●かんべえの不規則発言



2019年11月






<11月1日>(金)

○本日はラグビーW杯、3位決定戦へ。久しぶりにニュージーランド大使館からお呼びがかかり、意気揚々と東京スタジアムに参集いたしました。先週はイングランドに不覚を取ったとはいえ、そこはオールブラックスである。ましてウェールズを相手にした場合は、最後に負けたのが66年前なんだそうだ。最初から勝つ気は充分なのである。

○ゲーム開始早々、オールブラックスはペナルティゴールを外してしまう。その瞬間、イヤーな雰囲気が流れる。でも、すぐに最初のトライが決まる。今日のオールブラックスは、ラインアウトの時などしばしば「らしくない」ミスが飛び出すのだが、それでもウェールズ相手のスコアは40対17で快勝。これだけミスがあって勝つのだから、調子がいいときはどれだけ強いんだろう。

○でも、W杯は長い闘いだから、けが人も出るし、調子が悪い選手もいる。油断して不覚を取ることだってある。強さというものは、けっして絶対的なものではない。だからこそ、勝ち続けることに値打ちがあるのだが。いや、それにしても強い側を応援するのは、ストレスが無くて結構なことである。

○ノーサイドになってふと背後を振り向いたら、貴賓席には上皇陛下と上皇后陛下が手を振っていた。いや、こんな距離で見たのは初めてのことである。その瞬間に、空気が変わるというのは本当でした。

○NZの勝利を称えつつ、関係者一同が新宿で乾杯する。NZの「コヤマワイン」のオーナーが居たのにはびっくりしましたな。まことに不思議なご縁でありました。


<11月2日>(土)

○昨日、調布→新宿から遅い時間に帰ってきて、今朝は都立大学へ。うーむ、遠いぞ。いや、柏の方が遠いのか。都立大学での用事はとっても面白くてためになるものなのだが、いかんせん寝不足だし疲れておるし、早々に退散。さて、あの後はどうなったことやら。

○夕方からW杯決勝戦、南アフリカ対イングランド。準決勝でオールブラックスを倒したイングランドであったが、南アフリカの強靭なスクラムの前にはまるで歯が立たず。序盤はペナルティゴールを決めあう展開であったが、最後はバシッ、バシッとトライを決められて大差に。結局、スプリングボクスの3度目の優勝ということになった。

○昨日ご一緒したNZ関係者は「南ア押し」が大勢で、これは南半球同士というのよしみもあるのだろうが、プール戦で勝った相手ということもあるのだろう。もっともプール戦とトーナメント戦では闘い方も違うし、全然別物だという見方もある。ともあれ、ラグビーについては「南高北低」ということになりそうである。

○ああ、それにしてもW杯が終わってしまった。これで明日から何を楽しみにしていけばいいのだろう。TVなんてまったく見るものがないぞ。いや、それにしてもこの1カ月半、ずいぶんラグビーに楽しませていただいた。もちろん「にわか」であるし、ルールだって覚束ないのだが、スポーツを楽しむのに理屈は要らないのである。

○そういえば来年の東京五輪になれば、7人制ラグビーがあるのですな。これも楽しみなことであります。


<11月4日>(月)

○2020年アメリカ大統領選挙まで、残り1年となった(投票日は11月3日)。日経新聞の特集がモーレツに力が入っている。今日が第3回目で、あと3回分あるらしい。良く調べてあって、なるほど勉強になりますね。

○2016年の選挙を皆が一斉に外してしまったので(当サイトもだが)、今回こそはと真剣になっているのだと思う。そもそも新聞というビジネスは、これから先、皆がどれだけおカネを払ってくれるのかという点に疑義が生じている。もはや単なるファクトでは買ってもらえない。オピニオンとフォーキャストがないと売れない、という意識があるのだろう。たぶんFTやWSJやThe Economistは生き残る。日本の新聞はどうなのか。

○2016年選挙で殊勲賞だったのは朝日新聞の金成隆一記者で、その成果は『トランプ王国』シリーズに結実している。実は『ルポ トランプ王国2 ラストベルト再訪』(岩波新書)は手元にあるんだけど、まだ読んでない。こういう取材があればこそのジャーナリズムであって、2020年選挙も是非、定点観測を続けてほしいと思う。おそらく、言われなくてもやると思うけど。

○歳川隆雄さんが現代ビジネスの連載で、「ペンス演説、新聞各紙が読み落としている」と指摘している。溜池通信最新号とほぼ同じような解釈をしていて、読み比べていただくと面白いと思います。最後の一文に、「尚、ワシントン情報によると、ペンス演説のスピーチライターはアレキサンダー・グレイ米国家安全保障会議(NSC)特別補佐官であるという」とある。これは初耳だなあ。

○さて、今日は3連休の最終日。昨日は東京モーターショーに出かけたのだが、あまりの混雑に悲鳴を上げて帰ってきてしまった。クルマって、まだそんなに人気があったのだなあ。夜はW杯ロスで、哀しいからハイネケンを空けている。いいじゃないか、プレミアムモルツやヱビスよりも安いのだから。さて、明日は仕事だなあ・・・(くにまるジャパンのネタをどうしよう?)。


<11月5日>(火)

○今朝のくにまるジャパン極で、トランプ陣営の選挙CMについてご紹介しました。先週行われたワールドシリーズの際に、「7ケタの資金(数百万ドル)」を投入して放映したという30秒CMであります。こんなことを言ってます。


"President Trump is changing Washington. Creating new 6 million jobs, 500,000 manufacturing jobs. Cutting illegal immigrant half."

"Obliterating ISIS, Their caliphate destroyed. Their terrorist leader dead,”

"But the Democrats would rather focus on impeachment and phony investigations, ignoring the real issues."

"But that's not stopping Donald Trump.
He's no Mr. Nice Guy, but sometimes it takes a Donald Trump to change Washington."


「トランプ大統領はワシントンを変えつつある。新しく600万の雇用を創出し、その中には50万の製造業の雇用を含む。不法移民の数は半分に減らした」

「ISISを再起不能にし、彼らの王国は破壊された。テロリストの指導者(バグダーディ)は死んだ」

「しかし、民主党連中は弾劾やら馬鹿げた調査にうつつをぬかし、現実の問題を無視している」

「それでもドナルド・トランプが立ち止まることはない。彼は『いいヤツ』ではない。だが、ワシントンを変えるには、ときにはドナルド・トランプのようなヤツが必要なんだ」


○久々にパンチのあるコピーを読んだ気がします。なにしろ「彼はナイスガイじゃない」ですからね。2016年選挙で民主党からトランプ支持に鞍替えした有権者は、まさしくそれを期待して投票したわけですから。2020年を前に再び迷い始めている有権者も多いことでしょうが、米国経済は実際に悪くないですからね。

○広告の世界においては、古い時代にエービスレンタカーによる"We are only No.2 in rent a cars business."という秀作がありまして、最大手のハーツレンタカーをキリキリ舞いさせた故事があります。自分の弱みを堂々と認めることは、得てして「刺さる言葉」になるという好例です。

○先月末、民主党はとうとう弾劾訴追に踏み切っちゃったけど、こんな風に逆襲に出てくるときのトランプさんは怖いですよ。あたしゃ弾劾は悪手だったと思うなあ。ペローシ下院議長は、百も承知で勝負に出たのだと思うけど。


○ところで以下は宣伝です。12月13日(金)に大阪で関西安全保障セミナーが行われます。不肖かんべえも登場いたします。ご来場ご希望の方は、どうぞ下記のサイトからご登録ください。

http://www.rips.or.jp/archives/symposium_category/symposium-category-02/ 

第12回 RIPS 関西安全保障セミナー 2019(大阪)

【テーマ】
 「米中『新冷戦』と日本の選択」
 
【日時】 2019年12月13日(金)14−17時 (受付13時30から)
14:00  開演の挨拶 中内 政貴(大阪大学准教授)
14:05  基調講演 
   「米中『新冷戦』と日本の選択」
   吉崎 達彦 (株式会社双日総合研究所チーフエコノミスト)
 
15:15     パネルディスカッション
     司 会 中内 政貴(大阪大学准教授)

         パネリスト
      村田 晃嗣 (同志社大学教授)
      小原 凡司 (笹川平和財団上席研究員)
 
質疑応答
 
17:00 終了
17:15   懇親会(9階交流サロン)
 

【参加費】セミナー:無料
     懇親会:一般4000円、学生2000円
【会 場】大阪大学中之島センター10階
    佐治敬三メモリアルホール
 
【アクセス】:http://www.onc.osaka-u.ac.jp/others/map/index.php
 
京阪中之島線 中之島駅より 徒歩約5分
阪神本線 福島駅より 徒歩約9分
JR東西線 新福島駅より 徒歩約9分
 
【主 催】大阪大学大学院 国際公共政策研究科
               一般財団法人 平和・安全保障研究所
【助 成】国際交流基金日米センター
【後 援】大阪防衛協会、株式会社インターグループ
 

<11月6日>(水)

○英国議会の下院が解散しました。総選挙は12月12日です。かの国では、なんと選挙期間が5週間もあるのですね。これは長い。

○ちなみにわが国における選挙期間は下記の通りです。

*参議院選挙及び知事選挙が17日間。
*政令指定都市の市長選挙が14日間。
*衆議院選挙が12日間。
*都道府県議会選挙及び政令指定都市議会選挙が9日間。
*政令指定都市以外の市議会選挙及び市長選挙が7日間。
*町村議会選挙及び町村長選挙が5日間。

○ましてアメリカ大統領選挙となると、これはもう1年以上の長い戦いとなりますからね。わが国の選挙期間は国際的にみるととっても短いのです。

○英国の人口は6643万人とわが国の半分しかないのに、下院議員(庶民院)は650人もいます。割り算すると、1選挙区当たりの有権者数はほぼ10万人ということになる。かなりの小選挙区ですね。真面目な話、これなら5週間で選挙区内をくまなく回れるかもしれない。有権者と政治家の距離はかなり近いということになります。

○しかも向こうは戸別訪問がアリですからね。ジェフリー・アーチャーの『めざせダウニング街10番地』(新潮文庫)には、候補者が家庭を訪ねていくと、支持者は「ウチはアンタに入れるから、時間を無駄にしないで他の家へ行け」と言い、反対党の支持者が「お茶でもどうぞ」と言って引き留めようとする、というシーンが出てくる。これ、日本だと逆になるでしょうな。

○わが国の選挙制度では、「政治家の戸別訪問を認めると、現ナマを配るヤツが出てくるかもしれない」ということで禁止されていて、その代わりに選挙カーで候補者名を連呼するという野蛮な選挙戦術が行われます。あれを5週間もやられたらマジでかなわんだろうな。昔は本当におカネを配る政治家も居たそうですが、さすがに21世紀にそれはないでしょう。ネット選挙も含めて、いろいろ見直すべきことが多いように思われます。


<11月7日>(木)

○ううむ、不思議だ。今週は激ヒマになるはずであったのに、ずっとバタバタしておる。対外向け原稿は先の分も合わせて3本も納めたし、懸案になっていた先の予定もちょっとずつ片付いている。われながら偉いではないか。

○しかも今週は、とっても面白い話を2件聞いている。ところが2つともオフレコなので、ここでは書けない。書くとすぐバレるようになっている。かくなる上は時間をかけて、材料が原型をとどめなくなるまで煮込んで、ポタージュスープのような状態にして出すしかあるまい。それはそれで楽しい作業というものである。

○まだ残っている懸案は、Win7のサポート期間終了が近づいているので、そろそろPCをWin10に換えなければならない。その場合、このサイトを書くソフトをどうするかである。試しに「ホームページビルダー21」というソフトの30日体験版をダウンロードしてみたら、あまりにも複雑で触る気もしない。溜池通信はただのテキストファイルなので、HTML文書がサクサク書ければそれでいいのだけど。

○これまで長いこと、Win2000か何かに載っていたFrontPage Expressというソフトを使って、この「不規則発言」を書いてきた。HTML文書で書いて、FFFTPでアップする。基本的にタダだし、インターネット初期と変わらない原始的手法である。といっても、当サイトはビジュアルに凝ったり映像を載せる気はないので、このままで充分なのである。

○ところがFrontPage Experessは、さすがにWin10では使えないようだ。うーん、何か楽な方法はないですかねえ。いやホント、今のままで不満はないんですけどねえ。


<11月9日>(土)

○日台関係研究会があるので渋谷へ。ハロウィンもW杯も終わったというのに、スクランブル交差点の賑わいはあいかわらずで、自分も歩いていて「これで人同士がぶつからないのは奇跡」だと感じる。外国人比率も相変わらず高くて、今どきめずらしい自取り棒もここでは盛況でパシャパシャやっている。

○考えてみたら、台湾総統選挙まであと2か月。前回2016年もそうだったが、2020年選挙も現地に行かなければならない。とりあえず1月11日前後のエアフライトと台北の宿の予約だけは済ませてしまったのだが、今のところは向こうで何するという予定はない。でも行ってみれば、きっと同好の士がいっぱい来ているはずである。

○案の定、日台関係研究会に行くと、そういうお仲間がちゃんと見つかるのである。今回の選挙では、蔡英文総統の再選はかなり濃厚なのだが、同日に行われる立法院選挙が微妙であるらしい。過去4年間で労基法改正とか、年金と税制改革とか同性婚の合法化など、いろいろやりましたからね。加えて中国からの影響力行使や香港情勢の行方など、最後の2か月で果たしてどんなことが起きるのか。

○蔡英文は副総統に、一時は党内のライバルとなっていた頼清徳元行政院長を選ぶらしい。民進党は挙党一致体制、ということであろう。対するは国民党は韓国瑜高雄市長だが、毎度おなじみ親民党の宋楚瑜が第3政党で出るのか、テリー・ゴーこと郭台銘や台北市長の柯文哲はどう動くのかなど、関心は尽きない。

○考えれば考えるほど、台湾政治は複雑怪奇。しかもこれを取り巻く国際情勢はさらに奇奇怪怪。ということで、今から選挙が楽しみなのである。


<11月10日>(日)

○本日は町内会の秋季清掃。春のようなドブさらいはしませんが、草刈りをやりまする。この時期、流行っているのが庭木を切る作業です。ほとんど、ここ数年の恒例行事になっている。

○高齢化が進むと、庭木の手入れが手が回らなくなる。そのうち、伸び過ぎて電線に引っかかるかもしれない。だったら今のうちに切ってもらおう、プロの庭師さんに頼むとお金かかるし、ということになる。町内会が総出になるこの機会は、庭木を切ってもらうチャンスなのです。

○なんとなれば、町内会には木を切る道具が一杯揃っている。いや、これがホント最近の道具はよく出来ていて、気持ちがいいくらいに切れちゃうのです。実はチェーンソーもあったりする。この作業は結構ハマります。ついつい切り過ぎるくらいまで切ってしまいます。町内のゴミ捨て場は、切り刻まれた庭木で一杯になってしまいました。

○かつてイラク戦争が起きた時に、ときの国防長官だったラムズフェルド氏について、「道具箱の中に入っているのがハンマーだけだった場合、あらゆる問題が釘に見えてしまう人」という評価がありましたが、その気持ち、少しだけわかります。よく切れる鋏を持ってしまうと、とことんまでよその家の庭木を切りたくなってしまうのです。

○が、所詮は素人がやる作業なので、仕上がりはお世辞にもキレイとは言い難いものとなります。でも、それで問題になるわけでもなく、とりあえずサッパリするのはこれも快感です。戸建てには庭木、というかつての常識は、どんどん過去のものになっていくのかもしれません。いや、その分、町内の緑は失われることになるのですが。

○午後は近所の公園で打ち上げ。いやあ、仕事の後のビールは旨い。わが町内も高齢化は日に日に進んでいるのですが、総出でこんな作業ができるのはありがたいことだと思います。


<11月11日>(月)

○本日は長島昭久衆議院議員の「エンパワージャパン・フォーラム」へ。

○セミナーでは河野防衛相が講演、来賓あいさつに加藤厚労相、それから懇親会に場を移して二階幹事長、萩生田文科相、西銘衆院安保委員会委員長、西村経済担当相、それから乾杯の発生が橋本聖子五輪担当相、少し遅れて菅官房長官が登壇、という豪華メンバーでした(発言順)。

○いろんな発言が飛び交いましたが、いちばん個人的に受けたのは西銘さんでしたな。

「この場に二階幹事長が来るのはすごいことで、それだけ長島さんに期待が高いから。ちなみに私のところへは一度も来てくれない」

○まあねえ、西銘さんは沖縄の選挙区で、長島さんは東京都内(新しい選挙区は未定)ですから、そこは割り引いてあげないと。

○その昔、長島さんがまだ当選して間がなかった頃、「自民党には(リベラルな)加藤紘一氏が居る。民主党には(保守派の)長島昭久氏が居る。政権交代可能な二大政党制を目指すためには、こんな風でなきゃいけない」などと言っていた記憶がある。それが今では、「長島さん、もっと早くそうすべきだったよねえ」と言いながら、皆が自民党への入党を喜んでいる。何であそこまで民主党で頑張って来たのか、今となっては本人でさえ思い出せなくなっているように見える。

○この20年弱で、アメリカや韓国などで顕著な政治の二極化現象が、わが国でもそれなりに起きているのであろう。立憲民主だか国民民主だか希望の党だか、今ではもう何が何だかわからなくなっている「あの党」は、たぶん長島さんが離党したことをあまり惜しんではおらず、そもそも現実的な外交安保政策への関心も失っているように見える。まあ、それ以前に政権を獲る気がなくなっているのかもしれませんが。

○こんな風に政治家のパーティーが盛り上がるのは、解散風が適度に吹いていることも一因かもしれない。「11月20日解散、12月15日総選挙」説がありますからね。でも、この日程に踏み切るとなると、日米通商協定の批准が今国会では間に合わないことになるし、そもそも台風19号の被害がこれだけ残っているのに選挙かよ、という反発をくらうだろう。ちょっと考えにくいよね。

○安倍さんの四選はなくなったみたいだし、大臣2人の首が飛んだことで菅さんも立場悪くなったようだし、かといってポスト安倍の姿も見えてこない。まあ、こういうのもいいのではないでしょうか。政局はしばしグダグダモードでありますな。


<11月12日>(火)

○ということで、グダグダモードの今の政局においては、「桜を見る会」が問題になっているようです。

○前に何度も書いておりますが、不肖かんべえは2009年からずっと続けてご招待を受けております。過去の出欠状況は以下の通りです。


2009年(麻生内閣):出席→当欄にも記載あり(4月18日)。

2010年(鳩山内閣):欠席→あまりにも雨がひどかったので(4月17日)。

2011年(菅内閣):中止→東日本大震災により。

2012年(野田内閣):中止→北朝鮮の弾道ミサイル対策により。

2013年(安倍内閣):出席→当欄にも記載あり(4月20日)。

2014年(同上):欠席→中山競馬場のニュージーランドトロフィーへ(4月12日)。

2015年(同上):出席→当欄に記載はないが、撮った写真が残っているからたぶん行っている(4月18日)。

2016年(同上):??→うーん、記載もないし、写真もないし、記憶もない(4月9日)。(後記→どうやら前夜に深酒して起きられなかったらしい)

2017年(同上):出席→当欄にも記載あり(4月15日)。

2018年(同上):出席→当欄にも記載あり(4月21日)。この年はほとんど桜は散ってました。

2019年(同上):出席→当欄にも記載あり(4月13日)。


○土曜日の午前8時半から10時半まで、という時間帯なので、ワシ的には遅刻することが多いです。招待状を持っていけば入れてくれますが、本人チェックはありませんし、当然、「出欠」を確認したりはしません。それから芸能人の招待客などは、入り口からして別になっているようです。

○まあ、招待客に政治家が自分の支持者を招くというのもせこい話ですが、それが利権だからケシカランと言うのもみみっちい話だと思います。少なくとも「もりかけ」で倒れなかった内閣が、これで倒れることはないでしょう。こんなことを「追及だ」と言っている野党は大丈夫なのかなあ。


<11月13日>(水)

○あららら、桜を見る会は来年で中止なんだそうです。それほど予算がかかっているわけでもないのにね。

○それはさておいて、新宿御苑は東京が誇るべき場所であります。4月中旬は特に八重桜がキレイです。入場料200円でそれが堪能できるのですから、天気のいい休日は特にお勧めです。政府主催の「桜を見る会」ではそれがタダになりますが、お土産でもらえる「マス」は遅れて行くと品切れになっているし、会場内で提供されている焼き鳥や和菓子はそんなにおいしくはありません。(→後記:なんと新宿御苑の入場料は、いきなり一般500円に値上がりしていたのですね。まあ、確かに今までが安過ぎたけど・・・)

○強いて言えば、陸上自衛隊中央音楽隊が年に1度の発表の舞台を失うことが惜しまれます。「桜を見る会」では毎年、彼らが「春」をテーマにしたいろんな歌を演奏してくれる。毎年、あれを聞くのを楽しみにしておりました。海外の外交官や武官がよく聞きに来ておりました。

○つくづく無粋なことだと思います。が、これも世の中の「空気」というもの。たぶん先月から消費税が上がったことも、無関係ではないのでありましょう。


<11月15日>(金)

○今宵はトーハクの「正倉院展」へ。ありがたいことに、この時期のトーハクは金曜土曜は午後9時までやっている。午後7時に平成館に到着したところ、入場は20分待ちでした。いやあ、スゴイ人気だねえ。ちなみに午後8時になると、ほぼ行列は解消するみたいです。これから行かれる方はご参考まで。

○いろんな宝物を見て回りましたが、こういうものが保存されてきたということが素晴らしいと思います。中国の琵琶もペルシャの杯も、現地ではもう残っていないかもしれません。ところが、シルクロードの東の果てには、こういうものを大事に取っておく島国があったのです。

○エジプトの国王たちは、強大な権力を誇ってピラミッドを作り、そこに宝物を隠したそうです。ところが、それらはあらかた盗まれてしまった。けれども、正倉院は千年を超えて、聖武天皇の宝物を守ってきた。戦乱や自然災害もいろいろあったはずなのに。

○もうひとつ、噂に名高い「蘭奢待(らんじゃたい)」の現物が興味深かった。天下の名香で、織田信長がその一部を切り取ったというから、さぞかし遠慮なくバッサリやったのかと思ったら、意外と小心な切り取り方でありました。足利義政とほぼ一緒だなんて、そんなことで良かったのだろうか。

○それにしてもトーハクは広くて見応えがある。しみじみ上野は日本のスミソニアンですな。この集積、大事に次世代に渡していかなければなりませぬ。


<11月16日>(土)

○本日は柏市制施行65周年記念市政功労者表彰式へ。なんとワシは市政功労者の1人なのである。といっても、ワシが受けた自治功労は、211名2団体も居るのであるが。要は長年にわたる町内会活動に対するご苦労さん賞みたいなものである。いわゆる「お手盛り人事」ってやつでしょうか。

○市政功労者には、ほかにも「市民活動功労」「保健・福祉功労」「経済功労」「環境・都市・土木・建設功労」「教育功労」「安全消防功労」などのジャンルがあります。さりげなく省庁縦割りとなっている様子が窺える。全員の名前を読み上げるだけで一苦労となる。

○今から65年前と言えば、1954年のことである。経済白書が「もはや戦後ではない」と書き、日本映画の名作『ゴジラ』と『七人の侍』が誕生した。発足から間もない柏市は、人口わずか4万3333人であったとのこと。それが昨年は42万4322人になっているので、ほぼ10倍に発展したことになる。

○この日は柏市立柏高等学校こと「イチカシ」の吹奏楽部が、過去65年の流行曲を演奏をしてくれました。65年前の流行歌は「高原列車がゆく」でありました。それにしても、イチカシのブラバンはスゴイ実力で、譜面もなしに何局も続けて演奏してくれるのである。

○もうひとつの出し物は、柏市出身の落語家、立川志の春の高座でありました。演目は「牛ほめ」。「穴が気になるなら、秋葉さまのお札をお貼んなさい」「するとどうなる?」「穴がふさがり、火の用心になります」というアレである。久しぶりに聞きましたが、こういうベーシックなネタはよろしいですな。

○本日は、わが柏レイソルがFC町田ゼルビアを相手に0−3で快勝し、J2からJ1への復帰を決めました。得失点差は実にプラス40。まことにダントツの強さでありました。とりあえずめでたいのである。


<11月17日>(日)

○久しぶりにお昼に近所の「王将」でギョーザと回鍋肉を食べた。これが何とも旨い。実は昨晩、某所で贅沢なもの(香箱ガニなど)を食っておるのだが、それとはまったく別の意味で旨い。しばし幸福感に浸る。

○それでふと思い出したのだが、将棋の世界ではいま、王将戦がいちばん面白い。いや、今年から「大阪王将」が特別協賛スポンサーとなり、正式には「大阪王将杯王将戦」となったのである。もちろん、大阪王将はただ賞金を出すだけではなく、特別メニュー「将棋めし」を提供したりしている。将棋の対局には出前がつきものなので、これはよいところに目をつけたものだと思う。

○現在の王将位は渡辺明三冠である。それに対する挑戦者リーグには、豊島名人、広瀬竜王、羽生九段など棋界の最有力者7人が顔を揃えているのだが、その中に藤井聡太七段が入っている。いよいよ最終局を迎える時期なのだが、広瀬竜王と藤井七段が4勝1敗で首位を走っていて、これが11月19日火曜日に激突する。勝った方が渡辺王将に挑戦する。藤井七段、ひょっとすると史上最年少のタイトル戦挑戦者となるかもしれない。

○いやあ、来るべきものが来たかもしれない。これは気になりますな。11月19日夜には、日本将棋連盟が急きょ特別大盤解説会をやるそうである。仕事の予定が入っているのだが、うーん、そっちに行きたいのう。気になって仕方がないぞ。それはそれとして、大阪王将と餃子の王将の違いはこちらをご参照。


<11月18日>(月)

○香港情勢が急速に悪化している。それは今週末24日に地方議会選挙があるのだから、無理もない展開でありますわな。デモ隊が大学構内に立てこもる、という分かりやすい手段に出たのは、要は警察に向かって「鬼さんこちら、手のなる方へ」と誘っているようなもの。そりゃあ火炎瓶も投石もありますわな。警察は催涙弾と放水車で対応するわけで、これではけが人も出るはず。

○こういうとき「敵は本能寺」と考えなければならない。本能寺は米国議会上院となる。「香港人権法案」は既に下院を通過済みで、上院でも採決すれば100%通るという情勢である。なぜこれまで審議をしていないのかと言えば、ミッチ・マコーネル上院院内総務(Majority Leader)が、対中ディールを急ぐトランプ大統領に忖度して、「寸止め」にしているから。しかし状況があまりに深刻化すると、上院も無視することができなくなる。

○その場合、トランプ大統領が法案にサインするかどうかが次の焦点になる。この法案において、議会は国務省に対して「一国二制度が守られているかどうか」の監視を要請する。その上で、守られていないとなったら、米国が香港に与えている特権を見直すという内容。これが通れば、当然、中国は姿勢を硬化させるだろう。

○香港がこんな風になるなんて、いったい誰が予想しえたでしょうか。あの雨傘運動から5年が過ぎ、昨今では「香港政治は安定している」と言われてきたのに。強いて言えば、こんな風に追い込んでしまったのは北京の失策でしょう。自身がないから強硬策に出て、裏目の結果を招く。中国共産党はつくづくそういうことの連続でありまして、まあ、同情する必要もないのでありますが。今週はここが一番気になります。


<11月19日>(火)

○今朝、文化放送に行ったときに、「この本、富山関連なので吉崎さんどうぞ」と言われてもらってしまった。

○ぱらぱらとめくって見た瞬間、「うーん、この本はどんな人に向けて書かれているんだろう」と不思議に思ってしまったが、何のことはない、ワシ自身が楽しみながら今日1日で読んでしまった。富山で生まれ育った女性が、東京で「自分探し」をつづけた後に、夢破れて富山に帰ってから苦闘する話。といっても悲壮感はまるでない。地方都市のリアルを描いた青春ストーリーのごとし。

○現在アラフォーである彼女の人生は、とっても「痛い」話の連続である。ところが妙に自己を客観視していることと、自分の両親や周囲の人物の描写が「立って」いるために、楽しくすいすい読めてしまう。文中の富山弁も非常に自然。テイスト的には、初期の西原理恵子のマンガみたいな感じかな。


●どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜 単行本 2019/10/16

藤井 聡子 (著)

https://www.amazon.co.jp/%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%AB%E3%81%A7%E3%82%82%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%89%8D%E3%81%AB%E3%80%82%E3%80%9C%E5%AF%8C%E5%B1%B1%E8%A6%8B%E8%81%9E%E9%80%A1%E5%B7%A1%E8%A8%98%E3%80%9C-%E8%97%A4%E4%BA%95-%E8%81%A1%E5%AD%90/dp/4907497091/ref=sr_1_1?qid=1574152555&s=books&sr=1-1&text=%E8%97%A4%E4%BA%95+%E8%81%A1%E5%AD%90 


○なるほど、富山って他者の眼で見るとこうなるよね、とか、ふーん、最近の富山にはそんなものがあるの、などと教わること多し。概して同調圧力の強い風土であり、他所から来た人やUターン組にとっては手ごわい土地かもしれないのだが、一定の割合で変わり者もいるし、この著者の母が典型なのだが、たくましい経営者タイプが多い県でもある。

○富山という町が面白くなるかどうかは、所詮はそこに住んでいる人次第。LRTが走っているとか、コンパクトシティーだとかはあまり関係がない。地方活性化には「よそ者、若者、愚か者」が必要だとされるが、この著者はまさしくその役割を果たしているのだと思う。富山にご関係の方、とりあえずアマゾンのサイトを覗いて見られることをお勧めいたします。

○ところで一昨日ご紹介した王将戦の挑戦者決定戦ですが、今宵は広瀬竜王が藤井七段を破って渡辺王将への挑戦権を得ました。史上最年少のタイトル戦挑戦はなりませんでした。終盤、惜しかったですねえ。しかし王将戦の挑戦者決定リーグは、当代一流の棋士7人ですから、藤井七段はその中でもトップクラスであることを証明したと思います。やっぱり恐るべき高校生なんだよな。


<11月20日>(水)

○本日は大和証券にてセミナー講師。テーマは「2020年米大統領選挙を見通す上での注目ポイント」。4年に1度の季節がいよいよやってきた感あり。考えてみれば、金融機関や投資家を相手に、今までにこの手の話を何度やってきたことだろう。とりあえず今日は大勢集まっていただき、ホッとするところである。

○昔はこの仕事もそんなに難しくはなかった。米大統領選挙とは単に4年に1度回ってくるイベントで、聞き手の関心は「まあ、どっちが勝つかくらいは知っておきたいし〜」という程度であった。それがだんだん「米大統領選挙」の重みが増してきた。そして今や、「トランプさんは再選されるんでしょうか。もしもウォーレン大統領になったらどうなるんでしょうか。その場合の米中関係は、ああ、いったいどうなってしまうのか」と、どんどん深刻さを増している。

○世間一般の知識のレベルも急速に上がっている。昔はエレクトラル・カレッジ方式の説明をするくらいで「へーえ」と感心してもらえた。それが今では、大概のことは知られている。そのうち「ウィナーテイクオールでない州が2つありましたよね。どことどこでしたっけ?」くらいのことは聞かれそうである。こちらも「えーっと、スーパーPACが認められたのは2010年の最高裁判決からだよな・・・」などと細かいことをチェックしないと不安になってくる。

○なおかつ、2016年選挙の予想を思い切り外してしまった身としては、2020年選挙を予測するのはおっかなびっくりである。今の米国政治には、何か恐ろしい地殻変動が起きているのだと思う。ボールが思いきりスライスしていく先を見届けて、「こうなります」という予想を組み立てなければならないのだが、そもそもなんでそっちの方向に飛んでいくのかさえ分かっていない。

○夕刻、奇跡的に時間が空いたので、創発プラットフォームの「オープンフォーラム近現代史研究会」に顔を出して、筒井清忠教授の「戦前昭和史に何を学ぶか」という講義を拝聴する。

○すると愕然としてしまうのだが、戦前昭和史で起きたのはこんなことである。@普通選挙の導入で有権者の数が一気に増える(といってもたかだか300万人→1200万人だった)、A新聞というメディアが急速に部数を伸ばし、そこから劇場型政治が始まっていき、B二大政党(政友会と民政党)の間で分極化が進み、世の中が不安定になっていった・・・要はポピュリズム政治の暴走が始まってしまうのだが、行きつく先は日中戦争、そして対米戦争である。

○今の世の中にこれを当てはめると、@SNSで誰もが自分の意見を発信できる世の中になって、Aそれによってネット空間がしょっちゅう「炎上」するようになり、B政治が極端な意見の下に分裂してしまう、という現状と重なって見えてくる。共通しているのは「民意」という巨大なエネルギーを制御できなくなって、誰もが望んでいない結末にまっしぐらに向かっている・・・ということである。いやあ、全然洒落になってない。

○こういうことこそ歴史に学ばなければならない。世の中がおかしくなるのは、ほんの数年で事足りる。にもかかわらず、「戦前昭和史」はわれわれの知識における意外なエアポケットなのである。往時を知る人がさすがに減ってきて、お蔭でやっと真面目な研究ができるようになってきた、という状況ではないかと思う。令和になってようやく昭和を知る、といったところだろうか。


<11月21日>(木)

○明日の内外情勢調査会の講師のために札幌へ。千歳空港に着いたらとっても寒いのである。って、そりゃあ当たり前である。札幌大通公園にある寒暖計は4度Cとなっていた。ということは、まだまだ冬の厳しさはこんなものではない、ということのようである。

○以前に、「北海道は半年住んだら『道産子』を名乗って良い」という法則を伺ったのだが、あれは夏場の半年ではダメなのであって、ちゃんとひと冬を過ごした人でないとその資格はないらしい。それはそうだろう。道を歩くと、ところどころ雪が残っている。しかも凍り付いている。わが出身地、富山では道に「融雪装置」というものがついていて、水道水で雪を溶かすようになっている。あれと同じことを北海道でやったら、そこらじゅうがスケートリンクになってしまうことだろう。

○遅い時間に狸小路をうろうろしていたら、昨年夏に訪れた「士別バーベキュー」がまだ開店していて、すんなり入ることができた。入ってすぐに気がついたのだが、クリストフ・ルメール騎手の色紙の隣に、新しい色紙が飾ってある。日付を見ると、「2019年10月27日、天皇賞」とある。なんと、これはいったい誰の色紙なんだ、とお店の方に聴いてみた。すると「キャプテン渡辺さんです」とのこと。テレ東取材陣、こんなところにまで来ていたか。

○そして宿泊は、以前からのご贔屓である札幌グランドホテルである。このホテル、今年で85周年なのだそうだ。ああ、ありがたい、ということでバー・キャラベルでアイリッシュウイスキーを2杯いただく。遅い時間なのに栄えている。というか、薄野も大変な人出であった。寒いのに、皆さん元気ですねえ。


<11月22日>(金)

○ということで、本日が本番である。いろんな人に「オリンピックのマラソンがやってくるって、どんな感じ?」と聞いてみる。皆さん、異口同音におっしゃるのは「夏のビアガーデンが・・・」とのことである。え、あんたたち、夏のビールがそんなに大切なんですか、相手はオリンピックですよ、マラソンですよ、と突っ込みを入れたくなるところなのだが、実際にそうらしいのだ。

○札幌の短い夏、7月下旬から8月中旬の風物詩が「夏のビアガーデン」なのであって、それが楽しみなのである。こんな時に、マラソンランナーが大通公園を縦断したら大変なことになる。そもそも私たち、夏季五輪はそんなに興味ないし・・・ということのようである。一方で地元の観光関係の方に聴くと、「まあ、これでIOCに札幌を売り込めば、2030年の冬季五輪誘致がやりやすくなるし」という考えもあるらしい。

○もっともビール園の開催期間中は、薄野のお客が減ってしまう、というデメリットもあるらしく、わざと閉店時間を早めたりしているのだそうだ。傍目から見ると、札幌でマラソンを実施というのは、「買ってもいない宝くじが当たったような状態」に見えるのだが、そこはそれ、「厄介なことよのう」という意識があるようだ。

○そもそもマラソンのコースを設定するためには、42.195キロの正確な測量が必要になるわけだが、雪が降り始めたらその作業は不可能となってしまう。来年春の雪解けを待たなければならない。ホテル事情もすでにパンパンの状態であって、この上外国人がいっぱい来てもねえ・・・という声もある。聞いているうちに、うーん、なるほど、これは降ってわいた災難かもしれない、と思えてくる。

○そして今日から札幌ではフィギュアスケートのNHK杯が行われる。駅前ではパブリックビューイングのスポットができていて、ええっ、こんな寒いのに皆さん、外でNHK杯を見るんですか?と驚いてしまう。まあ、道をゆく人は皆さん完全防備の服装で歩いているし、そこは慣れておられるようである。

○当方はと言えば、昼に内外情勢調査会札幌支部の仕事を終えて、それから飛行機に乗って帰ってくると、ちゃんと自宅で羽生結弦君の演技がテレビでみられてしまう。ありがたいことなのである。それにしても、入神の演技でしたねえ。


<11月24日>(日)

○先週金曜日の夕方、韓国が失効の6時間前という土壇場で、Gsomiaの条件付き延期を決めたのはまことに結構なことでした。韓国自身にとっても、米韓同盟にとっても、そして東アジア全体の平和にとっても。

○とはいうものの、日韓関係にとって良かったかどうかは難しいところです。国内的には、「勝った、勝ったあ」みたいな声があちこちから聞こえてくるところですが、気をつけなきゃいかんと思うのですよね。あれは日本側の「半導体材料の輸出管理強化」という一手に対して、韓国が過剰反応して「Gsomia破棄」という大悪手を指してくれたからで、それがなかったら第三国が日韓関係を見る目は、ほぼイーブンだったのではないかと思うのであります。

○韓国政府は執念深いですから、日本の政治家の発言などは全部チェックしています。アレを全部WTOに持ち込んでパネルでやりあうとなったら、「日本の輸出管理強化は、韓国に打撃を与えようとする恣意的な運用」という判定をされていたかもしれません。今回、韓国がベタ降りになって、WTO提訴まで引き下げてくれたのは望外の幸いでした。

○それくらい韓国のGsomia破棄は大悪手でした。経済の手法に対して安保で仕返しをする、というセンスがまずあり得ない。ところが彼らは、そうすればアメリカが日本を説得してくれると考えたらしい。でもそのことは、在韓米軍の兵士たちのリスクを高めてしまうわけで、アメリカはさすがに怒った。その上で、思いきり韓国に圧力をかけた。この上、本当にGsomiaが失効すると、アメリカのメンツがつぶれてしまうくらいの局面になってしまった。

○最後は大統領以外の全員がビビッて、「殿、やっぱり止めましょう」という状態になっていた。文在寅大統領は、ギリギリで正しい判断をしたのだと思います。とはいうものの、「菅直人の経歴、鳩山由紀夫の頭脳、小沢一郎の性格」と言われるあの人が、心を入れ替えたとは思えません。来月下旬に中国・成都で行われる日中韓首脳会談において、日韓がしゃんしゃんと手打ちに至る確率は低いのではないでしょうか。

○なんとなれば、この先、文在寅さんを待ち受けているのは歴代韓国大統領の黄金パターンだからです。すなわち任期後半における支持率低下とレイムダック化、そして退任後の不幸せであります。不幸せのメニューには、投獄から自殺まであって、これを回避した人はほとんどおりません。そこに至る過程において、大統領が「反日カード」を乱発することは想像に難くありません。

○つくづく外交の世界においては、「勝ち負け」がハッキリしない方が望ましい。今回のGsomiaをめぐる騒動はちょっと「危ういな」と思います。


<11月25日>(月)

○トランプ大統領の弾劾が現実味を帯びてきて、そうだ、クリントンの時のことを調べなければ、と思ったら、こんな良いテキストがあった。

●憲法で読むアメリカ現代史(阿川尚之) 第24回 クリントン弾劾裁判

○さすがは阿川さん、法律に明るく、文章は読みやすく、明晰でスッと頭に入る。いや、それよりワシが気にしているのは、「弾劾にはどれくらいの時間がかかるのか」である。クリントン弾劾のケースでは、こんな感じの日程であったことがわかる。


1998年

11月19日、下院が弾劾に関する公聴会を開始
12月8-9日、大統領側の証言
12月11-12日、下院司法委員会が弾劾を勧告(弾劾状を作成)
12月18-19日、下院本会議が13時間半の審議。@偽証罪、A司法妨害で弾劾訴追を可決。

1999年

1月7日、最高裁長官の下で弾劾裁判始まる(裁判長役)
1月14-16日、下院議員による最初の弁論。証拠提出(検察役)
1月19-21日、大統領代理人による反対弁論(弁護役)
1月22-23日、上院議員による質問(陪審員役)
1月27日、審議打ち切り動議提出→56対44で否決
2月6日、モニカ・ルインスキーの証言ビデオを放映
2月8日、最終弁論(双方3時間ずつ)
2月12日、結審→@は45対55、Aは50対50で2/3に達せず→クリントン大統領は無罪に!


○アメリカの大統領弾劾の仕組みは、下院の過半数で訴追が決まり、上院の2/3の賛成で罷免が決まる。特に上院で行われる弾劾裁判の手続きが面白い。最高裁長官が裁判長になり、下院議員数名が検察役となり、大統領にはもちろん弁護人がつき(と言っても、大統領は出廷しない)、上院議員100人が陪審員となる。このとき、上院議員はずっと自席に居なければならない。普段の米議会とは勝手が違うのである。

○1998年の大統領弾劾は、何しろ100年ぶりの出来事であったために、前例(第17代大統領、アンドリュー・ジョンソン)を調べるのが大変だったらしい。今回、トランプ大統領が弾劾されるとなると、21年前のクリントンのケースをそのまま踏襲することになるのだろう。

○そこで上記の日程なのだが、たぶんこれとほとんど同じ進行になるのではないか。すなわちクリスマス休暇直前に下院で弾劾訴追、年明けから上院で弾劾裁判、である。今年の場合、暫定予算が12月20日に切れることになっているので、その日まで会期を延長して、そこで弾劾訴追ということになりそうだ。

○ところで気になるのは、2020年の場合は2月になると大統領選挙の予備選挙が始まってしまうことだ。クリントンのケースで行くと、弾劾裁判にはえらい時間がかかる。年明けから始めるとして、どう考えても予備選日程に影響してしまう。この間、上院議員は議会に拘束されてしまうので、アイオワ州やニューハンプシャー州の遊説には出られないことになってしまう。

○ところが民主党の大統領候補の中で、有力者と言われるのはエリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダース、カーマラ・ハリスと揃って上院議員なのである。ついでに言うと、ワシは個人的にはエイミー・クロブチャーも買っている。さらにはコリー・ブッカー、マイケル・ベネットもいちおう手を上げているので、100人しかいないはずの上院議員のうち実に6人もが大統領候補者であるというのは、いったいいかなる事態なのであろうか。

○年明けから彼らが一斉に議会で拘束を受けるとなると、指名争いも一変する。この間にバイデン副大統領が人気復活するとか――弾劾の過程では彼の息子の話が蒸し返されるのでむしろマイナスかもしれないが――、議会と無関係のピート・ブティジェッジ市長が躍進する、てなことも考えられる。「ジャンケン後出し」で、3月3日のスーパーチューズデーから参戦するというマイク・ブルームバーグ元NY市長も意外といいポジションに付けるのかもしれない。

○ところでこの事態、ナンシー・ペローシ議長は気づいていたのだろうか。彼女のことだから分かっていたと思うんだよね。だから弾劾なんてやっちゃダメ!と言い続けてきたのに、止められなくなってしまった。ますますトランプさんに有利な状況が出来つつあるのではあるまいかと。


<11月26日>(火)

○小ネタである。酒類業の方に聴いたら、「最近はレモンサワーがよく売れている」とのこと。

○確かにこの商品のCMはインパクトがあるよなあ、と思ったら、実はこんなにたくさん種類があるらしい。うーむ、知らんかったぞ。そうかと思うと、家で飲む用のレモンサワーレシピ集なんてページもできているようだ。

○ワシ的にはあんまり焼酎を飲まない方なのである。居酒屋だったらとりあえずビールで、二番手にはサワーよりもチリワインを選ぶ。あ、そういえば今年はまだボジョレ・ヌーボーを飲んでおらぬのう。ということで、この手の「ヒット商品」に気づかないのも無理からぬところがある。

○ところがこれは、業界的にはゲンの悪い傾向なのだそうだ。だいたいがレモンサワーは、デフレ時代によく売れた商品。消費税増税が、消費者心理を冷やしている効果のひとつではないか、とのこと。ちょっと酸っぱい話である。

○他方で年明けの補正予算は5兆円とか10兆円とか、永田町方面ではかなり大きな数字が飛び交っている様子である。年明けの雰囲気はどんなことになっていることやら。年末に向けて、いろんな景気指標が気になるところです。


<11月27日>(水)

○今朝のモーサテに出演。コメンテーターはまたまた広木さんとご一緒。よくよくご縁がありますねえ。

○本日のプロの眼、テーマは「トランプ大統領弾劾が民主党予備選に大打撃?」という例の話で、時間枠をはみ出しつつやっちゃいました。この話、ホントにおもしろいと思います。

○おそらくナンシー・ペローシ下院議長は、「こんな風になっちゃったら嫌だなあ〜」と思って、かねたから弾劾に反対していたのだと思います。しかし、トランプさんが「どうだあ〜、悔しかったら、俺を弾劾してみろ〜」と言わんばかりに振舞うものだから、とうとう黙っていられなくなった。というより、怒り狂う党内左派の意見を無にできなくなった。

○そもそも少し前まで、トランプ大統領にはロシアゲート事件があって、弾劾されるんじゃないかと言われていた。そんなこと言ったって、あのロシアの諜報担当者が、当時のトランプ選対みたいなド素人集団を信用するわけがないではないか。強いて言えば、スティーブ・バノンが相手であれば違ったかもしれないが、そのバノンは「なんちゅーヤバいことをやっとるんじゃ!」とトランプ・ジュニアなどを冷たい目で見ていた。こんな筋ワル事件で有罪にできるはずがないのである。

○そのロシアゲートの嫌疑が晴れたのは、確か6月くらいのこと。そしたらトランプさんは、7月に新たにウクライナゲートをわざわざ作ってしまった。今回の場合は、大統領自身の関与が明らかである。そしてホワイトハウスやNSCやCIAの職員が、義憤に駆られて内部通報者になったり証言者になったりして協力してくれる。さらにトランプさんときたら、わざわざツィッタ―で証人を誹謗中傷して、これでは「承認脅迫罪」のオマケまでついてくる。普通に考えたら、これは絶対に弾劾が成立してしまうパターンなんです。

○でも、改めて「トランプさんはどんな悪いことしたの?」と聞いてみると、確かに大統領職権の乱用だし、公私混同だし、褒められたものではない。でもウクライナ政府は、外圧に負けてハンター・バイデン氏の捜査をやったわけではなく、アメリカの軍事援助が完全に止まったわけでもない。実害は少ないのである。トランプ支持者から、「世の中にはもっともっと、悪いことをした大統領がいるじゃないかああああっ!」と言われたら、まあ、それもその通りなのである。、

○この先、おそらく弾劾訴追は鉄板でしょう。ところが弾劾裁判が始まって、「おおい、ジョー・バイデンを証人に連れてこい!」みたいなことになったりすると、民主党が失うものはかなり大きくなる。逆に大統領は裁判に出なくてよい。いや、民主党議員は「トランプを呼べええええ」と言うかもしれないが、少なくとも21年前のクリントン弾劾裁判の時は、大統領は出席していない。モニカ・ルインスキーもビデオ証言であった。

○ということで、昔もこんなことを書いた覚えがあるが、「憤兵は敗る」(漢書)なのである。トランプさん相手の喧嘩に勝ちたかったら、民主党左派は怒っちゃダメなのだ。トランプさんはしょっちゅうブチ切れる人だが、あれはプロレスなのだということを見逃しちゃいけない。マジレスしちゃいけません。

○余談ながら、日韓関係もこれと同じですよ。マジで怒っている人は悪いけど憤兵です。


<11月28日>(木)

○以下は業務連絡であります。明日予定の溜池通信更新は1日遅れて土曜日の夜となります。たぶん会社のHPの方は、明日中にはアップされますので、お急ぎの方はそちらをご覧ください。

○それとは全く無関係に、本日はひとつ気がかりなことが解決しました。忙中歓あり。感謝祭に感謝あり。いや、こっちの話です。


<11月30日>(土)

○中曽根康弘さんが亡くなられたそうです。101歳というから大変な長寿で、ここまで余生が長いともはや「巨星落つ」という感じではなくなりますな。誰かが死んで「巨星落つ」とかいうときは、できれば株式市場が暴落するくらいであってほしいものです。今だったらさしずめ・・・、いや、怖いから止めておきましょう。

○政治家・中曽根康宏に対する評価は既に定まっていて、「戦後政治の総決算」とか「国鉄の分割民営化」という1980年代の話が中心となります。古き良き昭和時代の末期でありますな。

○首相退任後はいろいろ恥ずかしいこともあって、リクルート事件で一時的に離党したり、1994年の首班指名では村山富市ではなく海部俊樹を担いだり、天下の「風見鶏」も狂いを見せるようになります。自民党では「終身比例1位」を保証されていて、最後はそれを小泉首相に外されて引退に追い込まれるのですが、そのときの対応なんかもあまりカッコよくはなかったですな。

○ただし生涯をトータルすると、そういう話はどうでもよくなるわけで、今となっては政治家が政治家らしかった時代の堂々たる政治家、という印象が残ります。何しろ中曽根さんが首相だった時代と言えば、レーガンにサッチャーにミッテランにコールですから。それでもってケ小平とゴルバチョフなわけですから、今の人たちとは全然貫録が違うのです。

○皆が戦争体験を背負っていた時代と、皆がスマホでちまちまと情報チェックしている時代を比べたら、そりゃあ人間は小粒になりますわなあ。中曽根さんが亡くなったというニュースは、政治家がまだ哲学らしきものを持っていた時代の残像を、一瞬、垣間見させてくれるような気がします。











編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki