●かんべえの不規則発言



2009年11月






<11月1日>(日)

○浮き世の義理があって一橋大学へ。国立市はとっても久しぶりで、最後に来たのはいつのことだったかな。ワシが在学していたのはかれこれ30年近く前で、柏市に引っ越してからはほとんどご無沙汰である。

○学生時代に見慣れた景観はかなり失われていて、国立駅も工事中である。麻雀荘とか、学生向けの飯屋や飲み屋みたいなものがすっかりなくなっていて、妙にこじゃれた店が増えている。昔からスノッブなところのある街であったが、ますます嫌味が強くなっているように感じるのは気のせいか。あるいはワシの方が、身も心も常磐線沿線の人になってしまったからだろうか。

○この週末は一橋祭をやっている。運営委員のハッピが昔と変わっていないのが懐かしい。この時期、商店街からの広告費も容易に集まらず、インフルエンザ対策もしなければならず、さぞかし苦戦しているものと拝察する。図書館前の池の水が抜かれていたのは、かつてはここで「池落ち」と呼ばれる儀式があったので、危険だということで抜いてあるのであろう。それが悪いとは言わんが、しみじみと時代じゃのう。

○大学祭でやっていることは、昔とさほど変わっていない。要するにあんまり知的なことはやっていなくて、どこでもそうだと思うが屋台が多い。そういえばワシも昔、生協の前でカレーを売った覚えがある。明らかに変わっているのは、女性の比率が増えていることくらいか。建物も東校舎はずいぶん新しいものが増えていて、大学院には知らない学部も増えていたりする。昔の部室があったあたりはテニスコートになっておった。

○長居していると気恥ずかしさが募る一方であったので、用事が済み次第撤退して、西国分寺を経由して府中競馬場へ転進する。だって今日は秋の天皇賞なんだもの。母校よりも、公営ギャンブル場の方がリラックスできるというのは、ワシはちと人間性に問題を生じさせているのかもしれぬ。


<11月2日>(月)

○先日から米国の中小企業向けノンバンク、CITがつぶれるのつぶれないのという話になっていて、この週末あたりが微妙なタイミングであった。今朝の「モーサテ」でどう報道するのかと思っていたところ、放送が始まる直前にデスクが入ってきて、「はいっ、CITつぶれましたあ〜」。おいおい、そんなに明るく言うなよ。というか、ワシ、咄嗟になんてコメントすればいいんだよ。

○どうもこの事件、米国経済にとって高くつくような気がしている。CITは中小企業間のファクタリングをやっている会社なんで、言ってみれば米国経済の毛細血管みたいなもの。預金を持っているわけではないので、これを救済せよという声はどこからも上がってこない。しかるに倒れてしまえば、資金繰りができなくなって困る中小企業が出るのは必定である。

○このCITショック、意外と広がりを持つのではないかという気がする。倒産企業としての規模は歴代5番目。当面は23億ドルの公的資金が焦げ付いた(TARP案件の栄えある第1号!)ということが注目されているが、むしろこの先のクレジットクランチの方が心配である。日本経済も散々経験したところだが、病み上がりの身体には小さなショックも大きく響くのである。

○日本で言えば消費者金融みたいな存在であろう。その消費者金融を、グレーゾーン金利の問題で締め上げてみたところ、一気に中小零細企業の資金が目詰まりをきたし、一種の「官製不況」になってしまった。なおかつ、懲りずに今度は総量規制も加わるということで、このままでは不況を加速してしまうかもしれない。

○仄聞するところによれば、現政権においても大塚副大臣あたりはすでにそういう問題意識を持っていて、規制緩和も検討中という。その辺はさすがに金融のプロだと思うのだが、果たして亀井大臣のご意向やいかに。この場合の弱者保護とは、果たして規制の強化なのか緩和なのか。

○くれぐれも金融と安全保障の議論はポピュリズムを入れちゃいけません。あ、そういえばどちらも"Security"と呼ぶのはこれいかに。


<11月3日>(火)

○今朝は早起きして浜松町の文化放送へ。昨日と今日、「浜祭り」をやっているので、「くにまるワイド ごぜんさま〜」が公開生放送なのです。

○昨晩は雨が降ったんで天気が心配でしたが、そこは今日、文化の日は「晴れの特異日」であります。ちゃんと晴れました。でも、寒かったですなあ。放送スペースは直射日光がさしていて、デスクの上の温度計は22度をさしている。それでも体感温度は10度以下でしたな。カイロを持っていたお客さんがいらっしゃいました。もうそんなものを使う季節になりましたか。

○で、今日はお客さんやリスナーの皆さんから、「景気ウォッチャー調査」を募集しました。まあ、予想はしてましたが、「マジ景気悪い」というご意見が多くて、なかなか紹介しにくいものもありました。介護の仕事をしている方から、「福祉の世界はこれから良くなるでしょうか?」というお便りがあったのですが、あまりにストレートパンチだったので読めませんでした。どうもすいません。

○番組が終わってから、連れていった娘と一緒にポケモンセンターへ。そこからポケモンラリーで6箇所のスタンプ集め。東京タワーまで足を伸ばしたので、ついでに「コレ」を見ることができました。なんと今日までだったのですね。ちなみに10月31日に行なわれたブレディスローカップでは、ニュージーランドが32対19で豪州を撃破しましたぞ。

○ウチへ帰ったところで、近所の水道屋さんから電話。某日、工事に行きますのでよろしく、という用事のついでに、「今日、聞いてました」。ぎくっ。


<11月4日>(水)

○ちょうど1年前の今日は、米大統領選でオバマが当選した記念すべき日でありました。今年は"Off-Year"であって、大統領選も中間選挙もありません。でも、知事選や補欠選挙は行われる。その結果はこの通りでありました。

○バージニア州とニュージャージー州の両方の知事選で共和党が勝ったというのは、オバマ政権にとっては大事件だと思います。バージニア州は昨年の選挙で44年ぶりに民主党が勝って、「もはや南部は共和党の金城湯池ではなくなった」と大騒ぎになった場所です。前職のティム・ケイン知事はオバマの副大統領の有力候補であった人で、その後継ぎ選挙で民主党が大差で敗れてしまった。

○さらにニュージャージーは典型的なブルーステーツで、現職のコーザイン知事もまたいろんな場所で名前が上がっていた有力政治家。だから投票日の前日には、オバマが選挙区に入ってテコ入れした。それが土壇場でせり負けてしまう。これまた大事件で、「責任者出て来い」ということになる。もちろん責任者はオバマ、敗因は無党派層が離れてしまったこと、その理由はおそらく、医療保険改革とアフガン政策である。

○こうなると、共和党は急に元気になってくる。と同時に、「来年は中間選挙だ!」ということで保守的な選挙区の民主党議員は浮き足立ってしまう。"Blue Dogs"と呼ばれる中道寄り民主党員は、一斉にオバマ政権から距離を置こうとするだろう。すなわち、医療保険改革も、地球温暖化防止も、移民拡大も反対ですぅ、"Public Option"なんて冗談じゃねえ!てなことになるのではないか。

○さらに心配なのが、11月6日21時30分(日本時間)に発表される雇用統計がある。失業率は9月データが9.8%なので、10月はいよいよ10%台乗せかもしれない。そんなもの、経済学的には単なる誤差の範囲なんだけど、政治学的にはいよいよ大事件となります。

○こうなると、医療保険改革法案の審議が大詰めを迎えているというのに、オバマのアジア外遊はいかがなものか、という声が出るだろう。その場合、APECシンガポール会議には、急きょバイデン副大統領が出席します、という手がある。オバマ訪日も自動的にキャンセルになる。まんざらない話ではないと思う。

○これには前例がある。1995年秋、予算審議が難航したためにクリントン大統領はAPEC大阪会合出席をドタキャンし、代わりにゴア副大統領が来日した。ゴアは帰国してから、「アンタが行かないと日米関係が持たないぞ」と脅したが、クリントンは「チェルシーの試験勉強を見てやらなきゃいけないから」といってこれを拒否した(このエピソードは、最近出版された「ザ・クリントン・テープス」で明らかにされた)。

○そんなわけで、日米首脳会談が実現したのは1996年春になってからであった。ところが瓢箪から駒が出た。この間、事務方の協議はトントン拍子に進み、しかも96年3月には中国の台湾向けミサイル演習があって、東シナ海に緊張が走った。そのお陰で「日米同盟は重要である」という認識が双方で改められた。橋本=クリントン会談は大成功を収め、日米安保条約の再定義が果たされた。

○このときに決着したのが普天間基地の移転である。アメリカ側が海兵隊の基地移転を呑んだ、という成果に興奮した橋本首相は、その場で大蔵省主計局長に電話をかけ、「いいか、予算は頼んだぞ!」と告げた(この話はたしか船橋洋一著『同盟漂流』に出ていたと思う)。・・・・その後、十数年たつのに、なぜ基地が動いていないのか。ホント、わけが分かりませ〜ん。


<11月5日>(木)

○これでも結構長く経済を見る仕事をしていて、こういうことが本当にあるものか、と驚くようなニュースでありました。「09年度上半期の法人税収がマイナスであった」とのこと。

○財務省が11月2日に発表した税収実績によると、法人税収は1兆3075億円の赤字。企業がいったん納めた税金を国が払い戻す「還付金」が急増して2兆6832億円に達し、税収(1兆3757億円)を上回ってしまったのだそうだ。統計が残っている1960年度以降で初めての出来事となる。

○わが国の法人税収は、ほんの3年前の2006年には14.9兆円と所得税の14.1兆円を超えるくらい好調だった(主要税収の推移はここをご参照)。それがリーマンショック後は急転落。還付金ラッシュはしばらく続くのではないか。下半期の企業業績はある程度は改善する見通しなので、さすがに通期でマイナスとはさすがにならないだろうが、今年は消費税(約10兆円)を下回ることはほぼ確実だろう。

○もともと法人税のポーションが大き過ぎた、というのが日本の税制の欠点であって、こういうときになると困ってしまう。哀しいかなこの税収減を補おうと思ったら、たばこの値段を上げるくらいでは全然足りない。歳出の削減もとてもじゃないが追いつきそうにない。現政権が消費税論議を始めなければならなくなるタイミングは、思ったより早くなりそうである。

○民主党政権としては、できれば向こう4年間消費税には触らず、どうしてもというときは年金問題に対するカードとして切りたい、という腹積もりであったのではないかと思う。でも、それは夢みたいな話であって、与党になったからにはどこかで現実に対して責任を持たねばならない。

○ありがたいことに予算編成は時間が切られている。現政権もマニフェストがどうのこうのなどと言ってないで、早くオトナになってくださいな。てゆーか、斎藤次郎を日本郵政社長にした時点で、マニフェストは反故になっていると思うけど。


<11月6日>(金)

○少し日時が空いてしまいましたが、今週、11月2日の日経新聞「経営の視点」というコラムにあった「転換点の自動車産業〜ローカリゼーションの予兆」という記事がまことに秀逸でありました。論旨はこんな感じです。

●自動車産業というとグローバル産業の印象があるが、これからはローカリゼーションの時代を迎えるのではないか。

●ガソリン時代が終わると言われている。ただしガソリンにはエネルギー密度の高さなどの優れた特質があり、それに代わる動力源はなかなか見当たらない。「2020年時点で電気自動車は世界で10%程度」ともいう。

●おそらく地域ごとにクルマの動力形態が多様化するだろう。ブラジルではバイオエタノール、欧州ではディーゼル、日米はプラグインハイブリッドなど。ガソリンエンジンという世界標準が消え去り、ローカル基準が並び立つ時代が到来する。

●ほかにもクルマの取得階層の多様化や、保護主義台頭の恐れがある。国際競争は後退し、各市場で国産メーカーが優位に立つだろう。

○書き手である西條都夫編集委員に、メールを送って直接聞いてみたところ、すぐに返事を頂戴しました。ガソリンエンジンという「不動の4番バッター」には、エネルギー密度の高さ、安定性、豊富さ、などの強みがあって、これに代わるものは簡単には見当たらない。ゆえに当面は、「ON引退後の巨人のように」小粒なバッターでしばらくつなぐしかないのであろう、とのことでした。

○なるほど、クルマのエンジンを巨人の四番打者に喩えるというのは面白い。要するに、こんな感じでありましょうか。


ON時代:ガソリンエンジン(頼もしい。一時代を築く)

原 辰徳:電気自動車(さわやかだけど、どこか頼りない)

中畑 清:バイオ燃料(安上がりだが、好不調の波が大きい)

クロマティ:ハイブリット(使い勝手はいいが、所詮は過渡期の戦力)

落合博満:ディーゼルエンジン(即戦力だが、トラブルも多い)

ゴジラ松井:燃料電池(これぞ真打ち。ON以来の信頼感)


○やはりゴジラ松井までつなぐのが大変で、実際に燃料電池の開発までは10〜20年はかかりそうですものね。でも、その松井がアメリカにわたってしまい、そのまま戻ってこなかったらどうしましょう。ま、ワールドシリーズのMVPになったんだから、大いにめでたいではないかという気もしますけれども。


<11月9日>(月)

○11月4日のこの欄で、失業率が二桁に乗るかもしれないから、オバマ訪日がキャンセルになるかも、てな与太話を書きました。そしたらホントに6日発表の失業率10月データは10.2%と大台乗せになりました。政権にとっては手痛い数字です。その一方、7日には医療保険改革法案が5票差で下院を通過し、こちらは望外の結果に。そしてオバマ大統領の訪日は、「11〜12日の予定のところを13〜14日に延期」というビミョーなことになりつつあります。

○これに対し、日本での滞在時間は短くなるので、鳩山政権に対する不快感を示したのではないか、という見方が出るかもしれません。でも、5日にテキサス州フォートフッド陸軍基地で発生した銃乱射事件は、それこそ「内閣が吹っ飛ぶ」ような大事件でありましたから、「オバマ大統領が追悼式に出るから訪日延期」となるのは無理のないところだと思います。

○とにかく重い事件です。犯人はアラブ系の陸軍少佐であり、イスラム教徒であり、精神科の軍医であった。アフガン戦線に行く兵士たちに、カウンセリングをするのが仕事だった。その少佐がアフガン行きとなり、精神に異変をきたしてしまったらしい。戦地派遣のための予防接種に並んでいた兵士300人に対し、「アッラー、アクバル」と叫びながら100発以上の弾丸を4分間にわたって乱射。死者13人、負傷者38人。被害者の多くは10代の新兵だった。

○オバマ大統領は、アフガン戦線への増派を主張しながら、その決断が出来ずに日々を重ねている。選挙期間中から「イラク戦争は間違った戦争、アフガン戦争は正しい戦争」と言い続けてきたけれども、今となってはあまりの状況の悪さと人気のなさに腰が引けている。そこを「優柔不断だ」と右からも左からも叩かれている。

○こういうときは、過去の自分の意見を引っ込めるのが良策だろうと思う。フォートフッド事件はまことに痛ましいことだけれども、アフガン戦争に関する現政権の路線を転換する契機にできるかもしれない。アフガニスタンとはかつて大英帝国が植民地化しようとして撤退し、ソ連が10万の兵力を注ぎ込んで泣きを見た場所である。

○政治家が自分の言動に首尾一貫性を求めようとするのは当然のことである。が、そのために縛られると、大概が碌なことにならない。ちなみにこれは、わが国民主党のマニフェストにも当てはまることだと思料いたします。


<11月10日>(火)

○本日は岡三証券の法人セミナーで、エド・ハイマンISI会長とともに「米国経済展望」を議論しました。昨年もこの時期に同じ企画がありましたが、経済情勢がかくも微妙な時期に「30年連続全米第一位エコノミスト」の話を聞けるというのは、まことに得がたい機会というものです。でも、ホントにお相手がワシなんぞでいいんでしょうか。

○ハイマンさんがわりと楽観的な見通しなので、こちらからは「日本の経験」に基づいた悲観的な話をしてみました。とはいえ、もちろんそんなに大きく見通しが違っているわけではありませんでした。米国経済の戻りは思ったよりも順調で、それなりに期待は出来るのだけど、それではリーマン・ショック以前の水準に戻れるかというとそれは難しいし、出口政策を実現していくことも困難を伴う。それでも、「われわれは大恐慌を避けられたかもしれない」と考えれば、これは朗報というものでありましょう。

○確かに米国経済はあらゆる水準が低くなっているので、来年に向けてはGDPも輸出も住宅着工も新車販売も「伸びしろ」がある。でも、雇用が改善するか、といえばそれはかなり怪しい。昔のような5%前後の失業率に戻れるのは何年先か、と考えるとそこは結構ツライところがある。

○逆に新興国市場に対しては強気な見通しでしたね。名目ベース、購買力平価で見たGDPは、2010年に新興国の合計が先進国の合計を上回るのだそうです。これは歴史的瞬間ですね。中国の政策対応を高く評価しておられたのも印象的でした。でも、後で聞いたら「いちばん期待しているのはブラジル」なんだそうで、これもまたひとつの発見でありました。


<11月11日>(水)

○東北電力さんのセミナー講師のために仙台へ。先月に続いて2度目だが、この間に東北楽天イーグルスはパ・リーグ2位の座を獲得するし、ベガルタ仙台はめでたくJ1への昇格を決めた。その点、わが地元・柏レイソルは風前の灯というか、陥落寸前というか、独自の戦いというか、奇跡でも起こらない限りつらい立場である。むむむ。

○地元の方に聞くと、楽天もベタルタも集客力があり、応援の熱気も高まっているとのこと。仙台市民が地元チームを応援する楽しさを知ってしまったわけで、これならチームは豊かになり、戦力も補強でき、結果としてますます強くなるという好循環である。やはり時代は「札仙広福」でありますな。

○さて、今日のセミナーでは、もう一人の講師が地元企業サンドビック社の藤井社長で、この方の話を聞けたのが本日の収穫でした。同社はスウェーデンが本社の工具メーカーで、かつては「お荷物工場」と呼ばれ、本社から閉鎖を宣告されたのだけれども、「外様トップ」の下で見事に立ち直って、今では堂々と「中国に勝つ」経営をやっている。日経ビジネスにも載った話なので、ご関心のある向きは2008年11月10日号をお探しください。

○企業を再生する話というのは、どんな場合でも感動的な物語になるもので、このサンドビック社のケースもご多分に漏れません。煎じ詰めてしまうと「努力と友情と勝利」という、もっとも日本人が好むストーリーラインに収斂する。ふとトルストイの名言(『アンナ・カレーニナ』の冒頭)をもじって、こんな言葉が思い浮かぶ。

「すべての儲かっている企業はどこも似たようなものだが、ダメな会社はそれぞれの方法でダメになる」

○そこに至る過程では、トップの決断があり、現場の抵抗があり、そこを情熱と継続で頑張っていると、どこかで壁を乗り越える瞬間がやってくる。目に見える成果が出てくると、それから先は社員が意気に感じてくれて、改革に勢いがつく。企業再生に王道や方程式なんてものはなくて、泥臭い努力を延々と続けるしかない、ということを再認識させられます。

○強いて法則らしいものをひとつだけ挙げるならば、変化をもたらすことが出来るのは、「よそ者と若者と変わり者」であることが多い。そういう人材を取り込むことができる組織は、再生のチャンスが大きくなる。逆に言えば、企業を停滞させようと思ったらこんなに簡単なことはなくて、「よそ者と若者と変わり者」を使わなければいい。特に若者が腐ったら、その組織は確実にダメになりますな。

○ま、もちろんこんなことは、「分かっちゃいるけど・・・・」の部類であります。会社生活25年目の当方も、自慢ではありませんが、改革に抵抗したり、下手な言い訳をした経験は山ほどあります。そういう意味では、企業再生の話は身につまされることでもあるのです。

○ふと思ったのですが、現在のJALの再建問題では、「OBの年金をどう減らすか」が最重要課題になってしまっている。もしも本気で日航を再建するつもりがあるのなら、こんなに馬鹿なやり方はないと思います。それじゃ組織に、努力も友情も芽生えないじゃありませんか。再生のストーリーを描こうと思ったら、憎しみを増幅するようなやり方は愚の骨頂だと思いますぞ。


*ちょっと宣伝です。明日のかんべえさんはテレビ東京NEWS FINE(15:35〜16:00)と、朝日ニュースター「ニュースの深層」(20:00〜20:55)に登場いたします。ネタは米国経済とオバマ訪日であります。


<11月12日>(木)

○ちょっとバテ気味ですが、本日の「ニュースの深層」(オバマ・鳩山会談、その内容は?)で、葉千栄さんと議論して思ったことのメモ。

○今ではアメリカと中国が「現状維持勢力」(Status-Quo Power)になっており、経済危機後の世界をなんとかマネージしようとしている。お互いだけが頼りなので、それこそ米国債から北朝鮮核問題、果ては温暖化排出ガスまで、いろんな問題で協力しなければならない。史上かつて、これほど米中関係が良かったことはなかったのではないか。だから東アジア共同体なんて構想は、今の中国にはまったく不要である。

○その一方で、日本は現状を打破したいと思っている。その典型が先の総選挙で示された民意。政治も経済も外交も不満がたまっていて、とにかく変えたいと思っている。でも、はっきり言ってそれは「ないものねだり」をしている部分が大きいので、普天間基地だってそれほど良いAlternativeがあるとは思われない。ほんの少し前までは、日米が"Status-Quo"Powerだったんですけどねえ。

○「今やってる“事業仕分け”って、昔の中国の人民裁判みたいですねえ」と言われて、あたしゃ返す言葉がなかったでありますよ。ホントに情けない。あれではただのガス抜きです。



●「ニュースの深層」再放送の予定

11月13日(金) 00:00〜00:55 3:00〜3:55 13:00〜13:55
11月14日(土)  5:00〜5:55
11月16日(月)  5:00〜5:55


<11月13日>(金)

○ふと気がついたら、ブルームバーグニュースにワシのコメントが使われていた。

●鳩山首相:オバマ大統領と会談へ、対日懸念払しょく目指す

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=alAJELTwioh0 

      ◇        ◇        ◇

 双日総合研究所の吉崎達彦副所長は、普天間問題をめぐる米国の姿勢について「今までの約束通りやってもらえると思っているから、当面は様子を見ようということではないか」と分析。その上で、「米国がここで普天間のことを持ち出していいことはない。鳩山政権が対米強硬路線を取って日本国民に受けることの方が怖いだろう」との見方を示した。

      ◇        ◇        ◇

 吉崎氏は今回の訪日について「首脳会談よりも翌日の演説の方が重い」と指摘。「北京や上海ではなく、東京でやるということはアジアにおける最大の同盟国は日本であることを示している」とし、鳩山首相が「それをほったらかしてシンガポールに行ってしまうのはセンスがない」と語った。


○・・・いやね、オバマさんを放置して鳩山さんが先にシンガポールに行くことに関しては、「遅れてきたのはアメリカ側の勝手」だと官邸は判断しているのでしょうけれども、ごく単純な話、「自宅に来客が来ているのに、主人が外出してしまう」という状況は、端的に言って日本人の美徳に反した振る舞いであると思います。

○さらに、明日昼からの宮中午餐会も総理不在となります。オバマさんにとっては、面白からぬ応対でしょう。というか、アフリカかどこかの国の元首ならともかく、総理の欠席は異常な事態だと思います。そもそも日本国憲法の建前から行くと、天皇陛下が内閣の助言なしに、好き勝手に海外の賓客をもてなすのはマズイでしょう。

○ところで明日のオバマ演説会は、サントリーホールで行なわれます。今週の中盤に米国大使館に電話を入れて、「どんな感じ?」と聞いてみたところ、「チケット、1枚なら手配できます」というではないか。「どういう条件?」と聞いたら、「午前10時からですが、セキュリティチェックのために朝8時までに会場に入ってもらいます」とのこと。即座に断っちゃいました。

○その後、「経済同友会が10人分の座席を押さえた」とか、「東大の○○先生が学生に声をかけているらしい」なんて情報が飛び交っておりましたが、そんなもんウチでテレビを見るか、あるいはホワイトハウスのHPでドラフトを確認すればよい。何が楽しくて、土曜日に都内に出かけなきゃならんのか。あたしゃ「ひと目でいいから生オバマを見たい」的な心情が乏しい人なのである。


<11月15日>(日)

○ということで、昨日はオバマ演説は家でテレビを見て、午後から「サンプロ」の収録をやって、終わったら疲れて寝てしまいました。ああ、今週はちょっと仕事し過ぎ。

○で、今朝になってみたら、ちゃんとホワイトハウスのHPで東京演説の全文が掲載されてました。といっても、そんなに驚くような新しいメッセージが入っているわけではなくて、むしろ演説情景の美しさが印象に残ります。この「絵」は使えますよ。サントリーホールを使ったのは大正解でしたね。

○この演説には、すでに中国語インドネシア語日本語韓国語の翻訳が出来ていて、ホワイトハウスのHPで公開されています。4ヶ国語への翻訳は突貫作業になったはずですから、これはかなりめずらしいケースです。ということは、オバマ大統領がAPEC首脳会談への出席を控えて、「アジアの皆さんに読んでもらいたい」ということなのでしょう。

○そうであるからには、場所は東京であることが望ましかった。日本はニュートラルな場所であって、アジアのようでもあり、西側先進国のようでもある。首相が「日米同盟が基軸である」と言いつつ、東アジア共同体を主張しても不思議ではない。それに北朝鮮に対して演説に強いメッセージを織り込むとしたら、それは北京発であってはマズイわけですし。なるほど、これはやはり「東京演説」でなければならぬわけであります。

○演説の中身については、いろんなことが書かれております。とりあえず、しばらくは鎌倉市の抹茶アイスはよく売れるでしょうな。ま、その辺のことはさておいて、溜池通信的な関心事としては、「バランスの取れた経済成長が必要」という以下の部分です。(ホワイトハウスの公式翻訳を使わせていただきます)。


 ですから、私達は今、歴史において、異なる道を選ぶ機会を持つ稀な変曲点に
到達しています。そして、それは均衡の取れた経済成長のための新戦略を追求す
るというピッツバーグでのG20の誓約から始まらなければなりません。

 私はシンガポールでこれについてもっと述べますが、米国ではこの新戦略は、
貯蓄を増やし、支出を減らし、金融システムを改革し、長期的債務と借入れを削
減することを意味します。それはまた、私達が構築し、生産し、世界中で販売で
きる輸出により重点を置くことを意味します。アメリカにとっては、これは雇用
戦略です。現時点では、米国の輸出は、アメリカの何百万もの高賃金の雇用を支
えています。この輸出を少しの量増やすことは、何百万もの新規雇用を創出する
可能性を秘めています。こうした雇用は、風力タービンや太陽電池パネルから日
常的に使用する技術まで全てを製造する雇用です。


○アメリカは輸出主導型の景気回復を目指すぞ、と宣言しているわけです。最新号の溜池通信で書いたとおり、今の米国経済は雇用を増やすことが相当に難しく、かといって個人消費が伸びるような地合いでもない。消去法で行くと、輸出主導で行くしかない。

○「日本の経験」もまさにその手でありました。2002年からの「いざなぎ超え景気」は、アメリカ経済が好調だったから、輸出主導型が可能だったわけ。今のアメリカとしては、アジアの高度成長に期待するしかない。ということは、この先の米中間の通商交渉はかなり重要になってきます。

○今回のアジア歴訪にローレンス・サマーズNEC担当補佐官が同行しているのは、この辺に理由があるんでしょうね。オバマの耳に「輸出主導型成長」を吹き込んでいるのは彼でしょう。と、ここまで書いたところでふっと思いついた。「1993年と2009年の類似」がまたひとつ増えましたね。

○クリントン政権の前半には、サマーズは財務次官で、日本に「黒字減らし」を迫る役どころだった。現在の財務長官であるティモシー・ガイトナーは、日本の米国大使館で働いていた。往時を思い起こしつつ、二人の間でどんな思いが交錯しているのか、ちょっと聞いてみたい気がします。


<11月16日>(月)

○問題です。私は誰でしょう。


*大富豪一家に生まれた苦労知らずのボンボンです。

*総理大臣を務めた偉大なおじいさんがいます。

*そのために自分も総理大臣になりたいと思っていますが、なって何かをしたいという思いは特にありません。

*留学経験があるお陰で、同世代人の中では英語はかなりできる方です。

*自分より賢い人の意見を聞くと、わりと簡単に影響を受けてしまいます。

*そのために発言がぶれるという批判を受けますが、自分ではそれが悪いことだという意識はありません。

*サービス精神が旺盛なので、インタビューを受けるとついつい正直にホンネで答えてしまいます。

*おいしいものの食べ歩きが大好きです。


○このクイズの答えは後ほど。



○さて、今宵はさる造船関係者の会合に出席しておりました。ここ数年の好況はどこへやらですが、僕たち不況には慣れているから平気だよ。困ったことに、中国政府が自国の造船業者たちに補助金をバラマキするので、いつまでたっても淘汰が起きません。こんなアンフェアな競争はないよなあ。でも一方では、中国の資源輸入需要があるお陰で、バルクカーゴが活況を呈しているから、あまり文句も言えないよなあ・・・・一言で言うと、とってもオトナの人たちの世界でした。

○他方、普通に市場メカニズムが働いている欧州では、これとまったく違う状況が展開しています。なんとあのポーランドのグダニスク造船所が売りに出ているとのこと。しかも現在の労働者の面倒は見なくていいし、どんな国の資本であっても分け隔てなく扱いますという、涙が出るような好条件。要するに売り手は、好きなだけ買い叩いてくださいまし、と言っている。

○ポーランドはEUに加盟してしまったので、自国の産業を保護するなどという無粋な真似はできないのです。だから自国の造船業を簡単に売り飛ばします。グダニスクの歴史も知ったこっちゃありません。ワレサ大統領って、それって誰のこと?という物分りのよさであります。

○でも、船作りという製造業は、それでは守りきれませんよねえ。モノづくりの体制は、作り上げるまでには長い時間がかかりますが、それが失われるときはほんの一瞬。わが国造船業界は、これまでに培ったマイスターたちの技を、これからどうやって継承していくかが課題となっているそうです。頑張ってほしいな、と思います。



○さて、冒頭のクイズの答え。「鳩山首相は、漢字が読める麻生前首相である」


<11月17日>(火)

○昨日の深酒が祟っておる。年をとって老眼ほかの不都合が増えているものの、酒量だけは以前より増えている。注がれると、全部飲んでしまう。困ったものである。そんな中でも、火曜日になれば文化放送「くにまるワイド」がやってくる。今朝はGDP速報値の発表や、オバマ演説などについて語る。実はモーローとしてたんですが、良かった、ボロが出なくて。

○午後は葉千栄さんの講演を聴きに行く。面白かったなあ。以下は若干のメモ。

●米中関係に質レベルの変化が起きている。今や日米ではなく、米中が現状維持勢力になっている。むしろ日本が「ないものねだり」モード。中国は米国債を買い続ける覚悟を固めている。

●台湾は生産でも金融でも市場でも中国と一体化。今や台湾内で毛沢東の肖像入りの人民元が流通している。もはや生活水準は上海の方が台北よりも上。

●中国は「非市場経済国」としてWTOに加盟しているが、これを「市場経済国」として認定させることが中国の次の課題。でないとアンチダンピング提訴が止まらない。アメリカ側にとっては、これが次のカードになる。

●中国国内の政争の中心は「弁公室」。有力政治家には4〜50人のブレーングループがついていて、彼らが力を持っている。「江沢民対胡錦濤」みたいな絵解きは当てはまらない。習近平、李克強、王岐山などの弁公室に注目。

○今や日本国籍になって、日本語と日本式思考にすっかり慣れてしまった葉さん、中国で論争しているときに、「でも先行き不透明だから・・・」と言った瞬間に周りの中国人たちに大笑いされてしまった由。「先行き不透明だなんて、先行きは不透明に決まっているじゃないか」「お前は未来が分からなかったら、何も出来ないのか」と言われ、愕然としてしまったとのこと。これは日本人として、とても耳が痛いことだと思います。

○夜はくにまるワイドの出演者+文化放送スタッフで飲み会。「ちょい悪オヤジ」=二木啓孝さん、「大悪オヤジ」=伊藤惇夫さんのお話を堪能する。このクラスに比べると、くにまるさんや不肖かんべえは、まだまだオヤジ道の入り口にも達していないような気がする。

○ああ、なんだかんだいって、今日も深酒してしまった。これでは明日も先行きは不透明・・・・。


<11月18日>(水)

○テレビの報道番組では、「事業仕分け」を取り上げるとテキメンに毎分視聴率が上がるんだそうです。鳩山政権も普天間で下げた支持率を、連日の仕分け報道のお陰で盛り返しているようです。なんだかんだいって、政治家が役人を怒鳴り散らしている「絵」を見せると、とりあえず仕事をしているように見えますからね。

○事業仕分けが人気になるのは、8月30日の選挙結果から続く有権者の「現状否定」ムードにぴったりだからでしょう。とにかく現状に不満がある。何でもいいから、今までのやり方を変えたい。変えた結果、誰かが泣いているところを見たりすると溜飲が下がる。まあ、昔の紅衛兵の時代の中国みたいなもので、結果として世の中はムチャクチャになるのかもしれませんが、とにかく予算は切らなければならない。

自民党時代に「ムダゼロ会議」をやっていた人たちの話を聞いてみると、官僚と有識者でいくら頑張っても、思い切った予算カットなどは夢のまた夢なんだそうです。そこは暴力的な装置を作らないと、切るべき事業でもすぐに応援団が出てきてしまう。そういう意味では、事業仕分けという形ができたのは、財務省的には夢のような話ではないかと思います。なにしろ政治家が憎まれ役を買って出てくれて、自分たちは資料を作るだけでいいのですから。

○今頃になって、「仕分けには財務省謹製のマニュアルが存在した」ことがニュースになっているようですが、そんなもの当ったり前じゃございませんか。今の政権は「脱・官僚依存」内閣ではなく、「脱官僚・依存」内閣なんですから。


<11月19日>(木)

○一度は休刊になった新雑誌『オフレコ!』が年明け復刊を予定していて、そのための対談を収録。水野和夫さんと吉崎が「十年後の日本」を語るという企画で、司会はもちろん田原総一朗さん。

○グローバル化の時代は終わったのかどうかなど、いろんな論点があって面白かったし、個人的には「水野流悲観論」を堪能できたという意味でも興味深い鼎談でした。雑誌がいつ頃出るのか、よく分かりませんが、そのときはまた宣伝させていただきましょう。

○ひとつ、長期予想をするときに必ず出てくる「高齢化」について、最近、こんなことを考えています。「高齢化」(Aging)という現象は、普通は「高齢化率が上昇する」現象を指します。日本の高齢化率(65歳以上の比率)は現在22.7%であり、1985年の10%から25年かけて「2年で1%」のペースで上昇を続けてきた。これはもちろん、日本経済にとっていろんな意味で重荷であったわけです。

○ところが高齢化率というものは、永遠に上昇を続けることはない。人間の寿命には限りがあるから、かならずどこかで頭打ちになります。おそらく30%程度で止まって、それ以上は進まないというポイントが出てくる。これは「高齢社会」(Aged Society)と呼ぶべきであって、いわば「化」の字が取れる。

○そうすると、「これ以上は高齢化が進まない」ことになるから、そこから先は楽になる。経済は毎年の変化率で物事を考えますので、この差は大きい。日本経済にとってのポイントは、とにかくその日が来るまで財政を破綻させず、社会保障や年金などの制度を守り抜くことでしょう。もちろん、それってかなり難しい問題ですけれども。

○おそらく、日本の中でもっとも早く「高齢社会」になるのは地方都市でしょう。つまり、その分、早く安定状態に落ち着くことが出来る。逆に言えば、今は若者の数が多い都会の方が「高齢化」が長く続くことになる。おそらくどこかで「しんどさ」の逆転が起きるはずです。「高齢化」はやがて地方の問題ではなく、大都市圏の問題になっていくでしょう。

○この話は、ちょうど「情報化社会」と「情報社会」の違いにも似たところがある。IT革命と呼ばれていた1990年代の方が、今よりはずっと「情報化」が早かった。PCやケータイやゲームの新製品がバシバシ出たから、人間が追いつくのに必死だった。その点、21世紀に入ってからはいわば「情報」社会になっていて、せいぜいビスタがWindows7になるといった程度の変化で収まっている。Facebookはやるけど、twitterはやらないよ、てなことで用が済む。

○要は変化の早さが問題なのであって、その早さは少しずつ減速しつつある。「十年後の日本」を考える場合は、その辺がポイントになるのではないか、てなことを考えています。


<11月20日>(金)

○信濃毎日新聞社のセミナーで松本市へ。会場の名前が「ホテル・ブエナビスタ」という名前なので、思わずエリザベス女王杯をネタにしたギャグを飛ばしたくなるところなるも、ここは長野であることを考慮して自粛する。聞けば松本にはWINSもないのだそうだ。そういえば、わが郷里・富山市にもWINSはなかったわなあ。教育県とは、つくづく難儀なものである。

○例によって、日米関係やら新政権やら日本経済やらといったお話である。9月には、ちょっとでも鳩山政権の悪口を言うと、速攻で会場の雰囲気が悪くなるほどであったけれども、最近は特に企業経営者の集まりなどでは、「あの経済政策は何とかならんのか」的な反応が強くなっている。そりゃま、確かに景気は悪いし、見通しは悪い。そして「最初の百日」も終わりが近づいている。

○実際、月例報告で「デフレだ」と認めつつ、財政を切りまくっているのだから、現政権が何を考えているのか分かりません。補正予算は3兆円切ったけれども、それを財源に二次補正をやるともいう。それって結局、見通しを悪くしただけではないのかと。もちろん、ここで「お前はデフレと財政と、どっちを心配しているのか」と問われると、「両方」と答えざるを得ませんけれどもね。

○新宿駅から松本までは「特急あずさ」で片道3時間。乗っていて、しみじみ飽きない風景だと思う。仕事さえ気にしなければ、こんな贅沢な時間もない。コーヒーを飲んでも、ビールを飲んでも、美味。で、こういうときは普段忘れていることを思い出すいい機会となる。

○例えば松本と言えば、北杜夫が旧制高校時代を過ごして『どくとるマンボウ青春期』の舞台となった街である。あれだけ再読した本も少ないので、本来であれば本の中に登場した舞台を訪ねたり、せめてどれが穂高でどれが槍ヶ岳であるのかぐらいは確認すべきであった。得てしてそういうことは、帰ってきてから気がつくのである。

<追記> 親切な読者の方から、松本の風景を見ることができる下記のサイトをご紹介いただきました。深謝申し上げます。

  http://seikatsuichiba.info/  


<11月21日>(土)

○以下は無用な詮索というべきだが、誰も言わないようなので、ついつい書いてしまおう。

○オバマ大統領は、筆者の同世代人(ひとつ違い)である。で、彼が初めての海外旅行で日本を訪れ、鎌倉の大仏様を見たのだけれども、抹茶アイスの方が印象に残った、というのはいい話だと思うのだが、本当にその当時、抹茶アイスってあったのだろうか。おそらくは1960年代後半のことなので、まだまだ日本もそんなに豊かではない。宇治金時のカキ氷はもちろんあったけれども、抹茶アイスが出回り始めたのはいいとこ1970年代以降のことじゃないかと思う。

○ちなみに、日本でプレミアムアイスが幅広く食べられるようになったのは、80年代に「ハーゲンダッツ」を嚆矢とするアイスクリーム戦争が始まってからであって、その頃からいろんな種類のアイスが出回るようになった。(その辺の話は拙著『1985年』でも紹介しておりますのでご参考まで)。抹茶アイスの歴史って、意外と新しいんじゃないかと思う。

○というか、普通はこういうとき、「オバマ少年がアイスを食べたのはどの店か?」がメディアで大騒ぎになって、それと思しき店には観光客が殺到するものではないのか。そうなってないということは、誰もが自信が持てないからと拝察する。おそらく鎌倉市の商工会議所あたりでは、「あれはお宅さんで?」「いや、ウチはその当時は出してないはずなんで・・・」などという会話が囁かれているんじゃないだろうか。

○もちろん、これは目くじらを立てるような話ではない。子供が自分の記憶を作ってしまうのはよくある話で、ハワイで高校生くらいになったオバマ青年が、「お前、抹茶アイス食べたことないだろ」みたいなことを言われて、「俺、子供のときに日本に行って食べたもーん」などと応じて、いつの間にかそういうことになってしまった、なんてのは十分にありうるストーリーである。

○さて、今や"Matcha"はグーグル検索すると29万7000件がヒットし、ウィキペディアでは英語で長文の解説が書かれるようになり、東海岸のスタバでは夏場に「抹茶フラペチーノ」が注文できるようになった。ある時期までは「外国から来たエキゾチックな食べ物」であったはずが、いつしか普遍的な存在になりつつあって、そのうち「えっ?抹茶って日本のものなんですか?」と驚くアメリカ人が出るようになるだろう。

○そんな中で、「アメリカ初の太平洋大統領」であると自認するオバマ大統領が、少年時代に「抹茶アイス」という異国の味に心惹かれた、というのは、よいエピソードではないかと思う。少なくとも、彼は「異文化に対する偏見の少ないアメリカ人」であるようだし、そういう教育環境で育ってきた。そして、多くのアメリカ人は「大仏様」はさておいて、「抹茶アイス」という文化を受け入れつつある。

○以上、高校時代のオバマに関する冷泉さんのコラムに触発されて、つい無用な詮索を書いてしまいました。

●オバマはどうして「90度のお辞儀」ができたのか?

http://newsweekjapan.jp/reizei/2009/11/post-79.php 


<11月23日>(月)

○配偶者からの強いプレッシャーの下で、ついに「仕分け」を行なうことになった。ただし仕分けされる対象はウチの本棚の書籍である。どなたも同じ悩みをお持ちかと存じますが、家が広くないものですから、日々増殖する本の置き場所に困っているのです。

○かんべえの場合、職場に小さな図書室があるので、当面使う当てはないけど、いつか使うかもしれないという本は、そこに置いておくという秘技がある。これだけでも人から羨まれる立場なのだが、最近は本をいただく機会も増えており、自然と本が貯まるようになっている。この際、「本棚には隙間が必要である」と自分に言い聞かせ、大処分を実施することにした。

○「これはもう要らない」という本を、エイヤッと大きな紙袋2杯分抜き出してみた。こんなものでは全然、減ったうちには入らず、この辺がまさに「事業仕分け」みたいである。そのままブックオフに持っていく。お店の人が電光石火の早業で選定し(『カイジ』の第一巻を立ち読みしていたら、終わる前に呼び出されてしまった)、「280円です」と宣告された。なんとひどい。以前に段ボール箱3杯分のマンガを持ち込んだときは、5000円以上で引き取ってくれたのに。

○それもそのはず、経済に関する本は寿命が短い。日本経済の危機に関して1990年代に書かれた某有名教授の本などは、今ではまったく無価値と断じてよいだろう。そういう本は、ブックオフにも見捨てられてしまう。まあ、当然だな。本もまた「需要と供給」の関係の中で市場価値が決まるのだから。ということで、自らの罪悪感を打ち消そうとする。

○あらためて家に帰ると、なおも結構な数の本が残っている。「いつの日か、暇になったら読み返したい」と考えながら、ついつい時間は過ぎてしまい、しかもこの間に私の老眼はどんどん進行している。さらに言えば、若い頃に比べれば私の世界はどんどん狭くなっていて、「ああ、あれも読んでない」「せめて映画くらい見なければ」「そういえば最後に芝居を見たのはいつだったか」などと思いつつ、ごくわずかな空き時間はネットを巡回して一日が終わったりする。いかんですねえ。

○ところで、「本は自分で買え。著者や出版社から送られてきたときは、自分で一冊買って誰かに進呈しろ」という教えがある。大宅壮一氏の持論なんだそうで、結構、広く共有されているようだ。当方はほとんど実践できていませんが、なるほどかくありたい習慣だと思います。どんな本でも、出す人たちはいろんな思いを込めているものですから。


<11月24日>(火)

○海外出張から戻ったところの菊地さん(メリルリンチ証券チーフ株式ストラテジスト)からいろいろ話を伺う。欧米の投資家の日本への関心は非常に低下しているとはよく言われるところですが、「聞きしにまさる」状態のようですね。

○出張先で、「日本株に対して、こんなことを言われました」という語彙があまりにも豊富で素晴らしいものですから、ちょっとご紹介まで。


<欧州投資家>

not bearish but no interest

miserable

long-term holiday

endlessly boring

out of our radar screen

better opportunities in Asia


<米国投資家>

not exciting

even depressing

the market seems horrible

foreign investors have left Japan

no interest in having anything to do with Japan's market

It's severely disliked

sentiment towards Japan is the lowest in 20 years

Japan is apparently re-based on a different standard


○いやあ、英語表現って実にゆたかでありますなあ。というか、こんな風に言われてしまうわれらが証券市場が悲しいではありませんか。でも下記をチェックしてみると、世界中どこを探したって、年初来の株式指数がほとんど動いていない(TOPIXは-1.1p、ドル建てで+0.5p)のは日本だけであります。つまりダントツのビリ。

http://www.economist.com/node/14926089 

○さて、この「ジャパン・ペシミズム」をどうしたらいいのか。問題は高齢化(Aging)と政治(Business Bashing)、それに中国(China)の3点だと思いますが、現下の「悲観の理由」は深く検討する必要があると思います。


<11月25日>(水)

○最近流行の議論のひとつに「日本は間もなくGDPで中国に抜かれ、世界第3位に転落する」というものがある。確かにユーウツなことかもしれないが、かなり前から購買力平価ベースの計算では先方が2位であったし、そんなに大騒ぎする必要はないだろう。

○強いて言えば、日本が西ドイツを抜いて自由主義圏で第2位の経済大国となったのは1968年であるから、われわれは「世界第2位の経済大国」というフレーズを、なんと40年もセールストークに使ってきたことになる。慣れ親しんだ呼称を失うのは、確かに心理的には惜しいことである。とはいえ、世界が日本を見る目というのは既にかなり醒めており、特に金融資本市場では昨日書いたような悪口雑言を浴びる立場である。このことは自覚した方がいいだろう。

○幸いなことに、国家間のGDP競争はゼロサムゲームではない。むしろ中国のGDPが伸びれば、少しはその余波が日本にも及ぶように出来ている。単なる嫉妬心から、「中国経済のバブルが崩壊すればいいのに」などといった議論は本末転倒である。

○先日、岡三証券から「1820年当時の世界のGDPシェアと現在の比較」という興味深い資料を頂戴した。これはオランダのフローニンゲン大学名誉教授であるAngus Maddison氏の研究によるもので、1820年といえば日本では勝海舟が生まれた頃だが、世界はこんな感じであったそうだ。

●世界の人口は10.4億人。そのうち中国が3.8億人。何と3人に1人以上は中国人だった。

●当時の中国人の一人当たりGDPは600ドル。産業革命後の英国は1706ドルもあったが、その3分の1以上であり、世界平均の667ドルとさほど変わらない。産業の中心が農業であったために、差がつきにくかったのであろう。

●従って人口の多さがモノをいう経済であり、人口大国である中国が経済大国であった。

●ちなみに1820年ごろの世界経済のシェアは、西欧が23%、アメリカが1.8%、東欧が3.6%、旧ソ連が5.4%、中南米が2.1%、アフリカが4.5%であった。そしてアジアが世界経済の約6割を占め、中国が32.9%、インドが16.0%、日本が3.0%という状況であった。

○当時の日本経済は中国の10分の1程度であったけれども、おそらく清朝末期の中国よりは、江戸時代末期の日本の方が生活水準は高そうだし、人々は春風駘蕩としていたように思える。まあ、GDPなんてその程度の代物である。

○むしろ中国に追いつかれて困るのは、株式市場の時価総額ではないかと思う。こちらはゼロサムゲーム的なところがあって、「アジアの資本センターを誰が握るか」という覇権争いの性質を帯びている。この点で、日本は中国の急追を受けている。


<2005年10月末時点>

日本:世界第2位、497兆円、世界のシェア11.3%

中国:世界第18位、45兆円、世界のシェア1.0%


<2009年9月末時点>

日本:世界第2位、321兆円、世界のシェア8.3%

中国:世界第4位、272兆円、世界のシェア6.3%


○これはもう指呼の間に捉えた、という状態でありましょう。GDPはともかく、こっちは洒落になりません。マーケット・フレンドリーな政策をお願いしたいのですが、無理だろうなあ・・・・。


<11月26日>(木)

○人と会うためにホテルオークラで朝食。場所が場所だけに、「あ、どこかで見たような人」がやたらと多い。自民党の元大物議員とか、米国大使館の幹部とか、ほとんど石を投げれば有名人に当たる状態。ついでに、元小泉チルドレンの某女史と挨拶して名刺交換する。再起を期して、健闘を祈ります。

○夜は市ヶ谷方面で研究会。テーマは東アジア共同体で、最初は「こんな古いテーマ、知らんわ」と思っていたが、いろいろ話してみるとやはり面白い。前回、この議論が盛り上がったのは2002年頃で、火付け役の一人は小泉首相であった。ちょうど東アジアのFTA競争が盛り上がっていたときで、ワシなどは当時の印象が強いので、鳩山首相の提案には「今頃何を言ってるんだ」と否定的な印象を持っていた。

○ところが2002年当時と今ではいろんな条件が変わってきている。

(1)まずFTA競争は一段落しており、中国や東南アジアは「今さら貿易自由化じゃないだろう」という感じである(日本は今でも地道にFTA交渉をやっているが)。どうせなら、金融での協力はどないでっしゃろ、でも統一通貨なんてバカなこと言わないでね、というのが現下のムード。つまり域内の関心事項がすっかり変わっている。

(2)当時はIT産業の急拡大期で、「東アジアはIT製品の生産基地」を目指していた。そのために貿易も急増し、域内の相互依存度も深まったのである。今はその辺の成長が一段落し、「今さらITでもないよなあ」という感じ。あらためてこの地域で成長戦略を考えるとしたら、一体どうすればいいのか。新たなアイデアが必要となっている。

(3)「東アジア経済圏でもっと連携しましょう」という議論は、いつも最後は「でも、僕たちみんなアメリカ市場に依存しているよね」というのが落ちになっていた。ところが今では、オバマが「サントリーホール演説」において、「アメリカの雇用戦略として」輸出拡大に言及するようになっている。気がついたら、アメリカがアジアに依存しようとしているではないか!

○これだけ条件が変わったら、やはり議論をやり直してみる価値があるというものであろう。もっとも「北朝鮮問題」のように、これだけ時間がたったのに全然本質が変わっていないところもあるので、つくづく東アジアは奥が深いのでありますが。


<11月27日>(金)

○某自動車会社の方と会食。電気自動車(EV)についていろいろと話を伺う。

○ド素人が聞いた話なので、誤解があるかもしれないのだけれど、いちばん感心したのは、「自動車は機械工学だが、電池は化学である」という点であった。自動車会社は技術系の人材が多いけれども、これまで化学畑の人は少なかったのだそうだ。それでもEVを作るためには、今後は化学にも強くなって、「どうやって電池をクルマに取り込むか」を考えなければならない。いかにも大変そうな話です。

○世間一般でよく聞く話では、「ガソリンエンジンのクルマは擦り合わせ技術だが、電気自動車はモジュール生産になる」ということになっている。でも、実際にはそんな簡単な話ではないらしい。つまりクルマという機械が、電池という化学を取り込んで、なおかつ人間が自由に使いこなさねばならない。アクセルの踏み具合で、どの程度の速度が出るかを微調整し、さらには何十万キロだかの走行実験もしなければならない。その辺は、いかにも日本風な職人芸になるのではないか。

○例えばある電池会社さんでは、「新しい電池を出荷する前には、風通しの良い場所で2日寝かせる」というノウハウがあるのだそうだ。それではまるで漬け物みたいだが、そもそも電池とは単なる機械ではなく、限りなく生き物に近いと考えるべきなのであろう。クルマ(メカニズム)と電池(オーガニズム)のインターフェースをどうするか。モジュール生産に到達するのは、かなり先のことではないかという気がする。

○さらには現在の電池開発競争は、さながら1990年代半ばの半導体業界のような激しさであるという。各社が競って、いろんな素材の組み合わせを試しているところで、この先どんな発明や革新が飛び出すかは見当もつかない。いずれは一握りのチャンピオンとその他大勢の敗者ができるのだろうが、その際にはかつのIT業界における「ウィンテル」ごとき覇権が誕生するかもしれない。

○さらに話をややこしくしているのは、自動車会社はエンジンというクルマの心臓部分を、電池メーカーという他社に依存しなければならないことだ。逆にユアサなり三洋電機なりNECなりといった電池メーカーは、自分たちの商品をブラックボックス化しなければならない。でないとメシの種を失ってしまいますからね。自動車会社と電池メーカーが、どんな風にコラボしていくか。この合従連衡も見所のひとつです。

○やはり「今が旬」の業界というのは面白いものですな。「クルマの明日」にはいろんな可能性がありそうです。


<11月29日>(日)

○家で『笑点』をみながら、ふと思い出した。以前に宅森さんがQuickの「エコノミスト情報」でこんなことを書いていた。今はどうなっているのだろうか?


『笑点』の視聴率からみても水面下の景気回復続く

 ビデオリサーチの1週間ごとの視聴率ランキングで四半期ごとに「その他娯楽番組」の視聴率で「笑点」が第1位をとった回数が調べられるが、その回数が実質GDP成長率と相関がかなり高い。通常、「笑点」が第1位をとるのは各四半期だいたい0〜1回である。しかし、実質GDP成長率が前期比年率2ケタマイナスだった10〜12月期、1〜3月期は各々6回、5回とかなり多かった。景気が悪く暗い状況になるとお笑いで嫌な気分を吹き飛ばしたいという人が増えるのだろう。また、日曜日の夕方に外出せずにテレビを見ている人は、外でお金を使わないという状況下や、生産調整で日曜だけでなく平日にも休みがあるといった状況下で増加しやすいのだろう。「笑点」の第1位は4〜6月期では1回にとどまった。「笑点」の視聴率からみて実質GDP成長率は改善しそうだ。なお、7〜9月期は7月19日まででまだ第1位になっていない。


(Vol.538、三井住友アセット・宅森昭吉氏 2009年7月29日)


○ついついビデオリサーチ社のデータを調べてしまいましたがな。なるほど、笑点の視聴率は景気と相関関係がありそうです。7−9月期の『笑点』の視聴率1位は1回だけ(8月9日、20.9%)で、20%超えも2回だけでした。ちなみに4−6月期は1位は1回だけですが、20%超えが3回ありました。

2009年 GDP成長率 笑点の視聴率1位 10位以下の回数 笑点の20%超え
1−3月期 −3.2 5回 4回 6回
4−6月期 +0.7 1回 4回 3回
7−9月期 +1.2 1回 4回 2回
10−12月期 3回 0回 5回


○それが10月以降は視聴率が高いのです。10〜11月の8週間で、『笑点』の視聴率は1位が3回で、2位が3回、3位が2回。つまり1回も「連を外していない」。これは異常事態というべきで、天下の人気番組といえど、『笑点』には「10位以下」となることも四半期には4回程度はあるんです。10月以降はそれが全然ない。無類の強さです。

○しかも視聴率の20%超えが、8週中5回もあります。これも大変な打率の高さで、どうやらこの10月以降は、人々の間で「お笑いで嫌な気分を吹き飛ばしたい」「日曜日の夕方に外出せずに、外でお金を使わない」という状態が起きているのではないでしょうか。

○ただし注意すべき点がある。「笑点」は11月1日に、27.1%というお化けのような視聴率を達成している。これは三遊亭円楽師匠が亡くなって、その追悼番組が行なわれた後だったから。その余波があって、視聴率が高めになっている可能性がある。実を言うとワシも子供の頃に円楽ファンだったので、なんとなくあの回から『笑点』を見たくなっている。円楽師匠の効果を、いくぶん割り引いて考える必要があるでしょう。


<11月30日>(月)

○まだ見てないんですが、「2012」という映画が評判になっているようで。地球滅亡もののSF映画ですが、久々に見るハリウッド超大作映画。ようやくリーマンショックの「喪」が明けてきたのかもしれませんね。なにせエメリッヒは「インデペンデンスデイ」の監督ですので、こういうド派手な設定が大好きなんですよ。

○ところで政治の世界も2012年はいろんなイベントが予定されています。3年後は大変かもしれませんぞ。

●アメリカ大統領選挙(11月)がある。オバマ政権が行き詰って再選を辞退し、民主党からはヒラリー・クリントンが出馬。そして共和党からは、サラ・ペイリンが出馬して「女の戦い」に。

●台湾総統選挙(3月)と中国共産党大会(秋)がある。馬英九が再選されて、総統就任式が5月。その後の彼は怖いものがなく、「歴史に名を残したい」という気持ちが強い。そして胡錦濤は、間もなく引退のときを控えていて、こちらも「レガシー」を意識している。この年の夏に、二人の間にいったい何が起こるのか?

●ロシアで大統領選挙(3月)がある。タンデム政権はそのときまで無事でしょうか。どこかで大統領と首相が対立して、選挙は「プーチン対メドベージェフ、遺恨の対決」になったりして。

●ロンドン五輪が開催される。うーん、いかにもテロの標的になっちゃいそうだなあ。

●日本はもし任期満了ならば、8月30日が総選挙の期限日となる。はて、そのときはどうなっておりますか。鳩山政権は続いていないような気がするぞ。

○この映画のネタは、マヤ文明が使っていた暦が2012年12月21〜23日に区切りを迎えることに端を発する終末論の一種なんだそうで、ノストラダムスの大予言の二番煎じみたいなところがある。日本でノストラダムスが流行ったのは1973年の石油ショックの頃で、今もちょっと世相が似てきているのかもしれませんな。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki