●かんべえの不規則発言



2000年2月1日〜18日





<2月1日>(火)

○今日のお昼は年金の運用をしているUさんと一緒でした。Uさんによれば、日本国債は米国株並みのバブルなのだそうだ。10年ものが2%以下なんだから、買われ過ぎなのは間違いない。問題は市場関係者がそろって、「いずれは金利が上がるだろう」(国債は暴落するだろう)と考えていること。だってこれだけ赤字国債が増えているんだもの。地方債も増えてるし、来年度からは財投債も市場に出てくる。いずれは消化しきれなくなるのは必定。

○そこで、「東京都債を買おうかなぁ」とUさん。理由は、石原さんはきっちり借金を返してくれそうだから。たしかに石原都知事は職員の給料を下げた。支持率が高いし、そもそも支持率が低くてもひるむような人じゃない。金を出す側から見れば、こういう人は頼もしい。それに比べれば小渕さんは、借りるだけ借りておいて、後でとぼけてしまいそうな気がする。

○92年にクリントンが当選したとき、米国内でこんな声があった。「あれはいい大統領になるだろう。私は昔から彼を知っている。だから引退後の資金の大部分を、アーカンソー州債で運用している」。へえー、アメリカでは、知事の個性が債券の利回りや安定性に反映されるんだ、と感心した覚えがあります。日本もやがてそうなるでしょう。多選で殿様みたいになっている知事さんがいる県は、利回りが上昇するようになったら面白い。現状では、地方交付税交付金や縁故債なんて理不尽なものがあるから、市場メカニズムが阻まれている。

○これを書きながらCNNを見てたら、ニューハンプシャー予備選のニュースをやっていた。明日には結果が出ているでしょう。マケインはそこそこ頑張りそうだが、ブラッドレーはやや苦戦か。ついにゴアの個人攻撃に出ている。これは民主党全体の地盤沈下を招く恐れがあるので、できれば避けたいところだろうが、無党派の支持を得るためにはやむを得ずというところか。ブラッドレーの選挙献金の出元を見ると、意外なほど筋のいい大企業が並んでいる。ということは、彼は簡単には引けない。どこまで頑張るか。



<2月2日>(水)

○ニューハンプシャーの結果は、共和党はマケイン、民主党はゴアが勝ちました。どちらも四つ相撲になった。4人の戦い、というのが面白い。準決勝も決勝もいい勝負になりそうだ。前2回と違い、2000年選挙では第三政党が目立たない。これは2大政党が十分な選択肢を提示しているからでしょう。4人のうち誰が大統領になっても不思議ではない。こんなことはめったにあるものではない。

○共和党はマケインが上出来の結果を手にした。マスコミは盛大に彼の勝利を伝えている。「ニューハンプシャーを制するものは大統領選を制す」のは、単なるジンクスではない。ニューハンプシャーではマスコミ取材が過熱する。ゆえにここで勝てば、全米的に知名度が上がって、その後の戦いが有利になるのだ。しかしマケインは満足していられない。次は2月19日のサウスカロライナ州が勝負どころ。マケインはここでも十分な布石を打っている。南部の州だが、ブッシュの地元テキサスからは遠く、ここで勝てばますます強さを印象づけられる。

○しかしそのあとが苦しい。続く2月22日の地元アリゾナでマケインは評判が悪い。現にアリゾナ州知事はブッシュ支持だ。地元で負ければその瞬間に勝負は終わってしまうだろう。ここをクリアできれば、すぐに3月7日のスーパーチューズデーが待っている。カリフォルニア州やニューヨーク州といった巨大州で善戦するには、いかんせん資金がない。しかも3月14日のスーパーチューズデー第2陣には、ブッシュの地元テキサス、ブッシュの弟が知事を務めるフロリダなどの巨大州が開票する。逆にブッシュの側は、大崩れせずに3月14日まで持ちこたえていれば、自然に勝利が転がり込んでくる。

○民主党はゴアが価値ある勝利を得た。ブラッドレーは不整脈が尾をひいたようだ。元スポーツマンが健康に不安ありではカッコがつかない。このあと、ゴアが大失敗をやらかさない限り、逆転は難しそう。

○ブッシュとゴアは「普通の人」、マケインとブラッドレーは「ヒーロー」のタイプだ。去年の6月頃には、2000年選挙は「普通の人対普通の人」の戦いと見られていた。しかし有権者は飽き足らなかったようだ。そこで2人のヒーローが挑戦者として浮上した。2つの準決勝は、「普通の人対ヒーロー」で戦われている。決勝戦はどんな組み合わせになるか。「ヒーロー対ヒーロー」にはならないだろう。「普通の人対普通の人」になれば順当な結果。できれば決勝も「普通の人対ヒーロー」になれば面白い。



<2月3日>(木)

○憲政史上初めての野党全欠席国会が進行中です。国会のテレビ中継を見て思ったのですが、やはり異常な感じですね。なにしろ野次が飛ばない。静かな国会で、小渕さんがたどたどしく(失礼)原稿を読み上げている。これでは議論にならない。知り合いの国会職員が、「何をどうしたらいいのか分からない」と言ってました。事態をどうやって収拾するのか、誰もシナリオをもっていない。黙っていたら、いつまでもこの状態が続いてしまいそう。だが、見ていて怒りも笑いも湧いては来ない。

○大阪では「中途半端やなぁ」というギャグが流行っているそうです。これって実感ですよね。景気はいいのか悪いのか。未来は明るいのか暗いのか。この勝負は勝ってるのか負けてるのか。政治家は頭がいいのか悪いのか。この私は寝ているのか起きているのか。そしてあなたは幸せなのか不幸なのか。よく分からない。どっちつかずで生煮えの状態。「なんやお前、中途半端やなぁ。右でも左でもないやないか」。右とか左とか決めるのには勇気が要ります。だから成り行きまかせでじっとしている。時間だけが過ぎていく。

○・・・・てなことを書いているからといって、別段、厭世的になっているわけではございません。心配しないでよKさん。こういうところが「不規則発言」の不規則なところでして。



<2月4日>(金)

○最近、赤坂で評判のラーメン屋、「茂助」へ行ってきました。千代田線赤坂駅から、日本ユニシスがある方へ坂を登っていく途中の右手にあります。売りは、3種類のだしをブレンドしたこと。昼時は茂助ラーメンにご飯とアンニン豆腐のおまけがついて750円。12時半に行ったら3人並んでいましたが、これは上出来の部類でしょう。

○ラーメンホームページを作っている、かんべえの配偶者も、実はまだ茂助に行っていない。家で感想を聞かれたのでこう答えました。「具に昆布が入っていた」――すいません、昆布が嫌いなんです。



○赤坂はラーメンの激戦区のひとつです。テレビチャンピオンで優勝した「赤坂ラーメン」、いつも満員の九州「じゃんがらラーメン」、老舗の「一点張」、室蘭ラーメン「なかよし」、札幌ラーメンの「薄野」、どの店もこれも長い付き合いです。「茂助」には、たぶんもう行かないでしょう。単に好き嫌いの問題なのですが。(←わがまま)



<2月5日>(土)

○異常な国会の行方は、明日の大阪府知事選の結果次第という感じになってきました。鯵坂、太田、平岡の有力3候補は横一線だそうです。最近の無党派層は、投票日の朝になって誰に入れるかを決めるらしい。おそらくそういう人たちが全体の3割以上いる。ということは、事前の予測はあまり当てにならない。

○ちょっと探してみたら、案の定、インターネット上で模擬投票をやっているページがあった。『大阪府知事選挙』がそれで、これを見ると太田さんが意外と不人気で、鯵坂、平岡の一騎打ちになっている。これを見て初めて知ったのですが、去年の都知事選に出ていた羽柴秀吉さんが出ているのですね。

○選挙ウォッチャーのページにも秀逸なものを発見。『大阪府知事を考える女の会』がそれ。おばさんAとおばさんBが、3人の候補に関する感想を公開しています。「講演を聞き比べた」「選挙事務所を見てきた」「家は本当に大阪にあるのか」など、観察に実があって面白い。ただし2月5日朝の時点で、アクセスヒット数はまだ127件しかありませんでした。大阪在住の方は急いで見てください。

○全般的な印象ですが、平岡人気は意外に強い。各党相乗りに対する反発が強いこと、生っ粋の大阪人であることに加え、創価学会以外の宗教勢力がこぞって支援に乗り出している様子。投票率が高ければ風が吹くかも。鯵坂は着実に現状への不満層を吸収しており、低投票率なら有利な戦いか。太田は「そうはいっても」の現実主義派が頼り。「酔うとおっぱい見せるらしい」という噂があり、かえって好感を呼んでいるところが大阪らしい。

○で、国政への影響ですが、太田勝利なら波乱はない。鯵坂勝利なら与党には逆風で、「株価が2万円超えても選挙は出来ない」ムードになるだろう。この場合、民主党の出方が難しい。平岡が勝った場合、自民党内で公明との連立解消の声が出てくるでしょう。それにしても大阪が国政の鍵を握るなんて、本当にめずらしいことですね。



<2月6日>(日)

○昨日の内容にこれを追加しておきましょう。『どないすんねん?おおさか』。カルロス・ゴーンや孫正義のそっくりさんが、大阪府知事選に登場して旋風を巻き起こす仮想シナリオが出ています。現実の4候補(羽柴誠三秀吉さんを含む)の主張も読むことができます。

○大阪府の最大の問題が財政難であることは言を待ちません。実際、全国的に財政赤字の問題への関心が高まっています。そこで提案です。地方財政を改善するウルトラCがある。現在の消費税は、5%のうち1%が地方財政の収入になっていますが、この分を自治体が増税することができるんです。つまり「大阪は地方消費税を3%にします」とすれば、大阪府だけは消費税が7%(中央4%+地方3%)になって、消費税収入が一気に3倍になる。大蔵省の方の説明によれば、法的には可能なのだけど、そんな勇気のある自治体はないんだそうです。

○ま、現実問題として、消費税は滞納が増えて困っているくらいだし、地方交付税交付金制度という「真面目に借金返すと損をする」制度があるくらいだから、景気を犠牲にしてまで財政を建て直そうという自治体が現れないのは無理もない。しかしこれを公約する候補者が出てきたら、すごいインパクトだと思いませんか? そうね、石原さんだったらやるかもしれません。



<2月7日>(月)

○今週の"The Economist"の表紙は、にっこり笑ったマケイン候補の「グー」サイン。世の中にこれだけうれしそうな顔もめずらしい。スポーツマンの汗が劇的に美しい瞬間を作り出すことがありますが、選挙も真剣勝負の世界です。ニューハンプシャーでの勝利は格別のものがあったでしょう。余計な話ですが、大阪府知事に当選した太田さんはそんなにうれしそうに見えなかった。「勝ってほっとした」のが正直なところだったりして。

○マケインを取り巻く状況は、2月2日の「不規則発言」で書いた通り。つまり勝ちとおすのは容易ではない。ニューハンプシャーは、「オープン・プライマリー」という党員以外も投票できるシステムだった。だから無党派層に人気のあるマケインが勝てた。今後は「クローズド・プライマリー」の州が増える。共和党組織はブッシュ支持で固まっているから、そういうところではマケインは勝ちにくい。

○ただしマケイン候補の笑顔を見ているうちに、「ひょっとしてこの人、カリスマが入ってきたんじゃ?」という気もする。ニューハンプシャーを踏み台に、無名な候補がやがて全国的な人気を得て、ついにはホワイトハウスに・・・・というパターンは過去に何度もあった(ex:1976年のカーター)。その手の奇跡が起きる準備は整ったかもしれない。

○ここへきてようやく、大統領選の争点(issue)が見えてきた。それは財政黒字の使い道。減税を訴えるブッシュに対し、マケインは過去の赤字の返済+社会保障制度の充実に当てたいとしている。この点で、右派のマケインと左派のブッシュがねじれ現象を起している。なにしろマケインがいってることは、クリントン現政権がやろうとしていることと同じ。ルービンやサマーズがにっこり笑うような政策だ。一方、ブッシュのいう1.4兆ドルの減税は、共和党内の受けはいいだろうけど、過熱気味の米国経済にあってはかなりの無理筋。この政策論争は面白い。

○劣勢になったブッシュ候補は支持者に呼びかけた。
「皆さん、肝心なのは本選挙になってからです。マケインで、ゴアやブラッドレーに勝てると思いますか。その点、私の方がずっとElectableです」
すると聴衆からこんな声が漏れた。
「やれやれ、Erectableな大統領はもうたくさんだよ」
――お粗末でした。



<2月8日>(火)

○大阪府知事選挙に関するメールを2本頂戴しました。やっぱり天気のせいもあって投票率が低かったのは残念。盛り上がりに欠けたな、という感があります。ともあれ「大阪発、中央政界激震」のシナリオは回避されました。その一方、「全国初の女性知事」の誕生を素直に慶賀したいと思います。首長選挙では、いまだに男性社会だからなあ。

○首長さんといえばやはりこの人、慎太郎。2月6日に、「地方消費税を上げたら面白い、石原さんならやりかねない」なんて書いてたら、今日になって外形標準課税を言い出した。あんな手があるとは意外でした。案の定、霞ヶ関は火消しに苦労しているようです。しかし外形標準課税は、政府税調でも導入の方針を出したことがあるくらいだから、銀行だけなんて言わないで、大いにやったらいい。不況で選挙前だから、中央の政治家はとても言い出せない。ならばぜひ地方が声を出し、中央を揺さぶってほしいと思います。

○掲示板をつけてみたところ、ご覧の通り全然使われておりません。反応がないわけではなくて、筆者のもとに直接長文のメールが届いているわけで、そりゃまそっちの方がありがたい。実は掲示板に書き込むというのは、筆者もあまり得意ではありません。気のきいたことを、ささっと2〜3行で書くというのは難しいですからね。どんな使い方をすればいいのか、思案中です。



<2月9日>(水)

○朝目が覚めたら、なんと神経性の下痢状態。普段、神経が細やかというよりは図太い方なので、こういうことはめずらしい。しかも仕事が忙しくてお昼も抜き。でもまあ、全部きれいに片付いたので、夜にはすっかり上機嫌になり、深夜の柏駅に着いたときには、あわやストリートパフォーマーたちに小銭を投げんばかりでした。しかし彼らもこの寒い中をよく頑張るね。

○今日は欧州からの客人20数名を前に、「総合商社とは何か」をテーマにお話ししました。どっちかというと、「現下の日本経済」みたいなお題を頂戴した方がありがたいのですけどね。好き勝手にやらしてもらうことにして、いつもの手口で「皆さん、総合商社はグローバル企業だと思いますか?」。3分の2ほどが賛意を表してくれたのを見届けて、「違うんですよねー。たしかに商社はWorld wide companyなんだけど、本質はJapanese companyなんですよ」とやった。案の定、受けた。

○客人たちは南欧とか北欧の出身者が多く、英語のネイティブはごくわずかだったようだ。「総合商社はマーチャント・バンクのようになるだろう、という人もいる」と言ったら、ひとりだけけたたましく笑った奴がいたので、少なくとも一人はイギリス人がいた模様。・・・・なーんて偉そうにいってますけど、相手がネイティブでなくても、英語のプレゼンはたとえ30分でも気が重いです。パーティーの立ち話とはわけが違うもの。

○最近は商社を取り巻く環境がきびしいので、余計に話がしにくい。こういうときは正直に話すに限る。広報室で7年近く過ごして学んだ最大の教訓は、月並みながら"Honesty is the best policy."ということでした。嘘をつかないことは、つまるところわが身を守る最良の方策だと思います。一方でhonestyは、such a lonely wordだなんて歌もありましたなぁ。(←酔っている)



<2月10〜11日>(木〜金)

○早期退職するOさんと、人妻あやさんと3人で四谷の「こうや」。本人が送別会はやだというので、単に割り勘でラーメンを食べる会。ここでOさんの第2の人生シナリオを拝聴。これが実によく出来ている。いってみれば"Defensive Venture"とでもいうべき作戦です。簡単に他人が真似できる内容ではないので、ここで紹介しても迷惑にはならないでしょう。

○Oさんは多趣味な方なのですが、特にカメラは集めるのも撮るのも相当な域。会社を辞めて毎日が日曜になったら、都内の主要な建物の写真を取りまくる。すでに千代田、港、中央3区は、撮り貯めたポジフィルムがあって、これらを見ると雑誌記事などでも十分使える出来栄えです。Oさんの腹積もりでは、1年後には都内の建物を集めたフォトライブラリーを作り、1枚いくらで貸し出しを始める。宣伝はインターネットで。あくまでも趣味の延長なので、そんなにもうからなくてもいい。少なくともカメラにかけるお金が全部経費にできる。一石何鳥にもなる作戦です。

○余談ながら、趣味の写真を公開しているHPは結構多いらしい。知人のAさんがやっている"Muses de la Nature"は、大自然をテーマにした作品集。同じニフティで、同じ頃にスタートしたHPです。そういえばAさんも大企業を退職して司法試験準備中のはずだが、こちらはずいぶん若い。趣味の写真も水準高いです。

○「会社を辞めたら急に忙しくなった」、という声をよく聞く。自称パチプロになったT氏は、「FA宣言をしたら急に人気者になり、夜は18日まで全部詰まっている」などと言っていた。いったい、いつパチンコしてるんでしょ。Oさんも、仕事と趣味の両方の写真を撮ることでしばらくは忙しいらしい。でも、「雨が降ったら仕事はしない」とのこと。そりゃそうか。団塊世代の後ろの方に属するOさん、「人生残り3分の1=25年、自分の好きなことをします」ときっぱり。こういうベンチャーも面白いと思います。



<2月12日>(土)

○1日遅れてしまったけど、なんとか今週分の溜池通信を仕上げる。再来週からの出張を考えれば、書かなければならない原稿はまだまだある。『財界』の書評も書き溜めておかないと。そういえば昨日、テレビで『ゴッドファーザーPART2』を見た。息抜きといえばその程度かしら。なんとも地味な3連休です。



<2月13日>(日)

○筆者の住む千葉県柏市は、およそ新しい商売を試すには都合のいい場所らしく、特にロードサイドショップ系はなんでも揃っています。今日はユニクロに行ってきました。東武野田線の新柏駅と増尾駅の中間くらいにあります。なるほど品揃えが多くて安い。いちばん高い商品が3900円くらいだったでしょうか。これで品物が良ければ店は流行るでしょう。ユニクロは現在急成長中と聞いています。

○よく見ると、色やデザインのバリエーションは少ない。デパートなどだと、わざと売れるはずのない変なデザインや色の商品を混ぜておき、ごく普通の商品を選ばせようとすることがある。いわゆる「死に筋」というやつだ。ユニクロは、「死に筋」を入れておくなんて無駄なことはしたくないらしい。売れる売れないはきっちり見定めて並べているのだと思う。

○流通業にとってつらい季節が続いているようだ。長崎屋が会社更生法を申請したらしい。流通は日銭が入る商売だから、資金ショートということはない。おそらく土地の不良在庫や店舗の拡大などで、借入金が過剰になったのだろう。ダイエーも同じ構造。ユニクロやコジマ電機のように、そういう過去の負の遺産がない流通業にとってはいまがチャンス。金も借りやすいし、人材も採れる。

○流通は鮮度が短い。国道16号線など、新しい店がどんどん建つ一方、それまで流行っていた店があっけなくたたまれたりする。消費者としては、そのへんの有為転変が楽しめる。商売をする側は大変でしょうね。



<2月14日>(月)

○インドネシア情勢が気になってきました。だって来週、行くんだもの。出張中にクーデターなんかあったら困ります。今日のところ、ウィラント調整相はおとなしく大統領の意向に従い、身をひく模様です。どうやら国軍が動く恐れはなさそう。というより、今日聞いた専門家の話だと、そんな可能性はもとより少ないのだそうです。

○インドネシアにはパンチャシラという建国の理念があり、これが国民に深く根差している。全部で5ヶ条あり、ちょうどわが国における「五箇条の御誓文」みたいな存在です。憲法を改正しろという声はあるけれど、パンチャシラを見直せという声は皆無。これの第1条が信仰の重要性をうたいあげている。ところがここでいう信仰とは、宗派はイスラム教、キリスト教、ヒンズー教、仏教なら何でもOKになっている。イスラム教徒が9割とはいえ、信仰にはきわめて寛大な国なんですね。ということは、インドネシアがイスラム主義国家になる、なんてことは実際問題としてほとんど考えられない。クーデターもパンチャシラが禁じているから考えにくい。欧米的な視点でこの国を考えるのは、そもそも無理があるんだとのこと。

○聞けば聞くほど、インドネシアには日本的なところがあります。ワヒドを大統領に選んだ過程など、椎名裁定で三木首相が誕生した経緯をほうふつとさせるものがある。はっきりとモノをいわず、「和をもって尊しとなす」とばかりに、対立点をぼかしてしまうのが得意。そもそも日本人の祖先の一部は、おそらく黒潮に乗ってやって来ているのだから、それもまたむべなるかな、ですね。



<2月15日>(火)

○今日は会社のOBで、ベトナムで植林事業をやっていたFさんを訪ねて、昔話を聞いてきました。ダナンという日本人がほとんどいない街で、Fさんは日本向けに製紙用チップを輸出する仕事に着手しました。事業は次の年には黒字になり、戦争で荒れ果てた大地にはユーカリの林が少しずつ広がり、来年くらいには最初に植えた木が伐採可能になるといいます。商社マンとしては「してやったり」のプロジェクトです。

○Fさんは若い頃、ニューギニアで植林事業に携わった。そのときは先輩が切り開いた事業に参加したのだが、「いつの日かこんなプロジェクトを自分の手でやってみたい」という思いがあった。そして40代も半ばを過ぎた頃に、ベトナムでの植林事業を手がけるチャンスがやってきた。だからつらいなんて思った覚えはあんまりなく、「ニューギニアに比べればベトナムは天国みたい」と思っていたそうだ。

○つくづく「あの世代にはかなわんなぁ」と思う。Fさんは別段、会社人間だったわけでも、滅私奉公だったわけでもない。それが証拠に、停年と同時に全然違った仕事についている。ベンチャー精神とか、自己実現だとかを、まるで新しい概念のようにいう人がいますけど、実は戦後の企業戦士たちはそんな思いを胸に、新しいビジネスを生み出してきたのだと感じます。では後に続く若い世代はどうなのか。ちょっと身につまされる思いがします。



<2月16日>(水)

○ロシア情勢の話を月出さんに聞いてきました。「プーチン維新」は可能か、というお話。それについてはそのうち本誌で紹介する機会があるでしょう。とにかく3月の大統領選挙ではプーチンの勝利は決定的で、唯一本人が恐れているのは投票率が25%に達せず、選挙が無効になってしまうことだとか。

○ところで、もしもプーチン大統領が誕生すると、くだらない話だけどジンクスがまたも繰り返されることになります。つまりプーチンは髪の毛が薄い。これはロシア指導者にまつわる有名なジンクスであります。
レーニン(ハゲ)
スターリン(デブ)
フルシチョフ(ハゲ)
ブレジネフ(デブ)
アンドロポフ(ハゲ)
チェルネンコ(デブ)
ゴルバチョフ(ハゲ)
エリツィン(デブ)
???(ハゲ)

○上記は差別用語ですが、これもまあ「不規則発言」ということでお許しください。さて、プーチンとはどういう男なのか。これだけ謎に包まれた人もめずらしい。だって去年の8月に首相になったときも、「誰、それ?」って感じだったもの。日本には1度だけ来たことがあるけど、何の資料も残ってはいないんだそうで。ますます不気味。



<2月17日>(木)

○午前0時ちょうどに柏駅についたら、あなめずらしやストリート・パフォーマーが1組しかいない。それくらい今夜は寒いです。風邪をひいている皆様、お大事になさってください。かんべえは来週から南方にまいります。

○昨日はロシアのジンクスを書きましたので、今日はアメリカ大統領のジンクスをご紹介しましょう。ずばり、「末尾がゼロの年に選ばれた大統領は非業の死を遂げる」。

○大統領選挙は4で割りきれる年に行われます。ですから末尾がゼロになる年の大統領選挙は、20年に1度めぐってきます。1800年のトマス・ジェファーソンと、1820年のジェームズ・モンローは何事もなく任期を終えました。悲劇の連鎖が始まったのは1840年からです。

○1840年に当選したウィリアム・ハリソンは、高齢にもかかわらず、雪の日の大統領就任式でえんえん3時間も演説し、それがもとで肺炎になってあっけなく死んでしまいます。大統領としての業績が何もない気の毒な大統領です。

○1860年に当選したのは、ご存知エイブラハム・リンカーン。射殺された大統領は彼が初めてでした。

○1880年に当選したジェームズ・ガーフィールドは、射殺された2人目の大統領です。

○1900年に当選したウィリアム・マッキンレーは、射殺された3人目の大統領です。余談ながら、このとき日本に伝わったニュースは、当時普及し始めた国際電報が高価だったこともあって、きわめて短いものでした。わずかに3語。"McKinley shot Buffalo"(マッキンレーが水牛を撃った)。これでは意味が通じない。電報を受け取った人は、しばし考えてから、はたと手を打った。「そうだ!これはマッキンレー大統領が、ニューヨーク州のバッファローで射殺されたのだ!」。通信社の草分け時代のエピソードです。

○1920年に当選したウォーレン・ハーディングは、在任中にわけの分からない死に方をします。大規模な疑獄事件が進行中だっただけに、自殺説、他殺説入り乱れて死因は薮の中。「米国史上サイテーの大統領」を論ずるときに、いつも真っ先に上がる名前です。

○1940年に当選したフランクリン・ルーズベルトは、大恐慌と第2時世界大戦を戦い抜き、疲れ果てるようにして在任中に死亡。

○1960年に当選したのは、ジョン・F・ケネディ。ダラスの熱い日の惨劇はあまりにも有名。射殺された4人目で最後の大統領です。

○この不幸な連鎖に歯止めをかけたのは、1980年に当選したロナルド・レーガンでありました。彼はたしかに撃たれた。しかし最先端の医療技術と、ご本人の驚異的な生命力で、見事に再起を遂げます。おまけに運び込まれる途中に、医師に向かって「君は共和党員かね」などとギャグをかます余裕を見せ、文字どおり国民的な英雄になってしまいます。最近はアルツハイマーだそうですが、後生が悪かろうはずがございません。よかったよかった。

○はい、次は2000年の番です。今年当選される方は、ちょっとイヤーな気がするかもしれません。ジンクスは前回で途切れたと思えばいいようなものの、みなさん恐るべき確率で撃たれています。命懸けですね。



<2月18日>(金)

○早期解散説が流れています。「3月末解散、4月23日総選挙」が濃厚であるとか。その理由は、@景気が思ったほど良くなってない。株価も下げるかもしれない。だったら悪くなる前がいい。A4月から始まる介護保険が不透明。Bサミット後の選挙だと、自民党内で「小渕花道論」が出て引きずり降ろされてしまうかもしれない。C民主党がドジを踏んでくれたから、自民党の支持率が持ち直した、D自由党が連立を離脱するタイミングをなくす、などがあります。

○その場合、この解散をなんと呼べばいいのか。歴代の解散には、「バカヤロー解散」とか「死んだ振りう解散」なんて、素敵な名前が残っている。しかし今回はテーマなき解散なので、しっくりくる名前がない。「サミット前解散」「ドコモ解散」「与野党談合解散」・・・・どれもいまひとつ。

○解散をするのは、いわゆる「国民の信を問う」わけですから、大義名分が見当たらないなら別に任期満了選挙でもいいような気がしますけどね。





編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki