●かんべえの不規則発言



2010年7月








<7月2日>(金)

○毎日、とっても蒸しますね。このところずっと寝不足気味ですし、まことに消耗いたします。

○株安、円高が進んでいます。ユーロは大騒ぎ、米国経済も先行き不安ということで、相対的に円に買い安心感がでているのでしょう。いくら大借金国とはいえ、国債がほとんど国内で消化できているハッピーな国ですから。例によって、「円高で輸出企業が大変だ」というニュースが増えるでしょうが、「通貨安で国債の買い手が居ない」というのに比べればずっと恵まれているというものです。

○なんで石油価格が下がらないんだろう、と不思議に思っていましたが、案の定、下げ始めましたね。やはり「新興国主導型の世界経済回復」というシナリオに無理があるのだと思います。この辺のことは、溜池通信のこの号この号で書いてきました。こんなにキレイに予想が当たることもめずらしい。ともあれ、世界経済は当分、ゴタゴタするでしょう。こんな状況下で消費税を上げるかどうかなんて、全然リアリティがないですぞ。

○米雇用統計は12万人減ですか。事前予測からそれほど外れていないので、大騒ぎするような数字ではないですね。それよりもオランダがブラジルに勝っちゃったのは驚きました。やっぱりいいチームですな。などとぶつぶつ言いながら今宵も夜が更ける。


<7月4日>(日)

○ワールドカップ、なんだかんだいって、ベストフォーに残ったうち3つが欧州勢。しかもドイツはセルビアに、スペインはスイスに、それぞれ予選リーグで1敗しているではないか。それでも、しっかり強さを見せつけておる。とくにアルゼンチンに4−0で圧勝したドイツの強さは何ごとか。サッカートトカルチョの世界がどうなっているかは知らんが、どんなドイツびいきといえど、「4−0」に賭ける阿呆はそんなにおらんだろう。

○そうかと思えば、ブラジルの敗戦も意外であった。ワシはオランダの応援をしながら見ていたのだが、本当に勝ってしまったので驚いた。こうなれば、いよいよオランダの優勝を祈りたい。逆にブラジルは、万年優勝候補とはいえ、前半と後半ではまるで違うチームでありましたな。かくしてトーナメント入り16チーム中、5カ国もあった南米勢がもうウルグアイを残すのみ。いやはや、勝負は水物であります。

○こうしてみると、サッカーはやはり分からない。こんな強国に混じって、よくまあ日本も戦っていたものだと感心する。とはいえ、今大会の戦績はいくつもの偶然が重なってもたらされたものであって、次はやっぱり分からない。それでも、「2010年の日本はたいしたものだった。少なくとも不甲斐ない試合はひとつもなかった」という記憶が残ることで、後に続く世代がやりやすくなる。応援する側も、力が入るというものだ。

○これは競馬なんかも典型的ですが、スポーツを見る楽しみというものは、その場の熱狂と興奮もさることながら、結局は「思い出作り」なんだと思います。今大会、本田のゴールに川島のファイト、そして最後は駒野のPK外しまで、美しい映像がいくつも残った。「タマシイレボリューション」の音楽も深く刻み込まれている。ああ、なんと幸いなるかな。

○しかるにベストフォーから先、世界最高峰の試合が4つも残っている。まことに楽しみである。行きがかり上、ワシはオランダを応援します。彼らが勝てば、何とあのオランダが初優勝。ドイツも強そうだけどなあ・・・。


<7月5日>(月)

○本日は生まれて初めて、仕事で東京都庁に足を踏み入れました。なんとも壮大な建物でありました。が、完成してから既に20年を経過しており、そろそろ大修繕が必要であるらしい。そりゃま、マンションでも20年建てばいろいろガタも来る。まして超高層建設なんだから。

○今日、足を踏み入れたのは南館の会議室でした。南館に入っている主な部署は、水道局と交通局であるらしい。そうか、都内に広がる水道網も、大江戸線や都営新宿線などの地下鉄も、ここで管理しているのか。そりゃあ、都庁ってのは大変な組織じゃわい。って、当たり前でしょうか。そうですか。はい。

○しみじみ思ったのですが、東京都を代表する建物のトップ10を選ぶとしたら、東京都庁と、旧都庁跡地の東京フォーラムは、かならず入ることでしょう。しみじみ都市にとっては、バブルというのはありがたいもので、それがなかったら時代を超えて都市の魅力を伝えるような建築物は生まれない。

○お台場のフジテレビも、六本木ヒルズも、ある意味、バブルの産物ということになる。逆にバブルの香りがしないミッドタウンや赤坂サカスなんぞは、まことに夢のない建造物じゃのう、などと思ってしまいます。ニューヨークの摩天楼を生み出したのは、1920年代の黄金時代でありました。東京都もまた、バブルの時代があったからこそ、今日の魅力があるのでしょう。

○そうそう、ご存知"Real Politics Japan"では、7/11参院選終盤情勢を伝える2回目の座談会を実施しております。今回は、富士夫さんの情報がとっても新鮮です。不肖かんべえは、ほとんど聞き役でありました。政治オタクの皆さま、是非、ご堪能くださいまし。


<7月6日>(火)

「白鵬が数万円の花札をしていたから良くないというのなら、天下の大横綱に数百円の花札をさせていいのか!」

○てなことを、今朝ほど文化放送の控え室で訴えていたら、くにまるさんが「面白いけど、それって放送じゃ言えないからなあ」とポツリ。いいもん、だったらネットで書いてやる。どうだ、参ったか。

      ◇     ◇     ◇

○というのはさておいて、今朝の放送では「消費税論議」について語ってきました。消費税は平成元年4月に導入されたので、平成の年の数だけ年輪を経てきたことになります。この制度を導入するときに、ときの竹下首相は国会で「消費税には6つの懸念があります」という議論を行なっている。それは以下の6項目です。

(1)逆進性

(2)不公平感

(3)社会の中堅層への過重な負担

(4)痛税感がないから、税率の引き上げが容易

(5)納税手続きの事務負担

(6)インフレ(便乗値上げ)

○20余年の歴史を経た現在、これらの項目を振り返ってみると、(2)はまあまあ理解が得られ、(4)は欧州ではともかく日本では成立せず、(5)は帳簿方式などでクリアし、(6)は杞憂であった。ということで、やはり消費税の論点となると、(1)の逆進性に尽きるようである。

○そこで仮に税率を5%上げるとするならば、この逆進性を解消するための方策が2つある。ひとつは軽減税率であって、欧州などで幅広く導入されている。が、これを実施すると、「マクドナルドはテイクアウトすると非課税で、店内で食べると課税になる」とか、「ドーナツ5個までは課税だけど、6個以上だと非課税になる。だから皆でまとめ買いしましょう」みたいな変なことが起きてしまう。

○だったら、菅首相が言っているような「低所得者への還付・給付」というやり方が合理的に思える。これを実施する場合には、納税者番号制などを通して所得の補足を行なわなければならない。が、増税するからには、クロヨンの実態は改善しなきゃいかんだろう。問題は所得をどこで切るかで、これは既に導入済みのカナダの例を見ても、なかなかにややこしいようである。

○現時点で消費税という制度を振り返ってみて、この「6つの懸念」に新たな項目を追加するとしたら、せいぜいこれくらいでしょうかね。しみじみ、よく考えてあったといえると思います。

(7)税率を上げる際の駆け込み需要と反動への対策

○それにしても消費税の導入前に、自分からこういう話をしていた竹下首相は、たいしたものであったと思います。昭和の政治家や官僚たちは、今と違って用意周到です。平成時代の政治家たちは、自分に都合の悪い話は口をぬぐって話さない。でも、細かな損得勘定にこだわる人は、結局は深い信頼を得られないのですよね。昭和の知恵に学ぶ点は少なくないように思います。


<7月7日>(水)

○RPJのこのページで、今度の参院選の予想一覧を出しているんですが、不肖かんべえは前回序盤戦の「民主47、自民47」という過激な予想を、中盤戦でちょこっとだけ修正したんですよね。そしたら今日になって、脱力さんが目ざとく見つけて、「ブレたでしょ」とのご指摘。しかもその場でツィートされてしまう。あーあ。

○そもそものワシの読みとしては、今年の参院選は1998年型である。政党の離合集散の後で無党派層が増えていることといい、直前になって税金が問題になっているところといい、橋本さんと菅さんのキャラといい、なんだか似ているじゃないですか。だから最後の3日でガラガラと崩れて、与党にとってキツイ結果が出るのではないかと。

○ところが先週末時点の各紙予想は、与党が過半数に届きそうな勢い。しかも取材をしている角谷さんと富士夫さんが、正確無比な現地情報を聞かせてくれるものだから、ついつい変えてしまったのである。3議席分だけ。そしたら今日出た共同通信の予想が、民主党49、自民党46になっている。こんなことなら、最初のままで変えなきゃよかった。

○もっとも、今年の参院選は投票率が伸びないとの見方もあって、この辺はビミョーである。実際、2010年参院選のテーマが何なのか、今ひとつ性格付けが分からない。しかもサッカーW杯はやっているし、メディアは連日、大相撲の賭博問題である。しかしNHKが相撲放送を中止しても、みんながネットで見るようになったらどうするんだろ?

○今宵は高校の同窓会へ。そしたらなんと、富山県知事は来ているわ、富山市長も来ているわ、総勢300人を超えてとんでもない会である。聞けば、母校はそろそろ建て直しが必要だとのこと。ワシが高校に入学したときに新築だった建物であるが、さすがにボロくなっているらしい。

○それじゃ、ワシの身体もいい加減、ガタが来ていてもおかしくはない。現に昨日から歯が痛くて、一日中、集中力皆無である。こんなワシでも、同窓会に出れば「若手」と呼ばれてしまう。ありがたいやら、情けないやら。


<7月8日>(木)

○7月6日に書いた竹下首相の「消費税6つの懸念」、ちゃんとしたバージョンで紹介しておきましょう。元ネタは『税の攻防』(岸宣仁/文芸春秋)のp135から取りました。


第1の懸念=逆進的な税体系となり、所得再分配機能を弱めるのではないか。

第2の懸念=中堅所得者の税の不公平感を加速するのではないか。

第3の懸念=所得税のかからない人たちに、過重な負担を強いることになるのではないか。

第4の懸念=税率の引き上げが容易に行われるのではないか。

第5の懸念=事業者の事務負担が極端に重くなるのではないか。

第6の懸念=物価を引き上げ、インフレを招くのではないか。


○これらは竹下首相が国会答弁で明らかにしたものであり、質問に立ったのは社会党の上田哲衆議院議員だった。もともとは衆院予算委員会で、「大型間接税の定義を出せ」と言ってきたときに、敢えて官邸側から「懸念」を出したのだという。上田議員との折衝に当たったのは、当時、官房副長官であった小沢一郎だったそうだ。

○著者のインタビューに答え、「土俵に上がってもらうためにはこれですわね」と竹下は答えている。つまり上田に対して、「オレは首相から“6つの懸念”を引き出したぞ」という手柄を与え、その代わりに野党を議論の場に引っ張り出してくる。対案さえあれば、審議に入れる。いやはや、竹下流ですわなあ。

○かくして、「大蔵省と竹下派絶妙のタッグマッチを組みながら、一般消費税、売上税に次ぐ”三度目の正直”に望みを託した」と著者は評している。うーん、やっぱり昭和の政治家と官僚たちは、やることに念が入っています。勝主計局長、ちょっと菅さんへの仕込みがゾンザイ過ぎたんじゃないですか。


○ちょっとだけCM。青山学院大学の公開講座に登場します。中山先生やナベさんも出ますんで、アメリカ政治にご関心のある方は、よろしければこちらを覗いてみてくださいまし。


<7月9日>(金)

神保哲生さんビデオニュースドットコムの収録。出演者は角谷浩一さんと不肖かんべえ、そして神保さん&宮台さん。テーマは「これが参院選の争点だ」。明日にはアップされるそうですので、会員の方は是非どうぞ。

○ふと気がついたら、マル激トーク・オン・ディマンドは、今回は第482回目なんだそうだ。ちなみに本日発行の溜池通信は第447号。どちらも10年以上続いている。まあ、当方は3年くらい前から隔週刊にしてしまったので、今後は差が開く一方なんだけれども、お互いによくまあ続きますなあ。

○でも、先方は有料放送をやっているわけだから、当方よりもずっと偉いのである。「やっと黒字になりましたよ」と言っていたけど、前人未到の境地をよくぞここまで、という感が強い。神保さんと初めて会ったのは、確かAP通信の記者をやっていた頃で、お互いまだ20代だった。遠い昔の話でありますが。

○角ちゃんも同じくらい古い。それが今では、RPJで一緒に選挙予想をしていたりしてるんだから、お互いに変なことしてるよね。そうそう、RPJでは「選挙戦終盤の読み方」なんて情報が掲示されてましたぞ。

○さて今日になって気がついたのだけど、ビデオニュースの画面は「9対16」の横長表示なのです。ところが、収録テーブルの上においてあるモニターは普通の「3対4」表示。すると映っている人の顔が細く見えるのです。角ちゃんが「お、オレたちスリムに映ってるじゃないか」なんて、ちょっと痛かったりして。少しダイエットせねば。


<7月11日>(日)

○参院選、W杯決勝、名古屋場所。3つとも勝負どころでありますな。

○それにしても沖縄の投票率が低いのは仕方がないとして、わが千葉県のワースト2位は問題ではないでしょうか。と言うものの、東京選挙区とは違ってあまり面白い候補者は居ないので、今朝ほども投票所で悩みましたがな。困ったものです。

○名古屋場所は、NHKの放送がなかったけど、6時からのダイジェストはかえって見やすい、との声も。何より、日本テレビ系『笑点』とかち合わなくてよい、てな声も一部にあったりして。

○W杯サッカー、いよいよ決勝戦。ワシはオランダ乗りですが、預言者タコさんはスペインなのだそうで。今日はひとつ、選挙速報は控えめにして早く寝て、午前3時起きに賭けようかと思う。でも、最後まで見終わる前にお迎えが来て、モーサテにいかねばならぬ。はて、困ったものよのう。(19:08)



<7月12日>(月)

○午前3時に起きてNHKの開票速報を見たら、もうほとんど開いているではないか。

党派 非改選 改選(選挙区:比例) 今回(選挙区:比例) 合計
民主党 62 54(36:18) 44(28:16) 106
自民党 33 38(25:13) 51(39:12) 84
公明党 10 11(3:8) 9(3:6) 19
共産党 4(0:4) 3(0:3)
社民党 2(0:2) 2(0:2)
国民新党 3(2:1) 0(0:0)
みんなの党 0(0:0) 10(3:7) 11
たちあがれ日本 1(1:0) 1(0:1)
新党改革 5(3:2) 1(0:1)
幸福実現等 0(0:0) 0(0:0)
日本創新党 0(0:0) 0(0:0)
女性党 0(0:0) 0(0:0)
諸派 0(0:0) 0(0:0)
無所属 2(2:0) 0(0:0)


○これは事件ですね。自民+公明+たち日+新党改革で統一会派を組むと、108議席になって民主党を上回ります。つまり参院議長のポストが取れてしまう。完全な「ねじれ国会」になるかもしれません。いやはや。ではそろそろお出かけします。(3:39)


(参院議長)

○おっと訂正。国民新党の非改選の3議席があるから、与党は109になって辛くも野党より上なんですね。とはいうものの、「みん党」次第では数字はひっくり返る。参院の審議を野党に奪われ、法案を全部止まられるとこれは苦しいぞ。野党は「直近の民意は我にあり」と言って、解散総選挙を催促すればいい。与党は衆院の3分の2に欠けるので、衆院再可決はできない・・・・。月末の臨時国会召集に向けて、いろいろ水面下の動きがあるでしょう。

○しかし上の数字をどう組み合わせても、安定した政権基盤はできそうもない。唯一の例外は大連立で、これなら向こう3年くらいは大丈夫となる。が、難しいでしょうね。それでも、政治家が自分の面子を捨てることが出きれば、答えはそれしかないという気が致します。(7:45)


(比例代表)

○溜池通信がいつもやる手法で、比例代表の得票数を比較してみましょう。数字はNHKの99%開票時点のものを使っていますので、最終的には若干の数字の修正はあるかもしれませんが、大きく狂うことはないはずです。(追記:その後、開票100%の数字で書き直しました)

  2010年
参院選
  2009年
衆院選
2007年
参院選
2005年
衆院選
2004年
参院選
2003年
衆院選
民主党 18,450,140 31.56 29,844,799 42.41 23,256,247 39.48 21,036,425 31.02 21,137,457 37.79 22,095,636
自民党 14,071,671 24.07 18,810,217 26.73 16,544,761 28.08 25,887,798 38.18 16,797,686 30.03 20,660,185
公明党 7,639,432 13.07 8,054,007 11.45 7,765,329 13.18 8,987,620 13.25 8,621,265 15.41 8,733,444
共産党 3,563,557 6.10 4,943,886 7.03 4,407,932 7.48 4,919,187 7.25 4,362,573 7.80 4,586,172
社民党 2,242,736 3.84 3,006,160 4.27 2,634,713 4.47 3,719,522 5.49 2,990,665 5.35 3,027,390
国民新 1,000,036 1.71 1,219,767 1.73 1,269,209 2.15 1,183,073 1.74  
みんなの党 7,943,650 13.59 3,005,199 4.27      
たちあがれ日本 1,232,207 2.11                  
新党改革 1,172,395 2.01                  
日本創新党 493,619 0.84                  
その他 643,989 1.10 1,486,220 2.11 3,035,509 5.15 2,077,444 3.06 2,022,139 3.62  
合計 58,353,071 100.00 70,370,255 100.00 58,913,700 100.00 67,811,069 100.00 55,931,785 100.00 59,102,827



●昨年の総選挙で「民主党」と書いた2984万人のうち、今回も民主党に投じたのは1845万人。わずか10か月で、1000万人以上の有権者が民主党から去ってしまった。過去5回の国政選挙で、民主党は比例で2000万票を割ったことがない。この結果は衝撃的でしょう。

●自民党は1400万票に落ち込んだが、「たちあがれ日本」や「新党改革」に票が流れたことを考えれば、これは納得の数字というもの。ちなみに不肖かんべえは、「民主2000万、自民1400万」と読んでおりました。

●公明党は野党になって苦戦するかと思ったら、今までとほぼ同じ763万票。和戦両様の構えに出ることなく、「民主党にレッドカード」と言い切った作戦が成功したのだと思います。党の幹部は内心、手応えを感じていることでしょう。

●今回、誰もが読めなかったみんなの党は、800万票近くの大戦果でした。組織も何もなしにとった票としてはまことに画期的。察するに渡辺代表の今の気持ちは、「なるべく早く次の衆院選を戦いたい。でも、今すぐだとカネがない」でありましょう。来年春の統一地方選当たりが、ベストなタイミングとなります。

●共産党、社民党の凋落は激しいものがあります。共産党は「反消費税」、民主党は「普天間問題」という得意テーマがありながら、集票に結び付けられなかった。この2つの政党は、ここ10年くらいはずっと「二つ足して700〜800万票」は抑えていたのに、とうとう息切れし始めたのかもしれません。

並み居る新聞調査を見ても、国民新党のゼロ議席を当てたのは日経新聞くらいでしたね。得票率で見ると、国民新党はだいたい1.7%くらいなので、投票率の低い参院選ではちょっと苦しいのです。ゆうパックの問題もあったし、これで郵政見直しはかなり難しくなったと思います。

●たちあがれ日本、新党改革はそれぞれ1議席を確保し、なんとか面目を保つことができました。でも、自民党内に残っていれば、今頃は「与謝野救国大連立政権」てなことを言って、某大新聞の社長兼主筆殿が動き出していたことでしょう。舛添さんも、その方がよかったのにね。

○ということで、ちょこまかと更新を続ける本日の溜池通信です。午後は大阪に出張です(9:55)。


(大連立の可能性)

○大阪で講演会をやって、帰りの新幹線の車中です。大阪の「みどり会」が誕生したのは、1970年の大阪万博が契機であった。ワシは当時、小学校4年生で、みどり館のキレイな映像を覚えている。それからちょうど40年。今は上海で万博をやっている。歳月人を待たず、であります。

○関西の経済人を前に当面の政局やら内外情勢やらを語って、あらためて感じることは、「こりゃもう大連立しかないんじゃないのか」ということ。今回の参院選の結果を前提とする限り、ほかにはどうやっても安定した政権枠組みができる可能性がない。もちろん、それが難しいのは百も承知だが、以下に「かんべえ私案」を披瀝してみよう。これは悪い話ではないと思うのである。

(1)民主党と自民党は、向こう2年間の期限を切って連立政権を組む。国民新党との連立は解消する。議席的には十分過ぎるので、2大政党のみの連立とする。これは超安定政権となる。

(2)優先する政策事項は、@景気回復、A財政支出削減、B行革及び公務員制度改革、C年金制度改革、D政治主導確保に絞り込む(この辺は多少の交渉の余地あり)。

(3)それ以外の政策マターはすべて凍結する。子ども手当ては時限的に今年一杯だけ実施。高速道路無料化などの実験も右に同じ。郵政見直しは論外。要は昨年総選挙における民主党マニフェストをほとんど凍結してしまう。外国人参政権や人権擁護法案などももちろん除外。

(4)税制については、とりあえず法人減税をこの秋を目処に実施するが、消費税については協議会を設置し、議論を行なうにとどめる。

(5)組閣は現在のメンバーを中心に、自民党の幹部を加えたオールスターキャストとする。菅総理、仙谷官房長官以下のメンバーはほとんど変えず、例えば谷垣禎一副総理兼法務大臣、石破茂防衛大臣、小池百合子環境大臣、林芳正金融担当大臣の4議席くらいを迎える。

(6)向こう2年間を、財政再建のためのモデル期間と位置づけ、増税以外のあらゆる手段をとる。2年後の2012年夏になったら連立は解消。2013年夏に予想される衆参ダブル選挙に向けて、二大政党がヨーイドンで競争する。

○こういうパッケージが明日にでも組まれれば、少なくとも株価は高騰するでしょうね。自民党にとっては、おそらく悪い話ではない。民主党にとっては、たぶん屈辱的な条件だと思います。でも、社民党や国民新党の言いなりになっていたことを思えば、この方がずっとマシなんじゃないでしょうか。

○この作戦の最大の長所は、「とにかく2012年夏まで選挙を気にしなくて良くなる」ことであります。向こう2年間、心置きなく経済政策に専念できるのであれば、これは日本経済にとって滅多にないチャンスというもの。ついでに「あ〜あ、失敗だったなあ」と今では後悔しているマニフェストも棚上げできてしまう。こんないい話はないではありませんか(ついでに小沢一派が党を割ってくれれば勿怪の幸い、なんて話は言わぬが花でありましょう)。とにかく、そうでない限り、民主党の衆院300議席は宝の持ち腐れ。参院を野党にコントロールされたら最後、遅かれ早かれ解散に追い込まれてしまうでしょう。

○でも、今の民主党首脳部は、自分の誤りを認めるのが大キライな人たちですから、おそらく上記は無理筋。日本の前途よりも自分の面子を優先してしまうことでしょう。ここは誰かが水面下で動かねばならない。坂本龍馬が登場するとしたら、今をおいてほかにないのです。薩長同盟が必要なことは、あの当時は誰もが分かっていた。でも、「アイツがいうなら仕方がない」と思わせることができたのは、ただ一人龍馬だけであった。どうでしょう。(20:59)


<7月13日>(火)

○昨日の反動で今日は手短かに。というか、歯の治療のために集中力が途切れがちなのである。

○某高級官僚との会話から。「いやー、比例区はタレント議員に入れちゃったよ。誰だと思う?」「あ、分かった。三原じゅん子でしょ」「え、何で分かるの?」「僕も演説聞いたから」。・・・・野球選手も大勢出ましたが、秋田の石井浩郎さんだけでしたねえ。少数の精鋭が残ったと思いたいところです。

○その昔、大学で演劇サークルをやっていた頃、夢の遊民社の野田秀樹は眼前にそびえ立つ峨々たる山脈であり、つかこうへい事務所はその向こうに浮かぶ雲でありました。深い憧憬を抱いて、その作品群を堪能したものです。お陰で卒業後は迷わずサラリーマンになりました。ご冥福をお祈り申し上げます。

○ふと思い出したこと。つか氏が昔エッセイで書いていた一節。風間杜夫氏との交友について。「男同士の友情というものは、その羞恥心の方向が一致していることが重要である」。察するに、かんべえと上海馬券王先生みたいなものか。

○豆知識。「ケータイ」の「携帯」という言葉、何が語源かご存知でしょうか。実は「袂を分かつ」や「襟を正す」などと同様、着物文化から生まれた言葉なんだそうです。手に持っているものを、帯に刺し込むから「携帯」。いやー、勉強になりましたねえ。ネタ元はこの人でした。


<7月14日>(水)

○昼過ぎに脱力さんがつかまったので、これだけは聞きたいと思っていたことを尋ねてみました。

「菅さん、昨日くらいから目が死んでるような気がするんだけど、大丈夫ですかね」

「菅さんなら大丈夫です。だって伸子さんがついていますから」

「えっ、伸子さんはそんなに立派な奥様なんですか」

「はい、立派な奥様です。お陰で菅さんの家庭はずっとねじれ状態。それを生き延びてきたわけですから、国会のねじれくらいどうってことありません」

「・・・・・・」

○深夜になって、勝利に沸くみんなの党、渡辺代表の快気炎を拝聴する。誤解なきように申し添えますと、御大と面と向かうのはとっても久しぶりで、おそらく今年になってから初めてではないかと思います。

○渡辺御大、たった一人で自民党を去り、「劇団ひとり」などという自虐ジョークを飛ばしながら、「国民運動 日本の夜明け」を立ち上げた。それが「みんなの党」になり、2度の選挙で飛躍して、とうとう一大勢力に育ってしまった。御大が「わが党はアジェンダ政党ですから」と大見得を切ると、なぜか笑い声が起きてしまう。この点が民主党が掲げた「マニフェスト」との違いでありましょう。「イラ菅、ねむ菅、こりゃアカン」とか、「この指止まれの政界再編」とか、口をついて出る言葉がいちいちキャッチフレーズになってしまう。不思議な才能であります。

○ただし一方では、こんな計算もなりたつわけです。

2001年参院選:民主26議席+自民64議席=90議席

2004年参院選:民主50議席+自民49議席=99議席

2007年参院選:民主60議席+自民37議席=97議席

2010年参院選:民主44議席+自民51議席=95議席

○合計121議席のうち、二大政党が足して90議席台を取る、という構図はまったく変わっていない。(楽屋裏を紹介すると、不肖かんべえがRPJで当初予想した「民主47、自民47」の根拠は実はそれなんです)。ということは、みんなの党の大躍進は、二大政党の残り分の中での話であって、従来の構造を打破したわけではないという見方もできる。

○だったら、やはり「民主・自由大連立」こそが現状打破の鍵なのではないかと思うのです。そこでまたまた脱力さんに聞いてみました。

「大連立の可能性はどうですか」

「ダメでしょう。だって2年前に小沢さんと福田さんの間で出来かけた大連立をつぶしたのは菅さんですから。少なくとも、菅さんがトップではできないはずです」

「・・・・・」

○落ちはやっぱり「こりゃアカン」ですな、これは。


<7月15日>(木)

○えー、たまにはアメリカ政治の話を。

○このたび東信堂さんから、『2008年アメリカ大統領選挙』の続編となる『オバマ政権はアメリカをどのように変えたのか』という本が出ます。あいにくまだアマゾンにも載っておりませんが、今作品には不肖かんべえも参加しておりますのでご紹介させていただきます。


●オバマ政権はアメリカをどのように変えたのか〜支持連合・政策成果・中間選挙

吉野孝+前嶋和弘編著(早稲田大学・日米研究機構)

プロローグ:吉野孝

第1章:オバマ支持連合の政策選好:政権運営へのインプリケーション  飯田健

第2章:オバマ政権と連邦議会:100日と200日とその後 松本俊太

第3章:オバマ政権のメディア戦略と世論:「ゴーイング・パブリック戦略」の終焉? 前嶋和弘

第4章:特使外交:問われる司令塔機能   高畑昭男

第5章:経済危機対策:1年目の経済施策を振り返って  吉崎達彦

第6章:人権関連政策:「脱人種」路線をめぐって  渡辺将人

第7章:医療保険改革:対立を超えて歴史的立法の実現へ   武田俊彦

第8章:オバマ政権1年目の評価と中間選挙   吉野孝



○正直なところ、自分以外のパートはまだ読んでおりません。まあ、でもいいメンバーでありますので、悪からぬ研究書になっていると思います。ご関心のある向きはどうぞよろしくお願いします。


<7月16日>(金)

○選挙が終わったら即、政局かと思ったら、何なんだこの静けさは。菅さんは目が死んでるし、小沢さんは釣り三昧だそうだし、7月30日に臨時国会を開けて、8月頭にすぐ閉じて、参院議長だけ決めて後は何もなし。国会議員の皆さま、歳費はちゃんと7月分も8月分も満額で払いますから、どうぞご安心を、てなことでありましょうか。

○でも、火種は一杯あるわけでありまして。

○来週23日には欧州でストレステストの発表が予定されています。EU内91行の評価が出るわけですけど、皆さま、心のご準備はよろしいでしょうか。昨年のアメリカのときとは違って、さあ公的資金の注入が必要だということになった場合でも、欧州にTARPはありませんぞ。各国政府がちゃんと銀行の面倒を見てくれるんでしょうか。欧州金融安定化ファシリティーは、おそらくは抜かずの宝刀でしょう。ちなみにギリシャ国債は、額面の75%程度で取引されているそうであります。

○8月末には、普天間基地の代替施設の位置・工法の決定期限がある。もちろん、機械的に決めてしまってもいいのだが、それだと後で沖縄県民にノーを突きつけられる恐れがある。これまた、日米間のでっかい火種である。結局、11月28日の県知事選挙が終わるまで、この問題は先送りされることになるんじゃないだろうか。でも、それだとAPEC首脳会議(11/13-14)でのオバマ訪日よりも後になるから、そこはどうやって糊塗するんだろうか。難し過ぎます。

○そういえば、こんな火種もあるようですぞ。

日韓併合百年で「おわび」検討 政府、韓国国民に

○8月22日は日韓併合百周年なので、日本国首相は何かいわなければならない。ちょうど1995年の村山談話のような感じです。でも首相談話には閣議決定が必要なので、ちゃんと全会一致となりますかどうか。あるいは、与党内でまとまるのか(国民新党はここで何か一言いいたいだろう)。野党はもちろん、大いに語りたくて仕方がない。さて、今年の8月15日はどんなことになるのやら。

○こんな状況であるにもかかわらず、臨時国会は参院議長だけ決めて、さっさと蓋を閉じてしまいたい。小沢さんはどうなるか分かんないし、ムネオさんの判決もそろそろ出るかもしれないし、菅さんの心が折れちゃったらどうしようもないし、連立交渉はうまく行きそうもないし、不確定要素が多過ぎるのでありますね。なおかつ、自分から動いて事態を収拾しようという気合の入った人が見当たらない。だからこの夏は静かに過ぎていくことになるのかも。

○このところ毎年夏になると選挙があったり、自民党総裁選があったり、とても忙しかった。議員さんや秘書さんたちとしては、今年ぐらいはゆっくりさせてよ、と言いたいところかもしれません。もちろんジャーナリストもね。でも、火種が一杯あることは忘れてはなりませんよ。ご用心。


<7月19日>(月)

○梅雨が去り、一気に晴天がやってきたと思ったら、ちょうどこの土日が町内会の夏祭りであった。いやー、暑かった。汗かいた。しんどかった。でも、今年は子どもの集まりもよかったし、いかにも夏らしい夏祭りであった。よかったですね。

○今年のヒット作は「生ビール」でありました。毎年、この時期には、町内会で大量の瓶ビールと缶ビールを購入する(一部は各方面から進呈される)わけですが、その一部を生ビールにしてみたんですね。機械は貸し出してくれて、ボンベに入った50杯分のビールが1万500円。氷を入れたり、炭酸ガスを入れたりという調整がちょっと難しくて、ときには泡だらけになっちゃったりするのですが、屋外で飲む生ビールは格別でありました。

○考えてみれば、1杯200円くらいの計算ですから安いですよね。しかも実際には1本のボンベで60杯くらいとれていたと思います。ビールが売れすぎて、つまみが足りない、なんて騒ぎも一部であったとか、なかったとか。ちなみに銘柄は、普通にアサヒのスーパードライさんでした。

○問題は朝早くから夕方まで、ずっと飲み続けになってしまうのですね、これが。あれだけ暑いと熱中症が心配なので、できるだけ水分を取った方がいい、などと言いつつ、ついつい飲んでしまうのであります。エアコンの効いた部屋で缶ビール、もいいのですけれども、汗をかいた後の生ビール、というのもまことに結構なのでありました。


<7月20日>(火)

○今回の新経済成長戦略で、おそらくスカコーンと抜け落ちている視点があると思う。独禁法である。例えば総合電機会社が9社もあるという現状で、全社が国際競争に勝ち残っていけると思っている人は、おそらく誰も居ないだろう。でも、公正取引委員会にお伺いを立てれば、ほとんどの合併は「競争制限になるから、まかりならぬ」となるはずである。でも、それってプレイヤーが国内に限られていた幸せな時代の発想ではないのだろうか? 業界内の序列を維持しようと努めることは、けっして競争促進にはつながらないと思うのである。

○経済学では独占は悪であり、競争は善であると教える。一般常識として、それは正当な評価であろう。その一方で経験的にいえば、労働者も消費者も等しく不幸にしてしまう競争というものも存在する。外食産業の値下げ競争は、ときとして「食の安全」を損なうことがあるけれども、これは悪い競争の典型だろう。逆にそんなに悪くない独占というものも存在する。JR東海は東京=大阪間の新幹線を独占しているが、そのことによる不利益がどれだけ起きているだろうか。

○言いにくいことを言ってしまうと、日本における独占企業というのは、欧米のそれに比べて「やりたい放題」ではないと思う。かつての国鉄のように極端な例を除けば、NTTや日本郵政が極端に悪い経営をしているとは思えない。なおかつ、旦那芸的な技術力を維持していることもある。そして経営陣がべらぼうなボーナスを取ることも少ない。日本社会に特有の、相互監視システムがちゃんと機能しているからなのだろうか。

○逆に日本の国内競争では、国際的には考えられないようなくだらないことを争ったりする。企業が利益のためではなく、趣味のためにやっているようなCMってありますよね。株主の金をこんなことによく遣うわ、と感心するような例は枚挙に暇がない。その昔の商社業界の売上高競争なんぞは、今から思えば誰のためにもならない妙に体育会的な根性論の世界でありました。

○なぜだかはよく分からないのだけど、日本企業は独占になると変に行儀が良く、競争になると妙に過激になる傾向があるらしい。日本の競争政策を考えるときは、その辺の事情も勘案した方が良いのではないかと思う。

○それでは公取が変われば、業界再編が劇的に進むか、超強力なオールジャパン企業ができるか、といえば、残念ながらそれも疑わしい。社員をOJTで育てる日本企業では、各社が評価する社員はそれぞれに違う。ソニーとパナソニックでは、それぞれに社風が違いすぎるので、合併したところでシナジー効果は期待しにくい。かくして業界再編は進まず、たまに合併が起きてもうまくいかない。結果的にひとつの業界に8社も9社もひしめき合って、汲々しながら生き残っている。ゆえに値上げもできず、賃上げもできずということになる(こんなこと言うと、「オタクの業界が典型じゃないか」という声が聞こえてきそうである)

○考えてみれば不思議な話であって、世界に冠たるトヨタ自動車といえど、日本国内のシェアは半分に満たない。そして日本国内には、個性豊かな自動車会社がほかにも山ほどある。市場から退出してもおかしくない企業が、何とか生き残ってしまうのだ。これがまあ、日本市場のかなりユニークな点であって、「世界でも稀なくらいに産業多様性のゆたかな経済」を成立させている。うーん、こんな経済において、競争政策はいかにあるべきなのだろうか。


<7月22日>(木)

○世の中の会議の大半は非生産的なものであろう。まして昨今のように暑い時期には。ところが今日は、都内某所で午後1時から会議。それが予定を延長して午後7時までかかる。それから食事会。さらに延々と議論。これが至福の時間であったりするから、世の中は分からない。いやあ、勉強になったなあ。

○ところで今日、いただいた『デフレの正体』は面白い。ところどころ、「この部分はワシが書いているんじゃないだろうか」と錯覚する部分もある。そういえば、ワシも本を書く約束をしていたのではなかったか。うーん、どう考えても今年の夏も、あっという間に過ぎてしまいそうである。


<7月23日>(金)

○生まれて初めて、ロータリークラブの会合に出席しました。身近に何人かの「ロータリアン」がいるので、いったいどんなグループなんだろうと興味津々でしたが、なるほど不思議な会合であります。地域の有力者が集まって、こんな言葉を合唱したりする。


●四つのテスト "The Four-Way Test"

言行はこれにてらしてから "Of the things we think, say or do"

1.真実かどうか "Is it the TRUTH ?"

2.みんなに公平か "Is it FAIR to all concerned ?"

3.好意と友情を深めるか "Will it build GOODWILL and BETTER FRIENDSHIPS ?"

4.みんなのためになるかどうか "Will it be BENEFICIAL to all concerned ?"


○もともとはシカゴで始まった社会奉仕運動が、全世界に広がったのだそうだ。というと何だか秘密結社みたいだけど、参加しているのはごく普通の人たちである。詳しくはこの辺をご参照。

○帰りに、会場の名物である「浦和ロールケーキ」を頂戴する。これはスグレモノです。職場でも大好評でありました。


<7月25日>(日)

○今週末は柏まつりである。例年、この祭りは雨が降る。今年も暑い日が続いていたので、「そろそろ来るんじゃないか」などと噂されていたけど、しぶとく持ちこたえた。が、そろそろお片づけという日曜の7時半頃になって、やっぱり雨が降りだした。ジンクスは強し。ちなみに、わが町内会の夏祭りはこの1週間前に行なわれるが、雨に降られたことはほとんどない。でもって、ワシは町内会で疲れ果ててしまうので、翌週の柏まつりはチラッと見るだけで終わる、というのが吉例である。

○ということで、今週末もチラ見してきました。オープニングパレードで、市立柏高校のブラスバンド部を見たけれども、あれはたいしたものですな。柏市消防音学隊を凌いでいたのではないだろうか。まあ、でも暑いから早々に引き上げてしまいました。西口の柏ねぶたも、夜見るとなかなかの迫力なんですけどね。なにしろ例年、60万人の人出があるそうですので。

○例年だと、柏レイソルの選手を囲む会も行なわれるのだけれど、今日はなんと日立柏において、ジェフ千葉との「千葉リーグ」が行なわれるから、それはナシである。どちらも去年、J1から落っこちてしまい、伝統の一戦がJ2で行なわれてしまう。が、両チームとも、J2ではさすがに強い。わがレイソルはなんと17戦連続無敗の1位。ジェフ千葉も3位につけている。なんで去年、山形や仙台の下だったのかはよく分からないが、来年はしっかり昇格してもらいたい。

○お、このページを見ると、なんとか引き分けたようである。開始2分でGKが退場になるという、何かとんでもない試合であったようだが、まずはめでたい。18戦連続無敗はJリーグ記録ではないだろうか。


<7月26日>(月)

長島昭久さんのパーティーに繰り出す。なぜか最前列に誘導されて、気がついたら隣は田久保先生であった。さらに中央を見ると、岡崎久彦大使と櫻井よしこ先生が仲良く座っておられる。どこが民主党なのかよく分からない。でも防衛政務官なんだから、安保のプロがこれだけ集まるのは正しいことなのであろう。いつものことながら、池井優慶応大学教授は洒脱なご挨拶をされた。そういえばめずらしいことに、金美齢さんを見かけなかった。そんな会合です。

○長島さんからは、当面の安全保障問題に関するプレゼンテーションがあった。たまたま今朝の読売新聞で、こんなスクープ記事が出ているけれども、安保懇としては、「基盤的防衛力構想を見直して、自衛隊の主力を南西に向けること」「武器輸出3原則を見直して、防衛技術産業基盤を強化する」といったことを提言に盛り込むらしい。次期防衛大綱が目指す方向としては、まことに正鵠を得ていると思います。

○現在、日本海では史上最大規模の米韓演習が行なわれている。F22戦闘機が初めて投入されているというから、その本気さが窺えるというもの。要は韓国海軍哨戒艦沈没事件を受けての、北朝鮮に対する牽制である。これに対して、中国が「黄海に入ったら許さんぞ」との脅しをかけている。海洋法上は、公海上で他国がやることに対して文句を言っちゃいけないのであるが、中国は「排他的経済水域では、外国軍隊は調査活動以外してはならない」という俺様ルールを主張しているので、ここはなんともビミョーなところである(ホントは甘やかしちゃいけません)。

○このまま放っておくと、中国海軍は第一列島線(九州〜奄美〜沖縄〜台湾〜フィリピン〜ボルネオ)を乗り越えて、第二列島線(伊豆〜小笠原〜グァム・サイパン〜パプアニューギニア)にまで出てきて、米海軍との勢力の分水嶺にしようとするはずである。日米同盟サイドとしては、そんなことを易々と認めるわけにはいかず(その場合はマジで沖縄も取られかねない)、できれば陸上自衛隊の海兵部隊を作って沖縄に配備する、なんてことも必要になってくるのではないかと思う。将来的に普天間問題を考える上でも、「米海兵隊による抑止力を、自衛隊がある程度肩代わりする」ことを真面目に考えていくべきだろう。

○ちなみに先週末、守屋前防衛次官によるこの本を読みました。「ワタシは接待ゴルフを受けました」とはもちろん書いてありませんが、彼は彼なりに一本筋の通った人であったことが読み取れます。そしてまた、沖縄問題を相手にする気苦労の深さも身に沁みます。しかも自民党時代には、ちゃんとした人から利権目当てまで、「ワタシは沖縄に通じている」という人が大勢居たために、何度も仕切りなおしを余儀なくされている。面白いのは、地元が横須賀で「住民運動の怖さ」を熟知していた小泉首相(当時)が、守屋氏を一貫して支持していたというエピソードです。

○さて、今日のゲストスピーカーは原口総務大臣でした。肝心のICT政策や地方分権については、大臣なのかコンサルタントなのか分からないような軽めの内容でしたが、最後に長島さんの質問に対して、こんなサービス精神あふれる答えをしてくれました。さっそくニュースになっていましたな。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100726-00000075-jij-pol 

●「1年半に1回、人間不信」=原口総務相が小沢氏を分析 

 「1年半に1回ぐらい、自分のチームを信じられなくなることがある」。原口一博総務相が26日、都内で開かれた長島昭久防衛政務官のセミナーで講演し、民主党の小沢一郎前幹事長を冷静に分析してみせる場面があった。

 原口氏は小沢氏について「心理学的に言うとトラウマか何かを持っている」と指摘し、「自分と自分のチームが信じられる人間しか、絶対に変革者じゃない」と突き放
した。ただ、「もしそれ(人間不信)が出なければ、こんなにすごい人物はいない」とも語った。

 原口氏は小沢氏に担がれる形で9月の党代表選に出馬する可能性も取りざたされているが、セミナーでは「(小沢氏を)ずっと許し難しと思っていた。だから、今、親
小沢と言われるのは何でかなと思っている」と、中立的立場を強調した。

○さまざまな「小沢論」の中でも、これは出色の出来ではないかと感じた次第です。


<7月28日>(水)

○書店にて、『内訟録―細川護熙総理大臣日記』を手にとってみた。真っ先に探したのは、1993年9月9日の記録である。こんな風に書いてあった。


9月9日(木)雨一時曇

経済同友会朝食会。景気対策の必要性のほか、数値目標を作るべしとの意見多し。まさか、米国の要求を呑めば円高が食い止められるという認識ではあるまいと思うが。


○場所はホテルオークラのメイフェアの間であった。不肖かんべえもその場に居合わせた。当時は経済同友会の職員だったもので。トマトジュースを飲む細川首相は、キラキラと光り輝いて見えた。隣には武村官房長官がいた。後ろには通産省の佐野秘書官が控えていた。この日の朝食会のことなら、どんな細かなことでも覚えておりますぞ。

○できたばっかりのクリントン政権が、日本に対して「結果重視」の交渉を迫り、日米貿易摩擦が大問題であった。日本の経済界としては、貿易黒字削減の数値目標は是か非か、努力目標ならいいのではないか、だってこのまま円高が続いたら日本経済は終わってしまう、てなことが当時の関心事であった。細川首相は冷ややかに聞いていたようだ。なるほどね。

○ということで、2500円+税を支払って本書をお買い上げ。当時の日々を思い出してみたくなったので。


<7月29日>(木)

○新装なった議員会館を覗きに行く。エントランスの天井が高い。建物が新しくなると、受付の女性も妙に士気が高いように見える。入館証も磁気カードになっている。ただし高さが12階になったせいか、エレベーターがなかなか来ない。目的の部屋に到達するまでに、結構時間がかかる。ありがちなことだが、ビルが新しくなると入館に時間がかかるので、約束の時間より早めに到着しなければならなくなる。まあ、経団連会館や日経新聞に比べればマシというところか。

○参議院議員会館に入ってビックリ。3分の1以上の部屋が空室になっている。新しく当選した議員の引越しがあまり進んでいないらしく、日本通運による引越し作業があちこちで行なわれている。12階まで登ると、なかなかの眺望である。国会議事堂と皇居を見下ろし、その向こう側に丸の内や大手町が広がっている。なるほど、首都・東京はたいしたものだ。

○今までの議員会館は、一部屋当たりのスペースがわずか40平米で、まことに手狭であった。それが100平米になったと聞くと、ずいぶん豪勢な感じがするけれども、入ってみればやっぱり2倍半である。ワシントンの米国議会のオフィスに比べれば、天と地ほどの差といえよう。まあ、そんなことでも昨今は顰蹙を買いかねない。なにしろ議員歳費を日割りにすべきかどうか、なんてケチな議論をしているんだから。

○さて、明日からは臨時国会。どうやら参院議長は民主党から出すことにして、自民党は予算委員長か議運委員長ポストを得ることで満足するらしい。実際、それだけで十分に「ねじれ効果」は発揮されるだろう。普通に考えていくと、来年3月に予算関連法案が通らなくなって、政府が立ち往生することになる。与党としては、そこで解散して統一地方選挙とのダブル選挙に持ち込むか、それとも大連立に踏み切るか。

○それまでに、民主党が公明党と連立を組むことができれば、安定多数ができて政局は安定する。公明党としては難しいところで、「与党で統一地方選を戦う」のは魅力的かもしれないが、どうやって今の対決路線を変更するのか。自民党との選挙協力が成功した後だけに、ここの判断は悩ましい。とにかく2013年まで参院の構成は変わらないからなあ。

○どっちにしろ、向こう半年くらいは政治の停滞が続くということになる。何とも時間がもったいないと思う。「逸失利益」というものは目に見えにくいので、ついつい見過ごされてしまうけれども、本当はとても罪深いことなのではないだろうか。


<7月30日>(金)

○しょーもないジョークを思いつく。


「英語のプレゼンテーションは大変に難しい。ただし最近になって、英語が苦手な人にとって有力な武器が2つ誕生した。ひとつは中身のない話をそれらしく見せる武器であり、もうひとつはわけの分からない質問を撃退する武器である」

「前者を"Power Point"と呼び、後者は"What's your point?"と呼ぶ」


○この気持ち、分かってもらえる人は案外多いのではないかという気がします。








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by Tatsuhiko Yoshizaki