●かんべえの不規則発言



2011年12月






<12月1日>(木)

○来年のアメリカ大統領選挙について聞かれるたびに、「オバマの敵は、共和党ではなく経済」「9%の失業率で、大統領の再選は難しい」「他方、共和党はタマ不足」「常識的には予備選はミット・ロムニーで決まり」「本選でのオバマ対ロムニーは意外といい勝負」「勝敗を分けるのは雇用をめぐる論争」・・・・てなことを答えてきました。だんだん、それが怪しくなってきたような気がします。

○たとえば"Intrade"を見ると、一時は70pを越えていたロムニー株が、50p台まで低下している。その間に表舞台に飛び出したのが、あら懐かしやニュート・ギングリッチ株で、いつの間にか30p台に乗せている。この人、2度の離婚歴があって、下院議長時代にはクリントンのモニカ・ルインスキー問題を攻撃しながら、自分もスタッフとLove Affairをしてたという古傷があって、どう考えてもまっとうな候補者とは思えないのですけどねえ。

○たまたま今日、ポール・室山さんに聞いた話では、「共和党の候補者選びが、今回は討論会中心で動いている。だから選挙資金がなくても戦い続けられる」というのがミソで、普通であればとっくに退場しているはずの候補者が、生き残っていられるのですね。普通だったら、カネにモノを言わせてロムニーに決まっていそうなものなのだけど、共和党予備選は意外と長引くかもしれません。

○2012年米大統領選は、2008年ほど面白くはならないと思うのですが、いつものことながら意外な方向に進展していきます。何と言っても、これが私のメシの種。今回もキチンと追いかけねばなりませんね。


<12月2日>(金)

○今朝の産経新聞「正論」に寄稿しましたのでリンクを貼っておきます。

●TPP参加で「海のアジア」開く 

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111202/fnc11120202520000-n1.htm 

○今朝の記事を読んだ山本提督から電話を貰いました。昔は良く「日中安保対話」でご一緒させていただきましたが、なんとお懐かしい。あいにく電話を取ったのが駅頭で喧しかったので、言ってることはあんまり良く聞こえなかったんですが、喜んでくれているのはよく分かりました。お気持ちありがたく頂戴しました。ますますお元気で。


<12月3日>(土)

○いやあ、柏レイソル勝っちゃったよ。優勝しちゃったよ。すごいなあ。

○「悲願の初優勝」とか言われているけど、だいたい去年J2から上がったばかりなんだから、J1で優勝できるなんて思ってませんがな。地元民としては、グランパスやガンバの上に居るだけで充分に満足感があったんですが、最後は重圧にも負けずキッチリ勝ちました。

○いろんなことがあった2011年ですが、これも今年を飾る記憶のひとつ。やったね、レイソル。


<12月4日>(日)

○今日の柏市内は昨日の興奮が残っているようです。今朝は駅前でレイソルの優勝報告会があったとか。

○お昼に市内を歩いてみたら、カレーの「ボンベイ」と「ホワイト餃子」に行列が出来ていました。柏市を代表する名物店なんですが、考えることは皆、似ておりますな。

○ちなみに柏の名物としては、グルメ界で名高い「竹やぶ」という蕎麦屋があるのですが、こちらはちょっと敷居が高いです。

○てな具合に、「わが町に日本一のチームがいる」ことになって、何だか急に周囲を見直したくなるのでありました。

○最後に番宣です。明日の夜10時から、テレビ東京でこんな番組があります。テーマは「円高」。

●未来世紀ジパング http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/ 


<12月5日>(月)

○当欄12月1日に引き続き、アメリカ大統領選挙の現状について。共和党の候補者選びは、「ロムニー対ギングリッチ」という変な方向に向かっている。こんなことではいかんぜよ、と保守派の論客、ジョージ・ウィルが言っている。ロムニーもひどい(bad)が、ギングリッチはもっとひどい(worse)ぜよ。ワシもそう思う。

●"Romney and Gingrich, from bad to worse" ワシントンポスト紙

Obama is running as Harry Truman did in 1948, against Congress, but Republicans need not supply the real key to Truman’s success -- Tom Dewey. Confident that Truman was unelectable, Republicans nominated New York’s chilly governor, whose virtues of experience and steadiness were vitiated by one fact: Voters disliked him. Before settling for Romney, conservatives should reconsider two candidates who stumbled early on.

○1948年選挙では、現職のトルーマンが弱い、よわいといわれていた。これなら誰を出しても勝てる、と油断したのかどうか、共和党はニューヨーク州知事のデューイという冴えない候補者を担いだ。その結果はとんだ番狂わせであった。投票日の翌日、朝刊の一面が"Dewey defeats Truman"という予定稿を載せているのを手に、トルーマンがニコニコしている写真が残っている。オバマをなめてると、同じ目に遭うよ、というのはまさにその通り。

○ジョージ・ウィルの一押しはジョン・ハンツマン前中国大使(元ユタ州知事)であるようだ。今どき希少な穏健派候補なので、米国の共和党系知日派人脈などは、多くがハンツマン陣営に詰め掛けているのであるが、今ひとつ気勢が上がらないでいる。ひとつには、オバマ政権の下で働いていたという「原罪」を抱えているので、共和党員たちの受けは良くない。とりあえず今回は顔見世興行で、2016年が本番という考えなんじゃないかと思う。

○とまあ、こんな感じで共和党候補者選びは迷走しているので、来年のいつ頃に決まるのかがよく分からなくなってきた。普通だったら1月中に決着するだろうし、少なくとも3月のスーパーチューズデーには終わっているのが吉例というもの。しかるに2012年の選挙日程をよくよく見ると、予備選挙が適度に散らばっていて、一気に決まるという感じではなくなっている。2008年選挙で、ニューハンプシャー州で勝利したジョン・マッケインがそのまま勝利を得たという前例があり、なるべくバランスを良くしようという配慮が取られているからだ。

○こうしてみると、共和党の候補者選びは意外と手間取って、4月のニューヨーク州とか、6月のカリフォルニア州当たりまで長引くかもしれない。というと、ちょうど2008年のオバマ対クリントンの死闘みたいだが、こんなことは共和党の歴史においてはめずらしい。党大会の当日になっても決まらない、なんてのは民主党のお家芸であって、共和党の候補者はすんなり決まるというのが「お約束」である。

2012年
1月 3日:アイオワ州党員集会
1月10日:ニューハンプシャー州予備選
1月21日:サウスカロライナ州予備選
1月31日:フロリダ州党員集会
3月 6日:スーパーチューズデー(テキサス、ジョージア、テネシーなど10州)
4月24日:ニューヨーク州、ペンシルバニア州予備選
6月5日:カリフォルニア州、ニュージャージー州予備選
6月12日:オハイオ州予備選
7月27日〜8月12日:ロンドン五輪
8月27日〜30日、共和党大会(フロリダ州タンパ)
9月 3日〜6日、民主党大会(ノースカロライナ州シャーロット)
11月6日:米大統領選&上下院選挙投開票

2013年
1月20日:大統領就任式

○さて、こんな風にモメるのは、果たしていいことなのか、悪いことなのか。しょせん他人事とはいえ、こういうディテールが面白いというのが、いつものことながら米大統領選挙なんですねえ。


<12月6日>(火)

○今日、丸の内に行って学習したのだが、東京郵便局跡地で建設中の建物は「JPタワー」というのだそうだ。うーん、どんなテナントが入るんでしょうね。

○気がつけば東京駅周辺は、高層ビルだらけになりつつありますね。それもそのはず、東京駅ほど便利なものはない。国内出張のことを考えれば一目瞭然です。それに比べると、新宿副都心はなんと不便なところであることか。

○しかも東京駅中心は金融機関が集積している。外資系も多いです。しかもよりによって「JPタワー」のお隣は「JPモルガン」なんです。

○いっそのこと両社で「JPホールディング」という持ち株会社を設立し、「バンク」と「モルガン」がぶら下がるというのはどうだろう。でもって、「外資の郵貯マネー乗っ取りがとうとう成就した!」というのは。まあ、乗っ取ったところで、持っているのはJGBばかりで、あんまり美味しいことはないでしょうけれども。


<12月7日>(水)

○今、ホワイトハウスのホームページを見ると、面白いものが見られます。一番上の部分に「あと24日××時間○○分▲▲秒」というカウンターがあって、刻一刻と数字が減っていく。で、これは何のことかというと、こんなことが書いてある。

"IF CONGRESS DOSEN'T ACT, MIDDLE CLASS TAXES INCREASES IN:"

(もしも議会が行動しなければ、中間層は増税になります)

○これはオバマ政権が打ち出した景気刺激策である"Payroll tax"(給与税)の軽減措置が年末で切れてしまうので、「早いとこ議会は延長してくれええ」、というオバマさん心の叫びである。その辺の理屈についてはこの辺をご参照。

○給与税は、もっぱら社会保障費に使われる。雇用者も同額を支出することになっていて、給与から天引きされることもあり、日本でいうならばちょうど社会保険料に相当する。年明けから上がりますよ、と言われれば皆ギョッとするところ。でも、この軽減措置の延長に対しては、「財政赤字を増やす」とか、「恩恵を受けられない国民が居るから不公平」とか、「公的年金制度が揺らぐ」などの反対意見がある。まあ、その辺はいずこも同じ秋の夕暮れ、である。

○ただし経済効果という面では、給与税減税が延長されるのとされないのでは、来年の米国経済の前提条件が天と地ほどに違ってくる。延長した方がいい、というのが大方のエコノミストの見通しであって、これが失効するようなら2012年の米国経済はかな〜り危ういものになる。日本の経験が物語るように、バブル崩壊後に急いで財政再建をしてはいかんのであります。

○で、問題は議会、というよりは共和党の出方である。米国経済を悪化させちゃいけない、という程度は彼らも分かっているのであるが、自分たちのメンツもあるからおいそれとは協議には乗ってこない。なにしろ11月23日には、スーパーコミッティーの歳出削減交渉が決裂した直後でもある。

○さらに言えば、来年は選挙があるわけだから、「まっ、来年は景気が良くない方が、野党としては選挙に有利かな〜」という未必の故意みたいな恐るべき発想もある。なにしろ2012年の大統領選挙の行方は皆目不透明なるも、議会選挙は圧倒的に共和党が有利になっているので、その辺も重ね合わせて考えると、なかなか妥協しようというインセンティブは働きにくいのであります。

○だからと言って、オバマ大統領が「皆さん、悪いのは議会、それも共和党ですよ〜」と声高に訴えているのもいかがなものか、という気がする。だってホワイトハウスのHPが議会を非難するのは、日本で言えば官邸のHPが「自民党はケシカラ〜ン」と書くようなものですから。ホワイトハウスが必死になればなるほど、議会共和党としては妥協が難しくなるのでありますよ。

○ここまで来ると、行政と立法の両者が責任を擦り付けあっている構図となる。国の将来のことなんて、いったい誰が考えているんだろう。日本の政治も大概にひどいけど、アメリカも相当にひどい。このことは自信をもって断言できますね。


<12月8日>(木)

○ハッと気がついたら、今日は真珠湾攻撃70周年の日である。実はこの毎日新聞の記事、3日前に出ていたのであるが、あらためて読み返してみる。

●ニュース争論:真珠湾攻撃70年 半藤一利氏/松尾文夫氏

http://mainichi.jp/select/opinion/souron/news/20111205ddm004070002000c.html 


○よく知られている通り、真珠湾攻撃は日本では12月8日だが、アメリカでは12月7日である。連合艦隊は、日付変更線を越えてハワイを攻撃したのである。ゆえにオバマ大統領の声明文は、既に12月6日には公表済みである。こんな書き出しである(昨日も書いたとおりだが、一番上のカウンターの表示が実にウザイ感じである)。

On a serene Sunday morning 70 years ago, the skies above Pearl Harbor were darkened by the bombs of Japanese forces in a surprise attack that tested the resilience of our Armed Forces and the will of our Nation. As explosions sounded and battleships burned, brave service members fought back fiercely with everything they could find. Unbeknownst to these selfless individuals, the sacrifices endured on that infamous day would galvanize America and come to symbolize the mettle of a generation.

○今年の声明文の書きっぷりは、「アメリカは試練に遭っても強いのである」式のお説教モードが入っており、暗に「今も大変なんだから、共和党はちゃんと協力しろよ」というメッセージが込められているようである。が、とにかく、「ある穏やかな日曜の朝、真珠湾の空に突如として日本軍の爆撃機が現れ・・・」というのが、アメリカ側で伝えられている物語である。

○これに対し、日本側に伝わる記憶は、この半藤一利さんの語り口が典型的である。

半藤 東京の向島にあった国民学校の5年生でした。12月8日は月曜日で学校へ行かなきゃいけないので、7時ごろには起きていました。薄氷が張るぐらいの本当に寒い朝でしたね。午前7時にラジオの臨時ニュースが流れ、「帝国陸海軍は本8日未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり」と。普段通りにラジオ体操も放送されましたが、臨時ニュースは何べんも繰り返されました。学校に行くと先生たちが興奮していましてね。1時間目に1年生から6年生まで校庭に集められ、校長の訓示がありました。「大変な時代になる。しっかり勉強せい」という、下町の悪がきには迷惑千万な話でしたが、学校中が緊張していたことを明瞭に覚えています。

○つまりアメリカでは日曜日だったが、日本では月曜日であった。だから当時の小学生は、「学校で校長先生から開戦を聞かされた」というのが定番の物語となる。こんな風なズレが、いつでも日米関係にはつきまとう。そして誰かが「通訳」してくれないと、この段差でしばしば人は怪我をするのである。

○ちなみに在ワシントンのジャーナリスト、クリス・ネルソン氏が伝えるところによれば、"normally, in recent years, the annual Pearl Harbor Day commemoration is something of an historical artifact, in that increasingly for most Americans, it's almost as remote as the Civil War.:"であるという。つまり真珠湾は、南北戦争のような歴史上の出来事になりつつある。不肖かんべえは50周年のときにワシントンに居たけれども、当時はかなりの騒ぎであったから、やはり20年の月日は長いものなのであろう。


<12月9日>(金)

○ここにご紹介するのは、とある家族の写真です。ごく平凡な家族があり、ある犯罪行為があり、そこから気が遠くなるような時間が流れています。目をそむけることの出来ないような悲劇があります。


●あさがおの会 VR写真展

http://www.asagaonokai.jp/jp/vrj/index.html?x=138&y=19 


○1人でも多くの人の目にとまることを願わずにはいられません。


<12月11日>(日)

○買い物があったので柏市内に出てみたところ、いろんな場所で「レイソル優勝セール」をやっている。それはいいのだが、道が混むのは困ったものである。

○いちばん大きな書店、ということで「流山おおたかの森」の紀伊国屋書店へ。柏市内ではないのに、ここでもレイソルセールである。で、買いたかったのは、『坂の上の雲』全巻である。司馬遼太郎作品はほとんどウチにあるはずなのに、なぜか見当たらないのである。で、大人買いしてしまいました。え?Book Offで買えばいいだろうって?うんにゃ、これは新品でないとイヤなの。そのくらいの贅沢は良いではないか。

○そして今宵もNHKの『坂の上の雲』を見るのであった。とうとう二百三高地の段である。柄本明演じるところの乃木将軍は、まるで宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長のようである。児玉源太郎を演じる高橋英樹は、久々にバラエティ番組やクイズ番組の人ではないところを見せてくれた。

○今までのNHK大河ドラマでは、戦国時代の騎馬隊や鉄砲隊の戦闘シーンが登場してきたが、やはり近代戦の戦闘シーンは見ていてツライものがある。鉄条網や砲弾が、見ていてしみじみ痛い。それでも何とか二百三高地落ちる。史実なんだから、当然落ちる。でも、爽快感はない。そういう演出だし、そういう史実なのだ。

○ということで、衛星放送で早めの時間に見たのであった。なんとなれば、その後はレイソルがモンテレイとの決戦を見なければならないからだ。ただ今前半戦を戦っているが、これはちょっと厳しい戦いか。ガンバレ、レイソル。(19:43)

***************

○いやあ、レイソル勝ってしまいました。北中米カリブ代表のモンテレイを破ってしまいました。ネルシーニョ・マジックはどこまで続くのか。

○昨年のレイソルはJ2のチームでありました。ほんの1週間前に、J1の覇者となりました。そして今日になったら、世界ベストフォーのクラブチームになってしまいました。お次は南米覇者のサントスと戦います。いやはや、何という勢いでしょうか。

○ということで、柏市はわずか1週間で「世界ベストフォーのチームがいる町」に昇格したのでありました。これでは、また買い物をしなければ(22:29)。


<12月12日>(月)

○毎年12月12日は「今年の漢字」を発表する日なのですね。その心は、「いい字一字」という財団法人日本漢字能力検定協会さんの親心にあるとのこと。

○で、今年の漢字は「絆」なのだそうです。

○当欄の11月28日にも少し書きましたが、今年は東日本大震災によって、はからずも日本社会が持つSocial Capital(社会関係資本≒地域の絆)の底力が確認されたわけなので、この選定は納得のゆくものだと思います。過去にはこれはちょっとなあ〜、という年もないわけではなかったので(例:2003年の「虎」)。

○ちなみに先日、仲間内で「Social Capitalという英語をなんと訳したらいいんだ?」という議論をしていたら、この人が「ああ、あれは『地域の絆』って訳せばいいんですよ」と教えてくれたのであります。なるほどなぁ、と深く感心してしまったわけでありまして。

○我が町内会では今週末から恒例の「火の用心」が始まります。これもまた、ソーシャル・キャピタルの発露であると思うのであります。


<12月13日>(火)

○アメリカ大統領選挙の資料を少しばかりメモしておきましょう。

●東京財団:アメリカ大統領選挙Update2 (さすがに深いです)

●フォーサイト:アメリカの部屋 (重度のオタクです)

○そして以下はいつものマンガネタです。

なぜギングリッチは失速しないのか

なぜロムニーは愛されないのか

○考えてみれば、年明け1月3日はアイオワ州党員集会ですからね。勉強しなきゃ。


<12月14日>(水)

○この季節恒例、日経・テレ東・日経センター主催、エコノミスト懇親会に出席。ホテルオークラ別館にて、いつもながら盛大なパーティーであります。

○この会の呼び物は、来年の為替と株価の予想と発表。不肖かんべえは昨年、1ドル70円台後半を予測しているので、ひょっとしたらお立ち台に呼ばれるかな〜などと不埒なことを考えていたら、恐るべし、「ピタリ賞」が誕生したのである。それは中央大学の森信先生。税制の大家に当てられてしまっては、マーケット関係者の面目は丸つぶれではないか。といっても、毎年、丸つぶれの連続なんですけどね。

○その森信先生に向かって、ワインを片手に、「その昔、竹下さんが唱えた”消費税6つの懸念”の向こうを張って、”平成版・消費税6つの懸念”を作ったらどうか」などと議論を吹っ掛けることができるのだから、堪えられません。だって今の消費税論議って、「足りないから上げさせてください」「その前にもっと歳出を削減しろ」の単なる押し問答で終わってるんだもん。もっといろいろ論点があるでしょう。上げ幅とスピードとか、軽減税率とか、二重課税とか、駆け込み需要とその後の落ち込みとか・・・・。

○会場を抜け出して東京駅へ。そのまま東北新幹線「こまち」に乗車。ただいま秋田駅に向けて驀進中。明日は秋田魁新報社さんのセミナー講師です。さて、どんなに寒いか。

○ところで今朝、東京駅で荷物を預けたんですが、今の時代のコインロッカーは鍵がないんですね。なんとSUIKAやPASMOが鍵代わりになるんです。お金はもちろん、カードから引き落とし。なるほど、これなら鍵をなくす心配がない。便利なものだと感心したのですが、これで自分が荷物を入れたロッカーの場所を忘れたらどうなるんでしょう。ええ、もちろんしっかりとメモしましたけど。


<12月15日>(木)

○忘れないように書いておきますが、昨晩のパーティー最大の収穫は、この本の著者と立ち話ができたことでした。

●山縣有朋の挫折 誰がための地上自治改革(日本経済新聞出版社)

○まだ本を読んでもいないのに(例によって積ん読状態)、著者から執筆の裏話を聞いてしまう、なんてのは本来はよろしくないことなんでありますが、このところ日曜の夜ごとに『坂の上の雲』を見ているものとしては、ついつい気になる話題なのであります。

○司馬遼太郎は自分が陸軍で苦労したこともあって、陸軍や山縣有朋に対しては非常に筆がキツイです。NHK版では、江守徹が演じておりますね。でも、公平に見て、山縣は確かに嫌な奴だったかもしれないけれども、明治の元勲として大きな間違いは犯していない人だと思います。その山縣は、陸軍を創設したことと、地方自治制度を作ったことを生涯の誇りとしたらしいのですが、前者は暴走してしまい、後者は中途半端に終わってしまった。本人としては、やはり悔いの残るところなのでありましょう。

○本書で著者が強調しているのは、「江戸時代の地方自治制度は実にしっかりしていた」ということであります。実は明治維新というのは今の政権交代くらいに簡単なものであって、明治政府は地方の制度にはほとんど手を加える必要がなかったのだそうです。だからこそ、明治政府は宿願たるところの条約改正や、日清・日露戦争といった外交・安全保障問題に専念することができた。先日来、何度も言及している「日本の優れたソーシャル・キャピタル」というものは、長い歴史を経て育まれてきたものであったのだ、ということをあらためて感じる次第なのであります。

○ということで、秋田県に来ております。

○本日は県北の大館市で講演しました。明日は県南の横手市に参ります。夜中に川反の繁華街を散策してきました。ここを訪れるのは3度目ですが、1度目は入社2年目の冬、2度目は2004年の1月、そして今回です。気が付いたら、いつも秋田には冬に来ているのですね。

○と言っても、そんなに寒くはありません。かる〜く粉雪が舞う程度。ハタハタときりたんぽ鍋を賞味してきました。


<12月16日>(金)

○一夜明けたら秋田市は雪景色でありました。横手市までの道のりは一面の銀世界。なにしろ当地は「かまくら」の本場でありますから、雪はまことに深いのです。

○その昔、富山市で過ごした高校生時代に、空から降ってくる雪を見ながら"incessantly"(絶え間なく)なんて英単語を覚えたものであります。でもねえ、incessantなんて単語、その後の人生では1回も使う機会はありませんでしたなあ。今から思えば、典型的な受験用の英単語でありました。普通だったら、"continuously"とか、"without cease"あたりでしょうかね。

○全日空便に乗って、雪景色の秋田空港を飛び立ったところ、1時間10分で羽田着。こちらは夕日が真っ赤に染まってキレイでした。いつものことながら、日本は狭いように見えて広いです。もしくは多様なのであります。


<後記> 秋田での講演内容はこんな感じでした。

●秋田魁新報:2012年の日本経済展望 県北・県南政経懇話会12月例会

http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20111217sk 



<12月18日>(日)

○12月14日にもちょこっと書いた話ですが、消費税論議を深めるためにこういう議論はどうでしょう。

○1988年に竹下首相は、国会答弁で「消費税6つの懸念」を披露しています。「これから消費税を導入すると、こういう配がありますよ」と、他人に言われる前に自分から進んで言った、というところが立派だと思うのです。

第1の懸念=逆進的な税体系となり、所得再分配機能を弱めるのではないか。
第2の懸念=中堅所得者の税の不公平感を加速するのではないか。
第3の懸念=所得税のかからない人たちに、過重な負担を強いることになるのではないか。
第4の懸念=税率の引き上げが容易に行われるのではないか。
第5の懸念=事業者の事務負担が極端に重くなるのではないか。
第6の懸念=物価を引き上げ、インフレを招くのではないか。

○昭和の政治家や官僚はとても用意周到だったんですね。そこで今回の消費税論議においても、野田首相は「不退転の決意」を示す前に、「平成版の6つの懸念」をみずから示してはどうでしょうか。以下はその私案。

第7の懸念=税率を上げた瞬間に生じる駆け込み需要と反動減による歪みをどうするか。
第8の懸念=欧州債務危機などにより、急速に景気が冷え込んだ場合にどう対応するか。
第9の懸念=エネルギーや自動車などの二重課税を見直すべきではないか。
第10の懸念=公共交通や医療サービスには軽減税率が必要ではないか。
第11の懸念=被災地の復興に影響が出るのではないか
第12の懸念=税率の上げ幅とスピードはどの程度が適当か。

○税制は、細かな部分に神が宿ります。「とにかく足りないので上げさせてください」「その前に国会議員の数を減らせ、ゴラァ」という議論ばかりやっておりますと、後で後悔することになるかもしれません。昭和の流儀に学ぶべき点は小さくないと思うものであります。

○以上、本日付の北日本新聞「時論」欄に寄稿した内容のエッセンスでした。


<12月19日>(月)

○つくづく2011年という年は一筋縄ではいきません。最後までハラハラさせてくれますね。今度はキムジョンイル総書記が死んだそうであります。

○本来、ちゃんとした北朝鮮専門家というものは、この国には5〜6人しか居ないのでありますが、こうなると途端に「にわか北朝鮮専門家」が沸いて出て、もっともらしいコメントを述べていたりします。せめて自分はそうじゃいかんと自戒するものですが、不謹慎ながらつい一言。ま、その辺が「かんべえの不規則発言」というもののでありまして。

○一般論として申し上げますが、ワンマン社長が後継者をハッキリさせずに死んだときは、「誰が社葬の葬儀委員長になるか」に注目しなければなりません。一例を挙げれば、そう遠からぬ日に某Y紙グループなどでそんな日が来るかもしれませんけれども、その場合の暗闘はかなり激しいものになるでしょう。(某Wさんの前任者のMさんは94歳で逝去されたそうなので、かなり先のことかもしれませんけれども)

○で、本日の日経夕刊を見ると、「葬儀委員会の名簿では、三男の金正恩(ジョンウン、28)が筆頭で読み上げられており、後継者に最有力とみられる」とある。この表現の読み方が難しくて、ジョンウン氏が葬儀委員長であるかどうかは、おそらく「ビミョー」なのでありましょう。そりゃそうでしょう。まだ28歳で、つい数年前までは無名の存在だったのですから。故人の三男ですから、喪主になることはできるでしょうが、葬儀委員長になるのは難しいですぞ。周囲には年長者がいっぱいおるわけですし。

○例えば本能寺の変の後は、「誰が信長の葬儀を仕切るか」が織田家後継レースの鍵を握りました。長男の信忠が死んでいたので、次男の信雄と三男の信孝の争いと目されていたところ、羽柴秀吉は「信忠の子供の三法師を跡目に」と主張して、その後見人を買って出ることで事実上の葬儀委員長に収まってしまうのです。まさしく秀吉の政治的天才のなせる技でした。柴田勝家などの武将たちは、これでまんまと出し抜かれてしまうわけであります。

○あるいは大平正芳首相が、選挙戦の最中に死んでしまった辞令もあります。このときは田中六助が巧みに政界を遊泳して、伊東正義官房長官を臨時代理に就任させ、ポスト大平には鈴木善幸総務会長を担ぎ出すのであります。ご本人はそれで通産大臣のポストをゲットする。宏池会の重鎮であった前尾繁三郎は、「幕が開く前に、芝居が終わっていた」と呆れたそうですが、つくづくお葬式の場というものは政治が大きく動くチャンスなのであります。

○ということで、北朝鮮の「次」を見抜く鍵はお葬式にあり、ということになるのだと思います。いやね、たまたま今日、こういう会社の人に会っていたもので、ついついそんなことを考えてしまいました。

○最後にもうひとつ、こんなのはどうでしょう、2011年の3大不謹慎。「ジョブズが成仏」「談志が死んだ」「総書記の葬式」。


<12月20日>(火)

○今朝の「くにまるジャパン」で、北朝鮮研究の第三世代(と私が勝手に呼んでいる)宮本悟先生に電話をつないでお話を聞いてみました。いろいろ勉強になりました。特に個人的に面白いと思った部分を以下の通りメモしておきます。


●最高指導者の葬式では、葬儀委員長は決められない。94年の金日成のときも決められず、金正日が事実上の委員長を務めた。今回も同様だろう。

●1994年に金日成が死んだときは、外国の弔問団を受け入れている。今回は受け入れないので、葬儀の仕事は前回に比べれば簡単なはず。

●金日成の時代から、北朝鮮内部の政権批判はちゃんとあった。それらを何度も乗り越えてきたのが金王朝。北朝鮮は「アラブの春」にはならない。

●金正日は何度も病気になったが、その間も政府はちゃんと機能していた。だから周囲の人材はそれなりに育っているはず。

●当面は集団指導体制で金正恩を守り立てていくだろう。国家あっての指導者層なので、彼らにとってもプリンス・正恩の存在は大切。

●日本政府の対応は今のところ悪くない。野田内閣は他国に先駆けて哀悼の意を表した。これは今後の対北朝鮮関係の資産になるかもしれない。


○最後の部分は、あまり触れている人がいないけど、重要なポイントだと思います。今頃、オバマ大統領も、弔電を打ったものかどうか悩んでいることでしょう。ちなみに1994年には、クリントン大統領が金日成の死に対して弔電を打っている。韓国の李明博大統領も同様で、こちらは1994年当時には打ってない。もし打つとしたら、どういう文面が適当か。これぞ「外交」というべき瞬間ですね。

○ところで第一世代の北朝鮮ウォッチャーの動向を見てみると、伊豆見元先生は、「新体制の行方未知数」ということで、「北朝鮮は核抑止力を強化しなくてはならないとして核実験を行う可能性もある」とコメントしている。他方で武貞秀士先生は、「内部対立原因ではない」という説で、「金総書記の喪に服する期間は重要だ。華々しい核交渉などは慎む時期が1〜2年続かざるをえない」とのこと。

○アラーミスト・伊豆見先生vs.偉大なる領袖・武貞先生という対決ですね。今までも何度かこういうことがありましたが、今回は後者に乗ってみたいですね。一方で「金正日替え玉説」を唱えていた重村先生は、今回は何と言っているのかなあ。


<12月21日>(水)

○突然ではございますが、台北に来ております。1月14日に迫った総統選挙の取材が目的です。考えてみたら、今年初めての海外出張だったりして。実は今年は、国内出張ばかりしてたんです。ええ、国内便だけで、全日空のマイレージがブロンズになってしまったほどに。(今日はたまたまJALでしたけど)。今日は新装なった羽田の国際ターミナルを初めて使いました。評判通り、使い勝手がよろしい。やっぱり空港って、あんまり広くない方がいいと思うんですよねえ。

○で、こちらに来たら、案の定、選挙戦のどでかい看板が至る所にあります。TVの画面でも、ひっきりなしに候補者の宣伝が登場します。ただし今回は、台湾における議会であるところの立法院選挙が同じ日に行われるために、候補者がやたらと多いんですね。それも各候補者が、総統候補(国民党は馬英九、民進党は蔡英文)と一緒に写っている看板が目立つ。こういうことになると次期総統は、党内の立法委員(議員)に対して恩を着せることができるので、党内基盤が強化されることでしょう。ちょっと議院内閣制に近づくわけですね。

○もともと台湾の総統は、元首であり、三軍の長であり、首相である行政院長の任命権を持つ、非常に強力な指導者です。今回は5度目の民主的な総統選となるわけですが、史上初めて立法院とのダブル選挙となったことで、いろいろと変容が生じるのかもしれません。まあアメリカ大統領選なんかも、大統領選と議会選挙をいつも同じ日にやるので、別に珍しいことではないのであります。同日選にする方が、投票率は上がるし、選挙のコストは下がるし、確かに合理的ではあるのです。ただしフランスや韓国のような別々型から、アメリカのような同日型に変えた瞬間に、思わぬ変化も生じることでしょう。

○例えば、立法院での勢力を守ろうと考えた親民党の宋楚愉候補が、大方の予想を裏切って総統選に出馬してしまった。結果として、2000年のような「三つ巴決戦」になってしまったので、現職の馬英九総統の再選が急に危うくなった。蔡英文候補が、あと一歩のところまで迫っている。あと3週間でどんなことが起きるのか。いやあ、選挙ってホントに面白いですねえ。


<12月22日>(木)

○台北で国民党本部と民進党本部を見てきました。とっても楽しいんです。選挙って、エンターテイメントですね。

●国民党本部: http://www.taiwanbravo.tw/  

○馬英九/呉敦義ペアのスローガンは「台湾加油」(台湾ガンバレ:Taiwan Bravo)なんです。そこで文字通り「加油」しちゃおうということで、総統/副総統候補の二人がガソリンスタンドの店員に扮している。国民党本部の建物は、その二人の巨大なポスターが描かれていて、中に入ると「選挙グッズ」を売っている。今回の必須アイテムはお守りで、「台湾平安」と書かれている。2009年の大型台風など、落ち着かないことが続く世相を反映しているとのこと。

●民進党本部: http://iing.tw/ 

○蔡英文/蘇嘉全ペアのスローガンは「現在決定未来!」(Taiwan Next)なんです。こちらの必須アイテムは「ぶたの貯金箱」で、党本部には少額の献金を入れたプラスチックの貯金箱が全国からなんと20万個以上も寄せられているという。金額は「不明」とのことで、会場の端っこの方ではパチンコ屋さんのような盛大な唸りをあげて小銭を集計している。人は他人からもらった1万円のことはすぐに忘れますが、自分が払った千円のことはけっして忘れません。この貯金箱を贈った人たちは、かならず投票してくれるでしょう。

○両者を見比べて気がつくのは、「国民党は青、民進党は緑」といういつものパターンでなくなっていることです。国民党は青と赤を使い、まるでアメリカ大統領選挙のような色合いになっている。今年が1911年の建国から百年ということで、市内の至る所に青天白日旗が掲げてあるのだけど、その旗の色合い(青、赤、白)をつかっているわけなんですね。ただし口さがない人たちの間からは、「国家予算を使って選挙運動に役立てている」との批判もあるとのこと。

○民進党側はTaiwan Nextと書いた黄色の矢印が目立つ。緑を使っていないのは、「緑=独立=陳水扁」のイメージが強くなっているので、そこから距離を置きたいと考えたからでしょう。中道派を取り込むためにも、独立色を薄くすることは重要です。また、陳水扁は2期8年にわたって政権を担い、当初は多いに期待を集めたものの、最後は汚職批判の大合唱の中で総統の座を降りたわけですが、その痛手はなおも民進党に響いているように思われます。こんな風に「青か、緑か」という二者択一ではなくなっているというのが、2012年選挙の特色ではないかと思います。

○考えてみれば、「青か、緑か」という選択は、もともとは「統一か、独立か」を意味していた。台湾の選挙ではしばしば"Taiwan Identity"という重いテーマが争点になってきたのだが、今となっては統一を望む人はほとんどおらず、かといって独立を口にするのも疲れてしまい、「現状維持」以外は考えにくくなっている。有権者側は、「できもしないことを、偉そうに言うんじゃねえ」ということになる。そうなると、選挙のテーマも身近な話が多くなり、なんと「柿の値段」が選挙戦の一大争点として浮上した、というから驚いてしまう。

○台湾が民主的な総統選挙を行うのはこれが5回目。こんな風に選挙のテーマがみみっちいものになることは、普通に考えれば「情けない」(スモールポリティクスの時代)という評価になるのだろうが、実はこれこそが民主主義の成熟なのかもしれないと思えてくる。

○つくづく民主主義は台湾の命綱である。2012年になれば、「台湾は民主的に指導者を選んでいるけど、中国のはいったいありゃなんだ」と誰もが思うのではないだろうか。それは中国側にとって、まことに頭の痛い問題なんじゃないかと思う。


<12月23日>(金)

○二泊三日の強行軍で台湾を取材してきました。印象に残った発言をメモしておきます。


●台湾文化の40%は中国のものだが、30%は日本が残したもの。あとの部分が台湾オリジナルだ。われわれは日本を必要としている(国民党支持の実業家)

――それを言われると、日本文化も3割程度は中国のものであるかもしれないね。だって漢字を使っているんだもの。


●ECFAは中国側の譲歩により、台湾側に一方的なメリットがある。こんな関係は長くは続かない。安定した関係には相互の協力が必要だ。日本はアメリカから学んで成長したが、中台の関係はそうではない。(陳博志台湾シンクタンク所長)

――ECFAは途上国である中国が、先進国である台湾に譲歩するという変な協定なんですよね。ちょっと「毒まんじゅう」っぽいです。


●台湾人がこれだけ選挙に熱くなるのは、皆でやる強いスポーツがないからじゃないかなあ。(淡江大学の蔡錫勲先生

――そういえば民進党本部では、「志作人」(ボランティア)のバッジをつけた人を大勢見かけました。選挙戦術も高度で、毎回、いろんなスローガンや小道具が飛び交って、見ていて飽きません。

――確かに台湾は集団競技があまり強くないです。個人では、ゴルフのヤニ・ツェン選手の活躍が有名ですね(野球の林威助は、もうちょっと打って欲しいなあ。掛布の背番号つけてるんだから)。ちなみに馬英九総統は、選挙公約で2024年にオリンピックを誘致すると言ってます。

――たまたま帰りの飛行機の中で読みましたが、エコノミスト誌が"Why China fails at football"という記事を載せています。冒頭のジョークは、まことに血も涙もない感じですな。


●台湾では日本風に命名すると商品がよく売れるんです。例えばコンビニ弁当も「弁當」ではなく、わざわざ「お弁当」と表記するんです(現地コーディネーターのSさん)。

――「Bento」と「Obento」の違いを理解してくれるのは、世界広しと言えども台湾人くらいのものでしょう。


●日本に義捐金を贈ったら、お礼に大勢の観光客が日本から来てくれた。ありがとう。だけどわれわれは、当然のことをしたまでだ(夜市のマッサージ屋さんの経営者)。

――思わず堅く手を握ってしまいました。


<12月24日>(土)

○台湾に行ってる間、向こうはとっても寒くて、「コートもってきて良かった!」てな感じだったのですが、日本はもっと寒かったようですね。って、当たり前か。

○戻ってきてみたら、町内会の2代前の防犯部長さんが亡くなっていて、今日はお通夜でありました。お通夜から帰った後で、恒例の防犯活動(火の用心)もやっちゃいました。故人を偲ぶにもいろんな方法があるわけで、これはいいお弔いになったのではないかと思います。

○亡くなったSさんは、われわれの見回り活動がやってくると、ときどき2階の窓から手を振ってくれたのですが、どうかすると風呂に入っている最中で、深夜にすっぽんぽんの姿を見てしまったものです。いろんな意味で、昭和ひとケタらしい方でありました。合掌。


<12月25日>(日)

○有馬記念が終わる。オルフェーヴルがアッパレな勝ちっぷりを見せた。政治家や経営者の世界では、なかなかスターが出ない時期がある。今がまさにそんな時代であろう。ところが競走馬の世界では、前のスターが忘れられるとほとんど同時に、新たなスターが登場してくれる。さようならブエナビスタ。おめでとうオルフェーヴル。そしてまだ見ぬ次世代のスターたちよ。競走馬の世界は健全なるかな。

○今宵で「坂の上の雲」が終わる。思えば原作を初めて読了した25歳のときから、「これがドラマになるのはいつの日か」と待ち望んだものである。21世紀になってから、3年がかりで放映され、準備期間も含めればNHKにとってまことに長い時間であっただろう。これでもう司馬遼太郎作品で、「どうしても見たいドラマ」はなくなってしまった。次世代の歴史作家はいつ現れるのだろうか。

○かくして2011年が過ぎていく。残りはあと1週間。年内の出勤はあと3日。まだまだ仕事は残っているし、忘年会もあるのだけれど、さすがにゴールが見えてきた。少し早いけど、お疲れ様と言っておこう。


<12月26日>(月)

○この季節恒例の財務省、予算等説明会に出席。当然のことながら、エコノミスト側からの質問は交付国債を使った予算措置に集中する。「なんでこんな手の込んだやり方をしたの?」「普通に予算を組むとしたらどうなるの?」「今年の夏の時点では、どんな風に考えていたの?」・・・・財政当局のホンネを引き出すために、いろんな駆け引きが行なわれるわけなんです。

○これに対し、中期財政フレームの枠組みを守るためのやむを得ない措置です。「つなぎ国債」では、財源がないから赤字国債になってしまいます、などの回答がMOF側からあるのだけれど、正味な話、あまりにも高等な会話過ぎて、私の粗雑な頭ではどこがポイントなのかよく分かりませんでした。すんません。

○ところでそもそもの話、交付国債ってなんなのよ。と、ネット上を探したらこんな説明がありました。


 交付国債とは、国が債券発行による収入金の手当を行わずに、国が行うべき債務の履行のために、金銭にかえて発行・交付する国債のことをいいます。第2次大戦後、戦争によるさまざまな損害を被った人たちに対する弔慰金や救済・補償金の給付などの目的で発行されたことで知られています。その一身専属的な性格から記名式となっていて、譲渡やその他の処分ができないことになっています。近年では、金融安定化のために預金保険機構に設定した公的資金枠による交付国債があります。破たん金融機関に対する資金援助業務や、一般金融機関からの資産買取業務、資本増強業務等の必要に応じて交付されます。


○要するに交付国債は、いよいよこの国が危ないぞというときに繰り出す、大蔵省もとい財務省の必殺変化球みたいなものなのであります。それを今回は、基礎年金財源の国庫負担分2.6兆円の穴埋めに使ってきた。その結果として、一般会計の歳出額が当初予定より減り、新規国債発行額が44兆円以下に抑えることが出来る。とは言っても、今の政権で消費税増税のスケジュールが見えてくるとは考えにくいので、所詮は画餅に帰するのではないか、との呼び声は絶えない。

○何だかよく分からないけど、この国はやっぱりやばいんじゃないのだろうか。この国の最後の砦は、あたしゃやっぱりMOFだと思ってるん人なんですけど、そんなことないよ、大丈夫だよと誰か言ってくれませんかねえ。


<12月27日>(火)

○「良いお年を」の挨拶が飛び交う季節となりました。今日、都内某所で脱力さんこと上杉氏に会ったら、今週一杯で「無期限活動休止」なんだそうです。テレビや雑誌のレギュラーもほとんど降りてしまって、来年の手帳はスカスカのようでした。うーん、他はどうでもいいんだが、「週刊SPA!」のニュースディープスロートも辞めてしまうとは。ご覧になっている方はご存知の通り、掲載されるときはいつも上段が上杉氏で、下段がワシなんですよねえ。来年は誰とセットになるのかねえ。

○上杉氏曰く。来年になったら福島県に引っ越す。世界の選挙を見て回る。自由報道協会代表だけは続ける、といったご予定とのこと。しかるに不肖かんべえも含め、その場に居た誰もが、「また言ってらあ」「またすぐに戻ってくるって」というモードであったことは、付記しておくべきでありましょう。これは上杉氏に信用がないからではなく、彼に対する期待が高いからこそであるということにしておきましょう。

○2011年はいろんなことにピリオドが打たれた年でした。人生の転機を迎えた人は少なくなかったと思います。当方はまだしばらくは「あいも変わらず」の日々が続きそうです。出勤はあと1日。これがまた忙しそうなんだ。


<12月29日>(木)

○昨日で仕事納め。昨晩は職場の打ち上げがあって、それから高校時代の仲間4人で飲み会。4人の中ではワシが唯一のノン・スモーカーであった。今どきめずらしい。さらにワシが唯一、ipadを持っていなかった。これは是正の必要がありはしないか?

○今日は年賀状書き。いつもギリギリである。こんな風に綱渡りをしながら2011年が過ぎていく。もうあまり仕事はしたくないのだが、来週火曜日にはアイオワ州党員集会なんだよな〜。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki