●かんべえの不規則発言



2017年7月






<7月1日>(土)

○慌ただしく益田市を去って津和野町へ。ここまで来たら、抜かすわけにはいかんでしょ。といって、津和野について詳しいことは知らんのですが。

○ここは文豪・森鴎外が生誕した町。10歳にして津和野を離れた後は、一度も戻ることはなかったとのこと。しかるに死の床にあって「余は石見人、森林太郎として死せんと欲す」とのたもうたのは、いかなる心境ぞ。生涯、立身出世を目指しつつ、ドイツ留学では面目を施し、小倉に左遷されれば真剣に落ち込み、その後、逆転リカバリーショットで軍医総監になったというのに。人間、年を取ると子どもの頃の記憶が強くなるからであろうか。

○ともあれ、森鴎外記念館にてしばし懐旧の念にひたる。ついつい青空文庫の「舞姫」なんぞを読み返してしまい、エリスさんについつい同情してしまいます。ちなみに文京区立の森鴎外記念館もなかなかのものですぞ。

○津和野出身でもうひとり、安野光雅を忘れてはなりませぬ。童話画家でありますが、司馬遼太郎の「街道をゆく」の挿絵を描いた人でもあります。大正生まれとはいえ、いまだご存命であったとは驚きました。津和野町立の安野光雅美術館はその作品を収蔵しております。絵のそばに添えてあるちょっと一言が変に読ませるものだから、ついつい長居をしてしまいます。

○津和野から次は萩市へ。ここの交通の便が悪くって、路線バスに揺られて1時間半。乗ってる客はとっても少ないぞ。地元の防長バスが、いつまでこの路線を維持できるのか、ちょっと不安だぞ。萩本陣なる温泉宿に投宿し、若干の萩見学をいたしまする。萩についての感想は後程また。


<7月2日>(日)

○萩に来るのは生まれて初めてである。司馬遼太郎作品を山ほど読んできた身にしては、いささか遅きに失したかもしれぬ。来る途中、磯田道史著『司馬遼太郎で学ぶ日本史』(NHK出版新書)を読んだら、最高傑作は『花神』である、と書いてあった。なるほど、納得である。

○萩に到着してみたら、「世界遺産に登録されました!」とのノボリがあちこちに掲げてある。いつの間にそんなことになったのかと思ったら、「明治日本の産業革命遺産」として8県11市に立地する23の構成資産がノミネートされていて、萩にも5つの資産がある、ということであるらしい。5つの内訳は、「萩城下町、萩反射炉、恵美須ヶ鼻造船所跡、大板山たたら製鉄遺跡、松下村塾」なんだそうだ。何なんじゃそれは。

○ほかの3つには興味がないので、まずは松下村塾を訪れてみる。松陰神社の中にある。ビックリするくらい狭い。わずか8畳のスペースで講義が行われていた。吉田松陰という若者が、なぜあれだけ多くの人を熱くしたのか。おそらくは狭さが熱気の源であったのだろう。松陰神社には、宝物殿やら歴史館やら入場料を取るいろんな施設があるけれども、それよりもホンモノの方にありがたみを感じる。

○暑い中を市中を歩きまわってみると、だんだん萩市の構造が分かってきた。松本川と橋本川に挟まれた小さな三角州の中に街がある。そして海際の指月山に萩城があった。城の近くに住んでいたのは重臣たちである。そこから少し離れた武家屋敷に、木戸孝允や高杉晋作の家がある。この辺は上士階級である。そこから離れた町の中心地に明倫学舎があった。ここが新しくなっていて、新たな観光資源にしたいらしいのだが、いささか屋上屋という感もある。

○松下村塾はそこからさらに遠く、松本川の向こう側にあった。つまりはとても不便な場所にあったわけである。おそらくは上士階級から見たら、「あんなところ行けるか」という感じがあったのではないか。いつの時代でも、時代は辺境から変わる。そのことを身を持って示しているのが萩市の姿と言えるかもしれない。

○それにしても萩市は、「江戸時代の地図がいまでも使える」と言われるくらい変わっていない街である。観光地としてはそれが売りなのだが、それでもシャッター通りができたりするから、町としてはいろいろ付加価値を目指して、NHK大河を引っ張ってきたり、美術館を建てたり、新しい箱モノをつくったり、世界遺産にエントリーしたりする。でも、それって本当に良いことなのかどうか。町興しはつくづく悩ましい。

○てなことで、やっと帰ってきたら都議会選挙が大変なことになっている。うーん、長州人の安倍首相はこれでピンチですな。くれぐれも欲をかかれませぬように。


<7月4日>(火)

○自民党は歴史的大敗だし、藤井四段も負けてしまったし、世の中の動きから取り残されている感もあるのだが、山陰旅行の思い出話をいくつか。

●カツライス:松江市にある「お食事処ふの」には、当地のソウルフード、カツライスあり。地方都市の洋食屋なんて・・・・などと言わずに試してみる価値あり。ランチは格安。出雲市出身の日銀審議委員、布野さんと縁戚関係があるのかどうかは不明。

●吉田くん:松江市内の至る所で出くわすのが吉田くん(蛙男商会)である。ご当地出身の錦織選手(テニス)も、吉田くんグッズを持っている。島根県の全国PRを買って出て、特に「島根自虐カレンダー」は秀逸。2017年もちょうど折り返し地点を過ぎましたので、今後は在庫を半値で売ってくれるとか、くれないとか。「100年前から人口が減っているのは島根県だけ!」

●山陰本線:島根県内の東西移動はこれが頼り。本数は少ないし、特急もディーゼルだったりするし、2両編成で1両目が指定席で2両目が自由席とか、いろいろ驚くのですけれども、基本は赤字ローカル線。温泉津駅なんて無人駅で、併設されているJAが切符を売っている。なおかつ、JAは午前8時半にならないと開かないので、それ以前の電車に乗るときは車内で切符を買わねばなりません。

●福山雅治:米子市の植田正治写真美術館には、ときどきお忍びで福山雅治がやってくるらしい。それというのも彼は写真家でもあり、植田正治を心の師匠としているから。以前にこの美術館で個展を開いたこともある。人里離れた場所であることもあり、インスピレーションを与えてくれる場所なのかもしれません。

●石見銀山:よくよく考えてみれば、鎌倉末期に発見された鉱脈が、20世紀まで開発が続き、強制労働とか環境破壊とか資源争奪戦といったトラブルが起きなかったというのは稀有なことではないか。これがアフリカあたりだと、地下資源があるばっかりに争いが絶えない、なんてことがよくあるのに(例:ブラッドダイヤモンド)。世界遺産は伊達ではないのである。

●益田市:よくわからずに駅前のビジネスホテルに投宿し、「食べログ」情報を頼りに「ゆきち」という店に入ったら、これが「当たり」でありました。雪舟が晩年を過ごしたとか、柿本人麻呂の終焉の地であったとか、観光資源はいろいろあったのですが、スルーしてしまいました。

●萩市長選:前回、「萩の明倫学舎」に対して非難がましいことを書いてしまったが、今年3月に行われた萩市長選挙では、24年間務めた現職市長を、元銀行員の新人が僅差で破って当選している。「箱モノ行政」への批判が一因であった由。山口県はやはり深い。

○山陰を旅している最中に、「関東から来ました」というと驚かれたりします。たぶん西日本からのお客さんが多いのでしょうね。ほかにも出雲大社とか、玉造温泉とか、境港の鬼太郎ロードとかいろいろありますので、お勧めする次第です。


<7月5日>(水)

○日欧EPAが大枠合意との報道。まことにめでたい。明日の日欧首脳会談に置いて、双方がしっかり握手するのでしょう。

○そもそも今回の合意は、圧倒的に日本側が有利だった。日欧間の貿易は、輸出も輸入も8兆円前後で、日本側がちょっとだけ赤字、という構図。その上で「日本は自動車で攻め、EUは農産物で攻める」という図式になった。どっちが得かって、そんなのアナタ、当たり前でしょうが。2016年度の貿易統計をご参照あれ。

○日本がEUから輸入している最大の品目は、医薬品が圧倒的で1.45兆円。農産物は全部足しても8770億円に過ぎない。ワインやチーズなど、個々の金額は不祥なるも、おそらくたいした金額ではないだろう。ましてカマンベールチーズなんて、3割の関税がなくなれば日本の消費者が喜ぶはず。

○逆に日本がEU向けに輸出している最大の品目は自動車で、1.25兆円。これに懸っている10%の関税が、7年間で撤廃される。ちなみに韓国製自動車はすでに関税がゼロで、それが競争力の格差になっていた。自動車部品4795億円の関税も撤廃される。この取引は、どう考えても日本側がお得であろう。

○今回のEU側は、「出血大サービス」に及んだとしか思えない。でも、そのお蔭で、来たるG20ハンブルク首脳会議(7/7-8)において、トランプ大統領の目の前で日欧が自由貿易を推進する、という図式ができる。やっぱり時代はマルチ交渉なのでありますよ。

○議長役のメルケル首相は、気候変動問題でもアメリカ包囲網を狙っている。まあ、こんなことでPeer Pressure(同調圧力)を受けるようなトランプさんではないと思うけど、トランプを叩けば叩くほど票になる、というのがドイツ政治である。9月24日の総選挙に向けて、準備は万端と見た。

○他方、安倍首相としては北朝鮮問題があるから、トランプ叩きには同調できない。とはいうものの、自由貿易と気候変動ではドイツ寄りの姿勢を示すことだろう。でないと「ドイツの最大の味方は中国」になってしまうから。週末のG20を前に、いろんな思惑が交錯しています。


<7月7日>(金)

○山陰旅行から戻って、今週は講演が3つ。テーマは「トランプ」「コーポレートガバナンス」「トランプ」。それから溜池通信(アジア危機20年)と市場深読み劇場(G20首脳会議)と『公研』のコラム(石見銀山)を執筆。ついでに週明け月曜日の「モーサテ」の準備(G20)。飲み会も3連荘。よくまあやっとるわ。

○そして明日は福島へ。年に1度の七夕賞がワシを待っている。当たるような気は全然しないのだが、とりあえず前夜は飯坂温泉に泊まらねばならぬ。このところ温泉づいているのだが、つくづくあれは良いものですな。そして宴会では先発が生ビールで日本酒に継投。鉄板です。

○それにしても先週休んでおいてよかった。今週はG20はあるし、日欧EPAはあるし、北朝鮮のICBMはあるし。でも8月になったら、もう1回休みたい。

<後記>市場深読み劇場が公開されたのでリンクを貼っておきます。

G20ハンブルクサミット、安倍首相は埋没?

○都議会選挙の分析なんかにも触れております。


<7月8日>(土)

○トランプ大統領がポーランドを訪問して馬鹿受けだった様子。ブライトバートニュースが伝えています。演説の中で「トランプ・ドクトリン」が浮かび上がってきたと言ってます。以下の9つのがポイントなんだそうです。


1. Trump Says ‘In The Polish People, We See The Soul Of Europe’

2. Trump Highlights ‘Special Bond’ Between Poland & United States

3. Trump Asks Whether ‘West Has The Will To Survive’

4. Trump Forcefully Defends Western Civilization

5. Trump Challenges Russia

6. Trump Defends NATO, Says America Stands Behind Article 5

7. Radical Islam, Open Borders Threaten Western Civilization

8. We Want God’:

9.The West Will Never, Ever Be Broken’:


○この演説、きっとスティーブ・バノンが書いたんでしょうね。西欧文明をイスラムの挑戦から守らねばならない、というのは彼の持論です。演説のフルテキストはここにあります。後で読みましょう。


<7月9日>(日)

○恒例行事の福島競馬「七夕賞」。今年は昨日のうちから出かけて、泊まったのが吉川屋。飯坂温泉よりももっと奥で、穴原温泉というらしいです。天皇皇后両陛下もお泊りになっている、由緒ある温泉です。お風呂も料理もバッチリでした。と言っても、5人相部屋だと宴会も含めて1人1万7500円で上がります。ちょうど往復の新幹線料金と同じくらいでした。

○かくして、2012年に始まった不肖かんべえの「七夕賞」通いは、6年目の今年にしてとうとうお泊り客5人、当日参加2人、合計7人の大所帯になったのであります。いや、別に競馬オヤジが集まって、ワイワイ言いながら「旅打ち」をしているというだけで、全然、威張るような話ではありません。

○今日の福島は暑くて35度はありましたね。競馬場には午前10時前に入りましたが、いやもう大変な熱気でありました。自家用車で福島市にやってきた上海馬券王先生によれば、駐車場料金は「重賞レースがある日」と「藤田菜七子が出る日」は高くなるのだそうです。今日は両方でしたねえ。

○とはいうものの、福島競馬は難しいのであります。一同、福島民報の高橋記者からブリーフィングを受けているのでありますが、いやもう当たらない。ぐっちーさんは勝っていたみたいだけど・・・。そして肝心の七夕賞は、意外とあっけなく戸崎騎手騎乗の1番人気ゼーヴィント、という結論になったのであります。

○以前は「荒れる福島」と呼ばれていたものですが、近年は普通の高速馬場になりつつあるようです。福島競馬場はもともと高低差が小さいこともあって、京都競馬場と同じでディープ産駒が有利なんですな。かんべえ推奨のフェルメッツァは5着に終わりました。

○変な話ですが、あの震災がなければこんなご縁はできなかったことでしょう。来年もきっと行こうと思います。


<7月10日>(月)

○今朝は早起きしてモーサテへ。

○プロの眼マンデーのテーマは、「G20以後の国際情勢を読む」でした。会議が7/7-8だったので、先週のうちに準備ができなかったのですが、そこは佐々木キャスター、当日朝に段取りをバタバタとまとめてくれました。

○モーサテ経済ワードでは、「G20」を解説しました。こちらも行き当たりばったりで語ったわりには、秋元キャスターが上手に聞いてくれたので、何とかまとまっている感じです。

○今日の経済視点は「トランプ包囲網」としました。G20がまとまりそうにないので、議長役のメルケル首相が「トランプ対その他大勢」という形で1対19にまとめてしまった。とはいえ、こんな風に孤立することは、トランプさんから見ればむしろオイシイ展開で、ますます意気盛んになるかもしれない。

○ということで今年のG20は面白かったなと思います。トランプ効果というのは確かに存在した。ただし来年以降がどうなるかはわかりませんね。来年はアルゼンチン、2019年は日本が議長国になる。責任重大ですな。


<7月12日>(水)

○昨日、今日と本当に暑いですな。こういう時に限って外出の用事が多かったりするのですが、それぞれ有益なことがあるからやっぱり外には出なければいけません。特に本日、六本木で食べた天丼のダブル1000円、というのは感動ものでした。あんなの、新橋や虎ノ門にもないですよ。ありがとう、西田さん

○それはさておいて、以下は高齢化社会の問題を議論していての備忘録。

○「定年をどう考えるか」は難しいところです。「年齢差別禁止」のアメリカ社会などでは、定年退職制度はないことになっている。日本もいっそのことなくした方が、雇用の流動性が上がってよいのかもしれない。そうでなくても人手不足で、昨今は定年再雇用のケースが非常に増えている。あるいは「日本は定年があるばっかりに、年金の受給開始年齢を上げられない」などという恐ろしい話もあるくらいなので。

○他方、ある年齢に達したら一斉に切る、という分かりやすさ、公平性にも捨てがたいものがある。それに定年制をなくすときには、解雇のルールをちゃんと決めておかなければいけない。会社側としては、「あの人には残ってもらいますが、あなたはもういいです」と言わなきゃいけないし、通告される側も覚悟が必要になってくる。これは日本社会にとってはキツイのではないか。などと言いつつ、現実は「肩たたき」なるものがあって、既にそうなっているという気もするのだが。

○要は「会社の一員」であることが、単に口を糊すること以上のことを意味している社会においては、「いつ組織から放り出されるか」が、個人にとってあまりにも重い意味を持ってしまうのであろう。とはいえ、新入社員の頃のように、皆が「匿名性の仕事」をしているうちはともかく、30年から40年を過ごした後においては、会社員はなんらかの形で「名前のある仕事」をしているはずなので、「それで生きて行ってくださいよ」と突き放すのが会社として正しい態度ではないか、とワシ的には思う。

○むしろ会社を辞めた後に、個人事業主として仕事をする人をいかにサポートしていくか、が重要になるのだと思う。つまり「ほどほどの起業」。今は資本金1円でも会社をつくれるようになったけれども、清算するときはあいかわらず手間が多いのだそうだ。そういう点を直していく必要があるのではないか。

○もう一点、われわれの意識はとことんフロー重視で、「年収がなくなる」ことへの恐怖感が強過ぎるのだと思う。昨日まで社長だった人が、いきなり無職になると可哀そうだから、といって相談役にしたり顧問にしたりする。でも、既に何億円ものストックを持っている人に対して、そんなことを気にしなくてもいいんじゃないのか。これには、上手にストックを使って遊ぶ人が少な過ぎる、という問題もあるのだろう。

○不思議なことに日本のメディアは、「ゴーンさんが×億円もらった」といったことは騒ぎ立てるが、「誰それさんの資産は×億ドル」ということは気にしない。いまだに「うちは何石取り」という江戸時代の感覚なのかもしれないね。逆にトランプさんなどは、資産の額にはうるさいけれども、年収ごときは気にしない。真の金持ちがどっちなのか、誰でもわかるよね。

○もっともこれは、この国では金利が安過ぎるとか、資産を運用する技術が下手過ぎるといったことも無縁ではないのであろう。ピケティが言っていたように、金持ちが5%で資産を運用できるのであれば、心配事がなくなる高齢者がいっぱいいるはずなのだが。ちなみにこういうのを「ウェルスケア」(Wealth-care)と呼ぶらしい。実はヘルスケアよりも大事だったりして。

○それからこれは当たり前の話だが、「高齢者が多い社会は行政コストが上がる」。だからシステムは、なるべくシンプルに作らなければならない。ところが行政はついつい良かれと思って、複雑なルールを作ってしまう。ところが認知症が入りかけた人には、それが理解できない。

○てな感じで、議論は尽きないのであった。


<7月13日>(木)

○半年ぶりにマネースクウェアプレミアムトークに登場しました。下記のリンクからじかに飛べます。もちろん無料ですので、ご遠慮なくどうぞ。


▼前半(米国政治・経済)

トランプ政権の内政・外交&FRBの金融政策を展望!
http://m2tv.m2j.co.jp/premium/20170713-2.html 

▼後半(日本政治・経済)

安倍政権・アベノミクスの今後と為替・株式市場を展望!
http://m2tv.m2j.co.jp/premium/20170713.html 


○昔はここで語っているような内容を、いちいちテキストで不規則発言に書いておったわけですが、だんだんそれも面倒になってきました。だったらユーチューバ―になって、動画で政治経済を語るサイトを作ればいいかというと、それも面倒なんでやらないんですよねえ。ということで、こういうお誘いはありがたいです。

○それにしても、映像を見ていて気付いたのだが、ワシの後頭部はこんなに薄くなっていたのか。実は秘かにショックを受けていたりする。ご一緒した西田さんも、往時に比べればずいぶん髪が白くなっていたけど、お互いに老けましたなあ。まあ、仕方がないんですけど。


<7月14日>(金)

○今日は和敬塾というところへ行きました。目白の駅から少し行ったところに、建物はちょっと古いけれども実に7000坪の敷地があるのですなあ。前川製作所の創業者、前川喜作が「人間形成」のために作ったのだそうです。早稲田の学生なんかにはもってこいでしょう。かの村上春樹氏はここに馴染めずに、でもその経験が『ノルウェーの森』に活かされたと聞きました。

○すぐお隣には、細川家の財宝を保存している永青文庫がある。どうやらこの一帯は昔の細川藩の江戸屋敷で、その昔、おカネに困った細川家が土地を払い下げたのかもしれませんな。和敬塾本館は旧細川侯爵邸で、江戸川乱歩の小説に出てくるような洋館でありました。今は映画の撮影なんぞによく使われているのだとか。

○文京区というところは、訪ねていく用事はあんまりないのでありますが、たまに歩いてみると「昔の山の手」といった感じで、まことにいい雰囲気のするところであります。もっとも今日みたいに暑い日だと、うかうか歩いても居られない。いやホント、いっそ一雨ほしいくらいです。

○などと言ってはいけない。明日からは町内会のお祭りなのです。ああ、盛大に体力を消耗する予感。


<7月15〜16日>(土〜日)

○拙宅の前にあったツバメの巣、3羽の子どもが育成中だったのだけど、とうとう巣立っていってしまったらしい。ちょうどウチのクルマの斜め前、頭上辺りにあって、連日のように盛大に糞が落ちていたのだけれども、それもなくなってしまった。今は巣だけが残っている。こうなると寂しいもんですな。

○子どもが育つのを見ることは、それだけで楽しいものでありまして、他所の家の子供やペットや鳥だってその対象になる。逆に何年か前に、育ちかけたツバメの子が巣から落下して死んでいたのを見た時には、非常に心が痛んだものである。ああいうのは勘弁してほしい。

○この週末は町内会のお祭りがあって、本来、そんなに大勢いるはずのない町内に、なぜか子どもが急増している。まあ、子どもあってのお祭りなので、それはありがたいことなるも、人数が多い割に掛け声は小さいし、どうにも威勢が上がらない。「昔に比べて乗りが悪いなあ〜」などとついつい愚痴がこぼれる。

○その一方で、町内の老人たちが妙に生き生きとしているような気がする。まあ、きっとワシもそうなのであろう。それにしても昨日今日と暑かった。一杯汗をかいて、ビールを飲んだ。打ち上げも盛り上がっていたので、成功だったのであろう。毎年、これが終わらないとどうも落ち着かない。やれやれ、どっこらしょ。


<7月17日>(月)

○所用があったので三鷹市へ。用事を済ませて、ふと気がついたら駅前から遠くない場所に、「太宰治 文学サロン」なるものがあるではないか。ちょっくら覗いてみました。

○行ってみたら、マンションの1階部分を使ったごく小さな展示スペースであった。もともとは三鷹の住人であった太宰が、通っていた酒屋「伊勢元酒店」の跡地なのだそうだ。しかもこの展示、三鷹市が肝いりでやっている。三鷹市のホームページにも、太宰ゆかりの場所の案内が書いてある。

年譜を見ると、太宰は1939年(昭和14年)、30歳で新婚の妻、石原美知子とともに三鷹村下連雀に引っ越してくる。その後、戦災で疎開した時期を除き、終生、三鷹を住まいとする。『走れメロス』も『東京八景』も、『斜陽』も『ヴィヨンの妻』も、『桜桃』も『人間失格』も、全部三鷹で書かれた。

○ついでに言うと、太宰が『斜陽』のモデルである太田静子と出会って子どもをつくったのも、山崎富栄と出会って玉川上水に入水してしまったのも、この三鷹においてである。特に死ぬ前の2年間は、太宰ほとんど確変状態と言ってよく、体調は最悪なるも名作を多く残している。

○同時代に生きていたら、絶対に好きにはならない人物であろう。それでも不思議なくらい、彼の文学は古くならない。ちゃんと今読んでも面白い。三鷹市、ほかにもいっぱい手材料があるようで、ちょっとうらやましい。ふんっ、ジブリの森なんてどうだっていいんだけどね。


<7月18〜19日>(火〜水)

○某地銀さんの講演会で札幌へ。「北海道も今年は暑いらしいぞ」と散々脅かされて到着するも、新千歳空港の空気はひんやりしている。やっぱり北海道はこれでなくては。

○とはいうものの、北海道は昨年の台風の爪痕がなおも残っているとのこと。そりゃそのはずで、なにしろジャガイモが不作で、ポテトチップが作れなくなったくらいですから。そして今年は九州が集中豪雨と来ているから、毎年のように全国どこかで異常気象が続いている。えっ、東京は雹が降ったんですか? いやはや。

○札幌の街並みは、広島や仙台のように景気良さそうに見える。若者が多いし、女性の比率も高い。新しいマンション建設が多いのも同様の傾向か。そのうち新幹線もできるしね。とはいえ、北海道の人口530万人中195万人が札幌に集まっていると聞くと、さすがに行き過ぎかという気もする。

○ちなみに仙台市が108万人、広島市が120万人、福岡市が156万人。「札・仙・広・福」の中でも、人口では札幌が断トツ。野球チームの強さから行くと、去年は札幌が日本一でしたが、今年は広島と仙台の一騎打ちになりそうですな。今の日本でいちばん面白い4都市だと思います。この4都市、いろんな連携をやったらいいと思うのですが、自治体同士は競合しているし、なかなか難しいのかもしれません。

○仕事が終わってから、夜のススキノをひとりで歩いてみました。本来、こういうところは、ちゃんと身銭を切って遊ばなきゃいかんのですが、あいにく「もう、ラーメン一杯も無理」という状態。昔はこういうときに無理が効いたのですが。ただし歩いているだけで楽しくなって、ふと、「都市の空気は自由にする」なんて言葉を思い出しました。

○ススキノは札幌らしくて道路が広いです。銀座のような碁盤目状の街が広がっていて、その中に地下鉄があって、市電もあって、バスもあって、タクシーもいっぱい並んでいる。その分、福岡の中州なんかに比べると、「どこに何があるのか」が見えにくい。「札・仙・広・福のナイトライフ競争」なんてのもやってみたらいいんじゃないかと思います。

○それというのも、19日午後に東京の議員会館で「ナイトタイムエコノミー議連」の会合がありまして、アドバイザリーボードの一員として何か言わなきゃいけなくて、「さて、遊民経済学の見地から何を提案すべきか」とつらつらと考えておったのです。このプロジェクトについては、キーパーソンのこの人の話をご参照。いわば「夜の規制緩和」であります。

○ナイトタイムエコノミー議連(時間市場創出推進議連)に出かけると、普段なら絶対に出会わないような人たちに出会えます。やっぱり世の中はどんどん変わっているのですな。たとえば東京ガイド Time Outって知ってました? インバウンドの観光客にとっては、ここから発信される情報が役に立つんだそうです。ツーリズム産業の最前線ですな。


<7月20日>(木)

○いやあ、皆さん、あのトランプ政権が今日でとうとう発足から半年ですよ。つまり4年の任期のうち、すでに8分の1を経過したというわけ。めでたいですなあ。

○なにがめでたいか、ですって? そりゃあ、あの大統領がちゃんと半年も務めあげて、最近では何が起きても驚きが薄れてきて、「まあまあ、そういうこともありますよ」と広い心で受け止められるようになってきた、ってことでしょうな。アメリカが当てにならないから、日欧でEPAが結ばれるとか、日中がよりを戻しつつあるとか、いろいろポジティブな変化も生じているではありませんか。

○かくなる上はトランプさんに、残りの8分の7の期間もつつがなく務めていただきたいものであります。間違っても、弾劾とか合衆国憲法修正25条なんてことは考えちゃいけません。そりゃあ、民意というものは重いのであります。なにしろ正当な手続きで選ばれた米大統領であります。ちょっとくらい行儀が悪くても、国益を損ねても、仕方がありません。選んだのは有権者なんですから。

○昨年、Brexitを決めてしまったアホな英国が、「弱ったなあ、この際、Brexitなんて止めちゃいたいなあ」と思っても、そうは問屋が卸さないのと同じです。くれぐれもわが国は、国民投票なんて止めましょうね。あれはギャンブルですから。例えば衆参で3分の2の賛成を得て憲法改正を発議したところが、国民投票で否決された日には目も当てられません。

○それはさておいて、トランプさんの身になって考えてみると、ロシアゲートで身内が引っかかって愛する家族に類が及んだり、大事な財産が弁護士費用などに消えていくような展開になった場合、もともとそんなに大統領になりたかったわけでもなく、「俺はもうこんなの我慢ならない! ペンス、後はお前に任せたぞ!」となっちゃう可能性もなくはない。まあ、それも民主主義のコストということになるのでありましょうか。

○今宵はこのめでたい夜を、BS日テレ「深層NEWS」に出演し、薮中三十二さんとご一緒に迎えることができました。アメリカ・ウォッチャー業界の端くれとしては、まことに嘉すべきことであります。


<7月21日>(金)

○東洋経済オンラインに、福島民報の高橋記者による寄稿が掲載されています。ところどころで「ジーン」とくる記事です。長文ですけれども、お勧めです。


●大震災から6年、今年も「福島競馬」が続くワケ


○最後の方では、不肖かんべえやぐっちーさんが、今年も一緒に七夕賞に行ったことが語られております。考えてみれば、ワシらが福島競馬場に通っているのは、ここに書かれているようなNarrative(物語)を求めているからでしょう。甲子園のタイガースファンが熱いように、浦和レッズの地元ファンが熱いように、福島の競馬ファンはとっても熱い。そのことは、震災という悲劇によってさらに強化された。だからそこに「参戦」したくなる。

○「イカが旨いですよ」という動機だけでは、なかなか函館競馬場までは行かれない。月岡温泉に泊まって、新潟競馬場に行くのも楽しそうだが、そのために関越道を往復するのはしんどそうだ。そんな中で、旅行者の背中を押してくれるのは、やはりある種の物語である。その物語に共感する仲間ができたりすると、さらに鉄板となる。

○高橋記者によれば、「日本の近代競馬は、江戸時代末期から文明開化の動きと併せて各地に根付き、発展してきた。福島競馬の場合、東日本大震災という未曾有の大災害の直撃を乗り越えて復活したことが、今では歴史の1ページに加わっている。福島競馬場は来年、創立100周年を迎える」とのこと。こりゃあ、来年も行かないわけにはいかんでしょ。

○そういう意味で、ちょっと心配なのが今週訪ねた北海道である。『知床旅情』や『襟裳岬』の記憶が遠くなり、『北の国から』も終わって久しいかの地は、そろそろ次のNarativeを仕込まなければならないだろう。小樽の石原裕次郎記念館も閉館になったと聞くが、とりあえず札幌出身の「中島みゆき記念館」を作るというのはどうでしょう。それだったら、ワシも行きたいが。


<7月23日>(日)

○この週末に感動したこと。

○柏市内の中華料理屋で、25年くらい通っている店がある。ときどき、料理が出てくる順番が無茶苦茶であること(チャーハンの後に小龍包が出てくるとか)を除けば、味も値段もリーズナブルである。ランチのみだが、2〜3か月に1回くらいの割合で通っている。が、取り立てて期待するほどでもない。

○そこで深い考えもなく立ち寄った際に、「担担麺」を注文してみた。そしたら出てきた丼から山椒の強烈なにおいがする。おお、この店の担担麺は進化を遂げていたのか。察するにシェフが変わったな。男子三日会わざれば括目すべし。というか、近年、担担麺が急速に普及していて、客の側が進化してしまった。店の側としても研究を欠かせないようになったと見える。

○担担麺に関してはこのブログの情報が有益である。このTOP15リスト(2016年版)を見たりすると、近年における都内におけるその隆盛ぶりがよくわかる。ちなみにワシ的には、「阿吽」と「頤和園」と「たけくま」しか知らぬ。できれば虎ノ門の「瀬佐味亭」も入れてあげてほしいと思う。

○問題はブログの主がロサンゼルスにご栄転になったことである。これでしばらく、担担麺の最新情報を得るすべがなくなった。とりあえず竹橋の赤坂飯店くらいはつぶしておくべきだろうか、などと考えている。


<7月24日>(月)

○政治オタクが寄り合いをすると、とっても久しぶりに盛り上がる。なにしろこういう情勢ですから。

共同通信(電話)        
調査日付 支持 不支持 民進党 自民 無党派
2017/1/28-29 59.6% 27.2% 7.3% 42.5% 35.0%
2017/2/12-13 61.7% 27.2% 7.3% 44.6% 33.7%
2017/3/11-12 55.7% 30.7% 9.4% 43.8% 36.0%
2017/3/25-26 52.4% 32.5% 8.8% 42.4% 34.1%
2017/4/22-23 58.7% 31.5% 6.7% 39.9% 38.4%
2017/5/20-21 55.4% 34.3% 6.1% 42.8% 35.7%
2017/6/17-18 44.9% 43.1% 10.4% 34.3% 40.1%
2017/7/15-16 35.8% 53.1% 8.2% 31.9% 45.1%
           
時事通信(面接)      
調査日付 支持 不支持 民進党 自民 無党派
2017/1/6-9 51.2% 26.5% 4.4% 23.6% 63.2%
2017/2/10-13 53.4% 24.2% 4.3% 26.1% 62.1%
2017/3/10-13 51.3% 26.0% 4.1% 26.0% 61.5%
2017/4/7-10 50.0% 27.3% 4.8% 25.3% 60.7%
2017/5/12-15 46.6% 28.9% 5.0% 26.9% 59.5%
2017/6/9-12 45.1% 33.9% 4.2% 25.0% 60.8%
2017/7/7-10 29.9% 48.6% 3.8% 21.1% 65.3%
           
朝日新聞(電話)      
調査日付 支持 不支持 民進党 自民党 無党派
2017/1/14-15 54% 26% 6% 39% 39%
2017/2/18-19 52% 25% 7% 37% 37%
2017/3/11-12 49% 28% 8% 37% 36%
2017/4/15-16 50% 30% 7% 39% 38%
2017/5/13-14 48% 29% 7% 37% 42%
2017/5/24-25 47% 31% 6% 37% 38%
2017/6/17-18 41% 37% 8% 34% 41%
2017/7/8-9 33% 47% 5% 30% 47%
           
読売新聞(電話)      
調査日付 支持率 不支率 民進党 自民党 無党派
2017/1/27-29 61% 31% 7% 40% 42%
2017/2/17-19 66% 24% 6% 43% 40%
2017/3/18-19 56% 33% 7% 40% 43%
2017/4/14-16 60% 29% 6% 44% 38%
2017/5/12-14 61% 28% 6% 43% 39%
2017/6/17-18 49% 41% 7% 41% 40%
2017/7/7-9 36% 52% 6% 31% 47%
           
毎日新聞(電話)      
調査日付 支持率 不支率 民進党 自民党 無党派
17/1/21-22 55% 28% 7% 33% 43%
17/2/18-19 55% 27% 8% 32% 41%
17/3/11-12 50% 31% 6% 31% 42%
17/4/22-23 51% 30% 7% 33% 41%
17/5/20-21 46% 35% 6% 31% 45%
17/6/17-18 36% 44% 8% 27% 47%
17/7/22-23 26% 56% 5% 25% 52%
           
日経新聞(電話)      
調査日付 支持率 不支率 民進党 自民党 無党派
17/1/27-29 66% 26% 9% 48% 28%
17/1/27-29 66% 26% 9% 48% 28%
17/2/24-26 60% 30% 9% 46% 27%
17/3/24-26 62% 30% 8% 45% 31%
17/4/27-30 60% 32% 9% 45% 30%
17/5/25-28 56% 36% 8% 44% 31%
17/6/16-18 49% 42% 8% 40% 32%
17/7/21-23 39% 52% 6% 35% 41%
           
NHK(電話)        
調査日付 支持率 不支率 民進党 自民党 無党派
2017/1/7-9 55.0% 29.0% 8.7% 38.3% 38.3%
2017/2/11-12 58.0% 23.0% 6.4% 38.2% 40.1%
2017/3/10-12 51.0% 31.0% 7.6% 36.9% 28.9%
2017/3/10-12 51.0% 31.0% 7.6% 36.9% 28.9%
2017/4/7-9 53.0% 27.0% 6.7% 38.1% 38.7%
2017/5/12-14 51.0% 30.0% 7.3% 37.5% 38.4%
2017/6/9-11 48.0% 36.0% 7.9% 36.4% 40.8%
2017/7/7-9 35.0% 48.0% 5.8% 30.7% 47.0%
           
産経FNN(電話)      
調査日付 支持 不支持 民進党 自民党 無党派
17/1/28-29 60.7% 30.7% 8.1% 41.7% 34.2%
17/2/18-19 58.8% 30.1% 10.8% 36.9% 37.4%
17/3/18-19 57.4% 30.9% 8.4% 38.0% 37.9%
17/4/15-16 59.3% 30.4% 6.6% 42.5% 35.0%
17/5/13-14 56.1% 34.7% 8.0% 41.6% 35.6%
17/6/17-18 47.6% 42.9% 8.3% 36.0% 38.1%
17/7/22-23 34.7% 56.1% 7.0% 29.1% 45.8%



○6月と7月の2か月間で、内閣支持率はほぼ20p低下。7月になったら、全部の調査で「支持」<「不支持」になってしまいました。その割に自民党支持は下げ渋っていて、逆に民進党が下げている。果てさて、このトレンドをどう読み解けばいいものか。

○政治オタクの心を熱くするのは、間もなく改造人事が待っているからでもある。これも面白い。大臣になりたい人は大勢いるけれども、なれる人はほんのわずかである。ところが今回の内閣改造では、「消去法」のネタがとにかく一杯ある。当選回数5回から7回で、大臣心待ちの先生方には、以下のようなご用心が必要となります。


<次期大臣就任心得の情>

●次の内閣においては、答弁能力に不安のある方の登用はいたしませんのでご理解願います。

●選挙が弱い人も、ならない方がいいでしょう。1年半以内にかならず総選挙がありますから。

●特に選挙区調整を控えている人は、そちらに専念いただく方が賢明だと思います。

●言うまでもないことながら、「政治とカネ」問題がある方はご辞退ください。

●時節柄、パワハラ、セクハラ疑惑のある先生方もご注意ください。文春砲、新潮砲が手ぐすねを引いて待っております。

●「秘書がよく辞める」という評判の先生も、気をつけられた方がよろしいかと存じます。

●東京都選出の先生方は、先の東京都議会選挙の結果責任があるので自粛願います。

●宮城県選出の先生方も、先の仙台市長選挙の結果責任があることにご注意ください。

●よもやそんなことはないとは存じますが、今週末の市長選の結果次第では、横浜市選出の先生方にもご遠慮願うかもしれません。

●なお、党内の顰蹙を買う恐れがありますので、清和会所属の先生方もなるべくご遠慮ください。

●特に「総理のお友達」と目されている方は、平時とは違ってむしろマイナス要素となりますことをご理解ください。


○上記のような過酷な消去法を生き残れる先生は、数少ないのではないでしょうか。いやあ、人事ってつくづく面白いですね。


<7月25日>(火)


●問い:「内閣改造はなぜ8月3日木曜日になったのか。以下の選択肢の中から、正しいものを選べ」(20点)


@安倍首相お気に入りの星占い師が「この日がいい」と告げたから。

A「17年8月3日」=1+7+8+3=9、オイチョカブで縁起がいいから。

B大安吉日だから。


●答え:B


○くだらないと思った方、あなたは正しい。でも、永田町にはこの手の話は尽きません。


<7月26日>(水)

○今日で3連荘。全部日本酒。われながらちょっと飲み過ぎの気もするのだが、ついつい家でまたビールの缶を開ける。

○月曜日は日本橋のとやま館はま作。「富山のもんしかないがですちゃ」と言われるが、もちろんこちらは「富山のもん」が目当てで行っている。三越日本橋店の向かい側、というロケーションを考えると、ここのバーラウンジなどはお買い得だと思うのだが、富山から来た人は「高いのぅ」とぼやくそうである。

○富山の日本酒で、いちばん人気は今は「勝駒」(かちこま)。社員5人でやっている造り酒屋なので、量が少なくていつも品薄である。幸い、この日はちゃんと出してもらえた。このお酒、できれば720ml瓶を10本くらい用意して、将棋棋士や競馬の騎手に進呈したいものである。あの人たち、とってもゲンを担ぐからなあ。

○火曜日はシンガポールから帰ってきたこの一家を囲む会。ナベさん、横江久美さん、中林美恵子さんといった「お仲間」が漏れなくついてくる。皆さん、いろんな形で「トランプ・バブル」の追い風を受けている。最近はノンアルコールを選ぶ人が増えていて、ナベさんもそれでずいぶん痩せた様子。が、ここでも最初はビール、そして日本酒。

○水曜日はうなぎ。これがあるから、丑の日を前にずっと自粛してきた。どうにも旨くて、今までに食べた中でも最高級のベンチマークができてしまった感あり。たっぷりめのかば焼きを冷酒でいただく。ああ、こんな贅沢をしてしまったら、次からどうすればいいのだろう。

○さて、明日はアルコールを控えるぞ、と言ってみる。


<7月28日>(金)

○蓮舫さんが民進党代表を辞任。そしたら稲田防衛相も辞任。なんだか急にガラガラときましたね。

○こうなると女性初の防衛相に就任して、「これは難しくて自分には務まらない」と判断したのか、評判が悪い守屋事務次官の首を飛ばして、相打ちの形を作ってさっさと辞任した小池百合子さんの判断の良さが光ってしまいます。えっ、そんな10年前の夏のことって、みんな忘れていますか、そうですか。

○民進党が岡田代表の次に、蓮舫さんを選んだのは「やむにやまれず」でありましたから、影響は比較的軽微でありましょう。このままでは埋没するかもしれないから、党としては彼女の人気に懸けたわけであって、こう言ったら可哀そうだけれども「ダメもと」でしょう。「二重国籍」が問題になるなんて、もともと考えていなかったしね。最後の引き金は「幹事長の引き受け手がいない」だったのかもしれませんが、今週の閉会中審査(参院編)で見せ場を作ったこともあって、ご本人的には納得されているものと存じます。

○それでは民進党の次の代表がどうなるかというと、前原さんだろうが枝野さんだろうが、たぶん大差はないのだと思います。なにしろ「安倍一強」を止めるために頑張っていた人たちですから、安倍さんが強くなくなったら応援する理由もなくなるんです。解党されても、新党を立ち上げても、どうぞお好きなようにとしか言いようがありません。

○逆に稲田防衛大臣は、安倍政権にとっては「本来、取らなくてもいいリスク」だったはず。ハイヒールだのファッションだのといった批判もありますが、真珠湾訪問から帰ったその足で靖国神社に行ったのはさすがに拙かったと思います。それから日米や日ロ間で「2+2」がある時代に、「マティス国防長官に会わせられない」ような大臣は困ります。任命権者としては大化けしてくれることを期待したのでしょうが、そうではありませんでした。

○稲田防衛相は、外交官ジョージ・ケナンが忌み嫌った「法律家的・道徳家的アプローチ」の典型だったと思います。外交・安保政策は、もうちょっと清濁併せのむタイプでないと難しい。同じ弁護士出身でも、高村正彦さんのような人も居るんですけどねえ。

○それにしても今日の新聞各紙は、ずいぶん意地悪な写真を載せてましたねえ。おそらくお二人にとっては、「なんでこんな写真使うの〜!」と文句を言いたくなるところでしょう。でもね、新聞報道はそれが命なんで。逆にテレビは、見たまんまがそのまま届いてしまう。今週末の政治報道番組は盛り上がるでしょうな。


<7月29日>(土)

○将棋の佐藤康光九段(将棋連盟会長)が、昨日の対局で通算1000勝を達成しました。4月に999勝を挙げてからが長かった。不肖かんべえ、5月1日にお目にかかった際に、「NHK杯優勝、順位戦A級残留、将棋連盟会長就任、紫綬褒章、4つまとめておめでとうございます」と申し上げたのですが、次のお祝いまではしばし間が空きました。この間、なんと7連敗だったそうです。

○ちなみに4つのお祝い内容のうち、「A級残留」はほとんど絶望的な状況からの大復活で、「NHK杯トーナメント優勝」はあれよあれよという間の勝利で、「将棋連盟会長就任」は不祥事の後、文字通り火中の栗を拾うような犠牲的精神の発露で、「紫綬褒章」はえ?そんなご褒美もあるの!てな感じでありました。しかるに連盟会長交代とほぼ同時に、「藤井聡太四段フィーバー」が始まりまして、将棋界には突然、春が訪れたのだから世の中わからんものです。。

○昨日はA級順位戦だったので、「今日こそは!」と思って、朝からチラチラと名人戦棋譜速報(有料)を見ておりました。相手は広瀬八段。佐藤九段は飛車先の歩を伸ばしてからの向かい飛車、というお得意の不思議戦法で、玉頭戦となりました。もちろん当方の棋力では理解不能。昨晩、見ている途中で力尽きました。終局は0時31分、感想戦終了は2時1分だったとのこと。午前10時からやっているわけですから、棋士の集中力というのはつくづくすごいですね。

○さて、将棋界における1000勝というのはどれくらいの値打ちがあるのか。史上9人目ということですが、過去の8人はこんな顔ぶれです。

@大山 康晴 1977年4月30日 54歳1か月
A加藤一二三 1989年8月21日 49歳7か月
B中原  誠 1992年1月10日 44歳4か月
C米長 邦雄 1994年12月12日 51歳6か月
D内藤 國雄 2000年9月18日 60歳10か月
E有吉 道夫 2001年3月5日 65歳7か月
F谷川 浩司 2002年7月13日 40歳3か月
G羽生 善治 2007年12月20日 37歳2か月
H佐藤 康光 2017年7月28日 47歳9か月

○内藤九段や有吉九段はほとんど忘却の彼方でした。最近は藤井四段ばかりが注目されていますが、こういう人たちが作り上げてきたのが将棋界なわけでありまして。それにしても、現役で1000勝棋士が3人も居るというのは、つくづくすごい話だと思います。

○いやあ、なんにせよ、佐藤九段の1000勝を見届けて嬉しい、というよりもホッとした感じ。この次はいつお目にかかれるかわからないので、この場で「おめでとうございます」と申し上げておきましょう。


<7月30日>(日)

○日本のマスコミは、今でも「ニューヨークタイムズ電子版によれば・・・」といった言い方をします。これは「紙面が正で、電子版は従」ということを無意識に前提にしているのでしょう。でも、The New York Timesは既に電子版がメインになっていて、今では紙は付け足しなんですよね。不肖かんべえが3月に久々にアメリカ東海岸を訪れた際には、紙の新聞が置いてあったのは文字通り空港だけでした。新聞はネットで読むのが当たり前になっている。

○実は新聞を電子版中心にすると、いいことがいっぱいあるんです。

@宅配をしなくていいからコストが下がる。

A記事の修正が楽。

B速報性が上がる。

Cレイアウトで悩まなくていいし、記事を長くしてもOK。

D紙を使わないと環境にも優しい。

○だから「断腸の思いで紙面を辞める」のではなく、「ホイホイ、こんなにいい話があったのか」と電子版に移行したのではないかと思います。ちなみにThe New York Timesの部数は100万部程度でしたが、電子版の有料購読者数は初めて200万部を越えたそうです。これというのも「トランプさまさま」でありまして、大統領が日々ツイッターで"Failing NYT"を叩いてくれるのですから、まことにありがたいことであります。

○ところが日本の新聞社の場合、「われわれは、何はさておき新聞配達店の雇用を守らねばならない」ということが出発点になる。だから「電子版はあくまでも補完的なもの」という位置づけになる。ホントかどうか知りませんが、少なくとも最大手のY紙の代表取締役主筆殿はそのように考えているらしいです。

○読者の側も、この国は紙のファンが多いですよね。だからなかなか変わらない。でも、できることなら日本の新聞も電子版中心に移行して、紙の使用を減らすとともに、新聞配達店の雇用をほかの分野に振り向ける方が、経済の生産性が高まるのではないかと思います。何しろ今は有効求人倍率1.51倍ですからな。バブル期のピークが1.44倍ですから、「バブル期並み」じゃなくて「バブル期超え」なんです。








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki