●かんべえの不規則発言



2008年1月





<1月1日>(火)

○2008年初の不規則発言は、雪の富山からお送りすることになるわけですが、ウチは一応、喪中のお正月でもあるし、間もなくアイオワ州党員集会の結果も出ることですし、常在戦場ということで、またまた米大統領関連の話で始めたいと思います。まあ、今年はこのネタを取り上げる機会が多いでしょうから、幕開けにはふさわしいのではないかと。

○まず民主党。アイオワ州党員集会では、予想通りエドワーズが盛り返してきて、完全に三つ巴の戦いとなりました。intradeの値動きを見ると、バラク・オバマ株が急上昇のあとで急落していることが分かる。勢いが落ちてきましたね。そうした中で、ヒラリー・クリントンが頭を下げつつ、目の前の嵐を乗り切ったのは見事といえましょう。なにしろ彼女の場合、これ以上目立つ必要はなくて、地道に選挙活動を行うだけでいい。こんな風に危機を乗り越えることで、候補者とキャンペーン・チームが鍛えられていくというのが、米大統領選挙の「お約束」である。

○次に1月8日に控えているニューハンプシャー州予備選の情勢を見ると、こちらはヒラリーとオバマが拮抗していて、エドワーズはちょっと追いつきそうにない。やはりこれまでの選挙運動の量が違う。こうやって見ていくと、資金量とか全国的な知名度という点で、ヒラリー・クリントンの優位は揺らぎそうにない。オバマとエドワーズが生き残るためには、できればアイオワ州とニューハンプシャー州で2連勝したいところだが、それはなかなかに難しい。逆にヒラリーとしては、「連敗しなければOK」である。

○共和党はアイオワ州で面白い現象が起きている。先行馬のロムニーは資金量で他を圧倒しているのだが、ハッカビーとマッケインという「お金のない候補」同士が結託し、ロムニー叩きをした効果が上がり始めた。フレッド・トンプソンとロン・ポールは今ひとつ勢いがなく、マッケインが第3位の座を固めつつある。

ニューハンプシャー州の情勢を見ると、こちらは先行するロムニーにマッケインが肉薄している。こうなると、「一度は死んだはずのマッケインが蘇ってくる」という、かんべえが描いた薄いシナリオが現実味を帯びてきたことになる。これはマスコミ的には、おいしい物語の誕生というべきで、これがあるから予備選挙の序盤戦が重要なのである。現在のintradeの値動きを見ると、ジュリアーニ、ロムニー、マッケインという順位で厳しく競っていて、先の読めない闘いになっている。

○米大統領選挙の歴史を振り返ると、共和党はあっさりと候補者を決め、民主党はギリギリまでもめるという傾向がある。共和党は早めに「プリンス」を決めてしまい、党執行部の意向も一致するという伝統がある。逆に民主党は候補者が乱立し、各団体が入り乱れて候補者を決めるのだけれども、得てして経歴などを無視して意外な候補者を選出するというダイナミズムがある。その点、2008年はまったく逆になっているところが面白い。

○良くも悪くも、ブッシュ大統領という非常に不人気な政権が長く続いてしまったことが原因なのであろう。かならずブッシュに勝てる候補を、ということで民主党側ではヒラリーという「史上、もっともよく準備された候補者」が登場した。逆に共和党側は、候補者が現職大統領から距離を置かねばならないという後ろめたさがあり、「次の候補者」を絞りきれなくなっている。

○とはいえ、準備ができているから有利というわけではないし、準備がないから勝ち目がないわけでもない。何度も繰り返しますが、これはそんなに簡単な戦いではありません。何が起きるか分からないし、何かが起きるとしたら予備選挙の序盤戦なのです。2008年の冒頭1週間は、そういう面白い時期なのであります。


<1月3日>(木)

○米大統領選挙のオタク話を続けます。

○この件で雑誌の取材などを受けていると、どうにも隔靴掻痒なのであります。喩えて言えば、アメリカ人に向かって日本の内閣総理大臣がどうやって決まるかを説明しているのと同じで、所詮は短い時間では本当のところを理解してもらえるはずがない。仕方がないから、「こう言えば理解してもらえるかなあ」という線で説明するしかない。

○ところが当方のそういう気持ちを逆なでするように、「ヒラリーが勝つと中国重視になるから、日本は困るんでしょう?」みたいに粗雑な質問が飛んできたりする。いやね、ワシもそういうことを書いてはいるけれども、それだって分かんないのよ。だって、11月までの長い選挙戦においては、何が起こるか分からないでしょう? それまでには台湾総統選も北京五輪もあるわけで、その辺のイベントがトリガーになって、アメリカの世論が大きく動いちゃうのはよくある話で、その辺の予測不可能性が米大統領選挙の面白さなのです。

○何といっても現下の局面でもっとも混沌としているのは、共和党内の争いである。「テロとの闘い」という大テーマから行くと、共和党内でもっとも有力なのは「9/11の英雄」であるジュリアーニと、「ベトナムの英雄」であるマッケインであろう。2008年の共和党候補者選びは、両者のシーソーゲームという性質を有している。昨年はマッケインが失速し、ジュリアーニが先頭に立つという展開だった。それがここへ来て、ジュリアーニが失速してマッケインが復活しつつある。

○私見ながら、米国外交の前途を考えるとこれは良いことである。なんとなれば、ジュリアーニは社会政策でリベラル(中絶賛成、同性愛にも寛容。でないとニューヨークでは生き残れない)なので、その分を外交政策でタカ派に歩み寄った。具体的に言うと、ネオコン派を大勢、スタッフに雇い入れた。(詳しくはこの資料をご参照)。ノーマン・ポドーレッツ、デイビッド・フラムなどの札付きがゾロゾロ並んでいる。ネオコンを味方につければ、宗教右派も自動的についてくるという読みなのだろう。今の共和党では、イスラエル寄りの姿勢を示すことが、いろんな意味で「お得」なのである。で、ジュリアーニが失速すると、この辺のアドバイザーたちも揃って振るい落されることになる。結構なことではありませんか。

○他方、マッケインも、保守派の顰蹙を買うことでは人後に落ちない。何しろブッシュ減税に反対し、選挙資金改革や移民問題ではむしろ民主党に近いラインで論陣を張ってきた。要はいいカッコをし過ぎるのだが、本人は小泉さん的な一匹狼タイプなので、他人の言うことなど聞きやしないのである。そのマッケインが外交政策のアドバイザーにしているのは、スコウクロフト、アーミテージ、パウエルなどの穏健派である。マイケル・グリーンやランディ・シュライバーなどの知日派人脈もついてくる。良い話ではありませんか(ちなみにビル・クリストル、マックス・ブートなどのネオコンもちゃんと入っている。彼らはやはり賢い)。

○ということで、「がんばれマッケイン」と言っているのですが、そんなに簡単な話ではない。まず、両候補が決め手を欠く中にあって、資金量にも恵まれて、スルスルと支持を伸ばしてきたのがロムニーであった。ここに共和党の候補者選びは、「天下三分の計」の様相を呈する。しかし、「あいつモルモン教徒なんだって」と知れわたるにつれて、勢いが伸び悩むようになる。さらに共和党保守派としては、こんな中道寄り候補者の三択問題では到底我慢ができず、南部出身のフレッド・トンプソン、マイク・ハッカビーという2候補が相次いで浮上する。トンプソンは今ひとつお気に召さなかったようだが、ハッカビーはさすがにもと牧師さんだけあって、宗教的右派の心に響くようである。で、彼らの動向は無視できない。

○最後はジュリアーニ、マッケイン、ロムニーの三択で落着すると思うのだが、誰が勝つにしても「保守派の応援」を取り入れなければならない。そのためには、政策的な妥協も必要になるだろうし、副大統領候補にタカ派や宗教右派を受け入れるといった決断もあるかもしれない。さもなくば、保守派はそっぽを向いてしまうか、最悪、第三政党の候補に肩入れしてしまうだろう。大きな方向転換の選挙の年は、得てして第三の候補が出てくるからだ。結論として、共和党の「自分探しの旅」はまだまだ紆余曲折があって、時間がかかるだろう。最終的な候補者が誰になるにせよ、どんな課題を抱えることになるかはまったく読めないのである。

○とまあ、こんな長い説明をしていても埒があかないので、しょうがないから、取材に対しては「現職対新人の年はともかく、新人対新人の年は先が読めないのですよ」などと答えている。こんな説明を最後まで付き合ってくれる物好きは、溜池通信の古いファンくらいでありましょうし。

○ということで、明日はアイオワ州党員集会の結果が楽しみであります。


<1月4日>(金)

○民主党がオバマで共和党がハッカビー。適度なサプライズでありましたね。この結果を、いろんな形で読み解くことができる。「アイオワ州が残したメッセージは何か」が全米で議論され、その結果がニューハンプシャー州やサウスカロライナ州に引き継がれていく。緒戦で生じたモメンタムが、候補者を大化けさせたり、カリスマに仕立て上げたりする。あるいは、意外な敗北を喫した候補者が、底の浅さを露呈してしまうこともある。試練が候補者を鍛える。これが予備選挙の醍醐味というものでありましょう。

○今日の結果を勝手読みするならば、第一の教訓は「資金や準備の量よりも、メッセージと斬新さが勝った」ということになります。資金と準備の量では、ヒラリー・クリントンとミット・ロムニーが他候補を圧倒していた。しかし、それだけで勝てる戦いではない。「変化」を標榜したバラク・オバマと、「保守の魂」に訴えかけたマイク・ハッカビーに凱歌があがった。気の毒に、ロムニーは広告費だけで1000万ドル以上もアイオワ州に注ぎ込んだんですよ。しかも彼の選挙資金は、かなりの部分が自己資金です。ああ、もったいない。

○次なる教訓は、「宗教右派の意向は、やはり無視できない」ということでしょう。毎度のことながら、アメリカ大統領選挙においては、民主党が北東部と西海岸を抑え、共和党が南部と西部山岳州を取る。従って、勝敗を決するのは中西部ということになる。そのハートランドとも言うべきアイオワ州の人々は保守的です。彼らは、穏健派で中道寄りのジュリアーニ〜ロムニー〜マッケインという3択問題では満足できなかった。そういう民意を背に受けたハッカビー候補は、今後の戦いにおいて重要なプレイヤーとなるでしょう。

○第三の教訓は、ちょっと気づきにくいことですが、「イラク情勢の安定化が明暗を分けた」ということである。イラク情勢が悪くて、明日をも知れない間は、経験に勝るヒラリーへの支持が強かった。ところが、あれだけ評判の悪かったブッシュの増派が成果を挙げて、イラクからのニュースがめっきりと減り始めると、あら不思議、「即戦力」よりも「未知数」の方が魅力的に見えてきた。逆にイラク情勢で追い風を受けたのはジョン・マッケインである。なにしろ彼は最初から増派を支持していて、この点ではまったくブレていない。「俺はやっぱり正しかった」と言える立場である。とうとうintradeの"2008 Republican Presidential Nominee"では、マッケインがジュリアーニを抜いて首位に立ちました。(パチパチパチ)

○逆に"2008 Democratic Presidential Nominee"では、ヒラリーにオバマが急接近し、エドワーズが引き離されている。まあ、こんなのは途中経過ですから、あんまり一喜一憂しても仕方がない。アイオワ州で奮わなかったジュリアーニは、このまま失速してしまうかもしれませんが、ヒラリーはこの程度では参らないでしょう。オバマが指名を獲得するためには、来週のニューハンプシャー州はもちろん、その後の戦いを残らず勝ち続ける必要がある。

○少し先走ったことを言えば、1月29日のフロリダ州が勝負どころとして浮かび上がってくる。ここはジュリアーニとヒラリーが準備万端、爪を研ぎつつ他候補を待ち受けている場所。ユダヤ系住民が多いので、中東政策が鍵を握ってくる。あらためて、イラクや中東和平に注目が集まるでしょう。ブッシュ大統領の最後の一般教書演説も、だいたいこの時期に行われるでしょうし、仮にこのタイミングでイランが妙な動きをしたりすると、一気に緊迫の度が高まるという仕組みになっております。

○いやあ、ホントに大統領選挙は面白い。ワシはやっぱり、「ヒラリー対マッケイン」の一騎打ちが見たいな。


<1月5日>(土)

●疑問:アメリカ大統領選挙の予備選挙が、いつもかならずアイオワ州やニューハンプシャー州で始まるのは、他の州から見ると不公平ではないのでしょうか?

○確かに不公平と言えばその通りなのですが、仮にこれが毎回変わるようであっては、過去のデータが意味をなさなくなってしまいます。「アイオワでは番狂わせがある」、「ニューハンプシャーでは税制が議論される」など、土地ごとに積み上げられたストーリーがあって、候補者たちは、過去の候補者たちと同じ場所で勝負をし、同じような試練を受ける。有権者はそれを見て、候補者に対するイメージを形成してゆく。かくして大統領候補を輝かせる「ドラマ」が誕生する。アイオワやニューハンプシャーには、そういう伝統の力があるのです。

○言ってみれば、JRAの1年がかならず中山金杯で始まるようなものであります。これが年によって府中だったり阪神だったりすると、落ち着きが悪いではありませんか。競馬ファンというものは、「弥生賞を勝った馬は意外と伸びない」とか、「青葉賞を勝った馬はダービーで強い」とか、いろんなデータやジンクスを頼りに馬券を買います。そうやって馬に歴史が刻み込まれ、個性が創り上げられてゆく。無敗で勝ち進む天才馬もいれば、遅咲きの名馬もあり、怪我から復活を遂げる馬もいる。つまり「人に歴史あり、馬にデータあり」

○ということで、本日の中山競馬場は大変な人出でありました。ちょうど土曜日になったのもさることながら、きっと皆、昨年末の有馬記念に納得が行かなかったからではないかと思います。昨年は世相を反映するかのように、G1レース荒れまくりの1年であった。そして1年の締めくくりの有馬記念も、「マツリダゴッホ」で祭りとなった。

○さて、「一年の計は金杯にあり」ということで、今年の戦略を考えた。「昨年、三歳牝馬の大活躍の陰で、評価が低かった三歳牡馬が再評価される」というテーマをでっちあげ、本日は4歳牡馬を応援しようと腹を決める。

○中山金杯、@フサイチホウオーやHヒラボクロイヤルは頼むに足らず、ここはBメイショウレガーロを軸に、GアサカディフィートやNエアシェイディなどの人気馬へ流してみる。しかるに1位はLアドマイヤフジ、2位はNエアシェイディで、Bメイショウレガーロは惜しくも3着。馬鹿馬鹿、ワシの馬鹿、ちゃんと複勝を買っておけ。780円もついとるじゃないか。

○京都金杯、こちらは迷わずOアドマイヤオーラに決め打ち。鞍上が安藤勝巳というのが心強い。8レースをアンカツが、9レースを武豊が制しているので、ここは是非、メインも取ってもらいたい。しかるにOアドマイヤオーラは、先行するHエイシンデピュティにわずかに届かなかった。ああ惜しい。欲張って馬単で買ったから当たりゃあしない。思わずゴール前で「届け!」と絶叫してしまったぜ。

○アツイ負け方をしてしまったが、米大統領選挙と同様に競馬は奥が深い。そして楽しい。


<1月6日>(日)

○毎度のことながら、The Economist誌の読みがいかにも深い。特に最後の部分。

http://www.economist.com/world/na/displaystory.cfm?story_id=10473364 

The most exciting race in decades would not be complete without its unexpected twists, and New Hampshire offers one on Tuesday. The state's independents may vote in either primary. Both Mr Obama and Mr McCain court them arduously. But they may only vote once; if they break for Mr Obama's hope and optimism, they abandon Mr McCain to Mr Romney. And if they break for Mr McCain's maverick streak, they may help the Democratic machine's candidate, Mrs Clinton. It would be a great irony if the quirky “Live Free Or Die State” helped one or both of the two most cautious candidates in the race.

○ニューハンプシャー州は"Open Primary"という制度をとっていて、要するに有権者はどっちの党の投票にも参加できる。だから無党派層の動向が大きな意味を持つ。このために、NH州ではしばしば劇的な結果が出る。これが"Closed Primary"の州であれば、決まった党員以外は投票に参加できないので、事前の世論調査が当たりやすい。

○そこで今回の場合だが、NH州の無党派層にとっては、@民主党予備選に出かけて、「変化を標榜するバラク・オバマに投票してくる」、A共和党予備選に行って、「一匹狼タイプで、アイオワにおける真の勝者のジョン・マッケインに投票する」、という2つの選択肢がある。両方に出かけるというのはさすがに難しい。

○この勝負をさらに深めているのは、NH州においては、民主党側では選挙資金と組織力に勝るヒラリー・クリントン陣営が先行しているし、共和党側ではミット・ロムニー候補がお隣のマサチューセッツ州出身なので、これまたリードしている。オバマもマッケインも、ここは是非、銀メダルではなくて金メダルが欲しいところなので、両者が無党派層を取り合うという妙な戦いになるというのである。

○最新の世論調査についてはこのページの表が見やすいね。

http://www.electoral-vote.com/index.html 

State Pollster End date Clinton Obama Edwards Giuliani McCain Romney Thompson Huckabee
New Hampshire Suffolk U. Jan. 3 37% 25% 15% 9% 25% 29% 2% 13%
New Hampshire Zogby Jan. 3 32% 26% 20% 9% 34% 30% 2% 10%
New Hampshire Suffolk U. Jan. 2 39% 23% 17% 9% 28% 25% 2% 12%
New Hampshire ARG Jan. 1 35% 31% 15% 8% 35% 25% 1% 12%
New Hampshire Suffolk U. Jan. 1 37% 20% 16% 9% 29% 25% 2% 10%
New Hampshire Suffolk U. Dec. 31 31% 22% 14% 14% 31% 25% 2% 9%
New Hampshire Franklin Pierce Coll. Dec. 31 32% 28% 19% 10% 37% 31% 2% 5%
New Hampshire LA Times Dec. 26 30% 32% 18% 14% 21% 34% 4% 9%


○以下のコメントが笑えます。

In Hampshire turnout is always high, but it has a different problem: it is an open primary. When a voter walks in, the poll worker says: "Good day sir/madam, would you like a Democratic ballot or a Republican ballot?" If the answer is: "I dunno, what do you think?" the poll worker is kind of stuck. About 40% of the New Hampshire voters are registered as independent and many of them like both Barack Obama and John McCain. If they ask for a Democratic ballot, it helps Obama and hurts McCain, and vice versa. All the polls show that large numbers of New Hampshire independents like both men but haven't decided which ballot they want yet. This makes polling unpredictable.

○ということで、NHの戦いは「バラク対マッケイン」だそうです。無党派層を味方につけた方に、クリントン、ロムニーという先行馬を逆転するチャンスが生まれてくる。いよいよ超党派の戦いになってきましたね。


<1月7日>(月)

○親切な読者からご指摘がありました。ニューハンプシャー州の予備選挙は、以下のようなルールで行われます。ソースはこちら


Presidential Primary
1) Meet with the Supervisors of the Checklist no later than the day prior to the filing period for the Presidential Primary (October 12, 2007).
  This is the last day you can change your party affiliation before the Presidential Primary.

2)
    If you are a registered member of a party, you may change your registration at any primary, however, you will not be allowed to vote in that primary.   Undeclared voters may declare a party and vote at any primary.  The law allows an undeclared voter to declare a party at the polls, vote the ballot of that party, and then change their party affiliation back to undeclared simply by completing the form available from the Supervisors of the Checklist at the polling place.


○つまり事前に登録を済ませてある党員は、当日、その党にだけ投票することができる。登録をしてない人(Undeclared Voters=無党派)は、その場でどちら家の政党を選び、投票することができる。投票が済んだら、元の無党派に戻してよい。なんとも無党派に優しいルールですな。そういう人たちが人口の4割を占めていて、毎度のように投票結果を大きく揺るがす。これぞニューハンプシャー。

○ニューハンプシャー州は、へそまがりな結論を出す伝統があります。1988年はドールに負けていたブッシュ(パパ)を1位に選び、1992年は女性スキャンダルでボロボロだったクリントン(夫)に価値ある2位を与え、1996年は泡沫候補のブキャナンが意外な善戦を見せて動揺を誘った。そして2000年は、ブッシュに対して劣勢だったマッケインに勝利をもたらした。エスタブリッシュメントよりも反逆児を、というのがこの州のお好みです。

○世論調査を見ても、一番新しいデータではとうとうオバマとマッケインが1位に立ったようですぞ。アイオワ州で作られた流れが、いよいよ加速してきた感あり。いかにも早い。


State Pollster End date Clinton Obama Edwards Giuliani McCain Romney Thompson Huckabee
New Hampshire ARG Jan. 5 26% 38% 20% 7% 39% 25% 1% 14%
New Hampshire Research 2000 Jan. 5 33% 34% 23% 8% 35% 29% 3% 13%
New Hampshire U. of New Hampshire Jan. 5 33% 33% 20% 14% 33% 27% 1% 11%
New Hampshire Rasmussen Jan. 5 27% 37% 19% 8% 31% 26% 5% 11%
New Hampshire Zogby Jan. 4 32% 28% 20% 9% 32% 30% 3% 12%
New Hampshire Suffolk U. Jan. 4 36% 29% 13% 11% 26% 30% 2% 11%



<1月8日>(火)

○東大の久保文明先生がアイオワ州党員集会を取材して来られたのですね。東京財団のこのページにレポートが掲載されています。長文ですが、なるほど面白い。

○報道によれば、「2008年の民主党党員集会は参加者が多かった」とのこと。久保レポートによれば、2008年の参加者は民主党が22万7000人、共和党が12万人。前回の2004年は、民主党が12万2193人、共和党はゼロ(ブッシュが無投票当選)ですから、ほとんど3倍増したことになります。これまで参加したことのなかった人が10万人も加わって、それがオバマ現象をもたらしたことになる。

○その一方で、両党を合計しても、コーカスに参加したのはアイオワ州民300万人弱の1割強に過ぎません。ほとんどの人は参加しないんですよね。それもそのはず、久保レポートによれば、参加者は「1月3日の午後6時半から8時過ぎまで」会場にいなければならない。平日の夜なんですから、これは大変です。中には小さな子供がいるから家を空けられないという人だっているだろう。集会所には、託児室もあったりするみたいですが、以下のくだりがちょっといい感じです。


●子供連れの母親が、帰りがけ、小学生らしいむずかる子供2人に対して、これが民主主義にとっていかに大切な手続きであるか、正面から説明していたのが印象的であった。これだけの時間を割くアイオワ州党員の努力にはそれなりに大きな敬意を表すべきであろう。


○実は党員集会の参加者は、1970年代には2〜3万人に過ぎなかった。候補者決定に参加できる人はごく少数だったのですね。そもそもそれ以前は、党の候補者を決めるときは各州の大立者たちが密室で決めていた。とっても不明朗な世界だったのである。それではいかんだろう、ということで、ちょっとずつプライマリーやコーカスが広がって、今日のような態勢が出来上がっていった。今日のような予備選挙は、実は歴史はそんなに古くないのである。

○さらに東京財団のこちらのページでは、渡辺将人氏の3本のアイオワ州レポートがアップされている。「投票用紙は手作り」「集計用紙はただのメモ帳」「投票に遅刻しても責任者が認めればオッケー」など、日本人的な感覚では「えっ」と驚くような実態が報告されている。アイオワ州の党員集会は、本当に草の根の民主主義なのであります。

○もっとも、「10人中9人が参加しない」という現実を踏まえて見ると、まったく逆の姿も見えてくる。Wall Street Journalの1月4-6日号に"Ignore Iowa"(アイオワ州をほっといて)という大爆笑コラムが掲載されている。5代続けてアイオワ育ちだというフリーランス・ジャーナリストが、こんなことを書いている。


●「位置について、用意、コーカス!」 地方紙は囃し立てるけど、無党派の私には「そんなの関係ねえ」。2008年だって、党のオルグがどんなに頑張っても、アイオワ州民の5人に1人を動員することは難しいのだよ。「今度の選挙は大事だ」って、そりゃあアンタ、確かにテロも地球温暖化もありますよ。でもさ、1960年だって1944年だって1932年だって、選挙は大事だったはずじゃないか。ウチの爺さんは沖縄戦に参加したけども、そのときは90日で1万2513人のアメリカ兵士が死んでるんだよ。爺さんなら間違いなく、この6ヶ月の選挙騒ぎには頭に来たはずだ。

●1988年の選挙の際に、ニューハンプシャー州知事のジョン・スヌヌはいみじくもこう言ってのけた。「アイオワ州はトウモロコシを選び、ニューハンプシャー州は大統領を選ぶ」って。おっしゃる通り、アイオワ州党員集会を勝った候補者は、現職大統領を除外すると誰も当選していないんだ。ジミー・カーターを唯一の例外として。

(かんべえ注:これホント。逆にニューハンプシャー州で勝った候補者はすごい確率で当選する。スヌヌ知事はニューハンプシャー州におけるブッシュ父の勝利に貢献し、その後はブッシュ父政権で首席補佐官の地位を射止めた)

●選挙による経済効果だって、州には5000〜6000万ドルもあるらしい。今回のように、候補者が20人もいて取材陣がデモインの人口と同じくらいもいると、その倍くらいはあるかもしれないね。でも、エタノールブームと農業補助金のお陰で、アイオワの農夫さんたちはお腹が一杯だ。この際だから、ジュリアーニ市長をお手本に、2012年にはアイオワ州なんてほっといてくれないかな。お願いだから。

○以上は「かんべえ流」の訳でありますので、そこんとこはよろしく誤解なきように。


<1月9日>(水)

○あの「ネオコンの総帥」ビル・クリストルが、こともあろうにThe New York Timesのコラムニストになった。これはもう、朝日新聞で石原慎太郎が連載を持つような壮挙である。同紙としては、まことにアッパレな大英断であるが、その記念すべき第1回寄稿は、「President Mike Huckabee? 」というハッカビー大統領待望論であった。ちょいとアンタ、2000年はマッケイン支持、2004年はブッシュ支持、2008年はハッカビーだなんて、さすがに無節操すぎませんか?――てなことはどうでもいい。面白いのはその書き出し部分である。


http://www.nytimes.com/2008/01/07/opinion/07kristol.html?_r=1&oref=slogin 

Thank you, Senator Obama. You've defeated Senator Clinton in Iowa. It looks as if you're about to beat her in New Hampshire. There will be no Clinton Restoration. A nation turns its grateful eyes to you.

ありがとう、オバマ上院議員。あなたはアイオワでクリントン上院議員を破ってくれました。ニューハンプシャー州でもきっとやっつけてくれますよね。これでもクリントン王朝の復活はないでしょう。わが国はあなたに感謝の念を捧げるものであります。


○このコラムが紙面を飾ったその日、当のヒラリー・クリントン上院議員は涙までこぼした。きっと7日夜は寝られなかったことだろう。あらゆる準備を整えて、ワタシが大統領になるのは"Inevitablility"(不可避)なことなのよ、という万全の態勢を築いた彼女も、オバマ台風の前に敗れ去るかと思われた。ところが彼女はしぶとく勝ち残った。ビル・クリストルとしては、こんなぬか喜びを書いてしまうなんて、恥さらしもいいところである。さすがにThe New York Timesは方角が悪かったか。

○まあ、似たようなことを誰もが考えたと思う。ワシだって昨夜は、ニューハンプシャー州の無党派層がオバマに流れて、マッケインの票が足りなくなるんじゃないかと心配した。ところが事態は逆であった。マッケインは堂々の1位通過となったが、オバマ票はわずかにヒラリーに届かなかった。これでヒラリーは復活した。今日のintrade市場では、オバマ株が大暴落し、クリントン株が急騰した。これでは資金量と組織力に勝るヒラリーの方が有利な展開となり、今度はオバマが苦しくなった。

○不肖かんべえが考えるに、やっぱりニューハンプシャーの人たちはアイオワと同じ答えでは納得がいかなかったのでしょう。今年は間が5日間しかなかったこともあり、アイオワで生まれたモメンタムが崩れることはないと思われた。しかし、昨日も書いた通り「アイオワ州はトウモロコシ、ニューハンプシャー州は大統領」である。アイオワ州の結果を踏襲するなどということは、誇り高きへそ曲がりのニューハンプシャー州の民意に反することであったのではないだろうか。

○そんな風に考えてみると、アイオワ州は「情と理想主義」でオバマとハッカビーを選び、ニューハンプシャー州は「理と現実主義」でヒラリーとマッケインを選んだようにも思える。オバマの「分裂から統合へ」というアイオワ発のメッセージは、間違いなく全米を揺り動かした。しかしヒラリーの実力とオバマの未成熟いう現実も、ニューハンプシャーの人たちはしっかり見据えていた。かくしてヒラリーは絶望の淵から蘇り、人間的にも一皮むけたはず。彼女が将来、偉大な大統領になる日が来るとしたら、2008年1月7日は生涯、忘れられない日となるだろう。

○そして今度はオバマが成長する番だ。彼の理想に全米は盛り上がったが、それだけでは大統領の座はやって来ない。彼にはまだまだ足りないものがある。政策は詰まってないし、組織はアマチュアだし、アドバイザーももっと必要だ。この先、ミシガン〜サウスカロライナ〜フロリダ〜スーパー・チューズデーと戦いは続く。彼にはもっと化けてもらわないと。

○ところで、今週発売の「SPA!」に、とってもいいコメントが載っておりますぞ。「バラク・オバマ “米国史上初の黒人大統領”の誕生に向け、幸先の良いスタートを切ったかに見えるが・・・・」。


(前略)民主党の党員集会で、本命視されてきたヒラリー・クリントン氏に圧勝したオバマ氏は、この勢いのまま突っ走れるのか?

「それは競馬で言うなら、弥生賞の結果だけを見て、その年のクラシックレースをすべて予想しろといってるようなものですね」と苦笑するのは、アメリカウォッチャーとして知られるエコノミストの吉崎達彦氏。

「確かに流れはオバマに来ている。このところイラク情勢が落ち着いていたので、国民の心情にも余裕が生まれ、経験よりも未知数の魅力に賭けてみようという雰囲気になっています。とはいえヒラリーという人は、米大統領選の長い歴史の中でも、最も“ガチガチに準備している”候補。そんな人を相手に、これからも続く勝負どころを押さえていくのは大変です。ニューハンプシャーでは税金政策、フロリダでは中東政策が重視されるなど、各州特有の“戦い方”がありますが、そういう細かい話になるとオバマは弱い(苦笑)」

(中略)

「そもそも米大統領選とは、試練が山ほど用意してあって、それを一つひとつ乗り越えていくことで候補者が鍛えられていくドラマ。そのドラマを背負ってこその『合衆国大統領』なんです」

オバマ氏のメイクドラマは成るか。


<1月10日>(木)

○大統領選挙が一段落したので、ここでCMタイムです。日本貿易会では、このたび「新貿易立国を目指して」という報告書を発表しました。不肖かんべえは、この研究プロジェクトの副座長を務めました。最初に構想が誕生したのが2005年秋でしたから、ほとんど3年がかりでようやく仕上げたという感があります。

○ご案内の通り、マネーの動きから見る日本経済は明るい材料が少ないわけですが、いつも申し上げているように、「モノの動き(貿易)から見た日本経済は明るい」のであります。日本企業はグローバル化時代にうまく適合し、モノ作りの強みを活かして国際競争力を回復している。もちろん、課題も多く残されていて、そういった面については「提言」を行っています。

○執筆者としては、日本経済復活の理由をアジアに求めた第2章にご注目いただけるとありがたく存じます。

○なお、日本貿易会では同報告書のシンポジウムも開催します。ご案内はこちらをご参照。


<1月14日>(月)

○年頭から米大統領選に明け暮れていたら、世の中にはいろんな動きがあったようで。ほんの一言ずつ。

○台湾の立法院選挙がエライ結果になってしまいました。やはり小選挙区制の導入が地殻変動をもたらすようです。これでは3月の総統選挙もヤバかも。こうなると、国民党が総統選挙日に予定していた公民投票の行方が気になります。台湾の未来にとっては、「国民党が独立路線」になることがもっとも望ましいんですけれども、それはちょっと無謀ですかね?

○気がついたら、インド洋給油法案が衆院で再可決されてました。でも、1年間の時限立法ですから、来年の今頃もまた同じ事をやるんでしょうか。それまでに恒久法ができるといいんですけれども、今の国会のスピード感ではそれはちょっと望み薄。「来年は米大統領も変わっているし、その頃には誰も覚えていないはず」みたいな読みをしているとしたら、ちょっと哀しい。

○松下電器がパナソニックに社名変更へ。国内市場だけでは、やがて食えない時代が来るのだから、これはもう正しい選択といえましょう。ソニーやサムソンに勝たなければならないのですから。でも、水戸黄門がパナソニック劇場になったり、藤沢市の政治家養成所がパナソニック政経塾になったりはしないでしょうね?

○朝青龍、二日目は負けましたな。でも、いい勝負でした。彼はやっぱり相撲界には欠かせない。ワシは相撲の品格なんてどうでもいいから、強い勝負が見たい人なので、復帰を心から歓迎している。願わくば、バッシングした連中を大いに見返してやって欲しい。

○今日は成人の日ということで、柏市内は盛装した男女がいっぱいであった。中にはちょっと、鬼面人を驚かすようなファッションもあったような。まあ、若人たちよ、せいぜい頑張ってくれたまい。実はウチにも新成人が一人おるのである。


<1月15日>(火)

○今日から弊社のPCがアップグレードされたんですが、頼みもしないのにメールソフトがOutlook ExpressからOutlook2007に変わっていて、今日からこれを使ってくださいとのこと。開けてみると、アドレス帳はぐちゃぐちゃである。10年近くかけて整理してきた貴重なアセットなのに。トホホと嘆きつつ、半日かけて復旧作業。なおも道半ばである。

○ということで、かんべえさんにメールを送って、返事がなくても驚かないように。(なんだ、最近、しょっちゅうそうじゃないか、という声が聞こえてきそうですけれども・・・すいません、ハイ)。

○さて、本日はミシガン州予備選であります。ここの情報によると、民主党では「アイオワ、ニューハンプシャー、サウスカロライナ、ネバダの4州以外は、2月5日以前にコーカスやプライマリーをやってはいかぁん!」と党本部が決めたにもかかわらず、ミシガン(1月15日)とフロリダ(1月29日)は、それを破って予備選挙を決行することにした。党としては、「そんな州の代理人は、夏の党大会(デンバー)には出してやらねぇ」と言っているので、この州の戦いはいわば「ノーカウント」になってしまう。そこでオバマとエドワーズは候補者登録を自粛し、ヒラリーは登録はしたものの選挙活動を行っていないという、まことに変なことになっている。

○それでも、「わが州の民意を世に問いたい」というのがミシガン州の希望であるらしい。不況にあえぐ製造業の州としては、その気持ち、わからんではない。ミシガン州といえばデトロイトを擁するだけに、その昔は日本叩き議員が多かった。カール・レビン上院議員などは、最近ではもっぱら軍事問題でご活躍のようですが、昔はビッグスリーの片棒を担いでまことにうるさかったものです。

○ミシガン州の予備選開催日の協定破りは、共和党も似たようなことになっている。が、こちらはやや惻隠の情があって、「罰として党大会への代理人数を半分に減らぁす」という処置になった。ミシガン州は人口が多いので、半分でも結構な数になる。そこで各候補がしのぎを削ることになった。とりあえず注目点は次の3候補でしょう。

●ミット・ロムニー:父親が元ミシガン州知事だった。ゆえに「勝って当然、負けたら大事件」である。アイオワ、ニューハンプシャーに続く「まさかの3連敗」は避けたい。

●ジョン・マッケイン:負けてもともと、勝てばもうけもの。次のサウスカロライナでは首位なので、ここで勝てばフロントランナーの座が固まる。ただし、そろそろ集中砲火を浴びる頃かもしれない。

●マイク・ハッカビー:ここでいい成績を残せば、アイオワの結果がフロックでなかったことを証明できる。せめて「限りなく2位に近い3位」がほしい。

○そんなわけで、intradeを見ても今や共和党で最高値となった、わがマッケイン候補ですが、これから先がいよいよ大変である。なにしろ、共和党の幹部連中や保守本流派をずっと敵に回してきた変人だ。「イラク増派に賛成」「ブッシュ減税に反対」「選挙資金のソフトマネーを規制せよ」「違法移民1000万人を強制送還なんて、そんな無理なことできるかよ」などなど、言っていることは筋が通っていると思うのだけれど、党の大勢にはいつも逆らっているんですよね。

○もっともマッケイン、最近は「メキシコ国境の警備を強化せよ」みたいなことを言い出して、さりげなくポジション調整を行っているようだ。同じことをヒラリーがやると「カメレオン」と呼ばれるだろうが、マッケインがやると「タヌキ」に見えてしまうのは、人柄なのか年の功なのか。さて、明日の昼過ぎには大勢が判明するでしょう。楽しみです。


<1月16日>(水)

○ミシガン州ではさすがにミット・ロムニーが踏みとどまって、共和党の勝負は次のサウスカロライナ州に持ち越されました。本日の戦いの結果は以下の通りでありました。

  Mitt Romney: 38.9%
      John McCain: 29.7%
      Mike Huckabee: 16.1%
      Ron Paul: 6.3%
      Fred Thompson: 3.7%
      Rudy Giuliani: 2.8%

○民主党ではヒラリー対オバマの死闘が続いているわけですから、共和党もここで勝負がついてしまうと面白くないし、注目を集めるためにももう少し戦いが長引いた方がいい。特に以前はフロントランナーであったジュリアーニ候補としては、せめてフロリダ州までは寿命を延ばして、見せ場を作りたいところでもある。共和党全体としても、サウスカロライナで南部諸州の民意に耳を傾けて、謙虚に保守派のハートランドの心をつかむという作業が、必要なプロセスではないのかと思います。

http://news.yahoo.com/s/nm/usa_politics_poll_dc 

○他方、民主党でもサウスカロライナは勝負どころです。ヒラリー対オバマの戦いにおいては、つまるところ公民権問題を避けることはできません。そもそもニューハンプシャーの予備選において、世論調査に反してヒラリーが勝ったのは、「Poor White層は世論調査に参加してくれず、彼らはAfrican Americanに対して冷ややかな感情を有しているから」であるという。そう言ってしまうと、まことに身も蓋もない、イヤーな話でありますが、おそらくはそれが真実なのでありましょう。そういう意味でも、南部決戦が持つ意味は深いと思います。

○本日のかんべえさんは、なおもOutlook2007との苦闘を続け、お昼にこの人の話を聞き(面白かったであります。でもオフレコです)、夜はとっても久々に和喜で宴会を行い、それから六本木でナベさんとディープな会話を試みました。日付けも変わった頃に柏駅に着いたときには、しんしんと雪が降っておりました。


<1月17日>(木)

○年明けからアメリカ大統領選挙ばかりを追いかけていて、国内政治には目を塞いでおりました。ところが今週で越年の臨時国会が終わり、昨日が民主党大会、今日が自民党大会、そして明日からは通常国会が始まります。が、哀しいほどに興味が湧きませんな。

○ヒラリー対オバマやロムニー対マッケインが、同じ党内で真剣勝負をしているのに、福田首相と小沢代表の党首討論はあれは何なのよ。与野党の党首の気持ちが「大連立」で、お互いに相手を立てながらもたれあっているというのは、あんまり麗しい図ではない。ねじれ国会という事情があるにせよ、福田さんはいつも守りから入る。インド洋給油法も、薬害肝炎患者の救済も、(1円から領収書の)改正政治資金規正法も、「しょうがないでしょ、これしかないんだから」と言わんばかりである。だから政治にドラマも感動もない。

○通常国会の最大の焦点は、揮発油税の暫定税率をどうするかであるらしい。ガソリンがリッター25円ほど安くなるのは、それは確かに目に見える政治の効果というものだが、それで財源に穴が空く分は何かで埋めなければならない。所詮はトレードオフなので、安くなったからといって喜ぶような話ではない。かんべえ個人としては、そもそも「暫定」を何十年も続けているのが変なので、この際、本則に戻して「受益者負担主義」に立ち返るのが自然だと思う。もちろん、その分だけ道路工事を減らさなければなりませんけどね。

○逆にいうと、「暫定税率を維持しよう」という議論はとっても不利でありますな。「道路が必要です」という議論を展開するには、それなりの準備と時間がかかるけど、それを批判する側は「こんなにガソリンが高いんじゃ、道路作っても走れないじゃないか」と言うだけで済む。あるいは、「道路は食べられない」でもいい(もっとも日本国内には、「道路を作らないと食べられない」人も大勢居るわけですが)。こういう点はテレビ政治のまことに悪い点でありまして、この手の意見がついつい「庶民の声」になってしまうのである。

○政治の議論の中で、有権者の身の回りの損得が重視されるのは当然のことであります。ワリ勘負けは、誰だって嫌だよね。が、それが行き過ぎてしまって、昨今は「俺はいくらもらえるんだ」という話ばかりしているような気がする。年金や医療の問題には関心が集まるが、国家を単位とする外交や財政とか、未来に関する教育や産業政策となるとサッパリである。国の安全保障に関心はないけれども、「防衛省にXX億円の無駄があった」という話なら誰でも分かる。そんな状況下では、「ガソリン代を下げるべきか」はピッタリのテーマになるのでしょう。

○政治の議論が、単なる損得勘定に陥らないようにするためには、そこはやっぱり政治家が理想を唱えなければならない。小泉さんの「郵政民営化」、安倍さんの「戦後レジームからの脱却」は、それが正しかったかどうかは別として、首相のこだわりというものが皆に見えていた。これは大事なことだと思います。「能力があるけど、やる気のない指導者」は、自分の上司とするにはいいですけど、組織のトップに据えるのは考えものです。

○ところが福田さんには、首相としてやりたいことがない。とにかく政権を維持できればいい、と思っているように見える。他方、小沢さんにもそれがない。とにかく政権を倒せればいい、と思っているように見える。(本気で政権を取りたい、と思っているかどうかはよく分からない)

○うーん、これではやっぱり、国内政治は面白くならないだろうなあ。


<1月18日>(金)

○一昨日の夜に雪を見たあたりから、とっても寒さが身に沁みる。今朝などはひとしおだなあ、と思いつつ、会社に着いてからはじめて気がついた。ブレザーが夏服だった。馬鹿ですねえ。

○今日の株式市場は午前中に下げて、午後に上げて、なかなかにドラマチックな一日だったようで。で、とっても久しぶりに買い行動に出てしまいました。だってトヨタ自動車の配当利回りが2%を超えてるんですよ。これなら日本国債よりも信用できるんじゃないでしょうか。

○というのはさておいて、この商売を長くやっていて、今年ほど先が読めない年はめずらしいと思う。政治も経済も完全に五里霧中という感じ。この時期に断定的にモノを言ってる人は、完全な食わせ者でしょう(例:「米大統領はオバマになるとXXXが決めた」)。こういうときは、下手に情報を集めても始まらない。自分なりの大局観みたいなものを研ぎ澄ますしかない。そして、こういうときの予想が一番面白い。

○かんべえの本能は、2008年はそんなに悪い年ではないだろうと告げている。マネーの動きは混乱を極めているが、モノの動きは比較的堅調である。両者の意見が食い違ったときに、信用できるのはリアルなモノの動きの方でしょう。ということで、悲観論には与しないことにする。これで外れるのなら、本望とまでは申しませんが、とりあえず納得がいきます。

○さて、今週は溜池通信が出ませんので、代わりにこんなものでも読んでいただけるとありがたく存じます。自分のことを棚に上げて申し上げますが、最近の商社エコノミスト業界はなかなかに粒ぞろいで、以下の座談会も内容豊富であると思います。

●日本貿易会「商社シンクタンクのトップが読み解く2008年内外経済――注目点と課題」

http://www.jftc.or.jp/shoshaeye/contribute/contrib2008_01.pdf 


<1月20日>(日)

○今週末、米大統領選では新たな動きがありました。ネバダ州党員集会(民、共とも)と、サウスカロライナ州予備選挙(共のみ)です。

○まずネバダ州における民主党は、ヒラリー51%、オバマ45%、エドワーズ4%。事前の予想から言えばオバマ大奮闘だと思うのですが、党の基礎票と女性票、ヒスパニック票(同州の19.7%を占める)を手堅くまとめたヒラリーが一歩抜け出しました。価値ある「2連勝」といえるでしょう。intradeの市場では、ヒラリー株が6p高となって、勝率64%ということになりました。逆に深刻な状況に陥ったのがエドワーズで、ネバダでは結構、選挙運動を行っていたのですが、ほとんど無視された様相。民主党の争いは事実上の二強対決になったと見ていいと思います。

○民主党の次なる戦いは1月26日のサウスカロライナ。黒人人口の多い州(29.5%)で、オバマがどこまで奮戦するか。ここで勝てないと、巻き返しが難しくなる。いつものことながら、中西部(アイオワ)→北東部(ニューハンプシャー)→西部(ネバダ)→南部(サウスカロライナ)と全国を転戦するのが、アメリカ大統領選挙の面白いところです。

○共和党は、西部のネバダと南部のサウスカロライナの票が開きました。ネバダではロムニー51%、ポール14%、マッケイン13%、ハッカビーとトンプソンが8%、ジュリアーニ4%という結果。ここではロムニーとポール以外はほとんど事前運動をやっていませんので、とりあえず順当な結果といえましょう。モルモン教徒が多いということも、ロムニーを利した模様。なにしろモルモン教の中心地は、お隣のユタ州、ソルトレークシティですから。選挙戦全体への影響は軽微であると思います。

○むしろ注目されているのがサウスカロライナ。マッケインが33%、ハッカビーが30%、トンプソン16%、ロムニー15%、ポール4%、ジュリアーニ2%という結果でした。ここはマッケインが2000年選挙の予備選をブッシュと争い、宗教右派が敵に回ったことで一敗地にまみれた因縁の地です。それが今回は捲土重来を果たしたわけで、指名獲得に向けていいストーリーが描けたことになる。intradeの市場では、マッケイン株が17.6p高。今後、トンプソンが戦線から離脱すれば、マッケインはその支持を得られるという楽しみもある。

○他方、ハッカビーは、南部のハートランドともいうべきサウスカロライナ(宗教右派の人口が多い)で勝てなかったのは痛い。intrade市場では7.6p安となりました。共和党の次なる戦いは1月29日のフロリダ。ジュリアーニが爪を研いで待ち受けている場所ですが、ここまで無勝利というのはいささか辛いものがある。

http://www.realclearpolitics.com/epolls/2008/president/fl/florida_republican_primary-260.html 

○しかし、共和党がこのまますんなりとマッケイン指名を決めるかどうか。中道穏健派のマッケインは、保守派にとっては物足りない候補者でしょう。なにしろ2004年には、ジョン・ケリーが自分の副大統領候補にしようとして、大真面目に交渉したくらいですから。逆にいえば、本選挙に出た場合に、マッケインは民主党側にとっていちばんやりにくい相手ということになりますけど。共和党の「自分探しの旅」は、まだまだ続くんじゃないのかなという気がします。


<1月21日>(月)

○今週号の"TIME"紙がいささかギョッとするようなカバーストーリーを掲げています。題して"Ny・lon・kong"(ナイ・ロン・コング)。これは「ニューヨーク、ロンドン、香港の3大都市が、グローバル経済を率いている。これらの都市はなぜ成功したのか。そして今、どんな困難に直面しているのか」という特集なのです。つまりグローバル時代の「三都物語」というわけ。

○世界経済の3大都市に、わが東京が入らない、アジア経済を代表するのは香港である、という事態は、ちょっとした衝撃ではないでしょうか。なるほど、"Japan Passing"から"Japan Nothing"に向かってまっしぐらという感じがします。考えてみれば東京は、英語は通じないし、成長率は低いし、消費もいまいちだし、会っても面白そうな人は少ないし、自慢できるのは物価の安さとメシの美味さぐらいかもしれない。うーん、石原都知事、これってまずいんじゃないですか?

○書き出し部分はこんな感じです。


They tend to be an optimistic lot, the bankers and business leaders, politicians and pundits, who every year make their way to the annual meeting of the World Economic Forum in Davos, Switzerland. Those who have power and influence often have much to be optimistic about, to be programmed to lift up their eyes to the hills - of which Davos has plenty - and see more prosperity coming their way.

This year's meeting, which starts on Jan. 23, might be a little different. Thoughts may be in the valley rather than the hills. A year ago, subprime had not entered the lexicon of the nightly news, and most Americans probably thought that "credit crunch" was a breakfast cereal. We all know better now. In the wake of the report that December's U.S. unemployment rate had jumped to 5%, the highest level in two years, the Bush Administration and Congress, Republicans and Democrats, started falling over themselves trying to find a politically acceptable stimulus package. With a recession in the American economy looking to be imminent, the tireless locomotive of the global economy seems finally to have run out of puff.



今年も1月23日から、スイスのダボスで世界経済フォーラムの年次会合が行われる。ここに集まる銀行家や経営者、政治家や学者たちは、楽観的に振舞う傾向がある。権力と影響力のある人たちというものは、そういうものだ。

ところが今年はちょっと雰囲気が違う。1年前には「サブプライム」なんて言葉は夜のニュースには流れなかったし、普通のアメリカ人は「クレジット・クランチ」というのはコーンフレークの名前だと思っていた(爆)。12月の米国失業率は5%に跳ね上がり、ブッシュ政権と議会と共和党と民主党は、政治的に許容可能な刺激策を探し始めている。米国経済が景気後退に向かうと、グローバル経済の原動力もガス欠ということになるのではないか。


○ダボス会議ねえ。そういえば、いつも日本人の参加者は少ないしねえ。珍しいことに、今年は福田首相が参加することになった。でも、きっと講演する内容は、事前に外務省が仕込んだ「地球温暖化問題とアフリカ支援」なんじゃないだろうか。半年後の洞爺湖サミットのために、準備をしたいのは分かりますが、今のタイミングでそんな中長期の課題を語ると、「おいおい、そんなことで大丈夫かよ」と世界のVIPたちが呆れかえってしまうんじゃないかと心配です。

○外務省はG8サミット主催のために、「環境とアフリカ」というヤマを張っている。でも、ヤマはスカッと外れることだってあります。今の世界経済でもっとも大切なことは何なのか。世界経済の中で、日本の指導者がそういう危機感覚を共有していないのだとしたら、「日本は蚊帳の外」になるのも自業自得ということになってしまうでしょう。あ〜あ。

○ところで本日は、寒冷の中を経団連会館での日本貿易会シンポジウムに多数のご来場をいただき、まことにありがとうございました。幸いなことに、報告書「新・貿易立国をめざして」は好評をいただいておるようです。このTIMEの記事などを見ると、まことに暗澹たる気持ちになったりするわけですが、この報告書が描いたような明るい将来像をめざして歩んでいきたいものであります。


<1月22日>(火)

○メリルリンチの菊地正俊さんが『外国人投資家の視点』という本を書かれました。なんで表紙がフェルメールの絵なのか、それだけがちょいと解せませんが、表題通りの内容を手堅くまとめた良い本だと思います。

○2007年時点で、外国人投資家の日本株売買シェアは6割を超えている。その外国人投資家にとって、この国にはワケが分からないことが一杯ある。菊地さんは株式ストラテジストとして、出張したり、レポートを書いたり、電話会議に出たりして、「それはですねえ・・・」と説明しなければならない。想像するに、非常にご苦労が多い仕事だと思うが、安易な日本特殊論に流れたり、悲観的になったりすることなく、淡々と「こんなふうになっている」と記述していく。

○実際ここ1〜2年の日本株は、改革の停滞といい、M&A規制といい、外国人投資家の期待を裏切りまくった。しかもお隣の中国市場が急上昇したから、いよいよ日本が魅力のない市場に見えるようになった。そんなことだから、「アジアを代表する都市は東京じゃなくて香港」ということになったりするわけだが、「外国人投資家の視点」から見ると、それらはいちいち合理的な判断であることが分かる。

○で、その外国人投資家たちは、サブプライム問題で米欧の足元に火が点いてしまって、とりあえずキャッシュをかき集めなければならない立場とあいなった。そうなると、いちばん思い入れの少ない、将来性のない株から売ることになる。そういう意味で、日本株は真っ先に売られる運命にあったのでしょう。これが、年初からの「日本一人負け」現象の背景だったのではないか。

○しかし、それだけでは足りなくなったようで、いよいよ全世界同時株安の様相を呈し始めた。こうなると、ちょっと止まるきっかけが思いつきませんな。とりあえず日本は、「外国人投資家が立ち去った市場で、どうやって株価を再建していくか」が問われることでしょう。彼らが今回の危機から立ち直るにはそれなりの時間を要するでしょうし、再び買い始める場合も日本株の優先順位(魅力度)は低いでしょうから。

○となると日本としては、「外国人投資家よ、戻ってきてくれ!」と祈るのではなくて、国内にある1500兆円を動かすことを考えた方が良いと思います。株の方が債券よりも利回りが高いという、とんでもない状況が出現しているのですから、買わない手はないと思うのですが。


<1月23日>(水)

○米連銀が利下げ、に関する話は、かんべえが書こうと思ったことを、ぐっちーさんがもう書いてしまっていた。要は、ヘリコプター理論だなんて言ってたけど、自分が当事者になったらできないもんですね、てなこと。近頃、内容がシンクロすることが多いですなあ。

○今日は内外情勢調査会の講師で愛知県西尾市へ。ここの支部で呼ばれたのは2度目である。この仕事も5年目になりますが、同じ場所に2度目に伺うのはこれが初めてである。以前は、2003年の6月に行った。思えばあの頃も、株安が問題でありました。日経平均は7000円台でしたっけ。あの頃に比べれば、今の株安などは可愛いものでありますな。

○で、ここでちょっと話が飛ぶ。

○かんべえはフランス映画で好きなものは少ないのだけれど、数少ない例外に『愛と哀しみのボレロ』(1981年、クロード・ルルーシュ)がある。この映画の冒頭、こんな文字が浮かぶ。(うろ覚えだけど)

人生には一つか二つの物語しかない。そしてそれは繰り返されるのだ。初めてのときと同じ残酷さで。

○この映画は、4つの国(仏、独、ロ、米)における第2次世界大戦前後の歴史を描いている。4つの家族が登場するのだが、どれも音楽に関係の深い芸術家の血筋である。運命は彼らを翻弄し、出兵、別離、迫害、愛する人の死、などなどいくつもの悲劇が繰り返される。やがて物語は次世代へと受け継がれ、再会や成功、自分自身の発見といった物語がこれに続く。そして4か所で同時進行していた物語は、最後はひとつに合流する。「ラヴェルのボレロ」のコンサート会場において、すべての家族が出会う(もしくはすれ違う)。

○大変紛らわしいことに、この映画は同じ俳優が違う役で何度も登場する。まあ、1回見ただけでは、何のことだかサッパリ分からない。もともとはテレビドラマのシリーズだったものを、無理やり1本の映画にまとめたらしく、いくら3時間の長尺でも足りないのである。それでも最後のボレロのコンサートで、単調な音楽と踊りがじょじょに高揚して行く場面は、胸に染み入る。観客はそこで長い波乱のドラマが、似たような物語の繰り返しであったなあ、と腑に落ちるわけである。

○ということで、この冒頭メッセージは素敵だと思うのだ。同工異曲に、「歴史は繰り返される。1度目は悲劇として、2度目は喜劇として」というのがあるけれども、こちらは後世の高みから歴史を見下しているような傲慢さがある。1回限りの人生を送っている者にとっては、たとえそれが繰り返しや愚行であったとしても、悲劇は悲劇である。少なくとも、それが自分の身に起きたことであったならば、けっして笑えないはずである。

○市場をめぐる信用の拡大と崩壊というドラマも、どれもこれも似たような物語です。サブプライムとかCDOとか、ややこしい仕組みが入っているからといって、その本質を思い切り単純化してしまえば、人間の欲が暴走して最後は調整に向かうというお馴染みのストーリー。オランダのチューリップや日本の不動産神話と、それほど大きくは違わないはずです。

○世界同時株安というドラマが、ラヴェルのボレロと似たようなものだと思えば、そこから得られる教訓は2つである。ひとつは「笑ってはいけない」。なぜなら、明日は我が身だから。そしてもうひとつは「絶望してはいけない」。なぜなら、似たようなことがこれからも繰り返されるはずだから。


<1月25日>(金)

○かんべえ、今週は何だかとっても元気なのである。週明けには、風邪で苦しんでいたはずなのですが。今週はいろんなことが起こる多事多難の1週間ですから、そのせいでハイになっているのかもしれない。ちなみに皆様、お腹に来る風邪に良く効くのは、カネボウ改めクラシエ薬品のカンポウ専科、「柴胡桂枝湯」でありますぞ。

○今朝はINES研究朝食会に参加。深尾光洋氏ほかから、当面の金融問題などに関する有益な話を伺う。最後に発言を求められたので、「本日のテーマである『日本の成長戦略――世界のマネーを集めよう』もいいけれども、日本には個人金融資産1500兆円があるのだから、その前に「自分のマネーを動かそう」という態度が必要なのではないかと申し上げる。

○お昼は小林温前参議院議員と。選挙戦から裁判に関する波乱万丈の物語を拝聴する。やっぱりこの国の司法は、外資規制の乱暴さに限らず、どこか変なんじゃないかと感じる。小林氏、辛酸をなめたわりには、前向きの明るいプロジェクトも多数抱えていて、この辺が元経営者の強みというものか。

○夜は日経CNBC「三原・生島のマーケット塾」を収録。日本貿易会「新・貿易立国をめざして」についてお話しする。今週、マネーの動きは不安定でも、モノの動きはなおも底堅いものがある。貿易を見る限り、日本経済は世界の一流ですぞ、としつこく申し上げる。ちなみにこの番組、来週登場するのは選抜株式レースの主催者、伊藤道臣さんです。

○その伊藤さんが主催する勉強会、ロビンソンクラブの会場へ。1時間だけ「実務租税法学」の議論に参加する。税法があんな風にしょっちゅう変わるのは、きっと税理士さんが食うに困らないように、助けることが目的なのではないかとふと邪推する。言ってみれば、ウィンドウズをどんどん進化させるマイクロソフト社の商法ですな。

○そこから今度はBS11の番組"INsideOUT"の放送現場へ。番組のスタイルといい、スタジオの形式といい、BS朝日の「ニュースの深層」に似てますな。本日のキャスターは月刊FACTA編集長阿部重夫さんである。かんべえは選択とFACTAを愛読しているので、「阿部さんって、どんな人なんだろう」と思っていたが、予想通り独特の雰囲気をお持ちの方でありました。世界経済の行方について、毎日新聞論説委員の児玉平生さんを交えてあれこれと語る。

○会場は毎日新聞社内であるが、そういえば本日は選抜高校野球の「21世紀枠」の発表日。さすがに富山中部高校の甲子園出場はダメでした。東海・北信越枠から選出された愛知の成章高校は、以前から何度も惜しい思いをしている学校だそうで、リーズナブルな選択ではないかと思います。いろいろご声援をいただいた皆様に感謝申し上げます。


<1月26日>(土)

○今日は民主党のサウスカロライナ州予備選。党員の半分が黒人という州で、オバマがどんな戦い振りを見せるかが焦点となりますが、彼ったらなんと、あのLetterman Showに出ていたのですね。

http://jp.youtube.com/watch?v=WnL9HRLNxIA 

○選挙戦の公約、トップテンでは、「ミット・ロムニーを“見てくれ長官”に任命する」とか、「10月の名前を“Barack-Tober”に変える」など、かなり飛ばしちゃっています。こういうギャグは、自分で考えたのでしょうね。「アップル社に対し、あなたがi-podを買った直後に新バージョンを出さないようにさせる」というのも、最近のアメリカの雰囲気が分かるような気がします。

○大統領候補が深夜番組に出るようになったのは、1992年のビル・クリントンが最初でありました。爾来、コメディアンと掛け合い漫才ができるかどうかは、政治家としての重要な資質(んなわきゃーないんだけど)になってしまったわけであります。日本だと、そういうことができるのは閣下くらいですな。

○今回、オバマは立派に「役者っぷり」を見せつけてくれた感があります。どうでしょう、対抗上、ヒラリーも出なきゃいけないかも。Letterman Showに出るために、ビルから猛特訓を受けるヒラリー、スタッフにギャグを考えるように厳しく督励するヒラリー、という図が脳裏に浮かんでしまいました。ちょっと痛い・・・・。

○最後の第2位、第1位の公約が文字通り大爆笑でありました。「Nuclearは、ちゃんとNuclearと発音する」「オプラを副大統領に」。――後者は、本当にギャグですよね?


<1月27日>(日)

○サウスカロライナ州では、オバマがヒラリーにダブルスコアで快勝しました。オバマ55%、ヒラリー27%、エドワーズ18%です。Politics1のコメントは以下の通り。

The vote seemed to be a sharp rejection of the Clinton campaign strategy -- particularly using former President Bill Clinton as the attack surrogate -- of interjecting race into their attacks. Even on primary day, President Clinton did it again.

He was asked a question of whether he thought it was "fair" that he and Senator Clinton were seemingly "double teaming" Obama in the state. In response, President Clinton instead dismissively and pointedly noted that Jesse Jackson won the state in 1984 and 1988 (translation: this Obama victory was just a black vote for a black candidate in a black state).

Overall, Obama captured 25% of the white vote, with Clinton and Edwards dividing the rest of the white vote. Exit polls showed it was younger white voters who were most negatively impacted by the Clinton racial strategy, as half of this entire demographic group voted for Obama. Clinton and Obama nearly evenly split the bulk of the the white male vote (all age groups combined), with Edwards capturing the remainder.


○ヒラリーは夫ビルを代理に立てて、オバマ叩きをさせたが、どうやらそれは裏目に出たらしい。ビルいわく、「サウスカロライナ州では、1984年と88年にはジェシー・ジャクソン師が勝利を収めているんだよ」。(だから、黒人候補が勝てるのは当然なのだよ)、と。しかし、オバマは白人票の4分の1を押さえており、出口調査によれば、若い白人層がもっともクリントン陣営の人種戦略に反発していた。

○南部を制する者はアメリカ大統領選挙を制す。それだからこそ、サウスカロライナ州の予備選挙が注目されるわけですが、それではこれでオバマが一気に有利になったかというと、そうではないという指摘もある。electoral voteの1月26日付けコメントをご参照。

We have a batch of new polls today for a variety of states. The South Carolina Democratic primary is today, and if the polls are right this time, Barack Obama will win handily. This will help him appreciably going into Feb. 5.

However there is also a fair amount of bad news for him. New polls show him losing badly to Clinton in four other southern and border states: Florida (Jan. 29), Alabama, Missouri, and Tennessee (all Feb. 5).

The difference between these states in undoubtedly the fact that blacks make up about 50% of the Democratic electorate in South Carolina and far less in the other states. The reason for this discrepancy that that South Carolina is probably the most racially polarized state in the country, with the vast majority of whites being Republicans and virtually all blacks being Democrats. Other southern and border states are not like this. In Missouri, for example, whites are split between the parties almost 50-50 and blacks are a much smaller part of the population.

○サウスカロライナ州は人種的対立が激しい州であるから、白人は共和党、黒人は民主党という色分けがはっきりしていた。しかしフロリダ、アラバマ、ミズーリ、テネシーなどでは、それほどでもないからヒラリーが優勢であるらしい。つまり、人種の融和を説くオバマが、対立の激しい州で勝ち、人種を戦術として使おうとするクリントン陣営が、対立の少ない州で優位にあるという皮肉がある。

○長い戦いでは、いろんなことが起こります。大統領選挙オタクのかんべえとしても、今年は「そんなの知らんかったぞお」ということが多いです。いずれにせよ、Cook Political Reportの1月22日付けのエントリーの末尾を飾る下記のセリフがしっくり来ます。

We've never seen two such chaotic and unpredictable nomination fights at the same time. What a fascinating season to be a political junkie. What a maddening one to be an analyst or a candidate.


<1月28日>(月)

○念のためにメモしておきましょう。今週から来週にかけては、重要な日程と経済統計の発表がズラリと並んでいます。これはもう、地雷原を歩むが如し、ですな。

 1月27日(日)スイス・ダボス会議が閉幕
 1月28日(月)ブッシュ大統領、一般教書演説
 1月29日(火)フロリダ州予備選
         失業率、有効求人倍率(12月)
         家計調査(12月)
 1月29-30日 FOMC(連邦公開市場委員会)
 1月30日(水)鉱工業生産(12月)
        米国実質GDP成長率速報値(10-12月期)
 2月1日(金)米国失業率(1月)
 2月5日(火)スーパーチューズデー
 2月9日(土)G7会合(財務省・中央銀行総裁会議)

○ブッシュ大統領はこれが最後の一般教書演説。2002年の「悪の枢軸」演説でブッシュ大統領が全世界を驚愕させて以来、当不規則発言では毎年1月末から2月上旬のこの時期に、一般教書演説を取り上げてきたものです。日本時間だと明日の午前でありましょう。さしあたって注目点は景気対策として何が盛り込まれるか、ですね。今のところ、今日のニューヨーク市場は下げで始まったようです。


<1月29日>(火)

○ブッシュ大統領の一般教書演説が行われました。過去の例で行くと、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指した2002年演説、イラクのフセインを脅し上げた2003年演説、公的年金改革をぶち上げた2005年演説などが記憶に残っています。しかし7回目で最後となる今回の演説は、昨年に引き続いてきわめて地味な内容となりました。新しいアイデアを盛り込んだわけでもなく、気の効いたレトリックや、締めくくりに使う「ちょっといい話」もない。普通、最後の一般教書演説というと、みずからの政権の成果を誇るのが常道となるのですが、ブッシュの場合はそれも難しい。

○この溜池通信の2000年1月29日付けをご覧いただくと、ときのクリントン大統領が行った最後の一般教書演説について取り上げている。(なんと、このHPはもう8年以上も続いているのだ。ワシも年を取るはずである) そのときは、かつてのホームラン王、ハンク・アーロンを会場に呼んだり、当時の流行であったヒトゲノムの議論でウンチクを披露したり、クリントンが大得意で最後の演説をエンジョイした様子が窺える。同じ2期8年を務めても、この差は大きい。

○それくらい、低姿勢な一般教書演説であった。全体で要した時間は53分間。冒頭の言葉遣いは下記のように慎重なものだった。きっと考え抜いて決めたのだろう。なんというか、ブッシュらしくない、自省的で抑制された言い回しである。

Seven years have passed since I first stood before you at this rostrum. In that time, our country has been tested in ways none of us could have imagined. We faced hard decisions about peace and war, rising competition in the world economy, and the health and welfare of our citizens. These issues call for vigorous debate, and I think it's fair to say we've answered the call. Yet history will record that amid our differences, we acted with purpose. And together, we showed the world the power and resilience of American self-government.

○一般教書演説の際には、議員たちが何度もスタンディング・オベーションを行い、演説は何度も中断されるのが「お約束」である。ブッシュ時代、党派的な対立が厳しくなるにつれて、議会に集まった議員の半分だけ(共和党員だけ)が拍手する光景がめずらしくなくなった。それでも今回は、ちゃんと全員が立ち上がって拍手するシーンが何度もあった。「ES細胞の研究に予算をつける」「イラクから2万の兵士が戻ってくる」などの部分である。

○その一方で、議会民主党に釘をさした部分もある。特に「イヤーマーク予算を削減しない歳出法案には拒否権を発動する」という部分は、ほほうと思いましたね。Earmarkというのは、「利益誘導型」の予算のこと。これまでブッシュは、めずらしいくらいに拒否権を行使しない大統領で、予算の圧縮も滅多にしなかったのだけど、最後の1年は今までとは違うのかもしれません。要するに、もう誰にも遠慮する必要はないぞ、ということです。

○イラク問題については、昨年のブッシュは「増派」(Surge)に一点賭けしていた。その後、イラク情勢は落ち着いたので、ブッシュは「賭けに勝った」と言える立場である。ところが、その部分も、こんな風に低姿勢な言い方になっている。長らく見ているものとしては、「これがブッシュか」とちょっと驚くほどだ。(最初からこんなふうであれば、中東情勢ももっと落ち着いたかもしれない)

Ladies and gentlemen, some may deny the surge is working, but among the terrorists there is no doubt. Al Qaeda is on the run in Iraq, and this enemy will be defeated. (Applause.)

○党派色が薄まったブッシュ演説に対し、民主党側は反論役にカンザス州知事のキャサリーン・シベリウスを起用した。これまた、きわめて穏やかなトーンであり、「アメリカ国民は、われわれのような憎悪の政治ほどに分裂しているわけではない」という印象的なフレーズを残している。そういえば下院の民主党は、景気刺激策でホワイトハウスですでに合意している。

○やはりアメリカ政治の対立の図式は、2006年の中間選挙を転換点として、融和に向かっているのだろう。1年前の溜池通信(Vol.349「米国政治の転換点か?」)で書いたことが、確認できたような気がする今年の一般教書演説でありました。


<1月30日>(水)

○フロリダ州予備選挙は、マッケイン対ロムニーの激戦の上、めでたくマッケインが勝ちました。これで来週のスーパーチューズデーに向けて、共和党のフロントランナーが誰かが確定したといえるでしょう。いやはや慶賀に堪えず、であります。

○フロリダ州というところは、老後を過ごす人が多いところで、また米中央軍(アフガン戦やイラク戦を担当する部署)の司令部がタンパにあることもあり、軍人が多く住む場所です。これは高齢で海軍出身のマッケインにとってプラス要素でした。しかるにマイナス要素も少なくなかった。最大の問題点は、フロリダ州予備選挙がClosed Primaryであって、純正の共和党員だけで投票が行われる場所であったことです。無党派層で人気があることは折り紙づきのマッケインですが、共和党内ではかならずしも評判がよろしくない。すでにラッシュ・リンボーのような保守派・ラジオトークショーの人気コメンテーターは、口をきわめてマッケインをののしっていた。

○いわく、あいつは民主党と組んで選挙制度改革を通しやがった。お陰で共和党はカネが入らなくなった。裏切り者である。あいつはまた、民主党と組んで不法移民を甘やかすような法案を通そうとした。まことにケシカラン。そして何より、ブッシュ政権に対して何度も楯突いた。評判のいいブッシュ減税に反対し、評判の悪いブッシュ増派に賛成した。保守の心が分からないのではないか。

○ところが、今回の選挙で立候補しているのは、軒並み保守の心を理解していない連中である。ざっとこんな感じである。

●ジョン・マッケインは「反・保守」である。いちいち保守本流の神経を逆なでするようなところがある。なおかつ、一匹狼タイプであるから、そのことをまったく気にしていない。まったく面憎い男である。

●ミット・ロムニーは「偽・保守」である。あのジョン・ケリーを輩出したリベラルなマサチューセッツ州の元知事であるから、同性愛にも寛容である。ところが、選挙に出るために方向転換し、保守の振りをしている。要するに「なんちゃって保守」である。

●ルディ・ジュリアーニは「亜・保守」である。ニューヨークの出身であるからには、社会政策でリベラルになるのは仕方がなかろう。そこでタカ派ぶりっ子をして、ネオコンをアドバイザーに大量登用した。外交が苦手なのかもしれないが、お前、そんなのでいいのかよ。

●マイク・ハッカビーは「聖・保守」である。彼こそは保守の心を理解している。ところが、何しろ元はエヴァンゲリカルの牧師さんであるだけに、ちょっと浮世離れしたところがある。それでは本選挙に出た際に勝ち目がないので、やっぱり困るのである。

○いずれも帯に短し襷に長し。こうなるとフロリダ州の共和党支持者としては、悩んだ挙句に「偽・保守」よりは「反・保守」の候補の方が、ブレていない分だけマシかなあ、という判断になったのではないか。ロムニーが豊富な自己資金にモノを言わせて、フロリダ州でテレビCMを打ちまくったことも、かえって反感を買ったのかもしれない。

○ちなみに、最初からフロリダ州に賭けていたジュリアーニは、ここに至る過程で「空気の読めない人」という評価が定着してしまったようだ。「ミスター・ナインイレブン」という評価は、もともとは誉め言葉であったのだけど、今となっては「今だに当時の栄光にしがみついている人」というマイナス評価に転じてしまう。こんなジョークが流れていた。「ジュリアーニの支持率はどうだい?」「うーん、9%から11%の間ですねえ」

○さて、共和党の候補者がマッケインになったとすると、次はどんな影響が出るか。ひとつには「マッケイン候補で戦うのなら、共和党は議会選挙で苦戦しなくて済むかもしれない」という計算が働く。つまり、共和党らしからぬ大統領候補を立てることで、共和党への反感を減殺することができるという理屈。逆にいえば、「民主党がヒラリーを大統領候補にするならば、議会選挙では民主党は苦戦するだろう」という予測があったりする。

○次に共和党がマッケイン候補であると仮定すると、民主党支持者の間には「ヒラリーを立てるよりも、オバマを立てるほうがいいかもしれない」という計算が働く。これはオバマ陣営にとって、干天の慈雨のような話でしょう。ヒラリー対マッケインの対決は、面白いことでは一番でしょうけれども、ヒラリーのブッシュ政権批判が全部空まわりしてしまう怖れがある。「党派的対立を終わらせよう」と説くオバマの方が、無党派に強いマッケインを倒すには適しているかもしれない。

○ということで、来週のスーパーチューズデーに向けて、ようやく共和党の候補者が固まりつつある。intrade市場のマッケイン株はとうとう82.0pに達しました。間もなく民主党も一本化されるでしょう。日本の立場としては、「マッケイン対オバマ」がいちばん具合が良くて、それならどっちに転んでも親日政権になりそうだ。まあ、そんな私利私欲はさておいて、ここに至る過程は波乱万丈、まことに感動あり涙ありのドラマでありました。候補者選びの物語は、いよいよ出口が近い。

○ところで今宵は、ぐっちーさん雪斎どのやじゅんさん純正野球ファンさん、そしてさくらさんという仲間の新年会でした。いちばん盛り上がった話題は、「パチンコ・自民党戦国史」を作ったらどうかというアイデア。

○とりあえず第一弾は三角大福編でしょうね。リーチがかかって、角さんが登場すると、扇子をパタパタやりながら「よっしゃよっしゃ」と言って、怒涛のごとく玉が出る。次に大平さんが登場すると、「あーうー」とか言って、ちょぼちょぼと玉が出る。そして福田おじいちゃんが登場すると、「天の声にも変な声がある」とかいって、急に玉の出が悪くなる。最後に三木さんが登場するとゲームセット。政治家には肖像権がありませんし、オヤジ世代にとってはとっても懐かしい顔ぶれなので、これを作ると受けるんじゃないかと思うんです。

○三角大福編が受けたら、次は竹下・安倍・宮沢編「誰が中曽根さんから禅譲を受けるか」編が出て、シリーズの最後は「官邸崩壊」編でしょうね。そう、どうせだからテーマ曲も作ってしまいましょう。

♪一万年と二千年前から愛してる〜    「あなたと合体したい!」

○お後がよろしいようで。


<1月31日>(木)

○内外情勢調査会の仕事で群馬県前橋市へ。FMぐんまの番組の仕事をしていることもあって、1年に1度は群馬に来ていると思う。不思議なことに、かんべえが講演に呼ばれる土地にははっきりとした傾向があり、愛知県、広島県、群馬県、それに東京近郊といったところがお得意様である。そういえば今月も、広島県福山市、愛知県西尾市、埼玉県越谷市、群馬県前橋市という4箇所を訪れている。こういう場所は、どことなく安心感がある。

○ところが群馬県ということは、地元の福田首相の悪口が言いにくい。ちょっとでも冷やかすようなことを言うと、急に刺すような視線をあびてしまう(気のせいかもしれないけど)。とはいうものの、昨今の国内政治をつらつらと鑑みるに、福田政権これで万万歳とはとてもいえません。まあ、小沢さんの悪口の方が、ネタは一杯あるのですけれどもね。夜に東京に戻ってから、脱力さんなどとついつい福田政権の悪口に花が咲いてしまいました。

○それにしても分かんないのが昨日の「つなぎ法案」撤回である。いくら議長が斡旋したとはいえ、あんな玉虫色の妥協で与野党が納得できるというのはなぜなんだろう。察するに、表に出ていないことがあるんじゃないだろうか。こんな風に、昔ながらの「国対政治」を堂々と見せられてしまうと、アメリカ政治の華々しい戦い振りに比べてまことに脱力感があります。いやはや。

○群馬県高崎市駅前では、ヤマダ電機の巨大な本社ビルが建設中でありました。言うまでもなく、日本最大のロードサイド型家電量販店の雄でありまして、家電製品の実質的な価格決定県を有しているといわれている。有力家電メーカーの幹部を、引っこ抜いてしまうほどの勢いなんだそうで。おとなり栃木県のコジマ電機とあわせて、まことに見事な急成長振りでありますな。







編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki