<9月1日>(土)
○昨日の「2ちゃんが売られる」情報はなんとネタだったそうで。かんべえさんも見事に騙されましたぁ。お暇な方は下記をご参照。
●「2ch閉鎖騒動騒動、関連総合リンク集」 http://members.tripod.co.jp/tera_link/2chheisa.html
○とはいうものの、2ちゃんが抱えている危機はかなり深刻なものです。これを説明する文章が非常に分かりやすいのでお勧めです。
●「初心者のための2ちゃんねる存続解説」 http://home.att.ne.jp/wind/monsta/ga/2ch_kiki.htm
○要するにネット空間は、@あっという間に無限に拡大する成長力があり、Aそれを維持するためには手間とコストがかかるのだけど、Bコストを回収する適当な仕組みが見当たらないので、C結論として管理人のリーダーシップとか、参加する各人の節度とかボランティア精神が必要になる。Dこれらがうまく行っている間はいいけど、どこかで限界にぶち当たる。@〜Dを併せて、「ネットのパラドックス」と呼んでもいいかもしれない。
○2ちゃんねるの存続について、いろんな意見が飛び交っているが、ちょっと「じ〜ん」とさせられるものもある。引用しちゃおう。
●小生昭和18年未年、今年58歳。インターネットは96年から利用しているが、
これほどに嘘ばかりで醜くく、低俗で、最悪なものは見た事も無かった。
またこれほどに真実で、美しくて、高尚で、最高に面白いものも無かった。
この中には真実に今の最低な人間と最高の人間が、ありのままに居て
ありのまま真実や嘘や法螺や煽りや罵倒や励ましを書きこんでいるものも見た事が無かった。
つまりこの中は、建前ではない本当のもう1つの日本が存在している。
存続してほしい。切に願う。止めないでほしい。
○2ちゃんには非常に若い参加者が多く(よく「厨房」と蔑まされている)、その中には「ひきこもり」(ヒッキーと称される)といわれるような人も多い。
●みんな本当に今までありがとうな。
議論して、時には喧嘩になったけど今となっては良い思い出だよ。
俺、思うんだけどさ、多分、あのとき寂しかったんだと思う
誰も振り向いてくれなかった。本音なんか言えやしない
親も喧嘩ばかりだったし、姉貴はあれ以来音沙汰なしだ。
友達はいたけど、なんか薄っぺらかった。
恋の話して、ドラマの話して、適当に相づち打って、
笑ったふり、泣いたふり、怒ったふり
寂しかった。虚しかった。
目に見えるはずなのに。手で触れられるはずなのに
なんだかそれは、とても薄っぺらに思えたんだ。
でもここの人達は違った。全力で俺を否定した。全力で俺を肯定した。
厨房や弱者には容赦なく攻撃。できる奴には惜しみない賞賛
現実より、それはリアルだった。今思えば、すべての書き込みが輝いて見える。
さようなら、2ちゃん。
俺はもう大丈夫だから
○こんなふうに、ネットによるコミュニケーションによって救われている人は少なくないと思う。2ちゃんはやっぱり生き延びてほしい。では、「ネットのパラドックス」をどうやって乗り越えるか。誕生して間もない世界だけに、すべてはこれからですな。
*ところでお願いです。更新作業をしているうちに、当方の不手際によって8月分の「不規則発言」のうち23日から27日分のデータが消えてしまいました。もし、お手元のPCの「一時ファイル」に当該分のデータが残っておられましたら、メールにてかんべえ宛てにお送り願えませんでしょうか。なお、今後はちゃんとバックアップをとっておくことを誓います。あ〜あ。
<9月2日>(日)
○大変お騒がせいたしました。AさんのWeb巡回ソフトに過去ログが残っていたそうで、8月23〜27日分のデータを送っていただきました。Aさん、どうもありがとう。おかげで8月分を元に戻すことが出来ました。本当に助かりました。
○実は昨夜のかんべえさん、結構あせったものだから、お台場までクルマを走らせ、会社のPCのデータを拾いに行ったりしていたんです。土曜夜のお台場は、人もクルマも多くてびっくりしましたな。ま、それはさておき、深夜の高速道路を懐かしのアニメ・ヒーローもののCDをかけながら疾走してきました。ちょっと古いんですが、「アニメタル」という妙なバンドがありまして、これが昔のアニメの曲をメタル風にアレンジしていて、それも新造人間キャシャーンとか勇者ライディーンくらいならともかく、闘将ダイモスとか氷河戦士ガイスラッガーとか、マイナーどころまで網羅しているというカルト的な作りなんです。延々と聞いていると阿呆になること請け合い。
○アニメ・ヒーローものというのは、なんとたくさん作られたものかと唖然とするくらいですが、主題歌というのは明らかに傾向があって、「簡単な旋律」「七五調の詩」「最後は主人公の名前を連呼する」など、とにかく単純な作りになっている。やたらと出てくるのが「正義の怒り」「青い地球」「愛と勇気」「平和のために」などの紋切り型のフレーズで、どれがどれだか分からなくなるようなものも少なくない。それでも大量に聞いていると、「なるほどこれは名作だなあ」と唸るようなものもある。
○かんべえが発見したのは、「アニメ・ヒーロー主題歌は出だしの一言が勝負」という法則である。以下に「文句なし傑作!」と思える例を挙げておこう。
@「白いマットの ジャングルに 今日も嵐が 吹き荒れる・・・」 (タイガーマスク)
A「空にそびえる くろがねの城・・・」 (マジンガーZ)
B「水平線の終わりには 虹の橋があるのだろう・・・」 (海のトリトン)
C「光る海 光る大空 光る大地 ゆこう 無限の地平線・・・」 (エイトマン)
○なんだ、名作ばかりじゃないか、と思われた方、あなたは正しい。それにしても、@プロレスを「白いマットのジャングル」、A戦う巨大ロボットを「くろがねの城」という表現力は、今から考えても名ショットじゃないだろうか。BトリトンやCエイトマンは、言葉使いは普通でも、「す〜い〜へ〜い〜せ〜んのおわりにはっああぁ〜」「ひかる〜うみっ、ひかる〜おおぞらっ」という言葉の引っ張り方が聞いていて美しい。そうそう、これはスポーツものになるが、「おぉもい〜こんだぁらぁ〜」という名作アニメもありましたな。
○とにかく出だしで勝負、というのがアニメ主題歌の王道である。「誰だ誰だ誰だ 空のかなたに踊る影・・・」(ガッチャマン)や、「ビルのまちにガオー・・・」(鉄人28号)のようにパンチのあるフレーズを冒頭に持って来ること。個人的には、サイボーグ009の中にある「涙で渡る血の大河、夢見て越える死の荒野」なんぞはとても好きなフレーズなんだが、この歌の冒頭はやや平凡なので惜しい。(注:吹きすざぶ風がよく似合う・・・)
○あらためて聞いていると、思わず吹き出してしまうような歌もある。デビルマン(注:あれは誰だ、誰だ、誰だ、あれはデビル、デビルマン)も準名作といっていいでしょう。ところが、「デビルアローは超音波、デビルビームは熱光線」くらいで止めておけばいいものを、「デビルイヤーは地獄耳」って、なんじゃそれは?そのまんまじゃないかい。デビルマンが井戸端会議で、「ご近所のかんべえさん、最近帰りが遅いんですよ」とか言ったら、思い切り怖いぞ。
○と、気を取りなおして、だいたいにおいて有名アニメ作品は主題歌も名作です。この法則の例外になりそうなのが『機動戦士ガンダム』の主題歌。(注:燃え上がれ、燃え上がれ、燃え上がれ、ガンダム・・・) ガンダムは東海テレビによる低予算アニメだったので、主題歌にお金がかけられなかったのだと思う。ちなみに作詞は「日本サンライズ企画室」。外注できなくて、プロダクションが自社の社員に作らせたものと見える。
○さて、アニメ主題歌の最高傑作は、と考えると、月並みながらこれに止めをさすことになるだろう。
D「さらば地球よ 旅立つ船は 宇宙戦艦ヤマト・・・」 (宇宙戦艦ヤマト)
○阿久悠作詞、宮川泰作曲。このコンビが演歌や歌謡曲を何曲作ったかしらないが、おそらく「ヤマト」以上に多くのファンを得た曲はないだろう。たしか交響組曲のLPも発売されたはずである。この歌を聴くと、「アニメ・ヒーローものの主題歌って、要するに軍歌なんですね」ということに気がつく。かつての軍国少年たちの子供世代は、アニメフリークとして育ってしまったわけだ。かくして戦後育ちの日本人のメンタリティも、あんまり戦前と変わっちゃいなかったということです。
○別にいいとか悪いとかいうつもりはありません。だって実際に、この手の歌を山ほど聞いて歌った世代が、筆者のようにもう40歳になっちゃったんだもの。今さら取り返しはつきませんぞ。
<9月3日>(月)
○今日でアクセスは12万件。8月は手抜きモードのつもりでしたが、大勢来ていただいたようでありがとうございます。さて、もっとも熱心な本誌読者にして、経済学の学徒である山根君からのご指摘を紹介しましょう。
●経済の現況については、私自身は98年の頃よりも悲観的です。2000年ぐらいまでは、アメリカ経済が好調の間に財政政策で景気を下支えしながら、回復のきっかけがつかめればと思っておりました。98年のときも大変だとは思いながらも、アメリカ経済が拡張している限り大丈夫だと思っておりました。でも、今回は世界恐慌のような極端な事態は別としても、98年のときよりも景気が落ち込む可能性も十分あると思います。
○かねてから、「日本経済は今より98年の方が深刻だった」と思っていたのだけど、これを聞いてちょっと自信がなくなってきたな。社内のK氏からも、「98年は金融だけだったでしょ。今年は実体経済の悪化も加わっているから、やっぱり今の方が深刻だよ」といわれてしまった。98年には「IT」に期待が持てたけど、今ではITが悩みの種になっている。う〜ん、と頭をひねりつつ、こんな表を作ってみたりする。
1998年 | 2001年 | |
株価(TOPIX) | 10月に974を記録 | 今日の終値は1071 |
実質GDP | -0.6%(年度) | 0%(本誌予測) |
完全失業率 | 4.3(年度平均) | 5.0(7月) |
有効求人倍率 | 0.5(年度平均) | 0.6(7月) |
日本政府 | 橋本→小渕政権 | 森→小泉政権 |
米国政府 | クリントン大統領 | ブッシュ大統領 |
○98年には長銀、日債銀の経営破綻、金融国会、ロシア金融危機、インドネシア政変、LTCM危機などがあった。円安に対して共同介入をしてもらったら、あとからサマーズが飛んできて叱りつけられたりもした。政府・与党は参議院で多数派を形成できないものだから、小渕さんは民主党案を丸呑みしたり、自自連立したりして苦しんだ。あのときの「先の見えなさ加減」は非常に怖い感じだった。それに比べれば、今は一度は危機を体験した経験があるし、IT不況にせよ不良債権問題にせよ、ある程度は展開が予想できるような気がする。とはいえ、米国経済が絶好調から先行き不透明になってしまったインパクトは大きい。
○1998年と2001年はどっちの谷が深いものになるか。これは結構面白いテーマかもしれません。しばらくこの問題を考えてみようかと思います。98年秋の金融国会からそろそろ丸3年ですな。
<9月4日>(火)
○昨日に続き、山根君から二の矢が飛んできた。長いので適当にはしょると、こんな論旨である。
@98年の危機は、原因と対応策が明確だった。(97年の国民負担増→減税と政府支出拡大、金融不安→公的資金投入)
A98年の米国経済は4%成長を続けていた。(経済危機はアジアやロシアに偏在していた)
B2001年の場合は債権市場の暴落が心配。(政府の資金調達コストを高めるし、金融機関のバランスシートも痛む)
○いいところを突いてくるではないか。ううむ、この議論は当方が完敗しそうだな。でも、いちおう上記3点にコメントしておこう。
@景気重視への転換や公的資金投入という対策は、分かっていても政治的には非常に困難であった。そこでアメリカに外圧をかけてもらったり、長銀という生け贄を作ることによって、かろうじて政策転換が可能になった。今日の政治情勢は、当時に比べればはるかに恵まれている。
A98年秋のLTCM破綻の頃には、本気でやばいムードもあった。クリントンは「半世紀に一度の国際金融の危機」という言い方をしていた。彼自身は何もせず、ルービン長官に任せっぱなしだったが。
B債権市場の暴落は、筆者はないという見方だが、・・・・だったら心配いらないかといわれても困るな。でも国債が最高値をつけて、長期金利が1%割れをしたのは98年の秋だった。
○いちばん判断の難しいのは「米国経済」の評価ですな。99〜00年の日本経済の短い上昇過程は、かなりの部分がアジア向け輸出に牽引されていた。で、アジアは日本から部品を入れつつ、IT製品を組み立てて対米輸出することで伸びていた。アメリカは気前よく輸入を増やしつつ、そのカネは主に欧州からの資本投資でファイナンスしていた。アメリカに投資している人たちは、株価が上がって喜んでいた。今はこのサイクルが崩れつつある。で、その先に何が来るのか。
○結局、1998年と2001年を比較するときは、現在の危機がどれくらい広がるかを予想しなければならない。逆にいえば、どこで踏みとどまって反転するかを見極める必要がある。と、いうことで、このあとは明日考えよう。
<9月5日>(水)
○「台湾つれづれ」を書いている「らくちん」さんからいただいたメールです。
経済論議、楽しく読んでいます。
98年のは、鋭い日本刀で切られたような痛み、でした。本当におれの首と胴はつながっているのかな、と一瞬考えるような沈黙がありました。
今回のは、どしりと重石をのせられたようなつらさで、少し性質が違うと思います。
○これこれ。言いたかったのは、この感じなんですよ。「らくちん」さんはかんべえとご同業にお勤めですが、98年に多くのジャパニーズ・ビジネスマンが感じたあの動揺を、よく覚えていると思うんです。で、まあ「俺たちはあの98年を通過した」「もう怖いものなんてない」という感覚を共有しているんじゃないか。てなことを言うと、精神論に堕してしまうのだけど、2001年の経済危機をあんまり深刻に感じないのは、こういう心理的な効果が大きいと思う。少なくとも私の場合は。
○さて、9月7日に発表される4‐6月期GDPが1.2%くらいのマイナスになる、というので政治家や新聞が大騒ぎしている。気の毒なことである。経済統計は、通関統計のように「前年同期比」で表すものが多いが、GDP統計は「前期比」で表す。で、1‐3月期の統計は、最初はマイナスだと発表されて、その後「個人消費を少なく見積もっておりました」ということでプラスに修正された。その分、発射台が高くなったので、4‐6月期の落ち込みは大きくなることは最初から分かっていた。こういうことが意外と知られていない。
○経済統計の悪口を言い出すときりがないのだけど、幸いなことに最新号のSAPIOでかんべえの仲間にして、優秀なエコノミストである宮脇信介&島本幸治両氏が、「時代遅れの経済指標が日本経済への信認を低下させている!」という親切な記事を書いている。とても分かりやすくてお勧めです。この話、おそらく明日も続く予定。
<9月6日>(木)
今の状況の捉え方次第で、両方とも言えると思います。
経済状況自体は、確かに98年が最悪でした。これは間違いないでしょう。
しかし、98年は財政で刺激すれば、景気は数年で良くなる、と思っていた人が多かったのです。
そして、100兆円使ったが、、再び、同じような状況に。
今回のポイントは、98年の時より、皆が自信喪失ぎみなところでないでしょうか?
○これは銀行にお勤めのYさんのご意見。99年には「みずほ」などの大型再編があり、金融界が再生に向かうという感じがあった。それだけに2001年の自信喪失感はより深いのでしょう。
靖国も面白かったですが、今回のキュウハチvsゼロイチ論争も実に面白いですね。中年男の病気自慢みたいなところもあって。
98年当時は『週刊XXX』で経済ものをやってましたので、本当にどうなっちゃうんだろうという感覚がありました。
あのきりきりするような感じはいまはないような気がします。
株価が下がって、失業率が5%を超えて「早くも改革の痛みが…」なんていってますが、実は改革そのものはまだ始まってもいないんですよね。
○こちらは雑誌編集者のSさんから。「中年男の病気自慢」ってのはいいですね。こういう意見を聞いてみると、やはり景気というのは気分のもんですから、受け止める側の心理の問題が大きいのですね。
○心理というとこういう要素も見逃せない。それは「経済大事件のときには、スポーツで感動的なことがある」の法則。
その1。97年11月。日曜の夜に、ワールドカップ出場をかけたジョホールバルでの日本対イラン戦、苦しい試合を延長に持ち込み、中田のアシストを岡野が決めて、日本が逆転勝利。岡田監督胴上げを深夜に見て、「あ〜あ、世の中にこんなにうれしいことがあるものか」と思った翌日に拓銀が倒産。同月には山一證券も自主廃業。
その2。ということで地獄に落ちた日本経済。早く景気対策をやれ、とアメリカからは矢の催促。ところが橋本政権は、財政構造改革路線からの転換にひと苦労。他方、3月末までに金融機関に公的資金を入れなければならなかった。ところが98年2月、日本国民の心を占めていたのは長野オリンピックで、「原田、立て、立て、立ってくれ」が流行語になった。原田のド阿呆は、雪の中で「ふなきぃ・・・」と言って泣いた。それを見て、ワシも泣いた。
その3。円安は止まらず、長銀の経営不安が市場を騒がせていた98年6月は、いよいよ日本が初めてワールドカップに登場したときだった。結果は3連敗。中山ゴンのゴールが唯一の成果だった。悔しかった。でもおかげで経済の不安を忘れた。ワールドカップが終わると、それから金融国会が始まった。
○つまり98年の経済危機は、あまりにも鮮烈なスポーツの印象によって、心理的に中和されていたのではないか。『検証・経済迷走』はいい本だと思うが、さすがにここまでは書いていない。ま、こんな馬鹿なことを考えるのは、不肖かんべえくらいでありましょうな。ちなみにこの法則はその後も生きていて、2000年9月のシドニー五輪の頃に景気の「山」があったり、今年のコンフェデレーションカップで準優勝してから株価が下げたりした。ということで、2002年はやっぱりアブナイのである。だってワールドカップがあるんだもの。
<9月7日>(金)
○某スポーツ紙から取材の電話。
記者「日経平均が今日も下げているんですけど、1万円を割るとどうなりますかね」
かんべえ「んー、どうってことないんじゃないですか。日経平均は去年の銘柄入れ替えで継続性が失われてますから。あれは日本経済新聞社の大罪ですからね。TOPIXが1000pを割ったら考えますけど」
記者「TOPIXが1000pを割ると、どうなるんですか」
かんべえ「98年の最安値を下回ることになるので、ちょっと焦りますね」(お暇な人はyafoo
financeでお確かめください)
記者「でまあ、こんなふうに株価が下げると、私たちの生活にも影響が出ますよね」
かんべえ「うーん、出ますかねえ。株の売買している人って少ないですし、株で損している人はとっくに消費を絞っているでしょうから、あんまり関係無いんじゃないかなあ。企業が設備投資を減らすというのなら分かりますけどね」
記者「そうですか。私もそんな気がするんですよね。ねえ、株価が1万円割ったときに、暮らしがどうなるかっていうシミュレーションをやっている研究所なんてありませんか」
かんべえ「知りませんねえ」
○なんともいい加減な対応でどうもすいません。本日発表の4‐6月期GDPは前期比‐0.8%。事前に流れた噂(‐1.2%)よりもマシだった。ひょっとするととりあえず‐0.8%くらいにしておいて、あとから「個人消費を高めに見積もっておりました」とか言って、下方修正するつもりかもしれないぞ。だんだんQEも大本営発表みたいになってきましたな。
○それでもあまり悲観論には与したくないのである。実は先日から、いろんな指標を見ていると、日本経済は「そろそろ底入れが近いのではないか」という気がしているのである。なんとなれば、
@ここ数年の日本経済は「山低ければ谷浅し」。昨年の8月に景気の山があったと考えれば、下降局面はもう13ヶ月。そろそろ底打ちしてもおかしくはない。
A鉱工業生産指数や稼働率指数はすでに98年度平均を下回っている。このまま果てしなく低下していくとは思えない。そして製品在庫率指数は伸びが止まって来た。
○つまり循環的には年末あたりには上向くんじゃないの、という話。「だったらさ、何がきっかけになって日本経済が良くなるんだよ」と聞かれたら、はっきりいって分からない。アメリカのIT不況は相当なものだし、アジアも中国以外はズタズタなので輸出には期待できない。とにかく「ここがこうなって、良くなる」というストーリーは描けない。それでも、今週の「キュウハチVSゼロイチ論争」で、なかなか筆者がゼロイチに対して悲観的になれないのは、「ホントにそんなに悪くなるのかな」という素朴な疑問がぬぐえないからなのだ。
○ひとつだけ言えることは、「年末景気底入れ」になるのだとしたら、株価はそろそろ反転するはずである。夕刻、某証券会社の歩く政治情報ことT氏が、「これから顧客まわりでアメリカに行ってきます」との電話。「結論は?」と聞いたら、「Strong
Buyですよ」とのご託宣。ワシもそっちに乗ることにしよう。
<9月8日>(土)
○今週号で紹介したThe Economistのコラム、おかしいでしょ? A〜Kで始まる名前の方が、L〜Zで始まる名前よりも有利で恵まれているという話。かんべえは苗字が「ヨ」で始まるので、同じクラスに渡辺さんや和田さんがいない限り、出席番号はだいたい最後だった。こういう名前は有利か不利か。難しいところですな。
○とくに新学期が始まった直後は、相沢さんや阿部さんは一刻も油断ができない。いつも最初に名前を呼ばれるからだ。吉崎さんや渡辺さんは、当分は自分の順番が回ってこないのでのんびり構えていられる。この差は大きい。とくに大学時代は4つの学部があって、順番は「商、経済、法、社会」ということになっていたから、社会学部の吉崎君はいつもいちばん最後。とくに語学の授業は、最初の2ヶ月くらいは予習をしなくて済んで非常に助かった。
○ところでこの大学、なぜか「50メートル泳げないと教養過程が終われない」という変なルールがあって、泳げない人は2年生の夏に本気で焦らなければならない。ただし泳ぎ方は何でもアリだし、途中で変えても構わないし、とにかく50メートルをクリアすればいいのである。そこで水泳実習になると、クラス全員が出席番号順に、数人ずつで50メートルプールに飛び込んでゆくことになる。ところが、たまたま数が半端で割り切れず、最後は一人だけが残ってしまった。ほかの人は全部終わっているので、哀れなかんべえさんはクラス全員が見ている中を、単独で50メートル泳がなければならなかった。あれには参ったな。
○と、これを書いていて気がついたんだが、かんべえは新しい制度が始まるというときには、システムを自分で覚えようとせず、「まず他人の人が適応するのを見てから・・・・」とのんきに構える癖がある。これはきっと、自分に順番が回ってくるのは当分先、という環境が長く続いたせいであろう。かくして、横着な人間になってしまったのである。
○こういう環境に育つ「ヤ」行や「ワ」行で始まる名前は、あんまり大した人物が出ない・・・・、かと思うとそうでもなさそうだ。吉田茂、とか渡邊恒雄、とか和田勉、とか、そんなふうにいうとオヤジタイプばっかり並んでしまうが、とにかく各界を代表するような人物も出ているようだ。ただし、ここに挙げた3人はいずれも極度のワンマン体質だから、学生時代はいちばん後ろの席に陣取って、予習もギリギリまでやらないような横着なタイプだったに違いない。やっぱり名前は性格に影響するのだろうか。
<9月9〜10日>(日〜月)
○ぜーんぜん気づいてなかったんですけど、パ・リーグで面白いことが起きているんですね。ここをご覧ください。昨晩、近鉄のローズ外野手がパ・リーグ記録となる53号本塁打を打ち、しかも残り試合が15試合もあるので、王選手のシーズン最多本塁打55号を破る公算がきわめて大きくなった。来るべきものがきたか、と思いますね。
○シーズン55本というのは一種のマジックナンバーである。コント55号(若い人は知らないだろうなあ・・・・萩本欽一と坂上二郎のコンビは、むかしは破壊的に面白かったのだ)の名前はここから来た。それから現在の松井秀喜選手の背番号も、おそらくはここから来ているのだと思う。55本という記録が破られるということに、いろんな感慨を持つ人がいるだろう。
○ここで阪神ファンであるかんべえが思い出すのは、1985年のランディ・バース選手なのである。この年のバースは三冠王になり、阪神優勝の原動力となるのだが、本塁打は54本であと1歩届かなかった。ではない。届かせなかったのである。セ・リーグの投手陣は、最後の消化試合でバースを四球攻めにした。当時はまだ、偉大な王選手の記録を外国人選手が破ってはいけない、というケチなことを考える人が多かったのだ。
○そんな仕打ちに対し、バースは哲学者のような静かな表情で耐えた。そして翌年、3割8分9厘というお化けのような高打率を上げて応えた。これは今でも破られていない史上最高打率のはずである。まるで、「こっちなら問題はないんだろう」と言うかのように。とにかくあの2年間、バースはよく打った。当時、球場に行くと、バースが打席に立つたびにこんな大歓声がスタンドを揺るがした。
バース、かっとばせ、バ、ア、ス、 ライトーに レフトに ホームラン
○実際、バースの打球はまるでピンポンだまのように軽々とよく飛んだ。日本プロ野球史上最強の外国人選手、という評価に異論は少ないだろう。そんなバースが打てなかった、もとい、打たせてもらえなかった55号。それを今年、近鉄のローズが越えようとしている。
○まさかパ・リーグが今さら王監督に遠慮するとは思えないし、首位戦線も苛烈なことゆえ、他球団の投手陣はローズに対して無条件で勝負してくるだろう。ローズはガンガン打って、記録を大きく塗り変えてほしい。そうなってほしいし、そうでないと困るのである。
○なんとなれば、海の向こうではイチローがあのシューレス・ジョーが残したシーズン最多安打記録に挑戦している。日本人選手がそんな大記録を立てることを、きっと面白くないと感じるアメリカ人もいるはずだ。しかし、それを理由に相手投手がイチローを敬遠するようなことがあれば、きっとメジャーリーグの観客はブーイングで応えるだろう。98年のマグアイヤとソーサのホームラン競争のときも、アメリカ全体のムードは明らかにマグアイヤ乗りだったが、それでもドミニカ出身のソーサに対する意地悪はなかった。それがメジャーリーグである。
○「ローズなんちゅう、よく知らない外人選手に、王選手の偉大な記録を破らせてたまるか」などという心の狭いファンはきっといると思う。だが、海の向こうでイチローが祝福されているように、われわれだってローズを称えるべきじゃないだろうか。心配なのは、日本には野球ファンじゃなくて、巨人さえ強ければいいという変なファンが多いことである。だが、いつまでも王と長島の神話にしがみついているのでは、日本野球は衰退をまぬがれないだろう。ローズの今後の活躍に注目しよう。
<9月11日>(火)
○台風15号が首都圏を直撃。かんべえの職場の窓から見える東京湾はそりゃもうすごい景色。雨で視界が遮られて、午前中はレインボーブリッジが半分も見えないくらい。お台場海浜公園の砂浜はほぼ完全に水没。高速道路は閉鎖となり、ゆりかもめは超のろのろ運行。まあ、運転手がいない電車なんだから、動いているだけマシというべきか。風があまりに強いため、当社の1階にあった植え込みの木が倒れた。案の定、植えてから日が浅くて根付いていなかった模様。
○外は嵐。こんな日にお昼を食べに外へ出かけようという人はあんまりいない。ビルの1階にあるampmへお弁当を買いに行ったら長蛇の列だった。膨大な冷凍食品の在庫があったようだが、間もなく売り切れたよし。台風さまさまか。お台場見物の観光客はさすがに見かけない。それでも今日のディズニーランドには出かける人がいたという。どういう人たちでしょうな。
○窓の外が少しは見えるようになった午後2時。お馴染みの政治ジャーナリストK氏から電話。「今、手が空いてる?」「何だよ。今から出て来いというのは勘弁だよ」「いや、実は仕事でフジテレビに来てるんだ」。――5分後には全身ぬれねずみのK氏到来。せっかくなので、23階のラウンジにご案内する。東京湾を見下ろしながらK氏としばし談笑すると、見る見るうちに嵐は収まっていく。間もなく東京湾の向こう岸が見えるようになった。それどころか空も晴れわたる。「おい、富士山見えるよ」「ほんとだ、あったまくるなあ」。
○夕方になると、空は黄金色に輝き出した。黄色はやがてオレンジ色に。台風一過、とはよく言ったもので、東京湾にはもう平和が訪れている。西の空がいよいよ真紅になってきたので、デスクの上のパソコンを切って帰宅。なんというか、一日で大自然のドラマを堪能した気分でした。
○ところで今週のNewsweek日本版(9月12日号)では、「小泉首相と土建国家」という特集記事に、見開き2ページでお台場の写真が使われている。レインボーブリッジは馬鹿げた公共事業の象徴、という位置付けなのだ。ところでこの写真、見ているうちにどこか違和感がある。なんというか、橋の手前のループが逆のように見えるのだ。よくよく見れば、フジテレビの右手にフロンティアビルがある。これはおかしい。つまりこの写真は「裏焼き」なのである。
○編集の仕事を何年かやると、誤植はイヤでも発見できるようになる。ところが写真の裏焼きは、ときたま見逃してしまうのだ。かんべえも昔は社内報に、「胸ポケットが右側についた社員の写真」とかを載せちゃったことがある。でも、読者も意外と気づかないことが多い。
○Newsweekのお台場の写真は、当社のビルが映ってないところを見ると、少し古いポジ写真を使ったのだろう。でも細かく見ると、道路の上の「50」という文字が裏返っている。粗忽な仕事ですな。あとで見たら、英文版もきっちり逆になっていました。これだけ盛大な「裏焼き」は初めて見ましたね。めずらしいので、お近くにあったらぜひチェックしてみてください。
<9月12日>(水)朝
○昨夜は早めに寝てしまいましたが、今朝起きたら大事件が発生。先週、アメリカ大使館からこんなファックスが報道各社に流れていました。つまり気配はあった、ということのようだ。
The U.S. Embassy in Tokyo today
issued to all American citizens resident in Japan the following
Warden System message:
"We
have received unconfirmed information that terrorist actions may
be taken against U.S. military facilities or against
establishments frequented by U.S. military personnel."
○被害のあまりの大きさになんとも言葉もありません。この事件は真珠湾攻撃以来のショックとして歴史に残るでしょう。黙祷。
○以下は日本ビデオニュースの神保さんからいただいたもの。お役に立てばと思いアップしておきます。
●世界貿易センタービル 日系企業リスト
第1ビル
第一勧業銀行(49階)
日本興業銀行(48―50階)
あさひ銀行(60階)
日興証券(79階)
住友海上火災保険(90階)
山陰合同銀行(84階)
第2ビル
富士銀行(79―82階)
富士銀行信託(82階)
富士キャピタル・マーケット(82階)
富士リサーチ・インスティチュート(82階)
中央三井信託銀行(83階)
東邦銀行(46階)
横浜銀行(46階)
静岡銀行(80階)
中国銀行(90階)
伊予銀行(102階)
西日本銀行(102階)
安田火災海上保険(79階)
千代田火災海上保険(79階)
ニュー・ジャパン・セキュリティーズ・インターナショナル(79階)
岡三証券(79階)
オカト・インターナショナル(79階)
コスモス・サービス
第一勧業トラスト
DKBフィナンシャル・プロダクト
DKBセキュリティ
デロイッチ・トーチ・トーマツ
SRAアメリカ
TESコーポレーション
AON RISK SERVICE
フレンケル
<9月12日>(水)夜
○事前にアメリカ大使館が警告を発していたくらいだから、テロに関する"Who"と"Why"はあらかじめ分かっていたはずである。アメリカ政府がつかみきれなかったのは、@"When"とA"Where"とB"How"だった。それが、@9月11日朝、ANYのワールドトレードセンタービル(WTC)とペンタゴン、Bハイジャックした民間航空機による自爆、という驚くべきものだった。
○"Who"と"Why"はもう見えたも同然である。自殺テロを同時多発形式でやろうなどという物好きが、この地球上にそんなに大勢いるとは思われない。ベテランの、しかも自殺を覚悟した元パイロットを最低でも4人は確保して、時間を正確に計って計画を実行に移したのだから、生半可な勢力ではない。"Who"はイスラム原理主義勢力、"Why"は中東和平の頓挫。この部分は、まずそんなに大きくははずれないだろう。
○"Why"については、イスラエルとパレスチナにおける衝突によって、この1年間で700人以上の死者と1万3000人以上の負傷者を出していることを指摘しておこう。死者の数は、1993年には168人(パレスチナ)+45人(イスラエル)だったが、その後は漸減し、99年には8(P)+2(I)まで減少していた。しかし昨年夏、クリントンが沖縄サミットを中座してまでこだわったキャンプ・デービッド会談は不調に終わった。その後の1年でこれだけの犠牲が出て、パレスチナのGNPは半分になった。
○不思議と中東問題は9月が転機になる。オスロ合意で歴史的和解が成立したのが1993年9月。その交渉期限が2000年9月。それが無駄に終わって、シャロン・リクード党首(現・首相)がエルサレムの聖地「神殿の丘」を訪問したのが9月28日。これがパレスチナ人をプッツンさせて、双方の衝突の口火を切った。その1年後が今回のブラック・セプテンバー。今度のテロの日時が「911」(アメリカの緊急用電話番号)になったのは、皮肉な偶然か、それおとも一種の愉快犯感覚か。これは"When"の謎。
○"Where"については、98年のタンザニア大使館のように、テロは海外で行われると予想していたのではないか。まさかWTCとペンタゴンとは。この意外さも、アメリカにとっては「真珠湾」そのものだ。それが映像で全世界に配信された。アメリカ人全体が一種のPTSDになっても不思議ではない。
○そして何より意外だったのが"How"だった。民間航空機をハイジャックして自爆する。こんなにコストの安い、効果的な手法があろうとは。テロの手法としては、地下鉄でサリンを撒くのも「画期的な技術革新」だったが、世界中のテロリストがこの「コロンブスの卵」に気づいてしまった。今後の同様な試みをどうやって防いだらいいのか。もしも敵に余力があれば、明日にはサイバーテロを試みるだろう。ひょっとして犯行声明がまだなのは、この第2派攻撃が終わるのを待っているのかも。
○さて、筆者は「日本の対応」ということで気になっていることがある。それは「ブッシュ外交の強硬姿勢がテロを招いた」という批判である。言いたくなる気持ちが分からないではないが、「自由と安全、秤にかければ、自由が重たいアメリカ合衆国」なのである。そもそも自由より安全が大事だったら、独立戦争は起きないではないか。「雉も鳴かずば撃たれまい」ということわざは、アメリカ人の辞書にはないのである。加えて「盗人にも三分の利」的な価値相対主義はいい加減にしておこう。個人的には、「正義は両方の側にある」などと言うような人には、お近づきにはなりたくない。
○今日の日本発のコメントのうち、いい例と悪い例を紹介しておこう。
いい例:10:06
新庄がコメント。「いまは野球以外のことを優先してほしい。被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます」。
悪い例:11:19
「経済失政をテロがダメ押し」。民主党の菅直人幹事長が東証株価の1万円大台割れで小泉失政が根本的な原因と指摘。
○新庄の方が、民主党の幹事長よりはマシなようだ。寒いね。
<9月13日>(木)
○阪神大震災のとき、谷川浩司王将(当時)は神戸ポートピアの自宅で被災した。そのまま自家用車で数十時間をかけて対局場にたどり着き、予定通り羽生六冠王との七番勝負に臨んだ。勝利を収めたのち、「将棋が指せて幸せです」との名文句を吐いた。相手が止水明鏡の状態にあるのでは、さすがの羽生マジックも通用せず、この年、谷川は大方の予想を裏切って王将位を防衛する。羽生七冠王が誕生したのは翌1996年であった。
○昨夜は近鉄のローズが54号本塁打を放ち、日本プロ野球タイ記録にあと1本に迫った。母国の現状を思えば、「野球ができて幸せです」の心境だろう。何事も命あっての物種。今日もいつもと同じように仕事に行き、人に会い、飯を食い、文章を書き、遊べるのは、私が生きているから。心から感謝しよう。「今日もHPの更新ができて幸せです」
○別にしみじみしているわけではない。今頃になってニューヨーク在住の知人、友人の顔が浮かんできて、怒りがうっくつしてきた。ようやく想像力が現実に追いついてきたのである。どんな理由があるにせよ、数千の単位で命が失われるような行為が許されるはずがない。では、いったい誰が?
○正当派のヤクザは警察と事を構えない。今度の件についても、イランやイラクのようなRogue
Country(ならずもの国家)は関与していないだろう。アメリカに喧嘩を売るような勢力といえば、オウムのようなカルト集団以外にない。
○ここに「米国務省のテロ年次報告」"Patterns
of Global Terrorism 2000"という文書がある(http://www.state.gov/s/ct/rls/pgtrpt/2000/)。この序文に興味深い一節がある。「アフガン同窓会」って知ってましたか?
The UN's
action also reflected the understanding that Taliban-controlled
Afghanistan remains a primary hub for terrorists and a home or
transit point for the loosely organized network of "Afghan
alumni," a web of informally linked individuals
and groups that were trained and fought in the Afghan war.
Afghan alumni have been involved in most major
terrorist plots or attacks against the United States in the past
15 years and now engage in international militant and terrorist
acts throughout the world. The leaders of some of
the most dangerous terrorist groups to emerge in the past decade
have headquarters or major offices in Afghanistan, and their
associates threaten stability in many real and potential trouble
spots around the globe--from the Philippines to the Balkans,
Central Asia to the Persian Gulf, Western China to Somalia, and
Western Europe to South Asia. This is why the Taliban's continued
support for these groups is now recognized by the international
community as a growing threat to all countries.
○かつてソ連がアフガニスタンを侵略したとき、米国はアフガンゲリラに梃子入れし、武器と資金と訓練を提供した。「イスラム世界を守れ」とばかりに、アラブからの義勇軍も集まった(その中の一人に噂のオサマ・ビン・ラディンもいた)。このときに集まった連中が「アフガン同窓会」を作り、過去15年間にわたって対米テロにかかわっている、とこの文書は指摘する。つまり若い頃に破壊工作をやった連中が、「フィリピン、バルカン半島、中央アジア、ペルシャ湾、中国西部、ソマリア、西欧から南アジアまで」、世界中でテロ行為を続けているのである。
○筆者なりの解釈でいけば、彼らは主張があるから破壊活動をするのではない。破壊したいから主張を作るのだ。イスラム原理主義とはそのための看板のようなもので、昔だったら共産主義勢力に身を投じたような連中が、宗教を代用品にしているに過ぎない。普通のイスラム教徒とは無縁な存在であるだけでなく、迷惑な存在ですらある。事実、ラディンは母国サウジから国籍を抹消され、国外追放に処せられている。現にアラブやイスラム社会で、今回のテロに喝采を送っている政府は見当たらない。
○他方、これでは米国はかつて自分の手で育てた鬼子たちの逆襲を受けているようなもの。それを運命の皮肉だとか、反省すべきだとか、因果応報だとか言いたくなる気持ちも分からないではないが、それのために無辜の市民が被害を受けるような不条理を許していいはずがない。
○事件の当日にアメリカで行われた世論調査を以下に紹介しておきます。出典:http://www.gallup.com/poll/releases/pr010912.asp
*今日の攻撃は米国に対する戦争行為だと思いますか?<はい86%><いいえ10%><無回答4%>
*この状況に対するブッシュ大統領の手腕を信じますか?<強く信じる45%><まあ信じる33%><あまり信じない11%><まったく信じない7%><無回答4%>
*今日の攻撃の結果、アメリカ人は生き方を決定的に変えると思いますか?<はい49%><いいえ45%><無回答6%>
*米軍の行動はどうあるべきですか?<知られているテロ組織を即座に攻撃21%><誰の仕業か分かるまでは待機71%><軍事行動はすべきではない4%><無回答4%>
*米国政府は犯人を特定し、報復することができるか?<できる52%><たぶんできる36%><たぶんできない6%><無理3%><無回答3%>
*これはあなたの人生において、もっとも悲劇的なニュースですか?<はい87%><いいえ12%><無回答1%>
○やはり「第2の真珠湾」なのだなあ、と実感します。
<9月14日>(金)
○安全保障問題に詳しい知り合いから寄せられた意見をご紹介しましょう。
●本当に、「ブッシュが招いたテロ行為」論にはまいります。なぜって、これは無差別テロリストの策にまんまとはまったことを意味しますから。典型的な「同盟分断戦術」です。北朝鮮と10年近くやりあっても、その辺がまだわからないというのは・・・・。
テロ犯の誤算は「Democracies fight in anger」をしらないことでしょう。全く、いつぞやの日本と同じですね。「真珠湾は繰り返す」
こちらオーストラリアでも、3人の犠牲者が確認されました。まだ80人くらいの方の安否が不明です。政府はカンカンです。外交貿易大臣は今日断言しました。「アメリカへのテロは豪州へのテロだ。なぜなら、我が国民が犠牲になったからだ」。もう豪州政府の覚悟も決まってます。
(キャンベラで国際関係論を研究中の阿久津さん――岡崎研究所のHPの管理人でもあります)
○日本の犠牲者の方が多いと思うんですが、この件について田中外相が何も言わないのは何ででしょうね。
●マスコミの事実報道は仕方がないことで許せるのですが、“識者”などが出てきて、根拠薄弱な推理や思い込みで、DCに大統領も副大統領も国防長官もいない、大混乱するのでは、米国の備えも案外もろい、世界恐慌を目的としたものだ、米国の航空交通が、NY金融機能が麻痺しているなどと、不安を煽るのには、怒りを覚えます。
あの状況下で指揮機構の移動、航空交通の停止、国境の閉鎖、市場の休場、などは危機管理の一端でしかありません。TVなどにでて来ている“識者”の一部はあてにできません。
(杏林大学非常勤講師の宝珠山昇さん――National Defense
Observation Centerを運営中)
○同感です。かんべえはテレビはNHKとCNNだけ、新聞は日経を1日10分だけ。それ以外の和製報道は見ないようにしています。それくらいなら、まだしも「2ちゃんねる」のニュース速報板で、DQNにいちゃんたちの論議を読んでる方がマシだと思います。
●いずれにしても、これからが大変ですね。テロとの闘いは、長く過酷なものとなるでしょう。日本国民一丸となって、取り組まなければならないと考えています。当然イスラム過激派(の一部)に対する「落とし前」をつけなければならないでしょう。
同時に、長期的な課題として、イスラム社会(文明)とジュディオ・クリスチャニティ社会(文明)との融和の方策も探っていかなければならないと思います。過去2000年も解決しなかった問題がそんなに簡単にいくはずはないわけで、考えれば考えるほど深刻ですね。良いお知恵を下さい!
(民主党代表安全保障アドバイザーの長島昭久さん――長島フォーラム21を運営中)
○おっしゃる通り。ただ、かんべえが知っているイスラム教徒は、マレーシアやインドネシアの人々だけなんですが、彼らがテロを支援するはずもないんです。だから、これは「文明対テロ」の戦いであって、宗教戦争ではないという点を明らかにしていく必要があると思います。
○さて、最後にこれはご本人の許可を得てないんですが、あんまり面白いので載せちゃいます。ご同業のIさんから、昨日の当欄の意見に対して寄せられた感想の一部。
●宗教をねたに破壊活動を行う。きっとその通りだと思います。そして彼らの大半は間違いなく独身で子供はいない。女性経験も少ない。つまり欲求不満の童貞野郎、マスカキ専門のうじうじした連中が溜まった不満をテロで爆発させている。そういうことに決まっている。家族がいたらできませんよ。
○イスラム原理主義とはイコール貧困問題である、というのは中東研究者がよく口にするところです。テロ行為が救済に思えてしまうような現実が、若者たちを無謀な行動に走らせてしまう。悪いのはそういう人たちを駆りたてる指導者がいること。これはあくまで「カルト」の犯罪だということを強調したいと思います。
<9月15日>(土)
○初めてジョン・ワトソン博士を紹介されたとき、シャーロック・ホームズは「はじめまして。あなたはアフガニスタンへ行ってきましたね?」と言う。「ど、どうしてそれがおわかりですか?」と驚くワトソン博士に対し、あとでホームズは次のように謎ときをしてみせる。
ここに医者風で、しかも軍人タイプの紳士がある。むろん軍医にちがいない。顔は真っ黒だが、黒さが生地でないのは、手首の白いので知れる。してみると熱帯地がえりなのだ。艱難をなめ病気で悩んだことは、憔悴した顔が雄弁に物語っている。左腕に負傷している。使いかたがぎこちなくて不自然だ。わが陸軍の軍医が艱難をなめ腕に負傷までした熱帯地はどこだろう? むろんアフガニスタンだ。(『緋色の研究』新潮文庫29P)
○実際、ワトソン博士がアフガニスタンでなめた辛酸は相当なものだ。『緋色の研究』の冒頭では、「戦役は多くの人に叙勲やら昇進をもたらしたけれど、私にとっては徹頭徹尾災難だけであった」と語っている。インド連隊に赴任したワトソン博士は、第2次アフガン戦争に参加して肩の骨を銃弾に破砕され、あやうく「残忍なる回教兵の手中に陥るところ」を忠実なる当番兵の献身に救われる。ペシャワールの病院で健康を回復するも、今度はそこで腸チフスにやられて本国に送還される。そこでホームズと出会うのである。
○シャーロック・ホームズのシリーズは、19世紀末英国の姿を生き生きと今日に伝えている。ホームズものには、「犯人は植民地からやってきて植民地に帰る」という法則があるが、とくにアフガニスタンはつらい記憶が埋まっている場所としてたびたび登場する。なかでも27番目の短編、"The
Crooked Man"(新潮社の訳では「かたわ男」。どう訳しても差別用語になってしまう!)は、アフガニスタン帰りの兵士が偶然に昔の恋人と出会う悲しい話である。昔の恋人は、今ではかつての恋敵の妻となっている。かつては美男だった兵士は、今では背中がらくだのように曲がり、酒場の酔客相手にマングースの芸を見せて糊口をしのいでいる。兵士の失われた時間は戻らない。
○アフガニスタンは古来、ユーラシア大陸の交通の要所だが、基本的には不毛の土地である。外務省のデータによれば、この国の略史はこう書かれている。
長年の他民族による支配の後、1747年ドゥラーニー王朝成立。バラクザイ王朝(1826〜1973年)下の1880年、英国の保護領となるが、1919年独立を達成。73年7月共和制に移行後、78年4月軍部クーデターにより人民民主党政権成立。79年12月ソ連の軍事介入のもとカルマル政権成立。86年5月ナジブラが書記長就任。89年2月ジュネーブ合意に基づき、駐留ソ連軍の撤退完了。92年4月ムジャヒディーン・ゲリラ勢力の軍事攻勢によりナジブラ政権が崩壊し、ムジャヒディーン政権が成立するが、各派間の主導権争いにより内戦状態が継続。94年頃から、イスラムへの回帰を訴えるタリバーン(神学生の意)が勢力を伸ばし、96年9月に首都カブールを制圧した。
○これによると、英国が支配したのは1880年から1919年までの短い期間である。大英国帝国としても、あえてこの地域を支配するメリットを感じなかったようだ。とにかく資源もなければ産業もない。とくにソ連軍の侵攻以来は、度重なる戦争と内乱で国土は荒廃。そこから例の「アフガン同窓会」などという迷惑なネットワークが誕生した。現在、この国の最大の収益源はけしの栽培だという。難民あり、対人地雷あり、女性抑圧あり、遺跡破壊あり、と問題づくめ。とにかく、ちゃんとした政府機構が成立していたことがない。
○インド、パキスタン、イラン、中国、ロシアなどの周辺国は、「アメリカが制裁するなら、どうぞご自由に」という感じだろう。交通の要所だから、自国の勢力を伸ばしてはおきたいが、無理して取りに行くほどの価値はない。パキスタンがタリバンを支援しているのは、国内の宗教勢力の圧力を受けていることが大きいらしい。かくして今は狂信者たちが支配する国となっている。
○今もロシアには、「アフガン帰り」の心の傷を抱える元兵士が多いと聞く。21世紀になっても、ワトソン博士のようにアフガンで苦労をした人は絶えないらしい。こんな「筋ワル」な国に地上軍を派遣をすると、それこそベトナムの二の舞になりかねない。アメリカの出方は難しいぞ。
<9月16日>(日)
○初めてニューヨークに着いたときのことは克明に覚えている。ドキドキしながら出たJFK空港の出口でイエローキャブを拾い、黒人の運転手とよく分からない英会話を応酬し、摩天楼がくっきりと見えてきたときの感動。橋を渡ってマンハッタンに入ると同時に、街を彩るさまざまな原色が踊るように目に飛び込んできたこと。
○闇雲に歩いたメトロポリタン・ミュージアムとグッゲンハイム。ブロードウェイで見た『キャッツ』。カメラを下げて交差点を渡ろうとしたら、見事に背中にケチャップをかけられたこと(古典的なモノ取りの手口)。サウスストリートシーポートのにぎわい。ワールドトレードセンタービルももちろん登った。
○夕方頃だったと思う。ダウンタウンをバッテリーパークの方向に向かって歩いている最中に、不思議な経験をした。ちょうど新宿副都心を少し外れた西新宿の雑踏のような場所で、だんだん街並みが物騒になってきたので、そろそろ引き返そうと思うのに足が止まらない。「この先にハドソン川が見えるはずだ」などと思いつつ、体のデカイ男とすれ違ったりするたびに、初心者の旅行客が出会うさまざまな災難が脳裏を走って怖かった。
○そんな状態で、時差ぼけの頭に浮かんだのは妙なことに「ふむ、これが他力本願ということか」ということだった。かんべえの先祖は、富山にある浄土真宗のお寺さんである(福井県の吉崎御坊というところが発端なのだそうだ)。もとより信仰心は薄い人間なのだが、さすがに親鸞上人の「他力本願」と「悪人正機」という言葉くらいは知っている。で、勝手ながらこの瞬間に、「他力本願」のコンセプトを理解した、と思ったのである。
○非力な日本人が一人でニューヨークの裏通りを歩いていた場合、わが身を守るすべはないに等しい。それ以外の場所でも、「自分の身は自分で守れる」などという状況は滅多にあるものではない。武術百般をマスターした人間も弾丸にはかなわないし、たとえ銃器で武装していたところで複数の敵に取り囲まれたら勝ち目はない。今この瞬間に自分が安全であるということは、自分以外のなにものかによって守られているからではないか。それはNYの路地裏でも、東京の繁華街でも、アマゾンの奥地でも同じこと。そう考えてみれば、地球上に怖いところなんてないし、怖くないところもない。自分が生きているのは、自分以外の誰かのおかげなのだ。自分の力なんて当てにしちゃいけない。
○この解釈が正しいのか、間違っているのかは知れないが、自分なりの「悟りの瞬間」であったと思っている。ひとから聞いて理解したのではなく、見知らぬ土地を一人出歩いて感じ取ったというところに、私にとってのありがたみがある。そんなわけで、以来、何か困ったことがあると「他力本願」だと言い聞かせることにしている。
○ふと思い出した。あの場所からは、少し離れてWTCがそびえているのが見えた。あのビルの中にいた数千人は、邪悪な意図によってこの世から消えた。いつも通りオフィスで仕事をしていた人々は、民間機が突っ込んでくるとは夢にも思わなかったに違いない。飛行機の乗客も同様。ハイジャックなら最悪、身代金を払えば命は助かるものなのに、道連れにされてしまった。無差別テロというとんでもない「他力」が働いてしまったのだ。
○われわれは他力によって活かされている。それはいい。せいぜい感謝しよう。では他力によって殺されたとしたら。たとえば自分がビル内に居たらどうだったか。分からない。たぶん「これも運命だから」とは思わなかっただろう。せめて「誰が」「なぜ」こんなことをしたのか、知りたいと思うだろう。それさえなしに寛容な気持ちになれるほど、私は悟った人間ではない。
<9月17日>(月)
○危機の発生は指導者のクオリティを試す。アメリカ大統領でいえば、ケネディはキューバ危機を乗り越え、カーターはイラン大使館人質事件で対応を誤り、クリントンはオクラホマ連邦ビル爆破事件という事件を乗り越えた。深刻な危機を前に、指導者が頼れるものは言葉の力だけである。真珠湾攻撃を受けたルーズベルトは、これは"Day
of infamy"(屈辱の日)であると訴えた。湾岸戦争のときのブッシュ父は、サダム・フセインに向かって"This
will not stand!"(こんなことは許されない)と大見得を切って拍手喝さいを得た。余談ながら、この場合の"Stand"は、よく漫画のチャーリー・ブラウンが"I
can't stand it!"(ヤリキレナイ!)と言うのと同じ用法。
○てなことで、ブッシュ大統領が今度のテロ事件に対してどんな名文句を吐くのか、気になって仕方がないのです。目下のところ、その最有力候補はこれだと思います。以下の全文はここに出ています。
Grabbing a bullhorn, Bush told the
chanting, cheering crowd, "I can hear you. The rest
of the world hears you. And the people who knocked down these
buildings will hear all of us soon."
"The nation sends its love and compassion to everybody who's
here. Thank you for your hard work. Thank you for making the
nation proud, and may God bless America," Bush added,
raising his arm.
The workers responded with an resounding, energetic chant of
"USA, USA!"
○ところはニューヨーク市の復興の現場。状況は阪神大震災直後の神戸市とそっくり。現場を訪れたブッシュ大統領は、その場の作業員と肩を組み、拡声器を手に周囲の人々に向かって語り始めた。そこで飛び出したのがこのセリフ。「みなさんの声は聞こえていますよ。世界中の人々が、あなた方の声を聞いています。そしてこのビルをぶち倒した連中にも、じきにわれわれの声が届くことでしょう」
○感極まった一人が、ここで"God bless
America!"と叫んだ。これまでのプロンプターを読む演説ではなく、ごく自然な雰囲気の言葉だったことが臨場感を与えたのだ。期せずして、周囲の作業員たちから"USA,USA"の大合唱が始まった。このシーンは、週末のCNNテレビでは何度も何度も繰り返して放映された。
○災害現場を片付け、生存者を探すという辛い仕事に取り組んでいる人々に対し、こんなに見事なねぎらいの言葉があるだろうか。ブッシュもやるじゃねえか、と感心しましたな。でも日本の報道では、この最初の"I
can hear you."の部分をカットして、後半の「この建物を壊したテロリストたちにも、この声を聞かせてやろうじゃないか」みたいな訳をつけて流していたな。無粋な話である。
<9月18日>(火)
○昨日の"I can hear you."について、米国在住の読者から以下のようなご指摘をいただきました。深謝申し上げます。
私の記憶力とリスニング力が確かであればなのですが、これはブッシュが演説しているときに"I
can't hear what you say"と騒音でブッシュの演説がよく聞こえないと文句を言った聴衆の消防士に対して、ブッシュがとっさに機転をきかせて"I
can hear you"と「私にはあなたの声が聞こえるよ」と言ったものだと思います。その後に「世界中の人々があなたの声を聞いている」と続けたところなどは、ブッシュは頭が悪いなどと言われていますが、実は頭の回転は意外といい、ということを見せた場面だと思います。
○なるほど。ということは、やはりハプニング的に飛び出した名セリフ、ということになります。ふだんはプロンプターの文字を追いながら演説しているように見えますが、ブッシュ大統領侮るべからず、ですね。
○ニューヨーク市の復興はたいへんな難事業のようですが、こういうときのアメリカ人の対応には感心させられます。日本人は阪神大震災の際に、外国人が驚くほどの冷静さで災害を耐え忍びましたが、アメリカ人の場合は各人が積極的に復興に参加するところに特色があるようです。今日聞いた話では、テロが行われた数時間後には、ボストンではすでに献血運動が始まっていたとか。ピンチが訪れると、「私に何かできることは」と各人が自主的に動き出すところが、アメリカ社会の強みであり、魅力であると思います。
○ふと、ここで筆者の連想は100年前に飛ぶのです。幸徳秋水(1871―1911)は、明治期の社会主義者であり、社会主義政党を結成したり、足尾鉱毒事件での田中正造の直訴文を代筆したり、平民新聞を創刊して日露戦争に反対した活動で知られています。しかし秋水は1905年に渡米した後は、社会主義者から無政府主義者に変身し、ゼネストによる直接行動論を主張するようになります。最後は、天皇に対するテロ行為を企てた容疑で処刑された話は有名です(いわゆる大逆事件。冤罪説も根強い)。
○米国滞在中に、秋水はロシアの社会革命党員らから、普通選挙無用論や過激な暗殺主義を吹き込まれたようです。それともうひとつ、彼の思想形成に大きな影響を与えたらしいのが、1906年4月18日にサンフランシスコを襲った大地震でした。地震で破壊された街では鉄道や郵便が無料になり、食糧が無償で配給され、人々は当然のようにボランティアに励んでいました。秋水はここに無政府状態の理想を見たつもりになり、「これが無政府共産だ」と思ったようです。――『明治流星雨』(関川夏央/谷口ジロー)の解釈による。
○察するに秋水は、今のニューヨークで繰り広げられているのと同じ光景を見たのでしょう。だがそれは無政府状態などではなく、災害によって自分たちの社会が崩壊することを食いとどめる懸命な姿であったわけです。何もない大地に社会を建設したアメリカにおいては、制度やインフラを作り、維持するのは政府の仕事ではなく、そこで生活するひとりひとりの仕事でした。自分たちが手を抜いたら最後、この国はどうなるか分からないという思いが、アメリカ人のDNAには今も残っています。ゆえにアナーキズムやテロリズムは、アメリカ人がもっとも嫌う思想にほかなりません。
○100年前の日本を代表するインテリであったはずの幸徳秋水が、この辺をまったく勘違いしてしまったというのは、なんとも興味深い事実だと思います。何百年も前から国があって「お上」がいた日本人の感覚では、たしかに理解しがたいところがあるのでしょう。とはいえ、今度の事件に対しても、怪しげな解説や突拍子もない言辞を振りまく人は少なくないような気がします。
<9月19日>(水)
○以下は本日、2つのルートから筆者の手元に届いた「アフガニスタン人が書いたメール」です。相当な勢いで流通しているようですね。これを載せるかどうかはずいぶん迷いました。なにしろ筆者は、昨晩この問題を議論している最中に、政治ジャーナリストK氏から「好戦派」と呼ばれてしまったような考えの持ち主です。とはいえアフガン爆撃に異議あり、というこの論旨は傾聴に価するとと思います。少しでも多くの人の眼に止まることを祈って掲示しておきます。
Subject: Afghanistan
I thought the following contained some of
the wisest and most insightful words I have heard since this
tragedy began and about how we might respond.
...Be forewarned: the conclusions are frightening.
It was written by an Afghani - American writer and Scholar named
Tamin Ansary. A friend of the Dean at Swathmore University. Who
say's " He is one of the most brilliant people I know. When
he writes, I read. When he talks, I listen".
Here is his take on Afghanistan and the whole mess we are in.
I've been
hearing a lot of talk about "bombing Afghanistan back to the
Stone Age." Ronn Owens, on KGO Talk Radio today, allowed
that this would mean killing innocent people, people who had
nothing to do with this atrocity, but "we're at war, we have
to accept collateral damage. What else can we do ?"
Minutes later I heard some TV pundit discussing whether we
"have the belly to do what must be done." And I thought
about the issues being raised especially hard because I am
from Afghanistan, and even though I've lived here (America) for
35 years I've never lost track of what's going on there.
So I want to tell anyone who will listen how it all looks from
where I'm standing. I speak as one who hates the Taliban and
Osama Bin Laden. There is no doubt in my mind that these people
were responsible for the atrocity in New York. I agree that
something must be done about those monsters.
But the Taliban and Ben Laden are not Afghanistan. They're
not even the government of Afghanistan. The Taliban are a
cult of ignorant psychotics who took over Afghanistan in 1997.
Bin Laden is a political criminal with a plan. When you
think Taliban, think Nazis. When you think Bin Laden, think
Hitler. And when you think "the people of Afghanistan"
think "the Jews in the concentration camps."
It's not only that the Afghan people had nothing to do with this
atrocity. They were the first victims of the perpetrators. They
would exult if someone would come in there, take out the Taliban
and clear out the rats nest of international thugs holed up in
their country.
Some say, why don't the Afghans rise up and overthrow the
Taliban? The answer is, they're starved, exhausted, hurt,
incapacitated, suffering. A few years ago, the United Nations
estimated that there are 500,000 disabled orphans in
Afghanistan--a country with no economy, no food. There are
millions of widows. And the Taliban has been burying these
widows alive in mass graves. The soil is littered with land
mines, the farms were all destroyed by the Soviets. These are a
few of the reasons why the Afghan people have not overthrown the
Taliban.
We come now to the question of bombing Afghanistan back to the
Stone Age. Trouble is, that's been done. The Soviets took care of
it already. Make the Afghans suffer? They're already suffering.
Level their houses? Done. Turn their schools into piles of
rubble? Done. Eradicate their hospitals? Done.
Destroy their infrastructure? Cut them off from medicine and
health care? Too late. Someone already did all that.
New bombs would only stir the rubble of earlier bombs.
Would they at least get the Taliban? Not likely. In today's
Afghanistan, only the
Taliban eat, only they have the means to move around.
They'd slip away and hide. Maybe the bombs would get some of
those disabled
orphans, they don't move too fast, they don't even have
wheelchairs.
But flying over Kabul and dropping bombs wouldn't really be
a strike against the criminals who did this horrific thing.
Actually it would only be making common cause with the Taliban by
raping once again the people they've been raping all this time So
what else is there ? What can be done, then ? Let me now speak
with true fear and trembling.
The only way to get Bin Laden is to go in there with ground
troops. When people speak of "having the belly to do what
needs to be done" they're thinking in terms of having the
belly to kill as many as needed. Having the belly to
overcome any moral qualms about killing innocent people.
Let's pull our heads out of the sand. What's actually on
the table is Americans dying. And not just because some Americans
would die fighting their way through Afghanistan to Bin Laden's
hideout. It's much bigger than that. Because to get any
troops to Afghanistan, we'd have to go through Pakistan. Would
they let us? Not likely. The conquest of Pakistan would have to
be first. Will other Muslim nations just stand by? You see where
I'm going.
We're flirting with a world war between Islam and the West. And
guess what: That's Bin Laden's program. That's exactly what he
wants. That's why he did this. Read his speeches and
statements. It's all right there. He really believes Islam
would beat the west. It might seem ridiculous, but he figures if
he can polarize the world into Islam and the West, he's got a
billion soldiers. If the west wreaks a holocaust in those lands,
that's a billion people with nothing left to lose, that's even
better from Bin Laden's point of view.
He's probably wrong, in the end the west would win, whatever that
would mean, but the war would last for years and millions would
die, not just theirs but ours. Who has the belly for that?
Bin Laden does. Anyone else?
Tamim Ansary
要旨:
アフガニスタンが石器時代に戻るまで爆撃せよ、という声が上がっている。私は米国に来てもう35年になり、タリバンもビン・ラディンも嫌いだ。そして、彼らがNYの事件に責任があることは明白である。
だが、タリバンもビン・ラディンも「アフガニスタン人」ではない。タリバンはナチス、ビン・ラディンはヒトラー、そしてアフガニスタン人は収容所のユダヤ人のようなものだ。アフガニスタンの人々は反乱する気力もないほど、飢え、疲れ、傷ついている。50万人の孤児と何百万の未亡人、国には経済も食糧もない。この国を爆撃したところで、もう壊すものがないほど既に荒廃している。ソビエトがとっくにやっているのだ。結局なんの罪もない「アフガニスタン人」が大勢死ぬことになってしまう。
問題を直視しよう。アメリカが本当にラディンの身柄拘束の腹を決めているのであれば、実は「地上戦」しかない。しかしそれにはパキスタンを通る以外に道がない。すんなり通してくれるだろうか。無理だろう。だから結局イスラム全体を敵にしなければならない。
ラディンが計画しているのは、「イスラム対西側」の戦争を勃発させ、イスラムが勝利することだ。もちろん西側は勝つだろう。だが戦争では何百万もの人々が死ぬし、その中にはわれわれの兵士も含まれている。こんなことをするガッツが本当にアメリカをはじめ、西側にあるのだろうか?少なくともラディン氏にはそのガッツがあるようだが。
<9月20日>(木)
○昨夜でアクセス件数が13万件を突破。「半月で1万件」というペースになりました。今年は総裁選、参議院選挙、靖国論争と、事件があるたびにこのHPのアクセス件数は増えてきました。しかし今度のテロ事件は気が重い。今週号も筆が進みません。というより、状況はドンドン変化するし、自分の考えもコロコロ変わる。メーリングリストや掲示版を通じて、いろんな意見が飛び交っているものだから、ついつい気になったりして焦点が定まらない。
○今度の事件で活況を呈しているのはウチだけではありません。岡崎研究所のHPが1日1000件ペースになっているとのこと。かんべえも毎日確認していますが、今月から始まった「なんでも日記」ではこの問題に関する議論が飛び交っています。海外からの意見も多く紹介されているので有益です。それから宝珠山さんのHPではテロ問題のコーナーを作っていて、ここも資料満載で便利です。経済と違って、安全保障問題を扱っている人は少ないので、これらのサイトは貴重です。
○「バランスオブパワー(安全保障)とバランスシート(経済)の両方が分かるアナリスト」でありたいと思います。そうでないと、今度のような事件には無力です。で、来週号はどうしよう。あー時間がない!
<9月21日>(金)
○ということで、なんとか今週号が書けました。ふう。
○考えてみれば、9月12日からずっと連続してテロの話を追いつづけています。さすがに疲れてきますな。思えば9月11日当日の夜は、先崎学八段の棋譜を読みながら寝ていました。なんだか遠い昔のことのように思えるけど、わずか10日前のことに過ぎない。将棋の本は、ベッドの上でずっとほっておかれている。それにしても先ちゃんの将棋は、喜怒哀楽がゆたかで楽しいのだ。
○今から読み返して見ると、当不規則発言は9月11日以前は話題を探すのに苦労している。アニメの歌(9/2)とか、名前の順番(9/8)とか、しょうもない話も書いている。でも、そっちの方がかんべえの本領という気がしないでもない。その方が書いていて楽しいし。
○最近、この「溜池通信」を知ったという方は、パラサイトの本棚の中の「フィクションはタイトルで泣け」のような駄文や、懐かしの本棚の中の「かんべえと官兵衛」対談シリーズのようなオタク談義も覗いてみてください。テロの話ばっかりしていると、気持ちが暗くなりますので。
<9月22〜23日>(土〜日)
○「姉川の合戦」を思い出しました。織田信長と徳川家康の連合軍が、浅井長政と朝倉義景の連合軍と、北近江の姉川をはさんで戦ったという、戦国時代でもめずらしい「2対2」の合戦です。浅井長政は、もともと信長が妹お市の方を嫁がせ、同盟していた相手。ところが信長は、長政との約束を破り、浅井氏と長年の友好関係にあった越前の朝倉氏を攻撃した。浅井氏は寝返ってその背後を急襲。信長は即座に逃げて難を逃れるが、生涯最大のピンチを迎える。
○浅井長政は居城である小谷城という堅城に篭っている。そこで信長は周囲の町を焼き払って挑発する。非戦闘員を攻撃しているわけだが、ま、時代が時代だから「何でもあり」なわけ。たまらず長政は城から出てくるし、友軍の朝倉軍も姉川の北側に展開する。信長は川の南側に展開する。そこへ救援に駆けつけたのが徳川家康軍。ここでこんな会話があったと伝えられている。(記憶に頼って書いているので、その点はご勘弁を)
信長:すでに合戦の陣立ては終わっている。家康殿は後詰に回られよ。
家康:これは異なことを。この家康、三河から駆けつけてそれでは武士の面目がたちません。
信長:それでは先鋒を受け持たれてはどうか。
家康:いや、ここはたとえば私一手で朝倉軍と当たりとうございます。
○むちゃくちゃな話である。兵力は信長軍2万3000と家康軍8000くらいだというのに、浅井軍より多い朝倉軍を全部任せてくれ、というのである。信長もずるい。わざわざ三河から呼びつけておいて、「後詰でいい」なんてわけがないのである。でも、家康が自発的にいちばんキツイ仕事を志願してくれたので助かった。しかも戦争の結果は、徳川軍の大奮闘で織田方が勝つ。信長はラッキーした。
○なんで家康はそこまで信長にサービスしたのか。戦国史を振り返ってみると、織田=徳川同盟はたいへんな不平等条約である。たとえばこの直後に家康が武田信玄の攻撃を受けたときに、信長が派遣した援軍はわずかに3000である。おかげで三方が原の合戦で徳川軍は大敗する。それでも家康は信長に尽くし続ける。後年のタヌキオヤジが、若い頃は素直で愚直な好青年だったとは考えにくい。なんでそこまで自己犠牲を続けたのか。
○信長は桶狭間で今川義元の首を取った。おかげで家康は独立できた。その恩はたしかにある。だがそれが原因ではないだろう。信長は尾張、美濃、伊勢を領土として、足利将軍を擁立して南近江、山城、大和、攝津までを支配下においている。家康は三河だけ。そういう力関係を考えれば、何でも言うことを聞いて信用を勝ち得ておく必要があったのだだろう。姉川の合戦は、信長のピンチが目に見えていただけに、家康としては恩の売りどころだった。つまり家康は信長の信用という資産を、底値で買ったのである。
○話は変わって現代。小泉さんはかつて、「YKKは友情と打算の二重構造だ」という名言を吐いた。これは信長と家康の関係にもそのまま当てはまる。同盟という言葉は、せんじ詰めるとこの2つである。友情と打算、その両方がなかったら、長い関係は不可能。さて、今回の米国の軍事行動に対し、世界各国はどんな友情と打算を示しているのだろう。
○米国の軍事行動に対し、「ついていきます、どこまでも」と宣言しているのは英国と豪州だけである。この両国は、「アングロサクソンのよしみ」があるだけでなく、ベトナム戦争でも湾岸戦争でも、かならず米軍と行動を共にすることが国益だと明快に規定している。英国は米国との「特別な関係」を外交上の武器にしている。あんまり知られてないことだが、「米英安全保障条約」みたいなものは存在しない。条約なんぞ不要な関係なのである。それがあるから、国際社会で大きな顔をしていられる。豪州は、自国の資源や農産物を米国に買ってもらわないと困る。機嫌を損じることができない、という打算がある。どうせ兵を出すなら、あとから嫌々出すより、スパッと最初から出したほうが印象はいい。
○独仏などもテロを非難し、米国支持を明確にしている。この友情は素直に信じていいだろう。だが、独仏には何百万というイスラム移民がいることも忘れてはならない。武力行使について、微妙な点では口を濁しているのもやむを得ぬところだ。NATOは集団的自衛権を行使する構えである。「コソボの恩義」を考えたら、無理の無いところだろう。なにしろ欧州には、ユーゴのような地域紛争を鎮圧する軍事力がないのである。米軍の助けがなかったら、NATOはやっていけない。ここでイヤなそぶりを見せようものなら、「米軍は欧州から引き上げる」と言われてしまうかもしれない。それは困る、という打算がある。
○中国とロシアの支持も一筋縄ではない。中国は国内にイスラム原理主義勢力を抱えている。テロだって怖い。これを機会に、米国がイスラム・テロ・ネットワークを叩いてくれるのは大賛成だ。でも多国籍軍に兵を出せといわれると、人民解放軍が米軍の指揮下に入るのも都合が悪いので、国連の決議が必要だ、などと条件闘争をするだろう。ロシアも同様で、中央アジア諸国に原理主義が拡散するのがイヤだ。加えてチェチェン人を牽制する効果もある。ゆえにタリバンがつぶれてくれたら、こんなにありがたいことはない。ただし国内には「アフガン症候群」の元兵士たちが大勢いるので、軍隊を出してくれといわれるとちょっと困る。
○要するに、皆さん、言葉ではきれいなことを言うけど、腹の中では不純な動機をいっぱい抱えている。純粋な友情も、純粋な打算もないのが国際政治というものだ。では、そこで日本はどうするのよ、という話になる。
○10年前の湾岸戦争と比較する人が多い。湾岸戦争では石油やシーレーンの問題があったけど、今回はそこまで切羽詰ってはいない。だから日本には、米国を支援する切実な動機がないという見方もできる。しかし、湾岸戦争のときと決定的に違う点がある。それは「今の日本経済は、10年前と違って崩壊寸前だ」ということ。
○湾岸戦争のとき、日本は130億ドルの財政支援をした。当時の米国は、単年度の財政赤字が3000億ドル程度もあったので、これはありがたかったはずである。だが、今は違う。ブッシュが議会に200億ドルの予算を要求したら、議会は400億ドルの支出を認めた。この10年で、米国の財政事情はむちゃくちゃよくなったのである。おそらく、今回は日本に対する財政支援の要求はないだろう。仮に「100億ドル出します」と言っても、「フン」という感じだろう。それに、日本政府にカネがないことはもう有名である。ゆえに今度の事態で「カネを払って済ます」というオプションは最初から存在しない。
○その一方、懸案の不良債権処理にしても、米国資本が乗ってこなかったら絶対に解決は不可能だ。米国経済が蘇らないことには、日本経済の再生もない。悲しいかな、この10年で日本経済はそこまで転落したのである。だからといって、過去を反省してももう遅い。ここで米国政府に見離されたら、もうわれわれに明日はない。ここでできる限りのことをして、「日本は役に立つ同盟国だ」と思わせなければならない。
○今の米国は、姉川の合戦のときの信長のようにつらい立場である。誰が本当の友人かは、苦しいときにこそ分かるというではないか。ここで助けないでどうするのよ、と私は言いたい。それは日本としての友情でもあり、打算でもある。
<9月24日>(月)
別冊も? われ泣きぬれて なめこ汁
○読み人はニューズウィーク日本版編集部のDさん。10年前の湾岸戦争で、連日の徹夜作業に悲鳴を上げていたところへ、「別冊も行くぞ〜」といわれ、当時流行っていたレトルト式のなめこ汁を片手に詠んだといへり。おそらく世界中のジャーナリストが、同じような思いをしているだろうなあ。Dさん、今回もお疲れ様です。(読んでないと思うけど)。
○ネット上の個人サイトも、この問題で白熱しています。かんべえの友人の間では、田中裕士さんがNYから帰国。その入れ替わりに伊藤洋一氏がNYへ。いずれもネット上でNYの見たまま情報を伝えてくれています。伊藤さんが帰ってきたら、「四酔人」の集まりをやりたいですね。ただし話題が話題だけに、酒抜きにした方がいいと思いますが。
○安全保障のプロ、長島昭久氏は9月22日分の「今日のひとこと」で、ただちに戦闘が開かれることはないだろう、という予測を説得力のある形で述べています。かんべえも同じ意見で、「明日にも空爆が始まる」みたいな話は眉唾だと思っている。米軍は伝統に従い、万全の兵力を展開するまでは動かないだろうし、それまでに最低でも1ヶ月やそこらはかかるだろう。その間に、日本は国論をまとめなきゃいかん。できるのか?
○加えていつも宣伝している岡崎研究所の「なんでも日記」、および宝珠山さんのテロ問題のコーナーもこの問題を取り上げていて、参考になります。
○湾岸戦争のときは、インターネットのように便利なものはなかった。これがどう影響するかもひとつの関心事ですね。
<9月25日>(火)
○今宵は同期会で痛飲。22人が集合。飲んで盛りあがるのは普通のことなれど、会合が成立するまでに、海外駐在員や会社を辞めて独立したり転職した仲間も含めて、合計で100本以上の電子メールが世界を飛び交う。事務的なものから長編大作まで、書き手の個性によってさまざまな文書が飛び交う。得難い経験である。
○とくに興味深かったのは、ジャカルタから届いた近況。かの地でもビンラディン・グッズが売れたり、爆弾騒ぎがあるなど、不穏な動きがあるとのこと。イスラムの教えに忠実だからというよりも、単なる跳ねっ返りの連中が、事件の影響を受けて騒いでいるらしい。悩ましいのは、アチェの独立派がアフガン・ゲリラから武器などの援助を受けていることで、両国の間には見えないつながりができているらしい。インドネシアの若者たちが、タリバンの呼びかけに応えて参戦するんじゃないかと、インドネシア情報部は眼を光らせているとか。なんともはや。
○さて、昨日に引き続き、この問題に関する有益な情報源のリンクを作っておきましょう。
●外務省 アフガニスタン情勢――http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/afghanistan/index.html
(基本です)
●読売新聞ニュース特集「米同時多発テロ」――http://www.yomiuri.co.jp/crash/index.htm
(読みやすくて便利です)
●ヤフー海外トピックス「米同時多発テロ」――http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/terrorism_against_us/
(また今度もお世話になります)
●ジェトロ提供「米国テロ事件関連情報」――http://www.jetro.go.jp/se/j/terro.html
(本来は有料情報なのを無料にして提供中。有益です)
●ビデオニュース・ドットコム――http://www.videonews.com/
(神保さん、頑張ってますね)
●Foreign Affairsのテロ関連論文一覧――http://www.foreignaffairs.org/home/terrorism.asp
(懐かしのハンチントン論文ももちろんリンクしてまっせ)
●The Brookings Institutionのテロ特集――http://www.brookings.edu/terrorism/
(軍事から経済まで、優良シンクタンクが幅広くご案内中)
○今日、感心したのが日経ビジネス9月24日号の報道。日本のマスコミの良心はここにあり、という感じ。これを見なかったら、あるいは何が良心かも気づかないままでいたかもしれない。ご一読をお勧めします。目次はこんな感じ。
http://nb.nikkeibp.co.jp/nb/010924/index.html
○阪神大震災やオウム事件がそうだったように、今度の事件は幾多のジャーナリストを鍛えるきっかけを作っているようだ。「懸念される日本経済への影響」とか、「アメリカの対日要求に応えられるか」みたいな惰性の記事を作っている媒体は反省してもらいたいな。
<9月26日>(水)
○昨日のリンク集にもういっちょ追加。これはなかなかのものですぞ。
●アフガニスタン現代史 ――http://www.mine.ne.jp/a-rans/afghan/index.html
(らくちんさんの推薦。勉強になります)
○今日は同じ内容のメールを2箇所からもらいました。皆さんの元にも、こんなのが来てませんか?
NYのWTCへ突っ込んだ最初の飛行機の便名は、Q33
NY行きでした。
Q33 NY の文字をワードなどのソフトにコピーし、
文字の大きさを48前後に大きくして下さい。
そして、フォントを「Wingdings」に切り替えると。。。。。
○ちなみに文字の大きさ(フォント数)は20以上あれば十分です。この"Q33NY"というのがくせものでして、別の方から来たメールでは、「ビルの住所がQ33でした」になっている。もちろんどちらも嘘です。こんなメールに「恐ろしい」などという表題をつけて来よって、先崎君も修行が足らんわ。かんべえはすぐに謎ときに成功したぞ。
○簡単な話なんですが、WORDでWindingsという字体を使うと、「絵文字」ができるようになっているのですね。A〜Zと0〜9、ついでに!〜)など、あらゆるキーを使って試してみてください。いろいろ面白い記号ができますぞ。たとえば「3」はビルディングの絵になるから、「33」はツインタワーの絵になるわけ。そのほか、「6」で砂時計になるとか、「$」はメガネになるとか、「J」はニコちゃんマークとか、いろいろあって飽きません。大文字と小文字でもちゃんと違います。
○それからWebdingsという文字でも同様な変化があります。ここにまとめておきました。長年WORDを使っているけど、こんなの初めて知りましたぞ。
<9月27日>(木)
○ウチの社内でも、マジで「Q33NY」に驚いている無垢な方々を発見してしまいましたな。「不規則発言」を読んでればいいのにね。もうそんな古いネタは忘れましょう。新しいネタを紹介します。それはビン・ラディンの正体。実は意外な人物であった・・・・。衝撃の事実を受けとめる勇気のある人は、ココをクリック。
○さて、本日のワシントンポスト紙には日本人有志による意見広告が掲載されました。PDFファイルにしたものをここに掲げておきます。America, we are with you. つまりあのテロ事件に対しては、日本人も悲しみ、怒っているんだよ、という呼びかけです。下に並んでいる小さな文字は、この広告に賛同して30ドルを払った人々の名前。よくよく見れば、堺屋太一、寺島実郎といった名前が見つかると思います。16段目の中央からやや右側には、不肖"Kanbei"という名もございます。
○スポーツ欄で掲載されたそうですが、反響は大とのこと。ここに記載してある電話番号には、「こんなに大勢の日本人が、米国のことを思ってくれてるなんて、涙が出るほど嬉しかった!」とか、「これまでは、奇襲攻撃=パールハーバーと不用意に使っていたけれど、友人である日本人の心の痛みを考えると、これからは使わないようにする」といったアメリカ人の声が寄せられているそうです。なんでも今朝のNHKニュースで紹介されたそうなので、ご覧になった方もおられるかもしれません。
○とはいうものの、であります。こういう意見広告にお金を出そうとか、まったく同感だ、という日本人は、おそらくかなりの少数派なのだろうと思う。毎日、溜池通信にアクセスするような人はともかく、電車の中で夕刊紙読んでるようなおじさんとか、保育園に子供を迎えに来ているようなおかあさんを捕まえて、「日本は対米協力すべきでしょうか?」と聞いたら、きっと拍子抜けするような返事がかえって来るのでしょうな。
○今日は秋の臨時国会が開幕。論戦の行方次第で、小泉首相の対米公約は空手形になる。なんとも心もとない今の日本。てなことをのんびり書いている暇はないのだ。今週も木曜夜が執筆の山場になってしまったのだもの。頭が痛い。
<9月28日>(金)
○ちょっと意地悪な想像ですが、昨日のような意見広告を、ニューヨーク在住の日本人がNew
York Timesに掲載することは可能か、ということを考えてみました。たぶん難しいでしょうね。
○Washington Postの全面広告の費用は8万ドル。ただし昨日のような意見広告であれば、値段は2万ドルまで下がるのだそうです。ゆえに一人30ドルを700人から集めれば採算は取れる。New
York Timesの広告掲載料はそれよりも高いでしょうが、住んでいる日本人の数はワシントンより一桁は多い。だからお金集めは楽かもしれない。問題は意見の集約ができるかどうか。なにしろNY在住の日本人というと、坂本龍一さんのように「報復行動に反対」という人もいるわけなので、America, we are with you.というところでまとまらないだろう。
○ワシントンは中心部だけでいうと人口60万人くらいの小ぶりな街です。道を歩いていると、知り合いに出くわします。住んでいる日本人は、公務員、企業の駐在員、金融関係、マスコミ、医者といった職種に集中していて、生活水準や考え方はそんなに違わない。しかもいろんなネットワークが張り巡らされている。顔の広い人が声をかければ、たちどころに人が集まるというコミュニティがある。あの意見広告ができていく過程は、いかにもワシントンらしい風景だっただろうと思う。
○察するにワシントンに住んでいる日本人は、ほぼ全員が「顔の見えない日本」というパーセプションに居心地の悪い思いをしている。これはもう昔からずっと同じ。今度のようなことが起きると、「ああ、何とかしなくちゃ」という気持ちになるのは、すごくよく分かる。その一方で、「日本に居る人たちは、こういう焦燥感をまったく理解してくれないだろうな」ということも見当がつくので、ますます苛立ってくる。
○湾岸戦争のときに聞いた話だが、ワシントンから「東京サイドは国際情勢が分かっているのか!」と声を荒げると、向こうからは「そっちは国会情勢が分かっているのか!」と怒鳴り返されたという。現地と本国の板ばさみ。だから長くワシントンに住んでいると、もともとは親米派だった日本人が、どんどんラジカルになったりシニカルになったりする。つらい話である。
○かんべえが「しんべえ」(親米)なのは、ワシントンに住んでいた期間が短かったからかもしれない、とふと思いつきました。
<9月29日>(土)
○先日、新橋駅からゆりかもめで職場に向かう途中、車内にいたカップルの会話。
「俺さ、今日7000円しかないんだわ。昼は1000円以下のところでいい?」
「えー、なんで」
「バイト代、はいんないんだもん」
○思わずしげしげとご両人の顔を見てしまいましたな。これで女の子が美人だったら憮然としたかもしれないが、なんというか「どっちもどっち」みたいなカップルである。これが本当に不思議なことなのだが、ワシはお台場に遊びに来るカップルに美男美女を見たことがない。カネのない若者が、おしゃれしないで遊びに来て、マタ〜リするところなのである。
○それにしても、あっけらかんと「カネがない」と言えるのは、若いっていいなあ。会社に着いてから、この話を周囲の中年男たちにすると、皆さん揃って「ええなあ」と言う。皆、財布の中に7000円よりはたくさん入っていそうだし、株価や不動産価格に一喜一憂していたりする。それでもって、若い女性にはもう何年も縁がなさそう。少なくとも「カネがない」とは、もう何年も口にしたことがないような人たちである。
○お台場に来る人の中では、この手のおじさんサラリーマンは少数派である。だから周囲の風景から浮いてるし、何となく居心地が悪そうにしている。実は若さをうらやんでいたりもするのである。
<9月30日>(日)
○新聞のスポーツ欄は、そこだけが人間の偉業を伝えるスペースである、という。今週末はたくさんの偉業がありましたね。さて、どれから行きますか。
○高橋尚子はベルリン大会で2時間20分の壁を破った。やれ太り過ぎだの、目立ち過ぎだの、外野のうるさいのを乗り越えての有言実行。あんたはエライ!
○イチローは新人選手の最多安打の記録を超えた。それってシューレス・ジョーの記録ですぞ。それがいかに偉大なことかは、『フィールド・オブ・ドリームス』を見返せばよく分かる。次の目標は、同じシューレス・ジョーが作った年間最多安打だ。
○『筋肉番付』のSASUKE。ケイン・コスギは雨の中のファイナルステージ、あとわずかのところまで登って滑落。男泣きの君を誰が責められよう。なんというか、つい見てしまうんだよなあ、この番組は。
○長嶋監督が引退。正しい決断だと思う。アンタの人気に頼っている限り、プロ野球に明日はない。しかし次が原監督ではなあ・・・来年のことをいえば鬼が笑うが、原監督の胴上げだけは絶対にイメージできないぞ。かくなる上は、阪神タイガースが岡田を監督に昇格させることですな。それならワシも来年はちゃんと応援しよう。
○今日のスプリンターステークスはトロットスターのレコード勝ち。秋のG1レースも始まった。スポーツの秋です。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki