●かんべえの不規則発言
1999年12月編
<12月1日>(水)
○えー師走でございますが、ライフスペースだの法の華だの、得体の知れないカルト集団のニュースが多いです。なんであんなグルに騙される人がいるのか分かりませんが、考えてみれば信仰というのは恋愛感情みたいなもんで、理屈は後からついてくるんですな。私どもの周囲には、「あんな人が、なぜあんな男(女)に・・・」みたいな話がめずらしくありません。本人は幸福だけど、周囲が祝福してくれるものばかりではない、という点でも、信仰と恋愛は似ております。
○かんべえは無宗教、無党派層の人でありますが、キリスト教についてはわりと詳しい方だと思います。あるとき、真面目なクリスチャンの友人に、「キリスト教は予定説の部分が理解しがたいですな」みたいな議論を吹っかけようとしたら、「そういうのは適当にワープしないと、信仰なんて成立しませんよ」と軽くいなされてしまいました。いわれてみればそのとおり。ちゃんとした法則があって、やさしい解説があって、手順を踏めば誰でも理解できる、というのは学問の体系であって宗教ではない。思い込みのない恋愛がないように、飛躍のない信仰なんてそもそも信仰ではないのですね。
○信仰も恋愛も原則は自由であってほしいものですが、詐欺まがいのものも含まれているからややこしい。被害者には騙されている自覚がないから、止めようとする周囲は苦労する。しかも両者とも、迫害されるとかえって強くなるという特性がある。もうじき上祐さんがムショから出てくるそうですが、またまた騒がしくなるでしょうな。
<12月2日>(木)
○北朝鮮に行った人の話を聞きました。かの地の食糧事情は、最悪といわれた97年頃に比べて改善しているそうです。一時は骨と皮ばかりの子供の写真が出回りましたが、少なくともピョンヤン周辺はそれほどではなかったとか。金正日総書記の下で「強盛大国」を目指しているそうで、衛星だかミサイルだかを打ち上げる能力を持っているのですから、それもそうですね。
○「民主主義国では飢饉が起きない」という指摘を聞きました。今月号の『選択』p31で、ノーベル経済学賞を受賞したインド人経済学者、セン氏の著書を紹介していて、その中に出てくる話です。インド、ボツワナ、ジンバブエは貧しい国だが、民主主義体制なので飢饉は一度として起こっていない。スーダンとエチオピアでは深刻だった、という。植民地時代であれ、共産党体制であれ、社会が分断されているときに飢餓は起こるという。考えさせられるお話です。
○家族が不意に入院したりして、次号溜池通信の更新はちょっと遅れるかもしれません。あしからず。
<12月3日>(金)
○入院した家族は、結局一晩だけで無事に退院しました。お騒がせしました。会社は休んだけど、半日は家で仕事ができたので、溜池通信もなんとか間に合いました。良かったよかった。かんべえは、「結果オーライ」という言葉が好きです。
○家族はとても大事。会社も一応大事。でも自分自身も大事。いちばん犠牲になりがちな、最後の部分を守りつつ、今年も何とか暮れていきそうな感じです。忘年会のシーズンですが、今夜の予定はキャンセルしてしまいました。「溜池時事放談会」の皆様、失礼いたしました。とても残念です。また誘ってね。
<12月4日>(土)
○WTOシアトル閣僚会議が決裂しました。明日の朝刊にはいろいろ書かれるでしょうけれど、とりあえずかんべえの印象はこんな感じ。
○やっぱり大統領選挙が影響している。ブラッドレー候補が思いがけず強いから、ゴア副大統領は労組などの民主党コア支持層を押さえなければならない。だもんで、彼らの言いなりになってしまう。労組は貿易と労働問題のリンケージに敏感だ。これがアメリカの妥協を難しくしてしまった。この辺の理屈は、溜池通信の11月26日号で書きました。
○直前に中国のWTO加盟で合意したこともマイナスに働いた。米国内の労組や環境団体など、潜在的な反自由貿易の勢力をいたく刺激してしまった。彼らは多国籍企業が、中国とかベトナムとかで少年労働をさせたり、環境を破壊したり、悪さの限りを尽くしていると信じている。そういう不信感がシアトル会議で噴出し、派手な抗議運動につながってしまった。
○で、日本の立場ですが、「日本のせいで失敗した」と言われる最悪の事態は回避できました。なにせAPECにおける早期自主的分野別自由化(EVSL)交渉は、日本が林水産物にこだわって潰した前科がありますから。かといって、「アメリカが悪いから失敗した」と他人事みたいに言っていればいいわけではありません。WTO新ラウンドには日本の利益がたくさんかかっています。ここからどうやって巻き返すのか。WTOの成立は、世界経済にとって90年代最大の収穫のひとつです。新ラウンドがビルトイン・アジェンダの農業とサービスだけで終始するようでは困ります。
○WTO交渉は、CTBTの批准失敗でミソをつけたクリントン政権が、失地挽回を目指して思い切り力を入れていたところ。外交における2連敗がはっきりしたことで、政権にとっては大きな痛手です。とはいうものの、クリントン大統領は本来「俵に足がかかってからが勝負」の人なので、ここから逆襲に転じるかもしれない。本誌10月22日号では、「クリントンはいよいよレイムダック」と書いたけど、みんながあっと驚くようなリカバリーショットを期待したいところです。
<12月5日>(日)
○筆者が住んでいるのは柏市の国道16号線の近くですが、近くに「スーパー・オートバックス、Woowシティ」というモールができて、すごい人気です。自宅から5キロほどの距離なのに、駐車場に入るまでなんと1時間以上。テレビ(TBSの「王様のブランチ」)で紹介されたのが原因のようですね。
○エンタランスには、ハッキネンが乗っていたF1マシンが置いてある。中に入ると、この世の中には、なんとたくさんの自動車用品があるものかと感心。携帯電話のハンズフリー商品が人気のようです。カーナビも、いろんな企業が参入してるのですね。あれで利益が出るんでしょうか。それから暴走族御用達みたいな改造用のマフラーが何種類もあって、カーピットで装着できるようになっている。自動車産業というのは、裾野が実に広い。
○昔、いろんな商品価格をしらべて、毎月の変動を調べていたことがあります。そうしたら自動車産業の景気とリンクしている商品が圧倒的に多い。鉄はもちろん、アルミとかガラスなどの原料は、自動車メーカーを最終ユーザーとしているから、自動車の売れ行き次第で価格が上下する。こういう現象は80年代後半から急に深まったようで、今では自動車産業が文字どおり日本経済の中核となっている。
○で、世界に冠たる日本の自動車産業を育てたのは、@世界一クルマにうるさい消費者とAメカおたくの技術者たちであろう。たまたま昨日、車検のために自家用車をディーラーに持っていったのですが、ネクタイをした営業マンというのはクルマのことはあんまり分かってなくて、作業服を着た人が出てきて初めて話が始まる。日本全体に共通していえることですが、ホワイトカラーはたいしたことないけれども、ブルーカラーには国際競争力があるようです。
○今日行ったスーパー・オートバックスなどは、クルマ好き消費者とメカニックたちにとっては堪えられない世界でしょう。アミューズメントやアウトレットもついているので、時間をつぶすには最適です。駐車場への導線にいまひとつ問題はありますが。
<12月6日>(月)
○今日の夕方、会社で自分のHPを開いてみたらカウンターがちょうど4000。ささやかな感動と満足を味わいました。多くの方に立ち寄っていただいているようです。感謝。本日も当ページに対し、マスコミ関係者から2件、モスクワから1件のメールを頂戴しました。この調子だと年内に5000件、いくかもしれませんね。カウンターが5000だった方はお知らせください。かんべえから記念品を差し上げます。
○で、問題は本日発表の国民所得統計であります。本誌の11月19日号で言ってたこととは違う結果となりました。7−9月期の実質GDPが−1.0%とはずいぶん低めに出たものですが、これと同時に1−3月期の数字を下げ(2.0%→1.5%)、4−6月期を上げる(0.1%→1.0%)とはいかがなものでしょうか。こんなに大きく変わるのでは、統計そのものが疑わしくなってしまいます。
○国民所得統計速報のことを通称QEと申します。これは、Quarterly Economic 何とかではなくて、Quick Estimationの略なんですね。つまり「迅速な推計」なんです。とはいうものの、日本の場合、3ヶ月後にならないと四半期GDP統計は出ない。7−9月期のGDP統計は、米国では11月半ばに速報値が出るし、韓国でも11月下旬には出ている。12月上旬にならないと分からないのでは、どこがクィックですか。しかも何日に発表されるかは、直前まで教えてもらえない!
○じっくり時間をかけて数字が出るということは、その後の修正が少ないということかと思ったら、今回は2四半期さかのぼって修正されてしまった。米国のGDPは速報値、改定値、確定値と3回公表され、そのたびに大きく訂正されますが、こっちもそのつもりで読みますから問題はありません。しかし日本のようなやり方で、今回のような抜打ち修正は困ります。エコノミストが経企庁を疑うのは、競馬ファンがJRAを疑うのと同じようなもので、それをやったら地獄に落ちてしまいます。
○で、景気はどうなるのか。今回の発表で楽観論はますます少数派になりそうですが、13日の日銀短観を見てみないとまだ分からないと思います。だって今度の数字も、あとで修正されるかもしれないでしょ?
<12月7日>(火)
○最近、首都圏では夕焼けがとてもきれいです。先日はある会議室で、窓の外が刻一刻とオレンジ色に染まっていくのに見とれていました。赤く染まった東京の景色というものは、捨てたもんじゃございません。いえね、会議がとても単調だったもので・・・・
○夕日を見ながら、ふと「東京3大テロ事件」というのを思いつきました。それは「赤穂浪士の吉良邸討ち入り」「桜田門外の変」「二二六事件」。偶然なことに、全部、雪が降った日に発生しました。
○『竜馬がゆく』だったでしょうか、司馬遼太郎がこんなことを書いていました。「およそ暗殺が歴史を前進させることはないといっていい。桜田門外の変は日本史におけるその唯一の例外である」。大老・井伊直弼の死は、結果的に明治維新の口火を切った形になりましたから、この評価は正当であると思います。
○問題はそれ以外のケースです。特に忠臣蔵。あれは生産性も正統性もない、ただのテロ行為に過ぎません。吉良上野介がどんな悪人だったか知りませんが、深夜に殴り込みをかけられて、斬り殺されるほどだったとは思えない。かんべえは小さい頃から、赤穂浪士の討ち入りとヤクザの仕返しのどこが違うのか理解できず、周囲の大人たちに何度も尋ねたのですが、いまだに納得のゆく答えを聞いたことがありません。だのに「忠臣蔵は日本人の大ロマンである」などという人がいるから理解に苦しみます。少なくとも、NHKの大河ドラマが何度も取り上げるような事件だとは思えない。
○ことによると、日本はテロに対して寛容な国なのかもしれません。二二六事件でさえ、当時の世論は青年将校たちに同情的でしたし、今でも「当時の暗い世相が、怒れる若者たちを駆り立てた」みたいな、変に物分かりのいい解釈を見かけます。若くて純真で貧しければ、世間は大概のことは許してくれますが、暴力はいかんのじゃないでしょうか。
○だいたいキルギスでもペルーでもそうでしたが、日本のマスコミはゲリラに対して本気で怒っていません。いきなり「彼らの気持ちは良く分かる」などと言い出しそうなところがあって、かんべえは不安になります。いまどき「造反有理」じゃないと思うんですが、これって少数意見?
<12月8日>(水)
○今日、ロシア通のH氏と雑談しました。それによると、最近のロシア軍チェチェン侵攻は、17日に迫った下院議院選挙対策という意図があるのではないかと。ロシア政府は、表向き「チェチェン人がテロ活動を行っているから」と説明していますが、国内向けにはさらに「チェチェンを陰で扇動しているのはアメリカだ。だからこそチェチェンを叩くのだ」という理屈をこねているようです。
○フラストレーションが溜まっているロシア国内では、こういうおかしな理屈が通じるのだそうです。腹いせの対象になっているチェチェン人はいい迷惑です。クラーイ顔で、陰険な決断を次々に下しているプチン首相も、「頼り甲斐がある」ということでロシアでは人気があるのだとか。幸か不幸か石油価格が上昇したので、ロシアは年末の対外債務返済も資金繰りがつきそうな見通し。「IMF何するものぞ、くたばれ西側」などと開き直られたら、えらいことになります。
○さて、来年6月にはロシア大統領選挙があります。憲法上の規定により、エリツィンの三選はできませんから、新しいリーダーが決まることになっている。ただし就任は少し先になるので、7月の沖縄サミットには完全抜け殻状態のエリツィンが来ることになりそうです。同じ頃、米国は大統領選挙で党大会のシーズンですから、これまたレイムダックのクリントンがやってくる。なんとも楽しいサミットになりそうです。
○もしも地元が、「沖縄の基地問題をクリントンに直訴する」みたいなことを期待しているとしたら、それはあんまり意味のない行為となります。「沖縄サミットを起爆剤に、北方領土交渉の前進を」はもっと期待薄。こういう説明をしないで、変に期待感を煽っている政府はちょっと無責任じゃないでしょうか。まさか気づいてないはずはないでしょうけれど。
<12月10日>(金)
○最近は、「会社を辞めます」という挨拶を聞くことが多くなりました。今日もまたひとり。Iさんは投資顧問会社を辞め、これからは株式投資の振興と、インターネットの可能性に賭けるのだそうです。Iさんの武器は、 全日本株式投資選手権というホームページ。1万人を超える読者が、彼のメールマガジンを購読している。これをどうやってマネーに転換するのか。不惑と呼ばれる40歳にして、いまどきめずらしい5人の子持ちのIさんが踏み切った冒険に、心からの拍手と応援を送りたいと思います。
○もうひとり気になっているのは、かんべえと同じ会社のTさんです。商社マンとして文句なく一流の方なのですが、当人いわく「組織人として適性がないことに気づいた」。で、辞表を提出して、これから何をするのかといえば、「パチプロになる」。どこまで本気で、どこまでが韜晦なのか分かりませんが、これまた勇気ある決断といえましょう。
○1999年末を期に、大きな冒険に踏み切る人は大勢いることでしょう。新しいミレニアムの到来は、潜在的な冒険希望者の背中を押してくれているようです。
<12月12日>(日)
○唐突ながらこんなことを思いついた。「日本人は物忘れの天才である」。都合の悪いことをスパッと忘れてしまう才能というのは、あると大変に便利なものです。「攘夷」を口実にして天下を取って後から「開国」に回るとか、戦争中は「鬼畜」と呼んでいた相手と戦後は同盟国になるとか、「一粒たりとも入れない」と言っていた米を自由化するとか。以前のことを忘れてしまわないと、こういう柔軟な変身はできません。
○企業でいえば、カメラメーカーが事務機器メーカーになったりするようなケースは、上手に過去を忘れたことが成功の鍵となっているのでしょう。逆に忘れることが下手だと、いつまでも輝かしい過去を捨て去ることができず、ずるずると没落することもあり得ます。
○で、かんべえが不思議に思うのは、なぜ「バブルの崩壊」は忘れられないのか。今の大学生なんか、バブルの時代の記憶はほとんどないはずなんですが。日本経済がなぜ不況かというと、性懲りもなく「バブル崩壊以後…」という説明がされている。そりゃま、「空白の90年代」を招いた直接の原因はバブル崩壊でしょうが、むしろ責められるべきはその後の対応のまずさでありましょう。低成長が10年も続けば、年金制度もおかしくなりますし、潜在成長力も低下してしまいます。
○いつまでも昔のことにこだわっているのは、バブル崩壊で受けた傷が非常に大きかったせいでしょう。手ひどい失恋みたいなものです。失恋は忘れなければなりません。思い出の品(不良債権)をいつまでも残しておいたり、別れた彼女を追い回す(ミニバブル待望論)ような真似はやめて、とっとと出直しをしなければなりません。
○間もなく、日経平均が最高値3万8915円をつけた1989年12月29日から10周年になります。しばらくこの問題を考えてみたいと思います。
<12月14日>(火)
○本日はリンク集を微調整しました。読者の役に立つ、というほどのものではなく、こんなページとつながってるんですよ、ということをお知らせする程度のリンクです。知らない間に紙面が新しくなっていた 東京万華鏡を追加。主催者の高野孟さんが発行しているニューズレター『インサイダー』誌は、日本におけるニューズレターの草分けです。80年代を撃つ!というキャッチがついていた頃から読んでいますが、思えば『溜池通信』の作りなども、微妙な影響を受けているような気がします。
○「ニュージーランドの選挙結果」について、読者の方からご質問を頂戴しました。先月末の選挙では、野党労働党が勝利し、従来の経済改革路線に待ったがかかりました。この現象をどう見るか、難しいところです。最近、アングロサクソン系の国で、改革疲れが見られるような気がします。だからといって、改革に熱心でない日本やドイツのような国が、「第三の道」とか「人間の顔をした資本主義」などと言い出すのも考えものですが。
○今日の国会喚問では、日栄の松田社長が役者ぶりを見せつけたようです。国会の証人喚問では、昔は「記憶にございません」が定番だったけど、松田社長は「信じられません」という新手を編み出したようです。この言葉、ちょっと流行らせてみたいですね。
<12月15日>(水)
○臨時国会が閉幕しました。何はさておいて、「小沢の時代は終わった」という気がします。この先、自由党が自民党に合流するか、連立離脱するか、分裂するかはともかく、彼一人に政界全体が振り回されるようなことは、もう二度とないのではありますまいか。
○思えば1990年代の日本政治は、ほとんどすべてのシーンに小沢一郎氏が登場していました。湾岸戦争と国際貢献(1991)、佐川スキャンダルと経世会分裂(1992)、細川政権誕生と55年体制の崩壊(1993)、国民福祉税騒動(1994)、新進党の躍進から分裂(1995〜96)、保保連合と沖縄特措法成立(1997)、そして自自連立(1999)へ。彼について触れることなく、90年代の日本政治は語れません。
○小沢氏の行動には、いつも「保険がかかっていない」。うまく行くときは実に見事。しかし都知事選での磯村氏擁立(1991)、羽田内閣総辞職と海部擁立(1994)、新進党解党(1997)など、劇的な失敗にも事欠かない。小沢なき政局は、非常に退屈なものになるかもしれません。
○「政策中心」が小沢氏の売り文句でした。それにしては「議員定数削減」は、彼がこだわり続けるにしてはつまらないテーマでした。「議員を増やす」のならともかく、国会議員が何人減ろうが国民にとってはいわばどうでもいい話ですから。小沢氏に期待されていたのは、普通の政治家が逃げて通るような問題を、堂々と提起するという役回りです。残念なことに、彼の代わりになりそうな人物は見当たりません。
<12月16日>(木)
○今年の日本を代表する3つのもの。「ロケット、コンクリ、バケツ」。ロケットは落ちる、コンクリートも落ちる、バケツは青い光を放つ。あーおそろし。技術大国ニッポンの落日は迫っている。というか、心のゆるみがここまで来ている。
○今年の日本を代表する3つのもの。「ひかる、ピカチュウ、政務次官」。宇多田ひかるの才能は、ある日突然に舞い降りました。すごいものはすごい。彼女の良さが分からない大前研一さんは不幸な人です。ポケット・モンスターは、そろそろ日本では飽きられつつあった頃に、アジアと米国で人気が爆発しました。なにせゲームとアニメは日本の独壇場。両者の頂点たるポケモンが世界を制するのは、当然といえば当然ですな。ピカチュウが"TIME"や"Newsweek"の表紙を飾るんですからえらいものです。"The Economist"が取り上げた日には、どうしたらいいんでしょう? 最後に政務次官といえば、昔は盲腸と呼ばれた存在でしたが、政府委員の答弁を廃止したおかげで地位が向上。若いし、英語ができる人が多いし、日本政治における久々明るい存在となっています。
○古いものには期待できない。新しいものに期待しましょう。それが2000年を迎える心構えというものでしょう。
<12月17日>(金)
○いろんな方から、「読んでるよ」と言っていただいた一日でした。そう言われると一瞬ドキッとしますが、ありがたいですね。それにしても、ワシントンで「ベトナム紀行編」を読んでいた方がいたのには驚きました。さて、ここであらためて宣言しておきますが、記念すべきカウンター5000をゲットした方には、かんべえより図書券5000円を贈呈いたします。お知らせをお待ちしております。
○毎日アクセスしてくれているという、大阪のI記者と久々にお話しました。最近の大阪の話題は、@ノック知事のセクハラ問題、AJR西日本のトンネル・コンクリート問題、B日栄の国会証人喚問などだそうです。
「大阪の人は、やっぱりノックさんを許しちゃうんですか」
「いやあ、世論調査すると分が悪いようですよ」
「クリントンみたいにはいきませんか」
「アメリカは景気がいいけど、大阪は悪いですから」
はあ、さもありなん、ですね。
○日栄の問題については、いろいろ裏があるという話です。世間の批判は高まってますけど、かんべえは高利貸しというものはこの世の必要悪だと思います。商工ローンについて最近報道されているような話の多くは、少なくとも『ナニワ金融道』の読者にとってはなんら真新しい話ではありません。商工ローンをつぶせば、その分の客は街金にいくし、街金がおかしくなればトイチの業者に行く。たとえ反社会的な存在であったとしても、客の求めがある限りそのサービスは繁栄します。
○パチプロ転向宣言をしたT先輩に、何をプレゼントしようかと画策中です。世の中にはパチンコグッズも多種そろっているようで、なかなか楽しみなプロジェクトです。
<12月18日>(土)
○昨夜は遅く帰ってきて書いたものだから、今朝になって「はて、わしは昨晩何を書いたのじゃろう」(ぼけ老人状態)。今日になってあらためて読んでみたら、とんでもないことを書いていたわけではなかったけど、日付が間違ってました。
○ブランド・ローヤリティの非常に高い客のことを、「鉄板」という言い方があるのですね。「常連」や「お馴染みさん」を超えた存在。飯屋ならば、週に1度はかならず来てくれる客。買い換えるときは、同じメーカーの製品を指名してくれる人。ホームページでいえば、毎日アクセスしてくれる人。浮気をしない客というものは、商売する側から見ればいちばんありがたい存在ですね。テッパンをいかに増やすか、はマーケティングの基本テーマといえましょう。同時にテッパンを逃がさない、ということも非常に重要です。
○昔、クルマを買うときに、自動車会社に務める親友がこんなアドバイスをくれました。「ディーラーには思い切りワガママを言え。何を言っても構わん。そんかわり、最後はちゃんと買え」。店にとって、わがままな客は嫌な客ですが、苦労の末に買ってくれた瞬間、いいお客になるのだそうです。そういう客のことは、ディーラーはいつまでも覚えていて、あとで何かあったときも対応が良くなるのだとか。逆に「クルマはトヨタに決めている」というようなテッパン客は、店の側でもつい手抜きしてしまう。わがままな客には、お店を鍛えるという効用もあるのでしょう。
○ふと気がつくと、かんべえはスーツも床屋もガソリンスタンドもコーヒー豆も、毎度お店指定のテッパン客です。先日、もう10年近く通っている床屋で、「昔に比べれば、髪の毛が細くなりましたねえ。でも本数は減ってないから、まだ心配は要りませんよ」といってもらいました。40が近くなるとこういうひとことがうれしくて、長く通ってて良かったなぁと思った次第。
○ところで鉄板といえば競馬(どういう発想じゃ)。明日はスプリンターズ・ステークス。そして来週はいよいよ有馬記念。1年の総まとめの季節ですね。かんべえは有馬記念だけは毎年買っています。当たらないけどね。今年はスペシャルウィークとグラスワンダーの勝負でしょうか。まぁ、競馬ほど、鉄板(レース)がよく抜ける世界はないでしょうな。
<12月19日>(日)
○Sさんに教えてもらった パチキャラ・ショップにアクセスし、「大工の源さんマグカップ」を注文。パチンコのキャラクターグッズを売っているページです。例のパチプロに転向するT先輩へのプレゼント用。かんべえ、Tさんとは麻雀とカジノはお付き合いするけど、パチンコはあんましやらない。学生時代のお金のない時期にいっぱい負けましたから。
○本来、格調の高いこの「不規則発言」ですが、急にギャンブルの話が止まらなくなりました。今日のスプリンターズ・ステークスは順当な結果。そこで来週の有馬記念が問題です。スペシャルウィークは「国産馬」で「努力家」タイプ、グラスワンダーは「外国産馬」で「天才」タイプ、って感じですかね。両雄の対決が見物です。一方、名脇役ステイゴールドを軸に、今回の中山から導入されたワイド(1−3着、2−3着でも当たりになる馬券)で買ってみたくなる気もする。
○今年も残りわずか。仕事の原稿はあと2つ。「溜池通信」はあと1つ。忘年会はあと3つ。年賀状の準備はまだ全然してません。
<12月20日>(月)
○今宵は3連荘。最初は、米国インディアナ州で再就職されることになったT氏の送別会。次に円より子参議院議員の忘年会。「働く女性と子育てについて」みたいな話を少々。最後に三浦展さんの出版記念パーティーへ。お土産は講談社現代新書『家族と幸福の戦後史』。帰りの千代田線では熟睡。久々にマメで社交的な人間になった気分。本当はものぐさで出不精で人見知りする人間なのですが。
○いろんな人に会って、「最近、HP作ってるんです」みたいな話をする。相手が「どんなの作ってるんですか?」と一応は聞いてくれる。そこで「あの、国際政治経済のニューズレターを」。これ、普通は引いちゃいますよね。自分で言ってて恥ずかしいんだけど、これを恥ずかしいと感じなくなったら危険だと思う。これで作ってるのがラーメンのHPなら、まだしも話が続くんだけどね。
○三浦さんのパーティーでA氏と雑談。A氏はかつて、95年のマヤノトップガンを一点読みした過去があるので、ご意見を拝聴する。
「有馬記念はどっちが来ますか」
「心情的にはスペシャルウィークかな。春秋の天皇賞にジャパンカップ、それに有馬記念なんて前代未聞でしょう。狙ってほしいですよねー」
苦しい戦いを制して、一戦ごとに勝ちを積み重ねるスペシャルウィーク。天性のパワーを持つが、ジャパンカップはずる休みしたグラスワンダー。古いたとえでいえば、西本聖と江川卓みたいな組み合わせ。地力は江川でも、勝負になったら西本かもしれない。なるほどね。
<12月21日>(火)
○週刊ポスト、週刊文春が両方で「選挙予測」を掲載しています。先の週刊朝日は福岡政行&森田実でしたが、今度はそれぞれ舛添要一、宮川隆義が担当しています。読み比べた結果は、やはり政治広報センター(宮川隆義)はさすがだな、って感じ。読みの深さが違います。
○11月29日の日記で登場した大谷信盛くん(民主党・大阪9区)は、ここでも白三角など強いマークがついている。本当に優勢なんですねえ。あとは島田紳助が突然立候補しないことを祈りましょう。(選挙区内に住んでいるので、ひょっとして・・・の噂がある)
○ところで全国の候補者を見ると、いるわいるわ、かんべえの知人、友人たちが。山形2区の近藤洋介(無所属・元日経記者)と兵庫9区の西村稔康(無所属・元通産省)は勉強会仲間、東京9区の菅原一秀(自民党・都議)は会社の昔の部下、兵庫6区の市村浩一郎(民主党・元新進党職員)は大学の後輩、それから愛知15区の近藤剛(民主党・弁護士)と岐阜2区の小嶋昭次郎(民主党・医者)は、円より子議員のところでよく会っている。皆さん若い。このうち何人が当選できるのか。まさかゼロってことはありますまい。
○1月解散ならば勝負はすぐそこ。選挙オタクの血が騒ぐ季節です。
<12月22日>(水)
○大阪府知事、ノックさんが突然の辞意表明で、次の知事が誰かが問題になっています。上岡龍太郎、西川きよし、紳助、文珍など、またもお笑い界から誕生するのではないかと、もっぱらの評判。大阪では、「上岡龍太郎さんだと、知事には少しかしこすぎるんとちゃいますか?」という声があるとか、ないとか。
○吉本興業の方によれば、お笑い芸人が選挙に出るのは、たくさんのメリットがあるのだそうで。
@選挙に出るときに会社を辞めなくていい。(公務員や会社員だとこうはいかない)
A知名度が高いし、しゃべくりもうまい。(当たり前だ、プロなんだもの)
B負けて当然、負けたらギャグのネタにできる。(島田洋七はこれを実践している)
Cまともな候補者は、お笑い芸人と戦って負けると恥なので、よほどのことがない限り出てこない。(たとえば堺屋太一さんは出てくれないでしょうね)
○要するに芸人さんにとっては、選挙に出るのはリスクのないパブリシティをやっているようなもの。「吉本興業の社員は、辞めてから3年間は選挙に出てはいけないというルールを作るべきだ」(紳助)などという提案が、もっともらしく聞こえてしまう。ま、大阪だけの現象だと思いますけどね。
○とはいえ、民意は民意。「東京の役人なんぞに来られるくらいなら、吉本の芸人の方がましやー」という大阪人の気持ちも分からんではない。ノックさんも、セクハラ疑惑にへんな理屈をつけず、「この手があきまへんのやー」などと居直っていれば、府民も「しゃあないなー」で済んだかもしれない。
○えー、ここで全然話は変わりますが、三行統合の新行名は「みずほ銀行」なんだそうで。思わず「瑞穂の国の国益銀行」なんてギャグが浮かんじゃったりして。外国では「バンク・オブ・ミズーホー」と呼ばれるんでしょうか。略すとBOMで爆弾みたい。行員諸氏の脱力感が窺い知れて、ちょっと同情してしまいます。最近、いいネーミングに会うことが少ないですね。知的衰退を感じるといったら言い過ぎでしょうか。
<12月24日>(金)
○先日インターネットで注文した商品は、「大工の源さん」ではなく「モンスターハウス」のマグカップが来てしまいました。うーん、E-commerceにはありがちな失敗ですねー。いちおう電話してみたら、送料はおまけにして、あらためて「源さん」を送ってくれるとのこと。良心的な業者だと思ったので、「モンスターハウス」は別途何かに使うことにしました。
○T先輩のパチプロ志願の話に対し、こんな情報を頂戴しました。
>パチプロにも色々あって1)地ぐま2)開店プロ3)攻略プロと3つに分けられます。
>2と3は組織的なものに入ったり体感機をつかったりしますが
>普通によく回る台をうつんだったら1ですね。
○要するにアマチュアの延長線上にあるのが「地ぐま」で、本日開店の店を捜し求めて移動したり、違法な手段でとことん荒らしにいくのが本当のプロ、ってことですね。ちなみにTさんは「地ぐま」志向ですが、優良店を求めて横浜からわざわざ新宿まで通うそうです。
○で、こんな実践的なアドバイスもいただいています。
>とにかくボーダーラインと時間あたりの収入を計算して優良台を長時間うつ事
>ですよ。収支は絶対つけないとね!
そこまでするか?って感じですが、ともあれ、情報提供に深謝申し上げます。
○他のギャンブルの世界と合わせて考えると、あらためてこんな結論に達します。
(1)ギャンブルで食っていくことは本来不可能である。
(2)不可能なことを可能にするためには、イカサマをするか、地味な努力を超人的に続ける以外ない。
(3)どっちにしろ、楽して儲ける、なんて考えちゃ駄目よ。
ギャンブルで楽して儲けているのは胴元だけです。
○ただしギャンブルの評論家になる、というのは悪くないかもしれない。競馬の大川慶次郎さんが逝去されましたが、直前までテレビに出ておられました。幸せな人生だったのではないでしょうか。有馬記念は心残りだったでしょうけれども。大川さんの遺言では、「右回りのレースではグラスワンダーとメジロブライト」とのこと。日曜日はやっぱりグラスワンダーの連覇ですかねえ。
<12月26日>(日)
○有馬記念は2強対決にふさわしい結果となりました。グラスワンダーとスペシャルウィークがほとんど同着でゴール。ハナ差でグラスワンダーに凱歌が上がりましたが、どっちが勝っていても文句はないゴールでした。少なくとも国内には、この2頭を上回る馬はいない。いい勝負を見させてもらいました。
○かんべえは年に1度、有馬記念だけは馬券を買います。今年はいろいろ考え、スペシャルウィークを切ってグラスワンダーに賭けました。おかげで単勝は取りましたが、馬連を併せると赤字でした。去年も一昨年もノーホーラだったから、ま、いいかです。ちなみにかんべえの配偶者はおそるべし3連勝。97年のシルクジャスティス、98年のグラスワンダーを複勝でとり、今年は大本命3−7のワイドと3位テイエムオペラオーの複勝を買っていました。
○官庁や会社では、「花のXX年組」などという年代がありますが、現在の5歳馬はまさにそれ。フランス凱旋門賞2位のエルコンドルパサー、有馬記念2連覇のグラスワンダー、今年のGT3つ制覇のスペシャルウィークと実力馬ぞろい。99年度代表馬はどれにするか、迷うでしょうね。
○「有馬記念を馬主席で見る」ことは、生涯にいつかは実現したい夢のひとつです。それよりも「有馬記念で万馬券を取る」の方がいいかな。え、どっちも縁がない?
<12月28日>(火)
○Y2Kは予想外に大変かもしれません。以下はいろんな方面から耳に入った情報。
「政府首脳のオフレコ発言メモ、“犠牲者が一桁ならよしとする”が永田町を駆けめぐった」(新聞記者)
「新年の12時をもって全部のテレビが消えてしまうかもしれない。これに気づいて、現場は“取材どころじゃない”というムードになっている」(テレビ局)
「文芸春秋は新年号の原稿をすべて納入させた。Y2Kで印刷所は危ないが、運送は大丈夫だろうと読んでいるらしい。一方、新潮社は年が明けてから納入だそうだ」(出版)
「空の便は、飛行機、空港、管制のすべてが揃っていないと安全が保証できない。JAL/ANAは新年にロシア上空を飛ぶ便はすべてキャンセルした」(航空会社)
ま、本当のところがどうかは、4日待てば分かる話です。
○27日はいろんな人に会いました。昼は会食、夜は忘年会と送別会のハシゴ。帰宅は午前4時。こんな状態で書いてるんですよ、今週の「溜池通信」は。だからといって、別に偉くも何ともないですが。こんなふうにしている自分は、やっぱり書斎型の人間でもないようです。
○かんべえは今日で仕事納めです。本日は愛読者からのメールを2本もらいました。どうもありがとうございます。ところでこのHP宛てのメールは、なぜか「届きませんでした」というメッセージが出やすく、同じメールを何本も送っていただくことが多いようです。なんででしょうね。そろそろ掲示板をつけてみようかしら。
<12月30日>(木)
○1999年も押し迫ってまいりました。先日、社内のとある人との会話。
「あのミレニアムってやつ、いったい何のことじゃ」
「えー、英語でいいますと、Dacadeが10年、Centuryが100年、それでもってMilleniumが1000年、ということのようで・・・・」
「ほうほう。週刊誌の見出しに“ミレニアム美女”なんてのがあったが、それは1000年ものの美女、ちゅうことか」
「まさか1000年はもたんでしょう。まあ、新しい1000年の初めにフレッシュな美女を、ってくらいの意味じゃないですか」
「ちょと待て。21世紀は2001年からだよな。なんで次のミレニアムは2000年からなんだ」
「そーなんです。最初のミレニアムが紀元後1年から1000年まで、次のミレニアムが1001年から2000年までですから、本当は2001年からが新しいミレニアムじゃなきゃいけないんです。紀元1年にはまだゼロが発見されてませんでしたから」
「みんなが誤解しているわけか」
「いやー、分かっててわざと間違えているんじゃないでしょうか。数字が大台に乗る、っていうのは気分がいいですから」
「たしかに1999が2000になるときは4つの数字が全部一度に変わるけど、2000が2001になってもさほど新鮮味はないわなぁ」
「HPのカウンターが5000に乗ったら気分いいけど、5001になってもどうってことないですからね」
「なんのことだ」
「いえ、こちらの話」
――繰り返しますが、記念すべき5000をヒットした方は、かんべえまでお知らせください。
○Y2Kについて。何が起きるか分からない話なので、こんな予測をしたくはないのですが、考え方としてはこんな感じではないでしょうか。つまり3つのシナリオを用意する。
(1)たいしたことはない。
(2)ひどいことになる。
(3)ところにより、ひどいことになる。
つらつら考えるに、(3)を本線に考えておくべきではなかろうかと。おそらく先進国ではたいしたことにはならない。ところにより停電があったり、電話が不通になったり、信号機の故障で事故があるかもしれない。でも短期的に修復可能な程度にとどまるのではないか。問題は旧共産圏や途上国です。ロシアやウクライナでは、そもそもY2K問題を宣伝してないらしいので、これが恐い。
○昨日は、上祐サンがシャバに出てきて大騒ぎでしたね。思わず笑っちゃうのは、マスコミが「上祐幹部」と呼んでいること。なんだよ幹部って。刑期を終えて出てきた人だから、もう罪は償っているわけで、いまさら呼び捨てにはできない。その一方、「上祐氏」とか「上祐さん」と呼ぶのにも抵抗がある。まさか「上祐正大師」とも呼べないだろうし。
○一事不再理の原則からいって、上祐さんは非常に有利な立場にある。偽証と有印紙文書偽造の罪はもう償っちゃったわけで、個人としてやましいことは何もない。新たな罪状で訴えられる可能性はゼロではないけれど、他にも大勢の裁判が進行中なので、現実問題としてほとんど不可能。いざとなったら彼は、「僕はもうオウムとは切れました」とか言って、知らん振りできるんですね。あとはテレビタレントになって生きていく。これ、いい手だと思うけどな。
○1995年のオウム騒ぎは、マスコミにとっては甘美な体験なんでしょうね。上祐&江川コンビを出しておけば視聴率がグングン上がった。雑誌もむちゃくちゃ売れた。スポーツ紙や夕刊紙のなかには100万部を超えたものもあった。いや、銭金抜きで、新事実が次々に飛び出したあの事件は、とにかくジャーナリストたちのハートを騒がすものがあった。昨日の上祐追っかけフィーバーは、「夢よもう一度」って感じなんじゃないでしょうか。
<12月31日>(金)
○今年最後の更新です。いつも通り、方々への義理に縛られた年の瀬です。年賀状をまだ書き終えていません。ひとことコメントには、「とうとう2000年、いよいよ40代」と書くことが多い。当HPをご覧いただいている皆様にも、あらためて季節のご挨拶を申し上げます。2000年もよろしくお願いします。
○年末のテレビを見ておりますと、なんとまぁくだらん番組をいっぱいやっておりますな。あきれつつ見ている方が悪いのですが。ま、収穫も少しはあって、NHKがやっていた桂枝雀の追悼番組で、絶頂期の『夢玉子』を見た。入神の出来、というのはああいうのをいうのでしょう。下げの「なんだか、夢の、ようなー、うつつの、ようなー」の部分は、可笑しくてもの悲しくて絶品。ありがとうNHK。
○有馬記念と紅白歌合戦は、「今年はこういう年だったのか」と振りかえるのにちょうどいい。有馬記念は過去10年なかった「1番ー2番人気」の組み合わせ。株でいえば「トヨタとソニー」みたいな馬連で、いいものはいい、悪いものは駄目という二極化現象を地で行く結果となりました。今夜の紅白はどうでしょうか。宇多田ひかるが出ない、っていうのは残念だけど、痛快でもある。
○年の瀬に届いた、ペイオフ解禁延期のニュースには暗然たる思いがしています。こんなことでは、来年の今ごろも小渕政権ということはないんじゃないか。日米ガイドラインや国旗国歌法案を通した頃が華でしたね。ま、そんな固い話は来年になってから考えることにしましょうか。
○個人的には、今年最大のニュースはこのHPを立ち上げたことだと思います。イヤなことも結構多かったけど、いろんな人と出会って世界が広がった年でもありました。さて、あとはバックアップを取って、2000年問題に備えることにいたしましょう。不具合が発生しても、なるべく早く収拾するつもりですので。それでは皆さん、良き2000年をお迎えください。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki