●かんべえの不規則発言



2012年7月







<7月2日>(月)

○せっかく早起きして「ユーロ2012」決勝戦をつけてみたのに、スペインが既に2−0でリードしているではないか。しかもイタリアが、後半早々に投入した3人目の選手がいきなり怪我で倒れてしまう。なんというツキのなさ。あるいは監督の勘が悪いのか。となれば、後は2点の追加点もやむなしであろう。都合4点、イタリアが誇るカテナチオもずたずたであった。

○スペインとイタリア。南欧ではありがちなことに、両国ともデフォルト経験は豊富である。が、どちらもシャレにならない経済大国である。国債金利は今はスペインの方が高いけど、去年の秋はイタリアの方が7%超えであった。あ、それはベルルスコーニ首相がいたからか。ともあれ、借金の競争だけは願い下げである。

○おそらくイタリアは、準決勝でドイツを破った時点で燃え尽きていたのであろう。イタリアがドイツを破った夜、ユーロ首脳会談ではモンティ首相がメルケル首相を翻弄。事前の予想以上の譲歩を引き出して、「政治でもイタリアがドイツを圧倒」などと言われていた。ちなみにその日、ドイツに2点のゴールを決めたFWバロッテリは、モンティ首相と同じ「マリオ」という名前だった。

○面白いもので、欧州危機の行程にはその都度、サッカーが影を落としている。思えばほんの2週間前、ギリシャは対ロシア戦に勝ってトーナメント進出を決めた翌日に、再選挙で緊縮策を訴えるNDを3%差で与党に選んだ。ところがその1週間後には、対ドイツ戦の準々決勝で4−2で敗退し、新たに選出された新首相が「持病のために」EU首脳会議を欠席してしまう。ありえねえ。代理として83歳の大統領が出席する。ますますありえねえ。

○そもそもEUや通貨ユーロは、なんのためにできたのか。欧州が二度と戦争をしなくて済むように、という理想によってできた。今回の欧州信用危機は、昔だったら戦争になっても不思議のない事態である。それこそドイツ軍の軍靴がギリシャを蹂躙したり、スペインの無敵艦隊が地中海に沈んでいたかもしれない。が、今の欧州では、物事はちゃんと会議と選挙で決まる。そして会議と選挙は、限りない頻度でサッカーの影響を受ける。ああ、これぞ欧州。

○ということで、「ユーロ」(危機)と「ユーロ」(2012)に明け暮れた2週間であった。この後、サッカー抜きで「ユーロ」と付き合わなきゃいけないなんて、辛過ぎる!


<7月3日>(火)

○消費税法案が衆院を通過してから早くも1週間。でも国会は、何人が出るだの、誰それは出ないだの、除名なのか党員資格停止なのか、新党はいつ頃できるのかなどと、噂話ばかりで完全に機能を停止している。いくら会期が9月8日まであるにしたって、あまりといえば時間がもったいない。法案はいっぱい積み残しされているんですから。この後は、ちゃんと新党が出来上がって、衆参の役員人事を決めないことには、国対が動けないから国会は動いてくれない。で、いったい何時になったら小沢新党は動いてくれるんでしょうか??

○せめて党名くらいはこちらで考えて差し上げましょう。もちろん、「新政党」は既にリークされてるし、「オリーブの木」は今さら古いし、「一新党」とか「国民生活第一党」なんてのも実際にありそうだし、ひらがな名前が流行っているから「せいかつ党」もアリかなと思ったりするのだけど、そんなことよりもギャグにしたいよね。で、わざわざ当溜池通信が、「小沢新党の名前」を考えてみました。


●できちゃった新党 (ホントは作りたくなかったんだよね。考えてみたら、国会会期中に新党ができるなんて、滅多にあるもんじゃないですわなあ)。

●新党4.0 (新生党、新進党、自由党に続く、小沢さんが作る4つ目の新党です。これだけ続くと、ちっとも新しくはありませんけれども)

●真自由党 (2003年の民由合流以前に戻るという心意気。もちろん「新自由党」でも構いませんよ。え?誰ですか、「小沢と心中党」なんて言ってる人は)

●小沢真理党 (信者の方だけを相手に細々とやって行きます。くれぐれもカルトじゃなくて政党ですから)

●小沢一郎と永田町イレギュラーズ (親玉以外は少年探偵団みたいなものだったりして。おいおい、代貸しや若頭はいないのか)

●OZW48 (本当にこういう案が飛び交っているというから、永田町にも地殻変動やニューウェーブが起きているのかもしれない)

●新党YAWARA (党首はもちろん金メダルのあの人です。そういえば小沢さんはかつて、「御輿は軽くてパーがいい」とおっしゃってましたしねえ)

●東北維新の会 (ここまで下手に出れば、橋下さんも相手にしてくれるかもしれない。「日本維新の会」だと、きっと拒絶されてしまうでしょうから)

●新社民党 (消費税反対、再稼働反対、反TPP・・・あ、そうか、政策的には社民党とほとんど同じなんだ! みずほたん、仲良くしましょ)

●友愛党 (こういう看板を掲げておくと、後から鳩が飛び込んでくるかもしれない。いえ、もちろんお金だけが目当てなんですが)


○これは意外と難しいのかも。


<7月4日>(水)

○講演で長野県松本市へ。梅雨の晴れ間で、アルプスがきれいに見える。そして会場は「ブエナビスタ」。3年前にも来たことがあるが、地元のいいホテルである。そして3年前と同様に、どれが穂高で、どれが槍で、どれが乗鞍か分からないうちに帰途に就くことになる。ああ、もったいない。

○長野県の講演会では、笑いが少ない。受けてないのかと思うと、皆さん真面目に聞いておられる。丁寧にメモを取る人が多く、途中で寝る人はほとんどいない。ちなみに今回は、「欧州危機の話を詳しくお願いします」とのリクエストを事前に頂いている。でも、東京スカイツリーの話から始めます。こっちだって商売だもの。最後に司会の人が「ご質問は?」と聞くと、すぐに手が上がる。これぞ長野、であります。

○その後で懇親会。地元の企業経営者の方々が中心の立食パーティーだが、これも長野風である。まず、上座の段が低い。そして偉い人の話が短い。いろんな方とお話をするのだが、皆さん、ひとしきり話をすると、「では」と身を引いて次の人に交代する。いろんなところで「長野イズム」を感じるのである。

○いつも思うことですが、こういう地域性を発見できるのが、この仕事の面白いところです。日本は本当に多様性に満ちた国です。


<7月6日>(金)

○弊社は来週末に千代田区内幸町の飯野ビルに引っ越しをするのですが、その近所にきわめてよろしくないものがあることが本日、発覚いたしました。

○ううむ、これはいかん。これでは金曜の夕方には、必ず立ち寄ってしまいそうである。あやうし、かんべえ。上海馬券王先生、どうしましょ。

○ところで現在、日本テレビ系列金曜ロードショーでは、『千と千尋の神隠し』を放映している。すなわち、「ジブリの呪い」が起きているのである(当欄の5月11日分を参照のこと)。この後、20分後に発表されるであろう雇用統計は、ひょっとするとマイナスかもしれませんぞ。くれぐれもご用心を。


<7月8日>(日)

○去年の今頃、正確に言うと7月10日、不肖かんべえはいつもの中山競馬場にいた。震災直後、中山は被災して閉鎖されていたのだが、この日は復活したシリーズの最終日。メインレースは七夕賞であった。七夕賞というのは、本来は福島競馬の最終日のレースなのだが、福島競馬場はまだそれどころではなかった。で、中山で行われたレースを見ながら、しみじみ思ったのである。「競馬って楽しいなあ」。「でも、福島の方々には申し訳ないのう」。

○本日は、無事に再開された福島競馬の最終日である。メインは七夕賞である。福島の競馬ファンは、いったいどんな思いでこの七夕賞を迎えたことであろうか。そこで突然に思い立って、朝から上野駅まで出かけて、みどりの窓口で「福島までの往復の乗車券と、やまびこの指定席券」を買い求めてしまった。駅員に「1万7000円です」と言われて、ハッと気が付いた。あ、今日は2万円以上勝たねばならないのか。ちょっとハンディが大きいな。

○今年で30周年を迎えた東北新幹線に乗り込めば、福島駅までほんの1時間半である。車内を見渡すと、さすがに競馬新聞を検討している愚か者はワシだけであったようだ。ちょうど栃木県にさしあたったあたりで、家を出たときのどしゃぶりが晴れ上がった。どうやら「雨の七夕」ではないらしい。よかった、よかった。

○午前11時過ぎに福島駅東口に降り立つ。競馬の下調べはしたが、福島市の下調べをしていない不肖かんべえ、駅前の地図で福島競馬場の位置を確認し、「まあ、歩けるだろう」と判断。日銀福島支店とか、福島県庁などを横目で見ながら歩く。だが、やっぱり遠いのであった。40分くらい歩いてやっと競馬場に到着。競馬場の近くには駐車場がいっぱいあって、「宮城」だの「山形」だの「いわき」だの「熊谷」だの、いろんな場所のナンバーが揃っていて壮観である。ただしこの賑わいも、今日限りなのではないかと思うとちょっとさびしい。

○ところで競馬場のすぐ近くに、「古関裕而記念館」があるので、勝負前にちょっこっと立ち寄ってみた。ワシ的には古関は「六甲颪の作曲者」ということになるのだが(タイガースは今日も負けてしまった。トホホ)、彼が生涯に作曲した歌は5000曲に及ぶ。1909年にこの福島市に生まれ、21歳でコロムビア専属作曲家となり、その翌年には早稲田応援歌の「紺碧の空」を作曲。以下、「栄冠は君に輝く」「闘魂こめて」「東京五輪オリンピックマーチ」など、著名なスポーツ系の歌を多く残している。

○しかるにそれは彼の作品のほんの一部であり、「暁に祈る」「露営の歌」「長崎の鐘」「鐘の鳴る丘」「君の名は」など、多くの主題歌、ヒット作を世に送り出している。さらに言えば、この時代にはありがちなことだが、戦意高揚のための軍歌も大量に作っていて、「ラバウル海軍航空隊」なんぞも彼の作品であったりする(こういう点、斎藤茂吉なんかも同様なんですよねえ)。それからつい先日、「ザ・ピーナッツ」の伊藤エミさんが亡くなられましたが、映画『モスラ』の歌も古関作品と聞くと、いったいどういう種類の才能だったのか、とにかく唖然とするほかはない。

○記念館の展示場には、古関の仕事場が再現されている。ピアノなどの楽器は一切なく、普通の日本間に和机が3つ用意されていて、それぞれに違う楽譜が乗っかっている。多忙だった古関は、静かな家屋の二階で、楽譜だけをにらみながら、同時並行的にいろんな作品をスイスイと作っていたらしい。音楽界の松本清張というべきか。

○さて、それはさておいて勝負である。入場料100円を払って福島競馬場に入る。作りは至ってシンプルであるが、パドックが屋内に設置されていて馬を至近距離で見られることに感動する。手を伸ばせば、馬に届いてしまいそうな距離であって、わが柏レイソルの日立台グラウンドみたいである。もうひとつの感動ポイントは、地元紙の「福島民報」と「福島民友」が競馬予想をしていて、それがスポーツ紙と競い合っていることだ。それが2位と5位なんだから立派な戦績というべきで、ちなみに1位はデイリースポーツであった。

○ということで7レースから買い始めて、しばらくは一進一退である。9レース織姫賞、10レース彦星賞と進んで、いよいよ11レースが七夕賞だ。普通だったらDトーセンラーが黙って勝たなきゃいけないところなるも、一筋縄でいかないのが七夕賞である。昨年は単勝2倍人気のキャプテントゥーレが12着に沈み、7番人気単勝17.7倍のイタリアンレッドが勝利している。その前の年には、ドモナラズなる馬が重賞初勝利し、アナウンサーが「ゴール前はドモナラズ、ドモナラズ!」と絶叫したこともある。とにかく万馬券が簡単に出てしまう。今日も普通の買い方では無理っぽいと見た。

○そこで唯一の牝馬、Gアニメイトバイオから買ってみた。単勝23倍である。どうだ、ワイルドだろ〜。が、もっとワイルドな、単勝54倍のアスカクリチャンが来てしまった。何なんだそれは! しかも中京で行われていた本日もう一つの重賞レース、プロキオンステークスでは、単勝119倍の無印馬、トシキャンディなんかが来てしまっている。ワイルド過ぎて、たっ、立ち直れませ〜ん。

○福島駅に戻って新幹線のホームに立っていたら、「あなたの旅がふくしまの元気です、応援ありがとう」という幟がかかっていた。いや、私はただ競馬がしたかっただけだし、今日はJRとJRAを儲けさせただけで、地元経済にはほとんど貢献していないのでありますが・・・。


<7月9日>(月)

○久々にアメリカ政治ネタを。

○先週の雇用統計ではNon Farm Payrollが8万人増。3か月連続で二桁台に乗らず、こりゃもう季節調整値や暖冬の影響などではなくて、企業マインドが冷え込んでいるとしか思えない。これはオバマさんにとっては辛いニュースであろう。

○そんな中で、カール・ローブが中心になって反オバマキャンペーンのテレビCMを用意して、「経済無策」攻撃を始めた模様。で、どんなCMかというのは下記をご参照。

http://atr.rollcall.com/crossroads-gps-begins-gargantuan-anti-obama-tv-push/ 


“America’s jobless rate is still too high,” says a female narrator backed by gloomy music. “Barack Obama’s got lots of excuses for the bad economy.”

The ad then shows a montage of Obama talking about reasons the economy has not been doing as well as it could be, including “headwinds coming from Europe,” “a string of bad luck,” “an earthquake in Japan,” “an Arab Spring,” among others.

The female narrator then comes back in: “But Obama never blames Washington’s wild spending and sky-rocketing debt. Tell Obama, for real job growth, cut the debt.”

The new ad is backed by about $8 million, but another ad could be swapped into that buy.

Today, the Bureau of Labor Statistics announced a worse-than-expected jobs number, while the unemployment rate remained at 8.2 percent.

Explaining why the economy hasn’t gotten better faster has been a key ? perhaps the key ? challenge of Obama’s re-election campaign against presumptive GOP nominee Mitt Romney.


○今年の米国選挙のテーマは「雇用か、財政か」。共和党系は「オバマは経済無策。そんなことより、とにかく支出を減らせ」「ところがオバマ大統領は言い訳ばかり」という非常に分かりやすいメッセージを繰り出している。これに対する反撃は簡単ではないと思う。

○この手のパンチの利いた政治CMは、なかなか日本ではできませんねえ。今だったらネタは豊富にあると思うのですけれども。


<7月10日>(火)

○私どもオタク族の間でも、「今年の米大統領選は面白くないねえ」という声がしばしば飛び交う。なにしろ、「実績の乏しい現職」対「魅力のない対抗馬」の争いですから。ついでにいえば、2008年の激戦に比べれば、どうしたって見劣りがしますわなあ。

○で、今年はこっちの方が面白いんじゃないかと思い始めたのが、「中国共産党大会の人事予測」である。中国共産党政治局常務委員会のメンバーと順位が、どんなふうに決まるか。順列組合せは無限と言っていいほどあるし、何より水滸伝みたいにキャラクターが大勢登場するのでまことに奥が深い。ちなみに、中国共産党大会でどんなふうに人事が行われるかは、5年前の党大会で溜池通信が取り上げたこの号の説明が参考になるだろう。

○アメリカ大統領選挙はボクシングのような一対一のゲームであるし、情報量も豊かなので、誰でも楽しめる。ところが中国共産党人事の予測は、非常に複雑なうえに情報がごく限られていて、誰でも参加できるというものではない。それでも、チャイナウォッチャーたちがやっている予測を覗き見してみると、こんなところが焦点となっているらしい。


●「習近平(総書記)、李克強(国務院総理)」の二人はほぼ決まりとして、序列は「1位、2位」か。それとも兪正声(全人代委員長)あたりを間に挟んで「1位、3位」か。

●それ以前に9人制の政治局常務委員会を7人制に減らすという説もあり、この辺も意見が割れるところ。

●王岐山の扱いも意見が分かれる。米中戦略経済対話で対米関係を仕切った実力者なるも、「常務副総理」辺りで比較的高位になると見る向きもあれば、「圏外」とする向きもいる。

●共青団系の切れ者、李源潮、汪洋をどのあたりのポジションに使ってくるか。中央政法委書記やら、中央紀律検査委書記やら、イデオロギー担当やら・・・。

●初の女性常務委員は誕生するか。年齢は少し高いが、劉延東は党内に敵が少なく、中国が開かれてきたことを示す意味でも、強く推す意見があるとの声も。

●高速鉄道事故の処理でミソをつけた張徳江は、ゴマすりの効果あらたかにして復活なるか。願わくば政治協商会議主席あたりをひとつ・・・。

●第6世代の星、胡春華、孫政才あたりの大抜擢はありやなしや。あれば10年後には「ポスト習近平」の座が濃厚に。


○ね、結構、ハマるでしょ? あちらを立てればこちらが立たず。この辺の人事の面白さ、日本の組織に務める人なら、なじみが深いところでありましょう。ということで、今年の指導者交代劇においても、「東風は西風を圧する」(古い!)ということになってしまうのではないか。米大統領選オタク、危うし!


<7月11日>(水)

○本日発足した小沢新党こと「国民の生活が第一党」(比例代表で記入するときは、どうやって略するんだろう?「国生第一」?)には、とっても深い不幸が揃っているような気がする。ちょっと数えてみましょうか。


@手足がない。新党の分裂→立ち上げはこれで4回目。新生党には自民党時代の後援会が、新進党には公明マシーンが、自由党にはみずからのカリスマが、民主党には労組マシーンがついていた。ところが「国生第一党」には手足がない。これでは候補者が、選挙区にポスターを貼ることもできないではないか。

Aカネがない。あわゆくば分党をと思って粘ってみたけれど、野田首相にあっさりダメ出しされた。これでは政党助成金も、来年1月までもらえない。分党だったら、財産分与があった上に7月分の政党助成金が入ったのに。もう70歳になって、引退も考え始めたこの時期に、自分の財産に手をつけなきゃいけないかもしれない。ああ、もったいない。

B人もいない。以前は自分についてきたベテランのほとんどは敵に回り、「せめてこいつは・・・」と思った部下も、軒並み民主党残留を選択している。入ってくるのは、自分で選挙を戦う術を知らない、指示待ち族のチルドレンだけ。かくなる上は、質より量を求めるしかないが、量を増やせばそれだけコストが増える。なおかつ、ほとんどは再選されることなく、投資はムダ金に終わる公算が大である。

C信用もない。政界離れ鳥を20年もやっていたら、永田町の主だった人のほとんどを敵に回してしまった。かくして橋下さんも石原さんも渡辺よしみさんも、提携にはドン引きになっている。なんとか不信任案を出したところで、自民党も乗ってはこないだろう。マスコミも日刊ゲンダイ以外はほとんどが敵になってしまっている。

Dところが看板はある。反消費税と脱原発を訴えれば、そこそこ支持が集まるかもしれない。だったらここは、頑張ってみるしかない。1993年の国民福祉税騒動で、消費税率を3%から7%に上げようとしたことや、平岩東電会長の信認が厚かったことはこの際言いっこなし。

Eしかも裁判もある。秋ごろには公判も始まるだろうけれども、それと選挙が重なったらどうすればいいのか。

Fタイミングも悪い。せっかくの党の旗揚げの日にパンダが死んでしまうとは。縁起でもないし、ニュースバリューも持って行かれてしまった。


○これだけ運の悪い新党の旗揚げもめずらしい。といって、同情する気にもなれませんな。当サイトとしては「憎しみ」ではなく、「愛」の反対語である「無関心」でもって船出を見送るものであります。


<7月13日>(金)

○会社の引っ越し作業。今日が赤坂オフィスの最終日。週明けからは内幸町となります。

○で、昔のものを整理していたら、2008年夏から09年秋にかけて使っていたノートが出ていた。なかにはこの不規則発言で書いてしまったネタもあるのだが、この辺はまだ書いてないんじゃないかと思われるものを以下、ご紹介。


●坂本竜馬が本当に「万国公法」を読んでいたとはとても思えない。(黒鉄ヒロシ氏)

――そりゃあ、あの人は「耳学問」ですから。一種のジャーナリストもしくは編集者でありますわな。


●情報の世界には失敗のフィードバックがない。なぜなら大っぴらに言えないから。(外交安保サマーセミナーでのメモから)

――インテリジェンスの仕事は意思決定のためにあります。意思決定が済んでしまえば、情報は不要になるのです。


●ガンジス川と黄河とリオグランデ川は、海までたどり着かない。(商船三井さんで聞いた話)

――地球温暖化でチベットの雪が解けたら、ガンジス川は干上がりますな。


●秘密の9割は自分の口から洩れる。(佐藤優氏)

――人に言えない秘密を持っている人は、心しましょう。


●社会の階段を上っていく途中で、出会う人たちに親切にした方がいい。落ちていく途中で再び会うだろうから。(出典不明)

――たぶんサムエルソンの『経済学』の中で引用されていた言葉だったと思います。


●商社の経営の基軸は、脇は甘く、懐は深く。(業界誌『商社レポート』)

――この境地が理解できるようになったらベテランです。


●ネットの中にあるのはすべて過去の遺物。情報革命はむしろ脳の保守化を生んでいる。危機に対して必要なものは覚悟。(養老孟司氏)

――同感です。


●新築住宅の価格は、ディベロッパーの希望価格。中古住宅の価格は、市場が決める価格。(『失敗に学ぶ不動産の鉄則』幸田昌則氏から)

――新築物件にこだわるのは損な道というわけ。


●退却するロシア軍に注意。籠城する日本軍は強い。(日ロ関係に関するメモ)

――そりゃあ、うまく行かないはずですわ。


●アメリカの持ち家比率は歴史的に65%が上限。民主党政権で上がって、共和党政権で下がる。だからブッシュJr.政権は異例だったんです。(林芳正氏)

――リーマンショックの遠因はここにあったのか。


●痛いはダイヤモンド。(西原理恵子氏)

――最近、この心境が理解できるようになってきました。


●米中戦略経済対話は、日米構造協議に似ている。(アメリカ研究会でのメモ)

――相手を教育しようというアメリカの情熱は不変です。そしてそれが報われないことも・・・。


●紳士はすべからく「振り」と「真似」から始まる。(走り書き)

――要するに「やせ我慢」ということであります。武士道と一緒ですな。


●感謝は恵まれた者の特権である。(走り書き)

――「ありがとう」と言えることに感謝しましょう。


<7月16日>(月)

○連休は法事で富山へ。久しぶりに会う親戚多し。なぜか『ローマ人の物語』の話が盛り上がる。妙な親族である。

○旅行中に読んだのが『チャイナ・ナイン』(遠藤誉/朝日新聞出版)。題名通り、「中国を動かす9人の男たち」(中国共産党中央委員会政治局常務委員会)についての本。著者の遠藤氏は、中国で生まれて、国共内戦のなかで九死に一生を得ている。文字通り生涯をかけて中国と付き合ってきた人が、かの国の業の深さの一端を語っている。お勧めです。

○『金融大冒険物語』(浜矩子/毎日新聞社)も面白い。LIBORの不正で大揺れのザ・シティだが、この町の金融資本主義を作ったのは海賊紳士たちである。そんな歴史を知ると、「なるほどねえ」という気にさせられる。

○それにしてもこのLIBOR疑惑、おそらくは業界ぐるみで守ってきた慣行で、典型的な「囚人のジレンマ」だったのだが、よりによって最大手のバークレイズが「一抜けた」と言わんばかりに和解に動いたのは面白い。いつまでも、あると思うなムラ社会。

○それにしても暑い週末である。これはもう梅雨は明けちゃったんじゃないだろうか。来週は町内会の夏祭り。あんまり暑くなりませんように。

○ああ、明日は新しいオフィスに出勤だ。と思ったら明日は文化放送の出番があることを思い出す。危ないところであった。完全に忘れておりました。早起きせねば。


<7月17日>(火)

○LIBOR操作疑惑、しみじみ大相撲の八百長事件に似ている。その心は、@昔からあったし、Aムラの関係者はみんな知っていたし、Bでも、今はメールという証拠物件があるから逃げられない。大相撲の八百長事件は、「最初は強くぶつかって、あとは流れでお願いします」などという文面が見つかってしまい、さすがに隠し切れなくなった。今回の事件でも、「いやあ、助かった。今度、一緒にシャンパン呑みに行こ」みたいなメールが見つかっているらしい。これでは弁護のしようがありませんな。

○エネルギー政策聴取会で、電力会社の人はたとえ抽選で選ばれたにしても、意見を言ってはいけないのだそうだ。それって、「ここは素人さんだけが意見を陳述する場所です。プロの方が来るところじゃありません」ということなんでしょうか。いくらガス抜きのセレモニーにしても、それでは「国民的議論」という言葉が泣きますな。もっともそういう場所に来る素人さんは、「プロの意見を聞いたら耳が穢れる」(もしくは、自分が説得されてしまうかもしれないから嫌だ)などと思っているのかもしれませんが。

○国会事故調の報告書、ぼちぼち読んでますがガッカリ感は否めない。事故がMade in Japanであったという理屈は分からんではないですが、あれだけの事故の原因を「要はお前の性格が悪かったのだ」と言われても、それではあんまりではないですか。性格は直せない。せいぜい気づくことができる程度。日本人辞めますか、それとも原発止めますか。

○野田首相という政治家の資質は、良い点も悪い点も彼の鈍感さにあるのでしょう。与党・民主党にとっては、彼の鈍感さが必要だ。でないと、何も決められないで、時間だけを浪費することになる。日本政府にとっては、もう少し鋭敏さが必要だ。でないと無用な反発を買い過ぎて、持続可能性に欠ける。総理の鈍感さをいかにうまく使うか、という視点が必要なのではないか。


<7月18日>(水)

○民主党からの離党ドミノが止まらない。「ノダの泥船」から抜け出そうと、衆議院議員のみならず、参議院議員も来年夏を控えて焦り始めているのでありますな。一部にはとりあえず無所属に転じて、「石原新党心待ち」「維新の会予備軍」なんてのもいるみたいです。なんとも見苦しい光景だと思います。

○こんな風に新しい会派や新党がバンバン作られるのでは、はっきり言って覚えてられませんな。ふと気がつくと、あれだけ大騒ぎして船出した「国民の生活が第一」党も、ホームページはおろかロゴさえ作っていない。というか、そういうものが見当たらない。政党作るのも4回目となると、あまり熱意が湧かないのかもしれません。

○さて、今日はどの党が何人になったのか。いちいち計算するのが面倒なので、リンクを張っておきましょう。これは便利かもしれない。

●衆議院:会派別所属議員数

●参議院:会派別所属議員数

○なんと参議院では、「みどりの風」が誕生したので、「民主党・新緑風会」が88議席、「自民党・たち日・無所属の会」が86議席と2議席差になった。自民党が新党改革あたりをとりこめば、いきなり並んでしまうではないか。いや、そんなことをしなくても、この夏のどこかでまた離党者が出て、第一党が逆転してしまうだろう。そうなると参院議長も交代で、またまた面倒なことになる。これでは輿石幹事長もあほらしくてやってられませんな。

○ということで、まことに情けない政局でありますが、こんな風に皆がジタバタしているのも今のうちで、おそらく来週末からロンドン五輪が始まると、政治に対する関心はすぅーっと消えていくんじゃないでしょうか。これは万国共通の現象でして、アメリカ大統領選挙も五輪中は休戦状態となるのが吉例です。烏合の衆諸君は、動くんだったらあと1週間ですぞ。

○うまくしたもので、五輪が終わる8月12日ごろに、ちょうど社会保障と税の一体改革法案の採決が来る感じです。そこからがまた「よーいドン」ということになりそうです。


<7月19日>(木)

○大阪の橋下市長のことは、あたしゃ普段からあんまり興味はないんですけれども、なかなかにダメージコントロールの上手な人ですね。他人を攻撃するのも上手ですが、自分がしくじったときの身の処し方がすばやくて、要はちゃんと「損切り」ができる人なんですな。

○反原発再稼働の旗を降ろした時も、今回の女性スキャンダルの時も、スパッと謝っている。なかなかできることではないですよ。普通の人は、「組織」の一員として行動しちゃうので、誤りを認めるまでに時間がかかったり、第三者に通用しないような屁理屈をこねて、かえって心証を悪くしたりする。なにしろ昨今は、そういう例は枚挙にいとまがありませんからなあ。

○そういえば、「コンプライアンス」という言葉は「法令順守」と訳されていますけど、あれは単純に「組織防衛」と考えればいいんだそうです。四の五の言わずに、とにかく組織を守るための最善策を考えろ!という発想で割り切って行動すれば、火に油を注ぐような例(大津市教育委員会など)はかなり少なくなるでしょう。

○で、橋下氏は行動の原点がいつも個人なんで、その辺の出る引くに迷いがない。普通なら炎上しちゃうところを、上手に踏みとどまっているように思います。ダメージコントロールということを、学ぶべき個人や組織は少なくないような気がします。


<7月20日>(金)

○新しいオフィスに出勤して1週間。今日は珍しく残業。仕事が終わってから虎ノ門側に出て、ぶらぶら歩くとすぐに新橋駅である。このあたりは、安くて良さそうな店が多い。金曜の夜ということもあり、どこもにぎわっている。ホントにサラリーマンの街である。

○そこでふと思いつき、烏森の「はづき」を覗いてみた。いやー、ものすごく久しぶりだから、あの店なくなっているかもしれないな〜、と思ってみたら、ちゃんと看板があった。おそるおそるドアを開けてみたら、なんと店は満員御礼で、カウンターに一人分だけ席が空いていた。

○岸本ママとしばし談笑。「えー、この前来たのはいつだっけ?」「きっとリーマンショックの頃だよ」「それって4年前?」「キムタクが総理大臣をやるドラマをやってた頃」「そうそう、オバマとヒラリーはどっちが勝つのかって話をしてた」。

○なんとそれは、2008年7月14日のことであった。ホントに4年ぶりであったことが判明。七夕どころじゃありませんな。あの小さな店も、リーマンショックと「3/11」を乗り越えて繁栄していることが判明した。もちろんお値段は以前と同じ。さすがは新橋、である。


<7月22日>(日)

○この週末は涼しくで過ごしやすかったですな。当町内会では恒例の夏祭りがありましたんで、雨はかろうじて降らず、あんまり汗もかかないで済むという、まことにありがたい日和でありました。これが先週だったら、暑くて熱中症になっていたかもしれません。これだけ涼しいと、ビールの消費量が伸びないんじゃないかと心配しましたが、打ち上げは例年通り盛り上がっていたような。

○今年の夏祭りで最も感動したのは、「テント」であります。いやあ、なんという技術革新でありましょうか。小学校時代のテントを思い出していただきたい。重くて、部品が多くて、組み立てるのが大変だったでしょ? それがアルミ製の軽いフレームで、部品はすべて一体型であり、パカッと組み立てて一丁上がりなのである。なおかつ1万5000円くらいだとのこと。アウトドアブームは、こんな新製品を生み出しているのであります。

○高齢化が進むわが町内では、今年は「喪中」の家が多くて、結構やりにくいところもあったのですが、その一方で若手の参加者も増えてきました。ワシももう50代なんで、いい加減「若い人」と呼ばれるのは困ったものだと思っていたのですが、これでようやく「中堅」くらいに出世したのかも。

○さて、今宵はとっとと休んで、明日は早起きして「モーサテ」です。


<7月24日>(火)

○この話の元ネタは、平田竹男早稲田大学教授(元日本サッカー協会専務理事、元経済産業省課長)で、さらに言うと経済倶楽部講演録2012年7月号に書いてある話なんですが、先日から人に教えるたびに驚かれます。もちろん、私も自分がビックリしたから言いふらかしている次第で、なるべく多くの人が知っておいた方がいいかもしれません。ということで、この欄でご紹介いたします。題して「なでしこジャパンは、なぜW杯で勝てたのか」

○昨年の女子ワールドカップの決勝トーナメントは、下記のような日程でありました。


<準々決勝>

●7月9日(ヴォルスブルク) ドイツ0x日本1→日本

●7月9日(レバークーゼン) イングランド1(3)xフランス1(4)→フランス

●7月10日(アウグスブルグ) スウェーデン3xオーストラリア1→スウェーデン

●7月10日(ドレスデン) ブラジル2(3)xアメリカ2(5)→アメリカ

<準決勝>

●7月13日(フランクフルト) 日本3xスウェーデン1→日本

●7月13日(メンヘングラートバッハ) フランス1xアメリカ3→アメリカ

<決勝>

●7月17日(フランクフルト) 日本2(3)xアメリカ2(1)→日本


○よくよくご覧くださいまし。日本は3試合がヴォルスブルク→フランクフルト→フランクフルトと移動が楽で、しかも中3日、中3日という日程でした。ところがアメリカは、3試合がドレスデン→メンヘングラートバッハ→フランクフルトという強行軍であり、なおかつ中2日、中3日という日程でした。ちなみにドレスデンは旧東ドイツ、メンヘングラートバッハはフランスとの国境近くなので、移動距離は600キロもあります。さらにフランクフルトへは250キロ。これに比べて、日本はドイツ中心地のヴォルスブルクからフランクフルトへ、360キロの移動が1回だけでした。

○なぜこんな不公平が生じたかと言うと、主催国であるドイツは最初から、自分たちが決勝に進出するつもりでこのトーナメントを組み立てたのですね。そしてアメリカを仮想敵に仕立てて、彼らが移動で疲れ果てるような日程を組んでいたのです。どっちが有利かは、言うまでもないですね。

○ドイツの誤算は、準々決勝で番狂わせがあり、日本に負けてしまったことです。お陰でなでしこジャパンはラッキーしました。優勝はもちろん彼女たちの強さの表れですが、W杯のときに日本はマッチメイクで恵まれていたのです。逆に言えば、アメリカはまことに不運でした。まさしく、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

○それでは「なでしこ」は、ロンドン五輪ではどうやって勝てばいいのでしょうか。平田教授は、こんなアドバイスをしています。「F組の3試合では、1位ではなく、2位になること」。これも日程表を見れば一目瞭然なのです。


<予選リーグ>

●7月25日(コベントリー) 日本xカナダ

●7月28日(コベントリー) 日本対スウェーデン

●7月31日(カーディフ) 日本対南アフリカ


○できればカナダと南アフリカに勝って、スウェーデンにはわざと負ける。2位で決勝トーナメントに進出すると、後が一気に楽になります。


<準々決勝>

●8月3日(グラスゴー)F組1位(スウェーデンか日本?)xG組2位(アメリカかフランス?)→勝者A

●8月3日(カーディフ)E組2位(ブラジルかイギリス?)xF組2位(スウェーデンか日本?)→勝者B

<準決勝>

●8月6日(ロンドン)勝者Ax勝者B

<決勝>

●8月9日(ロンドン)


○2位で予選リーグを通過した場合、「コベントリー」(中2日)→「コベントリー」(中2日)→「カーディフ」(中2日)→「カーディフ」(中2日)→「ロンドン」(中2日)→「ロンドン」で決勝まで上がれます。これだと、なんと移動は2回だけで済みます。他の強敵と当たるときに、これは有利な条件と言うべきでしょう。ちなみにF組1位になってしまうと、スコットランドのグラスゴーまで行かねばなりません。

○平田教授曰く。「試合会場が移動するといったら、荷物をまとめて、ベッドも変わり、枕も変わる。トイレの場所も、ご飯を食べる場所も変わる。これは大変なことなんです」。ギリギリのところで戦っているアスリートたちにとって、移動による負担はそれほど重い。言われてみれば、「なあんだ」って話ですけど、サッカーというビジネスの恐ろしさの一端が垣間見える気がしませんか?


<7月25日>(水)

○今週のTIME誌アジア版の表紙はこれです。

http://www.time.com/time/covers/asia/0,16641,20120730,00.html 

○カッコいいよね。そして記事はこちら


The Swift Kicker Behind Japan's Women's Soccer Rise

Homare Sawa lifted Japan with a World Cup win -- and put women's football on the map


○昨晩のなでしこジャパンは無事に緒戦を突破しました。あとは昨日の平田教授のアドバイスに留意して、トーナメントを目指してもらいましょう。


<7月26日>(木)

○当社アメリカ人社員のJ君は、日本語堪能で日本人の思考パターンがよくわかっているのはいいのだけれど、ここぞというときに押しが弱く、ついつい周囲の空気を読んでしまったりする。その結果、仕事でフラストレーションを抱えるのはいいのだけれど、デートまではこぎつけるのに、なかなかガールフレンドができないらしい。見るに見かねた中年オヤジ氏の忠告。

「J君ねえ、君はもっと押しが強くないといけないよ。アメリカ人なんだから、オスプレイでいかなくちゃ」

○J君は、「それ、面白いっすねえ」と軽く流していましたが、その場にいた日本人の中には、「押すプレイ」のダジャレがわかってない人もおりましたなあ。

○で、問題のオスプレイなんですが、米海兵隊の立場からすれば、オスプレイが落ちるときに真っ先に死ぬのは米兵なんで、なんで日本人が導入に反対するんだ、関係ないだろ、ってところなんでしょう。でも原発や消費税でもTPPでも、簡単に「押すプレイ」が通らない、っていうのが日本社会であるわけでして。ついつい分かる人だけが苦しむことになってしまいます。

○懲りない中年オヤジ氏、「今度、J君を渋谷のガールズ焼肉に連れて行く」などと言っておりましたが、そんな魔の手が迫る前に、善良なJ君にピッタリの女性はどこかにおりませんかねえ。

<追記>ちなみにJ君はアラサーでイケメンです。足りないのは「押しの強さ」だけです。


<7月27日>(金)

○日本人よ、もっと自分たちに自信を持ちましょうや、という小文を産経新聞「正論」に寄稿しました。

●日本は「富」で堂々の金メダルだ。 http://sankei.jp.msn.com/sports/news/120727/oth12072703190000-n1.htm   

○「なでしこ」ばかりか、男子もスペインに勝っちゃうんだもん。こりゃあ、円高ですわなあ。ロンドン五輪もどんと来い、ということでまいりましょう。


<7月28日>(土)

○ロンドン五輪の開会式を見ちゃいました。いいですねえ。選手入場とか、聖火リレーとか、ついつい見てしまいますなあ。注目の聖火最終ランナーは、「7人の若者アスリート」という手でありました。うーん、やっぱり「この人」と決め打ちできる人がいなかったのでしょうか。セカンドベストの選択という気がします。

○そして初日は柔道の軽量級。これがまたよろしい。外国人同士の戦いであっても、ちゃんと柔道になっているし、礼もつくしている。そして速くて、真剣勝負である。これだけ多くの国で浸透している柔道とは、なんと幸福な競技でありましょうか。

○こんな風にオリンピックが始まってしまうと、ほかのことはどうでも良くなってしまいますな。とりあえず政治のゴタゴタなんてどうでもよろし。ちょうど五輪が終わる頃が消費税法案の採決で、そこでまた民主党議員の造反やら離党やらが出て、政局はそこからということになります。

○アメリカの金融政策もおそらくは同様で、昨日の4‐6月期GDPは予想の範囲内でした。おそらくは来週の雇用統計もノーサプライズで、8月下旬のジャクソンホール会議から動き出すんじゃないでしょうか。QE3があるかないか、というのはその先でありまして。

○オリンピックと必ず重なる米大統領選挙では、「五輪期間中はお休みモード」というのがお約束です。ロムニーさんはロンドン五輪に出かけて、この間に海外で得点をと考えたみたいですが、さっそく失点してしまったみたいです。

○要は五輪期間中は、無粋なことを考えるな、ということのようです。


<7月30日>(月)

○ついつい見てしまいますな。この週末も、炎天下の柏祭りには目もくれず、ロンドン五輪のテレビ観戦に終始してしまいました。

○日本はまだ金メダルがまだありませんな(メダル獲得状況はここをご参照)。でも、焦ることはございませんぞ。

「銀という字は、金よりも良いと書く」

「銅という字は、金と同じと書く」

○単なる気休めなどと言うなかれ。金に執着し、金を得ようとする人生は、得てして金に支配される人生になってしまいます。まして自分が努力しているわけでもない我ら凡俗が、他人の成功不成功に一喜一憂するのも変な話です。贔屓の引き倒しでメダルへの期待をあおっておいて、違う色のメダルに内心悔しがっているアスリートにコメントを求め、「でも勇気をもらいました」なんていうまとめ方は、感心いたしませんなあ。

○たまには結果を気にせずに、スポーツを見るのもいいものですぞ。矢を射る瞬間のアーチェリー選手の表情なんて、ほれぼれしますなあ。この一瞬のために、彼らにはどれだけ長い鍛錬の時間があったことか。そんな人生を選ばなかった者の一人として、敬意を払って見させていただくほかはありますまい。

○たまたま今宵は、会社のY先輩の「ところ払いの会」と称する送別会であった。58歳で退職して故郷に帰るというのだが、「これだけ好き勝手をやってきて、早期優遇措置をもらって会社を去るワシは充実しておる」とのたまう。確かに、社長になった人が偉いとは言えない。この年になると、さすがにその程度のことは分かるのである。


<7月31日>(火)

○「オリンピック期間中は選挙戦はお休み」の法則に従って、ロムニー候補は外遊している。ところがその先々でトラブルが発生。外交をネタに得点しようというのは簡単ではないようです。

○まず最初は英国。自分がソルトレークシティ五輪の責任者だったので、ロンドン五輪の開会式に出席するという狙いは悪くなかった。ところがメディア取材に対して、「ロンドン五輪は警備に問題があるよねえ」などと言ってしまい、キャメロン首相からこんなカウンターパンチを食らってしまった。

"We are holding an Olympic Games in one of the busiest, most active, bustling cities anywhere in the world. Of course it's easier if you hold an Olympic Games in the middle of nowhere"

「われわれ世界で最も多忙で、元気で活気に満ちた都市で五輪を開催している。なんにもない場所でやるんなら、楽でいいよねえ(ユタ州は何もないでしょ)」。

○次なる訪問先はイスラエル。30年来の知己であるネタニヤフ首相と仲のいいところを見せて、「イスラエルは友邦だ(だからユダヤ人およびエヴァンゲリカルの皆さん、よろしくね)」という国内向けメッセージを発信することが目的。だから、「イランへの軍事攻撃も支持するよ」とリップサービス。ただしイスラエル側としては、米国の同国支持は超党派の課題でないと困るので、かかる前のめり姿勢は痛しかゆし。だいたい、モノホンのアメリカ大統領が、中東での(核)戦争を歓迎するはずないじゃありませんか。

○3番目の訪問先はポーランドである。イギリスは最古の同盟国、イスラエルは影響力最大の同盟国、でもポーランドはなんで? 消息筋に聞いたら、「対ロシアのミサイル防衛計画などで価値があるし、そもそもロムニー政権は同盟国を大切にする(オバマはちょっと粗略でしょ?)、という姿勢を示すこと」が重要なんだそうだ。なるほどねえ。

○一方でロムニーが大統領になると、「オバマは太平洋大統領だったが、私は大西洋大統領」などと言いだしそうで、その辺がちょっと心配であったりする。外交は難しいのだ。









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by Tatsuhiko Yoshizaki