●かんべえの不規則発言



2006年1月






<1月1日>(日)

〇あけましておめでとうございます。2006年の幕開けですね。本年もよろしくお願いします。(0:14)

〇朝から一杯気分で日経新聞を読んで、年賀状をチェックしてから、ついでとPCのスイッチを入れました。

〇会社におけるかんべえのこの季節の仕事の一つに「新年の挨拶のネタを考える」というのがある。ネタは国際情勢でも日本経済でも干支でもなんでもよく、なるべく人が感心して記憶に留めてくれるような話で、できればメデタイ話が望ましく、さらにいえば気の利いたジョークがあると評価が高い。ところがここ数年は、メデタイ話がなくて、ジョークにも苦労するようなことが多かった。以下のネタは日経新聞にも出たので、ご記憶の方も多いかと思います。

●今年の日本経済とかけてホールインワンと説く。その心は、ぱっとしない。

〇これをひねって、かんべえが作ったのが以下の作品。

●今年の日本経済とかけてラフからのアプローチショットと説く。その心は、「おーい、ピッチングウェッジを貸してくれ」「すいません、今はカネが貸せないんです」

〇当然、不採用であった。たしか99年頃のことであったと思う。今から思い出しても痛い。痛過ぎる記憶である。たしか紅白でモーニング娘。が「日本の未来は、世界がうらやむ」と歌っていて、ああ、ホントにそんな時代が来るのだろうか、などと思ったりもした。昨晩の紅白でも「ラブマシーン」を聞きましたが、何とも隔世の感がありましたな。どうでもいいことだが、仮面ライダーが出たのにはビックリしたな。

〇幸いなことに、今年は明るいネタを探すのに苦労しない年明けである。先行き不透明な話を探せばナンボでもあるが、ジョークのネタに苦しむ必要はない。むしろバブルが心配だという声さえある。ほんの数年前のシンドイ時期の記憶が残っているからこそ、強気論の足下が気になるのかもしれない。他方、この後どんなことがあっても、おそるるに足らずという気もする。

〇のどかな正月ではありますが、のどかでなかったここ数年の正月の記憶がある、という点が以前とは違う。贅沢を言ったらバチが当たりますな。(12:23)


<1月2日>(月)

ビデオリサーチ社のHPを見ると、一昨日の第56回紅白歌合戦の視聴率は、関東地区で第1部35.4%、第2部42.9%となり、前年から若干回復しました。詳しくは下記をご参照ください。

http://www.videor.co.jp/data/ratedata/program/01kouhaku.htm 

〇とはいえ、このデータをよくよく見ると、北部九州と札幌では前年比マイナスが続いているのですね。福岡と札幌といえば、新しいものが最初に流行る場所として知られており、マーケティングの際のサンプルとしてよく使われる場所ですから、「紅白」というコンテンツの先行きが明るくなったようには見えません。逆に名古屋では久々の5割台復帰となっているのは、果たしていかなるシグナルであるのか。いろんな読み方ができそうです。

〇さて、「スキウタ」の募集から、みのもんた氏を司会に起用するなど、視聴率回復のために「何でもあり」で臨んだNHKとしては、とりあえず一安心というところでしょう。なにしろ不祥事は止まらないわ、受信料支払い拒否が増えるわ、政治家は民営化を唱え始めるわで、普通ならどうってことのない「地に落ちた紅白」も、経営を脅かしかねないリスクとなります。

〇それではNHKの経営努力は実ったのか。みのもんた氏は、個人的にはあんまり好きじゃないんですが、今回は頑張っていたと思います。今時の歌番組で、全部台本を作っているのはNHKくらいでしょう。最近の視聴者はそれが我慢できない。ところがNHKの現場は、全部の台本を作らないと我慢できない。みの氏はそれをぶっ壊そうと何度もトライしていましたね。本人としては不満が残る結果だったでしょうけどね。

〇素人考えなんだけれど、最近の視聴率競争でTBSが不調でテレビ朝日が好調なのは、トーク番組でも台本をキッチリ作ってしまう局と、行き当たりバッタリな局の差じゃないかと思う。なにせ「朝生」なんて、台本はA4で一枚だけでしたからなあ。打ち合わせは本番開始30分前だけだし。NHKやTBSのような優等生は、得てして真面目過ぎて失敗していることが多いような気がする。

〇もちろん紅白の場合、問題はほかにも一杯あるのであって、NHK特有の予定調和的な進行を壊すだけではどうにもならない面がある。それでもNHKの現場としては、「何が問題なのか分からない」という状況を脱して、「分かっているけど直せない」境地に達しているのではないかと思う。こういうときに必要なのは、「前向きの失敗」です。それで萎縮せずに冒険が続くようになると、いよいよNHKの改革は軌道に乗ったということになる。

〇まあ、それはまだまだ先のことでしょう。とりあえず今回の「紅白」視聴率底入れの最大の理由は、裏番組の出し物が昨年に比べて今ひとつだったお陰ではないでしょうか。なにしろ曙の対戦相手がボビー・オロゴンではねえ・・・・。


<1月3日>(火)

〇こんなHPをやっていると、「毎日、よく続きますね」なんてことを言われます。その都度、適当に返事をしてますが、最近になってやっと続いている理由が自分でも分かりました。それは「惰性でやっているから」でありましょう。

〇仕事を惰性でやることは、一般にいけないことだとされています。たしかに惰性でやっている仕事というものは、掃除でも洗濯でも、あるいは文章を書くことでも、クオリティが高いということはないでしょう。その反面、惰性でやっている仕事というのは、本人にとっては生産性が高いのです。なにしろ本人は、気合を入れずにやっているのですし、手抜きをするためのあらゆる手段を承知しているのですから。

〇日々、惰性でやっている仕事というものは、誰もが身に覚えがあるでしょう。では、仮にその仕事を止めることにして、止めたことによって得られる資源(時間やお金など)を使って、何かほかのことを始めるとしたらどうなるでしょうか。とりあえず、当面の生産性は非常に低いものになるはずです。仮にかんべえがこのサイトの運営を止めたとしてら、おそらく睡眠時間が1時間くらい増えるのが落ちでありましょう。だったら、とりあえずは惰性を続けるというのが得策というものです。

〇それでも人や組織は、ときに行動を見直す必要に迫られ、長らく親しんだやり方を変えて、惰性を打ち切らなければならないことがある。改革がなかなか軌道に乗らないというのは、やっている当人が「今のやり方を変えたくない」(惰性を維持したい!)と思うからでしょう。今のノウハウが無駄になるだけではなく、新しいやり方が再び惰性になるまでには、相当な時間がかかるに違いない。ということで、人はあれこれ理由を発明しては、抵抗勢力になるわけです。

〇かんべえもご多分に漏れず、会社の仕事のいくつかをリストラしたり、抵抗勢力になったりした経験があります。惰性を打ち切るときは勇気が要ります。今のところ、あんまり後悔してはおりませんけれども、それでも最近になって学習したことは「打ち切った惰性は元に戻せない」ことです。一度止めてしまうと、以前にやっていた仕事を、以前と同じような気楽さで回復することは不可能なのです。惰性って、実はものすごく効率がいいんですよ。

〇毎年、正月が来ると、「年賀状なんて、今年はもう止めよう」とか、「NHKは紅白なんてやめてしまえ」みたいなことを、誰もが簡単に口にします。その割りに、今年も年賀状は出しているし、紅白だって見てしまう。それは惰性以外の何ものでもありません。しかし郵政公社やNHKは、すごいノウハウを持っているのです。でもって、止めたら最後、2度と元へは戻せない。考えてみれば、正月の行事なんてほとんどが惰性みたいなものですけれども、惰性の偉大さを確認するにはいい時期かもしれません。

〇ということで、明日は仕事始めです。あ〜あ、と思いつつ、惰性で会社に出かけるのは、きっとアナタも同じはず。


<1月4日>(水)

〇今頃になって恐縮なんですが、麻生外務大臣の演説を読みました。これはよく出来ておりますね。下記ご参照。

●麻生外務大臣演説 

「わたくしのアジア戦略――日本はアジアの実践的先駆者、Thought Leaderたるべし」

平成17年12月7日 於:日本記者クラブ

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/17/easo_1207.html 

〇日本の外務大臣が、こんなConceptual Thinkingを示したという例はちょっと記憶にありません。とくに下記の部分は、麻生さんの得意満面な表情が目に浮かぶようです。

 ご列席の皆さん、日本とは第一に、アジア諸国にとっての「実践的先駆者」でありますし、またあらねばなりません。

 耳慣れない言葉が出てきたと思われたとしたら、これは近ごろのビジネス英語にいう「Thought Leader」という言葉の、わたくし流の訳語であるからです。

 「ソート・リーダー」とは、この言葉が生まれた米国ビジネス界での正確な定義はいざ知らず、わたくしに言わせれば、他人(ひと)より先に難問へぶち当たらざるを得ない星回りにある者のことです。難問であるからには、なかなか解くことができません。けれども解決しようとしてもがく、その姿それ自体が、ほかの人たちにとって教材となるような人――。そういう人を「ソート・リーダー」といいます。

 「成功のみならず、むしろ失敗例を進んでさらけ出す」タイプの人、国を指すのであって、「実践的先駆者」と訳さなければならないゆえんです。ただし、失敗をさらすには勇気がいる。日本にはそれだけの雅量があることを前提にしたうえでの話ですし、もちろん失敗ばかりでなく問題解決の手並み鮮やかなところも、できれば見せたいものであります。


〇日本という国は、19世紀からアジアの先頭を走ってきた。そのために「ナショナリズムの高揚」や「自然環境破壊」といった問題に最初に直面してきた。問題の克服には、かならずしも成功したわけではないが、それでも日本はアジア諸国にとって、「問題にいち早く直面しまた取り組むことによって、範を示す国であり続ける」という役割を担っている、と麻生外相は指摘します。日本という国に対する定義づけとして、これはなるほど今まで思いつかなかったアイデアです。

〇麻生外相は日本が直面した危機として、上記の2点とあとは「少子高齢化」のみを挙げていますが、エコノミスト的見地から言えば、ほかにも「エネルギー危機への対応」や「貿易摩擦への対応」、さらには「通貨切り上げへの対応」なども加えることができるでしょう。これら3点は、おそらく現在の中国が真剣に研究しているテーマでもあると思います。(その次に出てくるのは、きっと「金融不安への対応」であろうなあ)。

〇新しいコンセプトの用語を、ビジネス界から借りてきたという点もポイントが高いと思います。ちなみに"Thought Leader"という言葉について、Wikipediaが与えている定義は下記の通り。

Thought leader is a buzzword or article of jargon used to describe a person who is recognized among his or her peers for innovative ideas and demonstrates the confidence to promote those ideas. The term can also be applied to companies, usually small businesses.

According to commentators such as Elise Bauer, a distinguishing characteristic of a thought leader is "the recognition from the outside world that the company deeply understands its business, the needs of its customers, and the broader marketplace in which it operates."

〇この定義から行くと、たとえば「トヨタ自動車は、自動車業界のソートリーダーである」というのは当たり前すぎて不適切だけれども、「セブン&アイの鈴木会長は、流通業界のソートリーダーである」というとかなり本質に迫れるような気がします。単なるリーダーではなく、「ソートリーダー」と呼ぶからには、「たとえ小さくても、モノの道理をよくわきまえていて、他人がつい意見を求めたくなるような存在」でなければならない。周囲の誰よりも経験を積んでおり、私利私欲が薄く、自他に対して公正である、といったイメージもある。

〇牽強付会になるかもしれませんが、麻生外相はこんな風に言おうとしているようにも聞こえる。「中国はアジアのリーダー(領袖)になるかもしれないけれども、ソートリーダーにはなれないだろう。日本は単なるリーダーは目指さないけれども、アジアのソートリーダーになるんだぞ」。――これは目指すべき方向として、国内的にも十分に賛同を得られるアイデアであるように思います。

〇昔から日本外交というのは、「政府の現実主義と民間の理想主義」(入江昭)でありまして、政府がこんな風に理想を掲げるというのはきわめて稀なことだと思います。この演説、おそらく誰かの入れ知恵ではなく、本人のアイデアであるらしい。(でなきゃ「この言葉が生まれた米国ビジネス界での正確な定義はいざ知らず」なんて言葉は出てこない。ゴーストライターはこんな仕事はしないもんです)。今さらながらで恐縮なんですが、麻生外務大臣はなかなかやるじゃありませんか。


<1月5日>(木)

〇いろんな方から年賀状をいただきましたが、今年の最高傑作は三浦展さんから来たこれですね。

謹 賀 新 年 下 流 社 会
人 口 減 少 即 席 風 土
少 子 高 齢 格 差 拡 大
憲 法 改 正 団 塊 定 年
少 年 犯 罪 熟 年 離 婚
景 気 回 復 自 殺 増 加
株 価 上 昇 偽 装 建 築

〇縦読みしちゃダメですよ。お経のように、左から右へ素直に読んでくださいね。『下流社会』の著者は、2006年をこんな風に見ている、というお話でありました。

〇ところで、「株価上昇」といえば、昨年末にこんなメールをもらって愕然としちゃいました。

今年は非常に良い年でした。みずほの20億円小僧には及びませんが私も今年一年で2億円儲け
ました。50歳までに金融資産5億円貯めたら、もしかすると会社辞めているかも。

〇親しい相手とはいえ、かんべえさんもさすがムッとしましたな。2億円だなんて、『1985年』の印税はその100分の1以下でっせ。三浦さんの『下流社会』でも届かないでしょう。だいたいサラリーマンも、金融資産が億単位になってくると、それはもう完全に別次元の存在でありますな。ご同輩、友情にヒビが入りますぞ。と、こんな風にして、われわれの近くでも「格差拡大」が進んでいるのであります。

〇それだけでは済まないのです。お昼に「和喜」で久しぶりに会った富士ゼロックスのSさんまでもが、「最近ねえ、投資信託のお陰で毎月X万円入ってくるんですよ」などと言うではないか。さらに追い撃ちをかけるように、

「吉崎さん、株やってないの?」
「やってませんよ」
「でも会社で401Kはあるでしょ?」
「・・・・・・」(ギクッ!)
「僕ね、去年になってから株式中心の運用に変えたの。そしたらずいぶん増えたよ」

〇そうなのであった。401KをTOPIX連動型に変えようと思いつつ、ずっと債券運用のままで放置していたのであった。惜しい。悔しい。もったいない。2005年のかんべえの景気予測は、会心の出来とまでは申しませんが、かなりいい線行ってたことは、愛読者の皆さまはご存知でありましょう。でも、自分の資産を増やすことにかけては、この程度なのであります。

〇『下流社会』の中で三浦さんは、「下流」を作るのは能力ではなくて意欲の差だ、と指摘しています。まったく同感であります。自分の金融資産を把握する、できれば増やそうと努力する、というのは能力ではなくて、単に意欲の問題でしょう。意欲の差が、資産の差を拡大する。そして株高が格差を拡大するのであります。

〇えー、こんな風に自己の資産運用には、てんで意欲の乏しいかんべえではありますが、明後日の新春株式セミナーでは、主催者から銘柄の推奨までせよと伝えられております。今日、会社四季報を片手に、ちゃんと考えましたですよ。聞いてみたい方は、午後2時半過ぎに有楽町のよみうりホールまで。


<1月6日>(金)

〇時事通信社の新年互礼会で、「ナマ小泉さん」を見てきましたぞ。帝国ホテル3階の会場に颯爽と現れた小泉総理は、概略次のような挨拶をされました。(以下、記憶のみ)

ほかの皆さんはもう挨拶は終わられたと思いますが、新年といいますと「今年はどんな年になるか」という話が、皆さんお好きですね。

でも、予想というものは当たらないものです。5年前に小泉政権が始まったときに、まさかここまで持つなんて、誰も思わなかったでしょう?(爆笑)

昨日もやっておりましたが、野球評論家が30人もいて、昨年ロッテが優勝すると予想した人は誰も居なかったそうじゃないですか。

お正月の大学駅伝も、亜細亜大学が勝つと思っていた人はあまり居なかったと思います。

それでは2006年の政局はどうなるか。今年はかならず当たる予想がひとつだけあります。(笑い)

そう、それは今年9月に、小泉政権が退陣するということであります。(大爆笑)

幸い、皆さんのお陰で景気も上向いております。これを確実に軌道に乗せることが、今年の課題であります。

まさに「やれば、できる」。

私も「やれば、できる」の精神で、残りの任期を改革に突き進んでいく所存であります。

〇得意満面、というのは、ああいうのをいうんでしょうな。1月5日の経済団体主催新年会においても、、「(昨年は)常識にとらわれない方がいいと教えてくれた1年だった。時には非常識も大事だ。郵政民営化関連法案が廃案になり、谷の底に突き落とされた感じだった。しかし、ピンチはチャンスだと思うのが大事だと教わった」(読売新聞より)と、とってもご機嫌であったそうでありますが、もう誰も文句は言えません。あんたが大将、であります。

〇来賓挨拶はこのあと各党を代表し、そうはイカンザキさん、鳩山幹事長、福島みずほさん、と続きましたが、もう後はだーれも聞いちゃいない。って、当たり前ですわな。それにしても「ここにお集まりの皆さんは勝ち組ばかり・・・」とやらかした鳩山さんは痛かった。何で前原さんじゃなかったんでしょう。ほかは党首ばかりだったのに。


<1月7〜8日>(土〜日)

〇株式新聞主催、新春株式講演会に行ってまいりました。有楽町のよみうりホールは、1100ある座席がほぼ満杯。昨年の出席者は800人程度だったそうなので、主催者は「やっぱり今年は株高のお陰で盛況です」とのこと。客席を見渡すと、やはり50〜60代の方が多かったようですね。この手の株式セミナーは、平日だと高齢者と女性の比率が高くなり、土日は少しだけ若くなるのだそうだ。それから数は少ないけれども、「溜池通信」をご覧になってお出かけいただいた方もいらっしゃいました。ありがとうございます。

〇かんべえにとっては「他流試合」のような世界なので、なんとなく勝手がつかめない席でしたね。メモを取っている人もいれば、お眠みの方もいる。「デフレ論議」はあんまり関心がなさそうだったけど、銘柄の話になってもビビッと緊張感が走るわけでもない。総じて「この人たちの言うことなんて、どうせ当たらないのだろうけれども、とりあえず聞いておくか」といった突き放した聞き方ですね。きっと「聞いて損した」経験がいっぱいあるからでしょう。まあ、パネリスト諸氏も控え室では、「株の予想は当たらないですからなあ」などと言い合っているので、どっちもどっちという感じでありますが。

〇ちなみに、かんべえが予習してひねくり出した推奨セクターは「一般機械」です。自動車やエレクトロニクスに比べると目立ちませんが、輸出の伸びがいちばん期待できるのはコレ。建設機械、工作機械のブランド企業で、海外比率の高いところで、低PERで、なるべくなら地方に工場がある会社。コマツ(6301)、タダノ(6395)、不二越(6474)なんてところが面白いと思います。まあ、なるべく突き放して聞いておいてくださいな。


<1月9日>(月)

〇関東地方はカラカラ天気が続いていますが、北日本から日本海側はすごい雪が続いているようです。かんべえの故郷、富山県においては、「こうなると、自衛隊も米軍基地もないのがツライ」などという妙な弱音が漏れているとか。そういや、富山には原発もないんだよな。そういう県って、意外と少ないのかも。

〇かんべえの実家の近所では、たしか90年代に消雪装置が通りました。だから今では、家の前の道路だけは勝手に雪が溶けてくれます。もちろん屋根の上の雪は、各戸が自分で心配しなければならず、買い物に出かけるのも大変ですから、雪の苦労はなくなったわけではありません。それでも消雪装置ができる前は、豪雪の年は1日に何回も家の前の「雪かき」をしなければならず、マジ大変でした。ところが消雪装置を通すときには、各町内で資金を集めなければならず、当時の町内会の調整は困難を極めたそうです。

〇各戸が負担する金額は、道路に面している距離に比例して重くなる。間口の広い豪邸の負担が重くなるのはいいのですが、角に面した家は負担が倍になる計算。そうかと思えば、アパートの住人は、いずれ引っ越すつもりであるから、払いたくないということになる。もちろんほかにも、払いたくない、払えない、払ってたまるかという人が出てくる。そこは工事も3年がかりとなるので、支払いも分割払いになったりするわけですが、とにかく導入に向けた説得に時間がかかったことは想像に難くありません。

〇当時の町内会長を務めた人の話では、たまたま工事が始まった年が豪雪で、その時点で町内の反論や不満は一気に消えてしまったそうです。今となってみれば、その頃に消雪装置を通しておいてしみじみ良かった、ということになる。なんとなれば、今では町内はすっかり高齢化し、年金生活者が多くなってしまった。「今だったら、真面目な話、通せないかもしれない」とのこと。インフラの整備ということについて、何がしかの教訓を与えてくれるような話です。

〇その一方で、高齢化時代の豪雪は昔と違う苦労がある様子。「雪で日本海側が大変だ」というニュースがよく流れていますが、そういう意味での大変さは、今後ますます深まっていくでしょう。いっそ地球温暖化が進んでくれた方が、ありがたいくらいかもしれませんぞ。


<1月10日>(火)

リスクモンスターのSさんから電話。お久しぶり、どもども、という挨拶がしばしあった後に、「ところで今日、ウチの株が上がってるんだけど、週末の株式講演会で推奨されたんだって?」とのご質問。そういえばそうだった。土曜日の株式新聞のパネルディスカッションで、メリルリンチの菊地さんがリスモンの名前を挙げていた。効果テキメン、ヘラクレス3768は、本日2万6000円高である。うへっ、すごいなあ。

〇ご存知ない方が多いと思いますが、リスクモンスターは旧日商岩井の審査部が作った会社で、Sさんは創業者なのである。与信管理をネットでやりましょう、というサービスで、HPのフロントページでは「本日の倒産情報」を提供していたりする。面白い会社ですので、よかったらHPを覗いてみてやってくださいまし。――と、当方は株の推奨ではなく、会社の宣伝をしてみる。

〇日本貿易会の新年会へ。毎年恒例で、さて誰から新年のご挨拶をするべきかと見渡して、真っ先に通訳の長井鞠子さんに目をつける。いつもニュージーランド経済人会議でお世話になっているので、今年もよろしく、と声をかけると、「あら、かんべえさん」。ギョッ。いつから読んでるんですか。

〇某社の方との雑談から。中途入社の社員を募集しているのだけれど、なかなか思わしい人材が見当たらない。ふと気がつくと、以前に面接して断った候補者で、再びエントリーしている人が何人もいるではないか。もちろん当時とは会社側の都合も変っているし、応募者も職場が変わっていたりするから、別段、異とするには当たらない。おそらく外資系であれば、普通のことなのであろう。それに「男子、三日会わざれば」と言うではないか。それでも旧世代の人間としては、自分だったら「1回断られた会社なんて、腹が立つから2度と行かないだろうなあ」と思う。労働市場が流動化してくると、そういう常識が変わってくるのだろう。「近頃の若い人って、その辺がさばけてるよね」という結論になる。ふーむ。

〇場所を変えて、神保謙さんから東アジアサミットの裏話を拝聴する。東アジア共同体構想は、「正論=諸君=SAPIO」勢力からは大変に評判が悪い。要は「中国にしてやられるだけ」ということである。それでも、よくよく聞いてみると、日本外交も結構上手に立ち回っているし、中国外交がかならずしも成功しているとも思われない。経済面でも同様だが、東アジアの相互依存関係というのは、日本は明らかに受益者なのである。

〇おそらく歴史上初めて、東アジアにおいて、欧州のような多国間のややこしい外交が始まっているのであろう。その中心となっているのはアセアンであり、彼らは対米、対日、対中関係といった複雑な連立方程式を操りながら、なおかつ内部での対立も抱えている。例えば東アジアサミットに豪州を引き込むことと、こっそりアメリカに根回しをする面で、どうやらシンガポールが重要な役割を果たしていたらしい。誰が敵やら味方やら。東アジアもメッテルニヒやタレーランが必要な時代になったのかもしれませんな。

〇てなことで、驚く話がいっぱいあった一日でした。


<1月11日>(水)

歳川隆雄さんがやっている"The Oriental Economist"誌最新号で、田原総一朗氏のインタビュー記事が掲載されています。"Abe's the frontrunner, but needs work"という記事で、わざわざ田原さんの解説を英語で読むのも妙な感じですが、「ポスト小泉」に関する面白い指摘が数々あるので、唸りながら読みました。以下、備忘録としてサワリ部分をまとめておきましょう。

●ポスト小泉は、安倍晋三が本命で福田康夫が穴馬だ。麻生太郎、谷垣禎一のチャンスは小さい。麻生はすでに土曜には地元に戻り、県連を説得している。また谷垣は財務相として、2007年度予算の編成に立ちあわねばならず、身動きが取れないだろう。麻生、谷垣がともに立つと、青木や古賀はどちらを推すのかが悩ましい。結局、福田であれば、皆が乗れる。結論として、本命安倍、穴馬福田。谷垣と麻生は、小泉に上手に利用される可能性が高い。

●小泉は、外交面で自分と近い点で安倍を買っている。内政面では安倍は今ひとつで、三位一体改革も収められなかった。未熟だと思っている節がある。それから、「官房長官から直接、首相になった前例はない」ことも懸念材料だ。官房長官になって日が浅いこともあり、あと半年、大いに成長してほしい。安倍は首相になるには、「これが最初で唯一のチャンス」と思っていると思う。

●小泉としては、あまり早く次が決まると、自分がレイムダック化するので困る。だから安倍に「逃げるな」と励ます一方で、谷垣や麻生にも同じようなことを言っている。実際、あの直後に麻生に会ったところ、小泉は自分を信用していると自信満々だった。これぞまさしく小泉マジックで、額賀防衛庁長官までもが、同じように考えている。普天間の基地問題が夏までに片付けば、自分も立候補の目があると思っている。

●竹中平蔵の場合は「安倍の次」だろう。安倍にとって竹中は重要なパートナーであり、政権ができれば経済と財政に弱い安倍を助けて、内政を仕切るだろう。竹中は十分に野心家だ。飯島秘書官も警戒している。

●安倍政権が出来た場合、竹中は財務相が有力。中川秀直は幹事長というのが常識的な線だ。石原伸晃、塩崎恭久、根元匠あたりがいいポストを得るのではないか。塩崎は官房長官狙いだろう。51歳、当選5回の安倍が首相になれば、派閥の領袖や「中二階」クラスは落ち着かないだろうが、それでも政権の近くにいたいということで、党三役狙いで行くのではないか。

●小泉は中川秀直を高く評価している。森から小泉に乗り換えて、2001年の総裁選を仕切った。中川は、政治能力では今の政治家の中ではナンバーワンだ。政策だけなら与謝野馨だが、政治手法と政策知識が半端じゃない。小泉は人間関係が苦手なので、中川の指図に従っている。例えば、小泉が森に相談すると、すべてが青木に筒抜けになる。だから青木が優位に立つと中川は批判している。国対委員長を長くやっているのは伊達じゃない。

●安倍は竹中や中川が側にいるのだから、あとは本人が成長しなければ。半分冗談で、「田原さん、あなたが安倍さんを教育しなきゃ」みたいなことを言う人が多い。素材はいいのだから、磨けば珠になる。惜しいかなライバルに恵まれていない。

●イラクの自衛隊は9月までに撤退して、小泉の任期中に帰国するだろう。

●最近、小泉総理に会ったが、特段のテーマはなかった。彼は人の話をよく聞く。私と会うときは警戒心がないようだ。「田原さん、あなたの言う通りだ」などと言う。あまり親しげなので、こちらが困るほどだ。

●小泉の任期延長や再登板の可能性はないだろう。次期首相が07年参院選で大敗すれば、小泉待望論が盛り上がるだろう。ただし小泉は受けないと思う。おそらく大勲位も受けないのではないか。彼にはその資格があるのだが、中曽根は受けても、小泉は受けない。それが彼のスタイルなのだ。


<1月12日>(木)

〇子供の冬休みが終わってしまったので、ここ2日ほど「たまごっち」を預かっています。そうです、電子端末の中でペットを飼うという、例のあの商品です。90年代に流行ったオモチャのリバイバル。たしかに最近、近所の小学生を見ていると、首から「たまごっち」をぶら下げている子がめっぽう多いです。

〇この「たまごっち」、当たり前ですが、学校には持っていってはいけません。ということで、代わりに親が会社に持っていくというのは、われながら間違っているとは思うのですが、ちょっと目を離すとキャラが腹をすかせたり、病気になったり、どうかすると死んでしまうという代物なので、ついつい面倒を見てしまいます。昨日などは、来客のケータイ電話が鳴った瞬間に、こちらは「たまごっち」がピコピコ言い出して、あれはかなり恥ずかしいものであります。

〇90年代の「たまごっち」はキャラが単独でしたが、今回の「たまごっち」ではキャラにつれあいができ(お節介ばあさんがお見合いの相手を連れてきてくれる)、親から子へと面々と続いていくところが「売り」です。歴代のデータもちゃんと残ります。さらに、友達同士で通信する機能がついたり、ポイントを貯めるとおもちゃ屋にある「デカたまごっち」で買い物ができるとか、いろいろ新しい趣向がついています。その割りには、液晶画面が今だに白黒というのが残念でありますが。

〇前回のブームではまず大人がのめり込みましたが、今回のブームはは子供中心です。中国での生産が追いつかず、品薄になるので、デパートに行列ができるところも一緒。キー操作はかなり複雑になりました。それもあって、なるべく触らないようにしていたのですが、2日間預かってみるとだいたい飲み込めた。でも「音符集めゲーム」では、まだ子供の方が上手。そのうち逆転してやろう、などと考え始めてしまうのが、この手のオモチャの怖いところであります。


<1月13日>(金)

〇急に暖かくなりましたね。夜になって降り出した久しぶりの雨も、どことなくホッとするようなところがあります。

〇今日はたくさんの話を聞きましたが、とりあえず覚えているものを少々、ここで書いておきましょう。

〇「今の若者は、かつてソ連が怖い国であったことを知らない。シャラポワのお陰で、ロシア語を勉強してみようかという高校生がいたりする。この調子で、ロシアのイメージが変わってくれればいいのだが」(某大学のロシア語学科教授)

〇「寒い。人が少ない。散らばっている。皆が助け合わないことには生きていけない。だからロシアには共産主義が良く似合う」(同上)

〇「グーグルもスカイプもテトリスも、みんなルーツはロシア人。そのロシアに、インテルほかアメリカ資本がガンガン入っていきます。こんなチャンスはあと3年くらいしかないと思うのに、日本勢は身動きが取れない」(ベンチャーキャピタリスト)。

〇「かつてロシアを脱出してイスラエルに移住したユダヤ人たちが、今はロシアに戻りつつある。だってロシアの方が、いい加減で暮らしやすいんだもの。寒いけど」(同上)

〇「FTAって、何のためにやっているのかよく分からない。日韓でも日中でも、それが成立することを切望している企業は少ない。ところが、日中韓でやるのであれば、意義は大きいかもしれない」(経済団体職員)

〇「韓国も香港も台湾も、みずからが中国への入り口ですと仲介機能を宣伝する。中華世界が再浮上して、朝貢冊封体制ができつつあるんじゃないか」(同上)

〇ホントはもっと一杯あったはずなのに、どんどん忘れてしまう自分がちょい悲しい。


<1月14〜15日>(土〜日)

〇日本でも少子化対策として、いろんなアイデアが飛び交っておりますが、こんなのはさすがに聞いたことがありません。さすがはロシア。

http://www.asahi.com/international/update/0115/001.html 

●ロシアで一夫多妻制論議沸騰 チェチェン実力者発言受け 2006年01月15日07時13分

 チェチェン共和国の親ロシア派実力者、カドイロフ第1副首相が「男性が極端に少ないチェチェンでは一夫多妻制が必要だ」と発言し、これをめぐってロシアを巻き込んだ論議が起きている。

 ロシアのラジオに13日出演したカドイロフ氏は、チェチェンで繰り広げられている独立派との武力紛争の結果、女性の方が約10%ほど男性より多くなった、と指摘。チェチェンの人々の多くが信仰するイスラム教に従って「生き残った男性は4人まで妻を持ってよい」との考えを示した。

 同氏の父親で独立派武装勢力に暗殺されたカドイロフ前共和国大統領は、元イスラム指導者でもある。

 これに、極右として知られるロシアの自由民主党指導者ジリノフスキー連邦下院副議長がまず賛成。「ロシア全体で認めるべきだ。一夫一妻制しか認めない家族法の改正を進める。私も第2、第3の妻をめとる」と語った。ロシアの公的なイスラム指導者タジュドジン師も「深刻な人口減の問題の解決に資する」と賛意を示した。

 しかし、ロシア正教会のモスクワ総主教管区は「他宗教の慣習を尊重するが、ロシアで一夫多妻制は支持できない」と表明。ロシアでは飲み過ぎなどによる男性の平均寿命の短さも深刻なだけに、女性のスリスカ下院第1副議長は「平等と男性保護の必要から、一妻多夫制も認めるべきだ」とジリノフスキー氏らに反論している。

〇たしか三十年戦争の後に、ドイツでは男性の数が少なくなり、人口を増やすために一夫多妻制を認めたことがあったはず。でもそれって17世紀の話ですからな。いくらロシアでも、それは無茶でしょう。まあ、本気で一夫多妻を望む男性は、イスラム教かモルモン教に帰依して、そういう社会の中で生きていくという手が残されています。

〇ちなみに今の日本の場合、「結婚したいけど出来ない男性」と「そもそも結婚する気のない女性」の間で男女比が狂っているという説もあるので、だったら「一妻多夫制」こそを検討すべきでしょう。甲斐性のある女性は、夫を何人でも持つことができるようにする。でもって、「週一夫」とか「週末だけ夫」を作る。平安時代の「通い婚」って、それに近い制度だったのかもしれませんぞ。

〇念のために申し上げておきますが、こういうことを本気で言ってるわけじゃありませんよ。ワシはそもそも「少子化対策が必要だ」という考え方に疑問を感じている。「子供が欲しいのに、産めない」という人たちを助けるのは、政策として間違ってはいない。でも、「経済成長ができなくなるから、子供の数を増やそう」という発想はどこか狂ってるんじゃないだろうか。人間にとって経済は、手段であって目的ではないのである。

〇「年金制度を維持するために子供を増やせ」などというさもしい根性の人は、「金を払えば女性が子供を産んでくれるかもしれない」などという浅ましい考え方をする。ワシはそういう少子化論議が嫌いだ。まだしも「一夫多妻制」を言い出す方がマシではないか、などと思ってしまったロシア発のニュースであった。


<1月16日>(月)

〇唐突ながら、こんなことをふと考えた。

問い1:もし上流社会に生まれることができるとしたら、どこを選びたいか。@日本、Aアメリカ、B欧州

問い2:もし下流社会に生まれなければならないとしたら、どこを選びたいか。@日本、Aアメリカ、B欧州

〇おそらく問い1で@日本を選ぶ人は、あんまりいないんじゃないかと思う。だって日本の金持ちって、チャチでしょ? ベンツに豪邸に愛人、なーんてのが関の山ですもん。逆に問い2の方であれば、勝手知ったる@日本がいいわなあ、と思います。欧米の下流社会はシャレになりませんけど、日本の下流社会はそれなりに呑気なところもあって、悪くなさそうだもの。

〇これは『1985年』で触れたことですが、1980年代前半に「マル金」「マルビ」を流行らせた渡辺和博氏は、「本当のビンボーがまだ健在であった10年も昔だったら、『金魂巻』に怒る人がいただろう」という言葉を残しています。当時は、日本がようやく経済成長の成果を実感し始めた頃である。二極化だ、格差拡大だといいつつ、まだまだ「マルビ」の方が当たり前であって、ようやく「マル金」が出てきたばかりだった。だから皆、あんまり腹が立たなかった。

〇それから間もなく、「バブル」という時代がやって来て、みんなが「よーいドン」で「マル金」の真似を始めた。「ホイチョイプロダクション」なんてのが現れて、ボジョレ・ヌーボーのウンチクなんぞを教えてくれたりもした。みんなで「これがカッコいい」と思ったことを真似してみたけれど、結局、ブームは短命であった。バブルは日本の上流社会のライフスタイルを充実させるところまではいかなかった。日本の金持ちが鍛えられるとしたら、ホントの格差拡大が始まったこれから先のことだろう。

〇バブル崩壊の後には、日本経済の長期低迷がやって来た。それが15年も続いたものだから、「下流社会」なるものができてしまった。その一方で、下流社会向けのサービスがあまねく発達した。ダイソー、ドンキホーテ、吉野家、マックなどがデフレ経済の勝利者と呼ばれた。これらの業態の発展には賛否両論があるわけだが、それでも日本経済の長期低迷期は、「世界でもっとも住み心地の良い下流社会」を作り上げたのかもしれない。

〇2005年のヒット作『下流社会』は、20年前の『金魂巻』と同様に、誰もが身に覚えがあるようなイタイ話しがいっぱい書いてある。どちらの本も、怒りの声が澎湃と沸きあがる、てなことはないようだ。三浦展さんは本の中で、「人が下流になるのは、能力ではなくて意欲が欠けているからだ」なんて身も蓋もないことを言っている。それじゃあ救済がないと思うのだけど、それでもフリーターの女の子のインタビューの中あたりには、そこはかとない幸福感みたいなものが読み取れたりするし、ま、いいのかなあ、という気になってしまう。

〇企業の側になって考えてみると、ビンボー人の気持ちは良く分かるけど、金持ちの気持ちは良く分からない。だから「下流社会」向けの商品やサービスは発達したけれども、「上流社会」向けはそうならなかった。これから先の日本経済の課題は、「国際競争力のある上流社会」を作ることかもしれませんね。


<1月17日>(火)

〇阪神大震災から今日で11年。そんな日に不思議と事件が重なった。世間もワシの身の回りも、ともに慌しい一日であったような。

〇今週末の「生島・三原のマーケットトーク」にゲスト出演する予定なので、午前中に打ち合わせ。去年からずっと続いているのだが、ワシがこの手のマーケット番組に出る週になると、不思議とライブドアや楽天が世間をにぎわせる。だもんで、付け焼刃で何かコメントを考えねばならない。以下は公共の電波では言えないような妄言。

〇一般論として、地検が捜査に入るときは、お日柄を念入りにチェックするものである。それがですよ、18日に自民党大会で20日通常国会開幕という週のアタマの16日に動くというのは、何か意味があるんじゃあないですか。となると、「ホリえもんを選挙に担ぎ出した武部幹事長に対する意趣返し」じゃないかと勘ぐりたくなる。つまり「ポスト小泉」をめぐる前哨戦が始まってしまったのではないか。

〇こういう仕掛けは、不利な側から先に動くものである。仮にこれが、「自民党クラシック」側が「ネオ自民党」チームに仕掛けた罠、ということであれば、次に狙われるのは竹中総務大臣でしょうな。親しいといわれる某氏に関する噂も、一部では盛んに飛び交っていることゆえ、ご用心召されよ。それにしても、こういうことで株価は崩れていくものなのかねえ。

〇お昼にJR東海の方と面談。先日のヨミウリウィークリーのコラムにて、上海リニアはダメですねえ、みたいな記事を書いたところ、「JRのリニアはそうじゃありません」というご説明が来てしまったのである。上海のようなトランスピッド(ドイツ製)や、愛・地球博で使われたHSST(日航製)とは違い、JR東海が開発している超電導リニアは速度、安全性、エネルギー効率などで優れているのみならず、「その気になれば実用可能な段階に来ている」という。問題は、それを例えば東京=大阪間で作るとしたら、費用と期間が膨大なものとなるので、実現可能性が乏しいということに尽きる。

〇聞いていてしみじみ感じましたが、日本の技術力の強さの大部分は、「技術者が終身雇用で働いている」ことに由来するようですね。国鉄がリニアの開発に着手したのは、新幹線ができる以前の昭和37年。普通の国であったら、こんな長期の研究を持続することは不可能でありましょう。日本の技術者は、ITやバイオといった花形分野で一山当てるのは苦手だが、普通の国なら諦めてしまうような地味な分野で、コツコツと努力を続け、気がついたら超電導リニアやら青色発光ダイオードやらといったブレークスルーを手にしていることが多い。エンジニアが大学の研究室から定年まで、ずっと一つのテーマにこだわり続けていると、奇跡が起きる確率がそれだけ高くなるのであろう。

〇夜は東京財団の若手安保研究会。本日はブッシュ政権のスタッフをやっていたY氏をワシントンから招いて話を伺った。いやあ、面白かった。午後4時半に宿泊中のホテルに迎えに行ってから、午後11時半にホテルに送り届けるまで、延々と刺激を受け続けた感じ。やっぱりアメリカ政治はエキサイティングである。

〇ところで今日はヒューザーの小嶋社長の喚問もあったそうですね。今日は大サービスで、こんなのもつけちゃおう。


「プロジェクトX〜挑戦者たち.  ヒューザーの挑戦。奇跡の100平米マンション」


そのとき、小島は意外な事を言った。

鉄筋を減らしてみたらどうだろう。

姉歯は戸惑った。

RC造を人体に例えると、コンクリートは肉、鉄筋は骨にあたる。

それを減らそうと言うのだ。

無理です。出来ません。

小島は思わず叫んだ。

俺たちがやらずに誰がやるんだ。俺たちの手で造り上げるんだ。

男の熱い思いに、姉歯は心をうたれた。

技術者の血が騒いだ。

やらせてください。

夜を徹しての設計作業が始まった。

鉄筋を減らし、材料費を削り、耐震性は確保する。

まったく矛盾する作業だった。

技術的に不可能と思われた。

他の設計士にも相談した。

文献も読みあさった。

てくる答えは一つ、不可能。

しかし、姉歯は思った。

「出来る、いやできると信じなければ出来ない」

姉歯は図面を引いた、繰り返し、繰り返し、、、

一日がすぎ、一週間がすぎ、一ヶ月が過ぎようとしていた。

しかし、図面は上がらなかった。

頭の中には一つの言葉しか出てこなかった「不可能」。

そのとき、姉歯はふと思った。

「不可能なんだ、不可能なことをやろうとしているんだ」。

そこへ木村が現れた。

そしてこうつぶやいた。

「考え方を変えるんだ」

「耐震性を保つと言うことはどういうことか、考え方の根本を変えるんだ」

姉歯には理解が出来なかった。

木村はこう続けた。

「耐震性があるということは、実際の地震で建物が倒れる危険性が無いと言うことだろうか?

いや、設計士にとって、耐震性があるということは、建築確認で耐震性があると認められることなのではないか」。

暗闇に光がさした気がした。

姉歯は、また机に向かった。

小嶋は、確認申請を提出した。

書類を検査したのはイーホームズだった。

自信があった。

「必ず通る、いや通して見せる」

そして、運命の日。

「建築確認許可」

不可能だと思われていた。

いや誰もが不可能だと信じて疑わなかった。

しかし、それが可能になった瞬間だった。

姉歯、小嶋、木村、内河

朝まで飲み明かした。

内河が言った。

「よし、どんどん行くぞ」

小嶋が言った。

「ヒューザースタンダードの確立だ」

木村が言った。

「熊本から世界へ」

姉歯は、充足感に包まれ、ただ涙を流していた。


<1月18日>(水)

〇昨日のプロジェクトXもそうですが、世の中がお祭り騒ぎになってくると、「名作」が増えますね。ライブドアがらみでは、こんなのも出来ています。

●堀江の拳 http://zaraba.livedoor.biz/flash/horienoken.html 

〇これを見ていると、「樹海行き決定」などといった言葉が飛び交う、まことに殺伐とした世の中であります。ライブドア株を担保に入れて、信用買いで積み増ししてました、なんてホリえもん信者はマジ大変でしょう。でも、これで市場全体が崩れるかといえば、それほど大きな問題はないんだろうと思います。

〇今から5年前の「ネットバブル崩壊」のときはどうだったっけ、と本誌の2000年4月21日号「再びネットバブルを考える」(懐かしい)を読み返してみたら、こんな数字が並んでいたので驚いてしまった。いやはや、これはヒドイ。

●時価総額ランキングの変化

2000年 <2月17日> <4月14日> <増減>
ソフトバンク 18兆6847億円、3 位 7兆2966億円、7 位 △11兆3881億円
光通信 6兆9666億円、7 位 1兆1401億円、82位 △ 5兆8265億円
NTTドコモ 36兆7718億円、1位 35兆5269億円、1位 △ 1兆2449億円
トヨタ自動車 17兆7975億円、4位 20兆8013億円、3位 + 3兆0038億円
ソニー 12兆9373億円、5位 12兆1519億円、4位 △ 7854億円


〇2000年のネットバブルでは、(1)ミレニアムブームで上がったNASDAQが暴落していた、(2)企業も投資家も未熟で、しかもベンチャーを政策として煽った「官製」バブルでもあった、(3)ソフトバンクや光通信の時価総額至上主義が咎めを受けた、などと条件が重なった。これに比べれば、強制捜査に伴う新興市場の下げは限定的でしょう。そもそもライブドアの時価総額なんて下落前で7000億円くらいですから、規模を比べると可愛いもんです。

〇週刊誌なんぞは、今週号でも「株で一儲け」みたいな見出しのものが多いですね。来週になると、これが一転して悲観論続出になるんでしょうね。そもそも、彼らが熱狂していたこと自体が、天井が近かったことの何よりの証左でもあったわけだ。「今の日本経済の実力は1万5000〜6000円程度」という見方は変える必要なし、とあたしゃ思うけどな。


<1月19日>(木)

〇商社業界の新年会。「今年の活動を考える」というお題目がついているので、「日中関係」とか「少子高齢化」「団塊の世代のリタイア」など、2006年にはありがちなテーマが飛び交ったのだが、皆が一番盛り上がったテーマは、「なぜ商社では女性の活用が遅れているのか」でありました。いい年をしたオヤジばっかりのメンバーが、なぜかムキになって口角泡を飛ばしておりましたな。以下はこんな意見が出たという一例。

●商社はそもそもが遅れた業態である。その証拠に、グローバル企業だといいながら、外国人の戦力化も全然進んでいない。だから女性の活用も、公務員に比べてもはるかに遅れている。

●商社の業務は女性には不向きである。テロや誘拐のある国へも出張や駐在があるし、高炉さん相手の商売などは、男でなければとても務まるものではない。(商社男ゲイシャ論?)

●営業部門では男女格差があるというのは一理あるとしても、職能部門においても女性の幹部が異常に少ないように見受けられる。商社の業務はジョブ・ディスクリプションが不明確で、実は怪しげな仕事が多いのではないか。

●そうはいっても、最近では見事に務めている女性も増えてきた。若い年代では、同期の出世頭が女性であるということもめずらしくはないし、女性が会社を辞めてしまうと上司の罰点になるような人事制度も導入されている。

●男女雇用機会均等法は1986年施行である。その当時に入社した連中は、ようやく部長になろうかという年代だ。だから女性の登用は、まさにこれからだと考えるべきである。

〇まあ各社各様でもあるし、同じ会社でも職場によって、いくらでも事情が変わってしまうのが商社という業態なので、一概に論じることは出来ません。でも、議論が白熱するということは、実は皆、ひそかに気にしていたということなのでしょう。

〇ちなみに、かんべえが所属する職場では、中途採用で3人目の社員を採る予定ですが、全員が女性です。そのうち、女性ばかりの会社になってしまうかもしれません。「面接すると、女性の方が優秀なんだよな」という点は、ここだけが満場一致の意見でありました。


<1月20日>(金)

ライブドアの株価は今日の終値で336円。この調子でストップ安が続いていくと、次は256円となって、その次は176円となって・・・という連鎖が続きそうです。こういうことは、以前、2000年の光通信でもありました。損が確定しないので、投資家にとっては塗炭の苦しみとなります。ということで、ヤフー掲示板では、怨嗟、嘲笑、罵倒、ため息など、とっても感情の濃い言葉が飛び交っています。(ちょっと投稿数大杉。でも、ついつい読んでしまうワシは、とっても悪趣味であるかも知れぬ)。

ぐっちーさんが言っておられたとおり、株式分割の負の面が表に出てきたのだな、と感じます。これまでは、「株価も上がるし」「株主も増えるし」「M&Aもされにくくなる」と、いいことづくめだった株式分割が、今となっては「被害者が多くなるし」「売りが売りを呼ぶし」「買い集めるのも面倒だし」、さらに「売買数が増えるので東証のシステムも危なくなる」というオマケつき。株の大衆化は結構なことですが、目下のところは罪深い結果をもたらしているようです。

〇とはいえ、こういった下げ局面は、長く株をやっていれば、いつかは必ず出くわすもの。1987年のブラックマンデーの際には、株価を示す電光掲示板の数字が全部つかなかった、なーんて光景もありました。ところが、今のネットトレーダーの多くは、そもそも2000年のネットバブル崩壊の後から投資を始めた人が多いようですから、心理的なショックはひときわ深い。「樹海行き決定」なんて言葉が飛び交うのを見ていると、他人事ながら心配になります。

〇つくづく株ブームは、極端から極端に走ってしまいました。「東証はけしからん」という声はまことにもっともですが、2003年頃の閑散とした市場を思い起こせば、「こんな日が来るとは予測できなかった」のも無理はないと思います。投資家の意識も東証のシステムも、一朝一夕に進歩はしないのです。とりあえず今回の騒ぎが、ソフトランディングしてくれればいいのですが。

〇マスメディアの間では、今度は逆に、「ホリえもんは拝金主義者」「株なんてやる奴は文化的退廃」「額に汗してコツコツ働け」的な意見がのさばってしまいそうで、個人的にはそれもヒジョーに嫌なんですけどね。


<1月21〜22日>(土〜日)

〇土曜日はすごい雪でありました。文字通り、寒くて何もする気にならない一日でありました。

〇浮世の義理で、次女の授業参観に出かけたところ、小学校の体育館では柏市在住の石田和雄九段による「私の将棋人生」という講演会をやっておりましたな。将棋ファンの間では、石田九段は「嘆き節」で有名な棋士です。一度、「知味斎」(柏市の中華料理名門点)の前でご本人を見かけたことがありますが、テレビで見たとおりの甲高い声で話しておられました。そのとき、「あ〜あ、なんで麻婆豆腐なんて注文したんでしょうねえ、メニューを見たときには、これがうまそうに見えたんですよ」と言っていた、というのは、かんべえが後から創作した話です。すんません、将棋ファンだけウケてください。

〇日曜日午前のテレビは、ホリえもんとヒューザーという2つの敵役を代わる代わる取り上げているようですが、前者から後者に代わった瞬間にチャンネルを変えてしまうのは、おそらく不肖かんべえだけではないと思われます。ふと思い出して、昨年のエイプリル・フールに書いた溜池通信を読み返してみると、なかなかに味わいのあることが書いてある。とくに最後の部分(「嵐を呼ぶ男」の存在意義)。

ホリえもんが教えてくれたこと(2005年4月1日号) http://tameike.net/pdfs5/tame271.PDF 

 その反面、ホリえもんという「嵐を呼ぶ男」が登場したことは、今日の日本経済にとっての福音であったといえよう。長引く低金利は、家計部門から企業部門への資金移動を促してきた。なおかつ企業はリストラを行って財務体質を強化し、収益を蓄えこんでいる。このマネーが、「設備投資、配当、雇用」といった形で家計部門に流れるようにならないと、本当の意味での自律的回復は望めない。しかるに、長年の不況慣れの結果、企業マインドは「横並び」で冷え込んでしまっている。

 停滞した日本企業を動かすには競争が必要である。よどんだ水を、誰かがかき回してくれないと困る。硬直した経営陣を震撼させるような、若い力の登場が待たれていたのである。そして実際、ホリえもんが派手に暴れてくれたお陰で、プロ野球は活性化し、株式市場は明るくなり、企業は買収防衛にカネを使うようになったではないか

 かつて始皇帝が倒れ、秦の帝国が動揺したとき、農民の陳勝と呉広は「王侯将相いずくんぞ種あらんや」を合言葉に反乱を起こした。それが漢楚の興亡から漢の大帝国建設への幕を開けるのだが、ホリえもんの役割はしみじみ「陳勝・呉広」ではないかと思うのである。

〇その後、ホリえもんは選挙にも出馬して、「小泉劇場」にも一役買いました。また今回の株価下落では、個人投資家に対して重要な教訓を残してくれたわけで、まことに稀代のトリックスターの名に恥じぬ活躍ぶりでありました。かくして先人が地ならしをした後で、誰が「項羽と劉邦」になるのか、そんな方面にも関心を払っていきたいところです。

〇陳勝と呉広の末路は哀れでありましたが、ホリえもんの場合は今回の疑惑で相当な社会的制裁を受けるとして、もう1回くらいは復活してくるような気がします。別に根拠はありませんけどね。


<1月23日>(月)

〇本日ご紹介するのは、替え歌が2つと、ショートストーリーが1本です。やはり大事件が起きると、いろんな方々の創作意欲が刺激されるようですね。制作者の方々の創意に、深甚なる敬意を表するものであります。


六本木(ヒルズ)心中

だけどマスコミなんて ガサイレで変わるのね 醜いおなかが卑猥ねあなた
罪な行為をしてさ 株を上げますなんて ちょっと場末の詐欺師してるね
この株は高すぎる TOSHO IS A LONELY PLACE
ストップ安じゃ 掲示板の灯が 俺の気を狂わせる
押し目相場に ハラハラすがり 上場廃止なら 生きてゆけぬ
慰めないで 言葉じゃダメさ 追証全部 入れておくれ

遊べる金額なら ナンピンも出来るけど 二階建てだと破産が怖い
上場のくせしてさ 粉飾をするなんて 貴方どこかのエンロンみたいね
夜更けに目を覚ませば DAY TRADER IS A LONELY MAN
手持ち株式 売り抜けられば 夢の続きが見れる
そっとモニター 息詰めてみる 上場廃止では 生きてゆけぬ
明日になれば 株価はあがる 投資家ですもの 泣きはしない

押し目相場に ハラハラすがり 上場廃止なら 生きてゆけぬ
慰めないで 言葉じゃダメさ 追証全部 入れておくれ

CAN'T LIVE WITHOUT YOU BABE
CAN'T LIVE WITHOUT YOU BABE
CAN'T LIVE WITHOUT YOU BABE
DON'T WANNA LET YOU GO

CAN'T LIVE CAN'T LIVE
CAN'T LIVE CAN'T LIVE
CAN'T LIVE WITHOUT YOU BABE
DON'T WANNA LET YOU GO


古時計

♪大きなお腹の ホリエモン
 LDの教祖様

 突然 地検に踏み込まれて
 慌てる ホリエモン

 俺は全く知らない事だ
 みんな 宮内のせい

 大きく 下がった 時価総額
 今では 2分の1

♪ご自慢の ジェットで ビュン ビュン ビュン ビュン♪
♪ひなーのと一緒に ビュン ビュン ビュン ビュン♪

  今は もう戻らない以前の時価総額
  今は もう戻らない以前の時価総額
  今は もう戻らない以前の時価・・・・♪


「古畑任三郎 ライブドアショックの謎を解く」

え〜〜〜古畑です。今回の事件はあのマネックスの松本氏がGSの手先となって市場
操作したという疑惑についてです〜〜。

すでに明らかになっているように、ライブドアの証券取引法違反が発覚した翌日、前
場まではそれほどライブドアショックの影響は無く、前場を終えた段階では+引けで
した〜〜。と・こ・ろ・が・です。なんとマネックスが〜

え〜〜〜非常に由々しき問題なのですが、なんと場中にもかかわらずLD関連銘柄す
べての信用の掛け目をいきなり0%にしてしまったそうです〜〜〜。証券関係者の話
ではこの決定はどう考えてもおかしいという意見ばかりのようですが〜〜え〜〜とに
かくそんなバカのことをやってしまったものですから〜〜追証を払えない投資家が続
出して、株を現金化する動きが活発になり、後場に入ると日経平均は暴落し、大引け
には400円以上値下がりして取引を終えました〜〜。

ここで疑問が2つあります〜〜〜。

ひとつはな・ぜ・マネックスはこんな非常識なことをしたのでしょうか〜〜という点
ですが〜〜〜え〜〜〜松本氏は早期に投資家に注意喚起する目的だったと(笑)〜〜
言っています〜〜しかしこれは注意喚起というよりも、追証を納めろ、できなければ
持ち株を売れ!といっているに等しいんですねハイ〜。当然多くの投資家はとりあえ
ず持ち株を売ることにしたんです〜〜。

もうひとつの疑問は、掛け目をいきなり0%にしたことによって、日経平均が400円以
上も値下がりするほど大きな影響力が果たしてあるだろうかという点です〜〜。これ
については松本氏自らいい情報を提供してくれています〜〜。

かれのblogです〜〜〜。1月18日つまり掛け目を0に変更した日の翌日ですが〜〜松本
氏はGS系ヘッジファンドのJM氏と面会したと書いているんです〜〜。GSといえ
ば、松本氏も過去に務めていたことがある証券会社ですが〜〜JM氏は米在住で、
めったに日本には来ないそうです〜〜。何のために、松本氏と面会していたんでしょ
うか〜〜。

そうです〜これが今回の事件を紐解く最大のポイントでした〜〜。まずこれが、今泉
君に調べてもらった、1月16日の日経先物プットの手口情報です〜〜。これによれ
ば、GSは16日にプットを6000枚仕込んでいます〜〜。プットのみを〜〜売りだけで
すハイ。

さらに〜証券関係者の証言から、1月17日の後場、掛け目を0にしてからすぐに、外
資系ヘッジファンドからの猛烈な空売りが観測されています〜〜。まるで、掛け目を
0にするのを知っていたかのようなタイミングです〜〜。追証に伴う投売りと、他の
証券会社も追従するかもという連想売り、さらに外資の空売りと、ライブドア関連銘
柄のストップ安が、この市場操作には必要十分な条件でした〜〜。すべてが同時に起
こって、はじめて大きな利益になると〜〜考えたのでしょう。外資とぐるになって、
混乱に乗じて個人投資家を食い物にした仕業、許されるものではありませ〜ん。

ただしこの犯罪において、松本氏は掛け目を0にしただけです〜〜。これでは不法行
為に問えませ〜ん。しかも、掛け目を0にしたことと値動きとの因果関係を証明でき
ませ〜んから、松本氏は疑われても決して逮捕されない立場がはじめから約束されて
います〜〜。

わたしはこれほど完璧な証券取引法違反を知りませ〜ん。

以上 古畑任三朗でした〜。


〇引き続き名作、快作、珍作の類がありましたら、幅広く募集しておりますのでよろしくどうぞ。

かんべえ拝


<1月24日>(火)

問い:とうとう逮捕されてしまったホリえもん。「想定の範囲外」の展開ですが、これからどうするのでしょうか?

答え:「法廷の範囲内」で戦うしかないでしょう。

〇すいません、しょうもないこと言って。本件につきましては、ほかの大多数の皆さんと同様、言いたいことが積もっていて、今日はちょっと長めに吐き出してしまいたいと思います。

○BNPパリバのチーフストラテジスト、島本幸治さんが今週の"Weekly Bond Strategy"で書いているのですが、ライブドアショックは、「錬金術批判」→「東証問題」→「会計問題」と発展し、結果として「市場主義経済への不信」をもたらす恐れがある、という。マスメディアの反応としては、「会計問題」は難しくて視聴者が理解できないので、そこを短絡して再び「錬金術批判」へ飛ぶ可能性が高い。なんだかリクルート事件と似てますね。あのときは「未公開株」、今回は「株式分割前」。どちらも「株価が上がる」という保証はないのですが、「濡れ手に粟」という批判は誰にでも分かるので、論点はここに集中しがちである。

〇というわけで、マスコミ各位、ブロガー諸兄におかれましては、なるべく東証や監査法人の問題を取り上げていただきたいところです。そして不肖かんべえとしては、今までのところあまり論点として出てきていない、「誰がホリえもんを育てたのか」という問題を、ここで提起してみたいと思います。

〇まだ東大の学生であった堀江貴文青年が、有限会社オン・ザ・エッヂを作ったのは今からちょうど10年前の1996年のことでありました。前年にWindows95がヒットし、人々がパソコンを買うようになった頃だ。当時、こんなジョークがあった。「インターネットとかけて、ティーンエイジャーのセックスと解く。その心は、誰もが話したがるが、実際に体験したことのある人は少ない」

〇そんな中で、IT分野に無限能可能性を見出した人たちがいた。しかし、ベンチャー経営者として船出することに対し、世間の風はかならずしも甘くはなかった。海の向こうのアメリカでは、ナスダック市場というすごいものがあって、ネットスケープとかインテルとかマイクロソフトといったすごい会社が続出しているというのに、日本はこのままじゃダメだ、という声がたびたび上がっていた。

〇当時のベンチャーに関する問題点を網羅した格好な資料として、1995年に発表された経済同友会の提言がある。

●企業家精神復活 −日本経済の新たなる飛躍に向けて− (1995年6月23日発表)

http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/list1995.html  

○ここに書かれていることのうち、今ではかなりの部分はすでに実現している。が、同提言は、教育の見直し、転職市場の整備、ストックオプションなどインセンティブの明確化、ベンチャー優遇税制などとともに、「店頭第二部市場」(仮称)を提案していた。

「ベンチャー企業には、店頭市場の中に、現行の店頭市場とは明確に区別された「店頭第二部」(あくまでも仮称であるが)を設ける必要があると思われる。その登録基準は、例えば利益基準を設けない、といった現行の基準よりも緩い、かつ透明性のあるものとし、業種の制限も加えるべきではないと考える。また、投資家も機関投資家等プロに限定せず、個人も含めた広範なものとし、海外の企業家・投資家にとっても魅力あるものとすべきである」

○このアイデアは、早速、日本証券業協会が取り入れるところとなり、96年1月には当時の店頭市場(現在のジャスダック)の中に、「店頭特則」(第二店頭)市場が開設された。ところがこの第二店頭市場は、上場が1社も出なかった。それどころか、1997年には金融不安が発生し、ベンチャー企業はいよいよ受難の時代を迎えていた。ハイパーネットの板倉雄一郎氏が、銀行の貸し渋りにあって「社長失格」したのはこの時期である。いよいよ日本経済が危ないということになって、98年夏には小渕政権が誕生した。

〇小渕首相が打ち出したのは、「何でもアリ」の経済政策だった。恒久的減税だ、公共事業も大盤振る舞いだ、ついでにゼロ金利政策だ、という中にあって、ベンチャーの振興もまた日本経済浮上の鍵を握るものとされた。ここに再び、「ベンチャーに優しい市場」というテーマが浮かび上がる。99年6月には、ソフトバンクの孫社長が「ナスダック・ジャパン」構想をぶち上げる。あの手この手で、ベンチャーを優遇しようという動きが一気に加速した。

〇しかし、「中堅ベンチャー企業に上場の道を開く」先鞭をつけたのは、東京証券取引所であった。1999年11月11日、世界で一番上場基準の甘い「マザーズ」が誕生した。かくして、東証のマザーズ、大証のナスダック・ジャパン、日本証券業協会の店頭市場という三つの市場がベンチャー企業を奪い合い、目いっぱい経営者を甘やかすという構図ができてしまった。

○3つの市場の明暗を分けたのはタイミングであった。99年11月に発足したマザーズは、ミレニアムの到来にかろうじて間に合った。第一号としてリキッドオーディオ・ジャパン、インターネット総合研究所の2社が上場を果たした。そして2000年2月にはサイバーエージェントと、われらがオン・ザ・エッヂの2社が上場したのである。しかし2000年3月には米国でナスダック指数が急落し、ハイテクバブルはここに終わりを告げる。2000年6月に開設されたナスダック・ジャパンは、このおいしいタイミングを逃した。結局、ナスダックは2002年12月に撤退し、現在は大阪ヘラクレス市場と呼ばれている。

〇初期のオン・ザ・エッヂの資金繰りを助けたのは、光通信とグッドウィルであったらしい。両者はともに上場を決めた直後で、カネが遊んでいた。となれば、どのベンチャーも考えることは同じで、ベンチャーキャピタルとして他のベンチャーに投資することで一攫千金を目指したのである。かくして堀江貴文社長は、いくつもの追い風に助けられて船出をすることに成功した。

〇それから後のことは、あらためて書き連ねることもないだろう。要するに、この国のベンチャー育成策は「甘やかし過ぎ」であった。政府はもちろん、企業も、投資家も、そしてマスコミも。ホリえもんという稀代のトリックスターは、かくして誕生した。みんなでよってたかって、偶像を作り上げてしまったんじゃないか。何で今頃になって、袋叩きにすんのよ。

〇あらためてまとめると、以下のようになる。

(1)ベンチャー企業の発展は良いことである。そのためには、政策的な配慮があっていい。が、経営者を甘やかせばいいというものではない。その点、90年代のベンチャー振興策は、どうやら失敗だったようだ。これも日本経済の長期低迷期の副産物の一つかもしれない。

(2)ホリえもん自身はともかく、「ホリえもん的なるもの」は、今のこの国に必要である。彼が居なかったら、われわれは今頃1リーグのプロ野球を見させられていただろう。旧体制を安穏とさせないためにも、若いベンチャー経営者がもっと出てきてほしい。

(3)今回、いちばんの大馬鹿モノはフジテレビであると分かった。彼らは去年、喧嘩を売られたときに、ライブドアの有価証券報告書を徹底的に洗うべきであった。(何も自分たちでやる必要はないのである。外注でいいのだ)。そうしておけば、悪事がバレるのが早くなっただろうし、ライブドアの株を買わされることもなかったはずである。その程度の取材力もない人たちが作っているCXのニュースなんて、果たして見るべき価値があるのだろうか?

(4)多くの個人投資家にとっては、大きな痛手と教訓が残ったことになる。かんべえは以前、個人投資家協会の懇親会に出かけた際に、「株式分割で儲けるにはどうしたらいいでしょう?」という質問を受けて、なんちゅー常識が広がっておるのかと唖然としたことがある。(その場にいた木村喜由さんに、叱ってもらいましたけど)。株式分割それ自体は、どちらかといえば良いことでしょう。が、それがマイナスに働くことだってある。なるべく、ぐっちーさんのブログのように良質な情報源を利用されることをお勧めしたいと思います。

(5)さて、最後にやっぱり東証の責任は重いといえる。前述の経済同友会の提言(1995年)には、以下のような記述が入っている。まるで今日を予測しているかのようであり、結局、マザーズがこういう基本を抑えていなかったことが、諸悪の根源であったのではないかと思うのである。

「上記のようなハイリスク・ハイリターンの「第二部」市場を活性化する上では、ディスクロージャーと投資家自己責任原則のより一層の徹底を図る事が不可欠である。

すなわち、企業のリスクファクターの開示をより徹底させる、虚偽表示、粉飾決算等に対しての罰則規定をより強化するなど、適正なディスクロージャーがなされるような措置を講じることが必要である。

また、投資家の自己責任原則の徹底を図るため、投資開始に当たっての説明や意思確認のルールの徹底等も望まれる」


〇さて、以上でかんべえは思いのたけを吐き出しました。以下は、昨日の呼びかけに応えていただいた「・・・みたいな。」さんから頂戴した作品です。いつも本石町日記さんところでお見かけしてますけど、この人、ホンマ、天才ちゃうか? では、ご堪能ください。コピペも存分にどーぞ。


♪ライブドァ♪(西城秀樹)

くやしいけれど 堀江が逮捕
ライブドァ ライブドァ
偽計取引 風説の流布
ライブドァ ライブドァ

気のない株交換 グレーな取引して
株を分割しすぎては 下げる ライブドァ
はじけるバブルな株 2億の売り浴びて
社員を置き去りにして 社長は辞任


衝撃的なフジとの争い
ライブドァ ライブドァ
一夜限りの提携でもいいさ
ライブドァ ライブドァ

会社を漁っては クルリと売り放す
そんなゲームに憎いほど燃える ライブドァ
みんなが俺に言うぜ 株主に配当出せと
走り出した株価の下げは 止まりゃしないぜ


社長がTシャツで 会見開くたび
狙った会社買っていく
ライブドァ ライブドァ
売名行為繰り返す
ライブドァ ライブドァ
***


♪Triangle♪(SMAP)

都心を少し外れた 小さな独房から
どんなに目を凝らせど 見えないものばかりだ

例えば、比例配分 誰かが祈っていたり
例えば、追証に キミが怯えてたり

すべては時価総額の上昇を 求め彷徨う 亡者の影
買収でしか見出せない 企業の未来を愛せないよ

楽天が USENが Yahoo! Japanが
それぞれ異なっているように
自由でこそ 市場だから
僕の株 キミの株 僕らの売りは
細く刺さる ちっぽけな買いに
のしかかる悲劇


値幅の基準値が 下限の大台を割り
一途に下がり続けた ひどく過酷な売り

わずかな配当も取れぬまま 投げに紛れ 売れぬ僕ら
受け継ごう その怒り 声の限りに伝えるんだ

東証のシステムや 地検の捜査
それぞれ重さの同じ 尊ぶべきインフラだから
精悍な顔つきで 出された売りは
他でもなく マザーズの板に 打ちつけられてる


深く深く 刻まれた あの傷のように


宮内が 岡本が 堀江社長が
それぞれ偽っているように
虚業でこそ ライブドアだから
僕の株 キミの株 僕らの売りは
細く刺さる ちっぽけな買いに
のしかかる悲劇

株主の悲しみも 見果てぬ損も
それぞれ重さの同じ 自己責任の結果だから
精悍な顔つきで 出された売りは
他でもなく マザーズの板に 打ちつけられてる

そう、
怯えるキミの手で


<1月25日>(水)

〇今日はテレビの収録が2本ありました。ひとつがブルームバーグ・テレビジョンで、BSE問題と日米関係について。放映は明日の午前7時18分ぐらいだそうです。もうひとつがホリえもんに関するもので、テレビ朝日「スーパーJチャンネル」から取材を受けましたが、こちらは運がよければ明日の放映に使ってもらえるかどうか。両方をご覧いただくと、同じネクタイをしているのが分かると思います。あは。

〇昨日が長編だったので、今日は短く終わらせるつもりなのに、いろんな作品が届くもんだから、ついつい紹介してしまうではないか。

●シーン1

「5分で100点満点を取る神童、と呼ばれたホリエがnetにまで膨れ上がった株式市場を席捲して数年、netに住む住人が利益を夢見て株式市場に踏みにじられたかを思いおこすがいい。チケンの掲げる住人一人一人の不自由の為の捜査を彼らが見逃すことはない。諸君らが愛してくれたホリエ・モンは捕まった。なぜだ?」

「坊やだからさ」

●シーン2

乙部「ホリエがダメなんです、署名したくないって。」

特捜部「何だと!ホリエ、いいか!事情聴取なんだぞ!!」

ホリエ「聴取が終わったら、命が安全って言う保証があるんですか?」

特捜部「ホリエ!貴様、何故自分の任務を果たそうとしないんだ!」

ホリエ「特捜部さんは何故働いているんです?」

特捜部「今はそんな哲学を語っている暇はない、立てよ!おい!」

ホリエ「やめて下さいよ、そんなに署名したいなら、あなた自身が署名すればいいじゃないですか」

特捜部「出来ればやっている、貴様に言われるまでもなくな!」

ホリエ「ボクだって、出来ないから渋ってるんじゃない」

特捜部の怒りの手錠がホリエを拘束する。

ホリエ「逮捕したね」

特捜部「逮捕して何故悪い、貴様はいい、そうやって叫いていれば気が晴れるんだからな!」

ホリエ「ボクがそんな安っぽい人間ですか!」

更にもう一発。

ホリエ「二度も逮捕!親父にも逮捕されたこと無いのに!」

特捜部「それが甘ったれなんだ!逮捕もされずに容疑者になる奴がどこにいるものか!」

ホリエ「もうやらないからな!誰が署名なんかしてやるものか!」

特捜部「俺は東京地検に行く、ホリエ、今のままだったら貴様は虫けらだ!それだけの才能があればミキタニを越えられる奴だと思っていたがな!残念だよ!」

●シーン3

「君は、かつてライブ・ドアと呼ばれた企業を知っているか?」

「ええ、知ってますよ。かつてのITバブルの末期の英雄ですよね。有名です。たしか、孫・正義だったかな、息子なんでしょう?」

●シーン4

「貴公知っておるか? ホリエモンを」

「ホリエモン? 個人投資家ブームの人物ですな」

「一時は時代の寵児でな、法の網を読み切れなかった男だ。貴公はそのホリエモンの尻尾だな」


〇「寒い時代だと思わんか?」などと、つい反応してしまうではないか。どうでもいいことだが、ワシはあのブライト中尉が好きであったな。彼の心の狭さは、なんだか他人事とは思えなかったもので。そうかと思うと、「手の空いている者は右舷を見ろ。フラミンゴの群れだ」なーんて、いい人ぶっちゃうところもね。

〇そうかと思えば、以下は某証券関係者からのご指摘。リアルな世界の話なので、これを笑っていいものかどうか。

東証から「ライブドアは取引単位ベースで、当取引所上場銘柄の45%を占めている」由泣き言が出ました。

因みにもし仮に立会場がまだあれば
つまり場立ちがいればライブドアの取引も任せられますし、笛(立会中の板寄せによる中断で過熱を防ぐことが出来たのに・・・、という声もありそうです。

忘れられかけたテーマですが、当然1円で60万株の誤発注もありえません。何でも欧米に10年遅れの日本が、唯一例外的に先行した「完全システム化」がこのような問題を引き起こすとは、みっともない話です。

〇今日は取引が成立してよかったね。でも、いちばん笑えないのがこのブログです。皆さん、もう見てしまったかな? とうとうテレビご出演だとか。

●株でもうすぐ1億円達成!からライブドア20万3000株全力信用買!で大損こいて一気に地獄に落ちた日記

http://blog.livedoor.jp/easygame/?blog_id=1491082 


<1月26日>(木)

〇自分でも作ってみましたが、難しいもんですね。元ネタは「一週間」です。

♪月曜日に検察が来て

ブツとPCを持ってった

テュリャテュリャテュリャテュリャテュリャテュリャリャ

テュリャテュリャテュリャテュリャリャリャー

火曜日に売り注文出して

水曜日に約定ならず

木曜日にマスコミが来て

金曜日に帰っていった

土曜日は葬儀にも出ず

日曜日は悪口ばかり

株主よこれが私の一週間の仕事です

テュリャテュリャテュリャテュリャテュリャテュリャリャ

テュリャテュリャテュリャテュリャリャリャー


<1月27日>(金)

〇かんべえ宛てに送られてくる傑作には、まだ続きがあります。

●「粉飾会計はこれで撃退、弥生会計」というCMを是非流して欲しい。もちろんライブドアの新社長が出演のこと。

〇おーい、山田君。座布団1枚あげなさい。

●業界内では、ヒューザーのマンションと、ライブドア株の両方を持っている個人投資家が出てくるかどうかに、関心が集まっている模様。「これが本当の二階建て」と。

〇ライブドア・ホルダーは20万人だそうだから、きっと居るだろうな。名乗り出れば、英雄になれそう。他人の不幸は皆大好きだからね。


<1月28日>(土)

〇PCの中にある古いファイルを読んでいたら、面白い記事を発見した。かんべえが以前、社内向けの調査雑誌(現在は廃刊になっている)に寄稿したコラムで、1996年3月分とある。今からちょうど10年前に、こんな議論があったのでした。

◇自由貿易が危ない?

米国大統領選挙の序盤戦となる共和党予備選挙で、ブキャナン候補が予想外の健闘を示している。WTOやNAFTAからの脱退を主張し、「日本製品に10%、中国製品に20%の関税を」などと保護貿易主義を訴えるブキャナン氏に対し、米国経済界は困惑気味だ。なにより、親ビジネスと自由貿易主義を看板とする共和党自身が、極端な保護主義を訴える異端児の善戦に戸惑いを隠せないでいる。

ブキャナン候補に投票した有権者は、ブルーカラー労働者とキリスト教保守派が中心。その背景には、米国経済は 5年続きの成長で、企業は空前の高収益にもかかわらず、労働者の所得は増えず雇用不安も改善されないという、有権者の不満と不安がある。このような中では「途上国からの安い製品の流入が、アメリカの繁栄を破壊する」といった分かりやすいメッセージが説得力を持ちやすい。今後の選挙戦でも、貿易政策が焦点のひとつになりそうだ。

毎年 1月末にスイスのダボスで行われるWorld Economic Forumでも、興味深い現象があった。世界中の政財界の首脳が一堂に会するこの会合で、今年はロシア共産党党首ジュガーノフ氏が一番の注目を集めた。彼は世界経済のグローバル化の犠牲になった者たちの声を代表して、期間中は引っ張りだこになったという。フォーラムの主催者、シュワブ氏は「グローバリゼーションは重要な時期を迎えた。19世紀に機械が仕事を奪うと考えた人々がいたように、今日ではグローバル化が生活を破壊すると考える人々がいる」と警告を発している(New York Times 2月 7日)。

ブキャナン氏とジュガーノフ氏は、それぞれ米国およびロシア大統領選挙の台風の目となるだろう。両者はともに、グローバリゼーションに異議を唱える経済的弱者の利益代表である。こういった主張は表現こそ違え、フランスの労組や中東の原理主義勢力にも共通している。グローバル化と自由貿易主義は、必ずしもすべての参加者が勝者になることを保証しない。国際競争の勝者と敗者が見えてくると、保護主義を標榜するポピュリストが勢いを得るのは自然な動きといえるだろう。

クルーグマン教授のような経済学者は、「貧富の差拡大の真犯人は、急激な技術革新であり、グローバル化ではない」と断言する。自由貿易が常に正しいと理論的に証明することは困難でも、保護主義がより多くの害をなすことはつとに歴史が教えるところである。

資本主義と市場経済が普遍化すればするほど、体制への不安や異議申し立ては増えてくる。こういった弱者の声に応え、自由貿易への信頼を高めるために何をすべきなのか。シュワブ氏の言葉を借りれば、「自由貿易を信じている我々こそが、信じない人たちのために、より積極的にならなければならない」のである。 (吉崎)

〇パット・ブキャナンとかジュガーノフとか、とっても懐かしい感じですね。ここで書いたような話は、たしかにその時期にはあったのですが、その年の秋には完全に忘れ去られ、96年はクリントンが楽勝で再選されたのはご承知のとおりです。なぜ、そうなったかというと、景気回復が実感できるようになったからです。

〇こうしてみると、ライブドア・ショックにこじつけた「小泉改革による光と影」という最近、流行の議論も、今年の秋頃には忘れ去られているかもしれませんね。景気の回復は今年いっぱいは持続するでしょうし、「改革が経済の二極分化をもたらす」という議論は、「グローバル化が貧富の差を拡大する」という主張と同じように、一見、正しそうに見えるけれども、統計からは確認しにくいことだからです。

〇また、今の日本で経済格差が広がっているといっても、ほとんどは高齢化と世帯規模の縮小で説明できてしまう。その辺の話は1月の月例経済報告でも取り上げておりましたが、「下流社会」はあくまでも社会学的な問題であると思うのです。


<1月29日>(日)

〇こんなことを考えました。

怒ると、怖そうなのが安倍晋三。
怒っても、怖くなさそうなのが谷垣禎一。
怒っていなくても、怖いのが麻生太郎。
怒ると、なぜか本人がすねてしまうのが福田康夫。

〇もういっちょ。

笑うと、愛嬌があるのが安倍晋三。
笑わなくても、愛嬌があるのが谷垣禎一。
笑うと、顔が歪んでしまうのが麻生太郎。
笑うと、なぜか周囲に殺気が走ってしまうのが福田康夫。

〇なんだか福田総理も楽しみな気がしてきたな。


<1月30日>(月)

〇さくら殿、雪斎殿、やじゅん殿、ぐっちーさん、副会長とともに新年会。皆さん、ネットには書けないネタをたくさんお持ちで、いろいろ強烈な話の応酬となりまして、あらためて家に帰って何を書こうかと思うと、書けない話ばかりである。しょうがないから、替え歌の追加でお茶を濁すことにいたします。

>
> ●騙し海峡冬景色(石川さゆり)
>
> ヒルズ発の株価操作 ばれたときから
> マザーズ株は 雪の中
> 株を持った人の群れは 誰も無口で
> 耳鳴りだけをきいている
> わたしも一人 マザーズ株に乗り
> こごえそうな余力見つめ
> 泣いていました
> ああああ 小菅海峡 冬景色
>
> ごらんあれがライブオート 買えとばかりに
> 細木のばあさん 指をさす
> 涙くもる フォリオ余力 ちゃんとみたけど
> はるかにかすみ みえるだけ
> さよなら東証 わたしは帰ります
> 担保割れが 胸をゆする
> 泣けとばかりに
> ああああ ホリエ海峡 冬景色
>
> さよなら相場 わたしは帰ります
> 二階建てで 担保割れて
> 泣けとばかりに
> ああああ 粉飾決算 冬景色♪
>
>
> ●別れも好きな人(ロス・インディオス&シルヴィア)
>
> (ホリエ&乙部)
> 騙した人と会った 小菅の独居で会った
> 騙したときと同じ 寄りは強かった
>
> (乙部)
> 金もかけずに分割 お金を巻き上げヒルズ
> 匿名組合かまして うまく売り抜けた
>
> (ホリエ&乙部)
> やっぱり忘れられない
> 変わらぬインチキ手口で
>
> (乙部)
> お金を集めてしまう みんな馬鹿だから
>
> (ホリエ)組合で(乙部)売り抜ける
>
> (ホリエ)粉飾で(乙部)売り抜ける
>
> (乙部)
> 遊びたいのよ赤坂 ドンペリ抜いてるヒルズ
> 思いがけない高値で 株を売り抜けた
>
> (ホリエ)
> ちょっぴり危ない決算 いつもの粉飾指導
> ジェットでとんずらするわ 検事ばれるから
>
> (ホリエ&乙部)
> やっぱり、忘れられない
> 変わらぬ易しい手口で
>
> (乙部)
> 株券捌いてしまう だめよ 大笑い
>
> (ホリエ)株主は(乙部)ちょろすぎる
>
> (ホリエ)国民は(乙部)馬鹿すぎる
>
> (ホリエ)東証も(乙部)あほすぎる
>
> (ホリエ)売り抜けて(乙部)大もうけ♪
>
>
>
> ●ホリエ故意しぐれ (都はるみ&岡千秋)
>
> (ホリエ:男)
> 銭のためなら 株主泣かす それがどうした 文句があるか
> 雨の新興 おおくずれ
> ライブしぐれか 売りばやし
> 今日も呼んでる 今日も呼んでる
> 地検の鬼検事
>
> (セリフ)
> 「そりゃわいは詐欺や 粉飾もするし 分割もかます
> せやかて それもこれも みんな銭のためや
> 今に見てみい!わいは世界一の時価総額になったるんや
> 世界一やで わかってるやろ
> なんや その辛気臭い顔は 株や!株や!
> 金もってこい!」
>
> (株主:女)
> そばにわたしが ついてなければ
> 粉飾しちゃう この人やから
> 泣きはしません つらくとも
> いつか小菅の華となる
> 惚れたホリエの 惚れたホリエの
> でっかい夢がある
>
> (セリフ)
> 「スケベ心で 一緒になった仲やない
> 組合も使いなはれ 粉飾もしなはれ
> あんたが日本一の香具師になるためやったら
> あちは どんな苦労にも耐えて見せます。」
>
> (ホリエ:男)
> 凍りつくよな 小菅の座敷
>
> (株主:女)
> 耐えて花咲く 夫婦花
>
> (ホリエ:男)
> これがおいらの 故意決算
>
> (株主:女)
> あなたわたしの 生き甲斐と
>
> (男女)
> 笑う二人に 笑う二人に
> 上場廃止くる♪
>
>
>
> ●勝手にしやがれ(沢田研二)
>
> 壁際に寝返りうって
> 背中で聞いている
> やっぱりお前は出て行くんだな
> 悪いことおいらじゃないと
> 証拠をかき集め
> 検事にたれこむ気配がしてる
> 行ったきりなら幸せになるがいい
> 戻る気になりゃ、いつでもおいでよ
> せめて少しはカッコつけさせてくれ
> 実刑くらうまに 出て行ってくれ
> ああ あああ あああ ああ
> ああ あああ あああ ああ
>
> かび臭い毛布を抱いて
> 小菅の窓に立つ
> 宮内ふらふら行くのがみえる
> さよならというのもなぜか
> しらけた感じだし
> 想定範囲と 送ってみるか
> 別に検事を困らせたわけじゃない
> 粉飾決算 照れてただけだよ
>
> 詐欺というのに派手なパフォーマンスかけて
> 朝までふざけよう ワンマン経営
> ああ あああ あああ ああ
> ああ あああ あああ ああ
>
> 詐欺というのに派手なパフォーマンスかけて
> 朝までふざけよう ワンマン経営
> ああ あああ あああ ああ
> ああ あああ あああ ああ♪
>
>
> ●ナンピン一人旅(山本譲二)
>
> ここで追証 いれたらいいと
> すがる涙の いじらしさ
> その場しのぎの なぐさめ言って
> なんぴん一人旅
> うしろ髪ひく 怨嗟の声を
> 腹でたちきる ホリしるべ
> 生きていたなら いつかは会える
> 小菅でも 逢えるだろう
>
> 相場流れに さからいながら
> ひとり買い増し 胸のうち
> 俺は男と つぶやきながら
> なんぴん一人旅
> 100の分割 粉飾組合
> 決算内容 うそだらけ
> 記事がでるほど 維持率われる
> 維持率 割れるだけ
>
> たとえどんなに恨んでいても
> たとえどんなに 材料欲しくとも
> お前は東証 監理のポスト
> 東証マザース 監理のポスト
>
> たとえどんなに 買い増ししても
> お前はもうすぐ 整理のポスト
> たとえどんなに ナンピンしても
> お前はもうじき 上場廃止♪
>

〇いやはや、どこのどなたかは存じませんが、創作意欲はすごいものがありますね。個人的には、ここに挙げられているような古い歌のほうが、元歌が分かりやすくてありがたいと思います。うーん、久しぶりにカラオケに行ってみたいような。


<1月31日>(火)

〇厚生労働省の一般職業紹介状況が発表されました。12月分の有効求人倍率はとうとう1.0です。おめでとうございます。これから先は人手不足ですぜ。とはいっても、雇用形態別のデータを見ると、正社員有効求人倍率は0.65ということになりますけどね。

〇例によって、地域差があるわけでして、都道府県別のデータを見ると、愛知県の1.61から青森県の0.44(加筆修正:実は沖縄の0.41の方が低かった)までの開きがあります。これで見ると、群馬県の伸び方がすごいようですね。何でも聞くところによると、高崎市のデパートでティファニーの店が入ったところ、全世界で最高の売上となり、本店から視察にきたんだそうです。ま、そんな群馬県も、見かけ上は「シャッター通り」が多かったりするので、現在の景気回復というのは過去の常識があまり通用しません。

〇このデータを見ていて、しみじみ思い出したことがあります。先週末、柏市の名物中華料理屋、「知味斎」の西口店に行ったところ、近々閉店とあるのでビックリしてしまった。店は繁盛しているし、味も落ちていないし、建物は古いから減価償却はとうに終わっている店なのである。閉店の理由は、「料理人の独立が相次いで、育成が間に合わなくなったから」だそうだ。考えてみれば、最近は都内のいろんな場所に新しいビルやモールがオープンしているが、そのほとんどすべてに中華料理屋が入っている。料理人が足りないのだ。逆にいえば、今は料理人として独立する絶好のチャンスだというわけ。

〇「知味斎」といえば、日本で初めてチンゲンサイを導入した店であります。(柏市周辺では、チンゲンサイを植えている農家が多い)。そこが料理人をいっぱい引っこ抜かれて、店を閉じなければならない。業種によっては、人手不足は深刻ですね。タイムラグはあるでしょうが、人件費の上昇はいずれ物価にも及ぶでしょう。ううむ。








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki