●かんべえの不規則発言



2010年12月





<12月1日>(水)

○本日は「かんぽフォーラム」でパネリストを務めました。でも最初に話が来たときは、気弱な私は思わず聞き返してしまったのであります。

「これって郵政民営化に賛成した人間でも、出ていいんでしょうか?」

○電話の向こうで相手はしばし沈黙し、やがてこんな返事があったのであります。

「問題はないと思います。それに基調講演は財部誠一さんですし・・・・」

○だったらいいじゃねえか、ということで大威張りで参上してしまいました。しかもパネリストにはフェルドマンさんもいるではないですか。テーマは「日本経済建て直しのキーワード」でありました。いろいろネタを仕込むには絶好の場でありまして、特に話題になったのは「新興国にモノを売るときはどうしたらいいか」。以下は小ネタなんですが、なかなかに味わいがあると思います。

●日本の農政は、減反政策には補助金をつけるけど、輸出米には補助金がつかない。

●インドネシアで売れる洗濯機は二層式である。全自動は売れない。なぜなら、インドネシア人がスコールに遭った後は、脱水機のみを使うから。

●インドで売れるテレビは大音響でなければならない。なぜなら、皆がテレビの音楽に合わせて踊りたいから。

○不肖かんべえとしては、日本経済を立て直すヒントとしては、最近の定番どおりに「日本経済に足りないのはストーリーである」てなことを申し上げました。すると、すかさずフェルドマン氏からこんなストーリーが披瀝されました。

●その1。日本経済は怪獣ゴジラならぬデフレに襲われた。これに対して、秘密兵器を持っている人は二人しかいなかった。1人は橋本龍太郎首相で、行政改革という武器を使って成果を挙げたが、次に財政改革という武器を使ったら自滅してしまった。もう一人は小泉純一郎首相で、構造改革という武器を使って成果を挙げたが、本人が引っ込んだら後が続かなかった。これでは外国人投資家は動けない。3人目の改革者が必要である。

●その2。日本経済は眠れる森の美女である。魅力はあるのに、眼を覚まさない。誰か王子様がやって来てキスをしてくれれば、美女は蘇える。そのキスとは何か。ひょっとするとTPPかもしれない。

○咄嗟にしては、上手過ぎます。お見事でありました。

○さて、ここでいうストーリーというのは、別に賢者の言葉や名論卓説でなくても構わないのであります。単なる思い込みで一向に構わない。若い頃に人は、得てしてとんでもない勘違いをするものであります。後で思い出すととっても恥ずかしいことだってあります。でも、それはそれで全然問題はないのです。自分の中で物語が完結してさえいれば。

○楠木健氏の「ストーリーとしての競争戦略」の中で、私がいちばん好きなエピソードはこれです。冬山で遭難した人がいた。食料もコンパスもすべてを失い、ほとんど絶望的な状況であった。ただしポケットの中には1枚の地図があった。それを見ていると、地形や方角がだんだん飲み込めてきた。そして、「この尾根を伝って行けば、ふもとに出られるだろう」という予想がついた。登山家は勇気を取り戻して歩き出した。

○登山家が奇跡的な下山を果たしたとき、ふもとにいた人たちは言った。「どうしてこんなことができたんですか」。登山家は答える。「地図がありましたから」。でも、実はその地図は違う山の地図であった。勘違いだったけど、地図があったから勇気がわいた。地図がなかったら、登山家はどこかでくじけてしまっただろう。

○単なる思い込みでも、心の中に地図を持っている人は強い。その地図のことを、アニマルスピリッツと呼んでもいいのではないか。今の日本経済に欠けているものは、それなんだと思います。


<12月2日>(木)

○そろそろ今年1年を振り返る時期となってまいりました。年末のイベントとして、不肖かんべえが例年、注目しているのは「流行語大賞」と「有馬記念」です。後者は12月26日まで待たねばなりませんが、流行語大賞は昨日発表されました。

2010 年間大賞
◆ゲゲゲの〜
受賞者:武良布枝(『ゲゲゲの女房』作者)

2010 トップテン
◆いい質問ですねぇ
受賞者:池上 彰(ジャーナリスト)

◆イクメン
受賞者:つるの剛士(タレント)

◆AKB48
受賞者:AKB48(アイドルグループ)

◆女子会
受賞者:大神輝博(モンテローザ社長)

◆脱小沢
受賞者:受賞者辞退

◆食べるラー油
受賞者:小出孝之(桃屋社長)

◆ととのいました
受賞者:Wコロン(漫才コンビ)

◆〜なう
受賞者:梅崎健理(スーパー高校生)

◆無縁社会
受賞者:NHK「無縁社会」制作チーム

2010 特別賞
◆何か持っていると言われ続けてきました。今日何を持っているのか確信しました・・・それは仲間です。
受賞者:斎藤佑樹(早大野球部主将)

○トップテンのうち、実に3つがNHK関連なんですね。「ゲゲゲの〜」は朝の連続ドラマからですし、池上彰さんはNHKのOBですし、「無縁社会」はNHKスペシャルの問題提起です。逆に民放から出た流行語はまったくなし。NHK1人勝ち、というのが2010年の傾向でありますね。民放は広告料がた減りで青息吐息、NHKは受信料をキッチリ集めて経営基盤は磐石。この差は大きい。来年は民放の奮起を期待したいです。

○ここ数年、流行語大賞の常連は「お笑いタレント」ですが、ここで受賞してしまうと翌年から泣かず飛ばずになってしまう、というのが「お約束」。2010年は「ととのいました」でしたが、Wコロンは警戒しなければなりませんね。これで大晦日に紅白に呼ばれたりすると、いよいよ死亡フラッグが立ってしまいます。2008年「グ〜」(エド・はるみ)、2007年「そんなの関係ねぇ」(小島よしお)、2005年「フォーー!」(レイザーラモンHG)、2004年「って言うじゃない…○○斬り!…残念!!」(波田陽区)、2003年「なんでだろう〜」(テツ&トモ)・・・・・みんなみんな、どこへ行ってしまったのよ。

○もうひとつ、流行語大賞の大票田であった政治関連が払底してしまい、2010年は唯一の受賞が「脱小沢」では哀し過ぎます。永田町は、もうとっくの昔に「脱小沢」してなきゃいけなかったんじゃないでしょうか。2009年は「政権交代」「事業仕分け」「脱官僚」、2008年は「居酒屋タクシー」「埋蔵金」「後期高齢者」「あなたとは違うんです」、2007年は「どげんかせんといかん」「消えた年金」と、まことに豊作だったのでありますが。どうも政治はパワーを失いつつあるように感じられます。

○さて、英語版の流行語大賞を考えるとしたら、どんな言葉が出てくるでしょうか。"QE2"、"PIIGS"、"Currency wars"、"Vuvuzela"、 "Assertive China"、"TPP"、"Obamacare"、"Rare Earths"、"Tea Party Movement"・・・・やはり経済関連が多く思い浮かびます。2010年はどんな年であったか。この議論、なかなかに奥が深そうです。


<12月3日>(金)

○年末恒例、日本貿易会「貿易動向見通し」が本日発表されました。ざっくり言うとこんな感じです。

単位:兆円 2007年度 実績 2008年度 実績 2009年度 実績 2010年度 見通し 2011年度 見通し
輸出 85.1 (+9.9%) 71.1 (-16.4%) 59.0 (-17.1%) 67.6 (+14.5%) 70.3 (+4.0%)
輸入 74.9 (+9.4%) 71.9 (-4.1%) 53.8 (-25.2%) 61.3 (+13.9%) 61.9 (+1.0%)
貿易収支 10.2   -0.7   5.2   6.3   8.5  


(1)2009年度があまりに悪かったので、今年度は輸出入ともに二桁増となりそうです。でも、来年の伸びは緩やかで、リーマンショック前の水準には戻りませんね。やはり「V字回復」というにはやや弱い。

(2)貿易黒字は着実に増える見込み。もっともこれは、輸入の元気のなさによるところが大きい。ちなみに前提条件では、日本経済の成長率を2010年度は2.6%、2011年度は1.3%と置いております。

(3)やはり2011年度の輸出の伸びが4%程度では寂しいので、もうちょっと頑張らねばなりませんね。それでは具体的にどんな品目に期待すればよいのか。それはこの表を見ながら、じっくりと考えてみたいところです。


○いつものことですが、こんな風に細かくモノの動きをチェックしていると、「日本企業の国際競争力は衰えている」とか、「国内製造業は空洞化して輸出が減少する」とか、「高齢化で貿易収支は間もなく赤字に転落する」などという議論があほらしく思えてきます。当溜池通信をご覧の方々は、くれぐれもそのような俗論に騙されませぬように。

○来年は当社が幹事会社なんですよ。2005年に担当したんですが、もう順番が回ってきてしまった。またワシが座長をやらねばならぬ。2012年度の予想が強気なものになればいいのですが。


<12月5日>(日)

○先日、定年退職して海外移住を考えている人と話をする機会がありました。それ自体は当今、めずらしいことではないのですが、「ようやく私もリスクを取れる年代になりましたから」と言っておられるのを聞いて、「なるほど、そういうものか」と感心しました。(私も結構な年になっているのだけれど、「第二種兼業サラリーマン」みたいなお気楽な立場なので、そういう意識には乏しいのである)。

○確かにサラリーマンをやっていると、なかなか冒険をするチャンスがない。大学教授のサバティカル休暇みたいなものがあればいいのですが、「滅私奉公」しているうちに年をとってしまう。あるいは子どもが片付くまでに時間がかかってしまう。定年になって初めて、「ああ、本当は自分はこんなことがやりたかった」と思う。伊能忠敬は望外のケースだとして、起業もさすがに難しそうだ。さて海外移住か、市会議員に挑戦するか、それとも蕎麦でも打つか。意外とどれも、年をとってからではカンタンではないのである。

○定年になってから初めてリスクを取ろうとすると、資産はそこそこあるから多少の失敗は許されるのだけど、奥さんがついてきてくれなかったりする。だから本当は、会社生活ではあんまりガマンをしちゃいけなくって、適度に若いうちに発散しておいたほうがいいのである。若い方々は、くれぐれもご注意を。若いうちに「草食系」と呼ばれた世代が、40歳過ぎたら急に不倫に明け暮れる、なんてゆうのも悪くはないと思いますぞ。

○ちょっと強引かもしれないが、団塊世代が定年になった途端に政権交代が起きた、ということも、サラリーマンのライフスタイルと無関係ではないと思うのである。会社にいる間は自民党に投票していたけど、もう腹が立ったし、退職したからどうでもいいや、で民主党に政権を取らせてみた。でも民主党は野党癖がついちゃっていて、1年たってもまるで政権担当能力がつかない。こんなことなら、もっと早くに冒険しておけばよかったのではないか。

○かくいう私も、日常の変化を作るのに苦労していて、先日やっと時計を買い替え、昨日になってやっとイーモバイルの端末を変えた。今日はモバイルパソコンを発注したところである。まだまだ前途遼遠なるも、ほっとくと何も変わらないままに日々が過ぎていってしまうのである。


<12月6日>(月)

○つくづく思うのだが、2010年という年は「グーグルの中国撤退問題」に始まって、「ウィキリークス事件」に終わるようである。しかもこの間に、「尖閣ビデオ流出問題」などもあったりして、ネットと情報管理の問題が繰り返しクローズアップされた。ネット社会の誕生は、それこそ核兵器の登場と同じくらい、外交のいろんな面でインパクトを与えつつある。

○情報公開はもちろん正しいことである。権力者にとって都合の悪い情報が隠蔽される、なんてことはあるべきではない。そういう意味では、ウィキリークスのアサンジ氏は、アメリカではなく中国やロシアの情報を開示すべきであった。もちろん、そんなことをすれば彼はあっさり消されてしまうであろう。ところが彼は、そんなことをしそうにないアメリカ政府に対して嫌がらせをしたいわけであって、この辺が実にケシカランとワシは思うのである。

○で、ウィキリークスの暴露によって、アメリカ外交は大きな痛手を負った。これから順々に暴露される情報は、インテリジェンスの世界の人たちにとってはまことに垂涎のネタであって、「アメリカの読み筋」がバレバレになってしまう。つくづくヒラリーさんはツキのない人である。あれだけ私心なく頑張っていて、国務省も組織全体でいい感じになっていたのに、これで各国首脳に頭を下げて回らなければならない。信頼を取り戻すためには、何年かかるかわからない。まことにお気の毒である。

○だからといって、情報開示やネットに対して消極的になるとしたら、これはアメリカの自己否定になってしまう。それこそ「ヤクザに絡まれた紳士がヤクザのようになる」(尖閣問題以降の日本でありがちな反応)の類である。そのうち、中国政府から「だから一緒にインターネットを管理しましょうよ」などと言われてしまうかもしれない。アサンジのような大馬鹿野郎を許してこそアメリカ、なのだと思う。

○よくよく考えてみれば、情報が漏れることで失うことが大きいのは、情報を管理しようとしている独裁国家の方かもしれない。アメリカや日本のような国は、どれだけ情報が漏れても(恥ずかしくはあるけれども)、実害はさほどない。「ああ、やっぱりアンタはそういうこと考えてたのね」で終わりである。おそらくウィキリークスがもっとも打撃を与えるのは、中東の独裁者や中国の中南海のように「外部に知られていないことが武器になる」手合いなのであろう。

○ということで、この問題、誰を利するのかがよく分からない。唯一いえることは、秘密がある人ほどウィキリークスは怖い。その点、日本はもともと失うものがないから、あまり損がない。恥ずかしいことかもしれないけれども。


<12月7日>(火)

○とっても久しぶりに国立市の一橋大学まで出かけて、「社会実践論」の講義を行なう。要は卒業生が現役の学生に向かって、「いいかね、実社会というところはねえ」という話をするという企画で、各界のいろんな人がいろんな話をすることになっている。本日の私のネタは「シンクタンクの現場から」。

○とはいえ、俺なんかがこんなことをやってていいのか、という内心忸怩たる気持ちがあるのですよね。なにしろ会場となっているのが新築の東校舎なんだけど、ここはその昔、古ぼけた部室や寮が閑散とあった場所で、とっても様変わりしている。当時、その一画を「アトリエ」と称して深夜にゴソゴソと活動していた演劇サークルがありまして、私は学生時代のほとんどの時間をそこで費やしていたんですよね。真面目な話、教室にはほとんど通っておりませんでした。というか、当時はそれがフツーだったのです。いやー、恥ずかしい。

○それとは打って変わって、近頃の学生はとっても真面目なんだそうです。ただし授業中はとっても静かで、つかみどころがないと言われている。そこで冒頭のつかみを、こんな感じで試してみました。

講師「えー、皆さんの間でもシンクタンクやエコノミストの仕事に関心のある人が多いんじゃないかと思います。興味ある人、手を挙げてください。ああ、やっぱり居ますね。それでは皆さんの中で、『エコノミストといえばこの人を思い出す』というのは誰でしょうか。はい、あなた」

一人目の学生「あっ、すいません、思いつきません」

講師「そうですか、残念ですね。じゃあ次のあなた、どうですか」

二人目の学生「たっ、竹中平蔵さんです」

講師「竹中さん、そうですね。本学のOBで私たちの先輩ですね。それじゃ次の方、どうですか?」

三人目の学生「はっ、今、言われてしまいました」

講師「・・・・・」

○ということで、一橋大学の学生に対するアンケート調査によれば、エコノミストと言えば66%が「竹中平蔵さん」でありました。うーむ。

○講義を終えてから、都心へ戻ってホテルオークラで行なわれる「年末恒例エコノミスト懇親会」へ。思わず竹中さんを探してしまいましたが、残念なことにいらっしゃいませんでした。上のエピソードをお伝えしたかったのですが。

○それはさておき、エコノミスト懇親会は毎年、年末のネタ探しに格好の場であります。すごいメンバーが集まっているんだもの。例えば、「嶋中さん、来年の予想はどうなんですか」なんて気楽に聞けちゃうんですから。本日もいろいろ発見がありました。2011年は明るい材料が乏しい年かなと思っておりましたが、日本経済についてはもう少し強気論でいいんじゃないかという気がしてきました。その辺の話は、いずれじっくりと書いていきたいと思います。

○本日は「モーサテ」関係者で、何人かの方に初めて挨拶しました。バークレイズの森田京平さんは、やっぱり実物もイケメンでした。それから、長らくニューヨークから元気のいい声でニュースを送ってくれていた「あっこのみー」こと佐々木明子さん。画面のこっち側と向こう側で何度も対話してきたのに、実物に会うのはこれが初めて。やっぱり実物も元気がいい。現在は「News Fine」のキャスターをされていますが、一度、「一緒の画面」で仕事してみたいですね。


<12月8日>(水)

○ワシ自身は韓流にはまったくの不調法なるも、さる人がしきりに曰く。「少女時代はスゴイぞ」と。とにかく、一人ひとりがピンで売れるようなタレントを9人集めたユニットなので、強力なことこの上なし。これに比べれば本邦のAKB48などは、ピンで売れないタレントをまとめて売るという、ぬる〜いビジネスモデルである。

○なるほど、「ほっといても秋葉原には客が来てくれる」という状況に甘えている日本側と、「世界に出て行かなければ食えない」と思いつめている韓国側では、まともに競ったら勝敗は見えている。例の「日本が韓国に負ける7つの理由」を地で行くような話であります(当欄の3月5日分をご参照)。

○もっといえば、これは日本の政治状況にも当てはまりそうですな。独り立ちが出来ない政治家が、大勢集まってなんとか政府を構成しているけれども、リーダーの力量不足で物事が決められない。せめて「武器輸出三原則の緩和」ぐらい決めてくれるかと思ったら、ミズホたんの機嫌をとるために放棄してしまった。消費税もTPPも決めきれず、法人減税も中途半端なことになりそうだ。最後の希望が共通番号制で、これが駄目ならほとんどご臨終と言えましょう。

○せめてミズホたんを法務大臣にするのだけは思いとどまってね。彼女の答弁はもう聞きたくないですぅ〜。


<12月9日>(木)

○東北経済連合会主催、「東経連フォーラムin山形」の講師の仕事で山形市へ。新幹線に乗ると、3時間くらいで着いてしまう。つまり簡単に日帰りできてしまう。考えてみれば、もったいない話である。東北に行ったら、やっぱり温泉と日本酒でありますよ。そういえば、以前に白布温泉に行きましたが、山形県は「すべての市町村に温泉がある」めずらしい県だそうです。

○あいにく本日は、山形新幹線「つばめ」を往復するだけの短い旅でした。ちなみに、行きの車中で食べた「山形牛ハンバーグ弁当」は今ひとつでありましたが、帰りの車中で食べた「すき焼き弁当」は美味でありました。あらかじめ予約しておくと、米沢駅で出来たてを持ってきてくれます。それから車中で売っている生ビールは、500円とちと高めでありますが、これも結構でありました。缶ビールを買わずに飛び乗ったのが正解でした。

○さて、現在、山形県がもっとも力を入れているのは「平成22年デビューの新しいお米、つや姫」だそうです。以前は、「はえぬき」と「どまんなか」が山形オリジナルでしたが、「つや姫」は新しく開発された品種。ウィキペディアを見たら、「コシヒカリ以上の極良食味である」とあるではないか。現在、吉村美栄子知事自らが「つや姫の母」を任じて、知名度アップによる全国ブランド化を図っている。知りませんでしたけど、J1のモンテディオ山形のユニフォームにも使われているんですね。

○ということで、一塁ベースを踏んで帰ってくるような出張でありました。残念。でも明日もいろいろあるしな。


<12月10日>(金)

○実は最近、こういう仕事をしております。本日が4回目の会合でした。政府主催の懇談会の委員というのは、ちょっと晴れがましいように見えますけど、勉強しなければならないことが多くて、結構大変であります。そのうち、議事録も掲載されますので、お暇な方はどうぞ。

○蓮舫大臣は毎回、出席されています。ファッションは第1回が白、2回目が黒、3回目は白と黒の組み合わせ、そして今日は再び黒でした。さて、来週の第5回目はどうなるのか。なんだかバカラの勝負をしているような・・・・(つまりバンカー、プレイヤー、タイ、プレイヤーと続いている。12月17日の第5回はどちらだろう?)


<12月12日>(日)

○忘年会のシーズンである。忘年会の話題と言えば、昨今はついつい海老蔵の話になってしまう。

某シンクタンク所長いわく、「ヤクザと愚連隊では、愚連隊の方が強いんですな、意外なことに」

某マスコミ関係者いわく、「のりピーではないですが、クスリがからんでいるという噂がありまして」

某大学教授いわく、「西麻布というのは、もともとヤバイ場所であったわけでして」

○ワシャそんなの知らんつうのに。で、示談は既に済んでいるのに、どうしても納得の行かない容疑者が出頭して、ひとこと言いたいというわけだが、何で弁護士が必要なんだろう。それにしても、「サンフロ」で取り上げるような話題なんだろうか。

○そうかと思うと、「新宿二丁目はすごい」てな話で盛り上がったりする。

某カリスマブロガー「新宿二丁目には国際競争力がある。@安全だし、Aレベル高いし、Bいつ行っても同じ店があって、C偏見が少ない」

○ワシャ行ったことないっつの。で、いっそのこと二丁目なんていわずに、新しく固有名詞をつけて、「アキハバラ」みたいなグローバルブランドにしちゃうというのはどうだろう。その手の人を魅惑する日本のソフトパワーということで。

○今宵は町内会の忘年会。高齢化が進んでいるので、病気関連の話題が多い。そういえば昔に比べて、喫煙者は減ったし、食べる量も少なくなっているような。そういわばワシも3日後が成人病検診であったりする。わが防犯部も、今週末から例の「火の用心」が始まるので、そろそろ若手を入れなければいけないんじゃないか、と思うことしきりである。


<12月13日>(月)

○先週の山形に行った際に、某社の東北支社長さんから伺った話ですが、「東北で仕事をしようと思ったら、地元の祭りと温泉と日本酒の話が出来ないと務まらない」とか。そりゃ、そうでしょう。だって東北は広いんだもの。

○地図を見るときに、普通は県単位や地方単位で見ることが多いと思います。そうすると、「県の大きさ」というのが意外な盲点になってしまうんですね。極端な話、東北地方の地図を見るときは、「岩手県の面積(153万ha)は、四国全部の面積(188万ha)とあんまり変わらないだぞ」と言い聞かせるくらいでちょうどいいと思います。

○東北新幹線が新青森まで延伸されたことを伝えるJR東日本のCMは、駅員さんたちが黙って駅に入ってくる新幹線を迎えて敬礼するという映像で、「あ〜、ホントに長いこと待っていたんだなあ」という感覚がしみじみ伝わってくる秀作だと思います。だってホントに遠かったんだもの。

○それにしてもいつの日か、東北地方の祭りと温泉と日本酒を極める、なんて贅沢をやってみたいものであります。


<12月14日>(火)

○法人減税5%が決まったそうです。このところ「何ひとつ決まらない」などと言われていた菅政権も、いちおうの前進があったということになる。たかが5%、されど5%。これに対して、経済界が文句を言ったら罰が当たります。ついでに言えば、「新経済成長戦略」が嘘つきにならなくて良かった。

○もちろん、これで日本企業の競争力が劇的に改善するわけではないですし、そもそも大企業はそんなにいっぱい法人税を払っているわけでもない(これは全世界的な現象)。それでも日本の法人実効税率が少しでも下がることは、日本経済にとってはポジティブな話です。また、今の民主党政権が"Pro-Business"な政策を打ち出したメッセージ効果も、小さくないと思います。

○講演会の席上などで、昨今の政府に対する苦情として、「経済政策が動いてくれない」といった声を、特に経営者の方からよく聞きます。そういうとき、「政治が動かなくて勿怪の幸いじゃないですか。昨年の今頃を思い出してください。鳩山政権はCO2の25%削減だとか、労働規制の強化とか、高額所得者への増税とか、アンチビジネス政策のオンパレードだったでしょ。それらが動かなくなったということは、こんなにめでたい話はありませんよ」などと言うと、ちょっと黒い笑いが取れたりします。

○先日教わったのですが、「日本企業の追い出し5点セット」という言葉があるのですね。わが国製造業の経営者たちにとっては、「@高い法人税率、A円高の進行(あるいは為替政策の欠如)、B環境規制強化、C労働規制強化、DFTA交渉の遅れ」という5つのトレンドは、「どうだ、お前たち、早くこの国から出て行け〜」と言われているような気がする、とのこと。それだったら政治の停滞の方がまだマシなわけで、笑えない現状といえるかもしれません。

○真面目な話、アメリカの共和党関係者なんぞは、もっとあからさまに「オバマ政権は向こう2年間、これで何も出来なくなった。これはアメリカのビジネスにとって朗報である」なんてことを言います。中には、「これで景気が良くなると、オバマの得点になってしまうかもしれない」などという余計な心配をする人も。そのアメリカでも「ブッシュ減税の継続」で合意が成立したようですが、これは「財政政策が使えない」今のアメリカではやはりポジティブなニュースと受け取ってよいのではないかと思います。


<12月15日>(水)

○成人病検診へ。10〜11月が忙しいものだから、いつも忘年会シーズンになってしまう。1年で一番不健康な季節である。もっとも、「実力テストの前日は試験勉強をすべきではない」の法則から行くと、これはこれで正しいのかもしれない。

○50歳になった記念に、オプションで「血管年齢検査」を受けてみる。現金で3150円也。これが両手両足を縛って圧力をかけ、血圧を測定するという乱暴極まりない検査である。私同様、コレステロール値が高い皆様、これは得難い経験というべきものですぞ。お試しあれ。

○検診が終われば、後は野となれ山となれ。今宵は勤務先の忘年会。で、暴飲暴食、牛飲馬食、鯨海酔候。忘年会シーズンはまだ続くのである。


<12月16日>(木)

○昨今の忘年会は、「個室」で「飲み放題セット」が主流でありますな。個室は確かにありがたい。飲み放題は、必ずしもお得ではないのかもしれませんが、幹事さんとしては予算に目処がつくので、これまた便利だということになります。店の側としては、飲み放題には時間制限をつけることになるので、長く粘られるよりもその方が得だという計算が働く。結果としてお互いが得になるわけですな。

○とはいえ、「飲み放題セット」が可能なのは、チェーン店で酒類の大量仕入れが可能な店に限られるようです。小さな店では、「個室」も「飲み放題」も難しいですわな。そんなわけで、昨今はチェーン店で忘年会をする機会が増えているような気がします。というか、こういう時代に小さな店が生き残るのは容易ではありません。

○「飲み放題セット」を用意するときは、店の側としてはなるべく単価の安いものを飲んでもらいたい。ワインや日本酒や焼酎は、おそらく仕入れ次第ではかなり安く出来る。中華料理の紹興酒なんかも、昨今は常温で飲む人が増えているので、出すときの手間が少なくてありがたいのではないでしょうか。

○逆に店としていちばん困るのは、入れるのが面倒な上に単価も高い生ビールの注文が多いときでしょう。ビールばかり飲む客というのは(ワシなどもそういうことが多いのだけど)、きっと鮨屋でマグロばかり注文するような「困った客」なのかもしれません。

○その点、いちばんコストが低くて店が喜ぶのは流行のハイボールでしょう。なにしろトリスや角をソーダで割るのだから、単価は限りなくソーダ水の値段に近い。店の側としては、涙が出るようなアイテムといえましょう。サントリーもときならぬブームに万々歳なのではないか。個人的には、ワンショットバーで飲むバーボンのソーダ割りなんかはいいけれども、忘年会のハイボールはちょっとなあ、という気がします。


<12月17日>(金)

「国家公務員の争議権に関する懇談会」が本日は第5回目。いよいよ最終報告(←今後、若干の修正が加えられます)をまとめて終了いたしました。やれやれ、ホッ、であります。議事録も今後少しずつ公開されて行きますので、不肖かんべえがどんな発言をしたかも全部オープンになります。お暇な方はどうぞご覧ください。われながら興味深い体験でした。

○ちなみに蓮舫大臣の最終日のファッションは「白」でありました。これまで「白→黒→白/黒→黒」と来てましたから、これがギャンブルなら有り金勝負で「白」に賭けなければいけないところです。

○今宵は田原総一朗さんの忘年会。またの名を「ジャーナリスト生活50周年の会」。不肖かんべえの人生より長いので、これはもう素直に脱帽する以外にありません。思えば「サンプロ」をやっていた頃は、「俺はタハラが嫌いだ」という声をよく聞いたものです。(中には、わざわざ小生をつかまえて、「タハラに言っておけ」と伝言される方もいらっしゃいました。そんなこと言われてもねえ・・・)。ところが、今年の春に番組が終わったら状況は一変し、「日曜の朝が寂しくなった」と言われることが少なくありません。世間の評価というものは、そのくらいいい加減なものであります。

○ところが田原さんご本人はどうかというと、ネット対談に出まくったり、ツイッターを始めたり、だんだんネットの人になりつつあるのですね。テレビというのは、基本的に熟年世代以上が見ているメディアなんですが、今度は急に若者受けするようになってしまい、今年は大学の学園祭にいっぱい呼ばれたんだそうです。結論として、昭和ひとケタ世代はますます元気というわけであります。なにしろ今日だって50本のローソクを一気に吹き消しましたから。

○そうかと思うと今日は、長年にわたって田原総一朗スタッフをやってきた村田信之さんが、目黒区議選に出馬を宣言しちゃいました。びっくりしたな、もう。妻が大臣で、夫が区議というのもなかなかに当世風で良いのではないでしょうか。


<12月19日>(日)

○佐藤優氏がどこかで書いていましたが、欧米人の時間感覚が直線であるとしたら、日本人のそれは円になっているのだとか。それってすごくよく分かる気がします。これはもう、いいとか悪いとかの話ではなくて、絶対に円でなければならない。なんとなれば、年の瀬になるとわれわれの中にある体内時計が、そのことを強烈に告げ始めるのです。

○師走も半ばを過ぎると、「ああ今年ももう終わってしまう」「また新しい年が始まる」という思いが強まってくる。年内にいろんな行事が目白押しになっていて、クリスマスやら、お歳暮やら、大掃除やら、年賀状書きやらを片付けなければならない。普段は気にしないくせに、1年のこの時期だけ「来年の干支」を気にしたりする。そこでふと、「今年はやけに喪中欠礼が多いなあ」と気がつき、「そういえば今年の夏は暑かった」と思い出す。これが典型的な年の瀬の光景というものです。

○世の中全体がそういう風になっている。「年末だから」ということで、今年の流行語大賞が決まり、10大ニュースが選ばれ、今年の漢字が選定される。NHK大河ドラマが最終回を迎え、大晦日には紅白歌合戦が放送される。忘年会があって、酔っ払いが増えて、胃腸薬のCMが流れる。ドリームジャンボ宝くじが発売され、中山競馬場では有馬記念が行なわれる。日本政府は来年度予算を編成し、エコノミストは来年の予想を作らねばならない。(そういえば今週の東洋経済は大変な力作でありますな。勉強させてもらいます)。

○こんな風に時間が円を描いている、ということは、この世が永遠に続くことを前提としています。これがキリスト教圏でありますと、いつの日か最後の審判が到来し、この世の終わりが来ることになっているので油断がならない。その点、この国では1年が終わればいろんなことが水に流されて、新しい年には気分も新しくなるということになっている。日本社会の安定ということは、ひとつはこの時間感覚によるところが大きいと思うのですよね。

○ということで、あと2週間足らずで今年も終わりますが、この慌しい感覚こそが、この世の安定の源なのである。(本当はこんな駄文を書いている余裕はないのでありますが・・・)


<12月20日>(月)

○今日は官邸で菅vs小沢会談が行なわれたようです。大の大人が差しで100分間も何を話していたんでしょうね。古来、政治家同士の対決というのは、意外な長丁場になるものですけれども、いざというときにヘタレな菅さんと、元来が口下手な小沢さんは、いったいどういう会話を交わしたんでしょう。

○政党助成金のことを考えれば、小沢さんが党を割るなら今月一杯で無ければならず、かといって少人数で新党を作ったところでさほど展望は開けない。菅さんの側としても、支持率が2割という危険水域に入ってしまうと、今さら「反小沢カード」を切ってもあまり支持率の浮揚には役立たないだろう。どっちにしろ不毛な戦いになっていて、後は小沢さんが「離党」するのか、「除名」になるのか。その辺で割れる人数は違ってくる、というゲームになるのだけれど、平成の歴史ではこれが何度目の「小沢新党」になるのだろう。

○問題はせっかくの与党内のトラブルであるにもかかわらず、野党側が放置プレイで生ぬる〜く見守っていることです。これはおそらく正しい態度であって、そもそも民主党内の対立には国民が関心を持ってない。TV局としても、海老蔵さんや四川ガンダムの方がよっぽど数字が取れる。なおかつ、予算編成や朝鮮半島情勢もある。そもそも政権与党は、この年の瀬に一体何をやっているのか。

○こうなってしまうと、「大連立」も無理っぽいですね。あたしゃ参院選の直後には「これしかない」と思いましたが、妖怪やら魑魅魍魎やらが跋扈するものだから、どんどん胡散臭い話に思われてきて、魅力のないことこの上ない。この間の事情をこの人が、「ゲゲゲの大連立か、レレレのオジさん内閣か」と、相変わらず絶妙な喩え話をしていて、とても現職の政治家には思われない。(こういうのを見ると、ときどき「実はかんべえ作なんだろう」などと言い出す人がおりますが、そんなことないですからね。念のため)

○ということで、年内にももうひと荒れするかもしれませんが、なるべく政局には関心を持たないようにしたいと切に思う今日この頃であります。


<12月21日>(火)

○朋あり遠方より集う。また楽しからずや。昔は若手社員だった顔ぶれは、今ではIT業界の風雲児やら、出戻り本部長やら、自称・窓際族やら、なんちゃってエコノミストやら、それぞれの立場で偉そうにしている。が、いずれも齢50代に突入し、白髪になったり太ったりしている。そんな顔ぶれが、三々五々、赤坂「ココ」2階に集合する。

○一同座って場決めを行なう。昨今の全自動卓は、点棒の自動表示機までついていることに軽いショックを覚える。さて、ワシらはその昔、どんなルールで麻雀しておったのか。あまりにも久しぶりなので一堂思い出せない。1本場は何点にしてたっけ。オーラス親流れはどうしてましたっけ。協議しながら適当に始めると、案の定、チョンボすれすれのプレイが続出する。それでも、昔ほどレートが高くないのでテンションもさほど高くない。

○店は、昔と同じおばちゃんが差配している。オーダーする際の、「おばちゃん、水割り頂戴。水の薄いヤツ」というギャグまで昔のままである。「大声を上げるな」というトイレの張り紙も、確かに見覚えがある。蘭苑飯店から出前を取れば、昔と同じ「レバ旨煮丼」が来る。食すれば確かに美味なのだが、こんなに盛りが良かったのだろうか。思えば20代の頃は、これにギョーザまで注文していたのだから、我ながら呆れたものである。

○自称・窓際族の先輩が、当溜池通信をご愛読されていて、牌を握りながら「あんたのサイトは何で書き込みが出来んのや」とお叱りを受ける。すいません、ローテクなもので。でも、今宵は好調で良かったではありませぬか。昔の独身寮では、マジで洒落にならない金額が飛び交ったものでありますが。本日の私めの負け分は、タクシー代の方がはるかに痛かったっす。


<12月23日>(木)

○まことに哀れなことに、休日も仕事に励まなければならない。なぜこんなに忙しいかと言うと、実は今週は結構、遊んでいるからである。さらに言えば、この期に及んで新しい仕事を引き受けちゃうからである。この年の瀬に、何を考えているんだテレビ東京よ。

○そういえば、週明け月曜朝の「モーサテ」は、かんべえ&オバゼキ先生のダブルゲストとなりますぞ。ひょっとすると、前日の有馬記念の反省会になってしまうかもしれぬ。番組としては、それでは困るだろうが。あらためて本日発表の有馬の枠順を見れば、ブエナビスタ(4枠7番)とローズキングダム(3枠6番)が隣り合わせになっている。ますます遺恨が重なりそうで、ワクワクしてしまうではないか。

○などと呑気なことを言ってられるのはありがたい次第であって、予算編成が終わらなくて休日出勤している人たちもいる。今年の予算説明会は、どうやら27日になるとのこと。ということは、どうやら目処が立ったということでしょう。休日に重ならなくてよかった。


<12月24日>(金)

○ロシア大使が「私はロシアには詳しくない」と正直なことを言ったために、更迭されてしまうらしい。ふと思い出して、長年、民間の立場から日ロ外交に献身して来られた吹浦さんに質問してみた。そしたら、さっそく今日のブログで説明してくれました。

○要するに今年の夏の人事で、外務省内のロシアン・スクールがとことん排除されてしまった。対ロ政策を担当する人の中で、ロシア語が出来るのは小寺欧州局長以外は誰もいない、という変なことになってしまった。これでは、メドベージェフ大統領の北方領土訪問が予測できないのも無理はない。外務省の現場が悪いというよりは、そういう人事をやった政治家が悪い。岡田前外相が悪いのか、それとも鈴木宗男前外交委員長が悪かったのか、はたまた別の人の意向が働いたのか、その辺のことは私は存じませんが。

○おそらく菅首相としては、「官僚のサボタージュで恥をかかされた」くらいに思っているのでしょう。でもね、罪が深いのは民主党の不勉強な「政治主導」外交でありましょう。なおかつ、反省がないから始末に悪い。下手をすると「鳩山さんをロシア大使にしよう」みたいなことを考えかねない人たちですから。来年2月に前原外相が訪ロしても、たぶん「ああ、また素人が来たよ」と軽くあしらわれるのが落ちでしょう。

○そろそろ下野したほうがいいかもしれませんね。あまりにも学習効果がなさすぎるんだもの。この1年半、日本外交が失ったものはあまりにも大きい。


<12月26日>(日)

○有馬記念、終わる。勝負事のラストはいつも同じで、教訓もいつも変わらない。すなわち、直感は過たない。誤るのは判断である。経済予測も同じであって、後からしみじみ現実に教わることが多い。結果を知ってしまえば、事前の予想が薄っぺらなものであったことが思い知らされる。目を曇らせるものは、いつも我欲である。

○ということで、今年の中央競馬は終わった。でも、来年になれば1月5日に中山金杯があって、また馬券を買うことができる。時間が円を描いている世界に生きるている者は幸いなるかな。負けても、負けても、また明日がある。そして喜怒哀楽の年輪がまたひとつ増えて、愛おしい記憶となって我が身の一部となる。

○ただしこの円の中で生き続けるには、途中であきらめてはならない。勝負は続行しなければならない。来年の暮れもまた、健全な肉体と、熱い心と、空っぽではないお財布を持って、この中山競馬場に戻って来よう。ああ、来年はもう少し賢くなれますように。


<12月27日>(月)

「二人とも、いい年をして何をいがみあってるの。どっちもどっちだよねえ。人間、落ち目になると、他人を叩いてメディアへの露出を増やそうとするのかもしれないけど、そんなことで自分の好感度は上がりませんよ。ホントにどちらにも肩入れできない、見ていて痛いニュースだよねえ」

○さて、このコメントは、菅対小沢でしょうか、それとも麻木対大桃でしょうか。私としては、どっちもスルーしたいところです。


<12月28日>(火)

○たくさん本をいただいているのに、お礼はおろかお返事もしてないので、以下はその一部をまとめてご紹介。


●山県有朋と明治国家 井上寿一(NHKブックス)

司馬遼太郎史観では「悪玉」とされた山県だが、歴史家の評価はけっして低くない。参謀本部を切り離して、統帥権を独立させたことがよく批判されるけれども、あれは軍の政治的中立性の確立を図るために行なったことで、その結果が日清・日露戦争の勝利であったし、その間は軍部の暴走は起きていない。戦前は忘れられた人物であったが、戦後になって「悪玉」として脚光を浴びたという点に、この人物を理解する鍵がありそうだ。

●アメリカ政治とメディア 前嶋和弘(北樹出版)

アメリカ政治研究者の前嶋さんが、とうとう単著を出版された。まだ読んでいないけど、とても楽しみ。新聞記者経験のある前嶋さんだけに、「メディア」を切り口にアメリカ政治に取り組んでいる。本来、政治のインフラであるにもかかわらず、ほとんど政治の主役になってしまっているアメリカのメディア。それを真似しそうな日本。またどこかの研究会でお目にかかりましょう(そういえば早稲田の研究会で宿題を出されていたことを思い出してしまった。どないしょ・・・)。

●マネーの鉄則 岡崎良介(日本経済新聞出版社)

「マーケットウィナーズ」のキャスターを務めていた岡崎さんが、「新衰退国・ニッポンを生き抜く」という副題で、リーマンショック後の希望を持ちにくい時代の投資術を論じている。投資本に興味がない人でも、とりあえずこの「終章」だけは読んでみて損はないでしょう。そこには、「マーケットを見ている人」のリアルな発想が息づいています。

●逆境は飛躍のチャンス 澁谷耕一(PHP研究所)

「妻を亡くしたシングル・ファーザー、48歳で起業する」という表紙を見て、驚いてしまったのです。澁谷さんがそういう方であるとは、露知りませんでしたもので。私もそういう年代に差し掛かっているので、とても他人事とは思えません。松尾文夫さんの勉強会の幹事をしておられたなど、意外な接点も見つかりました。6歳年下の後輩サラリーマンとしては、深く頭を垂れるほかはありません。

●ソウルは今日も晴れのち嵐 大西憲一(東洋書店)

元日商岩井の社員で、在韓生活19年の大ベテラン駐在員による洒脱なエッセイ集。その昔、私が広報室でTradepiaというPR誌の編集担当をしていたときに、毎月、ワールドレポートを送ってくれていた書き手の1人です。「韓国とはかくなる国と見つけたり」という上手投げではなくて、「今日はねえ、こんな経験があったんですよ」という下手投げのフォーム。例えば、韓国には「10回切りつけて倒れない木はない」という諺があるんだそうです。なんだかかの国の男女間の機微が、窺い知れるようではありませんか。


○仕事納めに机の周りを片付けていたら、とりあえず著者献本だけでこれだけ見つかりました。その他、出版社から頂戴したものでは、『ポールソン回顧録』(日本経済新聞出版社)を楽しく読んでおります。まことに感謝しておりますが、とても全部は読めないというのが哀しいかな現実でありまして、以上、御礼とお詫びでございます。


<12月29日>(水)

○月曜に入ったお昼が「たけくま」という中華で、ここは以前はカフェ・ド・ニースというフランス料理店だった。火曜日はインド料理の「タージ」で、ここは以前はシェプリというスイス料理店だった。たけくまもタージも、ランチタイムに心憎い商品構成を用意していて、当然のように繁栄している。ただし赤坂の古い住人としては、以前の2店もちょっと惜しかった感じがする。

○考えてみたら、赤坂界隈でもフレンチやイタリアンはずいぶん閉店している。逆にインド料理やタイ料理の店が増えた。そして中華の店は滅多につぶれない。韓国系はしょっちゅう店が変わるのだけど、全体としての勢力はさらに拡大している。要するに欧州系の料理は苦戦して、その分、アジア料理が繁栄している。まさに昨今の世界経済そのままではないか。

○ひとつにはランチにかける客の単価が下がっている、という理由もあるのかもしれませんな。フレンチなど欧州系料理はやっぱり高いので。実は昨今、「吉野家の牛鍋丼はなかなかよい」という人が周囲に案外と多い。ちなみに吉野家年間400回のこの人は、「やはり牛丼の方が優れているのだが、100円の価格差が云々」と言っていた。ワシも一度、食べてみるべきであろうか。

○これではカフェ・ド・ニースやシェプリが閉店するのも道理であろう。その一方で、永田町黒澤など「ちょい高めの和食」が意外と繁盛していたりもするので、やはりランチの「脱欧入亜」が始まっているのだろうか。


<12月30日>(木)

○B5サイズのThinkpadを買った。初めてのWindows7搭載機である。軽いので持ち運びが便利である。空港のゲートも楽々通過である。こんなことなら、もっと早く買えばよかった。ところが飛行機の待ち時間にPCを開いてみたところ、いつも使っているソフトが使えず、ネットの更新はメモ帳を開いてHTMLで書かねばならないらしい。危うし、溜池通信

○とはいうものの、FFFTPはちゃんと使えるようだ。なにしろこのサイトは、2000年当時のローテクで運営されている。ブログにさえなっていない。おかげで技術に疎いワシでもなんとかなるというのがお値打ちで、この程度のトラブルならば耐えられてしまうのである。ということで、意味もなく更新。

○アナウンスによれば、日本海側は天候不良により、飛行機は「天候調査中」だという。間もなく飛び立つ能登空港行きは、小松空港に回るか、羽田に戻るかもしれないぞと脅しを入れている。この季節にはよくある話である。富山に電話を入れてみると、向こうは晴れだという。天気予報は「雪だ雪だ」と言っているのだが。さてさて、無事に飛んでくれますかどうか。そしてこの更新はうまくいくのかどうか。はてさて。(15:13pm)

○案ずるより産むがやすしで、飛行機は定刻通りに離陸して、定刻通りに着陸しました。富山市は雪は降っておりません。やはり当てになるのは天気予報よりも現地の情報である。立山連峰も見える。ただし空はこの季節特有の鉛色である。今宵からは積もるかもしれませぬ。

○富山空港のレンタカーでプリウスを借りる。自分で運転するのはこれが初めてだが、これがまるでオモチャのように簡単に運転できて面白い。強いて言えば、バックの操作がちょっと難しいか。ちなみに3日間借りて、JAFの割引込みで2万5000円である。リーズナブルな値段ではないかと思う。

○実家に着いて、今頃になって年賀状の宛名書きをする。が、武運拙く、最後は足りなくなってしまいました。御免なさい、や行以降の皆様。後でまた書き足しますので。(22:37pm)










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki