●かんべえの不規則発言



2018年6月







<6月1日>(金)

○朝、目が覚めたら6時を回っている。最近は午前4時半に目が覚める人間としてはめずらしい。ホテルのチャンネルを探して、「モーサテ」を探したら見当たらない。あ、そうか、今日のテレビ東京は全米女子オープンゴルフなのであった。少し前に、「めずらしく平日に休みがある!」と佐々木あっこさんが喜んでいた日である。

○お昼の仕事まで時間があるので、まだ行ったことのない太宰府へ行ってみようと考える。西鉄に乗ればそんなに遠くはない。学生が一杯乗っている電車に揺られて太宰府駅へ。太宰府天満宮は徒歩で5分くらいの距離にある。巫女さんがとっても多い神社であって、早朝に境内を掃除している姿が心地よい。

○ところがですな、太宰府の静寂は午前9時まででありました。突然現れる修学旅行の大群、そしてお馴染みインバウンドの旅行客など。たちまち飛び交う外国語。おいおい、ここは「白紙(894年)に戻す遣唐使」の菅原道真公を祭ってあるのだぞ。もっとも大唐帝国は、ちょうどその10年後ぐらいで滅亡して滅んでいるので、あれはほとんど不可抗力の決断であったようなのだが。

○すぐ近くには九州国立博物館もある。印象派展をやっているという触れ込みであったが、そこまで見ている時間的余裕はない。そこで常設展だけをさらっと見て、再び西鉄に乗って天神へ。昼からは福岡経済同友会の会合で講師を務める。

○てなことで、一泊二日の福岡出張はお終い。中洲に立ち寄らず、ラーメンも食わず。ああ、なんてストイックな私。

○ところで、今回の旅行で持ち歩いた本は『習近平帝国の暗号2035』(中澤克二/日本経済新聞出版社)。ここ1年くらいの中国の動きを整理するには格好の一冊である。それにしても、中朝間の葛藤はすさまじいの一語に尽きる。昨年末の時点で、中国は米朝戦争を覚悟していた、という記述には驚くほかはない。中国国内の権力闘争や、米中や米朝などの本気の外交に比べれば、日本はまだまだ呑気なものですなあ。

○明日はとっても久しぶりに「Biz Street」に出演します。BS-TBSの午後9時からであります。


<6月2日>(土)

○本日のBS-TBSの「Biz Street」ですが、前の番組であるところのオリックス=巨人戦(京セラドーム大阪)が長引きまして、放送開始時間が遅れました。しかも試合は「2対2」の延長戦。こういうときは、何時になったら番組が始まるか分からない。播摩キャスターと本日の二人のゲスト、曾和利光さん(人材研究所社長)と田中理さん(第一生命経済研究所)の4人で、ぶつぶつ文句を言いながら控室で野球放送を見ておったわけであります。

○番組開始を待っている身からすると、野球なんて早く終わってほしい。この際、どっちが勝ってもいい。ああ、サヨナラホームランが出ないかなあ、などと邪悪な考えが浮かぶ。ところが見ていると、意外と引き締まったいい試合である。巨人もオリックスも控え投手が踏ん張って、無得点が続いている。いやあ、たまに見るとプロ野球も面白いものですなあ、などと。

○午後10時には、さすがに「Biz Street」が放送開始ということになり、野球放送は午後9時54分で終了。この時点で12回の裏、オリックスの攻撃である。真剣に野球を見ている人たちからすれば、「何おう、経済番組だと? 働き方改革やイタリア危機がなんぼのもんじゃい!」といったところであろう。すいませんが、私どもとしても準備がありますので・・・・。

○ということで、今週のトランプ劇場やら働き方改革法案やらイタリア危機やらの話を放送する。いやはや、いつもながら勉強になりました。そして終わったら午後11時である。それからメイクを落として、「お疲れ様〜」といいつつ散会。さて、野球はどうなったかと思ったら・・・。

○ああ、やっぱり12回裏にオリックスがサヨナラ勝ちしていたのね。これだから野球はわからない。テレビ中継も悩ましいところなのであります。さぞかしテレビの前のオリックスファンは、昨晩は怒り心頭であったことでしょう。すいませんねえ。経済番組なんかやってて。

○ところで交流戦に弱いわが阪神タイガースは、西武ライオンズを破ってようやく1勝目を挙げたようであります。そういえば今年はあんまり見ていないなあ。トラキチ・スイッチが入らない状態が続いております。


<6月4日>(月)

○羽生さんがちょっと心配なのである。もちろん将棋の羽生さんであって、羽生善治竜王のことである。フィギュアスケートのゴールドメダリストのことは羽生くんと呼びたい。そっちの羽生結弦君はオフも忙しいらしく、それではリハビリが心配なのであるが、まあ、そこは何とかするだろう。

○羽生さんの将棋がちょっと変なのである。今日も王位戦の挑戦者決定戦で、角換わり腰掛銀で無理筋な攻め方をして負けている。菅井王位に挑戦できれば昨年のリベンジとなって面白かったのだが、豊島八段に返り討ちに遭ってしまった。まあ、豊島八段は乗りに乗って今年度は8勝3敗であるから、勝つことに不思議はない。

○5月29日の名人戦では、先週、先手番で得意の横歩取りに持ち込み、これも何だか変な形になって佐藤名人に負けてしまった。これで2勝3敗となった。次の対局は後手番である。できれば名人戦で、「通算100タイトル」を達成してほしいのだが、ハードルはかなり高い。

○その前の5月24日の王座戦挑戦者決定トーナメントでは、これも深浦九段に負けてしまい、「羽生さんが居ない王座戦なんて・・・」とため息が漏れた。ちなみに王座戦の五番勝負に羽生さんが出ないのは1992年以来のこと。日経紙上の王座戦は、とにかく毎年のように羽生さんが勝ちまくっていたのである。

○見ていると、最近の羽生さんの将棋はとにかく若々しい。十代の棋士じゃないかと思うくらい前へ出てくる。敢えて積極的になろうとして、それが結果につながっていない。十代の棋士と言えば藤井聡太七段であるが、こちらはとても老獪である。気がつくと序盤戦でリードしていて、そのまま差を広げて得意の終盤戦になだれ込んでいく。

○果たして羽生竜王、藤井七段を意識しているのか、それとも国民栄誉賞が重荷なのか、あるいは新しい棋風を模索しているのか。ワシ程度の棋力では、その辺はとてもわからない。前人未到の境地にありながら、自己革新を止めない姿勢はさすがだともいえる。こんな風に同時代の天才を見ていられるというのは、まことにありがたきことであるかな。


<6月6日>(水)

○米朝首脳会談まであと1週間。ということで、世間的には関心が高まるところなんでしょうが、個人的にはそんなに盛り上がっていません。サプライズはないんじゃないですか、だって米朝ともにやりたくて仕方がないんですから、などと答えている。

○そこは世紀の会談なので、見所はいっぱいある。@トランプさんと金正恩の食事会は行われるのか?その場合、どんな料理が出るのか? A外貨のない北朝鮮の代わりに、金正恩のスイートルーム代を肩代わりしてくれる奇特な人は誰か? B駐機場にエアフォース・ワンとエアフォース・ウンが並んでいる写真が撮れるか? C日本のメディアは会場に入れてもらえるのか? 結局、米朝のカメラだけが入るのではないか? などなどなど。

○ちなみにAについては、核兵器廃絶団体のICANが払ってもいいと言っているそうです。怪しい団体ですなあ。ノーベル平和賞をもらう団体というのは、だいたいが碌なもんじゃありません。

○米朝首脳会談は、成功も失敗もしないでしょう。アメリカ側から見れば、非核化はできない。CVIDなどとんでもない。せいぜい軍備管理に毛が生えた程度でしょう。それではやる値打ちがない、と軍事の専門家は批判するかもしれない。しかし非核化というのは、本来、核軍縮の専門家が大勢集まって、長い時間をかけなければ実現するものではない。ところが北朝鮮相手の交渉は、当然、トップダウンでなければ進まない。下から積み上げても意味がないのです。

○ドナルド・J・トランプという異色の大統領がいたからこそ、金正恩が前に出てきた。マッドマン対マッドマンだからこそ、今回の会談は成立する。でなきゃ、今までと同じような対立が延々と続いていたはずです。しかるにマッドマン同士で細かな積み上げはできない。そういう逆説の上にかろうじて成立する首脳会談なのです。

○マッドマンその1のトランプさんとしては、ここで何がしかの成果が上がればそれで十分。とにかく前任者ができなかったことを成し遂げれば、彼は満足でしょう。逆に言えば、前任者がもらったノーベル平和賞なんぞに、深い思い入れはないはずです。会談が終わった後は、彼は急速に北朝鮮に対する関心を失うのではないでしょうか。とりあえず核実験とミサイル発射がなくなるのであれば、後はどうでもいいわけですから。

○逆に北朝鮮から見れば、アメリカからの体制保証は得られるかもしれないが、経済援助は得られない。国連の制裁解除だってできないでしょう。ただし中国と韓国は、多少はなしくずし的に協力してくれる。既に中朝国境の中国側の土地は値上がりしているのだとか。その程度のご利益はあるでしょう。

○ただしマッドマンその2の金正恩にとって重要なことは、「核武装と経済建設」という2つの目標のうち、前者は達成したからこれから後者に移ると国内向けに宣言したことです(正確に言えば、前者を達成したものと見なして、後者に移る振りをする、ですけど)。そのためにアメリカのお墨付きを得た、と喧伝することができる。これは祖父や父が果たせなかった夢である。どうだ、控えおろう。

○ということで、トランプ大統領も金正恩委員長もともにこの会談で利益を得る。だったら、やらない理由が考えられない。どちらかが怒り狂って途中で席を立つ、なんて番狂わせは起こりにくいのではないでしょうか。

○それよりも何が起きるかわからないのが、今週6月8〜9日にカナダで行われるG7サミットです。議長のジャスティン・トルドー首相は怒り心頭です。5月末の時点(つまり先週)で、NAFTA再交渉は妥結するだろうと彼は考えていた。ところがアメリカが強硬路線に出て、しかも鉄鋼・アルミ追加関税を実施してきた。EUも同様です。

○ちなみに日本は一足お先に追加関税をくらっておりますが、幸いなことに4月の対米鉄鋼輸出は前年同期比13%増(数量ベース!)なので、あんまり実害はおきておりません。こういういい話は、なるべく大きな声でしないようにしましょうね。アメリカ企業が我慢して関税を払ってくれている、ということですから。

○本来、今年のG7サミットは、米朝首脳会談を前に皆で「トランプさん、頑張ってくださいね」と励ます会となるはずであった。それが「G6対1」の深刻な貿易戦争の場となりそうである。こんな風にしたのは、アメリカの自業自得です。先週のG7財務大臣会合では、ムニューシン財務長官が孤立していた。そりゃあ彼はまともな人間なので、言えることといったら「上司に伝えます」というくらいでしょう。貿易の世界では、マッドマンはただの迷惑な存在です。

○ひょっとするとトランプ大統領は、G7サミットをドタキャンしてしまうかもしれません。つまり米朝首脳会談よりも、こっちの方がよっぽど訳が分からない。トランプ劇場も、だんだん危うくなってきたのではないかなあ。マッドマンは局地戦では成果を挙げるかもしれませんが、なにしろ戦略がありませんので。


<6月7日>(木)

○とっても久しぶりにマネースクエアのプレミアムトークに登場しました。以下はそのリンクを貼っておきます。

[前編]米朝首脳会談・米「貿易戦争」の行方を解説!

[後編]FRB金融政策・欧州政治の展望など注目材料を解説!

○いつも通り、同社チーフエコノミストの西田明弘さんを相手に、好き勝手なことを語っております。なんだかワタクシ、ちょっと顔が痩せたように見えるのは気のせいでしょうか?


<6月9日>(土)

○トランプ大統領、G7会合を途中で切り上げて、9日昼過ぎにシンガポールに向かうそうです。トルドー首相主催の晩さん会はご欠席だそうです。さすがにドタキャンとまではいきませんでしたが、こういう途中退席をなんて呼ぶんでしょうか。トランプ大統領のウォークアウェイ、とでもいうんでしょうか。

○首脳によるサミットの中座といえば、確か2000年の沖縄G8サミットの最中に、クリントン大統領が中東和平調停のために途中で帰ったことがありました。バラク首相とアラファト議長の間を何とか取り持とうとしたのですが、結局は成立しませんでしたね。爾来、中東和平にはほとんどチャンスがありません。それに比べると、今回のウォークアウェイに大義名分はありません。要は「けったくそ悪い」というだけでありますな。

○それにしても今回のG7サミット、アメリカのシェルパは誰が務めるんでしょう。去年の伊シチリア島でのG7では、ゲイリー・コーンNEC議長がコミュニケづくりをやっていたと聞いたことがあります。それなら何とかまとまるわけですが、今年はいったい誰が務めるのか。共同声明なし、てなことになっても不思議はありません。

○つくづくトランプ大統領のマッドマン外交、G7が曲がり角だったということになるんじゃないでしょうか。


<6月10日>(日)

○東洋経済オンラインの「市場深読み劇場」関係者で府中競馬場へ。といっても、朝は町内会の清掃でどぶさらいをやってから、慌てて出かけたのでありますが。

○ちょうど昨日、アップされた分が拙稿でありまして、そうなると競馬の予想(エプソムカップ)が気になるわけですが、なんと今回はオバゼキ先生の予想とぴったり重なっていた。なんと「答え」だけでなく、「式」まで重なっているというめずらしいパターンである。最近、会ってないのに思考回路がシンクロしているのはなぜなんでしょうか。

○本日は残念ながらぐっちーさんが仕事で来れなかったのですが、山崎元さんと一緒に奮闘。「ところで先日の『7七同飛車成』は見ましたか?」てな話で盛り上がる。『7七同飛車成』はつい先日、竜王戦で藤井七段が石田五段を相手に指した手で、歴史に残る妙手というか、とにかく「すっげえええええ!」と叫びたくなるような手である。

○そのインパクトは、若き日の羽生さんがNHK杯戦で加藤ひふみんを相手に指した「5二銀打」に似ている。どうでもいいことだが、ワシはこの瞬間をテレビで見ていた。今回の7七同飛車成は、ほぼ同じ時刻に将棋アプリで見ていたのだが、いったい何手前からこの手に気づいていたのやら。それを15歳の少年が指したという事実に、将棋界は文字通り震撼しているわけでありました。

○レースの方は2人ともいま一つで、ご一緒のHさんが当たるべからざる勢い。Hさんはベテランの一口馬主なのですが、本日、阪神5Rでデビュー戦を飾ったサートゥルナーリア(なんと単勝1.1倍まで買われていた!)が、予定通りに勝ってくれたので、これはもうご機嫌のきわみ。ロードカナロアとシーザリオの子供だなんて、そりゃあ将来が楽しみですわなあ。ということで、面白いように当たる、あたる。

○幹事役の編集F氏は、競馬については血統や戦績はもちろんのこと、厩舎や馬主のことまで知り尽くしている熱烈ファンなのだが、なぜかこだわるのは「出目」である。特に「今日は××さんの誕生日で・・・」というのが得意技で、いろんな人の誕生日を本当に覚えている。先日も「今日は@―Gに気を付けた方がいいですよ」などと真顔で言うので、「1月8日って誰の誕生日?」と聞いたら、「金正恩ですよ!」という。うーむ。

○何度も大笑いして迎えたメインレースのエプソムカップ。ワシが「ここは判官びいきで応援したい」と書き、オバゼキ先生が「ここは馬券度外視で」と書いたグリュイエールはなかなかいい感じなのだが、大外に回ったサトノアーサーがとにかく、でっかく見えるのである。とはいうものの、ここはグリュイエールの単勝を5000円。ついでにサトノアーサーとのワイドを3000円。

○結果はサトノアーサーが1着。続いてハクサンルドルフ、グリュイエールの順だったので、ワイドが850円ついてまあまあの決着でありました。競馬予想を書いた身としても、とりあえず責任は果たしたということで。

「市場深読み劇場」の読者からは、「最後の競馬予想は不要」という声をよくいただきます。ギャンブルがお嫌いな方もいらっしゃるでしょうし。でも、書いている側としては、「あれがあるから続いている」というのも否定できない事実である。なんとこの連載、2012年秋から続いておるのです。まあ、編集F氏が偉いのでありますが。


<6月11日>(月)

○昨日の新潟県知事選挙で、与党系の花角英世氏(元海上保安庁次長)が当選しました。野党5党が推薦した池田千賀子氏は3万7000票差で及びませんでした。官邸はホッとしたでしょうね。これで9月の自民党総裁選で、安倍三選の確率は高くなったと思います。今年後半に行われる沖縄県知事選も、似たようなことになるのではないのかな。

○今回の選挙は、野党の敗北以上に小泉親子の敗北であったと思います。小泉元首相が現地に入って、いつもの反原発をぶち上げた。それは人気になるんです。それは皆さん、今でも小泉純一郎元首相のことが好きだから。それに比べると、安倍晋三現首相なんてちっとも好かれていませんよね。

○ところが皆が好きなのは、「信念の政治家」である小泉さんであって、その信念の中身にはさほど関心がない。だから小泉さんの演説に人は集まるけれども、かならずしも投票行動にはつながらない。そして世論調査で、「原発再稼働に賛成か反対か?」と聞かれると、多くの人は反対と答えるけれども、「原発反対!」と叫ぶ政治家のことは内心では怪しいと思っている。だから「反原発」というテーマは選挙になると意外と弱い。

○今回の新潟県知事選挙では、小泉進次郎は現地に入らなかった。それは「親子で対決」という図式を避けたから、と言われている。その真偽はともかく、「新潟県は進次郎抜きでも勝てた」という結果になった。自民党内における進次郎の値打ちは下がったことになる。逆に野党が勝っていたら、「やっぱり進次郎がいないとダメだ!」と言われていただろう。

○小泉進次郎は父親同然に有権者に愛されている。それはまだ、30代で力量が未知数の政治家だからで、本当に地位のあるポストに就いたら違って見えてくるかもしれない。政治の世界における「人気」というものは、ほんの一瞬で消えてなくなる。そのことは小池百合子さんが昨年、痛いほど見せてくれたではありませぬか。

○来たるべき自民党総裁選挙において、安倍総裁の仮想敵は「石破=進次郎連合軍」でありましょう。新潟県知事選で与党が負けていたら、一気にそちらに期待が高まる可能性があった。そこを踏みとどまったので、安倍さんにとって今回の勝利は大きい。そして論功行賞的には、「二階幹事長、畏るべし」ということになるのだと思います。

○ところが負けた野党側は、「やっぱり新自由主義者である小泉元首相の応援を得たのがいけなかった」などと見当違いのことを反省している模様。違うんだよな。小泉さんは今でも人気なの。でも票を動かす力はない。そしてもちろん、彼のせいで日本が格差社会になったわけではありません。総理大臣にそこまでの力はございませんがな。


<6月12日>(火)

○本日の米朝首脳会談、とりあえずは金正恩委員長の勝ちでしょう。彼の方がより多くのモノを取った。とりあえずこれでアメリカによる軍事オプションは遠のいたし、「体制の保証」なる一札も取った。非核化はマイペースでやればよくて、その間に中国とロシアと韓国が手助けをしてくれそうだ。今日の共同声明は、アメリカ側が甘過ぎて、ちょっとトホホな感じもします。

○ところが長い目で見た場合はどうか。トランプ政権は2020年もしくは2024年には終わります。その後に登場するのは民主党政権でしょう。オバマ大統領が苦労したパリ協定を抜けられ、イラン核合意を反故にされた民主党政権は、当然、意趣返しをするはずです。つまり北朝鮮向けの「体制の保証」は、ある時点で「マイナス評価」になってしまうわけです。その時には、金正恩は国内で苦しい立場に立たされることでしょう。

○それではトランプさんはそこまで考えているかというと、彼はもっと近視眼的です。彼はたぶん、本日のパブリシティ(トランプ劇場)が全世界に届いたことに満足している。シンガポールで午前9時から、というのは東海岸時間で午後9時のゴールデンタイムですからね。共同声明への署名式もやって、記者会見という名の独演会もやった。ご満悦でしょうし、これで先週のシャルルボアG7の記憶は消し飛んだことだろう。

○それでは次はどうなるかって? トランプさんのことですから、成り行き次第でまた別の筋書きを始めるんじゃないでしょうか。たとえばキューバへの制裁再開とか。それにしても先週のG7から今週の米朝に至るまで、トランプ劇場にはつくづく脱帽です。外交に新時代が始まったのかもしれませんな。


<6月14日>(木)

○何人かの方から、溜池通信(ニューズレターのページ)が古いままになっているよとのご連絡をいただきました。今は直っていると思いますが、これはレンタルサーバーを新しいものに代えることに伴うトラブルでございます。

○実をいうと、この移管手続きがよくわかりませんで、苦労致しました。ああいう会社のマニュアルって、どうしてこう不親切なのでしょうか。しかも電話による問い合わせは、平日の昼間だけになっている。そんなこと言われても、平日の昼間には作業できませんわ。結局、一度も電話する機会はありませんでした。

○それでいよいよ明日には古いサーバーが停止いたします。ひょっとすると新たなトラブルが発生するかもしれませぬが、そのときはどうか慌てず騒がず、お待ちください。技術的なことには弱いですが、その際は必死になって頑張りますので。それから溜池通信のバックナンバーは、こちらでもご覧になることができます。


<6月15日>(金)

○さらに数人の方からご指摘をいただきました。溜池通信最新号の「6月は『マッドマン外交』の季節」のリンクが切れています、と。いや、どうもすいません。これはレンタルサーバーの会社のせいではなく、単なるワタクシの不作為でございます。ダメじゃん、ちゃんと更新しておかなきゃ。

○ということで、新しいレンタルサーバーに移転しました。これで容量は無制限になります。これからも「溜池通信」を書き続けていきたいと思いますが、まだまだ気づいてないトラブルがあるかもしれません。ご発見されました節は、是非当方までお知らせください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○本日は「経済倶楽部」の講師のために東洋経済新報社へ。エレベーターに乗ろうとしたところで、以前にこの連載の担当編集者であったTさんとお久しぶりに遭遇。現在は同社の宣伝部長をお勤めとのこと。おめでとうございます。もともとの担当者であり、現在もご担当いただいているF氏は証券部長に昇進されました。実は競馬好きエコノミストの市場深読み劇場は東洋経済の出世コースであったりして。

○聞けば東洋経済新報社は現在、この本が20万部も売れてノリノリであるとのこと。フィル・ナイトの自伝は双日社内でも結構、評判になっております。初期のナイキを育てたのは旧日商岩井だった、ということで。もっとも社内では、「この本に書いてあるのと同じことを今やったら、コンプラ違反だね」という冷ややかな声もある。そりゃあまあ、時代が違うんだから仕方がない。

「SHOE DOG―靴にすべてを」は文句なしに面白い本です。これだけ面白い本を書ける人は、本質的な意味で経営者であるよりも詩人だったのだと思います。いわばジョン・スカリーではなくて、スティーブ・ジョブズの方だった。そのナイトが長くCEOを務めてくれたおかげで、双日はかな〜り助かった。そういう歴史を味わいつつ、本書を読んでおります。

○経済倶楽部の講演の方は、そう簡単ではありません。なにしろここの講演会は、毎週金曜日にやっている。毎週のように通ってくるような「耳の肥えた」聞き手が相手である。この経済倶楽部の講演録をたまたま昨日読んだら、お馴染みのナベさん(渡部恒雄・笹川平和財団上席研究員)が4月に語った内容がそのまんま載っている。その中には、本日ワタクシが語って受けを拾おうと思っていたトランプネタが入っている。おっと、危ないところだった。

○トランプ劇場を語るという作業は、労多くして虚しいところが多いです。週明け月曜日には、「モーサテ」でまたまたそういう役どころを演じます。題して「トランプ劇場の第三幕」。どういう内容かは、当日のお楽しみということで。


<6月17日>(日)

○いやー、トランプさん、抜く手を見せずにやってくれました。米朝首脳会談が終わったら、次は米中対決。6月15日に対中制裁関税500億ドル分のリストを発表しました。とりあえず北朝鮮の目途がついたら、中国に遠慮する必要もなくなったということでしょうか。これで今月のトランプ劇場は、第1幕がシャルルボアG7、第2幕が米朝首脳会談、そして第3幕は対中通商摩擦対決ですね。

○中国側もすかさず500億ドルの対米報復関税リストを発表してきました。水面下で言われるのなら対応できるけど、頭ごなしに言われたら絶対に引けない、というのが中国外交の常。これはもうガチンコ対決になりますな。もっとも実際に関税を発動するのは7月6日だそうですから、それまでにまだ3週間ある。この間に何とか水面下で合意するつもりなのでしょう。

○もっともこの間に、企業は代替策を立てたりしなければなりません。市場もハラハラしながら情勢を見守ることになります。かないませんなあ。まあ、トランプさんとしては、ショーマンシップが命なわけでして、実体経済のことなど関心はないのでありましょう。

○ということで、FNNプライムニュースに寄稿しました。ご笑覧いただければ幸い也。

トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策


<6月18日>(月)

○今朝はモーサテへ。「プロの眼マンデー」は「トランプ劇場第3幕」と題して、米中通商摩擦を取り上げました。ちなみにワールドカップの最中なので、「今日のオマケ」はありません。ちょっと寂しいですね。

○それにしてもドイツが負けるとは。ジャイアント・キリングとはまさにこのこと。メキシコを甘く見てはいけません。なにしろトランプさんに苛められ続けて、鬱憤がたまってますからね。7月1日の大統領選挙も侮るべからず。ブラジルもスイスを相手に引き分けました。もっともブラジルの場合、「予選はワールドカップとは呼ばない」というお国柄だそうです。トーナメントに入ってからが勝負です。

○てなことで、こういう番狂わせが起きるのを見ていると、サムライブルーにもチャンスがあるんじゃないかという気がしてきます。しかしなあ、なんか逆転劇が起きる時には、それなりの「仕込み」がないといかんと思うんですよね。今年のメンバーは、そういう陰徳を積んでいないんじゃないでしょうか。奇跡というものは、奇跡的に起きるものではありません。

○番組が終わってから、あっこさんと野沢アナの3人で朝ご飯を食べてたら、「大阪で地震発生」との知らせが飛び込みました。即座に会社へとダッシュする野沢アナ。もちろん佐々木さんもすぐ後を追いました。くれぐれも申し上げたい。「地震のときでもテレ東はアニメ番組を流している」というのは都市伝説です。

○それにしても大阪の地震はめずらしい。この先、余震が続くようだと心配です。大阪こそは日本のサプライチェーンのど真ん中ですから。


<6月19日>(火)

○今宵は都内某所で、久しぶりに田原総一朗さんの怪気炎を拝聴する。拉致問題や自民党総裁選をめぐって、いつもながらお元気である。もちろん今宵のワールドカップに関する話はいっさい出ない。まあ、こちらも「今日は3対ゼロくらいで負けるんだろうな〜」と思っているから、あんまり気にはならないのである。

○ところが対コロンビア戦、2対1で勝ってしまったではないか。嬉しいけれども、こんなことでいいのだろうか。まあ、それでも一気に手のひら返しで、「サムライブルー、偉いぞ!」となってしまっても不思議はあるまい。なにしろFIFAランキング61位が16位を破ったのだから。そして過去のW杯を思い起こせば、初戦で勝つことの重みは自明である。

○「負けに不思議の負けなし」が勝負の常ではあるのだが、ごくたまに「勝ちに不思議の勝ちあり」、というときがある。こういうときは、感謝あるのみ。下手に欲をかいちゃいけません。うーん、それにしてもびっくりしたな。


<6月20日>(水)

○今年のFIFAワールドカップを見ていると、「中国の広告が増えたなあ」と感じます。以下のようなラインナップです。


<パートナー>

アディダス(ドイツ・スポーツ用品)
コカコーラ(米国:飲料メーカー)
WANDA(中国:総合)大連万達G
カタール航空(カタール:航空)
現代起亜(韓国:自動車)
ガスプロム(ロシア:エネルギー)
VISA(米国:クレジットカード)

<スポンサー>

バドワイザー(米国:ビール)
ハイセンス(中国:家電)
マクドナルド(米国:食品)
蒙牛乳業(中国:食品)
VIVO(中国:スマホ)


○なんと12社中の4社を占めています。前回大会までSONYが入っていた日本勢は、今大会でとうとう姿を消しました。

2018 ロシア   2014 ブラジル   2010 南アフリカ   2006 ドイツ   2002 日韓   1998 フランス
                                 
アメリカ 4   アメリカ 4   アメリカ 4   アメリカ 7   アメリカ 7   アメリカ 4
中国 4   ドイツ 2   ドイツ 2   ドイツ 3   日本 4   日本 3
ドイツ 1   英国 2   日本 1   日本 2   ドイツ 1   ドイツ 3
韓国 1   日本 1   韓国 1   オランダ 1   オランダ 1   オランダ 1
カタール 1   韓国 1   UAE 1   韓国 1   韓国 1   イギリス 1
ロシア 1   UAE 1   イギリス 1   UAE 1            
      中国 1   インド 1           14社     12社
      ブラジル 1   中国 1     15社            
            ブラジル 1                  
            南ア 1                  
                                 
  12社     14社     14社                  


○1998年から連続で出ているのは、アディダス(独:スポーツ用品)とコカコーラ(米:食品)とマクドナルド(米:食品)の3社だけです。それ以外では、バドワイザーが5大会連続です。さて、バドワイザーはアメリカ企業でいいんでしたっけ。それとも欧州企業に買われたんでしたっけ。

○日本勢としては、かつては富士フィルム(仏、日韓、独)や日本ビクター(仏、日韓)、それに東芝(日韓、独)が常連だったのですよねえ。ちょっと寂しく感じますが、日本企業はB2Bのデバイス製造に活路を目指すようになり、グローバルブランドを目指さなくてもいいや、と感じ始めたのかもしれません。なにしろFIFAのスポンサー料は高いですからねえ。

○全世界で数十億人が見る、と言われるW杯ですから、むしろ新興国の企業の方がメリットを感じやすい時代なのかもしれません。ちなみに4年前の本誌はこんなことを書いておりました。それに比べると、今年はあんまりテンションが上がっていないんですよねえ。でも昨日、勝っちゃったしなあ。今年はきっと決勝トーナメント、行きますよね、とドロボーの気分になっております。


<6月22日>(金)

○こういう時期になると、いろいろ出来ちゃうんですよねえ。元ネタはこちらをご参照。


●バージョン1 S局長の場合

森友、半端ないってもぅ!

面談記録、ほんまに半端ないって!

昭恵とか谷とかめっちゃ書いてあるもん!

あんなん決裁文書に書きひんやん普通!!

そんなん書く?

言っといてや…書いてあるんやったら…

国会や…全部国会や…

答弁と整合性とれんし…

また集中審議やし…

またまたまたまた辻元やし…

あいまいな答弁にしとけばよかった あいまいに…


●ヴァージョン2 Y官房長の場合

福田、半端ないってもぅ!

アイツ半端ないって!

おっぱいとか手縛ってとかめっちゃ言うてるもん!

あんなん言いひんやん普通!!

そんなん言う?

言っといてや…そんなんしてるんやったら…

新潮や…全部新潮や…

録音されてるし…

また(福田が)ワイドショートップやし…

またまたまたまた第二弾出てきたし…

第一弾で辞めてくれればよかった第一弾で


○いやー、「大迫、半端ないって」(hampanai)は今年の流行語大賞の有力候補ですね。それにしても高校3年生で、大事な試合に負けた直後だというのに、こんな風に自分が泣きながら、周囲を笑かしてしまうのは、まさしく関西人ここにあり、という感じですね。監督もまことに良い感じで、指導者というのはこんな風でありたいものです。

○それにしても今年はスポーツ関連の流行語がまことに豊作です。


●「そだね〜」

●「もぐもぐタイム」

●「オオタニサン!」

●「やらなきゃ意味ないよ」(私の指示ではございません)


○まだまだ後が続くことを楽しみにしたいと思います。大迫だけじゃ、ないですよね。


<6月24日>(日)

○日本全体が先週のコロンビア戦勝利に浮かれ、「大迫半端ないって!」で盛り上がっている状態に、心もとないものを感じているこの週末であります。誰か大人の人が出てきて、「これこれ、お前たち、そんなに浮かれるではない」と叱ってくれたらいいんですけどね。

○まあ、あと6時間後には試合が始まっちゃうわけで、こういうときはついつい楽観的な観測が多くなるわけですが、獲らぬ狸のなんとやらは避けたいものであります。果たして明日の朝は、どんな気分で迎えていることやら。

○ちなみに今宵のセネガル戦の主審は、1試合にレッドカードを3枚宣告したこともあるという、たいへん厳しい方のようです。こういう日はなるべくカードをもらわないように、もちろん怪我もしないようにして、お互いにスコアレスドローを狙うくらいがいいような気がいたします。でも、セネガル相手にそういう話は通じないだろうなあ。きびしく勝ちに来るだろうなあ・・・。

○ところで先日、FIFAのスポンサーから日本企業が消えたという話を書きました。ところが今週の週刊東洋経済「怒涛の半導体&電池」特集を読むと、「日本企業も意外とやるじゃん」という気がしてくる。日本が今でも得意としているこの2つの業界には、ビッグデータとEVという2つの追い風が吹いている。なかなかいい話じゃないですか。

○つまり日本企業は最終商品ではなくて、中間財で勝負するようになっている。だったらグローバルブランドが減っても不思議はないですな。そもそもブランドを維持するためには、広告費やら訴訟対策やらいろいろなコストがかかる。なんだかんだいって、ビジネスはB2CよりもB2Bの方が楽なのだ。

○世界経済に占める日本のシェアはどんどん小さくなっている。これは人口だけ考えてもそうならざるを得ない。13億人の中国は1人当たり9000ドル、12億人のインドは1に名たり2000ドルである。これらの経済は確実に伸びて行く。そういう中では、「日本企業はなるべく目立たないように稼ぐ」のが賢いのかもしれない。(18:16)



○いやあ、引き分けでした。2度リードされて、2度追いついた。強くなったね、このチーム。ああ、見ていて疲れた。(1:52)


<6月25日>(月)

○溜池通信の最新号で、こんなことを書いたのであります。


トランプ劇場は近いうちに第4 幕に向かうのではないだろうか。新しいネタはいくらで
もある。(A)メキシコの次期大統領を苛める、(B)NATO 首脳会談に出席して「欧州は
もっと防衛費を増やせ!」と啖呵を切る、(C)さらには日米新通商協議も控えている。
あまり考えたくないことだが、「日本叩き」も将来の選択肢のひとつであろう。


○もうひとつ可能性があることに気がつきました。今、ジャレッド・クシュナー大統領顧問が中東に行っているのですね。でも、Jared Kushner Criticizes Abbas, Questioning His Ability to Make Peace なんてことを言ってるようじゃ、オネストブローカーじゃないですよね。それでも突如として「中東和平もディールじゃああああ」と大統領が言い出したら、これまた物議を醸すに違いありません。

○さてさてトランプ劇場の第四幕はどこで開くのでありましょうや。本命NATO、対抗中東、穴馬メキシコ、大穴日本、くらいに考えておけばいいのではないでしょうか。この間、米中通商摩擦を恐れて株価は下げておりますけど、これはむしろ買い場を提供しているのかもしれません。



●当面の主要政治外交日程

*トルコ大統領・議会選挙(6/24)
*「一帯一路」サミット(香港、6/28)
*W杯予選日本ポーランド戦(ボルゴグラード、6/28)
*EU首脳会議(6/28-29)
*TPA法による大統領通商権限期限(7/1)
*メキシコ大統領選挙(7/1)
*日銀短観(7/2)
*米国が対中制裁関税第1弾を発動(7/6)
*中国が報復関税第1弾を発動(7/6)
*安倍首相が訪欧。日欧EPAに署名(7/11)
*NATO首脳会議(ブリュッセル、7/11-12)
*FIFAワールドカップ・ロシア大会決勝戦(モスクワ、7/15)
*G20財務相・中央銀行総裁会議(アルゼンチン、7/21-22)
*通常国会会期末(7/22)→働き方改革法、IR実施法などが成立見込み
*日米新通商協議(FFR)(7月以降に実施)→FFR=Free, Fair, Reciprocal


<6月27日>(水)

○富山市で発生した交番の襲撃と小学校での発砲事件について。あれって半世紀前に私が通っていた学校でありまして、当時はいつも奥田交番の前を通って通学していたものです。そういうわけで、少々驚いております。きわめて平穏な住宅街でありまして、あの交番もお巡りさんが居ない時の方が多いくらいじゃないかと思います。

○たぶん行き当たりばったりの、衝動的な犯行なんでしょう。だって犯人の家があるという立山町と、富山市奥田は遠すぎるんだもの。小学校への恨みがどうのこうのというのも、たぶん考え過ぎなんじゃないかと思います。犯罪は嫌なものですが、かといって根絶できるものでもない。社会全体としては、耐えるしかない。

○メディアとしても、過剰反応してはいけないのだと思います。たぶん今回の犯行は、先日の新幹線車内の事件などに刺激を受けたのではありましょう。だったらここは、もっと鈍感力を発揮すべき事態ではないのかと。「動機の解明を」とか「一層の議論が必要」といったお決まりの文句が飛び交うような事態は、あんまり生産的ではないのだと思うのです。

○いつの時代も、新聞の社会面を騒がすようなニュースは絶えない。でも気にしちゃあ負け。痩せ我慢をいたしましょう。長い目で見れば、それが社会全体の安全保障になると思います。


<6月29日>(金)

○今週は忙しい週でした。講演会が3つあって、うちひとつは英語だったとか、締め切りが3つあって、ネタは全部違うとか。とはいえ、なんで疲れたかというと、深夜にW杯の日本戦を第2試合、第3試合ともちゃんと見ていたからではないかと思うわけでして。

○昨晩の対ポーランド戦については、いろんな議論が飛び交っておりましたな。ワシ的には「あんな試合をするくらいなら、二度とサムライとは名乗ってほしくない」でありまして、それを言うんだったらW杯直前に監督を代えたところで、既に道を踏み外しておるわけです。今年はよくも悪くも日本サッカーの転機の年なのかなあ、という気がしております。

○さらに本日は、ILC100人委員会なる会合に出たところ、お歴々の前でマイクが回ってきたので焦りました。ILCというのは、「国際リニアコライダー」の略でありまして、岩手県北上山地にどえらい加速器を作って、宇宙の原理を探りましょうという試みであります。なかなかに豪快な話でございますので、以後どうぞお見知りおきを。

○今宵は竜王戦の決勝トーナメント、藤井聡太7段(5組優勝)が破れました。相手は4組優勝者の増田康宏6段。藤井7段の最後の粘りは、めずらしいくらいしつこいものでした。終了時間は22時17分。








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki