●かんべえの不規則発言



2002年8月前半





<8月1日>(木)

○今日は、元マイクロソフト日本法人社長で、現インスパイア社長の成毛真氏の話を聞いたのが、とても面白かったので以下、ちょっとだけ抜書き。

●自分がマイクロソフトを辞めた2000年時点で、「IT産業はもう伸びない」と確信した。もう自動車や家電などと同じような、普通の成熟産業になってしまった。これから先は、普通の産業と同じ程度にしか成長しないだろう。

●とはいっても、IT産業の中身は激しく入れ替わるだろう。かつてのような急成長期だと、たとえば他社がどんなに頑張っても、独占企業であるマイクロソフトは抜けなかった。しかし、ITも普通の産業ということになれば、努力次第で他社のシェアは取れる。そういう意味では、参入する意義はある。

●「ポストITは何か?」という質問をいろんな人から受ける。「そんなものはない」というのが私の答え。バイオやナノテクは、ITのようにそれだけでひとつの産業としては成り立たない。かならず他の産業との組み合わせになる。だから首を突っ込んでおく価値はあるし、そういう仕事はベンチャー企業よりも大組織が向いている。

●それではこれから何が儲かるか。@日本国内の、A成熟産業で、B中堅企業で、C株価が安い上場企業。こういう会社を選んで投資し、人を送り込んで、業績をよくして売りぬける。これがいちばん投資リターンが大きい。IPOは考えない。IPOするくらいなら、きっちり配当してもらった方がいい。

○米国西海岸の「ITベンチャーを起業して(投資して)、IPOで億万長者」というやり方は、はっきり行き詰まっているらしい。別のソースによれば、1995年から2000年までのブーム期の間に、米国で1万5000社のベンチャーが誕生したそうだ。うち2000社が買収ないしはIPOによって成功を収め、3000社が倒産して、残りは1万社だという。これらが死闘を繰り返している、というのが今日のITベンチャー業界。困るのがベンチャーキャピタルで、投資資金はいっぱいある(一説によれば700億ドル)けれど、投下する先がない。しょうがないから、投資家に返上しているんだそうだ。

○ところで、昨日発表された米国第2四半期のGDPは、前期比+1.1%成長ということで「米国景気減速」と騒がれている。しかし、かんべえが注目したいのは次の2点。総じて、「思ったほど悪くない」という気がしている。

@個人消費が前期比+3.1%→+1.9%と減速した一方で、民間設備投資が‐5.8%→‐1.6%と底打ちしている。
A民間設備投資の中身で、「情報関連設備およびソフトウェア」の項目が、2四半期連続で増加している。

○ITバブル崩壊は底無しに見えるけど、そろそろ歯止めがかかるんじゃないだろうか。米国のIT産業が回復に向かい出すとしたら、日本からの米国向け輸出の項目の中で、「半導体等電子部品」「科学光学機器」「通信機」などがプラスに転じるはずだ。6月の通関統計では、これらの項目は揃って前年比二桁のマイナス。この辺をチェックしておけば、米国IT産業の復活のタイミングを見逃さずに済むだろう。


<8月2日>(金)

○2004年から紙幣を刷新するとのニュース。野口英世が1000円札になるとのことで、今頃、猪苗代は大騒ぎだろう。かんべえの認識では、彼、単なる医学者ではないのである。いわゆるヒステリー性の性格なんだと思う。あの矛盾に満ちた人物がお札になるというのは、はたしてどんなもんかいな。樋口一葉も、あんなに若死にした人をお札にしていいんだろうか。女性なら、津田梅子とか、もっとほかにいるだろうに。

○昨日の落雷のせいで、今朝は武蔵野線が動いていない。11時からブルームバーグの放送に出ることになっていたので、安全策を取って大手町に直行する。前日、「会社までクルマ出しましょうか?」とのお申し出があったのだが、断っておいて正解だった。おかげでゆっくりと『選択』を読む。

○今日も午後から落雷。お台場から見える東京湾の景色がすべて雨に閉ざされる。エクアドル人のサマーインターン、ベロニカさんがこの天気に目を丸くしているので、「これがアジアの天候というもの。じきに晴れるよ」と教えてあげる。夕刻には言葉通り晴れあがる。でも「ゆりかもめ」が落雷で止まっていた。よくよく電車に祟られる一日である。

○夜は田中さん主催の「ただ集まって酒を飲み、中華料理を食べる会」へ。岡本さんとはこれで二晩連続。それから「ネクスト経済研」の収録を終えた伊藤さんが遅れて登場。50人くらい集まって盛況。田中さん人脈だけに、「知ってますよ、四酔人のかんべえさんでしょ」などと言う人多し。今夜初めて会えた読者、という方もいて感動。ネットの取り結ぶなんとも不思議なご縁である。楽しかったけど、立食パーティーも3時間を超えるとさすがにしんどいね。年かな。

○驚く無かれ、その中に「今日はブルームバーグに出てましたね」という人が4人もいた。金融関係者はほとんど見てるんでしょうか。おそるべしブルームバーグ。


<8月3日>(土)

○W杯3戦士を欠き、このところ負け続けの柏レイソル。W杯以前はJ1の真中当たりにいたはずなのに、最近は底辺をさまよっている。今宵は久々のホームゲームで、行ってまいりました日立柏サッカー場。このところ人気薄だからガラガラかと思いましたが、1万2000人の入りとのこと。相手はFC東京。

○試合前の応援合戦が楽しい。まずFC東京のサポーターが、「オレ達も大好き、日立台」という横断幕を出す。その次に「首都、移転反対」の横断幕を出し、「いてーん、ハンタイ!」のコール。するとレイソル側が喜んで、「あっりがとう!」のコール。そしたらFC東京側が「おっもしろい!」のコール。とっても和気藹々。

○日立台のグラウンドは、ある意味で理想のグラウンドである。なにしろ観客席とグラウンドがとっても近い。サポーターが手を伸ばせば選手に届く、というと大袈裟だが、レイソルのサポーターが応援団席で水を撒くと、FC東京のGKにしぶきがかかるくらいには近い。柏駅から徒歩20分くらいと、アクセスもいい。スタンドは鉄板一枚の薄さで、ここでサポーター全体がタテ揺れした日には、どんな大惨事につながるか分からない怖さはあるが、とにかくサッカーを見るには理想の環境である。

○不規則発言の7月7日にも書いた通り、レイソルは「柏の葉公園総合競技場」にホームを移すかどうかという話があって、サポーターは反対している。とりあえず今年の場合は、2試合を日立で、1試合を柏の葉で、といったペースで予定が組まれている。だが柏の葉は、常磐新線ができればともかく、アウェイのサポーターが駆けつけるには遠すぎる。それで両方とも、「移転反対」で盛りあがってしまったわけ。

○FC東京の応援はなかなかセンスがよくて、以前は「金町はくれてやる」という横断幕を出したことがあったそうだ。これも解説が必要なんだけど、常磐線で東京から千葉へ入るときの最後の駅が金町。すぐ隣りが葛飾柴又で、川を隔てた松戸との間には有名な「矢切の渡し」がある、といえばどんなところか見当がつくと思う。金町在住の方には申し訳ないですが、要するに「あんなの東京じゃねえ」ってことです。余談ながら、高村薫の『マークスの山』には、金町のガード下の寿司屋で犯人の男と薄幸の看護婦が過ごす、胸がつぶれるほど切ないシーンがありまして、とても印象的です。

○試合は3−1でレイソルの連敗止まらず。FCのアマラオがハットトリックでした。いまや選手を輸出するようになった日本サッカーですが、点に絡むのは外人選手ばかり。レイソルもエジウソンがいいところを見せていたけど、あとはじぇんじぇん駄目。途中出場した明神も精彩なく、重症のようですね。もうちょっと強くなったらまた見に行こう。




<8月4〜5日>(日〜月)

○どうも不調。そういえば先日から咽喉が痛かった。夏風邪のようです。こんなんで、ちゃんと仕事を片付けて休みが取れるんでしょうか。宿題をたくさん抱えていて心配です。

○あとで読もう、と思って取っておいたコピーを、今日になって読みました。The New York Times紙の7月29日付記事、"Profound Effect on U.S. Economy Seen in a War on Iraq"(イラクとの戦争で生じる米国経済への主な影響)。結構面白い。以下、要点をまとめておきます。

● ブッシュと政権首脳部は、対イラク戦争を決断しておらず、それに関するコスト計算もまだ行っていない。どのような選択があるにせよ、コストは巨額になるはずであり、連邦政府の財政赤字は拡大中である。軍事行動が金融市場や消費支出、設備投資、旅行などの経済活動に心理的な効果を与える懸念も残る。

● もし25万の兵力を動員するのであれば、相当規模の兵力を移動させなければならず、来年早々の軍事行動のためには、秋までに予備役の招集を行わなければならない。

●湾岸戦争は611億ドルかかっている。そのうち484億ドルはサウジ、クウェート、日本などの国が負担してくれた。これを2002年価格に置き換えると799億ドルとなる。今回は他国がイラク攻撃に消極的であり、負担を申し出てくれそうにない。

●市場の反応も不確実である。一般論として、イラク攻撃があれば商品市況は下落、金価格は上昇、石油価格は急上昇となろう。1990年8月のクウェート侵攻の際は、石油価格は1バレル15ドルから10月には40ドルまで上昇し、その後、約1年にわたって石油高が続いた。その結果、米国経済は91年に景気後退に陥った。

●米国の石油戦略備蓄は現在5.8億バレル。これを機動的に放出することにより、石油高を回避することができるかもしれない。ブッシュはエネルギー長官に対し、昨年11月に1億バレルの備蓄積み増しを命じていた。今年1月からは1日15万バレルという記録的な量で備蓄が増えている。備蓄が7億ドルになれば、不安定な市場に対して1日420万バレルを供給することができる。これなら、日産100万バレルのイラク産原油が途切れても十分であろう。

●最大の懸念は、かつてクウェートの油田に火を放ったフセインが、化学、生物、核兵器をクウェートやサウジに対して使用するのではないかということ。なかでも最大の産油国であるサウジでは、軍事行動に対する恐怖感が強い。

○要するに世界経済への影響は、@米国の財政悪化、A消費や投資マインドの冷え込み、B石油価格の上昇、という3点に集約できそうだ。湾岸戦争のときは、サウジや日本がお金を出してくれたけど、今回はそれが期待できない、というのが面白い。それでは今の米国の財政が、イラク攻撃によって生じる推定800億ドルの追加負担に耐えられるか、というと微妙なところではないかと思う。景気の先行き不安を反映し、長期金利は低下気味である。軍事行動を始めたら、これが上昇するかどうか。

○ブッシュ政権としては、「よその国がついてこなくても、アメリカはイラクを攻撃するぞ!」という腹だと思う。しかし軍事行動に伴うAやBのリスクは、世界の他の国も共有しなければならない。頭が痛いところです。


<8月6日>(火)

○今日は無理しないようにと思いつつ、気がつけばお昼抜きで働いてしまう私。なんてストイックな日々でしょう。

○昨日の続きですが、米国が昨年秋からせっせと石油の備蓄を増やしていたということは、この間の石油需要は強かったはずである。今日確認してみたら、今年の原油価格は1月半ばの17ドルから4月初めには27ドルまで駆け上がっている。なるほどね。この間、生産を伸ばしたのはロシア産だったようだ。こういう面からも、米国はロシアと仲良くしておく必要があったわけですな。

○戦略備蓄は、2000年9月に3000万バレルが放出されたことがある。このときはブッシュ対ゴアの選挙戦の真っ最中。冬場を迎える際に、ヒーティングオイルが高いと選挙に不利になる、ということでクリントン=ゴアが決断した。このときに知ったのだが、石油備蓄はルイジアナの岩塩ドームにあるのだそうだ。これを聞いて非常に納得しましたな。

○おそらく備蓄を取り崩して全国に送付する際は、ミシシッピ川の水運を利用するのだと思う。ミシシッピ川はとにかく流域面積が広くて、さかのぼれば五大湖周辺まで行けちゃいますからね。これをトラックで運んでいた日には、石油を運ぶためにガソリンが減って困る、という馬鹿らしいことになる。そもそもなんで米国が石油をいっぱい消費するかといえば、輸送用燃料として必要だからだ。因果な話である。

○それにしても、アフガン戦線の最中に「イラクも叩かねばならぬかも知れぬ」と思いつき、「では今のうちから石油の備蓄を増やしておこう」と考えるのがいかにもブッシュ政権らしい。これでこの秋に予備役を召集し、来年早々にイラク攻撃開始、となったら文字通り3年越しの作戦ということになる。かないませんなあ。


<8月7日>(水)

○昨日までの話の続きなんですが、米国の戦略備蓄の5.8億バレルって、どのくらいの量なのか、あらためて考えてみました。5.8億バレルX159=922億リットル=9220万キロリットル。(1バレルは159リットル。普通の樽には190リットル入るのだが、昔は船で運ぶと中身が漏れることが多かったらしく、こういう数字になった)。では、日本の石油備蓄量はといえば、以下をご覧ください。

平成14年3月末現在の我が国の石油備蓄は
  民間備蓄  77日分 4,187万kl(製品換算)
                  製品 2,144万kl( 51%)
                  原油 2,151万kl( 49%)
  国家備蓄  89日分 4,836万kl(製品換算)
                  原油 5,091万kl(100%)
  合  計  166日分 9,023万kl(製品換算)

出典:資源エネルギー庁

○なーんと、日本とあんまり変わらないではないか。これは米国がたいしたことないというより、昭和50年の石油備蓄法制定以来、とにかく日本がよく貯めた、ということではないかと思う。5ヶ月分以上の石油を備蓄している国はちょっとないでしょう。せっせと蓄える、というのは得意なんですな、この国は。

○さて、先日来、ちょくちょく話の出る、エクアドル人のサマーインターン、ベロニカさんの日本生活でのエピソード。週末に鎌倉へ観光旅行に行く予定になっていた某日、職場の若手社員が、「俺さー、昨日、キャバクラに行っちゃってさー」などと言っているから、彼女はそれを聞きつけ、「わたしも今週末に行くんですぅ」。周囲は大爆笑。

○というわけで、「いざキャバクラ」とか、「とりあえずビール」とか、「デザートは別腹」とか、妙な日本語をたくさん覚えたようです。彼女の素朴な疑問をいくつかご紹介しましょう。

「なぜ日本の男性は黒一点を嫌がるのか」

―「紅一点」とはいうけど「黒一点」とはいわないんだよ、と教えるも、まあ意味は通じますな。要するに、南米の男性は大勢の女性に囲まれると喜ぶのに、なぜ日本人は恥ずかしがるのか。小さな声で、「日本の女性は強すぎるからだよ」という中年男性の意見あり。

「なぜ日本人は南米のチームより欧州のチームが好きなのか」

―六本木でワールドカップ「イングランド対アルゼンチン」戦を見ていたら、周囲のほとんどがイングランド乗りだったのに驚いたそうです。「ベッカム様がカッコいいから」だけでは納得してくれません。先進国のサッカーなんて面白くない、という彼女は、「韓国対イタリア」戦では熱烈に韓国を応援したそうです。

○彼女の日本滞在期間も残りあとわずか。とってもユニークな彼女の研究テーマについては、おってこのページでご紹介しましょう。こうご期待。


<8月8日>(木)

○今日の『ルック@マーケット』では、歳川隆雄さんの内閣改造予想がとても面白かった。せっかくなので、ここで書いておきます。

●9月末に改造という見通しがもっぱらだが、10月にずれこむと見る。なんとなれば、9月末の民主党代表選挙では、若手の前原議員あたりが善戦して、鳩山代表―前原幹事長といった体制ができるだろう。これは結構、魅力的に見えるので、自民党としても相当な覚悟でリシャッフルが必要になる。以下、主な閣僚の変更を予想する。

1.確実にはずされる顔ぶれ:遠山文部科学相、武部農林水産相、中谷防衛庁長官
2.意外と生き残る閣僚:竹中経済担当相、柳澤金融担当相
3.ウルトラCの起用:安倍官房長官、古賀財務相、野田経済産業相

●小泉首相としては、大幅改造はしたくないものの、小幅改造ではすまないという情勢である。そこで経済閣僚を残し、若手の安倍晋三を官房長官に昇格させ、実力者の古賀誠を財務大臣に起用する。(抵抗勢力と妥協するみたいで、あんまり印象はよくないけどね)。

●ただしこれだけでは済まない。なんとなれば、10月27日の補欠選挙では、たぶん自民党は8つの選挙のうち、いいとこ2つくらいしか勝てないだろう。そうなると執行部は交代ということになる。そこで山崎拓に代わる幹事長として、官房長官を勇退した福田が登場する。総裁派閥から幹事長が出ることになるものの、今さらそんなことは言っていられない。

○それから、今日の番組で紹介された「あぁ永田町!」という曲、非常によくできているので、歌詞を紹介してしまいましょう。

あぁ永田町! 
作詞:まぐまたいし/作曲:やまもとかずと

痛みはしかたないけれど
僕が痛いのはちょっとイヤ
外を変えるのはいいけれど
中が変わるのはちょっとイヤ

永田町 永田町 住みやすいのよ永田町
永田町 永田町 一度はおいでよ永田町

女の涙美しい
だけど僕にはちょっとイヤ
あの時言ったあの言葉
忘れてくれなきゃもっとイヤ

(セリフ)
無意味な森を取りのぞき 小さな泉で皆んなが喜び薪を焚く
静かに燃えるのいいけれど 大きな炎は邪魔になる
橋のふもとで鈴が鳴り 燃えてる薪を捨てさった
そして皆んなも消えてった

勝とうと思えばボロが出て
金の鈴まで手放した
ソーリィソーリィと詰め寄った
そんなあの娘もアイムソーリィ
皆んなもついてる嘘だけど
ばれた人だけツイてない

永田町 永田町 意外と大変永田町
永田町 永田町 それでも楽しい永田町

どいて下さい僕の道
じゃまをする人大嫌い
青い木の中橋の元
どこでも僕等はついて行く

(音楽著作権協会黙認)

○ここに読み込まれた政治家の名前、あなたは何人分かるかな?


<8月9日>(金)

○あらら、田中真紀子さんが議員辞職ですって。たぶん東京地検から、「いま辞めておけば逮捕はしないよ」のサインが出てたんでしょう。加藤紘一と同じパターンですね。小泉さんもこれでひと安心といったところか。昨日の「あぁ永田町」という歌じゃありませんが、表舞台を去る人が続きますね。そんな中で、取り調べにあっても意気軒昂としている鈴木宗男さんって、あんたはいったい・・・・

○今日はベロニカさんの研究発表の日。テーマは「日本市場と養殖マグロ」です。世界のクロマグロとミナミマグロ、およそ40万トンが消費されますが、実にその9割を日本人が食べているんです。と聞くと、ドキッとしませんか?

○マグロは高価な魚でキロ当たり35〜40ドルもします。水産物取引の中でも、こんなにいい商品はありません。その結果として乱獲が心配されています。そんな中で1991年に豪州で始まったのが、マグロの養殖の実験。地中海や大西洋の一部でも、同様な実験が始まっていて、2〜4歳の若いマグロを網で囲い込み、飼育して大きくしている。すでに日本に入っているマグロの4割程度は、この養殖マグロなんだそうだ。スーパーで売っている大トロとか、回転寿司の120円のマグロなどは、おそらくそのパターンなんでしょう。

○養殖の技法はどんどん進化していて、エサをペレットにするとか、将来は卵から育ててしまおうとか、意欲的な取り組みが行われている。いつの日か、マグロといえば養殖、となるのかもしれない。彼女の労作のパワーポイント資料は、そのうち日商岩井総合研究所のHPで紹介することになると思います。ご期待下さい。


<8月10日>(土)

○あいかわらずテレビや新聞をあんまり見ないものですから、世間一般の評価がどうなっているかは分らないのですが、田中真紀子氏の議員辞職に対する反響はそれほど大きくないような気がします。彼女に対する期待は、もっと以前の時点で消え去っていたのでしょう。この先も、「日本の首相にしたい人」ランキングには顔を出すでしょうが、新党を率いて永田町にひと泡吹かせる、なんてことはもうないと思います。なにしろ彼女、財産はそこそこにあるようですが、秘書給与をピンはねするほどのケチですから、その手のギャンブルに打って出ることはなさそうです。

○今月の文芸春秋が、「落ちた偶像 現代史の30人」という特集をやっています。面白く読ませてもらいましたが、そもそも偶像と呼ばれるような人は、あとで落ちるのが当然です。芸能人なんぞ、ほとんどがそうじゃないですか。そして「あのひとは今」なんて特集が組まれたりする。「歌手1年、政治家2年の使い捨て」は、なき竹下登氏の名言ですが、このふたつの業界はつくづく似ている。スポーツ選手は記録が残るから、江夏みたいな事件を起こしても、ファンは許してくれる。芸能人と政治家は、速やかに忘れられてゆく。

○経済人はもうちょっと寿命が長くて、その点は恵まれている。それでもエンロン当たりはさておき、あのジャック・ウェルチが女性問題でつまづく時代ですから、やっぱり似たような人種になってしまったのでしょう。ソフトバンクの株価が1000円に近づいているということは、孫正義さんあたりが次の「落ちた偶像」候補者ということになるのかも。

○ところで田中真紀子さんですが、おそらくどこかのテレビ局が契約して、コメンテーターになるんでしょうね。おそらく劇場型政局はこれからも続く。それでもって、小泉さんという偶像が落ちる日を待つことになるんでしょう。うーん、あんまり見たくないな、そういう図は。


<8月11日>(日)

○熱闘甲子園。今朝の第一試合は富山商業対柳川高校。エラーは多いし、外野は前進守備だし、レベルはあまり高くない。おっととと、という感じで1−1のまま進行。しかし8回ウラに絵に描いたように、富山商業側が自滅して3点を献上。9回はすぐ2アウトとなり、そこから代打を送るとこれがヒット。「最後のお願い」という形。1塁2塁まで攻めたところで力尽きる。なんというか、典型的な甲子園の初戦でしたね。それでもNHKのアナウンサーは、こんな凡戦を「富山商業、いいチームでした」と優しい言葉を贈ってくれる。ありがたし。こうしてわが地元、千葉県代表に続き、わが郷里、富山県代表も敗退。

○次女Tが「どこかへ連れて行け」というので、「どこがいい?」と聞くと、「競馬場」と言う。というわけで暑い中を中山競馬場へ。今日は新潟と札幌と小倉の開催。あんまり大きなレースはないので、今日は割り切ってサンデーサイレンスの子供たちを応援する。新潟の第10レースで、シャイニンググラスが期待に応えてくれた。馬単で買ったので、思ったよりついた。あとは全敗。今日は難しいレースでしたな。三連複というのは買いにくいが、馬単と馬連が選べるというのはいいなあ、という印象。

○偉大なる種牡馬、サンデーサイレンスは状態が悪化しているそうだ。あれだけ一族郎等が活躍していたら満足かもしれないが、そんな老け込むような歳ではないはず。目下、一番の出世がしらである現役馬マンハッタンカフェは、凱旋門賞に挑戦するよし。たしかに菊花賞、有馬記念、春の天皇賞と取ってしまったら、国内にはもう目標はないも同然。頑張れ、エルコンドルパサーの記録を超えてくれ。

○それにしても暑かった。体重が1キロは減った感あり。こんな日に競馬場に来るのは、本物のひま人か、馬好きか、どっちにせよ幸せな人たちに違いない。わが身を省みると、夕刊フジの書評は終えたが、フォーサイトのゲラチェックはまだ、サピオの原稿は手付かず。そして来週の台湾での国際会議の資料が、メールでどどんと来ている。これを全部読めというのか。休まらない夏休みが続きます。


<8月12日>(月)

○ふと思うのだが、甲子園ではどこまでが許されるのか。なにしろ野球というゲーム、「盗む」とか「殺す」という言葉が日常的に使われ、「隠しダマ」などというスポーツマンシップのかけらもない行為がルールで認められている。その一方、プロならばともかく、高校球児がやるのはいかがなものか、といったプレーもあるはずである。

@昔、たしかこんなケースがあったと思う。タイムリーが出て逆転し、なおもランナーが二塁三塁という局面。ピッチャーは動揺している。セットポジションに入ったところで、三塁ランナーが「ボーク、ボーク!」とピッチャーを指差しながら、ゆっくりとホームインする。ここで慌てないのがコツですね。もちろん、こういうとき審判は何も言わない。ピッチャーはショックを受け、次にボークが嘘だったと知って、さらにショックを受ける。こういう手口はアリか、ナシか。

Aこれは地区予選で、無名校が有力校を倒したときに使われた手口。ワンアウトランナー満塁で、二塁ランナーが大きくリードする。ピッチャーが二塁に牽制球を投げ、ランナーは二遊間で挟まれる。と、ここで二塁ランナーは「ああっ」と叫んで転倒。あわててショートがタッチしに行くのだが、この間に三塁ランナーは悠々とホームをついてしまっている。ちゃんと転ぶシーンまで練習してあったんだろう。

Bさらにトリッキーな手口。ノーアウトランナー二塁三塁で、どうしてもここは1点欲しい。スクイズを狙うのだが、二塁ランナーも思い切りフライングして走り、三塁ランナーと重なるようにしてホームに殺到する。ここで2人のランナーが、ラインの内側と外側を走ってくるところがミソ。キャッチャーはランナーにタッチしに行くが、二人同時にはタッチできないだろう、という作戦。

○上で挙げたような手口、いかにも甲子園らしい風景ではある。高校生らしい爽やかなイメージではないかもしれないけど、この手のプレーを容認するところが、野球というゲームの見逃せない面白さだと思うのだ。なにしろこの手のプレーは、いくらでも思いつく。@は後味が悪いけど、Bなどは決まったらすごくカッコイイぞ。

○ただし昔、明徳義塾高校が松井選手に対してやった「5打席連続敬遠」みたいな作戦は、2度と見たくないもんですな。あれはゲームの否定です。ワタシなぞは、あれから甲子園を見る気が失せたくらいです。


<8月13日>(火)

○昨日から富山の実家に帰省しています。高速道路は練馬インターでの1キロ以外は、まったく渋滞ナシ。合計500キロ弱を5時間半で到着しました。今年の帰省ラッシュは、あらかた土日で片付いてしまっていたようです。

○久々の郷里はどうかというと、まあ、たいしたことはありませんな。何軒か「え、あそこが?」と驚くような店がつぶれていたり、隣家が空家になっていたりという変化はありますが、これも地方都市にはありがちな現象かもしれません。

○寝そべって、台湾会議の資料を読み出すも、あまりにも膨大。とりあえず米国からの参加者の分を斜め読みする。中台海峡で武力紛争が発生したらどうするか、という問題提起が多いけれど、その場合は誰も得をするものはいないので、まずはそういう事態を招かないように行動することが重要である、という指摘があった。非常に納得。


<8月14日>(水)

○富山市の繁華街を久しぶりに歩いてみると、お盆休みは別にしても、シャッターの降りている店があちこちに目立ちます。和装、洋装、めがね・宝石など、おしゃれ系の店に廃業が多い。やはり高齢化が進むと、てきめんにこういう方面が打撃を受けるようです。

○最近の富山の話題というと、『釣りバカ日誌』の最新作。富山が舞台になっていて、主要な観光場所を網羅して撮影されている。すでに県内だけで5万人を動員したとのことで、人口100万人の県にしては多い。監督は松竹で山田洋次の下で修行を積んだ人らしいが、県内の出身で、かんべえの高校の2〜3年後輩だとか。といっても、飛行機の中で上映していたら見てもいいけど、お金を払ってまで見に行くかどうか。

○お隣の金沢はNHK大河ドラマ『利家とまつ』で特需が発生している。それに対抗するつもりか、富山で出し抜けに始まったのが佐々成政ブーム。織田軍団の北方方面担当の一翼を担い、富山城の城主となった戦国武将で、利家と一戦交えたり、家康と結んで秀吉の背後を撹乱した。最後は秀吉と妥協し、肥後一国をあてがわれる。越中では、冬の最中に救援を求めて立山連峰を越えて江戸に抜け、そのときに埋蔵金を埋めたという伝説が残っている。戦国時代の越中はあまり事件がないので、何か話題を探すと佐々成政しか見当たらないというのが正直なところだと思う。

○かくも冴えない故郷ではありますが、これも地方都市の典型といったところかもしれません。今、活気のある地方都市ってあるんでしょうか。


<8月15日>(木)

○短い間でしたが、故郷の皆さんに元気をいただき、午前9時過ぎに富山を出発。順調に行くもんだから、いつもの関越道ではなく、つい上信越自動車道を選んでしまったのが運の尽き。上越市から長野市までの区間の大半は対面通行だし、更埴市のジャンクションから先で二車線が一車線になる区間が渋滞。これはもう構造的な問題ですね。まだまだ使えない道路という印象です。幸い、そこを抜けたあとは事故渋滞にも遭わなかったので、午後4時に自宅に帰りつきましたけどね。

○首都圏から北陸に自動車で行く場合は、関越自動車で長岡市まで行き、そこから北陸自動車道で西に向かうのが定跡である。ところが2000年に上信越自動車道が開通し、藤岡インターから軽井沢、上田、長野と抜けて上越市に出て、そこから北陸自動車道に入るルートができた。直線距離だけを比べると、後者の方が近い。そこで新しい道を試したくなるのだが、これが罠なんです。だいたい一車線のくせに高速道路などと呼ぶな、と私は言いたい。とくに対面通行のトンネルは運転が怖いのだ。

○2000年8月の当不規則発言を読み返してみると、あのとき初めて上信越自動車道を通り、やっぱり悔しい思いをしている。あれから2年も経つのだから、さすがに一車線の区間は減ったのではないかと思ったのだが、あにはからんや。やはり長野五輪が終ってしまうと、工事の方も低調になってしまったのかもしれない。ちなみに今回確かめてみたところ、柏市と富山市の距離は2つのルートを比べると2〜30キロくらいしか違わない。高速料金はどっちを通っても同じである。そこで長野県より新潟県、というのが今日の結論となる。

○ふと思うのですが、高速道路を見なおすのはいいとして、このまま建設を凍結するとしたら、上信越自動車道は一車線の部分が多いままで終わってしまうことになる。どうせ使用者も多くないんだから、それでいいじゃないか、というのもひとつの答えだと思う。でも、作りかけの部分までそのまま放棄するのももったいない話である。少なくとも上信越自動車道は、静岡空港などよりははるかに社会的な価値のあるインフラだと思う。

○それにしても横川のドライブインでは、峠の釜飯がものすごい人気でした。作るそばから売れて行く、というのはああいうのをいうのでしょう。久しぶりに食べたら、やっぱり美味かった。長野県、ダムはともかく、高速道路はちゃんと作った方がいいと思うぞ。


<8月16日>(金)

○旧知のYさんが当HPを読んでいてメールをいただきました。お久しぶりです。そうですか、長野市のご出身でしたか。「帰国後初めて長野へ車で帰った時に、上信越自動車道を運転してびっくりしました。対面一車線の高速道路なんてどの国でも見たことがありません」とのこと。そうですよねえ。あれはちょっと非常識。トンネル内の対面通行もなんとかしてほしい。

○日本の場合、インフラ作りの発想が根本から違うような気がする。アメリカの西海岸のハイウェイを見ていると、上下4車線くらい取ってある上に、中央分離帯がおそろしく広い。あの分離帯は将来、交通量が増えたときに、車線を増やせるように残してあるのだと聞いて、こりゃもう絶対にかなわないと思った覚えがある。こちらはその昔、東名高速道路を作りたいと世銀にお金を借りに行き、せめて3車線にしたらどうですか、と言われるのを、返済に自信がないから2車線にしたという謙虚な国である。なぜこんなことになるのか。

○おそらく同じ道路を作るにも、圧倒的に日本の方がコストが高いからなのだと思う。切り通しの道を通るときに、上空に何本も橋がかかっているのを見かける。あの橋はどう考えても多すぎる。ひどいところだと、同じ場所に5本くらいかかっている。あの橋は、地元の承諾を得るための工作費を捻出するために懸けるんだそうだ。つまり道路という金のなる木に、むらがる人が多すぎるのだ。この構造を何とかしない限り、道路公団を民営化しても、ゼネコンをいじめても、問題は解決しないと思う。

○ところで長野県政の問題につき、Y氏からはこんなご指摘がありました。

こうした閉塞感の中での田中知事の誕生は理解できますが、地元の人たちの話を聴くと長野県の従来からの対立構造もこの背景にあるようです。県政の実権を握る長野市を中心とする北信(旧信濃県)に対する松本市を中心とする南信(旧筑摩県)の巻き返しが田中知事を誕生させたというものです。しかし今回の解任劇後にはこうした地域対立の構図は鮮明でないため、田中氏に対する支持力の低下を指摘する人も多いようです。

○なーるほど。考えてみると、長野五輪の舞台はほとんどが「北信」で、「南信」はあまり関係がなかったしね。私は人が悪いせいか、「長野県民は改革か安定かで迷っている」などというマスコミの解説を聞くと胡散臭く思えてしまう。むしろ「北と南の地域バランス」という説明の方が、はるかに腑に落ちる。来月の長野県知事選、いったいどうなるんでしょうか。








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki