<3月1日>(金)
○本日は朝7時からBSテレ東にて「日経モーニングプラス」。午後にBS11「報道ライブ インサイドOUT」の収録。それからBSフジ主催のレセプション「プライムニュースの夕べ」(ホテルオークラ別館)へ。なんだか1日中BS放送とお付き合いしていたような変な感じ。
○で、本日はいろんなところで米朝首脳会談について尋ねられるので、おおよそこんな解説をしてました。ご参考まで。
昨日の米朝首脳会談の結果にはあまり驚かなかった。
というのは、トランプさんはディールメーカーとしては、「ギリギリまで決めない人」だからだ。なるべくその場で、自分が決めたい。昨日も「これはダメだ」と思ったから、交渉を予定より早く打ち切った。時間一杯まで粘っていたら、未練がましく映ったかもしれないが、昼食会もキャンセルして引き上げたために、「悪いのは北朝鮮側」に見えた。たぶんご本人的には、満足のゆく結果だったのではないか。
交渉が合意に至らなかったのは、事務方の交渉が煮詰まる前に首脳会談を設定したから。本来ならばアメリカ側は急ぐ必要はない。逆に北朝鮮側は制裁の緩和を急いでいる。だったらなるべく交渉を引き伸ばして、北朝鮮側がじれてくるのを待てばよかった。普通の外交であれば、そうするだろう。
しかし、トランプさんの頭の中はテレビのプロデューサーのようなもの。「トランプ劇場」がロングランを続けるためには、2月末に外交イベントが欲しかった。なぜならその頃に、モラー特別検察官の報告書が提出され、国内では「ロシアゲート」が注目を集めるはずだったからだ。そこで2月27-28日、ハノイでの会談が決まった。
実際には報告書の提出は3月にずれ込み、しかもトランプさんの留守中にマイケル・コーエン元顧問弁護士の下院公聴会が行われ、ハノイとワシントンでドラマが同時進行することになった。多くのアメリカ国民にとって、忘れがたい1日となったことだろう。トランプ流「プロレス」政治の傑作と言えるかもしれない。
次の米朝交渉はどうなるか。そんなことは、たぶんトランプさんの頭の中にはない。金正恩委員長と言えど、「トランプ劇場」においては脇役に過ぎない。この先は、3月の国内政局をどう乗り切るかで忙しくなる。
逆に北朝鮮側は、国内向けに期待感を煽ってきた手前、まずはダメージコントロールを必要としている。外務大臣が深夜の記者会見を行って、違う言い分を述べたのもその一環だろう。今日の労働新聞が、どのように交渉決裂を伝えるのかは見ものだ。米朝交渉でボールは北朝鮮側にあり、次の出方は難しい。
もっと困っているのは韓国だ。文在寅大統領にとって、今日は「三・一運動」100周年という重要なタイミングで、この日の記念演説で「新しい朝鮮半島レジーム」をぶち上げ、同時に北朝鮮向けの経済協力に踏み込むつもりだった。しかし米朝交渉が止まったのでは、南北融和を進めるわけにもいかない。南北経済協力の実現も遠のいた。
思えば第1回目の米朝首脳会談は2018年6月12日であり、翌6月13日は韓国の地方選挙の日だった。シンガポール会談は与党にとって追い風となった。今度のハノイ会談でも、文在寅大統領は「トランプ大統領はまた自分を助けてくれる」と思っていたのではないか。おそらく一晩で演説を書き直すことになっただろう。
中国も不穏なものを感じただろう。来週は全人代で手一杯だが、3月下旬には米中首脳会談が行われる。米中通商協議をまとめたいところだが、相手は「首脳会談をぶち壊すこともある」と分かった時点で、習近平主席はフロリダ州マー・ア・ラゴへ出かけて行くのが怖くなったのではないか。3月は米中の協議に注目が集まるだろう。
<3月3日>(日)
○本日は東京マラソンの日。でも、ワシは東洋経済オンラインの編集F氏の計らいで、この連載陣である山崎元、ぐっちーさんなどとともに中山競馬場に結集。本日は弥生賞。春のクラシックレースを控えた3歳牡馬が集うレースである。
○例年、弥生賞は好天に恵まれ、花粉に苦しみながら勝負するのが常である。ところが今日は雨で、肌寒い一日。そんな中でもビニール傘をさした競馬ファンが多いのは、JRAとしては結構なことといえましょう。ワシは朝から勝ったり負けたりで、その中では小倉8レース、藤田菜七子ちゃん騎乗のアラスカノオーロラからの馬連を取ったのがほとんど唯一の収穫でありました。
○問題は9R以降なのである。いやもう、荒れる荒れる。なにしろ本日のWIN5は正解者なしで4億6498万円のキャリーオーバーであった。とにかく阪神10Rは7番人気、中山10Rは14番人気、小倉11Rは5番人気、阪神11Rは13番人気ときている。そして中山メインの11R、弥生賞を迎えたのである。
○今年の弥生賞は出走馬が少ない。3歳牡馬で最有力と目されているサートゥルナーリアは、昨年末のホープフルステークスで勝った後はそのまま皐月賞に直行である。そりゃあG1レースで勝ったんだから、同じ中山芝2000mのG2レースに出る意味はないわな。ラストドラフト、ニシノデイジー、カントルといったところが人気になっている。今日は荒れているから、ということでワシは4番人気のブレイキングドーンから。これが来れば一気にプラスだぜい。
○ところが1着になったのは大外の8番人気、メイショウテンゲン。2着は6番人気のシュヴァルツリーゼ。そして3着にブレイキングドーン。いつもは荒れない弥生賞で大変な番狂わせ。何しろ過去10年、1勝のみの馬が勝ったことは一度もないというのに、今年は1着から3着まですべて1勝のみである。うーん、こんな弥生賞もあるのか・・・。
○本日は競馬ブロガーのTAROさんがご一緒でした。「万馬券の教科書」という本を出されたそうです。今後、参考にさせていただきたいと思います。何しろ次回の「市場深読み劇場」はワシが書く番だから、フィリーズレビューの予想をしなければならんのである。
<3月4日>(月)
○ランチをしながら、付き合いの長い編集者と一緒に松尾文夫さんの思い出話。たまたまその直後に連絡が入ったので、以下の通りご紹介しておきます。
●故 松尾文夫氏(ジャーナリスト、元共同通信社ワシントン支局長)葬儀告別式
*通 夜:3月7日(木)午後6時から
*告別式:3月8日(金)午前11時から
*場 所:築地本願寺第二伝道会館(東京都中央区築地3-16-1)
○しみじみ思い出は尽きません。生前、ご関係のあった方々にどうか届きますように。
<3月5日>(火)
○本日の「くにまるジャパン」でもお話ししたのですが、今週3月7日にはILCこと国際リニアコライダーの招致に、日本政府が名乗りを上げるかどうかの意思表示が行われます。岩手県北上山地の地下100メートルに、長さ20キロのトンネルを掘って、両端から電子と陽電子を光速の速さで発射して、衝突させてビッグバンと同じような状況を作り、宇宙が誕生した謎に迫ろうという国際プロジェクトであります。
○ILCにかかる費用は8000億円と目されている。ランニングコストも年間400億円というから、相当な金額になることは間違いない。日本が名乗りを上げれば、その半分くらいを負担することになる。ただし、2000人からの素粒子物理学の研究者が世界から集まってくるとか、スピンアウトで誕生する技術があるとか、何より東北の復興に役立つとか、メリットもある。さて、この問題をどう考えるべきなのか。
○不肖かんべえ、実はこのILC100人委員会に参加しておりまして、どういう結果が出るか気になっております。本件、地元の岩手県では盛り上がっているのですが、中央のメディアがまったく関心がありませんで、報道は少ないですねえ。たぶん柴山文科大臣が責任者ということになるのだと思いますが、どんな決断を下すのでしょうか。
○ところでこのプロジェクト、過去には誰が中心になって進めてきたのか。今回、調べてみてわかったのですが、実は故・与謝野馨さんなんですね。1995年に文部大臣に就任した当時、欧州のCERNが進めていた研究を、日本が支援することを決めたのが発端だったそうです。
○与謝野さんはとてつもない教養人でした。与謝野鉄幹の孫ですから、油絵を描くくらいは当たり前ですが、実は理系の学問が大好きで、趣味でパソコンを作っちゃうような人でした。1993年に自民党が下野した際には、「よしよし、これで暇ができた」とばかりに量子力学の本を20冊くらい買い込んで読んでいた。「宇宙の始まりを解き明かす」というプロジェクトにはまことに最適な人物でした。
○その後、与謝野さんは落選の憂き目にも遭うのですが、2003年選挙で復活。当時の小泉首相の下で政調会長に指名され、ここでILC計画と再会を果たすわけです。その後、ギリシャ問題に伴う欧州の債務危機やら、東日本大震災による東北の被災など、いろんな要素がからんで今日に至っています。
○そこでふと思ったのですが、「最近の政治家は小粒になった」と言われるのはあれは間違いではないのかと。逆に「昔の政治家がとんでもなく大物だった」のではないか。いやもう、与謝野さんみたいなタイプは見かけなくなりましたなあ。どこの世界においても、やむを得ぬことではあるのですが。
<3月6日>(水)
○しばらくぶりに将棋界のお話です。
○「3月のライオン」という言葉がありますように、順位戦が最終局を迎える3月は棋士にとっては勝負の季節です。昨日はC級1組の棋士たちが一斉に最終局を迎えました。最上位には8勝1敗の棋士が4人居て、今年B級2組に昇格できるのは2人だけ。その4人が対局して、全員が勝利しました。こういうときは、前期の順位がモノを言うことになる。つまり9勝1敗でも上がれない棋士が2人できてしまう。こういう現象を「頭ハネ」と呼びます。
○この記事にあります通り、8勝1敗だったのは上から順に近藤誠也五段、杉本昌隆八段、船江恒平六段、藤井聡太七段の4人でした。すなわち、近藤五段(B級2組昇格と同時に六段に昇段)と杉本八段(藤井七段の師匠、奇跡的な上位クラスへの返り咲き)が「おめでとうございます」となって、船江六段と藤井七段は「C級1組にあと1年」という結果になったのです。
○世間的には「師匠と弟子の同時昇格があるか?」という点に関心が集まっていたわけですが、あいにく「師匠が上がって弟子はあと1年」という結果となりました。順位戦というのは、前年の順位がモノを言う仕組みになっておりますので、C級2組から上がってきた新人が翌年も1年で通過していく、というためには全勝するくらいの成績が必要です。そういう意味では、藤井聡太七段に唯一の黒星をつけた近藤六段が上がったのは、妥当な結果だったといえましょう。
○それにしても、弟子の活躍に師匠が刺激を受ける、というのは素晴らしい話であります。「弟子が上がって師匠は涙をのむ」という結末も日本人好みではありますが、将棋界はやっぱり自分が勝ってナンボの世界です。たぶん杉本八段ご本人は大喜びなんじゃないでしょうか。「すまん、俺が勝ってしまったばかりにお前が上がれないとは・・・」なんていう浪花節的な世界ではないものと想像します。
○藤井聡太七段のファンにとっては、まことに不本意な結果ということになります。順位戦という制度の本来の趣旨から行くと、全クラスで「総当たり戦」をやるのが正しいわけでして、それならば藤井聡太七段が上がったことでしょう。ただしC級1組とC級2組はあまりにも棋士が多く、なおかつ「降級点制度」を導入しているので、実際問題として総当たり戦は不可能である。この辺は将棋界の制度上の課題ということになります。
○ともあれ、今日のように棋士の数が増えてしまうと、「18歳のA級八段」(加藤一二三さん)とか、「21歳で名人位奪取」(谷川浩司さん)といった快挙は考えにくくなりますな。それでも藤井聡太七段はまだ高校生であって、勝率も8割5分4厘という圧倒的な強さを誇っているのですから、引き続きどんどん上がっていくことでしょう。
○個人的な希望を言えば、来期のC級1組では、B級2組から落ちてきた「うつ病九段」こと先崎学九段と藤井聡太七段の対局が見てみたい。たぶん鎧袖一触で藤井七段が勝つことでしょう。そこで先崎九段がどんな自戦記を書くかが興味深い。彼は筆が立ちますからね。残酷なようですが、似たようなことを考えている将棋ファンは少なくないものと思料するのであります。
<3月8日>(金)
○昨日、松尾文夫さんのお通夜に出かけたら、当然のことながらアメリカウォッチャー人脈が大勢来ていて、そこでの話題はもっぱら「スティーブ・バノンが日本に来ているんだって」でした。
○バノン氏、都内の某外資系高級ホテルに泊まって、インタビューを受けたり、テレビに出たりして羽振りが良いようなのですが、そこは蛇の道、ちゃんと発言内容はワシの耳にも入るようになっている。まあ、そんなに真新しい内容があるわけではない。せいぜい2020年選挙に関する感想が聞けるというくらいでありまして。
○ところがバノン氏、こんなことを聞き捨てならないことを言っていたんだそうです。
「俺も昔は東京によく来たもんだ」
「その当時は映画の仕事で日商岩井に通っていた」
「え?赤坂のあのビルはなくなるのか?」
○この話、過去に社内でも何度か噂になっていて、「バノンを相手に映画ビジネスをやっていたのは、社内の一体、誰だったんだ?」という話が出るのですが、皆目見当がつかんのです。バブル期の日商岩井は、確かに映画ビジネスをやっていたし、出資した映画も何本かあったのですが、スティーブ・バノンなんて当時はまったく無名でありましたから。
○ということで、元NICの方で当欄をご覧の方々にお願い申し上げます。バノンとの映画ビジネスを誰がやっていたのか、ご存知の方がいらっしゃいましたら、当方までお知らせいただけますでしょうか。ちょっと気になるじゃありませんか。相手は「アメリカ大統領を作った男」なんですから。
<3月10日>(日)
○本日は大阪に日帰り出張。
○大阪はなんだか変なことになっている。先週、知事と市長の「クロス・ダブル選挙」が決まったら、今度は今朝になって、自民党が「大阪知事選に俳優の辰巳琢郎氏に立候補を要請」とか。うーん、これで松井知事が大阪市長に当選し、吉村市長が大阪府知事になり損ねて辰巳知事誕生、となってねじれたらどうするんだろう。
○現地では、「辰巳vs.松井のクイズ決戦を見てみたい」などという声あり。それは面白そうだけど、普通に考えて辰巳さんの圧勝でしょうなあ。しかし投票日は4月7日なので、そんなに先のことではない。新元号の公表後になりますな。景気の腰折れ説とともに、何だか急に国内が風雲急を告げてきた感があります。
○ところでマスターカードのGlobal
Destination Index2018を見ると、大阪が第19位(842万人)でランクインしていて、赤丸急上昇中なんですよね。インバウンドがブームになる中で、大阪は明らかに勝ち組なんだもの。維新の会が言っているような路線が支持を集めるとは、あんまり思えないのだよなあ。
○去年は地震あり、豪雨あり、台風ありで大変だった大阪。関空も水に浸かっちゃいましたからね。今年の政治決戦はどんな民意が示されるのでしょうか。今年は大阪が面白そうです。
<3月12〜13日>(火〜水)
○火曜日、内外情勢調査会の仕事で三重県松阪市へ。
○松阪市は昔は「松坂」だったそうで、それが「松阪」になったという経緯は大阪に似ている。なんで土へんよりも小ざとへんが好まれるのかは、よくわからない。ご存知の方がいらっしゃいましたら、どうぞ教えてくださいまし。
○松坂城を築いたのは、戦国時代の名将、蒲生氏郷であった。蒲生氏郷は近江の出身であったから、近江商人を大勢連れてきた。それで城下町が栄えたのだそうだが、その中から後年になって三井家が江戸に進出して、今日の三井グループの始祖になったのだとか。越後屋よ、お主もワルよのう。
○三重県では、地元地銀である三重銀行と第三銀行が合併して、「三十三銀行」になるとのこと。これ、よく出来たダジャレですよね。なにしろ「三重県」は「さんじゅうけん」とも呼べる。つまり「さんじゅう銀行」と「だいさん銀行」が合併するから「さんじゅうさん銀行」。金融庁よ、どうだまいったか。
○これは最近、講演会でよく使うダジャレなんですが、「来年のアメリカ大統領選挙で、困ったことに民主党からの候補者が2ダースもいます。それ以上にもっと問題なのは、その中に3ダース(サンダース)がいることなんです」。いや、われながらあまりにもくだらない。英語にもできないギャグである。でも、確実に笑いが取れるところなのであります。
○そんなことで松阪市に一泊。水曜日の朝になって、午前8時半の電車に乗らなければいけないところを、1時間くらいだけ市内を散歩してみた。松坂城の石垣が見えるところまでは行ったのだけれども、それで電車に乗り遅れるとお昼の約束に間に合わなくなるので撤退。本居宣長の記念館などがあるようなので、あらためて来てみたいところである。
○そこでささやかながらトラブルが発生。午前8時半くらいの特急列車に乗って名古屋駅に出て、そこから新幹線に乗り継いで12時からの都内の約束に間に合わせる、とだけ考えていたのだが、ワシが松阪駅で乗った電車は(主催者さんが切符を用意してくれた)近鉄特急ではなくてJRであった。なんと松阪駅は2つの会社が乗り入れていて、ホームを間違えても区別がつかないのである。しかもほぼ同じ時間に特急列車がやってくる。
○そうか、関西は同じ条件ならばJRよりも私鉄を使うんですよねえ。これは関東の感覚とは正反対です。東京ではJRの方がエライ。次の津駅で乗り換えるという手もあったようなんですが、乗り遅れるとお昼の約束がアウトになってしまうので、泣くなくJRの料金を払いました。いや、これも勉強であります。あっちこっち訪れることの報酬みたいなものであります。とほほ。
<3月14日>(木)
○昨日の疑問。「なぜ大坂や松坂は大阪や松阪になったのか?」→「それは坂の字が”土”に”返る”を意味するようで縁起が悪いから〜!」・・・・いろんな読者から教えていただきましたが、「ボーッと生きてんじゃねえよ!」とチコちゃんに叱られてしまった気分であります。
○しかし、とワシは思うのであります。この世で万物は土に返るのが世の習い。そうでなくてはなりませぬ。土に返らないプラスチックが迷惑がられる世の中であります。大坂なおみや松坂大輔は、やはり大阪や松阪ではない方がよろしいのではないでしょうか。
○というのは、今宵伺ったミャンマーのお話から。「ミャンマーにはお墓がない」のだそうです。だって仏教国では土に返るのが当たり前だから。お釈迦様だって、その高弟たちだって、お墓はこの世に存在しないのです。
○そんなミャンマーでは、日本から遺骨収集団が来るのがとっても迷惑なんだそうです。かの国はいい意味で、「死して屍、拾うものなし」が常態なので、死んだ人の骨なんて見たくもないのであります。
○その一方で、少子高齢化の最近の日本では、「墓仕舞い」がブームになっております。そりゃそうだよね。「永代供養」なんて嘘に決まっているんだから。虎は死して皮を残し、人は死して名を残す。が、名を残す人なんてほとんどいなくって、99.999%の人は忘れ去られていく。それはそれでよろしいのではないでしょうか。
○今は樹木葬やら散骨やら、いろんな方式があるのだそうです。そのうち有望視されているのは「宇宙葬」。これは遺骨をロケットで打ち上げて、地球を何周かしてから最後は大気圏に突入して消えてなくなる。それは地上から流れ星となって見えるのだそうです。ちゃんと流れる日時と場所も特定できるのだとか。これは結構、人気になるかも。
○大坂城を築き、位人臣を極めた豊臣秀吉が残した辞世の句は「露と落ち 露と消えにし我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢」。大坂が大阪になって、実は太閤殿下はびっくりしているのではないでしょうか。
<3月15日>(金)
○本日は"Beware of the Ides of March!" ――3月15日はジュリアス・シーザーが暗殺された日です。心しなければなりません。でも、税金の申告は昨日済ませたので、正直なところ油断しきっておりました。
○惨劇が起きたのはニュージーランドのクライストチャーチでした。49人が射殺され、48人が怪我をし、4人が逮捕されたとのこと。今回のテロ事件は、2011年の地震と並んで同国の「黒歴史」として記憶されることでしょう。
○クライストチャーチはしばらくご無沙汰しておりますが、かつて何度も通ったことがある美しい街であります。モスクがあるとは知りませんでした。それにしても、こんなことが起きてしまうとは。アングロサクソンの国なので、銃規制は緩いのだと思いますが、危険な犯罪とは縁遠い社会なのでありますが。
○犯人たちが「正しいことをしているつもり」であるという点が、何とも重苦しく感じられます。『ホモ・デウス』によれば、今日の人類は飢饉と疾病と戦争を克服しつつあり、その代わりに目標とするのは不死と幸福、神性の獲得である、とのこと。しかるに現実は、集団ヒステリーや薬物、自己破壊などに逃避する人が増えているだけではないのか。
○ともあれ問題はニュージーランドである。これから秋を経て冬を迎えるかの地に対し、良いことがありますようにとお祈りしておきます。
<3月16日>(土)
○クリント・イーストウッド監督・主演の『運び屋』へ。いいですね。こういう映画。いかにも今のアメリカという感じがします。
○かつてはダーティー・ハリーで、もっと前はローハイドだったんだけど、今では「監督でも主演でも、安心して映画を見られる人」になっちゃいました。『許されざるもの』も、『マディソン郡の橋』も、『ミスティック・リバー』もよかった。もちろん『硫黄島からの手紙』も。最近では『アメリカン・スナイパー』を見ましたな。
○今回は久々にご本人が主演。御年88歳、顔のしわはいちだんと深くなり、長身の背中も少し曲がっているように見える。でもホントは筋骨隆々のクリントが、無理をして「老人の演技」をしているのかもしれない。だって超高齢化社会なんですもの。横顔を見ているだけで幸せな気分になります。
○そもそも90歳の「運び屋」がいた、というのが実話なんですから。若いものはスマホなしじゃなーんもできん・・・などと思っているし、今どき差別発言も飛び出すし、何より家族を顧みない古いタイプなんだけど、今からでも遅くはない。心を入れ替えてLate-blooming(遅咲きタイプ)でもいいじゃありませんか。
○配偶者は「後半が甘い」と言ってましたが、ワシ的にはその方が良かったな。犯罪が出てくるドラマなんだけど、なんだか不思議な幸福感に満ちた映画だった気がします。
<3月18日>(月)
○朝は「モーサテ」へ。今日のネタは「景気判断、表現どう変わる?」でありました。ついでに「今日のオマケ」もご紹介。本日は「パックンはお笑い芸人としてスゴイ!」ということに感動しました。普通のコメンテーターではないのであります。
○今日の経済視点では「チャイナ・リスク」を挙げました。チャイナ・リスクというと、皆さん中国経済が減速してほかに影響が及ぶことをいうわけですが、そんなことは去年からずっと言われ続けてきたことで、今さら知らないとは言わさない。そんなことは当然、想定の範囲内であるはずなのです。
○それよりも怖いのは、既に中国経済が底を打っていて、ここから急速に世界経済が反転し、アメリカなどは過熱気味になってしまうというシナリオです。その場合、Fedは再び引き締めに転じねばなりませぬ。しかし昨年12月はタカ派、今年1月はハト派、それが再びタカに・・・なんてことが実際問題としてできるのだろうか。それって大騒ぎになるのではないか・・・・。つまりチャイナ・リスクにはアップサイドもあるのであって、それは皆さん、あまり考えておられないご様子。そっちの方が怖いかもしれませぬぞ。
○今日は2月の貿易統計が出ました。パッと見ただけですが、思ったほど悪くはない。1-2月を慣らしてみると、日本の対中輸出は確かに前年比で減ってはいるけれども、この程度であればそんなに騒ぐことはないかもしれない。後は2月の鉱工業生産を待たねばなりませぬ。
○モーサテの後は新幹線に飛び乗って金沢へ。相変わらずにぎわっておりましたな。特に金沢駅の土産物売り場は、それはもう大変なものでありまして、ついつい変なものを買ってしまいました。ブランド力というものは、こういうところで出るものでありますな。
<3月19日>(火)
○今朝の日経新聞を見たら、「3月20日の月例経済報告は現状維持」とのこと。うーん、そんなことでいいのでしょうか。一方で本日の「大機小機」欄は、「微妙な段階に来た景気判断」という含蓄のある文章を乗せている。察するところ、「隅田川」さんは経企庁のOBなのではないのかなあ。
○ちょっとこれはいかがなものか、てな話を、今朝の「くにまるジャパン極」で申し上げる。やっぱり内閣府から経済企画庁を分離すべきではないのかと。エコノミストが日本経済を語る時は、日本政府ではなく日本国民の側に立つべきである。今の内閣府の中にいると、なかなかそんなわけにはいかない。政府内野党といわれてもいいから、愚直にデータを読んで正論を吐く部局が政府内に必要なのではないかと考える次第であります。
○番組が終わってから、2日連続北陸新幹線に乗って長野市へ。本日は信濃毎日新聞社主催の「信毎セミナー」。最初に呼ばれたのが10年前で、もうこれで5回目くらいだろうか。いかにも長野らしい、真面目なお客さんを相手に現下の日本経済をどう見るか、てな話を1時間半ほど。貴重なご質問を3ついただきました。
○夜は都内某所でブラックタイ盛装のパーティーへ。なんだか、これだけいろんなことが重なると、我ながら躁状態みたいな感じでありますな。若気の至りで、20代の頃に作ってしまったタキシード(その頃はバブル経済だった)、そでを通すのはこれが合計で10回目くらいか。とりあえず、ちゃんとズボンがはけるだけでも儲けものである。
<3月20日>(水)
○本日発表の月例経済報告、結局は下方修正となりました。基調判断は、「景気は、輸出や生産の一部に弱さがみられるが、緩やかに回復している」でした。結果的に官庁エコノミストの良識が示されたと思います。本日発行の溜池通信は、一部誤報となってしまいましたが、まあ、そこは仕方がない。ギリギリの判断だったのではないでしょうか。
○今週は月曜に「モーサテ」に出て金沢に行き、火曜は「くにまる」に出て長野に行き、夜は日仏交流160周年の晩餐会にも出て、今日はテレ朝チャンネル「津田大介」の収録を済ませ、なおかつ溜池通信もちゃんと予定に間に合わせたので、とりあえず「やり終えた」という充足感があります。あーホッとした。
○明日からは久々に海外に出かけまする。さて、どちらでしょう?
<3月21日>(木)
○ベトナムのハノイに来ております。たぶん20年ぶりのことではないかと思います。初めてきたのは1999年11月で、ちょうどこの溜池通信を始めたばかりの頃でした。
○その時は社会主義国を訪れるのが初めてだったので、イミグレで軍人のような係員が威張っていることにびっくりしたものです。それが今ではすっかり様変わり。何しろこの国は、今では入国カードもなければ、イミグレで写真を撮られることさえありません。
○そして、街は夜になると真っ暗になり、まことに寂しく見えたものですが、今ではこうこうと明かりがついている。何しろ今、これを書いているのが地上55階なのですから、推して知るべしであります。
○ひとつ発見したことは、この街の中心部は大統領府があって、大きな広場があって、ホーチミン廟がある。この作りはモスクワと全く一緒ですな。すなわち赤の広場の隣にレーニン廟とクレムリンがある。その昔、社会主義国は揃ってモスクワをまねようとしたのでありましょう。
○おそらくは北朝鮮もそういう国のひとつであって、先の米朝首脳会談にこのハノイが選ばれたことは、そういう意図があったのかと納得します。逆にアメリカから見ると、ベトナムは戦争を戦った後に仲良くなった国であって、最恵国待遇を与える過程では、POW・MIA問題などで随分やりあった相手でもある。でも、「アメリカと仲良くなると、こういういいことがある」と教えてくれる実例でもあったわけです。
○旧市街を訪れると、ここは昔ながらの様子が残っている。でも、やや観光客モードになっているのは、浅草みたいなものですかな。街中を走るクルマの量が増えましたが、オートバイも相変わらず元気に走っています。これぞベトナム。経済成長率7%は伊達じゃありません。いや、それにしても20年間には大きな変化があったものだと感心しております。アッパレなり、ハノイ。
<3月22日>(金)
○暑い、あつい、アヅイ。昨日、今日のハノイはとっても暑いのだ。今週末になると雨が降って寒くなるという噂もあるのだが、気温が30度超えたらもう夏到来だよね。空気はあまりキレイではないのだけれども、市内にあるホアンキエム湖のそばを歩いていて、ほんのり風が吹いたときなどはホッとする瞬間である。
○出発の前夜に慌てて夏物のブレザーを取り出したのだが、これだって着ちゃいられない。半袖シャツで歩いていると、道端で何かを売っている人が居たり、何をするでもなくお茶を飲んでいる人たちが居たり、所在無げにスマホを見ている人が居たり、そうかと思えば縁台将棋(というか、中国式の将棋らしい。いくら目を凝らしても、どれが王様なのかが分からない)をやっている人たちが居る。この人たちはいったい何をしているのだろう。
○市内を歩いていて、ちょっと感動したのがホアロー収容所である。フランス植民地時代のもので、それはそれは残酷なつくりになっている。フランス人はひどいことしますなあ。場所は違うけど、スティーブ・マックイーン主演の『パピヨン』という映画を思い出す。ホアロー収容所は後にベトナム戦争時に、アメリカ人捕虜を収容する施設に転じた。いわゆる「ハノイ・ヒルトン」である。その中には若き日のジョン・マッケイン三世もいたのであった。
○そうかと思えば、ベトナム軍事歴史博物館(本日は休館)には、中国人観光客が何十台ものバスを連ねてやってきている。察するに陸路をたどってここまで来ているのであろう。ミグ21なんぞが飾ってあるが、およそオモチャのような戦闘機であって、こんなものでよく戦争したわなあ、と感心してしまう。2015年に「国宝」に指定されたそうですが。
○こんな中で、昔と変わらぬ仕事を続けているのが商社駐在員の皆様方である。世の中が移り変わるにつれて、欧米ではどんどん事務所を縮小しているのだが、それでも東南アジアでは今も変わらず商社らしいフィールドが残っている。おそらく世界経済に占める日本のシェアは、これからもどんどん低下が続くのだろうが、「ここで負けたらアキマセン」というのが東南アジアであろう。
○ここハノイは「米中貿易戦争」の論理的帰結として、今は中国に代わる製造業の拠点として脚光を浴び、どんどん外から投資がやってきている。果たしてこの繁忙、どこまで続くのか。とにかく若くて、暑くて、元気な国なのである。ベトナムは。
<3月23日>(土)
○ハノイの空港では、ベトナムエアーのゲートは超満員なのである。大きな荷物を抱えた善男善女が並んでいる中で、思わず溺れてしまいそうになるのですが、ともあれ何とか便には間に合う。そこから3時間余りで到着するのがシンガポールである。
○どうしてハノイ→シンガポールになるのかというと、別段、トランプ=金正恩会談の後を追っているわけではなくて、たまたまそういうことになっただけである。ともあれ、元気のいいASEAN新興国から、元気のいいASEANお金持ち国へ。チャンギ空港に機体が着陸して、ホテルの部屋に入るまでは1時間以内。何なんだ、この手際の良さは。
○現地では佐藤夫妻にご案内いただく。それにしても、当地における「ドンキ」の盛況ぶりにはあっけにとられました。繁華街のど真ん中のビルが、ユニクロ、東急ハンズ、Zoffなどの日本資本に占領されていて、地下街はドンキなのである(ドンキホーテ、という名前は既にスペイン資本によって登録済みであったとのこと)。
○すごいんですよ。ワンパック1500円もする「あまおう」が売れています。鮮魚コーナーでは、Buri
Kirimiとか、GINDARAとかを売ってます。北海道産干しアワビ、干しなまこ(バカ高い)を見た時には頭がくらくらしましたな。もちろん和牛も人気です。日本のコメも十種類以上売ってます。
○さらに当地では、"Hokkaido"が絶大なブランド価値を有している。北海道の海産物はもとより、ラーメンから豚丼、さらには余市などのウイスキーまで売ってます。「毎年、北海道に通っている」人もいるのだそうで、なるほどインバウンドのブームというのは、相当に腰の入ったもののようです。
○いかにもドンキらしい点としては、ガチャポンを置いていて、そこにはガンダムやキティちゃん、ピカチュウなど、一通りの日本製アイテムが揃っています。しかもコインは40SDとか30SDとかですから、気分的には500円玉ですね。現地の小学校では「ベイブレード」も人気になっていて、なんとNetflixが英訳して放送しているんだとか。
○日本の感覚から行くと、何より道行く人の若さが感動的です。しかも暑いものだから、皆さん薄着なんですね。さすがは常夏の島。こんな風に若い人が元気な一方で、お店のお掃除をしているのは高齢者だったりする。世界経済の最先端を行く当地の経済は、繁栄もあるけれども矛盾もありそうだ。
○どれ、ちょっと酔い覚ましにカジノにでも行ってくるとするか。今日は土曜日。夜は長いのである。
<3月24日>(日)
○本日はセントーサ島へ。第1回目の米朝首脳会談が行われたカペラホテルを見学いたしました。ハノイのメトロポールホテルもよかったけど、こちらはさらにリゾートっぽいホテルでした。
○とまあ、いろいろありましたが、これで東南アジア旅行も終了。これから帰国いたしまする。ああ、面白かった。
<3月25日>(月)
○実を言うと昨晩は深酒をしてしまい、ホテルに戻ってきたのが午前11時過ぎ。これで早朝6時発のANA便に間に合わないと一大事。実はひやひやしていたのですが、午前3時にはちゃんと起きられて、ありがたいことにちゃんと帰って来れました。忘れ物もないみたいです。ああ、よかった。飛行機の中ではただただ寝ておりました。
○帰って来て見ると、モラー特別検察官の報告書が出たとか、株が下がったとか、イチローが引退したとか、羽生結弦がネイサン・チャンに敗れたとか、センバツ野球が始まっているとか、いろいろあったようです。ほんの5日間でも、いろんなことがあるものですな。話についていけなくなるので、ぼちぼち追いつきましょう。
○明日は文化放送「くにまるジャパン」から。この番組は2009年4月から出てますので、これでちょうど10周年になるんですよね。われながらよくまあ、続いたと思います。ということで、明日も寝坊しちゃダメなのである。
<3月26日>(火)
○ハノイ〜シンガポール漫遊記も終わって、さあ今日からは会社復帰。今日のところはこれがいちばんの驚きですな。
https://www.heritage.org/asia/event/taiwan-us-enduring-partnership-the-indo-pacific
A Special Policy Dialogue
Wednesday, March 27, 2019
3:00 pm - 4:00 pm
The Heritage Foundation
Allison Auditorium
214 Massachusetts Ave NE
Washington, DC 20002
A panel discussion with
Her Excellency Tsai Ing-wen
○なんと明日、ヘリテージ財団で行われるパネルディスカッション「米台関係:インド太平洋地域における不朽のパートナーシップ」に、蔡英文台湾総統が出席するのですと。と言っても、さすがにワシントンDCに行くわけではなく、パラオなど太平洋3カ国を歴訪した後にハワイに立ち寄り、そこでネットでつないだ公開討論になるのだそうです。
○そりゃま、米中関係が緊張をはらんでくると、当然、台湾が焦点になります。それに来年1月11日には総統選挙があるわけですから。アメリカの親台派や反中派がいろいろ仕掛けてくるというのもむべなるかな。特に米中通商協議が佳境に差し掛かっている今であるからこそ。
○ちなみに明日は東京財団でこんなシンポジウムもございます。席はまだあると思いますので、よろしければお出かけください。
第115回東京財団政策研究所フォーラム「米中覇権争いの政治経済学」
●日 時 2019年3月27日(水)14:30〜17:00(開場14:00)
●会場・アクセス
ベルサール六本木コンファレンスセンター会議室
(東京都港区六本木3−2−1六本木グランドタワー9階)(当研究所と同ビル内)
https://www.bellesalle.co.jp/shisetsu/roppongi/bs_roppongi_cc/access
●プログラム
14:30〜16:00 パネルディスカッション
モデレーター:伊藤洋一(三井住友トラスト基礎研究所主席研究員)
*報告1(14:30〜15:00)「トランプ政権のアジア・リバランスの光と影」手嶋龍一(外交ジャーナリスト)
*報告2(15:00〜15:30)「米中新冷戦時代の日本ファースト戦略」吉崎達彦(双日総合研究所チーフエコノミスト)
*報告3(15:30〜16:00)「米中覇権争いの政治経済学」柯隆(東京財団政策研究所主席研究員)
16:00〜17:00 ディスカッション&質疑応答
17:00 閉会
<3月27日>(水)
○ということで、本日は東京財団のシンポジウムに参加する。テーマは「米中覇権争い」。
○この問題は、どんどん言葉がエスカレートしている感がある。「米中通商摩擦」→「米中貿易戦争」→「米中新冷戦」→「米中覇権争い」。それぞれ一長一短あるのですが、「新冷戦」くらいが妥当なのではないのかなあ。
○今日の議論では手嶋龍一さんがいちばん過激でして、「台湾海峡問題に要注意」「米中は冷戦にとどまらず、熱戦もあり得る」との見方であった。ワシ的にはもう少し米中のIntensityは低くて、コンベンショナルな「陸・海・空」ではなく、サイバーや宇宙空間といった新しい舞台での対決になるんじゃないかと考えている。それは結構、長い期間にわたって続きそうである。
○などと言った話を、本日逝去されたというアンドリュー・マーシャル氏(97歳)はどのように見ていたのであろうか。中国の前途に対する同氏の見解(ネットアセスメント)は、「わからない」であったそうである。そうだよね。分かったような振りをするのはよろしくありません。
○パネルディスカッションの司会を担当したのは、とってもお久しぶりの伊藤師匠である。「猛獣たちを仕切るのは大変だ」などと言っていた。猛獣呼ばわりされるのは不本意なことであるが、「覇権争い」を語るからにはパネリストたるもの、猛獣になるべきであろう。モデレーターはさらに凶悪な猛獣使いといえましょう。
○この企画は東京財団の柯隆さんによるもの。今日はお嬢さんもいらしてましたね。今宵はおうちではどんな会話になったのでしょうか。
○ちなみに終わってから、手嶋さんとの間で競馬談義になったことは言うまでもないのである。うーん、そうですか。やっぱりグリーンじゃなくてキャロットにすべきなのでしょうか。
<3月29日>(金)
○先日聞いた話。ある省庁で情報発信をする時に、ホームページ(URL)で読む人とSNSで読む人の比率を調べてみたら、今や1対10くらいで後者が多いのだそうです。しかもアクセスしている時間は朝晩の通勤時間帯が多い。つまり、皆さんスマホでご覧になっている。今どきPCの大きな画面でなきゃ嫌だ!という人はかなりの少数派に転落している模様。困ったねえ、ワシは完全に時代に遅れている(ちなみに電車の中ではiPadを使っています)。
○SNSで情報にアクセスするということは、自分が信頼している誰かの推薦で見ていることが多いのだろう。つまりは、「ほらね、そーでしょ?」「うんうん、やっぱりその通りだな」という証拠固めで情報に接することになる。フラットな状態で、「この問題のポイントはどこにあるのだろう?」と探し求めたい読者は、やっぱりURLに直接アクセスする方がいいと思う。そうすれば、過去に遡って関連資料も読めるわけだし。
○もっともそんな面倒なことは当世風ではない。SNSで記事を読む時代ということは、記事はどんどん短く、わかりやすく、どうかすると「煽り」もつきやすいことになる。活字媒体でさえ、ここ数年で論文の字数は着実に減っている。現代人は、長い文章をじっくり読むようなことができない体質になりつつあるのではないか。
○SNSで政治が動くというのも怖い話で、ツィッタ―で議論を拡散するためには、なるべく極端な意見を言って炎上させた方がいい。これは今のアメリカ政治で実際に起きている現象で、グリーンニューディールでも国民皆保険制でも、民主党の候補者がどんどん左傾化しているというのは、要するにそういうことなのであろう。結果として、2020年にはまたまたトランプさんを勝たせてしまうことになるかもしれない。
○もっともそうなると、民主党支持者の間では再び陰謀論が広がって、ロシアや中国が情報操作したからに違いない!みたいなことを言い出すのだろう。今の英国におけるBrexitもそうですが、民意がどんどん極端な方向に突っ走る時代というのは、つくづく怖いものだと思います。
○こんな世の中になってくると、「まだしもテレポリティクスの時代は良かったなあ」と思えてくる。テレビの世界には、まだしも「プロ」が居たからね。この溜池通信も、URLを使った情報発信という古い形をなるべく守っていくことにしたいと考えるものであります。
<3月31日>(日)
○本日は町内会の花見。今年も近所の公園を借りて、30人ばかりが集まりました。最初はちょっと寒そうでしたが、だんだん暖かくなって、風も少なくてよい日和でした。桜はちょうど見ごろで、「平成最後のお花見」でありました。
○明日はいよいよ新元号が公表。考えてみれば、それが月曜日である、という点もよくできてますね。明日は新しい年度、新しい時代の到来を強く意識する日になりそうです。実際に変わるのは1か月後だけれども、事実上、明日と同時に新しい時代が始まる感じになるのではないでしょうか。
○とはいうものの、新元号に対する最初の反応としては、3対7くらいで違和感の方が強いのではないのかな。合併会社などの新社名公表時はだいたいそうですから。
○明日は全国的に入社式もあれば、エイプリルフールもある。日銀短観もありますね。外需に不安がある時期だけに、景況感がどうなるかも気になるところです。
○英国のBrexit騒動に米中貿易協議、ウクライナ大統領選挙など、海外はハラハラさせられるような材料が少なくありません。しかし不思議と国内は落ち着いている。予算も意外なほどあっさり成立したし。これも一種の「改元効果」じゃないかと思います。何しろ前例のないことだけに、どんな反応になるのか見当がつかないところがありますね。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki