●かんべえの不規則発言



2023年11月






<11月1日>(水)

〇本日は内外情勢調査会の講師で立川市へ。ワシの学生時代に比べて、国立市も国分寺市も大いに立派になっているのだけれども、立川市はそれらをはるかに上回る。駅で降りてからの世界がとっても広い。1980年代は普通の地方都市だったんだけどねえ。

〇立川駅にはJRの中央本線と南武線と青梅線が入っていて、多摩都市モノレールもある。交通の要所であるだけでなく、戦前は軍関係の施設が多かったので使える土地が多かった。そういえば柏市も似たようなところがある。

〇会場はパレスホテル立川。立派な会場なのだけれども、本年末で閉館になるとのこと。老朽化などの事情があるらしいのだが、地方都市でバンケットがちゃんとしているホテルは貴重です。跡地はマンションになるらしい。駅まで徒歩3分。至便です。

〇今日は秋晴れでいい天気。今季初めて冬物のスーツを出して着ていったのは失敗でした。だって暑いんだもん。ちょっと外を歩くと汗をかきます。それでもこんな日に遠出ができるのはありがたい。帰りの中央線では、ゆったりいい気分で寝てしまいました。

〇それというのも、毎晩、日本シリーズの観戦に力が入っているからです。今日はタイガースがリードしているけれども、とてもじゃないが安心して見ちゃいられない。こんなに野球を真剣に見ているのは、今春のWBC以来ではあるまいか。いやもう、頼むからタイガースよ勝ってくれ。野球ってこんなにハラハラするものだっただろうか?


<11月2日>(木)

〇今宵も苦しい野球観戦でした。3日連続してとっとと家に帰ってきて、テレビの前で歯ぎしりしながら観戦する日々。今宵も8回裏の大逆転劇までは、見ていて辛いことばかりでした。でも、幸いにも恵まれました。タイガースは勝ちました。これで日本シリーズは3勝2敗。日本一への王手がかかりました。

〇思えば去年、ヤクルト対オリックスの日本シリーズを見ながら、ああ、なんて面白いんだろう、実力が接近している同士の野球はやっぱいいよなあ、などと感じ入っていたのである。今年の日本シリーズも、おそらく他球団のファンの方から見れば白熱の好勝負なのでしょう。しかるにここまで待たされ続けてきた阪神ファンとしては、もうツラくてしんどくて仕方がない。

〇何しろタイガースが日本シリーズで勝ったのは、1985年以来です。この年に生まれた人はもう30代後半になっている。そういえばワシはその昔、『1985年』(新潮新書)という本を書いていたのではなかったか。今年ダメだったら、またこのあと何年待たされるかわからない。力が入るのも無理はないじゃないですか。

〇そしてここまで5戦戦って、オリックス・バファローズはしみじみ強いチームだと思います。さすがは3年連続で日本シリーズに出てきているチームです。そして中嶋監督は知将です。茫洋とした東洋的リーダーである岡田監督とは好対照である。さすがはパ・リーグで長いキャリアを持つ名捕手である。

〇まあ、それでも今年のタイガースには1985年のような勢いがあって、そして甲子園には熱狂的なファンの声援がある。今宵も時空がゆがむような応援でしたな。20代の頃に味わったあの興奮が、再び甦るというのは何か運命的なものを感じてしまいます。

〇てなことで、勝負は明後日以降ということになる。もう何も手がつきませぬ。いや、いちおう仕事はいろいろやっておるのでありますが。


<11月3日>(金)

〇今朝の産経新聞「正論」欄に寄稿しました。


●「南の国」からの視点を大切に


〇このところずっと夜は日本シリーズを応援しているので、仕事にはならんのです。物書き仕事は昼間にやるしかないのである。

〇今宵は祝日にもかかわらず「移動日」(同じ関西圏で、選手は皆さん自宅から通っているはずなんだけどね)で休養日。そうでないとやってられんと、昨晩の岡田監督がヒーローインタビューで言ってましたな。明日の予告先発は山本に村上という第1戦の投手同士。ウーム、なんだかんだ言って、最終戦までもつれ込みそうだなあ。

〇明日は東洋経済オンラインの連載もアップされる予定なんですが、昼間だけで原稿を書き上げるって、結構難しいのである。ということで、今回の溜池通信は、週明け火曜日の配信となりまする。イレギュラーですが、どうかお許しを。

〇日本シリーズは後2戦で終わりだが、タイガースが勝つにせよ負けるにせよ、どっと疲れが押し寄せてきそうな予感。これだけ根を詰めて野球を見るなんて習慣、絶えて久しくなかったんだから。

〇で、以下が今週の苦心作。競馬予想もちゃんとついてます。「ジャパン・モビリティショー2023」を見て考えたことです。


●日本の「世界に乗り遅れた感」はどこから来るのか


<11月4日>(土)

〇あーん、今日は山本由伸投手が打てませんでした。14奪三振で完投だなんて、アッパレすぎます。なんでこのピッチャーをタイガース打線が先週は打てたのか、もうちっともわからない。ぐすん。

〇本日は諸般の事情で静岡県掛川市にやってまいりました。掛川城って、結構ちゃんとした城郭だったのね。それでもって静岡市に投宿中。至る所に「どうする家康」ののぼりがあるのですが、見てないんですう〜。ごめんなさい。

〇ああ、それにしても明日は3勝3敗で最後の一戦ということになる。「パインアメ」を用意して、応援したいと思います。


<11月5日>(日)

〇今日は静岡市でいろいろ観光してきました。登呂遺跡とか駿府城とか浅間神社とか、いろいろ面白かったです。特に静岡近代美術館は意外な穴場でしたぞ。

〇ところで「どうする家康」が終わってしまったら、「どうする静岡」になってしまうのではないだろうか。ネタがなくなってしまうぞ。本日は大道芸ワールドカップで盛り上がっておりましたけれども。

〇帰ってきてからは、日本シリーズ第7戦なのであります。ああ、なんということか。阪神タイガース、アレのアレ、ついに日本一達成であります。1985年以来の快挙です。あれはワシが入社2年目のことでありました。あれから38年もたってしまったのである。そうか、岡田監督はワシよりも2つ年上だったのか。

〇とにかく先週末以来、こんなに熱心に野球を見たことはありませんでした。日本シリーズのMVPは、おそらくノイジー選手ということになるのでしょうが、ルーキーで7打点の森下選手でも良いですが、いちばん安定していたのは近本外野手だったと思います。

〇まあ、全員でつないで勝ち得た勝利でありました。オリックスは強い相手でした。第7戦までもつれ込んで勝てたのは、僥倖に過ぎません。いろんな方からお祝いのメールやメッセージやLINEをいただいておりますが、どうもありがとうござりまする。いやはや、ホッとしました。


<11月6日>(月)

〇今朝の日本経済新聞一面「春秋」欄に、拙著『1985年』(新潮新書)が紹介されました。

〇何しろ2005年に書いた本ですので、著者自身が忘れていることが一杯あって、それでもこんな風に覚えてくれていて、取り上げてくださる人が居るのはありがたいことです。モノを書いていて、こういうことがいちばん嬉しいんですよね。

〇今週は変則的なんですが、たまたま明日が溜池通信の締め切り日になっているので、このネタを使わせてもらいましょう。日曜日で野球の試合も終わってしまい、こうなるとちゃんと夜も物書きの仕事ができる。昨日まではそれどころじゃなかったですから。


<11月7日>(火)

〇溜池通信を書き終えるのは、いつも金曜日なので今日はとっても違和感がある。ついつい「今週末の競馬は?」などと考えてしまう。今週はまだまだ先があるというのに。

〇まあ、それでも一仕事終えたというのは悪い気分ではない。とりあえずビールが旨い。

〇明日は松江市に出没します。地方出張は久しぶりだなあ。


<11月8日>(水)

〇松江市を訪れるのはこれが4回目である。@内外情勢調査会(時事通信)、A政経懇話会(共同通信)、Bプライベート、そして今回はC日本公庫さんの中小企業懇話会である。

〇で、いつも思うのだが、「一度でいいから、島根県立美術館で宍道湖に沈む夕日を見たい」というのが持ち越しの課題である。前回はそのチャンスであったのだが、曇天であったために果たせなかった。仕方がないからカミさんと一緒に出雲そばを食べに行ったものである。

〇その点、今日はまれに見る好天である。「これはチャンス!」と思ったのだが、本日の日没は17:07PMであった。ダメじゃん、仕事中じゃん。

〇ということで、課題はまたまた次回に持ち越されました。松江市への往復は、出雲縁結び空港(JAL)ではなく米子鬼太郎空港(ANA)を使いました。今年4月にも行ったばかりなんですが、再び空港内の村上水産さんで一杯。

〇現地ではカニ漁が解禁されたばかりらしいのですが、あいにくお腹がいっぱいで入りませんでした。というか、最近のワシは太り始めているので、気をつけなきゃいかんのです。


<11月9日>(木)

〇本日発表の10月景気ウォッチャー調査は「案の定」といった結果でした。


*現状判断DI  53.6(8月)→49.9(9月)→49.5(10月)

*先行き判断DI 51.4(8月)→49.5(9月)→48.4(10月)


〇地域別でみると、東京はそこそこ良い数字が出ている(53.3→53.2)。逆に近畿が悪化している(51.8→48.3)。「東高西低」といった感あり。理由はよくわかりませんが。

〇気になるので近畿のコメント欄を覗いてみると、こんなご意見があった。


・関西の百貨店は9月に在阪球団の優勝セールを実施し、好調となったが、10 月は前年に行った優勝セールの反動が出た。また、9月に需要が前倒しとなった影響で、来客数の減少もみられる。さらに、百貨店の構造上の問題か、デパ地下での買い方の変化が目立つ。生鮮品などを買う年配客が大幅に減っている一方、その日に食べる総菜や菓子を買う、新たな客層が出てきたものの、全体の減少をカバーできない状況が続いている(百貨店)。


〇これって阪神百貨店でしょうか。11月はまた優勝セールで盛り上げてほしいところです。それにしても9月の優勝セールがすぐに翌月になって反動が出るあたり、関西地区は所得状況がまだまだ脆弱なのかもしれません。

〇実際に、「優勝パレードのクラファンが盛り上がっていない」という話も聞くところです。不肖かんべえも、及ばずながら本日、1万円(返礼品はスポーツタオル)を寄付してみましたが、本番まであと2週間だというのに、まだまだ目標額の5億円は遠いですなあ。

〇ちなみにパレードは、11月23日に大阪市の御堂筋と神戸市の三宮で行われます。御堂筋では午前11時からオリックス、午後2時から阪神の順で、三宮では午前11時から阪神、午後2時からはオリックスの順になるそうです。確かにファンが鉢合わせしちゃ気の毒ですものね。

〇しかし今年の日本シリーズ、7試合フルに見たものとしては、お互いを讃えあうようないい勝負であったと思います。今なら素直に言える。「山本由伸はやっぱ大したやっちゃ」と。あとは万博を成功させないといかんですな。


<11月10日>(金)

〇2年前、コロナの真っ最中の年の忘年会に使った店は、なかなかの好条件でした。@一晩一組で貸し切り、A板さんがつきっきりでコース料理は充実、B飲み放題、Cおひとり様9000円、でありました。満足度高かったです。

〇ところがその同じ店が、今年の冬は1万5000円になっているそうです。いかにも「らしい」話でありまして、2年前はいかにお店の側が苦しかったか、そして今年はいかに値上がりしているか、ということであります。今から考えれば、あの店のあのサービスは確かに1万5000円くらいの価値があったのではないかと思われます。

〇とはいうものの、今年も同じ店を使って1万5000円払うか、と言われれば、一同答えはノーである。これはもう人間心理として、以前に9000円で受けたサービスが1.5倍になっていたら、たとえ中身は良くても面白くないのである。

〇そういうことで、同じメンバーは今年の年末は、おひとり様1万2000円くらいの条件で、ワインなどを持ち込みつつの忘年会を実施することになりそうです。これはこれで今から楽しみなのであります。

〇皆さま、いい店はどんどん埋まっていきますから、ご予約はなるべくお早めに。


<11月12日>(日)

〇アメリカではバイデン大統領の苦境が伝えられている。

〇11月5日にはNYT紙が、「6つの激戦州のうち5つでトランプに負けている」という世論調査を報道した。もちろん1年後の投票日にその通りになるという保証はないのだが、「ネバダとアリゾナとミシガンとペンシルベニアとジョージアでバイデンは負ける」と言い換えると、これはやっぱり大事件だということになる。2020年選挙は選挙人においては303対235でバイデンが勝った。上記5州を落とせば、今度は236対302となってトランプが勝つ計算となる。

〇イスラエル問題をめぐる苦境もある。共和党支持者はだいたいイスラエル支持で固まっているのだが、民主党支持者は「高齢者はイスラエル支持、若者はパレスチナ支持」で分裂気味である。もともとが難しい問題であるうえに、バイデン外交としてはどう立ちまわっても評価を得ることは難しい。

〇11月7日には「オフ・イヤー選挙」があって、そこでの結果は民主党にとってホッとできるものであった。@オハイオ州では州憲法に人工妊娠中絶の権利を書き込むことが決まり、レッドステーツでもやはり中絶の権利擁護派が強いことが分かった。A2年前に当選した共和党のスター、グレン・ヤンキン知事(ヴァージニア州)は州の上院多数を目指していたが、それができなかったばかりか下院の多数を失った。Bケンタッキー州では民主党のアンディ・ベシア知事が再選された、などである。

〇ここから考えると、「中絶問題は使える武器だ」ということと、「バイデン政権に人気がなくても、地方選挙は別ものだ」という教訓が引き出せる。もっとも、「投票率が低いオフ・イヤー選挙と、来年の大統領選挙はまるで別物だ」という指摘もある。そりゃあそうだろう。

〇普通の選挙になれば、やはり重要なのは経済である。その点でバイデン大統領が、今年7月から「バイデノミクスは成功している」と主張したのが裏目に出ている。人々はGDPや雇用の数字を見てはくれないのだ。大事なのは米国経済ではなくて、自分の暮らし向きなのだ。だからインフレの方がずっと問題なのである。そもそもインフレは40年ぶりの現象。そんな苦痛は絶えて久しく忘れていたことなのだ。

〇そういう意味では今週14日に公表される10月CPIはとっても重要である。15日の小売売上高もね。とにかくインフレは政権の足腰を弱らせる。われわれはそのことを久しぶりに教えられている。岸田内閣も全く同じことだよね。

〇そして今週末11月17日には「政府閉鎖」のリスクが控えている。ムーディーズはアメリカ国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。格付け自体は「Aaa」のまま据え置くが、議長不在による議会の迷走、みたいなことが起きる政府の借金は、確かに当てにはできませんわなあ。

〇ムーディーズとしては、これで「僕言いましたよね」という構えを作ったことになる。来週、政府閉鎖になったら、マジで引き下げの可能性が出てくる。その場合、米国債は「もう買えない」となって売られるのか、それとも「これは絶好の買い場」となって買われるのか。2011年のS&P格下げの際は後者でありました。しかるに今はQTもやってるし、地合いは悪いだろうなあ。ちなみに米国債が売られて金利が上がれば、またまた円安が進むことになる。

〇ところで以前、APEC首脳会議は今週末、18‐19日に予定されていたと思う。ところが今見ると15‐16日に変更になっていて、そこでは米中首脳会談も予定されている。ひょっとすると、「政府閉鎖になるとマズいから」ということで予定をずらしたんじゃないだろうか。


<11月13日>(月)

〇長島昭久さんの議員在職20周年記念パーティーにお伺いする。千客万来。いと面白し。

〇まずは小野寺五典氏の記念講演から。ワシントンでの来歴、野党時代の思い出などから初めて、現下の中東情勢やウクライナ情勢に関する分析をひとくさり。その上でわが国安全保障環境を論じ、アメリカだけに頼れない現実を直視し、今後の課題は「日本の防衛産業を育てること」であると。「防衛装備品の関係は、同盟関係に勝る」というのは確かにその通り。

〇いろんな方が壇上に立つのだが、トップバッターはもちろん志帥会会長の二階さんである。なにしろ御年84歳であるから、壇上に上がられるところからしてハラハラものである。なおかつ、同じギャグが2周したりするから、聞く側としてはますますハラハラものである。が、上手にまとめて一礼。

〇続いて昨年も出ておられた菅義偉前総理。これも短く上手にまとめて、長島氏への地元の支援をお願いして降壇。その後、二階さんと何かひそひそ話をされているのだが、ひょっとすると「岸田おろし」の算段であったのかも。

〇その後、多くの現役閣僚が登壇。女性閣僚5人のうち3人が来ておられましたな。皆さん、切り口がいろいろで面白い。でも、いちばんキレイにまとめたのは河野太郎さん。

「皆さん、幸せは長く、挨拶は短く。選挙はよろしく」

〇さすがは行革担当大臣である。


<11月14日>(火)

〇昨日、NHKの世論調査11月分が公表された。岸田内閣の支持率は発足以来最低の29%にまで落ち込み、不支持率は史上最悪の52%に上昇した。これは2021年8月の菅内閣の末期と同じ水準である。

〇とはいうものの、すぐに「岸田おろし」が始まるかと言えばそうでもなさそうだ。みずから解散を決断しない限り、選挙は2025年7月の参院選まで来ないのである。その代わり、来年7月になったら「あと1年!」ということになって自民党内が殺気立って来るだろう。その先には「岸田おろし」も十分にあり得る。

〇岸田内閣への不満の大部分は「インフレ」から来ているんじゃないかと思う。たぶん別の人が総理になっても、この状況は変わらないのではないかと。なにしろインフレという現象自体をわれわれが忘れかけていたくらいなので、それがどれくらい政治的な破壊力を持つかも忘却の彼方であったようだ。物価が上がる、というこの不快な現象に対し、有権者が政治家たちに対して残虐な気持ちになっているのは当然であろう。

〇これとまったく同じことが起きているのが米国である。そこでふと思い出した。昔の米大統領選挙には、「悲惨指数」(Misery Index)というものがあったっけ。これは失業率とインフレ率を足しただけ、という簡明極まりないデータだが、これが高いと現職大統領は負ける。アメリカ版「青木の法則」みたいなものである。

〇うまい具合にウィキペディアでMisery Indexを引くとちゃんと歴代大統領のデータが載っていた。それを加工したのが下記の表である。


●Index=Unemployment rate + Inflation rate

  President Time Period Average Start End Change
1 (36) Lyndon B. Johnson 1963〜1968 6.77 7.02 8.12 1.10
2 (45) Donald Trump 2017〜2020 6.91 7.30 8.06 0.76
3 (35) John F. Kennedy 1961〜1963 7.14 8.31 6.82 -1.49
4 (42) Bill Clinton 1993〜2000 7.80 10.56 7.29 -3.27
5 (33) Harry Truman 1948〜1952 7.88 13.63 3.45 -10.18
6 (43) George W. Bush 2001〜2008 8.11 7.93 7.39 -0.54
7 (44) Barack Obama 2009〜2016 8.83 7.83 6.77 -1.06
8 (34) Dwight D. Eisenhower 1953〜1960 9.26 3.28 9.96 5.68
9 (46) Joe Biden 2021〜2023 10.16 7.70 7.47 -0.23
10 (37) Richard Nixon 1969〜1974 10.57 7.80 17.01 9.21
11 (41) George H. W. Bush 1989〜1992 10.68 10.07 10.30 0.23
12 (40) Ronald Reagan 1981〜1988 12.19 19.33 9.72 -9.61
13 (38) Gerald Ford 1974〜1976 16.00 16.36 12.66 -3.70
14 (39) Jimmy Carter 1977〜1980 16.26 12.72 19.72 7.00


〇こうしてみると、戦後の大統領の中でトランプ時代は2番目にこのミザリー指数の平均値(Average)が低かった。そりゃあそうだ。景気も良かったし、低インフレも続いていたし。アメリカ国民の間には、「トランプ時代は良かった」という印象が残っているということになる。これに比べて、バイデン大統領は今年1月までのデータに過ぎないが、戦後歴代大統領の中では9番目である。あまり威張れた成績ではない。

〇もうちょっといえば、ミザリー指数の平均値が低いだけではなく、改善が著しい大統領は評価が高いということになる。すなわちChange欄を見ればいいわけで、@ハリー・トルーマン大統領(+10.2p)、Aロナルド・レーガン大統領(+9.6p)、Bジェラルド・フォード大統領(+3.7p)、Cビル・クリントン大統領(+3.3p)などが高評価となる。

〇バイデン大統領としては、残り1年の任期でこの数値をどこまで改善できるのかが勝負となる。そんな風に考えると、「バイデノミクスは成功している」などと言い張るのはあまり賢い作戦ではない、ということになる。アメリカの有権者の間には、「ワシらは惨めなんだ!」という意識が強いのだから。


<11月15日>(水)

今朝発表の第3四半期QEは、予想していたとはいえ3四半期ぶりのマイナス成長で、ちょっと不甲斐ない結果だったかなと思います。

〇個人消費が2四半期連続のマイナス成長。そして民間設備投資も連続でマイナスです。そもそも今年の4‐6月期GDP成長率が+1.1%成長だったというのは、「そんなに景気良かったっけ?」という感じがする。逆に7‐9月期が▲0.5%成長と聞くと、「夏場は結構人出が多くて、賑わっていたような気がするけどなあ〜」と思えてくる。

〇先日、電力会社さんで教わって驚いたのだけれども、今年6月の電力消費量は、前年同期比で▲2.9%であったとのこと。さらに5月は同▲4.1%、4月は同▲8.1%である。おいおいおい、李克強指数じゃないんだから、電力消費がマイナスなのにGDPがプラスって、ちょっと変じゃないかい?

〇ちなみに4‐6月期GDPの高成長は前期比であって、前年同期比ではない。ところが前年同期比で見ても、今年4‐6月期は実額ベースで558.1兆円であり、昨年4‐6月期は547.9兆円であるから、前年比1.9%くらいのプラス成長である。いったい何が起きておるのか。

〇エネ庁さんの説明としては、今年は去年と違ってコロナ明けだったから、皆が会社に出るようになった分だけ自宅の電気消費量が減った(昨年は出社と在宅勤務の両方で電気を使っていたから)ということらしい。うーむ、ホンマかいな。それよりも電力料金の値上げを恐れて皆が使わなかった、という方がまだしも説得力があると思うぞ。

〇それにしてもこんな風に数値が悪いのでは、結局、日本経済で調子がいいのはインバウンド消費だけ、ということになりかねない。それとは別に、GDP統計の信ぴょう性が揺らぎかねない昨今ではないかと思う。コロナ下では経済指標が激しく上下したので、結果的に季節調整がうまく働かなくなっている、というのは大いにありそうなことである。

〇こうなると日本銀行も身動きが取れなくなりますな。GDPギャップは再びマイナスゾーンに逆戻りしたはずである。そもそも4‐6月期が+0.1%という誤差の範囲内みたいなプラスであったから、これでマイナス金利の解除へ見切り発車するのはためらわれます。「氷見野さん、内田さん、ここはしばらく様子を見ましょう」ということになって、来年2月中旬の10‐12月期のQEを見てから、てなことになりそうです。

〇とはいうものの、内閣府発表のGDP統計は、日に日に生活実感と食い違っているよなあ、と思えてなりません。いったい何が起きているのやら。


<11月17日>(金)

〇本日は在宅勤務。せっせと「溜池通信」を書く。

〇ふと窓の外を見ると、雨の中をずっと立っている人が居る。近所で工事をやっているための交通整理らしいが、別にクルマが通るわけでもなく、暇そうではある。が、こんなに寒くて雨が降る中で、傘を差すわけにもいかず、まことにお気の毒なお仕事である。

〇あとから工事現場を覗いてみると、なんとコンクリートを流し込む作業をやっていた。こんな天気じゃ、コンクリも固まらないだろう。というか、もっといい天気になるのを待てなかったのか。と言えば、そりゃあ無理だわな。おそらくは警察署の許可を得て、ご近所の了解を得て、交通整理の人も雇った上での日程なんだもん。

〇ということで、この後にご近所で完成する建築物がどうなるのか、ちょっと心配である。知らんけど。

〇それで変なことを思い出した。柏市に引っ越してからしばらくたった頃、つまりかなり前のことになるけれども、近郊のとあるマンションを見て、「新しくて立派なマンションですねえ〜」てなことを言ったら、こんなことを言われたのである。「あそこは昔、沼だったところです。地元の人は買いませんよ」

〇うーん、それって、マンションを買った人が聞いたらどんなショックを受けるのか。別に知らなきゃ知らないで、どうってことはないという気もするけれども。

〇めでたく溜池通信をかき上げてホッと一息。とりあえずビールでも。明日は日経プラス9サタデー「ニュースの疑問」に登場します。


<11月18日>(土)

〇本日はBSテレ東へ。日経プラス9サタデー「ニュースの疑問」、本日の中づりはこんな感じ

〇ゲストは柯隆さんと小谷哲男さん。いずれもお久しぶりである。

〇柯隆さんに、「柯文哲さんと同じ苗字だけど、これって珍しい苗字なの?」と聞いてみた。そしたら「柯」というのは植物の名前で、中国の南方にだけ生息しているのだそうだ。ゆえに「柯」姓は福建省など南方に多く、北方にはいない。そして台湾でも多いのだとか。柯隆さんは南京のご出身だが、ご先祖は南の方から来たのかもしれませんな。

〇ということで、ひとつ賢くなりました。聞いてみるもんですね。もちろん、柯文哲さんとご親戚ではないそうです。

〇その柯文哲氏は、第3政党である台湾民衆党を率いて総統選挙に出馬しているのであるが、国民党の候友宜候補との間で「2位3位連合」を組み、候補者を一本化するとのこと。はてさて、どういうことになるのだろう。

〇先月くらいまでは、「2位3位連合なんてできるはずがない」ということで、民進党内では楽勝ムードが流れていたと聞く。まあ、実際のところ、日本のような議院内閣制では「2位3位連合」は自然な発想だが、直接民主制を取る国では「それってどうよ」と反響を招きやすい。特に台湾民衆党は「反・既成政党」が売りなので、国民党と協力するのでは支持者が離れてしまうんじゃないだろうか。

〇とはいうものの、柯文哲氏は「6割以上が政権交代を望んでいる」と言っている。確かに2000年以降の台湾総統選挙の歴史において、2期8年以上の政権が続いたことはない。それから1期4年で終わった政権もなく、「陳水扁(民進)〜馬英九(国民)〜蔡英文(民進)」がそれぞれ8年ずつ務めて今日に至っている。

〇この次に頼清徳氏が勝つと、民進党政権が連続12年ということになり、台湾内で「それはちょっと長すぎる」という声が出ることは、十分にあり得ることである。金魚鉢の水は、時々入れ替える方がいい。そのための二大政党制であるのだから。

〇台湾の民主主義は歴史は短いけれども、非常に速いテンポで深化を続けている。2024年選挙では「第三政党」を試すことになるのだろう。そして誰が次の総統になるにせよ、「李登輝さんが考えていなかった人」になる。台湾総統選挙は来年の1月13日。まことに楽しみなのであります。


<11月19日>(日)

〇今日は町内会で草むしり。先週が雨だったので順延になりました。

〇黙々と作業する、というのは精神衛生上良いような気がする。作業の成果がちゃんと目で確認できる、ということも含めて。過度に疲れる前に終わるのもありがたい。

〇コロナ下でしばらくお見掛けしなかった町内のご老人数名が、ちゃんと出て来られたのでホッとする。今日のように天気がいい日は、生存確認には適しているのかも。

〇そういう現実世界に比べると、ネット界は猛々しくて宜しくないですなあ。ワシ的には宝塚も歌舞伎もジャニーズも、何の関心もないからスルーするばかりなのである。


<11月20日>(月)

〇本日はSDGsプロミスジャパンの15周年記念レセプションへ。

〇不肖かんべえ、この会の発足当初から理事を務めております。最初に鈴木りえこ理事長から、「財界からおカネを集めるのってどうやってやるの?」という相談を受けたときには、「アフリカ支援かあ、ちょっと無理っぽいなあ〜」と思いつつ、行きがかり上お手伝いすることになり、「まあ、5年も持てばいい方か」などと考えていたのであった。まさか15年も続くとは思っておりませんでした。

〇ちなみに15年前はどんな感じだったかというのは、当欄の2008年5月26日分に記録が残っております。住友化学の蚊帳を送ってマラリアを防止する、という活動が最初でありました。それがなんと、今ではガーナで隈研吾氏設計の職業訓練校を作る、などという事業に着手しておるのですから、思えば遠くまで来たものであります。

〇JICA前理事長の北岡伸一先生が挨拶で述べておられましたが、台湾で民生長官を務めた後藤新平(1857〜1929)と、アフリカで財を成したセシル・ローズ(1853〜1902)は年が4つしか違わない。2人は同じ時代の人である。もとより植民地経営は褒められたことではないが、後藤とローズ、どちらが現地から見て良い仕事を残してくれたかは自明であろうと。そりゃそうだ。たまたま今年6月16日に後藤新平記念館を見てきた者としては、刺さる言葉でありました。

〇レセプションは多士済々でありました。いろんな方とお話しできましたが、当会の最高顧問である福井俊彦氏には、「阪神タイガース優勝、おめでとうございます」と告げてまいりました。しみじみ2度目の日本一を目撃できたものは果報者なり。


<11月21日>(火)

最新号の溜池通信でこんなことを書きました。


イスラエルに対するハマスの奇襲攻撃も、中東世界に生じている近年の新しいうねりに対す
る古い物語による反撃であろう。サウジアラビアの MbS ことサルマン皇太子は、中東の現実を
変えたいと強く念願している。古いしきたりを捨てて、西側からの技術や資金を得て、「脱・
石油」などのビジョンに向けて国を前進させたい。そのためには、イスラエルとも仲良くしな
ければならない。特にイランと対抗していくためには、その方が有利である。

トランプ政権の手引きもあって、2020 年には「アブラハム合意」が成立し、UAE やバーレー
ンがイスラエルとの国交を正常化した。いずれサウジアラビアもそうするだろう。ただしそれ
は、「アラブの盟主」がパレスチナ問題を切り捨てることを意味する。武装集団ハマスがイス
ラエルに対する「渾身の一撃」を放ったのは、まさにそういうタイミングであった。



〇中東問題の素人の見解としては、わりといい線を行っていたのかなあ、という気がしている。それではサウジの「次の一手」はどうなるかというと、たぶんは「様子見」で、運よくこのままほとぼりが冷めてくれればいい、みたいなことを考えているのではないか。権力者というのは、庶民の感情などあんまり本気で考えちゃいませんから。つまりはパレスチナ人のことを、皆が忘れてくれるとありがたい。

〇現国王は旧世代であるから、もちろんそんなことはできない。でも、MbS皇太子はミレニアム世代(1985年生まれ)ですから、たぶんそんな古いことなんてどうでもいいと思っている。そしてそんなに遠くない将来に、サウジでは世代交代となるだろう。

〇イスラエル側も、ネタニヤフ首相の政治生命は、この後そんなに長くはないはずである。イスラエルとしては、「10月7日奇襲」を許してしまったケジメをどこかでつけなければならない。ネタニヤフが責任を取らされるのは当然でしょう。問題は、その後によりマシな政権になるかどうかでありますが。

〇エジプトやトルコもにたような感じで、イスラエルとハマスの仲介役を務めることができれば大いに面目を施すことができる。でも、自国の民衆レベルがあれだけ怒りに火がついてしまうと、イスラエルの側に立つことは極めて困難になってしまう。エルドアンは最初のうちはニュートラルなことを言っていたけど、途中からイスラエル非難に転じた。エジプトのシシ大統領も、自国に難民が押し寄せることを何より警戒している。

〇他方で池田明史教授によれば、「ハマスというのは組織であると同時にイデオロギーでもあります」「ハマスはガザ地区で生まれ育った運動体で、地付きの勢力という強みがあります」とのことである(公研11月号「緊急対話〜繰り返されるハマス・イスラエル衝突」から)。そんな勢力が、自棄のやんぱちで攻め込んでくるのであれば、イスラエルとしても下手な手出しは難しい。軍事的な掃討を行うにせよ、その後のガザ地区をどうやって治めるつもりなのか。

〇アラブ世界の穏健派、UAEがイスラエル批判を展開しながらも、アブラハム合意を破棄する、みたいな動きに出ないのは、彼らなりにバランスをとっているのでしょう。王政の国々というのは、あれはあれで長期的なビジョンを持てるものですから。(逆に言えば、国際世論などというものはまことにはかない。もうウクライナのことを忘れつつあるくらいなので)。


<11月22日>(水)

〇本日は大阪商工信用金庫さんの講演会で大阪へ。今日は好天。新幹線の車窓からは、富士山がとってもよく見えました。

〇会場は堺筋本町。御堂筋では、既に明日のパレードの用意が始まっておりました。11月23日午前11時からはオリックスが、午後2時からはタイガースがパレードを行う。今宵は場所取りをする人が居ないようにと、巡回が行われるとのこと。なるほどクラファンが必要になるはずである。

〇ちなみに本日時点の募金額は、1億円に届いておりませぬ。目標額は5億円なんですけど。支援は11月30日までやっているそうですので、皆さん、応援よろしくお願いします。こういう点に、最近の景気の陰りを感じる昨今であります。

本日発表の月例経済報告では、10か月ぶりに基調判断が引き下げとなりました(景気は緩やかに回復している→景気は、このところ一部に足踏みも見られるが、緩やかに回復している)。景気ウォッチャー調査を見ていても、近畿は南関東や東海に比べても良くないんですよねえ。

〇本当だったら大阪に一泊して、明日のパレードを目撃すべきなのかもしれない。阪神タイガースのことゆえ、次の優勝は何十年後かもしれないし。ただまあ、明日は東洋経済オンラインの締め切りもあることゆえ、ここは粛々と引き上げるのである。

〇帰りは新大阪駅にて、いつもの「ぼてじゅう」にて肉玉とビール。いや、これが楽しくてやっておるのでありまして。帰りの新幹線も混んでいて、こういうところを見る限りは人は動いているし、景気もそんなに悪くはないはずだと思うのでありますが。


<11月23日>(木)

〇柏市には「中華大島」という変な店がある。その名の通り、もとは中華料理店だったのだが、今はカレー屋である。今日はシャヒジャルカレーを食べたのだが、これは癖になる。以前よりちょっとだけ値上がりして1050円也。

〇入口の幟の経年劣化のすさまじさに、初めて来る人はたぶん二の足を踏むだろう。とはいえ、お店の前には今日だってちゃんと行列ができていた。既に市内ではれっきとした有名店なのだから、もうちょっと刷新して、ついでに店名も変えたらいいのに、とは思うのだが、いまや「中華大島」でグーグル検索出来てしまうくらいの知名度ができている。

〇食べログで「柏市xカレー」を検索すると、1位がボンベイ本店、2位に大島が来る。この評価は妥当だとは思うが、両者がひっくり返ってもほとんど不思議はない。今週末のジャパンカップにおけるイクイノックスとリバティアイランドみたいなものだ。たぶんワシは上海馬券王先生に乗って、リバティアイランドに賭けると思う。

〇かつてラーメン激戦区と呼ばれた柏市は、いつの間にか「カレー激戦区」になっていて、ほかにもいろいろお勧めがあります。ネパール料理のクーシとか、スリランカ料理のアーユーボーワンとか、芸域もかなり広いです。まだ行っていない店がいっぱいあるのです。

〇本日はその中華大島カレーのご利益もあってか、ちゃんと締め切りには間に合った。大阪では好天の下、96万人が参加してのパレードが行われたようであって、まずはめでたいのである。


<11月24日>(金)

〇本日は常陽銀行さんの講演会で福島県郡山市へ。到着したら現地はちょうど雨上がり。新幹線からきれいな虹が見えていた。外に出ると空気はひやりとしていて、さすがは東北である。

〇郡山には2019年秋に来て以来である。あの時は台風19号の被害がひどくて、「東北が台風の被害を受けるなんて」と驚いたものだが、それからコロナの3年間を経ているので、まるで遠い昔のことのように思える。まあ、いかに先の読めない時代を生きているか、ということであろう。

〇仕事が終わったらすぐに郡山駅に戻り、なにはさておき2階の「もりっしゅ」さんへ。このお店、2015年に初めて来た時に発見し、2019年にも来た。そうか、ワシは4年おきに郡山に来ていることになる。ここは地元福島のお酒が、グラスで注文できるというのが売り。そして福島県内には、レベルの高い日本酒が山ほどあるのである。

〇ところが今回入ってみて驚いた。日本酒だけではなく、地ワイン、地焼酎まで揃っている。おつまみもいきなり種類が増えている。いかん、これでは決められないぞ。30分後には新幹線がきてしまうというのに。

「おカネとは自由のことである」というのは山崎元さんの名言である。最低限のおカネと自由は、人生になくてはならないものである。しかるにおカネや自由があり過ぎると、これはこれで面倒なことになる。膨大なメニューの中から、最善手はどれか。短時間で決断しなければならない。

〇エイやっと地ビール3種セット(940円)を選ぶ。なんと福島はクラフトビールまで作っているのである。ついでに、にしんの山椒漬け(460円)を注文する。睨んだ通り、これが旨いのである。うはははは。

〇ということで、かるく一杯ひっかけて、帰りは車中にて爆睡するのである。こういうことが楽しくて、日々やっておるわけでありまして。ほどほどのおカネと、ほどほどの自由はありがたきものかな。


<11月26日>(日)

〇弦巻勝と言えば、将棋ファンは誰でも知っている。知らん人はまったく知らんだろうけど。この半世紀くらい、ずっと棋士たちの写真を撮り続けたカメラマンである。その弦巻氏が本を出した。「将棋カメラマン〜大山康晴から藤井聡太まで『名棋士の素顔』」(小学館新書)。

〇本書には懐かしい写真が一杯載っている。いやあ、昔はこんな風だったんだよなあ、と想うことしきり。弦巻さんは団塊世代で、写真専門学校を出て「週刊ポスト」編集部に入り、そこから将棋界の撮影を開始するようになった。大山、升田、花村、塚田、原田、丸田、森安、中原、米長、大内、そして加藤ひふみんなど。懐かしいねえ。

〇同好の士の方々はこちらをご参照ください。こういうシーン、昔、確かにあったよね。将棋ファンは、それを弦巻さんのカメラ越しに見ていた。今のように対局がネット中継される時代ではなかったからね。


●弦巻勝のWeb将棋写真館


〇時代は変わって、今では藤井八冠の時代となり、AIが正しい次の一手を教えてくれる。そして羽生さんが将棋連盟会長である。いろんなことが変わってしまって、それを最もよく知るのが弦巻さんだろう。ワシだって思う。昔は良かったよね。

〇本日はジャパンカップを一緒に見ようということで、山崎元さん宅にオバゼキ先生と編集F氏と一緒に集い、競馬ももちろんやるのであるが、将棋も指すのである。いや、ワシなんぞ実戦を指すのは20年ぶりくらいなのだが、やっぱり指してみると楽しいもんですな。負けちゃったけど。

〇競馬と将棋は不思議と親和性があると思う。今日はどっちも負けちゃったけど、だからと言って止められないのである。いやはや、楽しいねえ。どっちも。


<11月27日>(月)

〇イスラエル情勢がアメリカ政治にどんな影響を与えているか、という点でこの記事は面白い。いや、勉強になります。


●民主党内左派の分断と糾合 (渡辺将人氏)


〇ウクライナ問題が共和党を分断(国際=中道派は支援を、アメリカファースト=右派は支援打ち切り)しているように、イスラエル問題は民主党を分断している。リベラル派ユダヤ系の民主党支持者は、今では必ずしもイスラエル支持ではなくなっている。これは10年越しのトレンドであって、昨日今日に始まったことではないらしい。

〇てなことで、明日はこんな番組に出演します。上記の著者とは違う渡部さん。考えてみれば、アメリカ政治業界はワタナベさんが多いのだ。


11月28日(火)

「米国の危うい中東戦略 バイデン氏への若者離れ深刻」

ゲスト:吉崎 達彦(双日総合研究所チーフエコノミスト)、渡部 恒雄(笹川平和財団上席研究員)

ハマスが拘束した人質の一部解放をめぐり、カタールなどの仲介を得て交渉を進めてきた米国。
バイデン大統領はイスラエルのネタニヤフ首相を説得したというが、米国はどんな戦略で動いたのか?
こうした中、ガザで民間人の被害が増えるにつれ、イスラエルの後ろ盾となるバイデン政権の対応に若年層を中心とした有権者が批判を強めている。ガザ情勢の行方は、来年の大統領選で再選をめざすバイデン氏にどんな影響を与えるのか?
外交成果へ躍起になるバイデン政権の危うい中東戦略の背景に迫る。


<11月28日>(火)

〇フランスの会社に勤めている方から聞いた話。


「コロナが明けてから海外出張が復活しまして、毎月のように欧州に行っているのですが、最近の彼らのワークスタイルはヤバいです。木曜日のランチミーティングで、堂々とワインが出てくる。こちらも調子に乗って飲んでしまうのですが、『ところで午後の仕事は大丈夫ですか?』と尋ねてみると、『どうせ木曜日の午後は、来客なんてないから構わんよ』という。木曜日の午後に来客がないということは、金曜日は当然、皆が会社を休んでいる」


〇うーむ、そうだとするとこの人たちは1週間のうち、3日半しか働いていないことになる。なんとうらやましい。いや、生産性の高さと言うべきか。それでも堂々と賃上げを要求するのだから、やっぱりちょっとすごいかもしれない。

〇逆に言うと、コロナ後に見事にコロナ前と同じワークスタイルに戻っているわれら日本人というのは、なんと義理堅い、いや芸のない人たちなのだろうか。これからはもっと堂々と、賃上げを要求すべきであろう。さもなくば、俺たちも昼からビールを飲んでしまうことにしようか。どうだ、参ったか?


<11月29日>(水)

〇うーむ、年内の締め切りが約10本、講演会も一杯あるし、忘年会もあるから遊ぶ方も忙しい。ワシは本当に年を越せるのだろうか。

〇ということで師走が本当に心配になってきた。せめて風邪をひかぬようにしなければ。

〇昨晩の「報道ライブインサイドOUT」がユーチューブで紹介されております。ご参照あれ。


●【米国の危うい中東戦略】バイデン氏への若者離れ深刻


<11月30日>(木)

〇キッシンジャー氏が亡くなられました。ワシごときがどうこう言うような人ではないですが、たしか1997年だったと思いますが、『外交』の上下巻(日本経済新聞社)を性根を入れて、たいへん興味深く読んだものです。なにしろ監訳者である岡崎久彦氏が、「勉強になったなあ」と言っておられましたから。

〇ワシ流に要約すると、あの大著はこういうことでした。「アメリカ外交にはセオドア・ルーズベルトに端を発する現実主義と、ウッドロー・ウィルソンに始まる理想主義という2つの伝統がある」。というと、当然、キッシンジャーは前者に肩入れしていたのかと思うと実はそうではなくて、アメリカの理想主義こそが冷戦を勝ち抜く力となったのだ、という結論に意外性がありました。

〇それから幾星霜、ニーアル・ファーガソンがキッシンジャーの評伝を書いたときには、『理想主義者』(The Idealist)という表題を付けたんですよねえ。さすが評するも人、評されるも人。あいにくまだ読んでませんけど。

〇学者として超一流の仕事をしつつ、実際の政治にも参加して業績を残す、というのは掛け値なしにすごいことだと思います。いろんなことを言って腐す人は居ますけど、そりゃあ非難する人の方が小さく見えるかなあ。

〇ところで本日午後11時に終了した阪神タイガースとオリックス・バファローズの優勝記念パレードのクラファンは、目標額5億円のところを結局1億413万2000円に終わったようです。支援者は1万3334人。ワシもそのひとりですが、返礼品であるタイガースのスポーツタオルはいつになったら届くのでしょうか。ちょっと心配です。








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki