んできましたねえ、と頭が下がる世界なのである。

〇大人になってから見る東大寺は、やっぱり違って見える。南大門の柱の太さにまず感心する。こんな巨木、もうこの国には残ってないんじゃなかろうか。2体の仁王像も、あっぱれな芸術作品である。そしてこの広々とした空間といい、奥に鎮座する大仏様といい、まことに立派なものではないか。なんにせよ、700年代の国家プロジェクトがちゃんと残っている、というのは幸せなことであろう。

〇もっともこの大仏様、地震で頭が落っこちたり、平重衡に焼き討ちに遭ったり、松永弾正久秀の乱に遭ったりで、歴史の半分くらいは復興プロセスであったらしい。今日残っているのは江戸時代に再建されたもので、日本の国は古いものが単に残っているというよりは、皆が古いものを大事にして再建してきた、ということなのだろう。

〇などと朝から歩き回ったら一気に電池が切れてしまい、奈良国立博物館の9時半開館を待つ気力も失せてホテルに帰還する。今日はこれくらいにしといてやろう。つくづく大仏様は偉大なのである。


<6月18日>(土)

〇本日は富山市である。昨年に引き続き、北日本新聞社の平成広徳塾という講座の講師を務める。

〇これで今週は新潟市、奈良市、富山市と3か所を回ったことになるが、どこへ行っても「コロナは終わっているな」の感が強い。一応皆さん、義理堅くマスクはしているけど、恐怖感はかなり薄れておりますなあ。

〇今回、富山駅とその周辺を見て感動したこと。


*富山駅の北口のロータリーが完成した。2015年の北陸新幹線開通から、ずいぶん遅れたものだが、こうして南北通り抜け可能な駅ができてしまうと一種、壮観である。

*富山市の南北を貫くライトレールは、以前より10円値上がりして210円になっていたけれども、SUICAで支払いができた。

新しい駅ビルが完成して、商業施設MAROOTがオープンしていた。5階から上はホテル「ヴィスキオ富山」というらしい。

*これで駅周辺のホテルは、7軒くらいになったのかな? 富山市内のホテルには規則性があって、南北に作られていることが多い。これは立山連峰が見える東側の部屋の料金を高くするためである。逆に東横インは東西に伸びていて、たぶん全室同じ料金体系になっているのだろう。

*富山駅前に「二郎インスパイア系」のラーメン屋ができていた。あの「富山ブラック」に、「野菜マシマシ」や「ニンニク入れますか?」が加わるとは。

*その富山駅前で、今日は日本維新の会が集会をやっていて、吉村大阪府知事が来ていた。おそらく自民党の壁は厚いと思いますけども・・・・。

*富山駅構内に、「ストリートピアノ」が置かれていた。たまたまどこかの中年男性が、譜面もなしに聞いたことのない曲を弾いていた。とても富山とは思われない光景であった。


<6月19日>(日)

〇「平成広徳塾」というのは、毎週土曜日に行われて、講師が2人ずつ、という建付けになっている。その中には富山県知事とか、地元の財界人とか、まあ、いわゆる「偉い人」が多いのです。ところが昨日は、ワシともう一人の相方が作家の山内マリコさん(富山市出身)であったのです。

〇向こうが先だったので、こちらは少し遅れて現地に到着して、途中から話を聞き始めた。これが無茶苦茶に面白いのである。要は「小説(ストーリー)におけるジェンダー」の話なんだが、コロナ下のここ2年くらいで読者の意識がガラリと変わってしまった、という。ワシのような者でさえ、それはなんとなく感じているところである。

〇『あのこは貴族』という彼女の小説が世に出たとき、出版社でさえ理解してくれず、ごくありきたりな三角関係と、地方出身女性のコンプレックスの物語として売り出された。それが映画化されたときには、ちゃんと「女の友情の物語」として受け止められていた。観る側は、ちゃんとわかってくれたのである。

〇いや、悪いけどあたしゃ彼女の本も映画も知らないし、たぶんこの先も観ないと思うけど、凄い説得力だなあ、と感じたのである。2014年に『アナ雪』がヒットした頃から、物語の中の男女関係って劇的に変化してますよね。日本みたいに保守的な社会であっても、今は少しずつ不可逆的な変化が進行中であって、そういうときには「ヒットする物語」みたいなものが真っ先に変化する。それに最初に気づくのはクリエイターなんでしょうな。

〇その反面、ワシの内心は「ズルい、ずるいよ!」という声を上げている。だって作家が、自分の創作物のヒットという余人には窺い知れぬ話をネタに、こんな面白い議論を展開されてしまっては、まったく反証不可能ではないか。いや、それ以上にこの後に、「ウクライナ戦争と国際情勢」とか、「インフレ下の世界経済」というありきたりなネタを語る予定のワシが困ってしまうのである。だいたい聞き手は富山県内の若手社員たちなのだから、「社会の変化とジェンダー」の方がはるかに身近な話題なのである。

〇控室で、ちょっとだけ山内さんと話ができた。「女性の友情と言えば、『新エヴァ劇場版』のミサトとリツコの関係は良かったですね」と言ってみたところ、「庵野監督が変わったのは、安野モヨコの存在が大きい」というまことにヲタな返事が返ってきた。今になってWikiを見てみたら、彼女は(庵野監督が出た)大阪芸大芸術学部卒だったのですね。いやはや、まことに失礼いたしました。

〇ということで、昨日はとってもやりにくい講義をやる羽目になってしまったのだが、こんな風に新しい視点が得られてしまうのであるから「儲けた!」という気もする。現代ニッポンにおける「物語の変容」というネタ、まことに面白そうじゃありませんか。


<6月20日>(月)

〇『ゴールデンカムイ』30巻を読んでいる。物語はいよいよラス前、カムイの金塊をめぐる争奪戦のクライマックスが始まっている。

〇最終決戦となると、いよいよ光り輝くのは土方歳三である。なにしろ彼は函館の戦いで死んだはずだったのだ。この物語においては、彼は2度目の五稜郭の決戦を戦っている。すばらしいではないか。

〇その分、主人公たる不死身の杉元とアシリパさんが霞んでいるように見える。まあ、最終巻に備えているのだと思えばよろしい。鶴見中尉でさえも精彩を欠いているように見える。彼はやはり知将タイプなので、戦闘があまり似合わない。

〇この間に、オールスターのわき役陣が次から次へと落命していく。惜しい、惜し過ぎるぞ。とはいえ、物語としてはやむを得ない展開である。いよいよオーラスを残すのみ。最終巻が出るのは来月かな?


<6月21日>(火)

〇今日はお昼に中小企業の社長さんの集まりに出かけて講師を務める。最近、そういう会合が急速に増えているというか、「脱・コロナ」のお陰で復活しつつあるので、こういう機会の楽しさを思い出しているところである。

〇日本の中小企業の社長さんたちは、社員数が10人であれ500人であれ、あるいはどんな業種であれ、一家を率いている人たちにはどこか普通の人とは違う雰囲気があるものだ。今日、お目にかかった社長さんたちも、たぶん立派に社員の生活を背負っている人たちなのだと思う。そういう人たちが、貴重な時間を割いてワシの話を聞きに来てくれるのは、まことにありがたいことと言えよう。

〇その一方で、最近ときどき心配になるのは、大企業の社長さんで「これはないだろう?」と感じるような人が増えていることだ。いや、テレビなどでお見掛けするだけで、実物を知っているわけではないのだが、経営再建中の某大企業のトップなどは、どうにも自信無げで見ているだけで心配になってくる。たぶん自分が社長になるなどということは、100%考えていなかった人が、たまたま成り行きで社長にされてしまったのではないだろうか。

〇ワシも多少は知っているけれども、大企業の人事はそんなに大きな間違いはしないものである。部課長から執行役員くらいまでの人事は、大方が妥当であり無難である。ところが社長人事だけは事故がつきものだ。特に不祥事が連発して、事業は大リストラを迫られて、ハゲタカ外資にも狙われて、となったら、ついつい「選んじゃいけない人を選んでしまう」こともあり得るのではないか。大丈夫かなあ、あの会社。

〇と、こんな風に人を見かけだけで判断するのは邪道であるし、最近では「ルッキズム」と言って偏見の一種として非難を浴びるのかもしれない。とはいえ、他に情報がない場合は、他人を見かけで判断することは、けっして馬鹿にならぬものである。とりあえずワシが経済団体職員をやっていた1990年代中頃の日本企業には、「風圧」を感じさせる社長さんが一杯いたことを懐かしく思い出している。

〇その点、今月の日経新聞「私の履歴書」の矢野龍さんなどは、個人的にも存じ上げていて、「これぞ大社長!」と手放しで言える人なので、読んでいて非常に楽しい。矢野さんは、日本ニュージーランド経済人会議の会長を10年くらい務められているので、その話もきっと出てくるだろう。月末までの残り9日間がまことに楽しみなのである。


<6月22日>(水)

〇今日が公示日で、参議院選挙の幕が切って落とされました。やっぱりご近所の掲示板にポスターが貼られると、「選挙が来たなあ!」という気になってくる。もっともこのポスターの数が異様に多かったりするので、「参議院選挙って真面目にやっとるのか?」と言いたくなるところもある。

〇まず政党の数が多すぎる。いやもう、「多様な民意」はいいから、もうちょっと間引きしてほしい。どうみても社会的意義を終えている政党、おふざけとしか思えない政党、次の選挙までには確実に消えていそうな政党などが多すぎるのではないか。

〇そうかと思えば、「あの人は今・・・」みたいな人たちが、比例名簿に名前を連ねていたりするのがまた痛い。演歌歌手とか、中途半端なタレントとか、えっ、元××市長ってまだ生きてたの?などと。

〇そうはいっても、みんな必死なのである。どう考えても堅気では生きていけなさそうな人たちが、人生の一発逆転を賭けていたり、ここで名前を売っておけば本業の助けになるとか、そういう浅ましい思いで選挙を利用している。「参議院あるある」の景色であります。

〇最近、政治ネタの有力ソースとなっている「永田町ディープスロート」さんですが、例の「パパ活疑惑」の方のお話もさることながら、鹿児島県選挙区における「ご先祖の威光」の話は痛さ抜群です。まあ、これから先も生温く戦況を見守ってまいりたいと存じます。


<6月24日>(金)

〇参議院選挙が公示になって、永田町が選挙モードに突入すると、霞が関はホッとしたかのように人事の季節に入ります。

〇官邸が役所の人事にあまり口を出さない、というのが現・岸田内閣の美徳であるようで、財務省といい、経産省といい、まことにリラックスして人事を決めているようですな。サラリーマンにとって、いちばん好都合なのは「能力があって、やる気のない上司」の下で仕事をするときですから、今の官房長官はいい感じなんじゃないでしょうかね。

〇ただし防衛省の次官人事だけは例外であったようで、ここだけは何かと物議をかもしている。どうやら安倍派の議員さんたちがお怒りの様子で、何らかの形で官邸からのお達しがあったのでしょう。そこにどういう思惑があったのかは、今後の続報に期待するしかありませぬ。

〇組織の内部抗争というものは、こんな風に外から見えにくい形でやるのがよろしいようです。何があったのでしょうねえ。


<6月25日>(土)

〇アメリカ最高裁が49年ぶりに「ロー対ウェイド」判決をひっくり返したので、ちょっとした騒ぎになっております。と言っても、5月2日にリークがあった時点で、6月末にこうなることは見えておったわけであります。

〇ひとつだけ予想外だったのは、判決が月末の予定より1週間早まったこと。ひょっとすると来週は、バイデン大統領がG7とNATO首脳会議に出かけてしまうということに忖度したのやもしれませぬ。

〇と言ってもこの話、縁なき衆生にはなかなかに理解しがたいところがあるので、こういうときは阿川尚之先生にお尋ねするにしくはなし。リンクを貼っておきましょう。


●日本人は知らない…「ロー対ウェイド事件判決」変更の動き、その背景にある「憲法解釈」の歴史(前篇)


●「ロー対ウェイド事件判決」をくつがえす判決の草稿、そこには何が書かれていたのか?(後編)


〇後は『憲法で読むアメリカ史』(上下、PHP新書)をパラパラと読み返す。アメリカ最高裁の歴史は長く、深く、重いのである。「トランプ大統領が保守派の判事を指名したから・・・」というのはもちろんあるのだが、それに近いことは過去に何度もあった。建国初期や南北戦争、ニューディール時代には、やはり国論が二分する危機に巻き込まれた。米最高裁が国民の信頼を失いかけたことだってある。それでも9人の判事がまとまって、何とか踏みとどまってきた歴史がある。

〇当溜池通信のいつもの流儀でありますが、皆が大騒ぎしているときに、「もうお終いだ!」みたいな議論には与さないようにしたいと考えるものであります。


<6月26日>(日)

〇間もなくエルマウサミットが始まります。日程はこんな感じのようです。ネタ元はこちら


2022 Elmau Summit Agenda

June 26, 2022 (subject to change)

Sunday, 26 June 2022

Morning Individual arrival of the G7 leaders
12:00―12:30 Official welcome
12:30―14:15 Working lunch on the global economy
14:30 Group photo
15:00―16:15 Working session on the partnerships for infrastructure and investment
18:00―20:00 Working dinner on foreign and security policy
20:00―21:00 Cultural programme with spouses

Monday, 27 June 2022

10:00―12:00 Working session with Ukrainian president Volodymyr Zelenskyy (virtual)
12:00―12:30 Official welcome of the G7 partner countries (Argentina, India, Indonesia, Senegal, South Africa) and the International Organizations
12:30―14:00 Working lunch with G7 partner countries and international organizations on "Investing in a Better Future" on climate, energy and health
15:30―17:15 Session with G7 partner countries and international organizations with the outreach guests, including United Nations secretary general António Guterres (virtual) on global food security, gender equality
18:30―20:30 Dinner with spouses and partner countries

Tuesday, 28 June 2022

10:30―12:00 Working session on multilateral and digital order
13:00 German G7 presidency press conference, followed by opportunity for national press conferences

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〇ちなみにドイツのエルマウでサミットが行われるのは、2015年に次いで2回目であります。ドイツでは過去に、ハイリゲンダム(2007年)、ケルン(1999年)、ミュンヘン(1992年)、ボン(1985年、1978年)で行われています。警備のしやすさなどが鍵なんでしょうかね。来年の日本は広島市のようですが、こういうものはなるべくいろんな都市に回すようでありたいものだと思います。


<6月27日>(月)

〇梅雨明けになったらいきなり暑い。どうでもいいことだが、マスクをしているのが辛い。不思議なことに、昨年の今頃もマスクをしていたはずなのに、当時はそれほど辛くなかった。

〇そういえば1年前は東京五輪を控えていて、まだまだ緊張感が高い時期であった。毎日夕方に公表される「今日の東京都の新規感染者数」にハラハラする日々であった。今はもうそういう緊張感がなくて、「そろそろもうマスクは不要だとだれか言ってくれ〜」という心境である。が、この国はこういうときにきわめて慎重なのである。

〇本日は経済広報センターのイベントで経団連会館へ。ふっと思い出したのだが、新しいビルになる前の経団連会館はとっても敷居の低い建物であった。誰でもごく簡単に入ることができて、ここが「財界総本山」であるとはにわかには信じがたいものがあった。

〇そのお隣にあった日経ビルもとってもシャビ―な建物であって、ところがその6階には日経CNBC放送のスタジオがあったのである。あれも今の日経ビルから考えると、想像を絶するものがあるだろう。

〇それをいったらテレビ東京も神谷町のスタジオから放送していた時期と、今の六本木のスタジオでは途方もない違いである。古い時代を知るものは幸いなるかな。


<6月28日>(火)

◆広島市で開催するG7サミット「来年5月後半」で調整…首相が各国首脳に説明へ

 政府は、広島市で来年開催する先進7か国首脳会議(G7サミット)について、5月後半に行う方向で調整に入った。岸田首相は、ドイツ南部エルマウで開催中のG7サミット最終日の28日、来年の議長国として各国首脳に開催地などについて説明する。その際に開催時期を伝えることも検討している。

 複数の政府関係者が明らかにした。ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性に言及する中、被爆地・広島選出の首相はサミットの広島開催で、自らライフワークに掲げる「核兵器のない世界」に向けた機運の醸成を目指す。


〇上記のニュースは既定の方針なので、今さらどうということはないのであるが、ひとつ感心するのは「日本政府は5月下旬が好きだなあ」ということ。失敗できないお客さんは、すべからくこの時期になるのですな。


2016年5月27-28日  伊勢志摩サミット

2019年5月25-28日 トランプ大統領訪日(令和初の国賓)

2022年5月22-26日 バイデン大統領訪日+QUAD首脳会議

2023年5月19-21日 広島G7サミット


〇いや、それは正しいことだと思います。6月下旬だと梅雨が明けていなかったり、今日みたいに暑い日だったりしますからな。下手をすれば電力が足りない、なんてこともあり得ます。

〇やはりこの国は、日本ダービーが開催される5月末がいちばんよろしいのでありますよ。それは体験的な真実だと思うものであります。


<6月29日>(水)

エルマウG7サミットに関する取材を受けることが多い日々である。これはちょっとマニアックすぎるかな?


●共同声明文(仮訳)のページ数の推移

*2016年 伊勢志摩サミット(日本)      31p   議長:安倍首相
*2017年 タオルミーナサミット(イタリア)   11p   議長:ジェンティローニ首相
*2018年 シャルルボアサミット(カナダ)   3p    議長:トルード―首相
*2019年 ビアリッツサミット(フランス)    1p    議長:マクロン大統領
*2020年 オンライン開催(米国)        0p    議長:トランプ大統領
*2021年 コーンウォールサミット(英国)   33p   議長:ジョンソン首相
*2022年 エルマウサミット(ドイツ)      29p   議長:ショルツ首相


〇幸いなことに、トランプ政権時代(2017〜2020)は去る者日々に疎しで、G7サミットはシェルパたちの手に取り戻されました。

〇ただしねえ、まともに読み始めると、コミュニケの長さに辟易するところあり。ウクライナ戦争への対応がいちばん大事なはずなのに、冒頭から延々と気候変動問題が続いてしまう。おそらく1月に準備を始めた時点ではそれで良かったんだろう。まあ、官僚仕事と言えばそれまでである。

〇「この文書の一番大事な部分はどれなのか?」がパッと見てわからないのは駄目な文書ですよね。そういう意味では、サミットのコミュニケは駄目のお手本です。だって妥協の産物なんだから。せめてエグゼクティブ・サマリーをつけてくれ、というのが毎年、この行事に接するたびに感じることであります。

〇逆に言えば、サミットがシェルパたちの手に取り戻されたことにより、1975年から続いてきた襷は次の走者(日本)に託された。つくづくG7サミットとは駅伝みたいなものなんです。走っているから、次につながる。止めてしまえばそれでお終い。だったらわけのわからない文書であっても、次につながるだけマシというべきか。














編集者敬白




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by Tatsuhiko Yoshizaki