●かんべえの不規則発言



2007年3月







<3月1日>(木)

〇CSISのマイク・グリーン日本部長の下で働いているニック・セーチェーニ氏が来ているので、東京財団若手安保研で囲んで話を聞く。いろんな話題が飛び交って飽きなかったのですが、とりあえず米大統領選挙の有力候補に関する一口コメントを残しておきましょう。


<共和党>

●ジョン・マケイン:「イラク増派」を主張する一方で、ブッシュ支持層を着々と取り込んでいる。高齢がネック。アーミテージ一派が後ろについているので、アジア政策ではもっとも充実している。

●ルディ・ジュリアーニ:人気は目下独走状態。が、中道派であるために保守派の支持が得られない怖れあり。予備選の序盤、アイオワ、ニューハンプシャー、サウスカロライナなどは保守派の牙城なのである。

●ミット・ロムニー:ユタ冬季五輪の運営を成功させて名を上げ、マサチューセッツ州知事としても業績。金集めも着々、メディア対応もなかなかのもの。ただし彼もリベラルなところがあり、ジュリアーニと同じ問題を抱えている。

<民主党>

●ヒラリー・クリントン:知名度と資金量で先行。ただしメディアを敵に回すのがツライところ。人気取りにはビルのサポートが欠かせないが、ビルを使っちゃうと皆がそっちになびいてしまう。「クリントン」ではなく、「ヒラリー」をアピールしなければならないのが悩ましい。

●バラク・オバマ:誠実、正直、演説上手く、若者に人気。金集めも順調。ハリウッドでは一晩で130万ドル集め、その中にはクリントン支持派も含まれていた。寝返った当人は、「だってヒラリーは嘘つきだから」。お陰でヒラリーXオバマ戦争勃発。予備選挙まであと10ヶ月もあるのに、今からこの調子では飽きられるのでは?

●ジョン・エドワーズ:先行する両者が疲れ果てるのを待ちながら、静かに潜行。04年の選挙を取材したが、とにかく南部で強い。演説の上手さもクリントンなみ。要注意。

●アル・ゴア:本人は出ないといっているが、先日のオスカー受賞はちょっといい感じ。ヒラリーXオバマ戦争の行方いかんでは、党内で待望論が出てくるかもしれない。


〇まあ、いつも言うことですが、あまりにも先の話なので、現時点の予想はあんまり意味がありません。先日、世論調査を見ていたら、「アメリカ人は、大統領に女性と黒人と70歳以上と結婚3回とモルモン教徒は望んでいない」とかいう話があって、これでは上位5候補は全滅です。幸いなことに、これは減点法で決まるゲームではありません。プラス要素を戦わせるわけで、そこが面白い。

〇あと一点、ビックリしたのはオバマ候補がジョージ・メイソン大学に乗り込む際に、わずか1日前にインターネットで告知をしたところ、講演会に2000人以上の学生が集まったというエピソードです。学生がよく読むブログなどを徹底分析してアプローチしたところ、ほとんど抗日デモの際の中国並みの動員力を発揮した模様。米大統領選挙は、回を重ねるごとにネットの進化が戦術を変えてしまいますね。2008年もさまざまな「イノベーション」があることでしょう。その辺も注目したいところです。


<3月2日>(金)

〇今宵はBSジャパン「マーケット・ウィナーズ」の収録。もちろんテーマは「全世界同時株安」の緊急討論である。久々のマーケット番組出演なので、内心、恐々とスタジオ入り。昔よく通った東京タワー下の芝公園スタジオではなく、テレビ東京の内部である。問題が問題であるだけに、事前の打ち合わせでは様々な情報や見解が飛び交う。とっても勉強になりましたな。どんな番組に仕上がったかは、明日の放送までナイショ。

〇仕事が終わってから、マーケット解説の鈴木一之さん(インフォストック)と一緒に、「ルック@マーケット」残党同士で、久々に烏森の「はづき」へ。店が繁盛しているのでちょっと驚く。店がいいのか、景気が良くなっているのか。聞けば今週はこの人も来ていたそうで。やはりマーケットの勉強をするには、こういう場所がいちばんよろしいですな。


<3月3〜4日>(土〜日)

〇あらためて、今回の世界同時株安についての整理を行っておきましょう。

〇「上海発」ではあったけれども、「中国市場が世界を揺さぶった」という見方は正しくない。上海市場は時価総額で世界の2%程度。しかも外国人の取引を制限している孤高のローカル市場である。実は1月にも大幅な下げがあったのだが、そのときは何ともなかった。また、昨年1年で2倍以上に上がったことも、ほとんど他の市場に影響を与えていない。今回、2月27日に上海市場が9%下げたことは、心理的なインパクトはあったものの、世界のマネーの流れを変えるような事件ではなかったはず。

〇それではNYの株安をもたらしたのは何か。答えは「アメリカ経済自身にあり」。昨年9月頃から一本調子で上げてきたNY市場だが、ここへ来て前途に不安を感じさせる経済指標が増えてきた。第4四半期GDPの下方修正、住宅関連指標の悪化、耐久消費財などだ。ソフトランディングのシナリオが狂うとなれば、多少の下げは致し方なし。そもそもこの半年、調整がなさ過ぎた。とはいえ、本当に下げなきゃいけない局面かどうかは意見が分かれる。

〇国際商品市況を見ると、先週時点では大きな変化がない。原油価格(WTI)などはむしろ上げている。この点が解せない。米国経済が減速するのであれば、ここは下げなければならない。ともあれ、実体経済には大きな変化はないんじゃないかと思う。さらにいえば、FRBには「利下げ」という武器がある。98年秋にLTCMが吹っ飛んだときに比べれば、まだまだ傷は浅い。

〇為替がジワリと円高に向かっているところを見ると、やはり2月21日の日銀による再利上げが影響しているのかもしれない。円キャリートレードの巻き戻しというヤツです。もっとも、株安のお陰でドル金利の先安感が出てきたのだとすれば、ある程度の円高は当然という見方もできますが。どっちにせよ、今後の注目点は為替の変動です。

〇日本の市場は、といえば、世界同時株安の陰に、日興CGの上場廃止という大きなテーマが隠れている。ホントはこれだけで数百円下げても不思議はないネタである。先週、日経が報じて東証が否定し、今週末になって今度は朝日が報じた。投資信託がポートフォリオに証券株を組み入れるとき、自社の株式は入れられませんから、野村や大和の投信には日興株がゴッソリ入っているはず。影響は大きいですぞ。週明けの株価も、そっちの方が要注意なんじゃないでしょうか。

〇さて、世界同時株安というと、87年のブラックマンデーとか、00年のハイテクバブル崩壊がすぐに思い当たります。こういうときの法則は以下の通りです。

(1)きっかけは些細なことである。下げに理由なし。

――下げの理由を求めたくなるのは人情ですが、上がった株価が下がるのは自然の理というもの。

(2)実体経済には、思ったほどには影響はない。

――為替が一緒に動くと大事になりますが(例:1997年のアジア危機)、株価だけなら普通はたいしたことありません。

(3)後になって見ると、時代の変わり目であったことに気づく。

――新しいものと古いものが拮抗しているときに、得てして市場は波乱を起こす。

〇今回の下げも、「2007年2月27日、上海ショックが世界を揺るがす。中国経済のプレゼンスが高まったことを世界に印象付けた」という形で歴史の年表に残るのかもしれません。でも、実態はそうじゃないんですよね。そうじゃないけど、そういう認識が広がってしまい、それに政治や経済が反応してしまう。この辺が市場の魔力というものでありましょう。


<3月5日>(月)

〇天気予報は雨でしたが、なんだかんだで夕刻までもってくれました。今日も暖かくて、コートの要らない一日でしたね。エアコンも不要。あっけにとられるほどの暖冬です。たまたま今日、会った信田さんによれば、国際大学の周辺でも雪が少ないとのこと。今年の魚沼コシヒカリは大丈夫なんでしょうか。

〇考えてみれば、今年が世界的な暖冬であったからこそ、アル・ゴアの「不都合な真実」はオスカーを取れたわけであります。皆が「おかしいぞ」と思っていたからこそ、地球温暖化という警告が身に迫って感じられたわけですから。換言すれば、ゴアはとってもツイている。こういう「運」は重要です。特に政治家の場合はね。「2008年リスト」からゴアを消すのは上策ではないでしょう。

〇なにしろ米大統領選挙の話をしているたびに、「でもねえ、ゴールは来年の11月だからねえ」ということで途切れてしまう。予備選が始まるまででさえ、あと10ヶ月もある。これでは途中で、飽きたり、だれたり、煮詰まったりしてしまいそうだ。この長い長い序盤戦を、現在の先行馬は逃げきれるのか。特にヒラリーとオバマは、競馬で言うところの「死角がある」。彼らがつまづく可能性は低くない。

〇本命が飛んだところで、絶好の穴馬がいる。副大統領8年の実績あり、スキャンダルチェック済み、白人男性で、普通のキリスト教徒で、離婚もしてなくて、年齢はたしか59歳。2000年の負けは辛かったけど、どん底から這い上がって8年後に再挑戦して勝つというのはニクソン大統領の前例がある。何より、昔に比べて肩の力が抜けて、昔よりいい男になった感あり。髪は少なくなり、体には贅肉が増えたけれども、彼はいい年のとり方をしたのである。

〇問題は本人のやる気です。奥さんも反対しているらしいし。でもね、その辺は周囲の持っていき方次第で、どうにでもなるということは、浅野史郎氏のケースが物語っているではないか・・・・というのは、ちょと強引過ぎか。


<3月6日>(火)

〇従軍慰安婦問題が急浮上してまいりました。国内の騒動はさておきまして、なぜアメリカ議会でこの問題が浮上したかという点について、少々解説をば試みたいと思います。

〇事の起こりは、マイク・ホンダ下院議員(民主党・カリフォルニア州15区)が1月下旬に提出した「H.RES 121」という決議案です。これは太平洋戦争中の日本軍の従軍慰安婦問題で、日本政府に公式謝罪を求めるものです。このこと自体は全然めずらしくはなくて、実は慰安婦決議案が出るのは、下院では今年で5年連続のこと。ただし外交委員会で採択されても、本会議で採決されたことはありません。

〇なぜかというと、今までは共和党議会でしたから、ハスタート議長がスケジュールを調整するなどして、上手に葬り去ってくれていたのですね。でも、今年は民主党議会です。そこが違う。

〇仮にこの決議案が本会議に上程されるとしたら、個々の議員としては反対することは容易じゃありません。おそらく可決されるでしょう。「あなたはホロコーストに賛成か、反対か」と言ってるようなものですから。そうでなくても、米国議会にはいろんな法案や決議案が提出されます。過去のインディアン迫害に対する謝罪を求める、なんてのもアリです。それでは、この決議が通ったら日本政府はどうすればいいのでしょう。

〇決議案の内容は、@日本政府による公式謝罪と、A慰安婦は存在しなかったとの言説を公式否定する、の2点が中心であります。過去に提出された決議案と比べると穏当な内容であって、しかも拘束力があるわけじゃなし。ヒンシュク覚悟で申し上げれば、「いやあ、昔はいろいろありましてね」としらっとしていればいい。もちろんホントに謝罪する必要なんてありません。日本の名誉は傷つきますが、そうやって無視できれば、それがいちばん良い。

〇ホンダ議員は、その名が示す通り日系人です。別に日本を嫌っているわけじゃありません。民主党内では人権擁護派として知られている。今回の決議については、慰安婦問題に関する正義のためにやっているのであって、日本叩きではないと明言している。むしろ彼が問題にしているのは、「河野談話を否定しようとしている自民党議員がいる」ことなのです。

〇さらに詳しく言いますと、ホンダ議員の選挙区というのは、有権者の約二割がコリアン・アメリカンであるという特殊な選挙区です。つまり、慰安婦問題で活躍することは、彼の利益に直結しているのです。さらにいえば、日本の首相がこの問題について否定的な発言をしたということは、彼にとってビッグプレゼントなわけです。これに加えて、韓国の政治家が不快感を示すとなると、ますますオイシイ話になってくる。

〇あからさまに言ってしまえば、先方は目立つためにやっているのだから、「荒らしはスルー」が望ましい。ところが安倍さんとしては、それができない。むしろ河野談話を否定したい。歴史の見直しは彼の信条であるし、安倍内閣のコアな支持層は、こういう問題で妥協することを望まないでしょう。まさに衝突コース。

〇この辺が民主政治らしいところですが、政治家は自らの信条と個人的な利益の両面を考えて行動する。その点において、ホンダ議員と安倍さんの動機はいささかも違うところはない。いつも思うことですが、日米の政治の原理って、そんなに違わないんです。


<3月7日>(水)

〇これは日本ではほとんど知られていない話だと思いますが、今年の1月12日、米国のナショナル・アーカイブスが次のようなプレスリリースを行っています。

100,000 Pages Declassified in Search for Japanese War Crimes Records

http://www.archives.gov/press/press-releases/2007/nr07-47.html 


〇実に10万ページに及ぶ日本の戦争犯罪に関する記録が機密解除となり、インターネット上で公開されたのであります("electronic records finding aid"と書いてある部分をクリックすると、zipで文書をダウンロードすることができます。4.48MB)。上記のページには、この問題に関する理解を促進するために、「日本の戦争犯罪記録を探る」と題する240ページのエッセイもついています。さらには「日本の戦争犯罪と日本の化学兵器に関する限定文書」と題する長編大作もあります。これはそのものズバリ、731部隊に関する資料です。

〇なんでこんなことをしているかというと、米国ではクリントン政権下で、「ナチスの戦争犯罪と大日本帝国政府の記録公開法」というものが成立し、これに基づいてCIAや国務省、軍関係、FBIなどの機密資料がどんどん公開され始めたのであります(最初はナチスだけだったのだけど、途中から日本も追加された)。この法律に基づき、IWG(Interagency Working Group)というタスクフォースが発足し、以後8年がかりで800万ページの資料を精査してきました。今回発表されたものは、日本の戦争犯罪に関する中間報告的なもので、今後も新たな発見が出てくるかもしれません。

〇大日本帝国政府は、終戦の詔勅の後でせっせと機密書類を燃やしてしまいました。ところがアメリカ政府は、それとはまったく逆の執念で、戦争に関する記録を収集していたのです。そして戦後半世紀を過ぎた頃から、じょじょに資料の公開が始まりました。それだけではなく、政府予算をつけて文書の解読を行い、それで足りない分はネットで公開して、「皆さん、どうぞご自由に研究してください」と言っているわけです。

〇機密文書の情報開示というものは、何のためにやるかというと、つまるところ「わが国の政策には後ろ暗いところはない」ということを国民に向けてアピールするためです。こういうマインドは、われらが日本政府、もしくは霞ヶ関官僚機構においてはきわめて薄いのではないかと思います。つい最近も、日朝交渉を担当した外交官が、交渉の記録をほとんど残していないという点が問題になりました。こんなことでは、後世の歴史家は非常に困ります。何が真実であったかが、永遠に分からなくなってしまうからです。

〇さて、現下の問題は従軍慰安婦の問題です。各方面の証言を総合すると、河野談話に問題があることはどうやら確かなようです。要するにウラを取らないままに、先方の言い分を認めてしまったらしい。安倍内閣として、これに修正を加えたいという気持ちは確かに理解できる。その一方で、アメリカのナショナル・アーカイブスから、いつ何時新しい資料が発掘されるか分からないという現実がある。

〇「なかった」ことを証明することは難しいが、「あった」ことを証明するためにはひとつの証拠を発見するだけでいい。かかる状況を勘案すれば、歴史問題に深入りすることには慎重であらねばならないと思います。なにしろ事実を後世に伝えようという意欲において、彼我の差は相当に大きいのであります。


<3月8日>(木)

〇心ならずも、今日もネタが続いてしまう。が、この朝鮮日報のニュースは微笑ましいというか、それとも痛いというべきか。

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2007/03/08/20070308000015.html 


●慰安婦: CNNネット投票で日本に有利な結果続出

「安倍首相の謝罪の必要なし」74%


 米国のニュース専門テレビ局CNNが行っているインターネット投票で、日本の安倍晋三首相が旧日本軍の「従軍慰安婦」問題について謝罪する必要はないという意見が圧倒的に多いことが分かり、韓国のネットユーザーらが反発している。

 CNNは、安倍首相が旧日本軍の「従軍慰安婦」問題について再び「謝罪する必要はない」と発言したことを伝える今月4日付の記事で、「日本は再び謝罪するべきか」についての賛否を問うネット投票を行った。

 7日午後6時40分現在、総投票数69万7086票のうち、「再び謝罪するべきだ」は18万1378票で26%に過ぎなかった。一方で「謝罪する必要はない」は74%(51万5708票)に達した。

 この日午後4時頃には、「謝罪する必要はない」という意見が90%を超えたことも分かった。

 この結果に対し、韓国のネットユーザーらは「到底受け入れられない結果だ」として、組織的な賛成票(「再び謝罪するべきだ」)を投じている。

 CNNが昨年6月、「安倍首相が靖国神社へ参拝することは適切だと思うか」というネット投票を行った際にも、「適切だ」とする意見が90%以上に達するなど、CNNが行う日本関連のネット投票では日本に有利な投票結果がたびたび出ている。

 安倍首相は今月1日、旧日本軍の従軍慰安婦について「強制性があったことを証明する証拠はない」と発言したのに続き、5日にも参議院予算委員会で「米国下院が従軍慰安婦問題で日本に謝罪を求める決議案を採択したとしても、日本政府が謝罪することはない」と述べ、国際的な非難が高まっている。


〇安倍首相の「謝罪しないぞ発言」に対し、ニューヨークタイムズ紙などでは、すでに「日本ケシカラン」論が掲載されています。ロサンゼルスタイムズ紙などは、「こうなったら、もう天皇に謝ってもらうしかない」などというご無体な社説を載せています。あのねえ、それって天皇の政治利用になるから、憲法で禁止されてんの、って、あんたらはそういうこと知らないわな。ま、そういうレベルです。

〇幸いなことに、アメリカ世論の草の根レベルは本件に対して、「どーだっていいじゃん、そんなの」という反応が多数であるらしい。そりゃそうだ、60年前のことなんだもん。粘着する方が評判を落とします。「組織的な賛成票」なんて、カッコ悪いじゃないですか。朝鮮日報の書きぶりも、妙に冷静で好感が持てます。

〇それはありがたいことではあるが、村山談話といい、河野談話といい、いったん出してしまったものは今さら引っ込めるわけにはいかない。そのことを学習した上で、本件は深追いしないのが賢明であると重ねて考える次第であります。


<3月9日>(金)

〇今日は取り立ててネタもないので、ちょっとよさげなブログの紹介まで。

●王侯将相いずくんぞ種あらんや http://ameblo.jp/rintaro-o/ 

〇外務省OBの方のようですが、現在政治家を目指しておられる様子。とりあえず、ラスプーチンに対する評価などは、読んでみて非常に納得の行くところです。六者協議に対する分析も、まことに堂々たるものだと思います。楽しみなブログですが、一方でそんなにブログに力を入れていると、政治家にはなれないかもしれないので、ちょっとその辺が心配。


<3月10〜11日>(土〜日)

〇朋有り、遠方より来たる。上海馬券王先生が日本に出張中である。いざ、ともに行かん。中山競馬場へ。今日のメインレースは中山牝馬ステークス。今日は心の友、マイネサマンサが出走するであるよ。

〇マイネサマンサ。今を去ること4年前、かのサダム・フセインが、小泉首相(当時)に買ってくれと頼んだ因縁の牝馬である。その間の経緯は、ここをご覧あれ。その後は買うたびに、裏切られ続けて幾星霜、「頑張っている姿勢が好きだから、また好きになる」というJRAのCM通りの展開である。そのマイネサマンサはもう7歳馬。今日、ここで敗れると、馬主としては、いよいよ繁殖馬入りして、ディープインパクトを種つけすれば、という誘惑に駆られても不思議はない。今日は勝負どころぞ。

〇今日のマイネサマンサは最内枠、しかも重馬場である。得意パターンであり、巧者、蛯名が馬上である。勝てるための最低限の条件を満たしている。出走すると、マイネサマンサがいいダッシュを切る。が、じきに馬群の中に包まれてしまう。あ〜あ、こりゃいかんぜよと、馬券王先生ともどもうなだれる。やっぱりアサヒライジングから流すのが定跡というものか。

〇ところが4コーナーを回ったところで奇跡が起きる。マイネサマンサが一気に外側に出て、そこから先の追い込みが早い、早い。見事におりあいがあって、バッチリ先頭でゴールイン。馬券王先生ともども、応援馬券を買っておりましたが、単勝31倍は伊達ではありません。ああ、もっと買っておけば、確定申告の納税にも役立てることができたのに。

〇ということで、2人ともに勝つというめずらしいパターンで、今宵は柏市の某寿司屋で豪遊。ありがとう、マイネサマンサ。ディープインパクトでは、配当がつかないからこうなりませんので。


<3月12日>(月)

〇内外情勢調査会の全国大会、今月の講師は中川秀直自民党幹事長でした。話の内容は、それほど特記するほどのことはなかったと思います。「私と安倍さんは考え方が一緒」と強調していたのが、ちょっとイタイ感じでしたが、それはまあ想定の範囲内。

〇ひとつ「ふーん」と感じたのが、この席で配られていた中川氏の経歴。自民党の政治家が、いかに出世の階段を上がっていくか、以下の経歴はそのひとつの見事な典型例ではないかと思います。

1976年:初当選

1980年:2期目当選

1983年:3期目当選→国土政務次官

1986年:4期目当選→通産政務次官→衆院科学技術常任委員長→自民党商工部会長

(1990年の選挙は落選)

1993年:5期目当選→首相補佐官→自民党筆頭副幹事長→科学技術庁長官

1996年:6期目当選→自民党総務会長代理→衆院議院運営委員長→自民党幹事長代理

2000年:7期目当選→官房長官、沖縄開発庁長官→自民党国会対策委員長

2003年:8期目当選→自民党国会対策委員長

2005年:9期目当選→自民党政務調査会長→自民党幹事長

〇なかなかに筋の通った経歴です。閣僚経験は2つだけですが、党務に関してはほとんどすべての仕事に精通していることが分かります。良くも悪くも中川氏は、自民党の古い伝統が生み出したベテラン実力者ということなのでしょう。なるほど、これは党務では余人が口を挟めないのもよく分かる。安倍首相に対しても、強気に出られる理由が窺い知れるような気がします。

〇しかし今後の政界では、こういうキャリア・ディベロップメントを積むことは難しいでしょうし、当選8〜9回でやっと表舞台に立つというのは時間がかかり過ぎるように思います。その点、安倍さんは小泉さんの抜擢で一気に階段を駆け上がり、一種の促成栽培で首相の座を射止めました。ところが、普通にじっくりと階段を昇った中川さんとは、最近になって緊張をはらんでいるらしい。その背景には、一種の世代間ギャップがあるのだな、てなことに気づいた次第。

〇現在の問題の大半は過去に理由がある。そういうことです。


<3月13日>(火)

〇日興CGの上場廃止はやっぱ止めましたって、そういうのってアリなの? いやー、ビックリしちゃったな。なんだかとっても背景が深そうです。政治からの圧力か、シティグループへの嫌がらせか、それとも東証内の意見の混乱か。なんだか先日の日銀の利上げと似たような「スッキリしなさ感」がありますね。誰かが「ライブドアも復活させて」みたいなことを言い出したら、どうするのかしらん?

〇それから、今朝の日経一面の「言い訳」も面白かった(本誌「日興、上場廃止へ」報道の経緯)。ここで書いてあるような「だって東証幹部がそう言ってたんだもん」で「高い確証を得た」になっちゃうというのは、ちょっと驚きですね。もうちょっとウラをとるんじゃないかと思ってました。だって、2月28日朝は世界同時株安だったから良かったような(?)ものの、あれがなかったら「株安は日経の誤報のせいだ」ということになって、株主から訴訟を起こされても不思議はなかったところです。

〇本件では朝日なども後追い記事を書きましたが、おそらく他紙は、「日経が書くんだから、間違いないだろう」で追従してしまったんでしょう。いろんな意味で誤報は罪深いぞよ。


<3月14日>(水)

〇今朝はたるとこ伸二氏の朝食会で講師を務める。「米国政治の行方」というお題を頂戴したので、「慰安婦問題」「アーミテージU」「米大統領選挙」の3点を中心にお話しする。実は昨日も、松尾文夫さんの昼食会で、「アーミテージU」に関する報告をやったばかりである。この辺の内容というのは、世間の関心が結構高いようなので、もちょっと掘り下げる必要がありそう。

〇さて、日興の上場維持の件では諸説流れている。「日経は実は誤報だったんじゃなくて、本当は上場廃止で決まっていた。それを政治圧力で変えさせられたのだ」という、まことにそれっぽい解説を聞く。ぐっちーさんは、「シティの意向として、上場維持を選んだ」という見方である。どっちにしろ、怪しげな決定であることに変わりはなく、その辺をバッサリ斬ることにかけては、やはり山崎元さんがお見事である。

〇理屈はどうであれ、こういう替え歌が流れること自体、この決定のいかがわしさはバレバレである。

> ♪ジョージョー・イジ♪
>
> 独自に廃止を止めて
> 一転維持にお前を変えた
> TSE
> 俺たち隙だらけでも
> やさしさだけは捨てずに
> 生きて来たぜ
>
> お前が望むなら
> ポスト入りも解いていいぜ
> 俺はこわいもの知らず
> 論理などないけれども
> この株を失くすことだけ
> こわいのさ
>
> ジョージョー・イジ 未来を俺にくれ
> ジョージョー・イジ 投資家とお前を
> 倖せにしてやる
> これで決まりさ
>
>
> 会計処理の不正に
> 調査書を出すお前が好きさ
> Cordial
>
> 黒い疑惑外す
> 俺の眼に嘘は無いさ
> シティはそれでもTOB
> 誰も引き返せないさ
> 昨日とは違う買値を
> 見せてくれ
>
> ジョージョー・イジ 買い気配で上がれ
> ジョージョー・イジ 廃止か維持かは
> 自分で決めてやる
> それがサイコー
>
> 突走る維持に
> 真っ黒ではないぜ・・・
>
> ジョージョー・イジ 未来を俺にくれ
> ジョージョー・イジ 投資家とお前を
> 倖せにしてやる
> これで決まりさ
> (原曲「ハイティーン・ブギ」 作詞:松本隆、作曲:山下達郎、唄:近藤真彦)

〇近藤真彦なんて、もう知らない人の方が多くなっちゃってるんじゃないかなあ。ちなみに情報提供は「勝ちどき通信」(株式新聞社)さんでした。(と、思ったら、やっぱり元ネタは・・・みたいな。さんでしたのね。失礼いたしました)


<3月15日>(木)

〇ハタと気がついたら、明日はホリえもん裁判の判決が出る日ではありませんか。無罪になればともかく(その確率は低そうだ)、有罪になれば当然出てくるのは「なんで日興CGは上場維持で、ライブドアは上場廃止なの?」「東京地検は、日興CGには動かないの?」という疑問である。日興のトップは業績連動給でしたから、粉飾決算で利益を嵩上げすることは、イコール私腹を肥やすことであったはず。これって背任じゃないの? これらの疑問に対し、いったいどう答えるつもりなんでしょう・・・・。

〇今日は仙台へ。東北経済連合会の評議員会で講師を務める。世界同時株安をどう読むか、日本経済はこれからどうなるか、てな話が中心。「ご質問は?」という段になると、地域格差の問題をどう考えるか、という定番のお尋ねが出る。予想はしているのだが、これに答えるのは難しい。聞く側も当然、妙案がないということは百も承知である。なにせ東北地方最大のテーマがそれなのだから。

〇たとえば「公共工事請負額」。東経連のデータによれば、東北地方全体の請負額は2001年には2.6兆円だった。それが2005年には1.8兆円になっている。つまり5年間で3割減。ただし05年は、中越大地震の復興費用があったので、まだしもマシであった(東経連は新潟県を含む東北7県の団体)。06年はその反動減があるので、建設関係はますます大変だという。

〇来たる参議院選挙では、「1人区」の行方が勝敗の分かれ目となるといわれている。東北7県のうち、宮城、福島、新潟県は2人区だが、残り4県の1人区のうち、青森、岩手、秋田の3県では、いずれも01年には自民党、04年には民主党(含む無所属)の議員を選出している。この調子で「地方における自民党の退潮」が全国的に広がれば、いよいよ参院における与党の過半数割れの可能性が高まってくる。なるほど、岩手出身の小沢一郎戦略は、鋭いところを突いていたのだなということを実感しましたな。


<3月16日>(金)

〇元ワシントン仲間で、現在はODAコンサルタントのIさんが、マダガスカル、アルゼンチンと回って帰国したところをつかまえて、仕事の打ち合わせと称して赤坂「和喜」で飲み会。

〇帰ってきての感想は、「なぜアジア以外では人口爆発が起きないんでしょう?」――いわれてみれば、南米や豪州のように国土も広大で、肉は売るほどあるという恵まれた場所では、人口はそれほど増えない。逆にアジアの暑くて、狭くて、生活環境かならずしも良くない場所で、人口は増える。概して、米を作っている場所の方が人口は増えやすいようだ。なぜなんでしょう?不思議だ。

〇もう一つの感想は、「日本の物価は、ホテルも外食も安い」。昔はよく、内外価格差なんてことを言ったものですが、それはもうほとんど消えたんじゃないでしょうか。考えてみれば、日本以外の国では毎年、少しはインフレが起きているのです。日本は物価が下がり続けた。これでは外国人観光客が増えるのも道理というものです。かくして北海道にはスキー客が、九州には温泉客が海外からやって来る。それはそれで結構なことですが、ワシはもう少し円高になった方がいいと思いますが。

〇Iさんは軽井沢をベースに仕事をしている。地域に貢献したり、週末に音楽活動をしたり、仕事と趣味のバランスがとれた暮らしをしている。偉いなあと思う一方で、我が身を振り返ると俗世間の極みのような場所で首まで浸かって日々を過ごしている。とりあえず明後日のサンプロ、ワシは実刑判決を食らったホリえもんに対して、何を聞けばよいのであろうか。


<3月17〜18日>(土〜日)

〇ふと気がつくと、東京都知事選まであと3週間ですか。とりあえず次の4候補が有力ということになっているようです。

石原慎太郎(74)(無所属) [現] 自民支援 元運輸大臣(竹下内閣)・環境庁長官(福田内閣) 現職(2期)
浅野史郎(59) (無所属) [新] 民主、社民支援 前宮城県知事(3期) ・慶大教授
吉田万三(59) (無所属) [新] 共産推薦 前足立区長(1期)
黒川紀章(72) (無所属) [新] 建築家

(以上、2ちゃんからコピペ。もっとちゃんとしたデータをご希望の方はこちらをご参照)

〇マスコミには変な癖があって、有力候補の数を偶数にしたがるのですね。これは新聞紙面を考えるとすぐ分かりますが、候補者の名前を2段に組むことがある。だから5人目が名乗りをあげるのは歓迎されない。面白いことに、1999年の都知事選では有力候補が6人だった(石原、明石、鳩山、舛添、柿沢、三上)。とにかく、「5人目」や「7人目」は泡沫にされちゃうことが多い。たとえば公開討論会などは、「足切り」にされることがあるわけです。

〇その点、丸山和也弁護士が、モーションだけかけて立候補を取りやめたのは、なかなか巧妙なプレイといえましょう。名前を売りたいのであれば、「寸止め」が正解。「第5の候補」を目指すのは、費用対効果が良くありません。真面目な候補者と見なされなかったら、そこで人生終わっちゃいますから。ところが驚いたことに、ここに登場したのが桜金造さんなんですねー。以下、キンゾーさんの略歴をウィキペディアで紹介してみる。

桜 金造(さくら きんぞう、1956年12月29日 - )は、日本のコメディアン、俳優。本名は佐藤 茂樹(さとう しげき)。旧芸名は、佐藤 金造(さとう きんぞう)。

(中略)

保善高等学校から東京都立井草高等学校に編入し卒業。一時、国士舘大学に通ったが中退。芸名の名付け親は松田優作。(「いつみても波瀾万丈」で本人が語る) 1975年、清水アキラやアパッチけん(中本賢)などとハンダースを結成、「笑って!笑って!60分」(TBS)に出演し、ブレイクする。


〇かんべえ、この辺の部分は知りませんでした。松田優作とはどういう関係だったんでしょ。

その後、アゴ勇とコンビを組み、「お笑いスター誕生!!」(日本テレビ)を10週勝ち抜き、第7代チャンピオンとなる。 「アゴ&キンゾー」のコンビ名で当時有名であったギャグは、実在の遊園地である小山ゆうえんちのCMをパロディ化した「小山ゆ〜えんちぃ〜」であり、逆に本家である小山ゆうえんちのCMキャラクターとして使われたりもした。

〇お笑いスタ誕、いつも見てました。「アゴ&キンゾー」のコントは破壊的な面白さでした。アゴ刑事がキンゾー容疑者の取調べを行うのだが、キンゾー容疑者はふてぶてしくて、まったく相手にしてくれない。「おめえが面白いものを見せてくれれば、話すかもしれないな」とキンゾー。そこでアゴ刑事が全身全霊をかけたギャグを演じるのだが、いくらやってもキンゾー容疑者は「知らねえな〜」と繰り返す。で、唐突に「小山ゆうえんち〜」が飛び出すのである。ああ、なんというシュールな。(ちなみに残念なことに、小山ゆうえんちはもう閉園しています。きっと跡地はイオンが建つことでありましょう)。

(中略)

俳優業の傍ら、バラエティ番組への出演も続け、「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」でのワニとの戦いは伝説となっている。夏場には怪談の語りを行っており、実話怪談形式の著書が多数ある。また、「西東京」という名のロックバンドを結成し、ヴォーカリストとしても活動している。創価学会の機関紙である聖教新聞にも度々彼の発言や池田大作と肩を並べてる写真などが掲載され、創価学会員としても知られる

〇で、ここが注目点。今回の都知事選では、創価学会票はキンゾーさんに流れるかもしれないのですね。石原さんは自民党候補となることを断った時点で、公明党の支持は得られない理屈なんですが、都議会では公明党は与党ですし、内心では当てにしていたかもしれない。というか、昨今の自公の関係を考えると、「もう、あほらしくてやってられません」という公明党側からの高度なメッセージなんじゃないか、とついつい深読みしたくなる。

〇それはそれとして、キンゾーさんは「都民の生活保護申請はすべて受け付ける。少子化対策として今いる子供を大切にする」と、マジなようですから、こういうのもアリでしょう。第5の候補者がちょっと気になります。


<3月19日>(月)

〇昨日の「サンプロ」をご覧になった方数人から、「陰山先生の音読の本がとっても良さそう。ぜひ欲しい」という声を聞きました。かんべえも記念に1冊頂戴しましたが、あの本は正確には「徹底反復音読プリント」(小学館)といいまして、525円でちゃんと販売しています。アマゾンのレビューも絶賛に近いです。お勧めいたします。

http://www.amazon.co.jp/%E5%BE%B9%E5%BA%95%E5%8F%8D%E5%BE%A9%E9%9F%B3%E8%AA%AD%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88%E2%80%95%E9%99%B0%E5%B1%B1%E3%83%A1%E3%82%BD%E3%83%83%E3%83%89-%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E5%85%A8%E5%AD%A6%E5%B9%B4-%E9%99%B0%E5%B1%B1-%E8%8B%B1%E7%94%B7/dp/4091044751/ref=sr_1_4/249-5059666-4833102?ie=UTF8&s=books&qid=1174310014&sr=8-4  


〇さて、本日は岡崎研究所にて、上海国際問題研究所のご一行を迎えての日米安保対話である。先方は恩家宝首相の訪日を控え、日本側のご意見伺いたし、ということで来ている。そういうことであれば、本気で遠慮のない意見を言っちゃうのが岡崎研究所の面々である。

〇少し遅刻しながら参上すると、あいもかわらぬ議論の応酬である。やれ台湾は核心的利益であるとか、軍事費の透明性をどうにかしろとか、いつもの話。新しいことといえば、慰安婦問題と衛星破壊実験のことぐらい。かんべえの出番では、世界同時株安なんてこともありますから、くれぐれも中国経済は気をつけてください、もう日米も一蓮托生ですからね、てなことを申し上げる。

〇相手側の副所長さん(いちばん偉い人)の話がとっても長い。

中国は特殊な国である。比較できるものがない。将来がどんな風になるか、我々にも分からない。が、他国の例を参照するならば、日本とドイツは第2次世界大戦で得られなかったものを、戦後になって獲得した。それと同じように、我々も戦争に訴えることはない。しかし台湾は核心的利益であり、国家の分裂は許されない。「ひとつの中国」は世界中のほとんどの国が認めている。だからといって武力統一を希望はしない。トラブルメーカーは陳水扁である。チベットも同様。変な映像が流れているが、あれは政治的なウソである。あのようなものに惑わされてはいけない・・・・・。

〇お説教モードである。このパターンになってしまうと、時間が空しく過ぎていくばかりで、まるで知的な刺激がない。間もなく終了予定時刻を過ぎてしまう。あーあ、今日はまったく収穫ないじゃん。今夜の不規則発言はネタがないなあ、と思ったところで波乱が起きた。

〇火付け役は佐藤空将である。最後に一言と断って、「老婆心ながら、アドバイスを送りたい」。チベットの例の映像、中国ではインターネットを規制しているでしょ?そんな風に見られると損しますよ、てなことを言ったら、またまた副所長さんの長広舌に火を点けてしまった。

私は15年もチベットで過ごした。人生の一番いい時代はチベットとともにある。この場に居る誰よりもチベットを知っているし、チベットを愛している。チベットは昔に比べて良くなった。反逆するものなどもう居ない。今では皆、金儲けで忙しい。もしもチベットで良からぬことがあるのなら、私は今すぐ電話をして指示をする。

〇ところが話しているうちに、この人は例の映像(中国兵が、チベットの子供と僧侶を狙撃したもの)を本当は見ていないことが判明する。ここで日本側が騒然となる。

「見なきゃダメですよ」

「見てないものを、何でウソだと分かるんですか」

「チベットを愛する人として、あれは恥ずべきことです」

「ちゃんと確認した上で、中国共産党として反論した方がいい」

〇さらに副所長氏は躍起になって反論するのだが、言えば言うほど墓穴を掘り続ける。最後は、「これまでに欧米の学者とも大勢会っているが、そんな映像のことを問題にした者は誰も居ない。あなた方は極端なことを言っているのではないか」とまで言った。おいおい、あの映像は世界中の人が見ているぞ。「チャイナ・スクール」の人とだけ会っているから、そういうことになるんだって。まあ、中国の偉い人に向かって、ここまで親切にマイナス情報を伝える岡崎研究所の方が、世間では奇特な存在なのかもしれませんけれども。

〇それにしても、こういう人たちに向かって、透明性を向上させろとか、人権を重視しろと言い続けなければならないというのは、なんと疲れることでありましょうか。


<3月20日>(火)

東京財団の若手安保研、とうとう今宵が最終回である。思えば2003年夏、坂本正弘先生の呼びかけで第1回の会合を開き、座長を押し付けられてしまってから幾星霜。2004年春から東京財団の研究プロジェクトに昇格して予算がつき、丸3年にわたって毎月第3火曜日の夜には研究会を開催してきた。参加者はじょじょに増え、講師ものべ30人を数え、提言も2本まとめた。ホント、よく続いたものだと思います。

〇今日の講師は伊藤貫さん。「日本は核武装せよ」という論者である。ワシントン在住の人なれど、たまたま日本に出張中のところを来ていただきました。この会が始まった当初には、まさか日本の核武装論議を真面目にする日が来るとは思わなかったけれども、それだけでもこの間の安全保障環境の変化が大きかったことが良く分かる。で、伊藤さんの議論は概ねこういう経路をたどる。

(1)日本人はリアリスト外交を知らない。親米保守派は真のリアリストにあらず。

(2)今後アメリカの国力は低下し、世界は多極化に向かう。

(3)核の傘に頼れない日本は自主防衛するしかない。ちなみに核武装のコストはGDPの0.1〜0.2%で良い。

〇たくさんの論点があるところですが、かんべえ(世間的な評価では親米保守派になるのでしょう)が妙に納得したのは、伊藤氏が「日本が自前の核戦力を開発するまでには10年程度かかる。それまではNuclear Sharingでいくしかない」と言ったところです。前にも書いたと思いますが、日本が自前の核を持つことは容易ではありません。NPT脱退なんて論外ですし、そもそも黒鉛炉を作るところから始めなければなりません。そんなもん、日本国内で立地できるわけありませんわな。その辺のことを知らずに、勇ましく「日本よ核を持て!」と主張する論者は、観念的リアリストと呼んでさしあげるべきでしょう。

〇ところが今後、中国の軍事力が今の調子で拡大を続けた場合、アメリカが日本に対して「核を持っていいぞ」と言い出す可能性はけっして低くはなく、それでNuclear Sharingができるのであればとりあえずは安心である。伊藤氏の場合、その間に自主防衛の努力をして、自前の核を持ってはじめて日本は一人前になる、という議論になる。ただし、アメリカの核を借りて、アメリカの目を盗んで自前の核を持つというのは、限りなく不可能に近いですわな。というか、日本の場合はNuclear Sharingができた時点で安心してしまい、その先には進まなくなるでしょう。

〇かんべえのように没道義的(極悪?)な人間としては、「それでいいじゃん」と思ってしまうのですが、自主防衛論者としてはそういう無定見なところが許せない、だから親米保守派はケシカラン、ということになるのでありましょう。結局、リアリストだ、アイデアリストだ、何とか主義だといった無数の流派は、最後は個々人の人生観とか好き嫌いに帰着するものなのであろうなあ、というのが今宵の生暖かい結論であります。

〇会合が終わったあとは、アメリカ大使館前の「キングズアーム」へ。ここでポテトとナッツをつまみにビールを飲むのが吉例の二次会となっておりまして、今まで何十回来たかわからない。ホントはお洒落な料理と一緒に各種ウイスキーを楽しむべき店なのですが、なぜかそういうストイックな路線になっている。しかも今宵などは、ウーロン茶とジンジャエールが多数派を形成しておりましたぞ。通算4年の月日の結果、もう「若手」ではなくなったメンバーが増えたのかもしれません。

〇何はともあれ、終わってホッとした。来たる3月29日(木)午後6時半から、この会合の最終報告会を開きます。Open to Public、無料の会合でありますので、ご関心のある方は下記URLから参加登録をどうぞ。不肖かんべえも報告をいたします。ついでに立食パーティーもついておりますので、安全保障関係のネットワーキングにも最適ですぞ。

http://www.tkfd.or.jp/event/detail.php?id=17&PHPSESSID=ee17c7d7abf349e3581dfe3d88e25453 


<3月21〜22日>(水〜木)

「インサイドライン」の歳川隆雄さんをお招きして、商社業界の内輪の研究会。ほぼ2時間、びっしりと内外の情勢について語っていただきました。内容が面白いのは当然として、永田町の故事来歴はもちろんのこと、朝鮮労働党の役名やら、ロシアの外交官の名前まで、歳川さんはすべてメモなしで通してしまうんですね。どうしたら、あんなことが可能なんだろう。ワシなんぞ人前で話をするときは、しょっちゅう「固有名詞が出てこないよ病」で苦しんでしまうのだけど。

〇歳川情報によれば、今年1月7日、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙が一面使っての調査報道記事を掲載し、「100ドル紙幣の偽札は、北朝鮮製ではないのではないか」と報道したらしい。ドル紙幣の偽造にはドイツ製の印刷機械やらスイス製のインクやらが必要になり、北朝鮮はそれらを調達しようとしたものの、結局は失敗に終わっているらしい。ひょっとすると「ウルトラダラー」を作ったのは、北朝鮮ではなくてCIAだったのではないか。そうだとすれば、ベルリンでの米朝会談以後、アメリカが宥和政策に転じた謎が解けるのではないか、とのこと。

〇かなり面白い仮説だと思うけど、CIAがドル紙幣の偽造をやるというのは、ちと無理筋でありましょう。そうでなくてもCIAは、イラクのWMD情報でミソつけちゃって、今ではほとんど存在意義を問われている状態です。これで職員がニセ100ドル紙幣を何枚か失敬して、それがバレたりしたらあの組織はお取りつぶしになるでしょう。逆にいえば、これが中国や北朝鮮の通貨偽造であれば、全然、問題ないんですけれどもね。

〇ところで米国の金融制裁解除で大騒ぎしている人がいますけど、ワシは正直なところ気が知れないと思っている。バンコデルタアジア(BDA)で凍結された2500万ドルなんざ、たいした金額じゃありませんがな。レッドソックスが松坂を取るために使ったおカネの3分の1程度でっせ。それに日本の北朝鮮向けパチンコ送金がいくらか知りませんが、まさか30億円以下ということはないでしょう。北朝鮮がBDAのカネに執着する理由は分かりませんが、よっぽどカネに困っているか、あるいは何か勘違いがあるからでしょう。

〇それよりも面白く感じられるのは、下駄を預けられたバンチャイこと中国銀行が、書類の不備を理由に資金の引渡しを拒否し、結果として六カ国協議が決裂してしまったことです。さすがは外資を受け入れた中国銀行、法令遵守の精神は見上げたものです。ここで独裁国家相手に、不透明なカネのやり取りをしてしまっては、所詮、中国の銀行はグローバルスタンダード足りえない、ということになってしまうでしょうからね。要は皆さん、経済のグローバル化というものを甘く見ていたのではないのでしょうか。

〇それから、田原総一朗さんの雑誌「オフレコ!」の対談を収録。テーマは「M&A」。村上ファンドのマネーゲームばかりが注目を集めておりますが、この間に産業再生機構が多くの企業を立て直してきたことを忘れちゃいけないと思うのです。つまり「官から民へ」移籍して、「金融再生」を目指した村上世彰氏は失敗し、「民から官へ」移籍して、「事業再生」を目指した富山和彦氏は成功した。かんべえから見ればどちらも同世代人ですが、この二人を比較検証する企画は、どっかのビジネス誌が手がけて欲しいものだと思います。


<3月23日>(金)

〇今週は溜池通信お休みであります。

〇それにしても変な1週間でありました。日曜はホリえもん、月曜は日中安保対話、火曜は核武装論議、水曜は家で論座の原稿書き(テーマは株式投資)、木曜はM&Aについての対談。金曜日の今日は、呆けた頭で統一地方選挙のことを調べておりました。

〇ちなみに明日は、久しぶりに町内会の会合に出かけます。うーん、いろいろあるなあ。今年度も残り1週間を残すのみ。


<3月24〜25日>(土〜日)

〇作家、大学教授、歯科医、建築家、タレント、発明家、不動産鑑定士、路上音楽家、タクシー運転手、元大阪府警察官、易学者、風水学研究家、ディレッタント・・・・。

〇勘のいいアナタはもうお分かりですね。そう、上記は東京都知事選の候補者の元職です。なんと申しましょうか、多士済済というか、多種多様というか、いわゆる「泡〇候補」が大量生産されるのが、この選挙の面白さなんですよね。今年は特に豊作でありますようで。これは暖冬のせいでしょうか、それともデフレ終焉によるものでしょうか?

〇ドクター中松なんて、直近の2回の選挙では10万票も取っていますから、「〇沫候補」と呼んでは失礼に当たります。参院選全国区に出れば、「非拘束名簿方式」で通ってしまうかもしれません。それでもドクターをひきつけてやまない何かが、東京都知事選にはあるらしい。桜金造さんも、学会票をゴッソリ持っていくかもしれず、勝敗の帰趨を動かしかねない存在。(とりあえずワシは、政見放送で「♪小山ゆうえんち〜」を久しぶりで見たい)。そうなると、「候補者偶数の法則」(当欄の3月17〜18日を参照)に基づいて、6人までが要チェックということになります。

〇それ以外の候補者は、いわゆる「独自の戦い」となるわけですが、東京都知事選という場の磁力が全国から引き寄せてくる人材は、まことに端倪すべからざるものがあります。又吉イエス氏、羽柴秀吉氏などの常連が見当たらない一方で、新顔がなかなかに豊富なのである。

〇で、どうやら今回の台風の目はこの人であるらしい。前衛政治家・外山恒一氏である。上記の元職でいうと「ストリート・パフォーマー(路上音楽家)」が該当する。この人のブログでは、最後の更新として「当落を度外視すれば、どんなすごいことが可能なのか、都民ひいては全国民にぶったまげていただこう」と宣言している。とりあえず当方としては、「オリジナル曲、弾き語り映像」を見てぶっ飛んでしまいました。

〇とはいえ、ブログを読んでいると、あまりにもハチャメチャなので、「この人は一体、何者?」とかえって分からなくなってしまう。そこでウィキペディアで「外山恒一」を引いて見ると、これが途方もない長文である。ったく、誰が書いてるんだ、こんなの。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E5%B1%B1%E6%81%92%E4%B8%80 

〇こんな風に、楽しみの多い選挙であります。来週はひとつ、東京都知事選のポスターがある場所で、じっくりと花見などやって見たいものです。

〇それはさておいて、過去10回の知事選のうち、無風で終わったのは3つしかありません。この中には「もったいない」で社民党の女性候補者が現職を破ってしまった滋賀県(7/2)、アッと驚くヤッシー敗退の長野県(8/6)、官製談合出直し選挙の福島県(11/12)、基地問題で荒れた沖縄県(11/19)、「そのまんま現象」に揺れた宮崎県(1/21)、保守分裂で知事が変わった山梨県(1/21)、柳澤発言で野党が首の皮一枚に迫った愛知県(2/4)などがあります。日本の人口の10%、GDPの18%を占める東京都は、果たしてどんな答えを出すのでしょうか。


<3月26日>(月)

〇新橋駅前の選挙掲示板で、外山恒一氏のポスターを確認しました。噂どおりに凄かったです。あんまり気になるから、家に帰って探してみたところ、ちゃんとありましたよ、外山氏の政見放送が。

http://blog.livedoor.jp/gico/archives/50024371.html 

〇いまだかつて、「私は諸君を軽蔑している」などという演説があったでしょうか。「選挙で何かが変わると思ったら大間違いだ」(それは正しいかもしれない)、「改革なんていくらやったって無駄だぁ」(気持ちは分からんではない)、「ぶっちゃけていえば、もはや政府転覆しかなぁいっ!」(・・・・・)、最後は落ちがついていて、「私が当選したら、やつらはビビル。私もビビル」(なんなんだ、それは)。

〇ということで、ついつい繰り返し見てしまいました。おそるべしユーチューブ。かんべえは一応、体制派の人間ですので、外山氏の政治思想(ファシズム)や目論見(政府転覆)には反対の立場を取るものですが、一介の選挙ファンとしては大いに健闘を祈るものであります。

〇ちなみに掲示板では、それ以外では、順当に石原、浅野、吉田と張ってあって、気の毒なことに黒川さんのポスターは剥がれて地面に落ちていた。それにしても、14人の候補者が出ているのに、ポスターが5枚とは寂しいところ。まだ投票日までは2週間ありますので、無理はないところなんですが、ワシは是非、桜金造氏のポスターが見たい。

〇本当は今日、ワシは城山三郎氏と椎名素夫氏を格調高く追悼し、特に後者についてはこの素晴らしい追悼文を紹介するつもりであった。その上で、最後は鴨志田譲氏について触れて軽く「落し」、今週号のAERA(わざわざ390円も出して買った。ほかは読むところが全然ない雑誌なのに)に出ていた、「バクチですった金と一緒。自分が好きになった男だから、後で悔やんでもしょうがないでしょ」という西原理恵子氏の哀しくも美しい告別の言葉を紹介して締める、というパターンを思い描いていた。(そうすれば、いかにも「かんべえ風」の筆致になるではないか)。

〇予定変更は、この政見放送を見てしまったお陰である。やけっぱちが伝染ってしまったかな。


<3月27日>(火)

〇研究会仲間から献本を頂戴する。早速拝読。

〇菅原出『外注される戦争』(草思社)は、イラク戦争で脚光を浴びた民間軍事会社(Private Military Company)の実情を描いた労作。「現代の傭兵組織」「アメリカは戦争もアウトソーシング」などと、何かと物議を醸すPMCだが、その実態はあまり知られていない。その点、菅原氏は単に世界各地でPMCを取材するのみならず、PMCの戦場ジャーナリスト向け実戦教習プログラム(第7章で紹介。これがスゴイ)に参加するなど、身を挺してこの問題に取り組んできた。ついには本物のPMCの日本法人の役員にリクルートされてしまった。ミイラ取りがミイラになってしまったわけだが、そういう人が語るミイラ論である。それだけに、中身は濃い。

〇戦場におけるPMCは、実に合理的な存在である。彼らの多くは元軍人のスペシャリストたちで、危険な任務について高いお金を取るわけだが、年金も勲章も不要な兵士たちであるだけに、払う側としては「お値打ち」な買い物である。働く側も、単にカネだけではなく、厳しい環境や仲間意識、あるいはイラクの子供たちに惹かれてなど、実に様々な動機でこの仕事に集まってくる。フィジーやネパールなどの軍人たちまでがPMCに身を投じ、イラクで活躍しているという話には唖然としてしまう。

〇最近のPMCは、兵士を求めてコロンビア人を募集しているという。アメリカ人よりも安上がりな兵士を求めているわけだが、担当者は「これは両者にとってWin-Win、なんの問題もない」と言い切るらしい。うーん、こりゃどっかの会社の偽装請負どころの騒ぎではない。ともあれ、「いまどきの戦争」の実態を知るには格好の1冊である。

〇渡部恒雄『今のアメリカがわかる本』(三笠書房、知的生きかた文庫)。以前からたびたび当欄に登場するナベさんの書き下ろし。CSISで10年過ごしたベテランのアメリカ・ウォッチャーであり、日米関係サークルの住人でナベさんにお世話になってない人は居ない、と言っても過言ではない。

〇今のアメリカが抱えている難問、そのほとんどはイラク戦争が発端となっているわけだが、「なぜ、こんなことになってしまったのか」をポイントを押さえつつ、感情的にならずに語っている。政治理論や高名な研究者の発言を紹介しつつ、みずからの体験談も織り交ぜ、最後まで飽きさせないバランスが見事。ナベさんの人柄がそのまんま出ています。

〇菅原さんもナベさんも、ともに東京財団「若手安保研」の仲間であります。最終発表会は明後日の夜、「予約したよ」というメールを数人の方から頂戴しております。まだお席は10人分くらい残っていると思いますので、念のためもう1回、案内をしておきます。どうぞよろしく。


「日本の外交・安全保障の針路」―若手研究者が考える戦略ツールとは―

日時:2007/03/29 Thu 18:30〜20:30
場所:日本財団ビル2階 大会議室
定員:100名
参加:無料
担当:赤川

内外情勢の急激な展開にあわせ、2003年8月に発足しました、45歳以下の若手研究者を中心とした包括的な調査・研究活動を通じ、わが国のとるべき総合的な安全保障政策のあり方について新しい視点を提示するプロジェクトは、04年度、05年度と2つの提言を発表し、初期の目的を達成し終了することといたしました。

これまでの研究の総括を吉崎達彦氏が報告いたします。また、多くのプロジェクトメンバーが関心をよせた「パブリック・ディプロマシー」について渡部恒雄氏から、長らくタブー視されてきた「核」について、荒木麻由子氏から研究報告をいたします。

終了後、簡単な立食の懇親会を予定しております。

●参加申し込みフォームはこちら(↓)からどーぞ。

http://www.tkfd.or.jp/event/detail.php?id=17&PHPSESSID=ee17c7d7abf349e3581dfe3d88e25453 


<3月28日>(水)

〇ふと気づいたんですが、この夏が猛暑だと大変なことになるんじゃないでしょうかね。

〇夏に電力が足りなくなると、東京電力や関西電力は、夏場に供給余力がある北陸電力に融通を依頼することが多い。その北陸電力で原発の問題が起きて、しばらくは見込みが立たない。この冬の暖冬で雪が少ないから、雪融けの水量も少なくなるので、水力発電も期待できない。ということは、夏場に電力の融通を求める相手がいないということになります。

〇電力会社としては、この際、石油火力を増やすしかないでしょうな。この時期に温暖化ガスを増やすのは痛いけど、それこそ背に腹は代えられない。結局、日本のエネルギー政策としては、真面目に原子力に取り組むしかないと思うのですが、肝心の原発の現場でこんなに問題が続出するのでは先行きが覚束ない。経済産業省では、カザフスタン相手にウラン確保外交などと先手を打ってますが、そんな調子でいいんでしょうかね。

〇会社の同僚が入院してしまったので、横浜の病院までお見舞いへ。入院の見舞い品としては、ホリえもんではないが『史記』が良いだろうと思って探すも、書店ではおいていない。ちくま学芸文庫は商売が下手であるなあ。しょうがないから、『気まぐれコンセプト・クロニクル』を買って持っていく。分厚いので、時間つぶしにはよいだろう。本人はわりと元気で、これから『坂の上の雲』を読み返すと言っておった。結構なことである。

〇この時期、DVDを病室に持ち込んで、『無責任男シリーズ』を全部見る、なんつーのもちょっと贅沢かも。植木等さんが残したコンテンツも、まことに豊饒でありますからな。


<3月29日>(木)

〇本日は年度末でご多用の時期、また花見にも絶好の日よりにもかかわらず、東京財団の若手安保研の報告会に多数お運びいただきありがとうございました。

〇本日の発表内容や、過去4年間の当グループの活動経緯については、溜池通信の来週号当たりで取り上げようと思いますので、ここではやめておきます。以下は今日のテーマ「パブリック・ディプロマシー」と「核武装」のうち、前者についてこんな情報源がありますよ、というご紹介。

〇まずはアメリカ人若手研究者による日本関連のブログです。(金美齢さんが出てまっせ!)

●Occidentalism http://www.occidentalism.org/ 

〇このブログが取り上げた「慰安婦問題」のエントリーは、ここをご参照。コメントがとっても多いです。こういう英語による情報発信を増やすことが重要なんだと思います。ついでに、在米日本大使館によるご説明サイトもご紹介。

●在米日本大使館「慰安婦問題」 http://www.us.emb-japan.go.jp/english/html/cw1.htm 

〇いろんなやり方で誤解を解こうとしているわけですが、これだけ問題が大きくなってしまったこと自体が失敗でありまして、後はダメージコントロールを上手にやるしかないという段階です。こうなると、安倍さんが訪米を後回しにしたことが悔やまれますね。5月の連休は試練の訪米になるかもしれません。エリザベス女王の訪米に重なったのは、果たして運がいいのか悪いのか。外交関係者にとっては冷や汗の準備が続くことでしょう。

〇ついつい愚痴になってしまいますけれども、慰安婦問題については3月6日の当欄で書いたように、安倍さんが「荒らしはスルー」してくれれば良かったと思います。3月1日、東京財団で招いたニコラス・セーチェーニ氏は、最後になにか一言と水を向けたところ、「この問題だけは気をつけてください」と言っておりました。もちろん同じ内容は、シーファー大使やマイケル・グリーン氏など、いろんなルートから官邸に届いていたはずなのですが。

〇安全保障の問題について、日本人は長年にわたって映画『マトリックス』のような仮想現実の世界に棲んでいました。「平和憲法」だの何だのという議論は、国内というコクーンの中でだけ通じる「夢」でありました。そこから目覚めた今となっては、夢の世界に戻りたくはあるけれども、今さらコクーンに戻るわけにも行かない。その辺のことは、今の日本ではほぼコンセンサスとなっている。ところが「歴史認識」の問題については、今だにコクーンの中でしか通じない議論をしている人たちが居る。困ったものであります。

〇そういえば今日、某所でこういう説明を聞いて非常に納得してしまいました。日本の二大紙の対立軸というのは、こういうことになっていたのですね。

読売新聞「憲法改正を目指す安倍首相は支持するが、小泉・竹中式の構造改革は許せない」

朝日新聞「小泉・竹中式の構造改革は支持するが、憲法改正を目指す安倍首相は許せない」

〇読売新聞が天下り規制に反対していたのは、要はこういうことであったのか。変なの。


<3月30日>(金)

〇ハッと気がつくと、今日は年度末である。これで実質的に2006年度が終わる。思えば1年前は、ワシの周辺はもっとのんびりしていたんだよな。

〇ところで日本という国は、「政府の予算」「ほとんどの会社の決算」「会社の入社式・人事異動」「学校の入学・卒業」など、1年を通じた制度のほとんどが「4月始まりで3月終わり」になっている。これは実は稀有なことでありまして、まずほとんどの国では学校は9月始まりであるし、政府予算は10月始まりだの7月始まりだのバラバラである。これらが「いっせーの」で揃っていることは、非常に便利なことなんですね。たとえば予算を立てるときに、新人が9月に配属されると考えたらとっても面倒くさいでしょ?

〇こんな風に、「4月始まり」が制度化されているのは、きっとこの国には「季節感」をとても大事にする伝統があって、そして4月には桜が咲くからでしょう。桜の季節に新しい会計年度が始まり、新しい環境が始まり、出会いと別れがある。それに沿って、われわれは引越しをしたり、新任ご挨拶をしたり、入学式や卒業式のお祝いをする。

〇桜がなかったら、この習慣はきっとこれほどまでには定着しなかったでしょう。この週末は満開ですな。







編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki