<4月1日>(金)
〇今日はなんと開幕以来5連敗のダメ虎に活を入れるべく、東京ドームの3塁側内野席に行ってまいりましたぞ。いやー、こんなに早く野球場に帰ってこれるとは。もちろんコロナになってからは初めてである。
〇午後4時の開場前から駆けつけたので、試合前の練習シーンをたっぷりと観ることができました。野球の硬球というのは、「コーン」と本当にいい音がするものなんですね。特に4番打者佐藤輝明は、目が覚めるような当たりを連発しておりました(なぜ、あれが本番で出ないのだ!)。
〇今日の始球式は、冬季五輪ノルディック複合メダリストの渡部暁斗選手。さすがはアスリート、始球式のボールがちゃんとホームベースまで届く、というめずらしい光景を目撃する。
〇本日の先発投手は巨人が菅野、阪神が藤浪。球速はいずれも似たようなものなのだが、勝ち慣れている投手とそうでない投手の差がもろに出ましたな。菅野はストライクが先行して三振を量産する。藤浪もファーストストライクは取るのだが、3つ目のストライクがまことに遠い。いやもう、打たれますわなあ。
〇いきなり6対0となるので、ついつい3杯目のプレミアムモルツに手が伸びる。しかし阪神、中継ぎ陣はそんなに悪くないので、後半になったら少しは追い上げる。最終回には大山のツーランホームランも飛び出して、いちおう1点差に詰め寄った。これで開幕7連敗だが、まあ、タイガースですから、しょうがないですなあ。
〇いや、しかし野球って贅沢で楽しいゲームですなあ。マスクをしながらではありますけれども、7回には六甲おろしも歌うのですから。誘ってくれたS1くんとS2くんに多謝あるのみです。
<4月2日>(土)
〇またも負けたかタイガース。今日も巨人軍相手に1点差負け。こうなるともうロシア軍もビックリの弱さでありますな。うーむ、大阪桐蔭高校に代わってもらうというのはどうだろうか。
〇ところで昨日の東京ドーム、いろいろリニューアルされていて感動モノでした。まず、LEDのメインビジョンは横幅で100メートル以上あって大迫力。球場内では新しい観客席がいろいろできていて、年間座席のセールスをやっておりました。野球場もだんだんスーパーボウルみたいになっていきますな。
〇デジタル化も進みました。われわれは紙のチケットで入場したのですが、その場合は名前と連絡先、座席の記録を手書きで残さなければならない(後で感染が発覚した場合に連絡が来る)。他方、顔認証による入場も可能になっていて、その場合は自動的に連絡が来るのでしょう。
〇身近なところでいえば、ビールの販売が完全キャッシュレスになっていました。考えてみれば、今まであの仕事をすべてキャッシュでやり取りしていたことの方が不思議に思えてくる。
〇コロナのおかげで、この2年間は野球見物どころではなかった。東京ドームは需要が減った2年間に、うまく新規投資をして次のステップに備えたと言えるかもしれません。設備投資というものは、こんな風でなければいけませんな。
<4月3日>(日)
〇この週末から『ODDTAXI
イン・ザ・ウッズ』を公開しているのだね。「イン・ザ・ウッズ」は察するところ「藪の中」の意味で、あのアニメの中の登場人物たちが証言することで物語を再現するらしい。それはちょっと楽しみでありますね。
〇この土日は親戚の用事で富山市に行っておりました。市内の松川沿いの桜は五分咲きでした。首都圏は今日明日の雨でかなり散りそうですね。さて、来週の桜花賞まで、阪神競馬場の桜は待っていてくれるでしょうか。
〇それにつけても阪神タイガースは9連敗。中田翔に打たれちゃいかんでしょう。一昨日の試合では「ここだけは安全パイ」と言っていたのですから。矢野監督、あなたには休養が必要かもしれませぬ。
<4月4日>(月)
〇本日は午後1時から学士会館にて対談の予定がある。今日のランチをどこで済ませるかを熟慮検討した結果、筋向いにある如水会館に決定する。毎日新聞社のパレスサイドビルにもいくつか有力な選択肢があったのだが、ここは何となく学士会館への対抗意識のようなものも働いて、そういうことに決したのであった。
〇如水会館もようやく脱コロナモードになっていて、1階のマーキュリーとジュピターのみならず、14階の一橋クラブも営業していたのでそちらを選択。「1人ですけどいいですか?」と断って、ホッケ定食とコーヒーで1320円なり。今日の対談の攻略方法を考える。もちろんそんな思考はほとんど無駄に終わるのだが、まあ、ルーティーンみたいなものである。
〇ふと気が付くと、となりの席の先輩方が昼間からウイスキーソーダをちびちびやりながら、どこそこの温泉がどうのこうの、などと語りながら優雅なひとときを過ごしておられる。ううむ、これは率直にうらやましいぞ。これぞ浮世を忘れた「ハッピー・リタイアメント」のランチではないか。なんだか急にディオゲネス・クラブに居るように思えてきた。
〇いや、本物のディオゲネス・クラブ(それは実際にはコナン・ドイルの想像の産物である)は、人間嫌いの人たちの会員制クラブである。「会員同士、来客室以外ではしゃべってはいけない」という変なルールがあるので、そもそも会話が成立しない。とはいえ、そういう「お仲間」に共通の居場所があることは、まことに結構なことであるに違いない。
〇当世は何かと気ぜわしくなって、若い人たちまで”FIRE”(財政的自立と早期退職)を目指してどうのこうの、てな風潮があるらしい。しかるに、せっかくFIREになっても、俗世間にまみれた下世話な交友関係ばかりが残っているのでは情けない。浮世を離れてもなお、「アイツはまだあんなことをしている」みたいな噂話をしてたら、まことにぶち壊しではありませぬか。
〇もっともそれを言い出したら、「如水会」という言葉の語源は「君子の交わりは淡きこと水のごとし」なので、そもそも下賤な話をしていちゃいかんのである。他方では、「アイツがどーのこーの」という下品な話が楽しかったりするのが現役世代の業でもあるのですが。
〇ということで、対談の方は無難に済みました。そのうちご紹介する機会があろうかと存じます。
<4月5日>(火)
〇今週号のThe Economist誌では、ゼレンスキー大統領へのインタビューが行われています。これを取材した記者は、まことに根性がありますな。ゼレンスキー氏は「要塞」と呼ばれる場所に居るそうです。例によって、抄訳を作ってみました。
●Ukraine's
president tells The Economist why Vladimir Putin must be defeated
戦争を望むどころか準備もなかった。チャーチルを引用するけれどもチャーチルではない。カーキ色を着ていても戦闘計画は将軍に任せる。「国民こそがリーダーだ」と言う。
土嚢に囲まれた建物の中で、ゼレンスキー氏は本誌に語った。武器が必要だとバイデン大統領や西側支援者に語りかけるが、ロシアの蛮行に触れるときにもっとも力が籠る。
「侵略者たちは自分たちの犠牲者を悼むことさえしない」と言う。「1か月で1.5万人の兵士が死んだというのに、私には理解不能だ。ロシア兵は埋められさえせず、死体が通りに放置されている。いくつかの都市では、腐臭で呼吸が困難なくらいだと聞いている」
プーチンの戦争機械は、ウクライナを守る兵士やボランティアとは大違いだ。マリウポリは今も兵士たちが守っている。命令によってではなく、死者を弔い、負傷者を助けるためだ。「生きている限り守らねばならない。これこそがロシアとの根源的な違いだ」と彼は言う。
プーチンとゼレンスキーは共にロシア語を母語とするが、異なる言語を語っている。人命が安く、歴史は偉人が作るというプーチンの世界にウクライナの居場所はない。「彼が我々と同じウクライナを見てきたとは思えない。彼は20年くらい塹壕に居たのではないか」。
ブーチン氏にとって強さとは暴力だ。血を流せない者は弱い。だから2014年にドンバスで使ったのと同じ手法を使う。「彼らは市長を誘拐し、何人かは殺された。行方不明者もいる。見つかったが死んでいた者もいる。同じ人たちがやっている」。
ゼレンスキー氏にとって強さとは、占領都市で戦車を止めるために、通りの真ん中で手を振った非武装の市民たちである。「彼らは立ち上がって、そうすることを決めた。私はそれを止めろとは命じられない。最後まで、彼らと一緒にいることができるだけだ」。
「私たちは勝利を信じている。ここがわれわれの家であり、土地であるから。それは時間の問題だ」。とはいえ、勝利はウクライナ人の戦闘精神のみならず、西側の支援にも懸かっている。この国を守るために戦車と装甲車、戦闘機が必要なのだと彼は訴える。
「西側はすぐには助けられない。ロシア占領地域を開放したり、そこに食糧を届けたり、軍事支配を取り戻したりはできない。そしてロシア軍の火力は膨大だ。数千台の軍用車両が往来している。冗談のようだが、戦車が多過ぎるからある都市では渋滞が起きている」
ゼレンスキー氏はNATOを5グループに分類する。@ウクライナが傷ついても、戦争が長引いてロシアが疲弊するなら結構、という国々。Aロシア市場は大きいから、早期停戦を望む国々。Bロシアのナチズムを認識し、ウクライナの勝利を望んでいる国々。Cとにかく早く戦争が終わってほしいリベラルな小国群。D欧州のロシア代表を務める国々、である。
ゼレンスキー氏は米英を称賛する。米国政治の複雑さが遅れをもたらすが、バイデン氏の関与は深まっている。ドイツは露宇間でバランスを取ろうとしている。「彼らはロシアと長い関係があり、経済メガネを通して物事を見ている」。フランスのマクロン大統領が戦車を送れないのはなぜか、と尋ねると「ロシアが怖い。それだけだ」と彼は答えた。
ゼレンスキー氏はまた、受け身の対ロ制裁に不満を抱いている。抜け穴があって、最大手のズベルバンクはSWIFT支払い網に残っている。欧州がガス代を払えるようにとの配慮だ。米国は既にロシア産石油ガスを禁輸したが、欧州はまだだ。「先制的に行動してほしい。ロシアがウクライナで化学兵器を使ったら止めると聞くが、我々は実験動物じゃない」
勝利はどんな形をとるのか、と尋ねると彼は息を止めて、プーチンが信じられないようなことを言った。「勝利とは少しでも多くの命を救うことだ。それなしには意味がない。土地は重要だが、それは領土に過ぎない」。全ての人を救い、領土を放棄しないことはたぶん不可能だ、と彼は認める。この戦いがいつ、どのように終わるかは知らないが、彼は「我々がここに立ち、ウクライナの暮らしを守ることで終わる」ことを知っている。
ロシア軍がウクライナに侵攻した時、プーチン氏がどこに居たのかはわからない。ゼレンスキー氏は、妻と2人の子と共に家に居た。2月24日の早朝、彼は家族に起こされた。「大爆発があったと彼らは言った。数分後にはロケット攻撃が進行中との合図を受け取った」。米国が逃げ道を提示したが、彼は止まることを選んだ。「勇気の問題じゃない」。英雄になる準備はなかった。「分からないときは正直になること。皆があなたを信じられるように。無理をすることはなく、自分らしくあればいい。実力以上に見せないことが重要だ」。
プーチン氏の世界では、正直は弱さとなる。彼の力は秘密と欺瞞に基づく。謎と暴力が権力基盤を強化する。ゼレンスキー氏は側近たちが要塞と呼ぶ場所にいるが、彼の強みはオープンさと、人々の望みを聞き、それに応える能力にある。それは誰にでもある強さだ。
ソ連時代の小説家で北ウクライナ出身のヴァシリー・グロスマンは、第2次世界大戦を描いた長編『人生と運命』の中で見事に描いている。「歴史とは善が悪を征服する物語ではない。巨大な悪が、人間の中の小さな優しさを砕く戦いなのだ。それでももし、人の中の人がなおも壊れていなければ、悪はけっして征服することはできないのである」
〇壮絶な覚悟だと思います。今日は首都キーウ(キエフ)近郊で民間人の多数の死者が発見され、ロシア軍の戦争犯罪への非難が高まっています。ゼレンスキー大統領はこの後、安保理緊急会合でオンライン演説するとのこと。またひとつ、後戻りできない曲がり角を越えつつある感があります。
<4月6日>(水)
〇上海のM君が帰ってくるというので、同期数人が新橋に参集。はてさて、ロックダウン中の上海から帰ってくることなんてできるのだろうか?と疑問に感じていたけれども、最後の1年は深センにいたとのことで、とにかく無事に帰ってこれて何よりでした。
〇新橋のお店はそこそこ繁盛していて、数少ない店員がてんてこ舞いであった。従って、お通しは来ない、焼酎のボトルも来ない、氷と水を持って来いと頼むと、今度はチェイサーが人数分到来したりする。いやはや、コロナ下の飲食業は大変ですな。店員さんには優しく接するべきでありましょう。
〇新橋に60代のおっさんたちが集まるというのは、ごくごく最近の現象であるらしい。最初はやっぱり若者たちが動き出す。新年度を迎えて、新人歓迎会も行われているらしく、どうかすると「去年はできなかった新人歓迎会も一緒にやりましょう」ということになる。かくして「第2の人生」を歩み始めた世代も、ぼつぼつ新橋に舞い戻ってきている。今日は締めておひとり様4000円。昔ほど飲めないし食べられないからねえ。
〇新橋界隈というのは、東京電力やエネオスなど、実はエネルギー関連の業種が多い地域である。この時期、対ロシア制裁に円安進行で、なかなかに大変な時代を迎えているはずなので、夜の街も何とか乗り越えてもらいたいものである。それからオミクロン株のリバウンドもなるべく小さく済みますように。
<4月8日>(金)
〇桜の季節は出会いと別れがつきものですが、今年の場合は「古い知り合いとの再会」が多いようです。これはこれでありがたい。互いの無事を確認しながら、若かった頃を思い出しながら仕事ができるので。
〇当欄をご愛読いただいている方で、「久しぶりにかんべえと会ってみようか」と思われる方は、4月20日夜にグッチーポストさんでリモートのセミナーを開きますので、そちらにご登録いただけるとありがたく存じます。
●リンクはこちらです。 https://guccipost.co.jp/blog/gucci/?p=8447
<4月10日>(日)
〇「ロトーボー」(ROTOBO)という言葉を聞いて、何のことだかすぐにわかる人は、そんなに多くはないと思う。商社業界に長らく身を置いていると、ああ、昔の「ソ連東欧貿易会」のことだな、とすぐにわかる。現在は「一般社団法人 ロシアNIS貿易会」と呼ばれている。
〇その昔、ソ連商売に携わる人たちは、自分たちのことを「コマキスト」と呼んでいた。吉永小百合とともに、戦後日本を代表した大女優、栗原小巻がロシアと縁が深かったからである。サユリとコマキはともに1945年生まれで、誕生日は1日違いであった。タモリさんの同世代人ですな。そういえばサユリさんは、今でもよくCMでお見掛けしますねえ。
〇そのロト―ボーの月刊誌、「ロシアNIS調査月報」の4月号が無茶苦茶面白い。なにしろ特集テーマが「プーチンの地政学とユーラシア動乱」である。そこにはロシア専門家である兵頭慎治さんや小泉悠さんが、長めの論文を寄稿しているのである。これは読まねばもったいない。とりあえず小泉論文は、アカデミックなお作法がしっかりしている上に、格段に面白い内容であったと申し上げておこう。とりあえずネットでもここまでは読める。
軍事面から見る今次ウクライナ危機
東京大学先端科学技術研究センター講師 小泉悠
2022年2月24日、ロシアはウクライナに対する大規模な軍事侵攻を開始した。米ソ冷戦の終結によって、軍事力の時代は終わり、政治・経済・環境・人権などが国際関係の中心的要素になっていくだろうとの見通しが語られた時代を記憶する世代としては、隔世の感を覚えざるを得ない。
ただ、現在進行形の事態をここで分析することは、公表までのタイムラグに照らしてあまり賢明ではないだろう。そこで本稿では、今次危機の背景となるロシアの軍事力について、読者の理解のたすけとなりそうな情報と知見をまとめることした。
その第1は、ロシアの軍事力それ自体に関するものである。より具体的には、軍事力の中核を成すロシア連邦軍(以下、ロシア軍)の兵力・構成・指揮統制・装備などを明らかにするとともに、その他の準軍事組織についても簡単に扱う。ロシアの軍事力はこうした多様な組織の総体として成り立っているからである。
第2に、地政学的ツールとして見た場合の軍事力の効用について考えてみたい。かつてのソ連は、その最末期にあってさえ500万人以上の兵力を擁し、米国と並ぶ軍事的超大国であると自他ともに認められていたが、現在はそうではない。にもかかわらず、ロシアが軍事力を用いて国際的に大きな存在感と影響力を発揮できているのは何故なのか。この点を地政学と軍事戦略思想という観点から考察した。
第3に、以上を踏まえた上で、今次の戦争に先立ってウクライナ危機に際してロシアが展開した兵力とその行使形態を検討する。すでに述べたように、これは進行中の軍事作戦の推移を明らかにしようとするものではなく、ロシアの軍事力行使が全体としてどのような性質を有するのかがここでの主題である。
〇不肖かんべえにとっては、当論文のキモはこの部分にあった。
・・・西側に対してロシアの軍事力が持つ効用は、まずもって抑止力という観点から理解されなければならないが、この点は実際にある程度まで達成されていると考えなければならない。前述したように、ロシアを軍事的に征服することはそもそもきわめて困難であるうえ、同国が世界最大の核戦力を保有するという事実は、同国との全面戦争を依然不可能にし続けているからである。
〇ロシアは、世界最大の国土面積を有する巨大国家である。万一誰かに攻め込まれた場合には、戦略縦深の後退によっていくらでも時間を稼ぐことができる。その上で正規軍とパルチザンによる反撃が可能である。ゆえに小泉氏いわく。「このような国家を軍事的に征服するのは事実上不可能であって、ロシアが広大な国土と継戦意思を維持する限り、この点は大きく変化しない筈」なのである。
〇なるほど、そりゃそうだ。ロシアの大地は縦深性があり過ぎる。何しろナポレオンとヒトラーが征服を断念した土地である。西から攻めても東から攻めても、決定打を与えられそうにない。つまり守りに対しては圧倒的に強いのだ。
〇その上で小泉論文は以下のような締めくくりを得ている。
要は、強力な核抑止力と一定の通常戦力を有する大国が断固たる決意をもって軍事力行使に及ぼうとする場合、それを事前に阻止できない限りは、結末はどうあっても悲劇的なものにしかならないだろう。極めて不愉快ではあるが、その不愉快さを包み隠さずに述べることはロシア軍事研究を生業とする者としてのせめてもの義務であると考え、本稿をこのような形で結ぶ。
〇ロシア軍は負けたときのことを深く考える必要がない。ゆえに海外から攻め込まれた時の勝率は100%。ただし自分たちが他国に攻め込んだ時に、簡単に勝たせてもらえる保証はない。露土戦争だって負けてるし、日露戦争もしかり。今回の対ウクライナ戦争もその公算が大ですわなあ。守りの絶対王者は攻めに回った時は意外と心もとない。こういうパラドックス、いかにもかんべえ好みである。
<4月11日>(月)
〇今週も「月曜日の円安」で、ドル円レートは再び125円台に突入です。先週はうまい具合に円高に戻りましたけど、今週はどうでしょうか。「黒田シーリング」(1ドル=125円の天井)は、いずれ破られる公算が大だと思います。だって政府・日銀には止める手段がないんだもの。
〇次のFOMCは5月3−4日。日本では大型連休の最中です。ここで0.5%の利上げが決まったり、大胆なQTが開始されたりすると、いきなり130円くらいまで行っても不思議はないでしょう。5月になったらそうなる可能性があるということは、今すぐそうなっても不思議はないということでもある。
〇ひとつだけ対抗策があって、日銀がYCC(イールド・カーブ・コントロール)の運用を弾力化して、長期金利の上昇を容認すればいい。YCCでは本来、10年物国債の金利変動の許容幅を最初は±0.1%としていたけれども、昨年3月以降は±0.25%に拡大している。それをもうちょい拡大すれば、「ああ、日米金利差の拡大は限定的だね」と市場は受け止めるから、円売りにブレーキがかかるはずです。
〇その場合の問題は日銀内部の首尾一貫性でありまして、これはYCCを有名無実化することになりかねない。そうなると9年間も続けてきた黒田緩和とは一体何だったのだ、ということになってしまう。とはいえ、それを止めたいと考える人は、ごく少数のリフレ派経済学者たちくらいでありましょう。とりあえず実業界の大勢は、「ま、いいんじゃないの?それくらい」であろうかと拝察いたします。
〇日銀の金融政策決定会合は次回は4月27−28日ですね。野党はもっとこの問題を取り上げたらいいのではないでしょうか。円安で困るのは何より中小企業であり、消費者なのですから。
<4月13日>(水)
〇昨日の午前10時ごろまではなんということはなかったのである。ひょいと椅子から立ち上がった瞬間に、それは来たのであった。腰で何かが走った。あいたたたたた・・・。憎むべき腰痛の復活である。
〇2017年の1月以来、そして2020年の10月以来、3度目である。どうも月曜日に長めの論文を書き終えたので一気に来たらしい。と言ってもせいぜい1万字程度である。そんなもので悲鳴を上げてどうするのだ。
〇と言いつつ、痛いいたい。仕事にならぬ。過去2回の経験から言って、医者は当てにならぬ。自分で何とかするしかない。まあ、せいぜい小まめに歩いて、お風呂に入ることくらいですかねえ。だいたい2週間も辛抱すれば、そのうち痛みを忘れるはずである。
〇まだまだ締め切りはあるし、明日はパネルの司会はあるし、なんか週末はテレビの出演もあるらしいし、お世話になっている人との付き合いもある。身体が痛いからと言って、仕事をすっぽかすのはもちろん論外だが、遊びの約束を放り出すのも人の道に外れておる。ということで、しばし強行軍の日々が続く。
<4月14日>(木)
〇本日は経済同友会へ。パネルディスカッションの司会を務めたのですが、久々にプレッシャーを感じる仕事をした感あり。とはいえ、この年になると緊張する機会もどんどん減っておりますので、得難い経験をさせていただきました。
〇不肖かんべえが同友会の職員だったのは、1993年から95年にかけてのことなので、30年近く前のことである。ところが当時の職員の方は今でも健在で、お久しぶりの方々に接しているだけで、記憶が30代の頃に戻ってしまう。そういえばこの職場では、ワシは「よっちゃん」とか「よっちー」と呼ばれておったのでありました。
〇ということで、ちょっとだけ若返った一日でした。パネルディスカッションもまことに充実の内容だったのですが、メンタル面で得るところが大であったと申し上げておきたいです。
<4月15日>(金)
〇明日はこの番組に出没いたします。
〇ご一緒するゲストが「厚切りジェイソンさん」だそうです。パックンとはテレ東で何度もご一緒したことがありますが、こっちはかなり芸風が違うようですね。今から楽しみです。
<4月17日>(日)
〇久々に日本に来た、というアメリカ人から聞いたこと。
「アメリカはコロナで何もかもが変わってしまったのに、日本はほとんど変わっていない。六本木ヒルズに行ったら、以前と同じ店があって、同じ店員がいたので驚いた」
〇そうなんですよねえ、アメリカはコロナで100万人近くが亡くなって(このデータを見ると現在98万8609人)、でも2021年のアメリカ経済は5.7%成長だった。2020年4月に1か月で2000万人の雇用が失われて失業率が10%上がったけど、2年かけてほぼ取り返した。そしてインフレは前年比8%台である。その間に、日常生活にどんな変化が起きているのか、ちょっと想像がつかない。
〇帰ってきたばかりの駐在員に聞くと、「レストランに行ってもメニューがない」(QRコードをスマホで読み取って注文する)とか、「チップは20%以上」(40ドルの支払いに対して50ドル札を出してもお釣りがない)とか、「店員にやさしくしてください、という張り紙がある」(それくらい人手不足が激しくて、店員がすぐ辞めてしまう)ことになっているそうだ。この次に行ったときにはいっぱい驚くことがありそうだ。
〇それから「3万ドルで買った新車を中古で売ったら、3万5000ドルになった」(それくらいインフレが進んでいる)のだそうである。日本はこの2年で何が変わったかと言えば、外出にはマスクが欠かせなくなって、人はあんまり死んでいないけれども、経済は相変わらず低調のままである。
〇つまり変わる国もあれば、変わらない国もある。結果として円安が進む。まあ、しょうがないか。
<4月18日>(月)
〇ニューヨークタイムズ紙でトマス・フリードマン氏が、またまた気の利いたことを言っている。お題はプーチン大統領に対する「タダのアドバイス」である。
〇プーチン氏に対して、何か教えを垂れることができそうな人は居ないかとを考えて、フリードマン氏はアメリカの戦略論の第一人者ジョン・アーキラに電話してみた。すると彼は即座にこう言った。俺ならこう言うね。「和平しやがれ、この阿呆」。
When I called Arquilla and asked him what he’d tell Putin today, he didn’t hesitate: “I would say, ‘Make peace, you fool.’”
This is also known as the first rule of holes: When you’re in one, stop digging.
〇これはまたの名を「穴の第一法則」と呼ぶ。すなわち、穴に落ちたら、まず掘るのを止めよ。
〇いや、これは至言である。が、なかなかできることではない。人は穴に落ちたら、ますます必死に掘ってしまうものなのだ。皐月賞を外したら、ダービーではさらに大きな額を張り込んでしまう。開幕から3勝する間に16敗もしてしまったどこかのお馬鹿な球団は、この期に及んで打線を組み替えたりして傷を深くする。ああ、分かっちゃいるけど止められない。人は愚かな生き物であるからだ。
〇それでも人は賢くなることもできる。虚心坦懐に他人の意見を受け入れることができれば、である。ロシア軍が捲土重来を目指すのであれば、このアーキラ教授が唱える「戦争における3つの法則」を拳拳服膺すべきであろう。
(1)many and small beats large and
heavy
ウクライナ軍の小さな部隊が、ドローンや対空兵器や対戦車ミサイルなどを使って、大勢のロシア重武装部隊を易々と破っている。
(2)finding always beats flanking.
先に発見した方が勝つ。ウクライナ軍にはドローンもあるし、iPhoneを持ったおばあちゃんたちが味方して敵の居場所を教えてくれる。
(3)swarming always beats surging
群れは増派を破る。軍勢の多寡はもはや問題ではない。ロシア軍の車列はその象徴だ。
〇近い将来に『ハーバード・ビジネスレビュー』あたりに、「ウクライナ軍に学ぶ経営革新」みたいな論文が掲載される気がするな。「だったら自分で書けよ」という気もするけど。
<4月19日>(火)
〇『ゴールデンカムイ』29巻を落掌。
〇既に28巻で刺青人皮の謎は解かれ、金塊のありかもわかっている。アシリパ、不死身の杉元、土方歳三、そして鶴見中尉の第七師団が最終決戦の地に殺到する。
〇いやー、あと1巻くらいで完結しますね。北海道から樺太、極東ロシアまで、北方のあらゆる場所を旅した長いドラマもいよいよ大詰め。よく考えてありますなあ。
〇数々の伏線を回収しつつドラマは進む。これから先は、たぶん多くのキャラが倒れていくはず。ラストを知りたいけど、変な形では知りたくない。待ちますぞ。大団円まで。
<4月20日>(水)
〇90年代の半ば頃のことだったと思うのだけど、岡崎研究所の会合で「モスクワの日本大使館から面白い人が帰ってきた」というので紹介されたのが佐藤優さんであった。同じネズミ年生まれである。その後は「外務省のラスプーチン」と呼ばれたり、「知の巨人」と呼ばれたりして今日に至っている。ちなみに「くにまるジャパン」のコメンテーター陣としては、ずっとすれ違いでした。
〇その若き日の佐藤氏が、日本に帰ってきてすぐに語ってくれた感想は、「こんなに油断をしている国でいいのか」ということであった。「たとえばモスクワの普通の市民だと、3DKくらいのアパートのうちの1室は食料倉庫ですよ。そしてダーチャと呼ばれる別荘で家庭菜園をやって、野菜は自給しています。それくらい用心深い」と言っていた。
〇その話を聞いて、反射的にこんなことを言ってしまった。「そんな無駄なことをしているロシアの経済に未来はないですなあ」。いや、これは効率重視の日本の発想から行くとそうなる。野菜なんてものは、自分で作るよりも農家さんで作ってもらって、店で買う方が安いに決まっている。部屋を倉庫にするのも論外で、そんなデッドスペースを作ってどうするのか。
〇とはいえ、これは後年になってロシアの地を実体験して初めて分かったことなのだが、あの寒さの中を生きていくためには「コストは度外視して安全保障重視」にならざるを得ないのだ。日本のようなのどかな国だから、われわれは効率性を追求できる。その上で「起きてほしくないことは考えない」呑気な国民性が醸成されるのである。
〇だからときどきロシア人と付き合って、「ああ、世の中にはこういう世界観があるのか」と学習した方がいい。今日のグッチーポストの懇親会で参加者から教わったのだが、シベリア鉄道の暖房は今でも石炭なんだそうですな。だって電気だと、何かのはずみで電線が切れた時に乗客が凍え死にしてしまうから。これぞロシアのリアリズムというものである。
〇それに比べれば、ハッキリ言って甘ちゃんの西側国民が行う経済制裁は、用心深いロシア人にはきっと通用しないんじゃないか、と思えて仕方がないのである。われわれは所詮、のどかな世界の住人なので。
<4月21〜22日>(木〜金)
〇4月21日は内外情勢調査会の仕事で静岡県掛川市へ。
〇新幹線掛川駅で降りるのは、2019年10月、まだコロナなどという忌まわしいものがなかった頃に、ラグビーW杯のスコットランド対ロシア戦を見に行って以来である。あのときはエコパスタジアムで、ワシはロシア側の応援をしていたのであった。ロシア大使館から回ってきたチケットだったので、わざわざ起立してロシア国歌まで歌ったものである(ちゃんと練習した)。しかも試合はスコットランドの圧勝。いまから思えば、何とも不本意な経験であった。
〇中部電力浜岡原発が近いこともあって、「これから先、日本にとって重要なのは原子力発電所を再稼働して、なるべくLNGの消費量を減らして、その分を欧州に回すことだ。それが世界に対する貢献になるし、結果として貿易赤字を減らして円安を止めることにもなる」などと申し上げる。
〇その日のうちに新幹線で戻って来るが、翌朝が「モーサテ」なので都内のホテルに宿泊することに。エクスペディアで適当に選んだ結果、汐留ロイヤルパークホテルを選択する。ところが東京駅についてみると、雨の中、タクシー待ちの行列ができている。おお、何とも久しぶりの体験である。いかにも「ディズニーランドから帰りの家族連れ」などがいらっしゃる。
〇約20分待ってタクシーに乗車。運転手さん曰く、「だんだん普通になってきましたねえ。皆さん、マスクはしていますけど、もうコロナを怖がってはいませんね」。いや、本当に怖がっている人はまだ外出を避けて、タクシーには乗らないのだと思うが。ともあれ、平常への回帰が進んでいる様子は何よりである。
〇朝は午前4時に起きてテレビ東京へ。このところ月〜水の出演が続いていたので、今日は久しぶりに塩田真弓&大浜平太郎ペアとご一緒である。相内さんと豊島さんには申し訳ないけれども、やっぱりベテランコンビは準備が楽である。もう一人のゲストはインベストラストの福永さんである。
〇役目を終えて戻ってくると、これから登場のパトリック・ハーラン氏が待機中であった。いやあ、またなんかの機会に共演したいです。「キレ芸」の厚切りジェイソン氏よりも、ずっとやりやすいですから。
<4月23日>(土)
〇ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相が訪日中。一昨日は日NZ首脳会談が行われて、岸田首相との間で盛り上がったそうである。今日でご帰国のようですな。
〇いろんなイベントがあったみたいだけど、以下の映像がバズっている。会場が八芳園、というところがいかにもNZ大使館らしい仕切りだが、なんでバックコーラスが滝廉太郎の『荒城の月』だったんだろう。キウイブラザーズとのあまりのミスマッチにしばし呆然とする。
●アーダーン首相をおもてなしするキウイたち
〇ちなみに「キウイ」(Kiwi)というと、第一義的にはNZにしか居ない飛べない鳥のことを指し、第二義的には「ニュージーランド人」や「ニュージーランド・ドル」のことを意味する。ワシらが食べている果物は、"Kiwi
Fruit"というのが正しい。NZに行って「キウイが食べたい」と言うと、それは佐渡島に行って「トキが食べたい」というのと同じようなことになりますのでご注意を。一応、絶滅危惧種ですので。
〇アーダーン首相はワカヌイにも出没されたようです。コロナになってからはご無沙汰していますが、この店のNZビーフとラムは絶品ですぞ。ついでにNZワインも。と言いつつ、ワシもリトル・ビューティーのソービニヨン・ブランをたった今、開けたところである。
〇アーダーン首相についてはいろんな報道がされているけれども、昨年夏の拙稿もご参考になるのではないかと思う。首相就任後に産休・育休をとったり、生後3か月の娘を連れて国連総会に行ったり、その後に事実婚状態の男性と婚約したけれども、コロナのために結婚式を取りやめたとか、なかなかにぶっ飛んだ人なのである。
●ニュージーランド史上「最年少」の女性首相がマニアを生む理由(ダイヤモンド・オンライン)
〇NZでは3人目の女性首相である。1人目のジェニファー・シップレー氏は国民党で「肝っ玉母さん」、2人目のヘレン・クラーク氏は労働党で「鉄の女」。3人目のアーダーン氏になって、初めてごく普通の女性が首相になった。NZは世界で初めて婦人参政権を認めた国でもある。そういう意味では、世界の最先端を行っている。長らく同国に関心を寄せてきた当溜池通信としては、これを機会にニュージーランドへの理解が広がれば幸いに存じます。
<4月25日>(月)
〇本日は「長島昭久 エンパワージャパン2022」会合へ。以前は平河町のルポール麹町だったが、今回の会場はキャピタル東急なのである。
〇菅義偉前総理の特別講演会がある。「改革断行内閣、激動の1年を振り返る」という演題で、いろいろ思いのたけを語られるのかと思ったら、「日米同盟強化」「コロナ対策、ワクチン接種」「ケータイ値下げ、不妊治療」など、聴衆が知っている話がほとんど。2度ほど言葉に詰まられていたが、往時を思い起こすといろんな思いがほとばしるのかもしれぬ。つくづくお疲れさまでありました。
〇その後は、自民党の主だった多士済々が次々に現れてはご祝辞を述べる。以下、勝手ながら印象に残った一言のみメモ。
@二階俊博前自民党幹事長・志帥会会長:政治は一人ではできない。
A林芳正外務大臣:党は違ってもずっと一緒。若いわかいと言われながら、もうお互いに還暦。それでも人生100年時代ですから。
B安倍晋三元首相:昨年の衆院選で長島さんは、菅直人元総理を相手に一歩届かなかったが、次は違う。同情票は1回だけです!
C高市早苗自民党政調会長:長島さんは去年の選挙でおカネを使い果たした。今日のパーティーのお陰で、秘書さんたちの夏のボーナスが払えます。
D山口壮環境大臣:(東京18区の前の自民党候補者だった)土屋さんのご恩を忘れてはなりません。
E野田聖子少子化担当大臣:国防だけではなくて、人口減少問題も大事。この国の主役は子供たち。子ども家庭庁をどうぞよろしく。
F河野太郎自民党広報本部長:ウクライナ問題で大変な時期、長島さんはいいときに自民党に来てくれた。次は小選挙区で勝たせてください。
G石破茂元自民党幹事長:ラーメンからミサイルまでやっております。高校も大学も長島さんと一緒です。防衛庁長官時代には非常に厳しい質問をしてくれました。
H中曽根弘文元外相:日米議員連盟、日韓協力議連も長島さんと一緒にやっております。
I福田達夫自民党総務会長:小学校から大学までずっと後輩でした。長島さんは近寄れないくらい、憧れの先輩でした。
J加藤勝信前官房長官:当選7回の同期です。しかも家内は長島さんの同級生でした。
K平沢勝栄前復興担当大臣:アメリカでも中国でも、長島さんは海外の方が評価が高い。ただひとつの弱点は選挙に弱いこと。応援をよろしく。
L武田良太前総務大臣:北東アジアの安定のために日米韓の協力が重要になる。韓国の次期外相は長島さんの友人だそうです。
M稲田朋美元政調会長:強くて優しいのが日本人。長島さんも強くて優しい人。
N西村康稔前経済再生担当大臣:長島さんとは当選同期で同じ年。平沢先輩は、選挙区の中で毎回、散髪屋を変えているとのこと。それくらいやらないと。
O土屋正忠前衆議院議員:80歳になりました。残りの人生は社会のため、長島さんのために尽くします。批判をする人ではなく、責任を持つ人に。
〇「This is
自民党」みたいな世界でした。どこがどう面白いのか、うまく説明できないところも含めて、まことに面白いパーティーでした。長島さん、いろいろあったけど良かったね。引き続きどうぞよろしく。
<4月26日>(火)
〇来月も外交日程はいろいろありますなあ。Fedの利上げはあるし、経済指標も予断を許さず、そしてそれ以上にウクライナ情勢がどうなるかわからない。とりあえず日程表を作っておきましょう。
*天皇陛下即位から3年(5/1)
*ADB年次総会(コロンボ、5/2〜5)
*米FOMC(5/3-4)→0.5%利上げ、QT開始決定?
*ドル建てロシア国債が部分デフォルトの可能性(5/4)
*英地方選・北アイルランド自治議会選(5/5)
*米雇用統計(5/6)
*香港特別行政区行政長官選挙(5/8)
*フィリピン大統領選(5/9)
*ロシアの大祖国戦争勝利記念日(5/9)
*韓国ユン新政権発足(5/10)
*4月の米CPI(5/11)
*3月の国際収支、4月の景気ウォッチャー調査(5/12)
*G7外相会合(独、5/12-14)
*沖縄本土復帰から50年(5/15)
*G7財務相会合(独ボン、5/18-20)
*豪州総選挙(5/21)
*バイデン大統領が訪韓(5/21-22)→ユン新政権と米韓首脳会談
*APEC貿易大臣会合(5/21-22)
*WEF会議(ダボス、5/22〜26)→2年ぶり開催
*WHO総会(ジュネーブ、5/22〜28)
*バイデン米大統領が訪日(5/22〜24)
*日米首脳会談(5/23)
*QUAD(日米豪印)会合(都内、5/24)
*仏同時テロ実行犯に判決(5/25)
*米FOMC議事要旨(5/25)
*米1-3月期GDP改定値(5/26)
*米4月のPCE物価指数(5/27)
*新潟県知事選挙投開票(5/29)
*コロンビア大統領選挙(5/29)
*米メモリアルデーで休日(5/30)
*4月の鉱工業生産、労働力調査(5/31)
〇それで"Sell in May."になるかというと、そんなに単純でもないような気がするんだよな。為替レートもちょっとだけ円高に戻している様子(127円台)。さて、どんなことになるのか。こういうときは虚心坦懐に受け止めなければなりません。
<4月27日>(水)
〇この前からずっと気になっていることがあって、それは「バイデン政権による一連の対ウクライナ対応をどう評価するか?」である。
〇肯定論(与えられた条件でよくやっている)と否定論(油断を見せたからプーチンが攻め込んだ)は両方あり得るところで、不肖かんべえ自身は前者の側である。いつ核戦争が始まるかわからない今のような時期に、冷戦時代の怖さをよく記憶している指導者がアメリカのトップに居ることは、何物にも代えがたい安心材料だと感じている。
〇それでも「ひょっとしたらなあ〜」という思いはある。以前にも書いたように、2月中旬までのアメリカ世論は"Stay
Out"が多数派を占めていて、ウクライナに兵を出すどころか、そもそも首を突っ込むな、という声が多かった。だったら変に期待を持たせるようなことを言うべきではないし、「曖昧戦略」もそれを見透かされるようではかえって逆効果となる。バイデン政権は、オバマ政権時代の「シリアの化学兵器はレッドライン→反撃せずにお茶を濁す」と、自分自身の「アフガンからの早期撤退→カブール陥落」という2つの原罪を背負っている。安全保障問題で、虚勢を張ることはできない相談であった。
〇そこで何をしたかというと、バイデン政権はインテリジェンス情報を徹底的に開示した。普通はそんなことは考えられない話で、それは貴重なネタ元をリスクにさらすことになる。しかるにこれだけ長く続いているところを見ると、ネタ元はヒューミント(クレムリンに深く食い込んだスパイ)ではなくて、オシント(公開情報)やシギント(通信、サイバー、衛星情報、AIなど)によるのであろう。ともあれ、これだけ正確に当たってきたことを考えれば、バイデン政権はかなり早くから「プーチンは必ずウクライナに攻め込む」ことを確信していたはずだ。
〇ところがバイデン氏は不思議なメッセージを流したのである。アメリカ参戦の可能性を自分で否定し、昨年12月に行われたプーチン大統領とのオンライン会談では、「もしものことがあれば、重大かつ深刻な経済的損害を与える」と告げた。プーチン氏にとっては、これは「私はヘタレです」と言っているように聞こえたことだろう。あの人は典型的な「安保脳」なんで、経済制裁の怖さは理解できんのです。
〇そうでなくとも米民主党政権は、「安全保障上の最大のリスクは気候変動問題である」とか、「米国防戦略の要諦は同盟国との統合的抑止である」みたいなことを言いたがる。2月14日という微妙なタイミングで、ホワイトハウスが「インド太平洋戦略」を発表したことだって、「そうか、お前は中国だけしか見てないわけね」という反応を招いた可能性がある。プーチン氏がミスリードされた可能性は否定できない(自業自得だが)。
〇何よりバイデンさんは、これまでずっと「戦わないことで利益を得てきた人」である。それは2020年の大統領選挙を思い出せばわかる話である。民主党内の予備選も、トランプ大統領との決戦投票も、みずからはあまり動かないでデラウェア州の自宅に引きこもっている間に、バーニー・サンダースは出馬を辞退してくれたし、ドナルド・トランプは勝手に転んでくれたのだ。何か問題があったときに、正面から取り組むのではなく、流れに任せることで勝利を引き寄せるタイプの政治家なのだ。
〇そのバイデン氏は、常任理事国(=核大国)が本気で戦争を始めた場合に、止める手段がないことは良く知っていた。そして昔からプーチン氏のことも知っていた。普通のアメリカ大統領であれば、正面から立ちはだかって「ヤメレ」と言うところである。ところが、バイデン流は相手に指させて局面を作らせて、自分はそれに沿って「後の先を取る」タイプである。これはこれでベテラン政治家らしい処世術ではある。
〇今までのところ、バイデン流儀は図に当たっている。アメリカは武器をウクライナに供与するだけで、ロシアの軍事力を思い切り削ぐことができている。この間にウクライナはもちろん傷つくわけだが、アメリカン・ボーイズが損傷するわけではない。経済制裁は世界的な規模になっているから、ロシアはむこう1年や2年は頑張り通すかもしれないが、いずれ10年単位で世界に劣後することは間違いない。そしてこの間にガス欠になる欧州経済は、アメリカにLNGの供給を求めてくるだろう。いやもう、結構毛だらけではないか。
〇そのバイデン政権が、おそらくひとつだけ読みを間違えていたことがある。それは「あのゼレンスキー大統領が大化けして、ウィンストン・チャーチルになってしまった」ことである。アメリカのインテリジェンス機関がどう判断していたかは知らないが、元コメディアン氏に対して「安全な国への逃亡」を提案したのはどうやらホントらしい。ゼレンスキー氏はそれを蹴った。そして雄々しく戦うことを宣言し、ウクライナ国民はそれに応えている。これは読みが外れる方が自然であろう。
〇ここから先はイフ(if)の世界だが、ゼレンスキー氏が国外に逃亡してしまい、ウクライナが総崩れになっていた場合にアメリカはどう動いたのか。おそらくそっちの方がメインシナリオであったはず。ウクライナに傀儡政権が誕生するとか、東部や南部がロシア領に編入されるといった事態は想定の範囲内で、米ロはあっけなく「シャンシャン」と手打ちになっていたのではないだろうか。お主もワルよのう。
〇このウクライナ情勢のおかげで、西側の指導者は軒並み支持率が上昇している。エマニュエル・マクロンは辛く大統領として再選されたし、ボリス・ジョンソン首相なんて完全復活である。われらが岸田さんまで支持率が上がっている。ところがただ一人、バイデンさんの支持率だけは上がらない。これはこれで、アメリカの有権者が大人の判断をしている結果なのかもしれない。
<4月28日>(木)
〇今週は林芳正外相と杉山晋輔前駐米大使の対談を聞き、小原凡司氏(笹川平和財団)の講演を聞き、小泉悠氏(東大先端研)のQ/Aセッションに参加して、それも全部リアルであった。もちろんテーマはすべてウクライナ情勢。いやあ、勉強になったし、面白かった。
〇こういう人たちといえども、何か目の覚めるような知見を持っているわけではなく、先の見通しもきわめて不確かであるというのが現下の状況にほかならない。それくらい今はわけがわからない。ということで、謙虚であらねばなりません。
〇なるべく直接の引用は避けながら、原型をとどめないスープのような形に煮込んだ上で、この「不規則発言」でちょっとずつ発信していく、ということを理想としております。
<4月30日>(土)
〇このところ毎晩、『機動戦士ガンダム』のTVシリーズを見返している。
〇もともと昨年秋にアマプラで見始めて、12話「ジオンの脅威」まで見たところでPCがぶっ壊れたのであった。この回のラストでは、有名な「坊やだからさ」のセリフが出てくる。シャアはガルマ・ザビを守れなかったということでジオン軍内で左遷され、しばし物語から姿を消す。ここで序盤の終了となる。偶然にも切りのいいところであったのだ。
〇春になってから、続きの13話「再会、母よ・・・」以降を見始めた。ガンダムの物語は、今見るとあまりにも絵が単調で、使われている色も少ない。音楽も単純で、特に主題歌は手抜きと言ってもいいくらいだ。少なくとも「エヴァ」や「ゴールデンカムイ」を見てしまった後では、何とも食い足りない。それでも、これは1979年に作られたシリーズなのである。40年以上前のものなのに、見返すとやっぱり面白いのである。
〇13話以降、アムロたちが乗ったホワイトベースは、ユーラシア大陸をゆっくりと西に移動する。そして25話「オデッサの激戦」までが中盤ということになる。この間にアムロが脱走したり、リュウが戦死したり、「マチルダさぁぁぁぁぁん!」のエピソードがあったりする。それから「さまよえる湖」が登場したことは、完全に忘れていた(16話「セイラ出撃」)。ロブ・ノールの話は、あの頃は流行りだったんですよ。
〇今回、映画化される『ククルス・ドアンの島』は、TV版では15話に相当して、この時期に多い1話完結エピソードである。そこだけを切り出して1本の映画にするという手法で、スターウォーズでいえば『ローグ・ワン』みたいな感じだろうか。ワシ的には14話の「時間よ、止まれ」が好きで、初めて見たときには「敵方が必死になっているところをちゃんと描いている戦争モノ」という点にいたく感心したものである。
〇で、この間にはランバ・ラルとかマ・クベ司令とか、ジオン側の魅力的な敵役が次々と登場するのであるが、いかんせん物語としてはダレ気味なのである。まあ、この間に登場人物たちは成長していき、ホワイトベース内部の雰囲気も良くなっていく。最初の頃は頼りなくて、途中で寝込んでしまったりしたブライト・ノアも、「手の空いている者は右舷を見ろ。フラミンゴの群れだ」のセリフが出る頃には、文句のつけようのない艦長になっている。
〇物語が再びリズムを取り戻すのは、26話「復活のシャア」からである。やっぱりガンダムは彼が居なかったら面白くない。三国志の真の主人公が曹操であるように、ガンダムもシャアによる復讐の物語なのだ。ホワイトベースがジャブローを離れて、再び宇宙空間に戻る31話「ザンジバル、追撃!」からはスレッガー中尉のようなクセ者も参加する。いやあ、この辺からが本当にガンダムですよねえ。
〇宇宙空間で立ち寄る「サイド6」ではいくつもの出会いがある。ワシ的にはララァとの出会いよりも、ボケているアムロ父というリアリティがたまらない。そういう人間ドラマがあって、そこに「ソロモン攻略戦」でのソーラー・システム稼働という戦争の大きな転換が重なっていく。いやあ、すばらしい。とうとう昨晩は、38話「再会、シャアとセイラ」までたどりついてしまったではないか。
〇ああ、もう残りは5話しかない。きっと今夜は一気に「ア・バオア・クー」から最終話の「脱出」まで行ってしまうだろう。そこまで行くとほとんど覚えている。酒量も増えるに違いない。いや、それくらいは構わないのだが、きっと連休の後半には、劇場公開版の方のガンダムを見返すことになってしまいそうだ。まあ、どこにも行く予定がないし、3〜5日は競馬もやっていないからちょうどいいのである。
〇とまあ、世の中は現実の戦争が起きているというのに、毎夜、フィクションの世界の戦争に逃げ込んでいる。なんだか申し訳ない気もするが、これはこれで至福の時間なのである。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki