<9月1日>(月)
○防災の日、何が起きるかと思ったら福田首相が辞意表明。あかんなあ。どうしてこう、簡単に政権を投げ出しちゃいますかねえ。だいいちカッコ悪いし。トップがそんなことでは、日本の対外的な評判にも、子供の教育にも悪いがな。
○昨今の政界は、あまりにもカッコ悪いことが多過ぎる。いちいち挙げると切りがないけれども、以下、思いつくままに。
(1)政党助成金を目当てに、民主党から分裂する「改革クラブ」(名前も恥ずかしい)。
(2)そこで恥も外聞もなく、離党を説得しようとする「民主党」(どうせなら、横峯パパもくれてやれ)。
(3)なおかつ、そこで説得されて離党を断念してしまう「姫」(今さら思いとどまっても、誰も信用してくれないぞ)。
(4)代表選をやるやると言っておきながら、結局誰も出ない「民主党若手」(そんなことなら、党員に党費を返せ)。
(5)ここに至って、財源を曖昧にしたままで景気対策を打ち出す「自民党」(今まで、野党に「財源がないから無責任」と言っていたのは誰?)
(6)しかも、今頃になってガソリン代の上昇に大騒ぎしている(だったら4月の時点で暫定税率を止めればよかったのに)。
(7)今年1月には賛成していたインド洋給油法に反対する「公明党」(要は自民党への取引の材料にしてるんでしょ?)
○ああ、この国の政治が情けない。それにしても、新しい官邸はお払いでもしてもらった方がいいんじゃないか。主がもう少し長居してもらえるように。
<9月2日>(火)
○お父さんが首相になれなかった安倍さんは、自分が首相になって1年で政権を投げ出した。お父さんがサミットの議長をやれなかった福田さんは、自分が議長を果たしたすぐ後に同じことをした。大きな仕事をしようとするときには、強いモチベーションを持つ必要があります。そのことは、北京五輪を見ていて痛感させられたことでした。掲げる目標が低かった場合、人間は容易に妥協してしまうことがあります。つくづく、小さな夢を追いかけてはなりませぬ。とくに政治の世界で天下を取ろうという人は。でないと、周りが迷惑します。
○麻生太郎幹事長が、ポスト福田に早々に手を上げました。ちょっとタイミングが早いかな、という気がします。昨年もそれで包囲網が出来てしまったのだから、もうちょっとゆっくり目でもいいと思うんですが。ワシは麻生首相というものを一目見てみたいと思うし、少なくとも小沢首相よりはマシだと思うのだけど、バラマキっぽい経済政策とあわせて、今後がちょっと心配だぞ〜。でも閣下の場合、モチベーションの対象はきっと吉田茂なので、そこのところはきっと安倍さん、福田さんよりも気高いものがあると信じたいです。
○アメリカの共和党大会はサプライズの連続です。ハリケーン・グスタフの到来は、マッケインにとって追い風になった可能性がある。というのも、先週の民主党大会に比べると、共和党大会は盛り上がりに欠けるのだ。とくに自分の選挙が危ない議員さんたちは、「この忙しいのに、ミネソタなんかに行ってられるかあ」というモードであるらしい。しかも初日は、ブッシュ大統領の演説が予定されていて、党員たちとしてはそれだけでゲッソリしてしまいそうなところ、よんどころない事情でキャンセルとなった。しかも「カントリー・ファースト」という美しい理由をつけて。
○しかもこのグスタフ、思ったほどの被害を出していないようだ。これがカトリーナ級となれば、有権者が2005年夏の惨状を思い出して、「共和党政権は何をやってたんだ!」と怒りを新たにしたかもしれない。ほどほどに終わってくれて、党大会を短くする口実が出来た、というのは、「神風」というとバチが当たるが、マッケインとしてはホッと一安心したのではないだろうか。
○その一方で、サラ・ペイリンの17歳の娘(もちろん未婚)が妊娠5ヶ月であることが発覚。なにしろマッケインは、発表の前日に彼女に決めたくらいなので、身体検査が充分に行き届いていないのだ。intradeを見ると、今日はマッケイン株が1.4P
下げて、オバマ株が1.0P上げている。とはいえ、有権者がどんな反応を示すかはまだまだ分からない。何しろ彼女のイメージはまだ手垢が付いていない。そして多くのアメリカ人が彼女のプライバシーに対して興味津津だ。その分、民主党に対する関心は低下する。この場合、「無名は有名に勝る」のである。
○そうそう、党大会で採択された共和党の政策綱領をご紹介しておきましょう。ついでに、アジア政策の部分もね。
http://www.gop.com/pdf/PlatformFINAL_WithCover.pdf
Partnerships across the
Asia-Pacific Region
The U.S. is a Pacific nation, and our historic ties to Asia will
grow stronger in the years ahead.Australia has stood shoulder to
shoulder with us in every major conflict. The ties between our
peoples, our economies, and our governments are extraordinary.
We cherish our bonds with our Freely Associated States in the
Pacific Islands. Our longstanding alliance with Japan
has been the foundation for peace and prosperity in Asia, and we
look for Japan to forge a leadership role in regional and global
affairs. Another valued ally, the Republic of Korea
remains vigilant with us against the tyranny
and international ambitions of the maniacal state on its border.
The U.S. will not waver in its demand for the complete,
verifiable, and irreversible dismantlement of North Korea’s
nuclear weapons programs, with a full accounting of its
proliferation activities. We look toward the restoration of human
rights to the suffering people of North Korea and the fulfillment
of the wish of the Korean people to be one in peace and freedom.
○本日は、大阪へ行って「ムーブ!」に出演。それから東京に戻ろうとしたところ、岐阜羽島が豪雨だとのことで、新幹線が米原駅で1時間くらい停車。9時半からの日経CNBCに間に合うかどうか、とっても危ないぞ〜。ということで、車中での更新でした。
<9月3日>(水)
○共和党大会が2日目を迎えました。
○1日目の予定をキャンセルしたブッシュ大統領は、ワシントンから中継で演説しました。いくら支持率が3割を切るという低調な大統領でも、共和党のコア支持者の間ではさすがに人気があるようです。「ジョン・マッケインの人生は、自らを犠牲にした奉仕の物語であります」と、ベトナム戦争で5年半の捕虜生活を過ごしたエピソードを紹介しました(もちろん、その場にいる人は皆知っているでしょうけれども)。「彼がとうとう解放されたとき、腕は折れてしまいましたが、彼の名誉は損なわれなかったのです」――これぞ模範的な応援演説というものであります。
○2000年には民主党の副大統領候補となり、2004年には民主党の大統領候補を目指したジョー・リーバーマン上院議員は、なんと共和党大会に登場して、友人マッケインを称えるとともに、オバマ候補を強烈に批判しました。本日、いちばんのパンチラインはこれでしょう。
When others wanted to retreat in defeat
from the field of battle, when Barack Obama was voting to cut off
funding for our troops on the ground, John McCain had the courage
to stand against the tide of public opinion and support the surge
and because of that, today, our troops are at last beginning to
come home, not in failure, but in honor!"
「バラク・オバマが地上軍の予算を削減する法案に賛成しているときに、ジョン・マッケインは勇気を持って世論の大勢に立ち向かい、(イラク)増派を支持したのです。そのお陰で今日、わが部隊はとうとう帰国を始めたではありませんか。それも失敗ではなく、名誉ある形で!」
○リーバーマンはすでに民主党を離党していますが、投票行動ではほぼ同調しています。今回の行為に対し、民主党側は何らかの形で報復するでしょうし、彼自身が失ったものは小さくなかったはずです。なにしろ「雄弁は実績の代わりにはなりません」とまで言い切っちゃったのですから、オバマ大統領誕生の暁にはどんな目にあうのやら。その是非はさておいて、まことに勇気ある演説というべきで、普通ならこれが本日最大のトピックでありましょう。
○予備選序盤で彗星のように現れ、あっけなく消えてしまったフレッド・トンプソン元上院議員が登場。オバマを名指しすることは避けながら、「上院にはいつも口が達者な奴がおる。でかいことを言う奴もおる。まぁ、今も確かにおるわなあ」などと、好き放題に嫌味を言ってのけた。トンプソンの必殺フレーズはこれ。
And we need a President who doesn't think
that the protection of the unborn or a newly born baby is above
his pay grade.
○「生まれてくる子供を守ることは、自分の給料以上の仕事だなんて思わない大統領が必要ですわなあ」。――先にカリフォルニアの福音派教会において、マッケインとオバマが今までで唯一の直接対決を果たしたときに、「子供が誕生したとみなされるのはいつか?」という牧師さんの問いに対し、マッケインが即座に「受精の瞬間」と優等生の答えをしたのに対し、オバマが「そんな難しい問題に答えるのは、自分のPay
gradeを超える」とひねった答えをしたことをチクチクといじめている。もちろん宗教右派は大喜びである。
○とはいうものの、党大会の最大の関心事は副大統領候補のサラ・ペイリンになってしまった。それというのも、彼女の家庭内の問題は、これまでほとんど語られなかった社会問題をめぐる議論に火をつけたのである。彼女自身が、極端な保守思想の持ち主であるという点が、思い切りリベラル派の反感を買い、それに対して保守派による贔屓の引き倒しも加わり、あられもない"Culture
Wars"に発展した。なにしろ彼女の家族の問題は、「中絶の是非」「性教育」「親子のあり方」「男女共同参画」「障害児」など、とっても微妙な問題をいっぱい抱えている。これでは誰もが黙っていられないではないか。
○前回、2004年の選挙は、「同性愛結婚」が決め手になった。2008年のアメリカは、安全保障問題(イラク、イラン、グルジア、北朝鮮、その他いっぱい)と、経済問題(サブプライム、石油高、医療保険、その他いっぱい)があまりに深刻なので、そんなところまで手が回らないと思われていた。ところが政治は恐ろしい。ほんの数日で雰囲気が変わってしまった。先週の金曜日までは、ほとんどの人が知らなかったはずの一人の女性が、これまで長い戦いを続けてきた2008年米大統領選挙の最終局面を左右しようとしている。まったく、何ということでありましょうや。
○もっと問題なのは、「そういう候補者を選んじゃったマッケインの判断力って大丈夫?」という疑問が生じてしまったことである。そもそも、マッケイン自身は安全保障問題に関心が強く、人工妊娠中絶やら同性愛結婚などは本来、どうでもいい人だったはずである。それが、いくら保守基盤層の機嫌をとるためとはいえ、なぜよく調べもしないでペイリンなんて選んじゃったの?と聞かれると、これはおそらくマッケインも答えに苦しむだろう。ちなみに副大統領候補の差し替えは、過去に例がないわけではない(例:1972年のマクガバン)けれども、この期に及んではほとんど不可能というものだ。
○思うにマッケインという人は、「信念の人」(a
man of conviction)と思われているけれども、彼は自らの主義主張に対するこだわりはそれほど強くない。むしろ、「美学の人」(a
man of honor)と考える方が当たっているのではないか。そういう点、つくづく小泉純一郎に似ていると思うのだが、たぶんマッケインはペイリンのように思い切りのいいタイプが好きなのだ。そこにはあまり計算や理屈はない。「普通にやっていたのでは勝てない」→「思い切った人選が必要」という判断があって、あとは直感で決めちゃったのではないだろうか。
○米長邦雄流にいえば、「強者は泥沼で戦う」。副大統領選びにおいて、あえて定跡を外した手を指したことで、流れは一気に変わった。このままいくと、「マケイン―ペイリン」というチケットは最悪ぼろ負けもあり得る。が、これが曲者であって、すべての鍵を握るのは3日目夜のペイリンによる副大統領候補受諾演説である。彼女がどの程度のタマであるか、ここで明らかになる。場合によっては、一気に人気が出るかもしれない。アメリカの場合、そういう例は過去に一杯ありますので。
○9月3日水曜の夜は、日本時間では4日の昼となる。ペイリンが迎える勝負の場に、彼女の家族は全員が勢ぞろいする。妊娠5ヶ月の17歳の娘、ブリストルはもちろん、彼女のボーイフレンドで父親である18歳のレビー・ジョンストン君も登場する。これぞ世紀の瞬間。よその家の家族の話なんでどうでもいいという気もするのだが、こんな面白いシチュエーションがまたとあるだろうか。
<9月4日>(木)
○共和党大会3日目。今日の主役はもちろんサラ・ペイリン。詳しい感想は、明日の溜池通信本誌をご覧いただくこととして、彼女の今日の演説は充分な成功ですね。素晴らしく上手いというほどではないが、「伸びしろ」のある政治家だという印象を受けました。あと2ヶ月の選挙戦中に、ビックリするくらい上達するかもしれません。若い人にチャンスを与えるというのは、そういうことです。
○彼女の5人の子供たち、というのが絵として流れた効果は大きかったと思います。特にダウン症の赤ん坊を小さな娘さんがあやしているシーンは、どきっとしました。それから、「17歳の妊娠5ヶ月の娘と、そのボーイフレンドがどんな顔をしているのか」という好奇心も、相当なモノがあったと思います。ボーイフレンドのレビ君は、ハンサムだけどいかにもアメリカの田舎にいるタイプでしたな。これでは「お幸せに」で終わってしまうのではないのかしらん。
○ヒラリー支持者1800万人は、おそらく「マッケイン=ペイリン」には投票してくれないでしょう。むしろ共和党側の思惑としては、これでリベラル派の女性たちがペイリンを嫌いになって、彼女をバッシングしてくれたら万々歳だ、ということでしょう。4年前と同じで、おなじみ「憤兵は敗れる」のパターンですよ。古い手口なんだから、これは引っかかる方がお馬鹿さんというものです。
<9月5日>(金)
○これで先週金曜から3回目の東海道新幹線である。行き先は草津(滋賀県)と大阪と倉敷。昼飯と晩飯、都合6回分の弁当を車中で食べたことになる。何なんだ、ワシの人生は。来週は松江に行くんだけど、これは飛行機なのでちょっとホッとする。もっとも、飛行機の中からではネットの更新はできないけれども。
○ということで、大統領選挙も自民党総裁選も、今週は大変にぎやかな1週間でした。
○英語で「できちゃった婚」のことを"Shotgun
Wedding"という。おそらく昔の西部劇時代に、娘の妊娠に怒り狂った父親が、ボーイフレンドにショットガンを突きつけて結婚を迫る事件がたくさんあったのだろう。レビ・ジョンストン君には気の毒だが、彼も現代版の"Shotgun
Wedding"になりそうである。そこで、「なーるほど、だからペイリンはNRAの終身会員なのか」というのが、最新のペイリンジョークだとか。
○"Pregnant Teenager"が悪いことだとしたら、オバマのママも18歳くらいで彼を生んでいる。あっちは"Shotgun
Wedding"ではなかったようですが。ともあれ、この手の話は真面目にやっていると後味が悪くなります。大統領選挙の争点は、やっぱり経済と安全保障に限ったほうがいいんじゃないでしょうか。
○この間、あんまり見ていなかった自民党総裁選。麻生さん、与謝野さん、石原さん、小池さんの4人が立って、さらに石破さんも。さらに棚橋、山本といった名前もちらほら。「上げ潮」vs「財政出動」vs「財政均衡」の対決とかいっているけれども、どうせなら安全保障政策もキッチリ議論して欲しい。そうすることが、民主党との差別化につながります。
○ブログを復活させた雪斎どのは、人材育成という面からも、「もっとどんどん出た方がいい」と言っている。でも、現実問題としてそんなに大勢立ってしまったら、SPの数も増えるし、ロジが大変だぞ〜。立会演説会で一人が20分しゃべるとして、4人で80分。6人だと2時間。そういえばサンプロはどうするんだろう? 5人目以降になると、田原さんが「あんたはもういい!」とか言っちゃったりして。
○アメリカ大統領選は、最初は10人くらいで予備選をやっていました。日本でもマネができればいいですが、あれは司会者がそれなりに軽重をつけるので、「全員が公平に」というわけにはいかない。全然話せないで終わっちゃう人も出てくる。その辺はまことに厳しい世界です。
<9月7日>(日)
○どうやらファニーメイ、フレディマックへの公的資金の投入が決まったようです。(報道はここやここを参照)。いやー、思ったよりも早かったかな。
●ファニーメイの株価: http://finance.yahoo.com/q?s=FNM
●フレディマックの株価: http://finance.yahoo.com/q?s=FRE
○どちらも1ケタ台に低迷していて、約5兆ドルの住宅ローンを保証している機関とはとても思えません。おそらくは債務超過なのでしょう。その一方で、彼らが全世界に向けて発行しているGSE債は「アメリカ政府の保証がある」と見なされている。日本は中国の次に一杯買っていますから、他人事ではありませんぞ。
○アメリカ政府としては、選挙前の決断は避けたいところであったでしょう。もっとも、それだと政権引継ぎ期間にコソコソと投入することになるし、ポールソン財務長官の任期切れも近づいてくる。こんな風に、党大会終了後の日曜日にそっと片付けるのがよろしい。何より怖いのは、大統領選挙のテーマになって政争の具にされることですから。
○変なところで「日本の教訓」が活かされているのかもしれませんね。月曜日の反応が気になります。
<9月8日>(月)
○思えばポールソン財務長官が、「GSEへの公的資金注入を検討中」と発表したのは7月13日。これも日曜日でした。要は市場に影響を与えないようにということで、こういうところがウォール街出身者らしい配慮といえます。
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp1079.htm
「敵に水鉄砲しかないと見せると、使う必要が出てくるが、バズーカ砲を見せれば使う必要はない」
○その2日後、上院銀行委員会での公聴会で、ポールソンはこんな名言を吐いた。当たり前の話だけれど、公的資金を使ってヨシ、などという議員さんがいるはずがない。だから、「これは抜かずの宝刀ですよ」というニュアンスを込めたわけだ。とはいえ、それから2ヶ月ももたなかった。まあ、株価に催促されるような状況だったので、無理もないといえましょう。昨日の発表は以下の通り。
http://www.treas.gov/press/releases/hp1129.htm
○今から考えてみると、2つの党大会が終わるまではこの決断ができなかったわけですな。オバマとマッケイン両人にご承認いただく必要がありますから。とはいえ、ご両人としても、ブッシュ政権のうちに嫌な話は片付けておいてくれるのはありがたいことなので、好意的なコメントを寄せています。もちろん、次期政権はこの問題と息長く付き合っていく必要がありますから、嫌も応もないのですけれどもね。
○ポールソンとしても、自分の任期内にできるだけのことをして、来年1月20日にはサバサバと仕事を去りたいところでしょう。サブプライム問題が表面化してから1年と少々、しみじみ展開が速いです。
<9月9日>(火)
○ミレニアム・プロミス・ジャパンの理事会へ。設立レセプションの様子は、当欄の5月26日付でご紹介したとおりですが、実は理事会は今日が初めてなのである。(ホームページも是非覗いてみてください。特にアフリカ支援に関心のある皆様、どうぞよろしくお願いします)。
○NPO法人というものは、岡崎研究所を立ち上げる際にも同じことを経験しましたけれども、シードマネーの調達が本当に難題なのである。要はお金がない。ついつい活動がシュリンクする。爪に火をともすような行動パターンが根付いてしまう。そして理事会では、「理事は報酬を受け取るべきかどうか」「いかに活動費を切り詰めるか」「どうやったら寄付金を増やすことが出来るか」といった地味なテーマについて、延々と議論が続くことになる。NPO法人というものは、本来はほかの事で多忙な人たちが、高邁な理想を持って事業を始めるものですが、得てして現実のハードルは高いものです。
○夜は某外資系金融機関の会合へ。機関投資家の方々を相手に、アメリカ大統領選挙の現状や米国経済についてお話しする。こっちはマネーの世界の住人たちで、おそらくはうなるような金額を動かしているような人たち。とはいうものの、今はこの世界も嵐の真っ最中ですから、お金が有り余っているわけではもちろんありません。
○一日に慈善の世界とマネーの世界をレンチャンして気づいたのですが、日本ではこの二つが隔絶しているけれども、アメリカだと直結しているのでありますな。楽でいいでしょうなあ。ミレニアム・プロミスは、本来がアメリカでジェフリー・サックス教授が始めた事業ですが、そっちはビル・ゲイツの財団などから資金がどーんと入って、お金にはあんまり苦労していないんですよね。まあ、国情の違いと言えばそれまででして、政治献金だってオバマは小口を中心にもう4億ドルくらい集めちゃってますからね。400億円といったら、日本では田中角栄だって集めきらないでしょう。
○こんな風にしていると、日本ではNPO法人も政治家も、「奇特な人がやっている風変わりな仕事」ということになりかねない。まあ日本という国は、なんだかんだ言って奇特な人が絶えないことが美風なので、その辺は大丈夫だと思うけれども。せめて微力ながら、ワシもなるべく奇特な人でありたいと思う。もちろん政治家になる気はないので、もっぱらNPOの方になりますが。
<9月10日>(水)
○東京財団で、久保文明先生の「民主・共和党大会の視察報告会」があったので聞いてきました。いろいろ面白い話があったのでメモしておきます。
●デンバーでの民主党大会。フットボールスタジアムに集まった8万人は、オバマ演説に酔いしれたが、終わってからが大変だった。交通整理もなく、ボランティアも足りず、家に帰り着くまでに何時間もかかった。後になって、「車椅子の参加者のことを考えていない」といった批判も寄せられていた。
――8万人のうち、半分の4万人分の座席が地元のコロラド州支持者に配られたとのこと。これは同州の人口の1%弱に相当する。これではコロラド州がブルーステーツになってしまうのも無理はないところだが、中には、「やっぱり民主党にはマネジメント能力がない」と腹を立ててしまった人もいたりして。
●セントポールでの共和党大会。ペイリン効果は絶大で、彼女に寄せられる拍手の量はマッケインの5倍くらいあった。とにかくオバマと比較すると、マッケイン支持者には「インテンシティ」(熱意)が欠けている。多くの共和党支持者にとって、やはり「セカンドチョイス」の候補者であったのだろう。そしてペイリンは、「ウォルマート・マム」と呼ばれる低所得層の白人女性のハートをゲットした模様。
――ほかの誰を副大統領候補に選んでも、これだけ盛り上がることはなかったでしょう。intrade.comを見ても、両者の差は「53対47」くらいに接近している。ずっと「60対40」だったのですが。
●なぜ双方の党大会の日程が後倒しになったか。連邦政府の助成ファンドが使えるのは、「党の候補が正式に受諾してから投票日まで」なので、なるべく党大会を投票日に近づけた方がお金を効果的に使える。2004年は、民主党が7月末に党大会を実施し、共和党が9月上旬に実施したので、「短い期間に使った」共和党の方が有利だった。
――これが「ケツカッチン日程」の理由だったとは。しかし双方の党大会が2週連続になったために、民主党はオバマ演説の「バウンス効果」が充分に得られなかった。ちょっと惜しかったかも。
●オバマとマッケインはともに「党の基盤」に背を向ける、「無党派層」寄りの政治家であったが、今となってみるとどちらも意外なくらい党の基盤に沿ったスタンダードタイプの候補者になっているように見える。投票日までには、どこかで中道に寄ってくるのではないか。
――言われてみれば、確かにその通り。ここへ来てオバマがペイリンを「ブッシュみたいだ」などと言って叩いているのを見ると、「それはあんたの信条とは違うんじゃないか」(ホントは融和を目指すんじゃなかったのか)とツッコミを入れたくなる。
●オバマは2004年の予備選挙から重要なことを学んだ。ひとつは「アイオワ党員集会の重要性」である。無名候補が勝つためには、とにかく緒戦のアイオワが重要である。そしてもうひとつは、「ディーンの失敗」である。すなわち、ネット戦術だけでは大統領選挙は勝てない。地上戦を重視する必要がある。そのため、党員集会が行われる州にはPaid
Staffを多く送り込んで重点攻略した。これが2月5日のスーパーチューズデー後に生きてきた。
――なるほどねえ。4年前のディーンの劇的な「アイオワ崩れ」は、冷静なオバマに大きな教訓を残していたのですね。
○もうひとつ。9月9日夜は虎ノ門でさいとう健さんのパーティーがあって、出られなくて残念だったのですが、送り込んでおいたスパイから受けた報告。
(1)麻生さんが来ていた。でも、さいとうさんが千葉7区の候補者であるところを間違えて「埼玉県」と繰り返していた。困るんですよねえ、そゆことをされては。
(2)安倍さんも来ていた。こんな一発ギャグが馬鹿受け。「皆さん、自由民主党と民主党の違いはどこにあるか分かりますか?――民主党には『自由』がないのですっ」。
――小沢君は心して聞くように。
<9月11日>(木)
○内外情勢調査会の松江支部へ。事務局の方に半分冗談で、「山陰には行ったことがないから、鳥取と島根で出番を作ってくださいよぉ」とお願いをしていたら、今年5月の鳥取、米子支部に続き、松江にも呼んでいただきました。いやはや、ありがたいことであります(今度は一つ、四国の方もよろしく・・・・)。
○せっかくの機会なんだから、せめて島根県についての下調べくらいしていけばいいのに、予習を何もせずに眠い目をこすりつつ、早朝の出雲空港に降り立つ。そこに「出雲大社 平成の大遷宮」というポスターがあるのを見て、いきなり目が点になる。出雲大社にも、遷宮ってあったんですか。へー。大和王朝に国譲りをした出雲王朝なんだから、同じ神道でも全然違うのかと思っていた。ということで、帰ってから「出雲大社」やら「オオクニヌシ」について、ウィキを引いてにわか勉強をしたりする。とりあえず本日の発見は、「出雲大社のおみくじは、吉とか凶ではなく、神の教えのみが書いてある」ことでありました。
○そこから宍道湖の北側を回って松江市へ。これがとってもキレイで品のいい街なのである。ゆっくりと時間をかけて育った印象があります。特に松江城は天下の名城といっていいでしょう。堀尾吉晴が建てたそうですが、さすがは秀吉の下でいくつも城攻めに参加した男だけあって、宍道湖の水を堀に使いつつ、小高い丘を上手に使ってある。築城400年なんだそうですが、一度も実戦に遭うことなく今日に至った幸せな城です。中を覗く時間がなかったのは残念でした。
○すぐ後ろの武家屋敷には、小泉八雲記念館があります。実はラフカディオ・ハーンが当地に住んだのはごくわずかな期間だったようです。松江はむしろ、彼の妻となった小泉節子の街と考えた方がいいのかもしれません。それでも「松江=八雲」という印象は強く、ちょうど「札幌におけるクラーク博士」みたいなところがある。つくづくこの国は、日本ファンになってくれた外国人に対して、贔屓の引き倒しのような深い愛情を注ぐことがある。ハーンもクラーク博士も、本国ではまったく忘れられた存在なのですが。
○時事通信の支局長さんに、「最近、この地域であった大事件は?」を確認する。これは講演会前にする定番の質問なんですが、「うーん、そうですねえ・・・」と思い当たるところがない。これは良い兆候で、最近はどの地方へ行っても、「ああ、あれはこの近所ですか・・・」と思い当たるような凶悪な事件があるものです。その点、鳥取や島根は犯罪そのものが少ないようです。当地の犯罪というと、「振り込め詐欺」の多発が問題で、「大阪のおばちゃんたちが、島根県の皆さんに警戒を呼びかける」CMが評判を呼んでいるとのこと。
○当地で、近々大きな関心を集めそうなのが、自民党総裁選である。なんと今回の総裁選では、保守王国・島根の有力自民党議員の意見が割れている。すなわち、細田博之衆議院議員は麻生さんの腹心、青木参議院議員は与謝野さんを支持、そして竹下亘衆議院議員はお隣の石破さんを支持、ということになっている。5人の候補者は出雲市で論戦を繰り広げるとのこと。
○ちなみに総裁選は麻生さんが独走の構えだそうで。そもそも自民党総裁選が総選挙の直前に行われるときは、「とにかく選挙の顔になれる人」ということが最優先されるので、圧倒的な大差が付くことが多いです。2003年9月のケースが典型的で、小泉さんは「選挙に対する恐怖心」を上手に使って、総裁としての再選を果たしました(当時のことについてはここをご参照)。ただし、これでは論戦が深まらない恐れがありますねえ。
○結局、松江市は日帰りで帰ってきちゃいました。羽田空港で見た夕焼けはまことにきれいでしたが、どうせなら今日は宍道湖に沈む夕日を見たかったでありますな。とりあえずよさげな場所であることを確認しただけで終わっちゃいました。
<9月12日>(金)
○よくよく見ると大変なことが起きている。RealClearPolitcsを見ると、全国規模の支持率はマッケインがオバマを平均で2.5%上回っている。intrade
comを見ると、マッケイン52.3対オバマ47.0と逆転してしまった。Electoral-voteを見ると、Electoral
Collegeでもとうとう270対268でマッケインが逆転している。これはおそらく今年初めての現象。2004年にブッシュが獲得した州のうち、わずかにアイオワとコロラドを失っただけで、後は全部維持できることになる。ちなみにFive Thiry Eightを見ても、オバマ272対マッケイン266で「あと一声」である。どうやらオバマは追う立場になったと見るべきであろう。
○そうなると焦りからか、オバマの口から問題発言が飛び出した。"Lipstick
on a pig"(いくら口紅をしたって、豚は豚だわな)というやつだ。オバマとしては、マッケイン批判のつもりで"Lipstick
on a pig"と言ったのだろうが、ペイリンが受諾演説で口紅をネタにしたジョークを使っているので、そんな風には受け止めてもらえない。ペイリンを豚に喩えた、というのは「ためにする」言いがかりだと思うけれども、問題はそこにはない。チェイニーが言うのならまったく問題のないような品のないセリフが、ほかならぬオバマの口から出たということだ。
○ペイリンは9月11日に陸軍兵士である19歳の長男をイラクに送り出した。これで兵士を持つ多くの母親の支持を取り付けただろう。そうかと思うと、同じ日にABCで初のインタビューを受けた。インタビュアーの容赦ない質問に対し、けなげに答える彼女。でも、「ブッシュ・ドクトリン」が何たるか知らない、という失態を見せて、ああやっぱりという印象を残した。もっとも、これが命取りになるかといえばそれは分からない。アメリカ人の反知性主義を甘く見てはなりませぬ。アメリカで人気を得る手っ取り早い方法は、ヨーロッパの知識人をガッカリさせることである。
○ということで、このところ完全にペイリンさまさまで米大統領選挙が動いている。しばらくはほかの誰もが霞んでしまう勢いである。こういうときの反撃は、慌てちゃ駄目です。本人が出過ぎたマネをする瞬間を、じっと待つくらいの勇気が必要です。米民主党の皆様は、くれぐれも「憤兵」にはなられませんように。
○勢いあまって、こんなニュースも。
●<08米大統領選挙>ペイリン氏愛用眼鏡が人気、製造元は日本メーカー(9月9日 AFP)
http://www.afpbb.com/article/politics/2515201/3309965
○何と彼女のメガネが人気になっている。製造元は福井県鯖江市の増永眼鏡。大阪大学大学院の川崎教授によるデザインで、ネジを使わないチタン製のフレームである。ヒラリー・クリントン、コリン・パウエル、ドナルド・ラムズフェルド、アーノルド・シュワルツェネッガー、ぺ・ヨンジュンなども御用達であるというから驚きだ。海外からは注文が殺到中。いっそこの際、「ペイリン・ブランド」を打ち出してみてはいかがでしょう。――それにしても恐るべし福井県。オバマが勝てば小浜市が大喜び、マッケインが勝てば鯖江市が大ラッキー。どっちに転んでも笑いが止まらない?
○最後にちょっとだけ宣伝です。自民党総裁選について、日経ネットPLUSに寄稿しました。「議論足りない外交政策」というテーマです。よかったら覗いてみてください。
<9月13日>(土)
○明日はまたまた「サンデー・ポールソン」が登場しそうですね。先週のファニーメイ、フレディマックに引き続き、リーマン・ブラザーズの救済が待ったなしですから。NY連銀を中心に関係者が集まって、またまた「バズーカ砲」の出動が待たれているところです。
○リーマンと言えば、かつて「ホリえもん」がフジテレビ買収を目指したときに、お金を貸したことで一躍有名になりました。それが今では落ち目の三度傘。三菱東京UFJが買おうとして止めて、韓国産業銀行との交渉も決裂し、資産売却を盛り込んだ再建策が不評で株価は急落。とうとう時価総額は3000億円程度に落ち込んでしまいました。さて、誰が買い取ることで決着するのでしょう。
○こんな風に日曜に物事が決まるのは、この世界の常識というものです。もう11年も前の話になりますが、北海道拓殖銀行や山一證券が吹っ飛んだのも、日曜や祭日の出来事でした。しかるにNYで日曜日に物事が決まると、翌日に一番最初に市場が開くのは東京ということになります。で、市場にストレスがかかる。まあ、時差の関係なので仕方がないのですけれども、なんだか損をしているような気もする。
○ところがよくしたもので、明後日は日本は祭日なのです。ということで、上海市場やシンガポール市場の出番ということになります。15日は敬老の日、ということは、やはり年寄りは大事にしなければなりませんな。・・・・なんて冗談言ってる場合ではありませんね、はい。昨今の米国金融界はまさに「闇鍋」状態。北朝鮮の金正日の状態と同じくらいわけが分かりません。
○こんな時期に、出来レースの首相選びをやっているわが国は、やっぱり余裕があるんじゃないでしょうか。結構なことですなあ。
<9月15日>(月)
○ただいま日米台三極対話のためにジム・アワーさんが来日中です。こんなクイズを教わりました。さて、この人は誰でしょう?
(1)私は共和党の政治家です。
(2)州知事を務めていますが、キャリアは2年だけです。
(3)40代前半の若さで副大統領候補になりました。
(4)子供が5人もいます。
(5)アウトドアライフが好きで、趣味はハンティングと釣りです。
(6)外交経験はまったくありません。
(7)ワシントン政治のアウトサイダーで「反既成勢力」が売りです。
○さて、答えは今日の最後の部分で。
+++++++++++++++++++++++++++++
○さて、本題です。「サンデー・ポールソン」の神通力はとうとう失われました。ニューヨークで鳩首会談が行われていましたが、日曜日の14日中に問題は解決されず、とうとう15日未明にリーマン・ブラザーズはチャプターイレブンを申請することになりました。当初、「救いの神」と目されていたバンカメは、土壇場でメリルリンチを買収することを宣言し、金融当局に背中を向けた。公的資金を使わせてくれるのならともかく、お土産ナシではリーマンのような怖い会社は買えません、ということでしょう。
○今年春の時点で、金融当局はあらゆる手段を発動してベアスターンズ証券を救済した。それこそ裏口から、公的資金を入れるようなことをした。ところが今回は公的資金の投入をケチった。証券5位のベアスタがOKで、証券4位のリーマンが駄目、という判断が正しかったかどうか、それはもう少したってみないと分からないでしょう。表向きの理由は「モラルハザードの恐れがある」ということになりますが、その背後に政治的な意図があったことは想像に難くありません。
○米大統領選挙はもう残り2ヶ月。さすがにもう黙ってはいられない。ちょうど先週も、ファニーメイとフレディマックに対する公的管理の決断が下されたばかりである。「ファニーとフレディは仕方がないが、リーマンを助ける理由はどこにあるんだ?」という声がかならず出るだろう。住宅金融公社は助けなければならないが、ウォール街で高級をとっている奴らはまったく同情に値しない。そういう世論の反応を考えると、「サンデー・ポールソン」も思い切った手が打てなかったのかもしれません。
○他方、次期大統領候補であるオバマとマッケインは、これまでこの問題について表立った発言をしていない。その心は、「どうせ俺の政権の課題になるんだろう。だったら今のうちに、下手なことを言って言質を取られたくはない。こんなことを政争の具にすると碌なことはない。ポールソンにお任せしておくから、ブッシュ政権のうちにできるだけのことをやっておいてくれ」てなところだろう。それでも事ここに至っては、この問題が大統領選挙のテーマとなることは避けられないだろう。
○しみじみ現在の事態は、「日本における1997年11月」に似ています。三洋証券→北海道拓殖銀行→山一證券という破綻の連鎖は、あらゆる予想を超えるものでした。今回のアメリカでは、リーマン→メリルリンチ→AIGという連鎖が起きている。それまではかろうじてmanageableだと思われていたものが、予想を超えて物事が動き出し、金融当局が心底「ひやり」とする瞬間でしょう。さて、これからどうなるのか。ぐっちーさんは欧州への飛び火を懸念している。なるほど欧州の株価は盛大に下げていて、欧米市場は当分、身動きが取れないことでしょう。
○日本の前例を当てはめて考えると、こういうときは「ハゲタカ」が出てきてくれないと困ります。火事が起きてしまったら、火事場泥棒が来てくれないと、いつまでたっても焼け跡の整地ができないのです。ところが、ハゲタカのご本尊ともいうべきアメリカの投資銀行が火事を出してしまったのですから、誰もリスクをとってくれない恐れがある。本当は「和製ハゲタカ」が出てきてほしいところです。アメリカの法体系に「瑕疵担保責任」はないでしょうけれども、これぞ荒稼ぎのチャンスではありませんか。
○というか、この人も言っている通り、本物のハゲタカが生態系の中で重要な役割を果たしているのと同様に、「ハゲタカ・ファンド」は金融の生態系を保つために必要なのだと思います。日本では「ハゲタカは存在それ自体が悪」ということになって、ほとんどEndangered
speciesになっちゃってますが、それでは金融界の新陳代謝が進まない。サブプライムの被害が少ない日本こそ、「出でよハゲタカ」と言いたいところです。
+++++++++++++++++++++++++++++
○冒頭のクイズの答えは、第26代大統領のセオドア・ルーズベルトでした。サラ・ペイリンも大化けしちゃうかもしれないぞ、てなことを共和党支持者は噂しているそうです。
○もうひとつ、ご紹介まで。今日の日経の経済教室で、上海対外貿易学院の陳子雷さんの論文が掲載されています。7月に上海で行った「日中経済対話」の肝いり役を務めてくれた人です。日中の経済協力について、持論を展開しています。
<9月16日>(火)
○都内で日米台三極対話。今回で2度目のラウンドが終了するのだけれど、3カ国ともに大きな転換点を迎えている。台湾は馬英九政権が発足した。アメリカは間もなく新政権が発足する。そして日本でも。議論してみると、いつもにも増して悩みが多いのである。
○今回の会合では大物政治家が参加しました。台湾からは立法院議長の王金平氏。日本からは安倍晋三前首相。台湾のメディアが多数集まって、ツーショットの写真を撮っていましたな。これは「対日外交」の成果ということになりますので、無理のないところです。王金平氏はもちろん国民党の重鎮なるも、本省人でいわゆる「本土派」の代表的人物。馬英九総統との関係は、なかなかに微妙なものがあるのでしょう。今日の写真が台湾政治の中でどんな意味を持つのか、ちょっと気になるところです。
○備忘録として、こんなエピソードをご紹介しておきます。会議の常連であるジョン・タシック氏(ヘリテージ財団)が、「2012年には台湾は中国に呑み込まれているのではないか」という悲観論を述べたところ、岡崎久彦氏が「じゃあ、賭けようか?」。いかなる成り行きか、お二人の賭け金を小生が預かることになってしまいました。さらに今度は台湾の元防衛大臣である蔡明憲氏が、「私も統一されない方に賭ける」と言い出した。これでは金額が半端になってしまう。にわか胴元は、「誰か悲観論、あと一人いませんかあ?」と呼びかけたりして、これではまるで「半ないか、半ないか」の丁半博打である。
○しょうがないから、胴元が自分のお金を出して帳尻を合わせることにしました。かくして「タシック・吉崎ペア」は、尊敬する「岡崎・蔡ペア」を相手に4年がかりの賭けをすることになりました。正直なところ、この賭けは当方が負けることを切望しております。問題はこのお金を、胴元として4年後までに忘れずにとっておいて、ちゃんと配当を支払わなければならないことであります。帰り際、皆様から「使っちゃ駄目だよ。忘れちゃ駄目だよ、変なものに投資しちゃ駄目だよ」などというお言葉をいただき、ますます困ってしまった。ああ、どうしよう、この4万円。
<9月17日>(水)
○公的資金の投入は、去年3月のベアスターンズはよくて、今回のリーマンは駄目だった。その理由については、いろんなことが言われておりますが、一番分かりやすいのはこれですな。
●共和党政策綱領2008:http://www.gop.com/pdf/PlatformFINAL_WithCover.pdf
○9月1〜4日に行われた共和党大会において、採択されたプラットフォーム(政策綱領)の全文です。そのP28をごろうじろ。住宅政策について述べた部分です。
Rebuilding Homeownership
Homeownership remains key to creating an
opportunity society. We support timely and carefully
targeted aid to those hurt by the housing crisis so
that affected individuals can have a chance to trade a
burdensome mortgage for a manageable loan that
reflects their home's market value. At the same time,
government action must not implicitly encourage
anyone to borrow more than they can afford to repay.
We support energetic federal investigation and,
where appropriate, prosecution of criminal wrongdoing
in the mortgage industry and investment sector.
We do not support government bailouts of private
institutions. Government interference in the
markets exacerbates problems in the marketplace
and causes the free market to take longer to correct
itself. We believe in the free market as the best tool to
sustained prosperity and opportunity for all.
We
encourage potential buyers to work in concert with
the lending community to educate themselves about
the responsibilities of purchasing a home, condo, or
land.
「われわれは政府による民間機関の救済を支持しない。政府の市場への介入は問題を悪化させるのみならず、自由な市場の軌道修正を長引かせてしまう。われわれは自由な市場こそが全体の繁栄と機会を広げる最良のツールであると信じている」(下線部訳)
○これは笑うところですか?と突っ込みを入れたくなるほど、共和党的な経済観が語られている。要は市場経済万歳ということであります。ほんの2週間前にこんな文書を機関決定しておいて、その1週間後にファニーメイとフレディマックを事実上国有化し、さらにその次の週にはリーマンを税金で救済、というわけにはさすがにいかなかったのでしょう。ファニー/フレディは、「庶民の住宅ローンを守るため」という金科玉条があるし、5億ドルの債券を売り出しているということを考えても、明らかに"Too
big to fail"である。が、リーマンを救うってのはどうよ、といわれれば、これはさすがに理屈が立てにくい。
○こんなややこしい話は、今年3月の時点ではどうでもよかったが、さすがに選挙を2ヵ月後に控えているとなると黙っていられなくなる。政争の具とされてしまう怖れもあるし、そもそも共和党の支持者たちが黙ってはいないだろう。ポールソン財務長官としても苦しいところで、ここは意地でも「公的資金はもう駄目です」といわなければならなかった。もっとも、他の金融機関は「そうは言っても、リーマンを買えば何かお土産があるんでしょ?」と思っていた。リーマン買収が成立しなかったのは、この辺の読み違えがあったからではないだろうか。
○ちなみに、それじゃAIGはどうよ、ってことになると、こちらは顧客の数が多いし、資産規模も大きすぎるし、世界的な影響も大きい。でもって、「850億ドルはあくまでもつなぎ融資」「見返りに株式の79.7%を取得」などと、政府にとっての公的資金の真水が少なくなるような工夫が凝らされている。経営者や株主にはキッチリ責任をとってもらいます、税金の投入は最小限にします、という点を担保してあるのだ。ちなみに、公的資金投入の際の3原則とは、@不可避性、A経営責任、B最小負担、といわれている。この辺は「さすがはポールソン」である。
○金融不安のときは、ホントはこういう神学論争をやってはいけないのです。日本はそれで懲りましたからね。アメリカもその辺の事情は研究済みであるのだろう。が、大統領選挙が近いとなると、そういう理性を麻痺させるようなことも起こりうる。今回の事態は、そういうことだったのではないかと思います。
○ついでにもういっちょ、民主党のプラットフォームでもいちゃもんをつけておきましょうか。
●民主党政策綱領2008:http://www.democrats.org/a/party/platform.html
○まず、17ページの"New American Energy"の項目に注目!
We'll dramatically increase the fuel
efficiency of automobiles, and we'll help auto
manufacturers and parts suppliers convert to build the cars and
trucks of the future and their
key components in the United States. And we will help workers
learn the skills they need to
compete in the green economy. We are committed to getting at
least 25 percent of our
electricity from renewable sources by 2025. Building on the
innovative efforts of the private
sector, states, cities, and tribes across the country, we will
create new federal-local
partnerships to scale the success and deployment of new energy
solutions, install a smarter
grid, build more efficient buildings, and use the power of
federal and military purchasing
programs to jumpstart promising new markets and technologies. We’ll
invest in advanced
biofuels like cellulosic ethanol which will provide
American-grown fuel and help free us from
the tyranny of oil. We will use innovative measures to
dramatically improve the energy
efficiency of buildings.
○省エネをやりましょうといっているわけで、それ自体はへんなことを言っているわけではありません。ところがですな、7月下旬に発表されていたドラフト(案)の当該部分と比較してみると面白いことが分かるのですよ。
●民主党政策綱領ドラフト:http://marcambinder.theatlantic.com/Platform%208%207%2008%20%282%29.pdf (ドラフト案)
17 We'll double fuel efficiency standards
and we’ll help manufacturers-particularly in the
18 auto industry-convert to build the cars and trucks of the
future and other green
19 innovations. And we will help workers learn the skills they
need to compete in the green
20 economy. We are committed to getting at least 25% of our
electricity from renewable
21 sources by 2025. Building on the innovative efforts of the
private sector, states, cities,
22 and tribes across the country, we will create new
federal-local partnerships to scale the
23 success and deployment of new energy solutions, install a
smarter grid, build more
24 efficient buildings, and use the power of federal and military
purchasing programs to
25 jumpstart promising new markets and technologies. We’ll
invest in advanced biofuels
26 like cellulosic ethanol which will provide American-grown fuel
and help free us from the
27 tyranny of oil. We will use innovative measures to
dramatically improve the energy
28 efficiency of buildings.
○ほかの部分は一言一句違っていないのに、最初の一文だけが違う。こんな風に変わったのだ。
(ドラフト) We'll double fuel
efficiency standards and we'll help manufacturers-particularly in
the auto industry-convert to build the cars and trucks of the
future and other green innovations.
(最終稿) We'll dramatically increase the fuel efficiency
of automobiles, and we'll help auto manufacturers and
parts suppliers convert to build the cars and trucks
of the future and their key components in the United
States.
(旧)「われわれはエネルギー効率の基準を二倍にする。われわれは製造業者―特に自動車産業―が変身し、未来の、そして環境対応の自動車やトラックを作れるように支援する」
(新)「われわれは自動車の燃料効率を劇的に改善する。われわれは自動車産業と部品産業が変身し、未来の自動車やトラックを、そして鍵となる部品を米国内で作れるように支援する」
○いかにもビッグスリーの実弾が飛び交った気配が残っておりますな。この一文を書き加えるために、ロビイストたちが相当な労力を払ったのではないでしょうか。そしてビッグスリーは現在、「エネルギー効率改善のために」政府に低利融資を求めると言い張っておるわけです。われわれは運転資金を求めているのではない。アメリカの環境を守るための投資を必要としているのである、という偽善がついている。公的資金をめぐる議論はかくも悩ましい。
○なーんてことが分かっちゃうのですから、両党のプラットフォームはもっと精読してみる必要がありますね。
<9月18日>(木)
○長い1週間だなあ。今週は日曜は「自民党総裁選」(サンプロ)、月曜は「リーマンショック」(WBS)、火曜日は「日米台三極対話」、水曜日は「リーマン&米大統領選」(BS11)と駆け巡ったので、いい加減頭の中がぐちゃぐちゃである。これでCDSの仕組みを理解せよといわれても、困ってしまうではないか。
○気がつけば、マッケインとオバマの支持率が再逆転している。intradeでもオバマ勝率が51対49でわずかに上回った。そりゃまこれだけ金融の混乱が続いていたら、「やっぱり共和党の8年間が悪かった」となるのは無理のないところ。8月のグルジア紛争は共和党にとってのプレゼントとなったが、9月の金融不安は民主党にとっての追い風となるのではないか。11月4日の投票日までには、まだまだ二転三転があるような気がするな。
○新聞各紙の報道は「10月26日が投票日」となっている。察するに現行の11月9日案では、11月4日の米大統領選で「オバマ新大統領誕生」となってしまった場合、「じゃあ日本でも政権交代」となってしまう、という危機感があるからだろう。ところが脱力さんは、今週の週刊文春で「麻生新総理解散せず!」という記事を書いている。なるほど、あの麻生さんが素直に選挙管理内閣の首相で我慢するかどうか。とりあえず今は、国連総会演説で何を話そうか、みたいなことで盛り上がっているはずである。意外と粘るのかもしれませんな。
○で、金融の世界はパニックが続いている。モルガンスタンレーが身売りだなんて話は、あんまり信じたくはありません。この世界はつくづく早いです。今週末もまた、何か新しい動きがあるんでしょうか。
○そういえば昨晩の「東スポ」の見出しは「モナ復帰」であった。ああいうのも一種の見識かもしれませんわなあ。
<9月20日>(土)
○「サンデー・ポールソン」が予定を繰り上げて、金曜日に金融安定化策を打ち出してきた。市場はこれを好感して上昇。相手の予期せぬタイミングでパンチを打つのは兵法の初歩ですね。ただしFRBの資産内容も悪化しているし、オバマとマッケインがわけの分からないことを言い出す恐れがあったりして、まだまだ先は茨の道でありましょう。
○こういうときは古典に当たるのがよいのではないでしょうか。以下は"In
an Uncertain World"にあるルービンの12か条です。(当欄の07年2月17〜18日にも取り上げています)
1.人生で唯一確かなことは、確かなものなど何もないということである。
2.市場主義経済は歓迎されるが、それですべての問題を解決できるわけではない。
3.一国の繁栄のためには、アメリカ合衆国、G7、国際金融機関の援助よりも、その国の政策の信用と質のほうが大切である。
4.効果的な政策は金で買えるものではないが、資金を渋るよりは余るほど投入するほうがよいときがある。
5.債務者は負債を負うとどうなるか、債権者は融資をするとどうなるかを心しておく必要がある。
6.アメリカ合衆国は、何を支持しているかばかりでなく、何に反対しているかによって評価されることを進んで受け入れなければならない。
7.ドルは非常に重要な通貨であるため、貿易政策の手段として用いるべきではない。
8.選択肢があることは、それだけで好ましい。
9.実現不可能なことを保証するような言い回しは、してはならない。
10.意思決定においては、小手先の細工を用いてはならない。真剣な分析と配慮にまさるものはない。
11.アメリカが国益を維持するためには、国際経済問題に関して、各国と緊密に協力して取り組むべきだ。
12.現実は理論やモデルよりもはるかに複雑である。
○そのうち「ルービンさんの手を借りよう」みたいな話が出てくるかもしれませんね。でも、ルービンさんはその前にシティグループを何とかしなきゃ。シティこそがアメリカにおける「みずほ」ですからな。
<9月21日>(日)
○日本で外資系証券会社で働いている人(ただしリーマンにあらず)が、ふとこんなことを言っていたのです。
「ウォール街は今でもロシアのマネーを拒否している。理由は分からない」
○なるほど、これは不思議。だってモルガンスタンレーなどは、チャイナマネーを資本金に入れている。おそらく「中国はどうにでもなる」と考えているのだろう。でも、ロシアは別であるらしい。ロシアには石油を原資とするSWFがあって、対外的な投資に消極的でもないはずなのだが、去年からの米系金融機関の「SWF詣で」の際にも、キレイさっぱりロシアに出資を仰ぐ話は出なかった。やはり冷戦時代と同じく、「ロシアは敵」なのだろうか。
○そうだとしたら、その警戒感はまことに正しかったことになる。8月のグルジア紛争以来、世界は「新冷戦」といわれる事態に陥っているが、仮にウォール街がロシアン・マネーを入れていた場合、今頃、プーチン/メドベージェフはアメリカの首根っこを押さえることができただろう。ところが実際には、グルジア紛争以降はロシアからの資金逃避が始まり、株価とともにルーブルが暴落している。ついでに資源価格も下がり始めたので、今のロシアはさぞかし困っているだろう。
○もっとも、ロシアが本気で「新冷戦」を目指しているかと言えば、それはかなり疑わしい。少し前に、フランシス・フクヤマが確かこんなことを書いていた。彼らは社会主義に基づくイデオロギー対立を目指しているのではなく、単に「俺たちを大国として遇しろ」と言っているだけだ。ロシアはソ連に戻ったのではなく、19世紀の皇帝時代に戻った。その頃のロシアは、ちゃんと欧州各国と取引の出来る相手だったから、今日のわれわれも淡々とBalance
of Power外交で臨めばいいのだ、というのである。これはまことに正しい指摘だと思います。
○おそらくロシアは、資源価格高騰とアメリカの脆弱化を見て、するすると前に出てきた。ロシアの伝統的な思考法は、「良いか悪いか」ではなく、「強いか弱いか」である。自分が強くて相手が弱いのだから、グルジアに出ていくのは当然、という発想である。それでは、資源価格が下がって、自分たちに利あらずというときはどうするか。おそらくは静かに去っていく。とはいえ、そこは「退却するロシア軍に注意」で、下手に深追いしてはいけないのである。
○ところで「ロシアを取り込んではいけない」というのはウォール街の叡智だったとして、「中国は取り込んでも大丈夫」という判断は果たして正しいのでしょうか。これもまた、どこかの時点で答えが出るのでしょう。
<9月22日>(月)
○自民党総裁選は思ったより大差が付きましたね。この人ほど、鋭い予想は出来ませんでしたけれども、以下、とりあえずの感想をまとめておきます。
○麻生さんは全体の3分の2に当たる351票。しかも地方で圧勝。喜びもひとしおでしょう。麻生さんは、自民党総裁選ではこれまでに3回負けている。小泉純一郎は「3度目の正直」だったけど、麻生太郎は「4度目の正直」。こんなにたくさん負けたのは、三木武夫以来じゃないかなあ。ゆえにご本人はむちゃくちゃヤル気。冒頭解散なんて全然考えてないでしょう。
――地方の期待に応えて、補正予算ももちろん通すつもりだと思います。麻生さんがいかにヤル気であるかは、おそらく9月25日(日本時間26日)に行われる国連総会での演説に端的に表れることとと思います。要注目です。
○2位は予想通り与謝野さん(66票)でした。麻生さんのバラマキ対与謝野さんの緊縮規律、てな対立が語られましたが、改めて考えてみると、小沢・民主党が言っている「22兆円の財政組み換え案」に比べれば、そんな差異はほとんどないに等しい。おそらく安倍政権の頃に戻って、A&Yの二人三脚になるのではないでしょうか。
――こんなことを言うと、われながら首尾一貫していないのが悲しいのだけど(ワシはたしか、サンプロなどで「バラマキはいくない」と言った記憶がある)、いくら「赤字国債は出しません」と言っていても、歳入欠陥があれば赤字国債は出てしまう。おそらく麻生政権下で財政規律は緩んでいくのでしょうが、それは許容せざるを得ないのでしょう。
○3位は小池さん(46票)。ギリギリ踏みとどまったという感じだが、地方票が取れなかった点に課題が残りました。これでは「上げ潮派が離党して政界再編」なんてことは考えにくくなりました。アメリカとは違って、「女性の首相を」という声がほとんど聞こえてこなかったのはなぜだったのか。小泉さんの影響力は衰えたのか。結果が投げかけるものは小さくありません。
○4位は石原さん(37票)。山崎派の上乗せが少なかったのもさることながら、東京都の地方票が取れなかったのは、お父さんもガッカリでしょう。今回は5人中3人が東京選挙区だったのに、これはちょっと意外な成り行きでした。今宵のビールは苦い味がするかもしれません。幹事長代理は、よろこんでお引き受けするしかないでしょう。
○5位は石破さん(25票)。推薦人20人にほとんど上積みがなかったことになるけれども、それは想定の範囲内。むしろ鳥取の3票、島根の1票にキラリと光るものがある。ニッコリ笑って念願の農水大臣、といきたいものです。
○こうして振り返ってみると、毎度のことながら絶妙な数字が出るものでありますな。今回はたぶんに出来レースっぽかったけど、それなりのメッセージは発せられたと思います。
<9月23日>(火)
○三菱UFJがモルガンスタンレーに9000億円を投じて最大20%の株式を取得。そうかと思えば、野村證券がリーマンブラザーズのアジア太平洋部門、さらには欧州部門も買収の見通し。溜池通信の最新号で「和製ハゲタカよ出でよ」と書いたのに、さっそく反応してくれたみたいで、ちょっとうれしい気がしています。
○これは何か書かなきゃ、と思ったら、ぐっちーさんがもう書いていた。って、当たり前か。それに付け加えることはあまりない。それにしても、去年のうちに出動してしまった産油国や中国のSWFの投資が失敗に終わり、様子見をしていた日本勢にチャンスが回ってきたというのは、怪我の功名というか何というか。昨年暮れに中国投資公司はモルガンスタンレーに50億ドルを投資したが、今度はMUFGが9000億円を投じて最大の株主に躍り出る。最初のストライクを見送ったのは正解だったということになります。
○その点では、「MUFGは最後においしいところを持って行きますか」というこのコメントが秀逸でした。「無傷の日本」が優位性を発揮した、という解説がされていますけど、それにしたって際どい差だったんだよ、とのご指摘。変に国粋的になったり、「ジャパンマネーの復活」みたいな騒ぎ方をするのは止めたほうがよさそうです。ちなみに「紅茶のあとで」さんは、英国でお勉強中だとのこと。面白い記事を期待しております。
○もっとも、この投資が成功するかどうかは分かりません。現在のアメリカの金融業界は、不良債権買取についての公的資金投入の仕組みが出来つつある段階で、ただし7000億ドルという金額があんまり大きいので(軍事予算よりも大きい!)、議会は案の定モメている。仮にこの法案が成立したとしても、「経営健全化のための」強制的な資本注入の仕組みはアメリカにはない。日本も1998年にそこで躓いた。ということで、もうひと波乱あっても全然不思議ではない。しみじみ、日本がたどった道のりと似ている。
○そうかと思うと、山崎元さんが「投資銀行ビジネスモデルの弱点」というエントリーの中で、投資銀行の問題点とは「個人の成功報酬制度をとっているために、リスクが拡大しやすいこと」と明快に指摘している。これは面白かった。ゴールドマンとモルガンは、「会社に長く居る方が得になる給与体系になっている」という話を聞いたことがありますが、これは社員が「後は野と慣れ山となれ」と思わないように仕向ける仕組みなのでしょう。
○さて、そういう投資銀行へ、日本の金融機関が手を出して大丈夫か、という意見は当然あるだろう。あるいは、「アメリカのそういうやり方が限界に来ているときに、なぜ今さら日本の銀行が手を貸すのか」という批判も、すでに誰かが言っていそうである(そーゆーことを言いそうな顔ぶれも、目に浮かぶなあ)。
○投資銀行というビジネスモデルは破綻したから、皆さん一緒に商業銀行に回帰しましょう。BIS規制を守って、中央銀行の言いつけを守って、低い利回りで満足しましょうよ、というのは、分からないではない。喩えていえば、「肉食動物を絶滅させて、草食動物だけの平和なジャングルを作りましょうよ」と言っているようなもので、日本のマスコミ的には一定の支持を受けそうなアイデアである。が、生態系としてはそれでは成り立たないだろうし、肉食動物がいなくなることでジャングルは貴重な何かを失うことだろう。
○そんなわけで、ワシ的には「和製ハゲタカ」を応援したい。少なくとも、「やっぱり駄目だったか」という姿は見たくない。ジャパンマネー1500兆円は、国内市場にとどまっている限り大きくは稼げないのだから、外に向かって雄飛するしかないではないか。
<9月24日>(水)
○先週末にポールソンが打ち出した救済案は、やっぱり議会を通すのが簡単ではないようです。アメリカもまた、10年前の日本と同じようにこの問題を政治化してしまうのかもしれません。というか、民主主義国において金融問題の救済に公的資金を使うことは、やっぱり簡単ではないのでありましょう。迅速な法案成立を期待するためには、もっと米国経済がひどい目に遭わなければならないのかもしれません。そうならないことを祈りますけれども。
○民主党側は、ポールソン案に「住宅差し押さえのための対応策」や「救済を監視する機構を作ること」、さらには「金融機関経営者の報酬を制限すること」を盛り込むよう主張している。この最後の項目などは、「まことにごもっとも」という感じだが、これを入れてしまうと金融機関側が救済を拒否したり、不良債権を隠したりするインセンティブが生じることになる。日本でも1998年3月末の公的資金注入が不十分だったのは、これが原因だった。ということで、同年秋の金融再生法の成立を待って、99年3月末の強制的な資本注入に至るのだが、この間に長銀と日債銀が破綻してしまう。金融不安が生じているときは、時間は味方ではないのである。
○共和党内にも反発がある。共和党の考え方は、当欄の9月17日でご紹介した政策綱領(Platform)に書かれている通り、「政府は市場に介入すべきではない」である。それでもって、「問題のある企業は市場で淘汰されるべし」。それを7000億ドルの公的資金投入で助けようというのだから、「そんな社会主義は許せない」ということになる。チェイニー副大統領が怒っているという説も流れている。繰り返しますが、このPlatformが採択されたのは今月上旬のことなのです。裏切りといわれても仕方がない。
○ということで左右から袋叩きになって、ポールソン案の前途は怪しくなった。ということは、市場の安定化もおぼつかないということである。しかしながら、こういうときに「Wall StreetよりもMain Streetの声が大切だ」といえば、この正論に逆らえる人は誰も居ない。彼らが「日本の経験」に学んでほしいと切に思う次第です。
○その一方、ワシントンでは「日本の株」が高騰しているとのこと。9月23日にナショナルプレスクラブで行われた「次期大統領のアジア政策セミナー」では、マイケル・グリーン、フランク・ジャヌージなどのお馴染みさんが、マッケイン、オバマの両陣営に分かれてディベートをしたのですが、ともに「日米関係は重要」「日本は頼りになる」と礼賛一色であったとのこと。まさに"Friend in need is friend indeed."(必要なときの友が本当の友)で、日本勢によるウォール街への投資が好感されているらしい。
○もちろん、MUFGや野村はアメリカを助けるためではなく、利己心に基づいて投資を決めているのであって、「10年前の意趣返しだ」という思惑だって隠れているかもしれない。とはいえ、日本はどこかの国のSWFとは違い、安全保障上の野心はないし、変に短期的な動きもしないはずなので、ウォール街にとっては安心できる資本である。議会で問題視されることもないだろう。とはいえ、トヨタ自動車がGMを救済することはないと思うけれども・・・・。
○さて、この問題は大統領選挙にも大きな影響を及ぼしつつある。端的に言えば、オバマは強力な武器を得たし、マッケインは苦しくなった。現状に怒った世論は「犯人探し」を始めている。今のところ有力な犯人は「規制緩和」であり、具体的に言うと「1999年にグラス・スティーガル法が廃止されたこと」である。それを主導したのは共和党側であり、マッケインも強力に支持した一人であった。もともと経済に強くないマッケインが、自己否定につながりかねない状態で論陣を張らなければならないのだから、これはツライ。
○まあ、せっかくですから、こんなデータも紹介しておきましょうかね。お二人とも、ウォール街からはバッチリもらっているみたいですよ!
●オバマとマッケインの献金上位リスト
Barack Obama
Goldman Sachs $691,930
University of California $611,207
Citigroup Inc $448,599
JPMorgan Chase & Co $442,919
Harvard University $435,769
John McCain
Merrill Lynch $298,413
Citigroup Inc $269,251
Morgan Stanley $233,272
Goldman Sachs $208,395
JPMorgan Chase & Co $179,975
<9月25日>(木)
○マッケインがまたまた大ギャンブル。形勢利あらずと見て、9月26日に予定されていたミシシッピ州における第1回のテレビ討論会をキャンセルし、しかも選挙活動も停止してしまった。大義名分は「今はそんなことをしているべきときではない。超党派で救済策を成立させるために努力しなければ」。そりゃま、たしかにそうだ。議会は今週一杯で閉会になってしまうし、7000億ドルの救済策が成立しないままで来週月曜日を迎えようものなら、それこそ株価は暴落疑いナシである。
○とはいうものの、一上院議員の彼がワシントンに舞い戻ったところで、できることはたかが知れている。察するにこれは政治的パフォーマンスというものですね。咄嗟の判断としては悪くない。テレビ討論会は都合3回行われますが、通常、もっともインパクトがあるのは初回です。2回目、3回目の印象は薄くなる。その初回を、今のような不利な条件で戦うのは避けたいと判断したのでしょう。まったくもって大胆かつ、食えない爺さんです。
○それはさておいて、ホントに明日で法案は通るのか。変な妥協が加わったり、公的資金の額が減ったりするのではないか。ハラハラさせてくれますな。アメリカにおけるバブル崩壊後の物語はまだ始まったばかりですが、これもひとつの政治的な「見せ場」になることは間違いないようです。
<9月26日>(金)
○案の定、7000億ドルの救済策は簡単には通らないようです。造反の火の手が上がったのは下院の共和党からでした。これでは超党派の協議を持ちかけたマッケインの面目は丸つぶれ。逆に大人の態度を見せたオバマの株が急上昇。そりゃあもうじき選挙を迎える議員さんたちとしては、ここでおめおめとポールソン案に賛成できるかと思っていることでしょう。でも、市場関係者はハラハラするしかありません。そしてこうしている間に、全米最大のS&Lであるワシントンミューチャルがぶっつぶれました。今日の株価はどうなるのか。
○そんなニューヨークに降り立ったのが、われらが麻生太郎首相でありました。今日の国連演説の全文は以下をご参照。いい仕事してますねえ。
http://www.mofa.go.jp:80/mofaj/press/enzetsu/20/easo_0925.html
議長、御列席の皆様、
私は24時間余り前、我が国国会から日本国の総理大臣として指名を受けました。受けたばかりの者、でありまして、そのような者として本日この場に立つ機会を得ましたことは、まことに光栄の至りであります。
(中略)
この度ニューヨークを訪れて、私はバンカー(銀行家)について昔聞いた話を思い出しました。バンカーには、いつも2種類しかいないそうです。少ししか記憶できないバンカーと、まったく何も記憶できないバンカーと――。
金融に、マニアとパニックが相伴うこと、形あるものに、影の従う如くであります。一定の間隔を置いて、マニアは必ず胚胎し、パニックを招来します。
今から10年前のちょうど9月、世界は一度、流動性を突如失う悪夢を見たはずでした。この四半世紀余り、東京はもとより多くの国、市場を舞台としながら、マニアとパニックは数年おきに、あたかも終わりのないロンドを奏でてきたかに見えます。
この度の熱狂において、東京は比較的素面(しらふ)でありました。が、これとても、1980年代から90年代にかけしたたかあおった酒の宿酔(ふつかよい・a
hangover)が過剰債務(a debt overhang)となり、これに苦しむこと、あまりの長きにわたったゆえだったに過ぎぬと言っていいでありましょう。
○日本の首相が国連総会で、演説の冒頭に旬のネタでジョークを言う。ホントにこんな時代が来るとは、思いませんでしたねえ。てなわけで、麻生節、全編通じてまことに結構というものですが、昨日から発足したこの新政権を、果たして何と評価したらよいものか、あたしゃ正直なところ考えあぐねております。
○とりあえずあの組閣は何ごとでありますか。とにかく、石破農水大臣以外はどこを褒めたらいいのか分からない。小学生の夏休みの宿題に、自由研究をやらせてみたら、とんでもないものが出来上がってしまった、との感があります。こんなことなら、ちゃんと課題を与えて条件を縛っておいた方が良かったんじゃないでしょうか。
○昔の自民党では、組閣の際に「この派閥からは誰それ」「参議院はこの二人」などといった制約が課せられ、首相は厳しい条件の中で創意を働かせるしかありませんでした。その結果として、箱弁当のように手の込んだ調整が行われたものですが、そういう中から「首相の意向」が伝わってきたものです。その点、今回の組閣は「オレの仲良しに適当に声かけておいたから」としかみえません。好き勝手が許されるようになったから、好き勝手をやってみた。「オレオレ内閣」ですな。
○内閣支持率が40%台後半というのは、上々の数字だと思います。「あと10%ほしかった」と言っている人もいるようですが、気が知れません。もともと自民党は、激しく嫌われていたのではありませんか。それが小泉政権5年半の間に、有権者の拒否反応がきわめて薄い政党になった。そういう財産を、安倍、福田政権が使い果たしてしまった。今ではおそらく4割前後の人たちが、「とにかく自民党だけは駄目」と思っている。そんな中での「40%台後半」は、かなり良い数字といわざるを得ません。
○他方、有権者の間では「とにかく小沢首相だけは駄目」という警戒感もある。来たる総選挙は、「アンチ自民党対アンチ小沢」の戦いでありましょう。要するにネガティブオーラ同士の対決なのです。これはもう、どっちの政策がどうとかいうのは空しいものですな。気が早い話ですが、投票率はあんまり上がらないのではないでしょうか。
○さて、こういう状況で小泉さんの引退声明。おそらく以前からの予定の行動でしょう。改革の後退に嫌気が差したとか、総裁選の結果に失望したなどといった理由ではないはずです。小泉さんは「信念の人」ではなくて、「美学の人」なんですから。まあ、「小泉再登板説」を唱えていた人たちは納得しないでしょうけれどもね。
○もっとも、このタイミングで声明を出したのは、麻生首相に対するちょっとした嫌がらせになるかもしれません。この週末、TV各局が取り上げるのは麻生首相の姿よりも、小泉時代を振り返るなつかしの映像の数々ということになるのではないでしょうか。2001年に書いたこの文章なんかも、とっても懐かしいんですけど。
<9月27日>(土)
○麻生内閣は早速、問題を抱えてしまいました。そもそも文教族をいっぱい登用したところに問題があると思うんですよね。こーゆー話を聞いたことがあります。ま、ホントの所はわかりませんけどね。ふふん。
実力があり、コネもあるなら大蔵族を目指せ。
頭の回転がよければ、商工族がお似合いだ。
大器晩成型なら、厚生族も悪くない。
選挙に強いのなら、外交族や防衛族を目指すもよし。
最低限、腕力があれば、建設族か農水族は務まるだろう。
以上の全部が駄目でも、あきらめることはない。
文教族なら、誰でも務まる。
<9月29日>(月)
○アメリカの不良債権買取策はTARPというのですね。"The Troubled Asset Relief
Program"。その昔、「ガープの世界」という映画がありましたけど、現実世界の「タープの世界」は地雷がいっぱいであります。
○以前も書きましたけど、公的資金投入の際の議論のポイントは@不可避性、A経営責任、B最小負担の3点であります。つまり、@「だってしょーがねえだろ」、A「落とし前はつけるからさ」、B「その方が結局は安く済むと思うよ」といって、有権者=納税者を説得するわけです。
○ところが、この議論は最初から行き詰まるように出来ている。
(1)危機が不可避であることを証明することは不可能である。しょうがないから、「市場が暴落したらどうするんだ」「お前ら、責任が取れるのか」と言って反対者を脅すしかない。今回、反対に回った下院共和党の面々も、月曜朝に市場が開いたときの反応が怖くて合意したのだろう。が、「公的資金が本当に必要だったのか」を心から納得することは難しい。逆に救済策を主張する側としては、「危機を未然に救ったとしても、それは自分の手柄にはならない」という点が悲しい。
(2)税金で救済される経営者に責任を取らせるのは、あったり前のことに思える。が、そこの部分を厳格にすると、使い勝手の悪い制度となり、金融機関の側が手を出しにくくなる。これは実際に日本で起きたことである。今回の場合、マッケインは「そんな経営者が、大統領の年収以上を得るのはケシカラン」と言っている。しかし大統領の年収40万ドルは、ゴールドマンサックスのCEOの2日分の給与である。おそらく、経営の危うくなった銀行は、優れた経営者を登用することが不可能になってしまうだろう。
(3)公的資金の規模は、それは小さいほうがいいに決まっているが、それこそ「水鉄砲よりバズーカ砲」のポールソン理論を思い起こす必要がある。できれば金額はドドーンと積んで、実際には行使されないのが望ましい。今回のTARPの議論では、当初の7000億ドルを3つに分けて投入することになるらしい。これこそ「戦力の逐次投入」というやつで、お勧めしがたい作戦である。
○問題はこれにとどまらない。日本の経験が教えることは、この後、TARPに関する次のような問題が生じるだろうということである。
(A)買取価格の問題。銀行が抱えているサブプライム債券が、仮に、@簿価で100ドル、A満期保有価格で90ドル、B時価で60ドル、C投売り価格で40ドルであるとしよう。さて、米財務省はいくらで買うべきでしょうか。バーナンキは「Aがいい」と言っているが、政府としてはBで買う方が損が少なくていい。しかし債券を売る銀行の側は、それでは「@―B=40ドル」が損として確定してしまう。だったら売りたくない、と言うだろう。他方、納税者は「Cで買うべきだ」と言うはずである。さあ、どうやって値段を決めるのか。
(B)資本注入の問題。銀行が抱えているサブプライム債券を政府が買い取ったとして、後に残ったのが過小資本の銀行ということになれば、金融不安は終わらないことになる。だったら最後は、優先株を出させて政府が買い取るようなことをしなければならなくなる。これまた、目から火が出るような金額が必要になるだろう。
(C)司法の介入。すでにリーマンブラザーズ社にはFBIが捜査に入っているとのこと。そんなもの、真面目に調べたら、違法行為が発見されるに決まっているではないか。なにしろ投資銀行なんだから。そうなると、「ますますケシカラン!」という声が世の中に満ち満ちる。公的資金投入というときには、世論は血に飢えるものです。早い話が、スケープゴートを求めてやみません。少なくとも逮捕者が出ないと、収まらないでしょうな。
○こういう岡目八目は、楽しからざるものがありますな。現時点では、10月1日に法案成立との報道が行われていますが、まだまだ先は長そうです。
<9月30日>(火)
○どっひゃー!一夜明けたらTARPは否決ですか。まあ、11月4日に議会選挙があるわけだから、下院がそういう反応をするのも、不思議なことではありません。アメリカ議会も、そろそろ党議拘束を考えた方がいいんじゃないかなあ。
○とはいえ、市場にとっては悪夢到来です。遠回りは避けられないでしょう。いつもと同じことを痛感いたします。
「アメリカはみずからの失敗から学習する偉大なる能力を持っている」
「ただし他国の忠告を受け入れたり、他国の失敗に学ぶような賢明さは持ち合わせていない」(07:26記)
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○あらためまして、今月はサプライズの多い月でした。ビックリしたことを書き並べておきましょう。
9月1日(月):福田首相の辞意表明
9月3日(水):米共和党大会で、ペイリン氏が副大統領候補受諾演説
9月7日(日):米財務省がファニーメイ、フレディマックを国有化
9月9日(火):北朝鮮建国60周年に金正日総書記が現れず。重態説が浮上。
9月14日(日):ブラックサンデー。リーマンブラザーズが経営破綻。メリルリンチが買収。
9月16日(火):米最大手保険会社AIGを救済。
9月19日(金):不良債権買取策を発表。NY株価急騰。
9月20日(土):丸大食品にメラミンが混入。回収へ。
9月24日(水):マッケインが選挙活動を中止。
9月25日(木):小泉首相が不出馬宣言。議員引退へ。
9月28日(日):中山国交相が問題発言でスピード辞任。
9月29日(月):米下院が緊急金融安定化法案を否決。
○いろいろあった中でも、やはり今日のTARP否決は歴史に残るサプライズというべきでしょう。文字通り"Surprise
of the Month"という感じですな。「驚きの9月」を締めくくるにふさわしい大きなネタでした。
○個人的には、「阪神が巨人に並ばれてしまった」というのも、かなりのショックなんですが。あーあ、明日の日銀短観も、きっとビックリするほど悪い内容なんだろうなあ。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki