●かんべえの不規則発言



2002年11月



<11月1日>(金)

○午前、日本貿易会の国際収支研究会。9月の通関統計を見ると、輸出の伸びはさすがに前年同期比でブレーキがかかっている。輸出主導による景気拡大も、残り半年くらいの命か、といった感じ。その反面、輸入がここへきてようやく伸び始めた。アジアからの輸入が増えているということは、ようやく生産の連鎖がかみ合い始めたことを意味するような気もする。あと2ヶ月分くらいが山場かな。

○お昼を伊藤洋一さんにご馳走になる。おいしゅうございました。何を食べたかはナイショにしておこう。それにしても伊藤さん、和洋中、とにかくいろんな店を知っている。それも全部、自腹で食べ歩いているというからすごい。「ひょっとして、ものすごくエンゲル係数が高いんじゃないですか?」「そりゃそうだよ。せっせと稼いだ分、こういうことに使ってるんだもの」。この精神は見習いたいですね。

○夜、都内某所で、日本国債の歴史について勉強会。国債の大量発行が始まったのは1970年代中盤から。ディーリングが始まったのが80年代半ば。そして外人が裁定取引で大儲けした時代、株から債券へと資金が動いた90年代、仕組み債による決算操作が蔓延した時代、そしてゼロ金利と格下げの時代と続き、現在に至る。今や「国債は銀行の人質」というから、もう笑うに笑えない。

○そこから一の会へ。田中さん岡本さんが主催するこの会も、残すところあと2回となった。月に1度のこの会で、思えば本当にいろんな人と会うことができた。せっかくだから、もっと続けてくれりゃいいのに、とは思うけど、いい加減な会になる前に終わりにしようというところが、この二人のらしいところ。楽しいことにはいつか終わりが来る。

○それにしても今日は寒かった。もう12月の気候ですね。ふと気がついたら、溜池山王から赤坂見附まで、外堀通りを延々とタクシーの空車が行列を作っていました。まことに寒々しい光景でした。


<11月2日>(土)

○この秋は三連休が多いので、その分、仕事量がたまっているような気がする。しかも11月中旬には、大物の締め切りが3つも重なっていたりするので気が抜けない。というわけで、午前中に会社の原稿を1本と、夕刊フジの書評を片づける。さて、来週の溜池通信はどうする?

○買い物を済ませて、そこから毎度の中山競馬場へ。今日は5レース買って、中穴が2つ来たので上々の出来。たまにはこういう日もなくちゃあね。今年も残り2ヶ月だが、ジャパンカップに有馬記念と、中山には楽しみが多く残っている。

○夜は町内会。来月からは防犯部の見回りも始まるし、だんだん年の瀬モードが近づいてきたなあ。


<11月3日>(日)

○よく働きよく遊べ、の三連休。今日は長女がお世話になった保育園が主催するバザーで勤労奉仕。この不規則発言をさかのぼってみたら、ちょうど1年前のこの日もバザーをやってましたな。

○好天には恵まれたんですが、客の出足はそれほど多くないし、売り上げははっきり落ちている。雑貨売場には百円ショップ、古着売り場にはユニクロ、古本売り場にはブックオフといった競争相手が出現しているし、最近の客はフリマを経験しているから値段交渉もきびしい。かんべえの持ち場である家具売り場は、粗大ゴミの引き取り有料化と家電リサイクル法によって規模縮小を余儀なくされ、今年はベビー用品売り場と合同になった。リストラは悲しいものなり。

○2台あったカラープリンターがすぐに売れた。最近は新品でも1万円を割っていると聞くが、中古品でも1500円なら割安感があるからだろう。ポータブルテレビが苦戦。いまどきコントローラーがついてないと、500円でも売れない。売れ残るとゴミの引き取りが有料なのでこちらも必死である。箱を開けてないバーベキューのグリルなど、楽勝に思える商品がなかなか捌けない。「置き場所がないからねえ」という声を何回聞いたか。

○ベビーベッドが売れ残りそうで気になっていたのだけれど、終了10分前に会場前をクルマで通りかかったという若夫婦が見かけ、喜んで買ってくれた。来年1月が出産予定日だとのこと。ついでにベビー服も捨て値で進呈する。最後まで売れ残ってしまったのは、子供用自転車やよく分からない健康器具など。この辺はまあ「納得」である。

○このバザー、保育園の保父母のボーナスを出すために年2回やっている。売り上げが伸びないと経営を直撃する。その点ではフリマと違ってシビアな世界。それでも不用になった商品をリサイクルする場として、こういうバザーには社会的なニーズがあるのだなと思う。あのベビーベッド、不用になったら、またバザーに出してくれないかな。そのときもまだ、売り子をしているかどうかは分からないけど。


<11月4日>(月)

○三連休の最後は、あらめずらしや休日出勤。休日のお台場はなんとも賑やかである。そこからJ−WAVEのスタジオへ。ゆりかもめに乗ったら、なんと汐留駅で止まりやがった。今後は新橋駅までの所要時間を、1分余計にみなければなるまいて。電通の新本社ビルでは引越し作業中の模様。それにしても不思議な形をしておるのう。

○今宵のフィフティーン・ミニッツ、その名に反して20分もしゃべってしまう。角谷氏が何度も「時間大丈夫?」というシグナルを送るも、周囲はあまり緊張してないようだったので、ついつい。終わったら9時50分。ということは、残り10分で角谷氏は番組をまとめなければならないわけで、そうか、悪いことしちゃったな、と反省してももう遅い。

○「今日はなんかしゃべり足りないんだよな」という角谷氏、番組が終わってから語るかたる。共産党の赤旗祭りに行ってみたらすごかった、とか、海軍バーをぜひ復活させて欲しい、とか。こっちの方が放送よりよっぽど面白い。11時過ぎに解散。渋谷の駅は若者たちで混んでいた。ふと思う。私はいったい、仕事してるのか、遊んでるのか。とりあえず、明日からは真面目に仕事しよう。


<11月5日>(火)

○いよいよアメリカの中間選挙。下院はどうやら共和党がリードを維持しそうだが、上院の勢力図はギリギリの戦い。直前にミネソタ州の上院議員が飛行機事故で死ぬとか、ロードアイランド州の上院議員が共和党から民主党へのくら替えを考えているとか、アラスカ州の上院議員が知事選に出るために、その後釜をめぐってややこしいことになるとか、新たな遺恨試合のネタになりそうな問題がゴロゴロしている。こういう「天の配剤」が続くところに、政治の不思議さがある。

○共和党と民主党の遺恨が始まったのは、おそらく1998年の中間選挙からだと思う。このときは上院で34議席、下院で435議席、それに36州の知事の座が争われた。結果は上院は共和55、民主45の現状維持、下院は民主党が5議席増。大差ないように見えるが、政権党が議席を増やすのは64年ぶりの快挙であり、実質的には民主党の大勝利だった。

○事前の予想では、共和党は上院で野党のフィリバスターをはねのける60議席を目標に、あわよくばクリントン弾劾を可能にする67議席(全議席の2/3)を窺う勢いだった。結果はかろうじて過半数を維持したものの、予想を覆す大敗北。共和党の誤算は、投票日1週間前に1億ドルの予算を投入し、激戦52地区を中心にクリントン非難キャンペーンを実施したことだった。クリントン大統領の不倫揉み消し疑惑をしつこく攻撃したわけだが、スキャンダル攻撃に辟易していた有権者にはこれが逆効果。実際、クリントン大統領の支持率はこの時期でも67%もあったのである。

○このときのショックが、共和党を団結させた。2000年選挙では早い時期から候補者をブッシュに一本化し、選挙資金を集めまくった。それがゴアとの対決に発展し、フロリダ再集計のドタバタに突入したわけだ。今度は民主党が恨む番である。こんな風に遺恨試合の連鎖が続くと、対立は容易なことでは解消しないだろう。

○有権者の意識が中道寄りになっている今日、米国の二大政党が党派色を強めているのは、馬鹿馬鹿しいことだと思う。では、なぜそんなことを続けているかといえば、意外とこの辺の「負けて悔しい花いちもんめ」意識のせいじゃないだろうか。困ったもんだ。


<11月6日>(水)

○ポール・クルーグマンが、The New York Times11月5日号で面白いことを書いています。彼も純正リベラル派ですから、中間選挙には黙っていられなくなったようで、ブッシュ政権に対する危機意識が横溢しています。以下はその最後の部分。

"Stop Making Sense"(不真面目に行こう)    http://www.pkarchive.org/column/110502.html.

過去2年間からわれわれが何かを学んだとしたら、それは上院の多数は重要だということであろう。ブッシュがまだ人気者ではなかった最初の数ヶ月、上院が50−50だった時期はチェイニー副大統領(上院議長)の1票によって過激な政策がバンバン決まった。しかし9・11後、ブッシュは何でもできるほどの人気がありながら、民主党が上院で1議席上回っていたために、法人減税、高額所得者減税、北極開発、最高裁へのタカ派判事の指名といった、彼のお気に入り政策は滞った。

今度の選挙では、ブッシュが最初の頃に目指したような急進的な政策が復活するかどうかが決まる。向こう何十年かのこの国の方向も決まる。そうなれば共和党の資金もますます厚みを増すだろう。

米国人がそれを望むならそれも結構。だが、この選挙は有権者が何を望むかではなく、どっちの人が敢えて投票するかにかかっている。(あるいは、どっちの側が投票を思い止まらせることができるか。すでにこんな話が起きている。メリーランド州のどっかの選挙区では、投票の前には駐車料と家賃の滞納分を納めなきゃいけないというリーフレットが配られたそうな)。ギャロップ予想では、投票率は98年と同じ35%とか。あきれるほどに低い。だから不合理になろう。自己の利益を忘れて投票に出かけよう。そして他の人にも呼びかけよう。米国の未来はあなたの不合理さにかかっているのだから。

○中間選挙の結果は、本校執筆時点ですでに共和党51議席、民主党46議席、残り2議席となっている。つまり上院の優位は共和党のものとなった。クルーグマンの懸念が的中したわけである。

http://www.cnn.com/ELECTION/2002/pages/senate/index.html

○ちなみに残り2議席とは、ルイジアナ州とサウスダコダ州である。前者は現職の民主党ランドリュー議員が46%の得票率で2位以下を圧倒しているのだが、この州は過半数を取らないときは決選投票が必要というローカル・ルールがある。よって12月7日の決選投票まで、民主党の1議席防衛はおあずけとなる。

○もうひとつのサウスダコダ州がエライことになっている。ここは2004年にブッシュに挑戦しそうなダッシュル上院院内総務の選挙区なので、いわば代理戦争が繰り広げられた。現職のジョンソン議員(民主)が16万7481票、ソーン議員(共和)が16万6954票。こうなるとフロリダの悪夢再来で、数え直しは必至だろうし、そうでなくても選挙前から不在者投票用紙が多数偽造されたという話があり、簡単には決着しない公算が高い。

○この2議席を民主党が取ったとしても、共和党51、民主党48、無所属1という分布となり、共和党優位は変わらない。無所属はあのジェフォーズ上院議員だ。どういう人かについては、この不規則発言の2001年5月30〜31日分、あるいは本誌の2001年6月1日号「ジェフォーズ上院議員の議」に詳しく書いてあります。結論だけをいうと、この人は民主党にカウントしていい。つまり51対49である。

○さらに微妙なのは、仮に民主党がもしもう1議席取って、共和党50、民主党49、無所属1となっていたらどうなったか。この場合、任期途中のロードアイランド州選出のチェイフィー上院議員が、共和党から民主党へくら替えする可能性が高くなる。つまり「第2のジェフォーズ議員」の誕生である。というのも、チェイフィー議員はジェフォーズ議員と同じ「ロックフェラー・リパブリカン」の生き残りで、ブッシュ政権に対しては不満爆発状態らしいのだ。だから身を挺して上院の共和党支配を防ぐべく、脱党するというシナリオが語られている。

○「なんて面倒な!」と思ったアナタ。もっとややこしい話がある。民主党の現職議員が飛行機事故で死んでしまったミネソタ州では、モンデール元副大統領が急きょ代打ちを買って出たが、50%対48%の僅差で共和党のコールマン候補に破れた。ということは、来年1月からの新議会ではコールマン上院議員が誕生するが、年内の議会では依然として空席状態が続く。すなわち、民主党49、共和党49、無所属1、空席1というわけ。空席の議員を指名するのは知事の権限。さて皆さん、ミネソタ州の知事は誰でしょう?

○じゃ〜ん!元プロレスラーのベンチュラさんなんですね〜。もちろん彼は無所属。ではベンチュラ知事が、どっちの党の人間を指名するかというと、いろんなことを言ってて、よく分からないらしいのだ。つまり、年内の上院の支配をどっちが取るかもワカンナイ。

○こんな七面倒な話はもうたくさんだ!と思ったアナタは正常です。これを面白がっているようでは、重度の政治オタクと診断されますぞ。


<11月7日>(木)

○昨日の発言に1個訂正、ないしは追加です。

○というのは、ミズーリ州の現職上院議員、ジーン・カーナハン(民主党)の件があったんですね。ご記憶の方も多いかと思いますが、2000年選挙の3週間前にカーナハン議員が死亡。新たな候補が間に合わず、「死者が当選する」というケースが発生してしまった。このときミズーリ州知事(民主党)は、未亡人のジーンさんを当選したことにした。

○同州の法律によると、この場合の候補者の任期は、「知事指名後最初に行われる国政選挙当日まで」とある。そこで今回の選挙とあいなったわけだが、共和党の挑戦者、タレント下院議員が議席を奪うことに成功した。タレント氏の上院議員としての任期は、来年1月3日の第107回議会の始まりを待たずに中間選挙の日から始まる。ということで、民主党49、共和党49、無所属1、空席1という戦前の議席は、共和党50、民主党48、無所属1、空席1となる。結論:ベンチュラ知事がどんな気まぐれを起こそうとも、年内の上院の支配は共和党となります。

○はー疲れた。

○気を取り直して、選挙関連の政治マンガをみていたら、モンデールさんに関するマンガがやたらと多いことに気がついた。

http://cagle.slate.msn.com/news/Mondale/main.asp

○モンデール氏(74歳)は、ミネソタ州の現職議員が飛行機事故で不幸な死を遂げたあと、急きょ引っ張り出された。これが有権者の目からみると、「そんなじいさんを引っ張り出して」と写った。なにしろモンデール氏は、カーター政権(1977−1980)の副大統領で、1984年の大統領候補者である。「いまどきイランコントラ事件でもあるまいし」てな受け止め方をする人がいたようだ。

○民主党は、ニュージャージー州でも現職議員にスキャンダルがあったのを引っ込め、引退していたローテンバーグ元上院議員を引っ張り出している。こちらは78歳で、めでたく当選したからよかったが、「多数派を維持するためなら、なんでもするのか」という声が上がっても不思議はない。共和党は長老のサーモンド、ヘルムズ議員が引退しているので、民主党の高齢候補者がますます目立ってしまった。これも敗因の一つと見ていいでしょう。

○日本でも同じだが、議会選挙というのは、地元の政策課題や候補者のキャラクターで決まることが多い。マスコミは「共和党勝利、ブッシュ大統領はイラク問題で国民の信任を得た」てな俯瞰図で選挙を描きますが、ひとつひとつの議席が決まるのには、それぞれに違った理由がある。「すべての選挙はローカル」という原則をあらためて痛感します。


<11月8日>(金)

○プルルルップップップー。かんべえもその昔、大いにはまった「ドラゴンクエスト」シリーズ。勇者は今ふたたび立ち上がる。日本経済という巨大なダンジョンに立ち向かうために。

■日本経済クエスト

1 ここは ぜつぼうの まちだよ
  いぜんは かぶとちょうとも よばれて いたけどね

2 ふっかつの じゅもんを にゅうりょく してください

  _____________
 |
 | ぜろ きんり せいさく
 | いんふれ たあげつと
 | いたみを ともなう せいさく
 | ***
 |_____________

       @ ▼
  ふっかつの じゅもんが ちがいます

3 ここは道具やです
  なんの ごよう でしょうか?

  やくそうですね?

  グラム単価1万円にやくそう税40%かかり
  さらに消費税が20%かかりまして
  16800円になりますがよろしいですか

  国民はこぶしを強くに握り締めた

4 ここは道具やです

   かう
  →うる

  アイテム____
  *こくさい
  →ふりょうさいけん

  それはうちではひきとれないなあ

  ほかにあるかい?

   かう
  →うる

  アイテム____
  →こくさい
  *ふりょうさいけん

  それはうちではひきとれないなあ
  ほかにあるかい?

5 こいずみはパルプンテをとなえた

  にほんけいざいがこんらんした!!!
  こくみんがこんらんした!!!
  こいずみがこんらんした!!!
  しおじいがこんらんした!!!

  こくみんのこうげき!!!

  こいずみは180ポイントのダメージ!!

  こいずみはまだこんらんしている!!
  しおじいはなにがおこっているのかすべてわすれている

6 ふむ へいぞうは がくしゃをやめて
  だいじんにてんしょくしたいともうすか
  だがレベルがひくすぎるようじゃ
  でなおしてまいれ みじゅくもの

7 ここは株やです
  なんのごようでしょうか

  *うる
  →かう

  野村日本株戦略ファンドですね?
  1000万円と手数料30万円になりますが
  よろしいですか?

  →はい
  *いいえ

  しばらくたったある日・・・・・

  ここは株やです
  なんのごようでしょうか

  →うる
  *かう

  野村日本株戦略ファンドですね?
  500万円になりますが
  よろしいですか?

  →はい
  *いいえ

  取引は無事終了した

8 こいずみはベギラマをとなえた

  ベギラマははねかえった

  こいずみはしんでしまった!

  かめいがばしゃからとびだした!
  のなかがばしゃからとびだした!
  はしもとがばしゃからとびだした!

9 北朝鮮があらわれた!

  北朝鮮はふしぎなおどりをした!
  日本はカネをすいとられた!

10 こいずみは構造改革をとなえた!

  速水がばしゃからとびだした!
  竹中はこんらんした!!!

  竹中は不良債権問題を持ち出した!
  危険な状態だ!
  竹中は木村を呼んだ!
  株価が1500下がった!!

  小泉は感動している!
  小沢はようすをみている
  鳩山は文句を言っている

  国民は笑っている
  しおじいは寝ぼけている

  国民は小泉を支持した
  小泉の支持率が30ポイント上昇した!
  しかし小泉はおいつめられている

11 鳩山はいろんを唱えた

  しかしなにもおこらなかった

  鳩山はぜんめつした

12 へんじがない
  ただのはとやまのようだ

13 竹中は きんゆうだいじんを てにいれた

  竹中→そうび→きんゆうだいじん

  たけなかは のろわれてしまった

14 こくみんは にちぎんそうさいに@ときのすなをつかった

  しかしそうさいはかわらなかった

15 竹中は不良債権処理の大鉈をふるった

  かいしんのいちげき!!!
  日経平均に1000のダメージ

16 くさったきぎょうが あらわれた

  くさったきぎょうは なかまをよんだ!
  くさったぎんこうが あらわれた!!!

17 にほんはまごまごしている
  みんかんじんは こうきょうじぎょうを つかった

  しかし いまは つかえなかった

  みんかんじんはこうきょうじぎょうにインパスをとなえた
  これは まるなげせんもんの アイテムのようだ

  ぎいん・かんりょうにてんしょくしないとつかえない

18 日本はレベルがあがった

  物価が3上昇した
  倒産件数が5上昇した
  失業率が1上昇した
  デフレスパイラルを覚えた

  こいずみはこうぞうかいかくをとなえた!
  ちゅうしょうきぎょうが100きえさった!!!

19 きむらが51しゃリストをてんにかざした

  企業Aに30のダメージ!
  企業Bに30のダメージ!
  企業Cに30のダメージ!
  企業Dに30のダメージ!
  ちゅうしょうきぎょうが200きえさった!!!

  かぶぬしは とまどっている!!!

  たけなかがわらった
  ちゅうしょうきぎょうが4きえさった!!!

  こいずみはこうぞうかいかくをとなえた
  ちゅうしょうきぎょうが100きえさった!!!

  こいずみがらちもんだいをてんにかざした
  こくみんはきりにつつまれた!!!

20 おつかれさまでした

  リセットボタンをおしながら にっぽんのでんげんをきってください


<11月9〜10日>(土〜日)

○国連決議1441は、思ったよりも長いんですね。これを読みこなすのは、ちょっと骨ですな。以下の文書の中に、決議の全文と別添文書、15カ国の安保理メンバーが賛成した理由が記載されています。

●ニュースリリース(11月8日) http://www.un.org/News/Press/docs/2002/sc7564.doc.htm

SECURITY COUNCIL HOLDS IRAQ IN ‘MATERIAL BREACH’ OF DISARMAMENT OBLIGATIONS,
OFFERS FINAL CHANCE TO COMPLY, UNANIMOUSLY ADOPTING RESOLUTION 1441 (2002)

安全保障理事会は全会一致で決議1441を採択することにより、武装解除義務に対する「重大な違反」を冒しているイラクに対して、最後の機会を与える。

○決議の最後から2行目の部分が、武力行使を意図しているのではないか、といわれている。「深刻な結果を招くであろう」というやつ。

13.Recalls, in that context, that the Council has repeatedly warned Iraq that it will face serious consequences as a result of its continued violations of its obligations;

○これは武力行使を意味するものではない、ということになっている。たとえばフランスは、All of France’s efforts in the past few weeks had been directed at giving peace a chance; that was, to disarm Iraq peacefully, with the stability of the region in mind. と自画自賛している。イラクのお隣にあるシリアも、 The resolution should not be interpreted in any way that any entity could use force.と念押ししている。

○とはいえ、これだけイラクのことを全会一致でののしっているわけだから、米国としては成功といえるでしょう。イラクとしては、もう少し他の国が米国に抵抗してくれると思ったでしょう。カメルーン代表がいいことを言っていて、" The text was a truly compromise text, without a victory for any side.  It was a victory, instead, for peace and security.  Now the ball was in Iraq’s corner.ということです。

○さて、これでフセイン大統領がベタ降り戦術に出てきたらどうするか。つまり、今までのように「大統領宮殿は別だ」などと条件闘争をするのではなく、「金も要らない、名誉も要らぬ」と完全武装解除に打って出た場合。イラクが本気で平和的な解決に訴えるようだと、米英側としてはちょっと困りそうに見える。しかし、その場合でも最後は戦争状態に突入するのではないかと思う。

○ひとつはこれだけ長い決議を打ち出したのだから、「この部分が駄目だ」といくらでも難癖をつけられるだろう、ということ。国連決議の解釈の仕方については、かんべえはさほど自信がありませんが、この長い文章の中には、たくさん「地雷」が埋められているのではないかという気がします。

○そしてもうひとつは、フセインはけっして降りないだろうということ。これまで鬼畜米英といって来た手前、ここで降りたら自分の体制もあやうくなってしまう。この点でどっかの国の銀行経営者と似たようなところがあって、金融担当大臣に喧嘩を売るのが賢明とは思えないのだけれど、過去の行きがかり上、衝突コースを進まざるを得ないのではないか。危機に直面したとき、人間はかならずしも賢明な判断ができるものではありません。


<11月11日>(月)

○国連決議、やっぱりみんなどう読めばいいか悩んでいるようですね。The New York Timesの評によると、アメリカはたくさん譲歩をした(たとえば"all necessary means"という言葉を入れなかった)かわりに、"a lot of little triggers"(小さな引き金をたくさん)を手に入れた、とのこと。とくに"material breach"(重大な違反)という言葉は重要である。ここでいう違反とは、イラクの武装解除を定めた1991年の停戦決議に対する違反を意味している。イラクがこれに違反すると、停戦も終わりになってしまうことを暗示している。ほーら、油断も隙もない。

○とはいえ、とにかく15−0で国連決議をまとめあげたのはパウエル国務長官のお手柄である。先週土曜の夕方には、お嬢さんの結婚式が始まる20分前までフランスの外相と電話会談をしていたそうだ。こういうのを外交努力という。とはいえ、ブッシュ政権のタカ派の面々は「ふん!余計なことしやがって」という感じであろう。そういう意味での緊張感はこれからも続く。

○ところで、アメリカにはもうひとつ手がありますね。「満州事変」を起こすという手が。国連の査察団が乗った汽車が爆破されるとか、突如としてスカッドミサイルがイスラエルに撃ち込まれるとか。それで米軍出動、というといかにも見え見えですが、意外とそんなことになってしまったりして。ふと思いついて一句。

偶発で 事故起こりけむ 慮溝橋


<11月12日>(火)

○中央大学の「中国経済・産業に関する研究会」。この会、今年の1月15日に第1回の会合をやって、そろそろ1年になるのだが、本日はかんべえ(メインランド・チャイナには一度も行ってない)による2度目の発表とあいなった。テーマは「中国をめぐるアジア・世界貿易構造の変動」、って与えられた題なんだけど、われながら大きく出ている。ポイントは3点。

@アジア貿易:2002年度上半期で、初めて日本の対中輸入が対米輸入を上回った。昨今のトレンドで行くと、通年でも楽勝で米国を抜く。輸出でも対中輸出が絶好調。東アジアの貿易構造は、確実に中国を中心に回りつつある。直接投資も上海中心に活況を呈している。朱江デルタから長江デルタへ、中国経済の中心も移動しつつある。思えば朱江デルタとは、あくまでもケ小平による市場経済の実験場だった。実験が成功したからには、次は本番だ。それが長江デルタ、ということではないか。

AFTA:朱鎔基首相が今月のASEAN+3で、昨年の「中−ASEAN構想」に続き、「日中韓FTA」を提唱した。間もなく党大会で引退が迫っており、レイムダックのはずの人が言うのだからスゴイ。自分の経済改革路線に相当な自信があると見る。中国にとってのFTAとは何か。WTO後の国内改革の梃子に使うのだといわれるが、それよりも東アジアにおける政治的主導権を確立するための道具と位置づけているのではないか。「日本は(農業問題があるから)何もできないだろう」と読んでいるはず。

B人民元:中国の国際収支統計を見ると、政府がコントロールできない形での資本流出が起きている気配がある。その点で、資本の自由化には慎重な上にも慎重に進めざるをえない。しかし、すでに中国の外貨準備は、2427億ドル(6月末)と年間の輸入量に匹敵する水準になっている。人民元の切り上げは意外と近いかもしれない。日本は1964年にIMF8条国に移行し、68年に西独を抜いて世界第2の経済大国となり、71年にニクソンショックを迎えた。中国が同じパターンをたどるとすれば、1996年にIMF8条国に移行し、2000年にアジア危機を克服した。すると2003年に人民元切り上げ、という連想が働く。

○FTA、人民元、ともに旬の話題と見えて関心は高かった。人民元の切り上げについては、おそらく日本中から賛同がありそうだ。それで息を吹き返す産業だってあるだろうし、中国発のデフレを止めることができるという理屈である。しかしこの点をかんべえは疑問視している。人民元の切り上げとなれば、日本企業は中国製品を高い値段で買わなければならない。ユニクロが値上げになってもどうってことないが、中国製部品のコストが上がると、日本製品の国際競争力が失われることになる。「Made in Chinaの実態はMade in China by Japanだ」といわれるくらいなのだから。

○そもそも中国発のデフレが悪い、という理屈がかんべえには理解できない。日本経済を苦しめているのはストックのデフレではないか。フローのデフレは消費者の実質購買力を高めるし、それも年間1〜2%程度に過ぎない。不良債権を日々生み出しているのは、年間10%以上も下がる地価や株価の方である。デフレ憎けりゃ中国も、というのは単なる八つ当たりだと思う。間違ってるかなあ。

○それでも人民元の切り上げは将来的には不可避であろうし、その結果として中国が輸入大国になることは、日本にとっても悪い話ではないと思う。またアセアンにとっては文字どおりの朗報となるだろう。なにしろ彼らは中国と同質性の競争をしているわけだから。中国にとっては、為替レートを上げても国際競争力を維持できるかがチャレンジとなる。そのためには70年代後半の日本経済のように、真のイノベーションが必要になる。逆に言えば、それができないようなら中国経済が途上国から脱皮することは難しい。国民生活の向上を図るためには、通貨は強くなければならないからだ。


<11月13日>(水)

○11月8日のこの欄でご紹介した「日本経済クエスト」、一部では受けてるみたいなんですが、ネタ元を紹介しておきます。ここです。

http://money.2ch.net/test/read.cgi/eco/1028379039/

○なかには、こんなネタもあったりする。

財務省はみをまもっている
金融庁はみをまもっている
外務省はみをまもっている
環境省はみをまもっている
経済産業省はみをまもっている
厚生労働省はみをまもっている
国土交通省はみをまもっている
総務省はみをまもっている
農林水産省はみをまもっている
法務省はみをまもっている
文部科学省はみをまもっている
警察庁はみをまもっている
国税庁はみをまもっている
消防庁はみをまもっている
食糧庁はみをまもっている
中小企業庁はみをまもっている
特許庁はみをまもっている
防衛庁はみをまもっている
郵政事業庁はみをまもっている

○笑えませんねえ。これはもう、日経新聞編集委員の滝田洋一さんの近著『日本経済 不作為の罪』という題名そのまんまの世界です。今日だって株価がまた新安値をつけちゃいましたが、官邸も政治家も日銀も金融機関も企業も、み〜んな「みをまもっている」だけで自分からは動きません。これじゃいかんということで、今宵は「どうやったら、産業再生機構を実のあるものにすることができるか」というディスカッションをやりました。

○最初は、「どうやって数値目標を入れるか」というところから始めたものの、わずか30分ほどで結論が出ちゃいました。「駄目ですね、やっぱり」。つまり産業再生機構は不良債権を買い取り、「閻魔様」となって企業の再生可能性を見極め、駄目ならRCCに売却してしまう。そうやって、日本経済の過剰債務と過剰供給を解決することを目指すわけだ。ところが、再生の可能性がある債権ならば、そもそも銀行が産業再生機構に持ち込む理由はない。じっと抱えて「みをまもっている」方が賢明だ。公的資金と同じで、「申請主義」の建て前を取る限り、産業再生機構はフル回転できないのである。

○不良債権処理の理想は、「強制−一括−簿価」で買い上げしてしまうことじゃないだろうか。つまり国がIMFの役割を果たすわけである。しかしこれは明らかに「有事モード」の対応となる。もっとも、このまま行けば遠からずパニックが来るだろうし、海の向こうでは戦争も始まるというし、北の方角からミサイルが飛んでくるかもしれず、そうなればあっさりと皆が動き出すのかもしれない。「いざとなれば動き出すから、いまは動かない」という例の理屈が顔を覗かせる。そうやって我が身を守る。これって「不作為の罪」の構図そのまんまなんですが。

○ところで滝田さんに伝言です。この本、たいへん面白く拝読しましたが、「なさざるのつみ」という振り仮名をふったらどうでしょう。「ふさくいのつみ」よりもインパクトがあるし、ひょっとすると流行語大賞も狙えるかもしれませんよ。


<11月14日>(木)

○アメリカの経済調査会社、ISIのエコノミスト、エド・ハイマン氏の講演会へ。ひとことで言うと、米国経済には強気。バブル崩壊後の日本とよく似ているように見えるが、アメリカの場合は政治のレスポンスも民間のレスポンスも早い。2003年には成長軌道に乗る、との見通し。まったく同感である。

○米国経済を90年代の日本に重ねる、というのは最近の流行である。この議論は、「溜池通信」が2001年3月23日号「バブル崩壊後の米国経済」で取り上げ、以後、何度も「レの字型回復シナリオ」として紹介しているので、自分としては「先覚者」だと思っているのだが、近頃では他人の不幸を願っているような人も多いようでちょっと気になっている。

○米国経済は、ハイテク不況という事実に気づくのが早かったのと、「9・11」を機にケインズ政策総出動という形になったのが幸いしたと思う。少なくとも、立ち直るためにかかる時間は日本より短いだろう。また、連銀関係者が日本の失敗をよく研究していたのも大いに役立っているはずだ。

○不思議なもので、人間は不得意分野では大きな失敗をしないものである。結果だけ見れば、ブッシュの経済政策はそんなに悪くない。今となってはあの無責任な大減税は、現在のデフレ圧力に対して有効な働きをしていると思う。ブッシュが大きな失敗をするとしたら、むしろ安全保障問題においてではないか。人は得意分野ではついついやり過ぎる。

○ときどき自戒するのだが、自分が大きな失敗をやらかすとしたら、きっとモノを書くことでだろうと思う。逆に言うと、女性問題で失敗する自分の姿、というのは想像しがたい。もっともそんな甲斐性があれば、もって瞑すべきという気もせんではないが。


<11月15日>(金)

○今週は日本貿易会関連の仕事が立て込み、本誌はお休みしております。ふと思いついて、1年前の溜池通信を見たら、とっても身につまされるような話が書いてありました。

2001年11月9日号「土壇場の日本経済」

察するに小泉政権の経済政策は、「財務省主計局」的な発想に沿って組み立てられている。そこで@財政再建が最優先されてしまう。「国債発行額30兆円以下」「道路特定財源の一般財源化」「地方財政の見直し」「医療制度改革」など、主要な改革テーマはことごとく財政に結びついている。しかし現下の最優先課題は財政ではなく、金融であるはずだ。

 内外の注目が集まっているのは、A不良債権処理である。ところがこの問題で小泉内閣は迷走を続けている。つまるところ、現状通り金融機関の自主性に任せて時間をかけてやるか(持久戦)、ある時期に強制的な方法で片をつけるか(短期決戦)、大きく分ければ2通りしかない。そして後者は政治的に不可能であろう、という前提で前者がとられている。その一方、前者では時間がかかりすぎるし海外の評判が悪いから、という理由でさまざまな代案が提案され、否定されては消える、という作業が繰り返されている。

 たとえば渡辺喜美衆議院議員は「産業再生委員会」を作り、貸し手と借り手の両方を同時にリストラする必要があると主張している。一時はかなりの賛同を得たものの、「政府が企業の生殺与奪の権を握るのは問題」ということで、実行不可能という見方が優勢になった。次に金融コンサルタントの木村剛氏が、「大手30社問題」という手法を提案。各銀行が大手の貸し出し先で経営不安説のある企業2〜30社に、それぞれ十分な引き当てを積み増せばそれで十分、という発想だ。とはいえ、これを行えば銀行が資本過少に陥るかもしれないというのに、どうやって実現させるのかという問題が残る。

 これらの提案が退けられた後で、実際に採られたのは「RCCの機能拡充」と「特別検査の実施」といった地味な政策であった。結局、小泉政権は死活的に重要な部分で蛮勇を振るうことはできない(政策によるポジティブ・サプライズはない)、というのが市場の見方である。その結果として、今週は銀行株がほとんど投げ売り状態になっている。

○上が1年前の状況。ここへ来て、ようやく柳沢シナリオ(持久戦)を引っ込めて、竹中シナリオ(短期決戦)に変えましょうかという話になった。しかし「さまざまな代案が提案され、否定されては消える」というプロセスが相変わらず続いている。かろうじて渡辺喜美氏の「産業再生委員会」案は、現在「産業再生機構」という形で検討されている。木村剛氏の提案も、少し現実味を帯びた。それにしても、この1年間は何だったのか、と唖然としてしまう。

○1年前の株価は、TOPIXがまだ1000を越えていた。銀行株が投げ売りといっても、今日の値段よりはずいぶん高かったはず。うーむ、本当にこの1年は何だったのだろう。


<11月16日>(土)

○新コーナーを設置しました。上海馬券王のページです。土日のお楽しみとして、不定期連載の予定です。よろしくね。


<11月17日>(日)

○今ごろになって気づいたんだけど、先日の統一補欠選挙の結果、自民党は衆議院における単独過半数を得た。ここをご覧いただくと、480議席中の241議席となっている。思えば1993年の宮沢内閣不信任に伴う解散・総選挙で過半数を失って以来、ほとんど10年がかりで悲願を達成したことになる。あんまり喜ぶ声が聞こえてこないのは、ここではしゃぐと顰蹙を買うと思っているからだろうか。実際、それは賢明な態度というものであろう。

○自民党議員にとっては、細川・羽田政権で下野していた10ヶ月はまことに辛い日々だったそうな。そこで、「自分たちは何がなんでも政権にしがみつかねばならない」という変な教訓を得たらしい。その後の自民党はなりふりかまわず、いろんな政党と連立を組んで過半数を維持する。日本社会党、新党さきがけ、公明党、自由党、保守党、などなど、複雑な経緯をたどって現在の自公保の連立与党がある。しかるにこの間、自民党と連立したパートナーはろくなことがなかった。社民党もさきがけも、養分を吸い取られるようにして衰退してしまった。自民党としては「してやったり」であろう。

○もっとも参議院は1989年以来、自民党の過半数割れが続いている。ここを見ると、247議席中115議席である。しかし昨年の参議院選挙で大勝したので、2004年の次回選挙で9議席の上積みがあれば過半数に届く。もしも昨年の勢いが自民党にあれば、このくらいの上積みは十分に可能。ということは、今の小泉人気を大事にしながら、2004年にダブル選挙を行って、衆参両方で単独過半数を回復する、というのが自民党にとってベストな戦略となる。青木さんあたりはそういう考えのようだ。

○ところが、このところ、「解散・総選挙があるんじゃないか」という声がちらほら。なぜなら、自民党内が反・小泉で固まっているから。このままでは来年9月の自民党総裁選で小泉さんは選出されない、とまでいわれている。それでも小泉さんは首相を降りない、と言い出すかもしれず、そうなると非常に面白い局面が誕生する。たしかそんな話を昔書いた覚えがある。お暇な方は、ここをご参照。

○小泉さんとしては、党内の反対を押え込むには解散カードが有効だ。なにせここを見ると、自民党の支持率は現時点で24.6%しかない。それに対して小泉さん支持は68.2%。単純に考えると、「自民党は嫌いだが、小泉さんは好き」という人が43.6%もいることになる。現在の小選挙区制のもとでは、24.6%の基礎票を頼りに選挙を戦うことはできない。「無党派層の小泉ファン」を味方につけない限り、大多数の自民党議員に明日はないという結論になる。

○今の自民党衆議院議員の皆さんは、森政権下の2000年の逆風選挙を勝ち残ってきた人たちなので、その辺の怖さがあんまり分かっていないような気がする。投票率はどうせ低いから、組織を引き締めて公明党の応援があれば何とかなる、と思っているのではないか。それは甘いと思うぞ。

○さて、解散があるとしたら、そのタイミングはいつだろうか。以下、3通りくらいの可能性があると思う。

@年末説:予算原案が成立した時点で解散、年明け総選挙。問題はイラク戦争と重なる可能性あり。

A来年春説:3月末に予算が成立した時点で解散。春の統一地方選挙と重ねる。投票率は上がりそう。事前の選挙協力が鍵を握る。問題は、またしても株価が危機的水準(といったって、今もそうだが)になっている可能性あり。

B来年夏説:6月に通常国会が閉幕するときに解散。政治日程としては楽だが、統一地方選挙の後で組織はヘトヘトになっているので、評判は悪いだろう。9月の自民党総裁選ににらみを効かせるには好適。

○小泉さんの立場としては、解散カードは使うぞ、使うぞと脅しつつ、結局は温存して2004年のダブルというのがいいと思う。でも自民党内は不満で一杯だそうだから、どこかで「国民の信を問う」ということになるかもしれない。その先は政界再編などいろんな可能性があるけれど、何があっても、「抵抗勢力」が破顔一笑するような将来像は描けませんな。


<11月18日>(月)

○ブッシュ政権を陰で支えるタカ派の殿堂、PNAC(Project for New American Century)のHPをチェックしていたら、こんな面白いコラムが出てました。PNACについては、雑誌『選択』なども取り上げていますので、最近はちょっとずつ有名になってきた模様。

○以下は、イラク問題での国連決議に対して怒り心頭、というお話です。例によって、タカ派特有の分かりやすいロジックが満載で、今のワシントンの雰囲気を知る上で有用な一文だと思います。彼らの怒りが、身内であるパウエルに向かっている、というところが興味深い。

The U.N. Trap? 「国際連合の罠」 http://www.newamericancentury.org/iraq-110802.pdf

(1)

中間選挙の勝利は、ブッシュ大統領のテロとの戦争、ひいてはイラク政策に対する国民的支持の輝かしい表われとなった。大統領はすべてのハードルを乗り越えた。あとは形だけ国連査察団を送れば済む、はずだった。だが・・・・?

大統領はこれまで何ヶ月も、フセインは危険な独裁者で取り除かねばならぬと宣言してきた。大統領が本気であることは誰の目にも明らかだった。彼は世界中の批判を敢えて浴びたし、野党の反論も受けた。そればかりか8月には、党内の、それも彼の父に仕えた者たちからも非難を受けた。

幸いなことに、議会は武力行使を決議し、中間選挙も勝った。これらの非難は、国務省高官たちの静かな応援もろとも、かき消されたはずだった。しかし不幸なことに、大統領の政策をめぐる戦いは終わっていない。イラク政策を失敗させようという試みは終わっていないのだ。国務省の何週間にもわたる交渉の結果、大統領の地位は損なわれた。それは決定的なものではないが、懸念すべきことである。

シラク仏大統領は、「当初の米国の方針が大きく変わった」ことを「喜んだ」という。ブッシュ大統領が9月の国連総会で演説したとき、目的は武装解除のみならず、サダムの体制を終わらせることだということを明確にした。今日では、大統領はもっぱら武装解除について語り、フセインの体制が武力を解かれ、完全に査察を受ければそれで看過できるかどうかを、明らかにしていない。

ふざけるのも大概にしてもらおう。この査察プロセスは罠である。米国の対イラク武力行使に反対する欧州人たちを、満足させるために作られたシロモノだ。さらにこのプロセスは、ブッシュ政権内で大っぴらに武力行使に反対している者たちによって交渉された。ブッシュの政策アドバイザーたちが、査察の泥沼に誘い込んでしまったのだ。

このプロセスの許し難い点は、アメリカの外交政策をブッシュ大統領の手から奪い去り、イラクの体制転換という目的に興味のない人たちの手に渡してしまうことである。このことで深甚なる影響力を持つのは、@ブリックス国連査察官、A安保理のフランスやロシア、Bサダム・フセイン本人である。

(2)

初めにブリックスだが、前任者のバトラーがきびし過ぎるからという理由で、フセインに対する譲歩として選ばれた男である。ブッシュ大統領の政策は、ブリックスの行動と決定次第となってしまう。彼は45日以内にイラクで査察を開始し、それから60日で安保理に対する報告書をまとめる。105日後に出てくる報告書は、戦争に対するお墨付きとはならないだろう。むしろ曖昧さと不透明さに満ちた報告書となり、今しばらくのお時間をいただきたく、というのが落ちだろう。だとしたら、あと105日待つ理由はどこにあるというのか。

ひとつの方策は、イラクの妨害が少しでもあったら軍事行動の指令を出すことだ。ブリックスの目の前でドアがぴしゃりとしまったら、ブッシュはすぐに行動を起こすことができる。しかるにここが、米国の交渉者たちがフランスやロシアに妥協したところなのだ。

米国の当初案では、イラクが査察を妨害したり嘘の申告をしたら、それは国連決議に対する「重大な違反」であり、暗黙に米国がいかなる行動をとることも許可するものだった。しかし「隠れた引き金」に対して仏ロは共闘した。この決定的な点で国務省は妥協したのである。決議によれば、新たな違反は「安保理に報告される」ことになる。この点の解釈をフランス人、さらに英国人までもが、「大統領は、ブリックスが安保理で問題があったと宣言したときだけ行動できる」としているのである。

ブッシュ大統領は侵攻を指令する前に、もう一度安保理に戻らねばならない。新たな討議、新たな投票が必要になってしまうのだ。この二段階方式こそ、フランスが要求し、米国が忌避してきたものである。

(3)

こうなったら望みうる最善の状況は、105日後まで待つことである。その時点で、われわれは8週間前に戻ることができる。ブッシュ政権が今こそその時だと言い、仏ロがいやそうじゃないと言い、報告書はあいまいで、査察にはさらに時間がかかる。そのときこそブッシュ大統領は、安保理加盟国の意思を無視して侵攻を選択できる。だからこそ、政府高官は大統領は国連決議に「縛られない」と口にしているのだ。しかし、それは米国外交にとっての勝利ではない。大統領はいつでも安保理を無視することができた。それでもブッシュは、フランスやロシアや国務省を味方につけることが必要だと感じたのである。だったらこの次は、国連の支持なしでできるのか。ひとつだけ確かなことは、フランスとロシアは機会さえあれば再び反対するだろうということだ。

最後に、そして最大の問題は標的たるサダム・フセインその人がいる。ブッシュの国連査察案の背景には、きっとサダムは乗らない、という仮説がある。仮に国連決議を受諾したとしても、すぐに不本意だと騒ぎ出すだろう。いつか、どこかで、何らかの手段で、サダムはブッシュが望んでいる通りの条件を差し出してしまうだろう。

「サダムは阿呆だ」説には歴史的、論理的な裏付けがある。1991年1月のときだって、アジズ外相がベーカー国務長官(現職と同様に、当時は対イラク戦に反対していた)に譲歩していれば、戦争は避けられたはずなのだ。それから10年もたって、彼が何も学んでおらず、同じ失敗を繰り返すだろうという信じるべき理由がある。このような仮定に我らが未来を賭けねばならぬとは、いささか忌々しい気がしないでもないが。

サダムに選択の余地はほとんどない。われわれは、彼が大量破壊兵器を作っており、隠していることを知っている。彼の出方は3通りある。

@認める→全面的に武装解除するか、米国の侵攻を受ける
A否定する→査察を妨害する→米国の侵攻を受ける
B否定する→嘘がばれる→米国の侵攻を受ける

ちなみに武装解除は自殺行為である。サダムは米国に侵攻の条件を差し出し、フランスとロシアは止められないだろう。

このシナリオには説得力があるものの、別の可能性もある。サダムは半分ホント、半分ウソをつく。そうやって、白状した分だけを武装解除し、ウソをついたところは隠す。105日後、決定的なものは見つからない。そこでどうするのか?

ひとつの答えは、イラクの行動を「まったく堪忍しない」ことだ。ブッシュがちょっとでも気に入らないことがあったら、すぐに行動する。これこそが現政権の方策であるとわれわれは信じる。

(4)

実際、査察プロセスはパウエル国務長官いわく「何ヶ月も」かかるかもしれない。5月か7月か8月か、そのときに軍事行動に踏み切れるかどうか。灼熱の砂漠で戦えるのか、2004年の選挙に重なったらどうするのか。

ごく最近まで、大統領は危険な独裁者を取り除くためには戦争をためらわないと言っていた。それが2ヶ月後には、怪しげな化学工場から2人の査察官が追い返されたからといって、戦争の議論をしているかもしれない。これでは進歩がないというものだ。

皮肉なことに、いくら査察が行われたところで、サダムが米国と世界に対して与える危険は取り除くことができない。ブッシュ大統領が、イラクの体制転換を求めているのは正しい。問題なのはサダムの兵器じゃなくて、サダム自身なのだ。しかるにブッシュ政権は、真実をごまかす政策を取りつつある。

しかし大統領が最初の任期を終えるときに、フセインがまだ権力の座にあるということは許さないだろう。米国にとっても、世界にとっても、そしてブッシュ自身にとってもそれは悲劇となる。ブッシュはほんのわずかでも「手を縛られた」などとは感じていないだろう。それどころか、ブリックスや安保理が何と言おうが、必要があれば行動する。それこそがわれわれの希望である。

○抄訳のつもりで始めたら、1時間半もかかっちまったぜ。それにしても、William Kristol & Robert Kaganの文章は面白い。ちょっと中毒しますな、この愛すべき単純さは。国連決議をめぐるタカ派とハト派の相克が、くっきりと浮かび上がったような気がします。


<11月19日>(火)

○日本貿易会の貿易動向委員会。いよいよ大詰めなので、あーでもない、こーでもないと議論百出。3時間かけて、数字を固める。発表は12月の予定なので、ここで結果を書いちゃうわけにはいかないのだけれど、2003年度の経常黒字は相当に大きいとだけ言っておきましょう。ということは、極端な円安にはなりにくいということ。ほんの2年くらい前には、日本の黒字が失われるという議論が盛んだったけれど、やっぱりそれは間違いでしたね。

○夕刻、武見敬三参議院議員のパーティーへ。ニューオータニの鶴の間を埋め尽くす盛況ぶり。橋本派幹部、医療界の重鎮などがひきもきらず。ただし話を聞いていて、なんというか「痛い」気がした。やはり「聖域なき構造改革」に立ち向かうことは難しいのか。それにしても、なんでワシのところに招待状が来たんだろう?

○夜は久々、四粋人会合。われらが岡本呻也さんは、新著「新日本人革命」(講談社、1700円)が明後日発売の予定。なぜかボジョレ・ヌーボーの解禁日と重なりました。今宵、1部だけあった見本誌は、当然のように伊藤洋一さんが持って帰りました。ということは、明日の伊藤さんのサイトには、とってもユニークな表紙がアップされることでしょう。田中裕士さんは、どんなことを書くのかな。その辺、読み比べてみるのも一興かもしれません。ま、買ってくれとまでは言いませんけどね。

○4人でワインを飲みながら、ネットでは書けないような危険な話の応酬。なにせ4人ともHPという発表の媒体を持っているために、誰かが何かを書くと即座に仕返しを受ける恐れがある。恐怖の均衡による抑止力の構図。一方で、自爆テロみたいな発言が飛び出すと、果てしない報復戦争が生じたりして、読者にとってはそれが面白いかも。いやいや、やっぱり書けませんって。


<11月20日>(水)

○11月5日、シンガポール港から4万2500トンの重油を積んだタンカーが出港した。これが北朝鮮南西部の南浦港に到着したのが18日のこと。米朝枠組み合意に基づいて北朝鮮に送られる重油は、これをもって最後となる。12月分は凍結されている。再開しようにも、米議会がそんな予算をつけるはずがない。北朝鮮が核開発を行うことで枠組み合意を破ったのだから、これは自業自得というものだ。

○そもそもKEDOはほとんど国際条約に近い性格をもっている。それが「枠組み合意」という形になったのは、米議会が批准してくれそうにないからである。米国政府が外国に何かを約束しても、議会が認めてくれないから条約を断念せざるを得ない、というのはよくあることで、GATT(一般協定=General Agreement)の例が有名だ。どうでもいいことだが、クリントン政権は「枠組み(Framework)」という言葉を愛用した。日米包括協議(U.S.-Japan Framework Talks)なんて、今から思うと懐かしいなあ。

○日韓がお金を出して重油の供与を継続する、という選択肢もないではなかった。しかるに先方は、来月に選挙を抱えており、現政権は限りなくレイムダック。日本だって、北朝鮮向け重油を補正予算に入れましょう、と言い出したら、国会は確実に紛糾する。これはまあ、止めるのが正解だと思う。北朝鮮の核開発は、KEDOだけではなく、いろんな約束を破っている。国際条約としては「NPT」と「IAEA」、南北間では「朝鮮半島非核化共同宣言」、そして日本との間では「平壌宣言」。これを許すようでは、誤ったメッセージを送ることになってしまう。

○かんべえが台湾で会ったヘリテージ財団の研究員、John Tkacikなどは、「11月分の船を呼び戻せ」とAsian Wall Street Journalに書いていたくらいである。本気のメッセージを伝える、というのなら、それくらいした方が良かったかもしれない。

○ブッシュ政権のことだから、対北朝鮮政策は強硬策(Hawk Engagement)でガチガチに固まっているという見方がもっぱらで、ボルトン国務次官などの勇ましい意見がよく聞こえてくる。Foreign Affairsに載っていたVictor Chaの論文も同様。しかしKEDOの取り決めを廃棄するかどうかは、今しばらく論議が続くと思う。イラク問題もあるし、何より対朝鮮半島政策には長い歴史があるのだから。

○米国の北朝鮮政策については、CFRの朝鮮半島問題タスクフォースが質量ともに充実した人材を擁しており、いわばこの問題の本家本元になっている。このグループは当初、金大中の太陽政策を支持していた。それが2001年春頃に「転向」した。2000年6月の南北首脳会談まではよかったが、その後の北朝鮮はまるで誠意がなかった。「半島縦断鉄道の復旧」「離散家族問題」「経済協力」「軍事問題」など、すべてが「食い逃げ」。ちょうどその頃にブッシュ政権が誕生すると、グループ内でも北朝鮮への強硬策が優勢になった。この辺の事情は、本誌2001年5月11日号「北朝鮮のパズル」に詳しい。

○CFRのタスクフォースが2001年9月に公開した報告書が、翻訳されて紹介されている。これを読むと、「太陽政策はもうあきまへんな」と言っているように聞こえる。その一方で、北朝鮮を完全に敵視するほど腰が据わっているわけでもない。米国の対北朝鮮政策が固まるには、やや時間がかかるのではないかと思う。

http://www.foreignaffairsj.co.jp/CFR/0201korea.html

○CFRグループの考え方をひとことでまとめると、「日米韓同盟路線」である。ここだけは変えられない部分で、北朝鮮問題に関してはこの3カ国は運命共同体である。しかるにもっともカナメの韓国が、北から「統一は他の国の手を借りずに同胞だけで」といわれると、ついフラフラとなってしまうという困った癖がある。金大中の失敗はそこにつきると思う。


<11月21日>(木)

○ふ〜、今週号をほぼ書き終えました。疲れたんで今日は短めに。昨日の補足です。

○朝鮮半島問題に日本はどうかかわっていくか。ひとつだけ確かなことは、千年後の日本人も朝鮮半島の近くで生活している、ということである。その頃には南北は統一されていて、北朝鮮という国のことは不幸な過去ということになっているのではないかと思う。問題は、それがどんな終わり方をしているかで、自然消滅ないしは自壊というのがいちばんよろしい。ただし、強力な独裁政権が崩壊するときに、暴力が発生しないということは歴史上にはめったにないことなので、やっぱり何かあるということを覚悟しておくのが普通でしょう。

○日米韓同盟は東アジアでは最強の組み合わせです。3カ国がしっかり連携し、ピョンヤンに向かって強い態度を取れば、向こうは折れてこざるを得ない。ただし、何といっても韓国が前面に立ち、それを日米で応援するというのが自然な形になる。これはCFRグループもつとに指摘していることだ。なにしろ南北統一は第一義的に、彼らの問題なのだから。日朝交渉についても、韓国の頭越しになることは気をつけなければならない。

○「あんな非人道的な政権は、早く倒した方がいい」という考えがあることは理解できる。北朝鮮国民のためにもその方がいい、という見方もあると思う。その反面、日本が金正日体制の崩壊に手を貸してしまい、またまた恨まれるネタを作ってしまうのも困る。なにしろ、これは結構ありそうな話ではないか。「秀吉の朝鮮出兵」に「日帝支配36年」があって、これに3つめの恨みができた日には、向こう千年続いても不思議はない。彼ら、アメリカへの恨みは忘れても、日本に対してはきっと厳しいと思う。

○もともと日本は北朝鮮と交渉する動機はあまりない。今の状態で日朝交渉が膠着すると、拉致被害者が家族と会えない状況が固定化されてしまう。それは非常に気の毒ではある。が、それ以外の局面では、国益にかかわる差し迫った案件があるわけではない。向こうから新しい提案が来るまで、気長に待つという姿勢でいいのではないか。要するにことなかれ主義ということなんですが、KEDOの問題なども「いやあ、困りましたなあ」などと構えている方がよさそうな気がします。

<11月22日>(金)

○いやあ、寒いっす。それでも例年通り、コートを着るのは12月まで待とう、などと変な意地を張っていたら、今朝から喉が痛い。馬鹿ですねえ。

○考えてみたら、今年は夏が早く来て、冬も早く来た。これは消費を喚起する上では絶好のパターンなのである。景気のことを考えると冷夏と暖冬がいちばん困るわけだが、夏は暑く、冬は寒く、それもなるべく早くそうなってくれるのがありがたい。7−9月期のGDPが思ったより良かったのは、この効果を見逃していたからであろう。いってみれば「干天の慈雨」みたないものだが、これはこれで天に感謝すべきだと思う。「悪いわるい」とばかりこぼすのが能ではないはず。

○株式市場がちょっと上向いたところで、今宵はカブト町境界人さんと久しぶりに飲む。思えばバブル時代からのお付き合い。株の世界で生きている人にとっては苦難の年月だが、この人は昔から不思議な柔軟性の持ち主である。本当にお変わりありませんね。今宵は和服できめてました。あの格好でルック@マーケットなんぞに出ると、ピッタリじゃないかと思うんだけど。カリスマ投資指南者、ってことで、どうでしょうね、内山さん。


<11月23〜24日>(土〜日)

○かんべえは小心者なので、締め切りを守るタイプである。納期と品質を秤にかけたら、間違いなく納期を優先する。毎週の「溜池通信」なんぞその最たるもので、金曜日になってもできていなかったら、自分の要求水準を下げて間に合わせる。だが、外から受けた仕事となるとあんまりそんなことを言ってもいられない。この場合、要求水準は他人が決めるから。今週末は宿題を2個「お持ち帰り」しているんだけど、風邪もひいてるのであんまりやる気がしない。よわったのう。

○昔、会社のPR誌の編集長をやっていた時代に、いろんな人に原稿依頼をした。全部の原稿が締め切りに間に合う、てなことはめったにない。そこは編集の側でも適当にサバを読んでいるんだけど、締め切りが過ぎてからの催促が本当の勝負どころとなる。まあ、たしかにいろんな方がいらっしゃる。「忘れてた」とか、「授業が」とか、「体調が」とか、言い訳の種類も豊富である。それでも、本当に原稿を落とした方というのはそんなに多くはなかったですな。あえて一人だけあげれば、最近、北朝鮮問題でよくテレビに登場されている某教授は相当なタマです。面白い人なんだけどなあ。

○そうそう、1回だけ全部の原稿が締め切り前に揃ったことがあった。そのときのテーマが「世界の鉄道特集」。鉄道関係者というのは、ファンも含めて皆さん、たいへんに時間を守る方ばかりでした。思うに日本経済を支えているのはこういう人たちでありますな。モノを書いたりしゃべったりして生計を立てている人たちというのは、得てしてひと癖もふた癖もあって大変です。

○などと戯れ言を書いている暇があれば、素直に仕事に取り掛かればいいのである。納期優先主義のかんべえとしてはそこがツライ。取りあえず会社がらみの方を優先することにして、あとは月曜日が勝負ということで。小学館のSさん、いちおう忘れてませんからね〜。


<11月25日>(月)

○編集者時代のかんべえが発見(?)した書き手に長坂寿久さんがいる。現在は拓殖大学教授で、もとはジェトロの職員だった。本業はもちろん経済を論じることで、最近では『オランダモデル』という著書がある。(くわしくはここをご参照)。ところが、この人の映画論がサラリーマンばなれした水準なのである。その長坂さんからご著書を頂戴した。『映画で読む21世紀』(明石書店)。昨晩から今日にかけて一気に読みました。

○長坂さんは普通の映画評論家ではない。映画を切り口にして、政治や経済や社会や異文化を語るのが主眼である。たとえば本書の冒頭、「世紀末映画の楽しみ」という項目では、明らかに『タイタニック』が気に入っていない様子なのに、わざわざ酷評したりはしない。「なぜ全世界がこの映画に熱狂したんだろう?」というところに着目し、そこから90年代アメリカの繁栄や、「女性の自立」論の歴史を論じる。豪州、米国、オランダと3個所の海外経験の持ち主だけに、本格的な論考になっている。こういっちゃ申し訳ないが、実社会に疎い普通の映画評論家には、こういう映画論は不可能だと思う。

○本書は全部で328pだが、引用している映画の本数はなんと395本。普通のサラリーマンなら、これ全部見るだけでも消耗してしまうと思う。というより、物理的に時間を捻出できないだろう。映画ファンとかオタクという域を越えた、一種の求道者の境地。これがちゃんとした本業のかたわらの仕事である、というところがまたスゴイ。

○かんべえも、せめてこの3分の1くらいは見ておきたいものだと思うが、考えてみると今年もちっとも映画を見ていない。人生も40年を過ぎると、残り時間も気になってくるし、無駄なことに時間を費やして後悔することが多くなる。せめて普通の映画ファンに近づけるように、1本でも多く映画を見よう・・・・と不規則発言に書いておく。


<11月26日>(火)

○ワシントン在住の愛読者Sさんから送られてきたのは近来まれに見る名作でした。いやいやスゴイ。感動したッ!


Playwright Jim Sherman wrote this after Hu Jintao was named chief
Of the Communist Party in China.

HU'S ON FIRST
By James Sherman


(We take you now to the Oval Office.)

George: Condi (Condoleeza Rice)! Nice to see you. What's happening?

Condi: Sir, I have the report here about the new leader of China.

George: Great. Lay it on me.

Condi: Hu is the new leader of China.

George: That's what I want to know.

Condi: That's what I'm telling you.

George: That's what I'm asking you. Who is the new leader of China?

Condi: Yes.

George: I mean the fellow's name.

Condi: Hu.

George: The guy in China.

Condi: Hu.

George: The new leader of China.

Condi: Hu.

George: The Chinaman!

Condi: Hu is leading China.

George: Now whaddya' asking me for?

Condi: I'm telling you Hu is leading China.

George: Well, I'm asking you. Who is leading China?

Condi: That's the man's name.

George: That's who's name?

Condi: Yes.

George: Will you or will you not tell me the name of the new leader of China?

Condi: Yes, sir.

George: Yassir? Yassir Arafat is in China? I thought he was in the Middle East.

Condi: That's correct.

George: Then who is in China?

Condi: Yes, sir.

George: Yassir is in China?

Condi: No, sir.

George: Then who is?

Condi: Yes, sir.

George: Yassir?

Condi: No, sir.

George: Look, Condi. I need to know the name of the new leader of China.
   Get me the Secretary General of the U.N. on the phone.

Condi: Kofi?

George: No, thanks.

Condi: You want Kofi?

George: No.

Condi: You don't want Kofi.

George: No. But now that you mention it, I could use a glass of milk. And then get me the U.N.

Condi: Yes, sir.

George: Not Yassir! The guy at the U.N.

Condi: Kofi?

George: Milk! Will you please make the call?

Condi: And call who?

George: Who is the guy at the U.N?

Condi: Hu is the guy in China.

George: Will you stay out of China?!

Condi: Yes, sir.

George: And stay out of the Middle East! Just get me the guy at the U.N.

Condi: Kofi.

George: All right! With cream and two sugars. Now get on the phone.

(Condi picks up the phone.)

Condi: Rice, here.

George: Rice? Good idea. And a couple of egg rolls, too.
   Maybe we should send some to the guy in China. And the Middle East.
   Can you get Chinese food in the Middle East?


○プロの脚本家が書いたことになっているけど、このスクリプトは練達のワザモノですね。たぶんHuとWhoのギャグは、マルクス兄弟かなんかに原型があるんじゃないかという気がする。しかしHuを胡錦濤にしたところが技能賞。しかもYes sirを強引にアラファトに結びつけ、アナン事務総長からコーヒーに持っていくという破天荒ぶり。下げのナンセンスはほとんど吉本劇場のノリである。

○これを読んでいると、ホワイトハウスの中で、実物のジョージとコンディは本当にこんな漫才を繰り広げているんじゃないか?という疑問が浮かびます。忘年会の余興にも使えるかな。

○それにしても、このネタは当溜池通信にピッタリなネタでした。さて、以下は駄目押しです。

http://www.attrition.org/gallery/politics/tn/gulf_wars_ii.jpg.html


<11月27日>(水)

○今週号の内容に関係するんですが、ブッシュ政権がラムズフェルド路線(俺は一人でも行くぞ、文句あるかゴルァ)から、パウエル路線(対イラク、国連使えば軍いらず)に乗り換えたことで、ひそかに日本政府が困っているらしい。聞けばなるほど、である。

○アメリカが一人でイラクに行くぞと言うことであれば、それは大変ですね、私もお役には立ちたいんですが、あんまり評判もよろしくないですし、国内的にはなかなか名分が立ちません。対テロ戦争(アフガン戦線)では給油の4割も引き受けていますし、現場ではかなりの好評をいただいておりますので、そっちの方で頑張らせていただきます。つきましてはイラクのお手伝いはご勘弁ください。気持ちの上ではもちろんお味方してますから、で済ませられるという読みがあった。

○ところが国連の対イラク決議が全会一致で決まってしまった。これでイラクを査察してみて、やっぱりケシカラン、戦争だとなったら、いやしくも国連中心外交を標榜するわが国が、いえいえ私は何もできません、とは言いにくい。ところが対テロ特措法や周辺事態法をどうひっくり返しても、日本は対イラク戦を手伝ってヨシ、とは書いてない。かといって、今から急に法案を作ってもたぶん間に合わない。つじつまを合わせるための頭の体操みたいな法案を積み上げてきたから、こういうことになる。

○その一方、外務省などは、あーよかった、この時期に安保理メンバーじゃなくて、などと思ってるらしい。国連中心外交も底が浅いよね。「強いものには逆らえない」「仲間はずれにはされたくない」「できれば勝ち馬に乗りたい」などの打算はちゃんとあるんだから、最後の結論はある程度見えている。あとはどうやって皆が正直になるか。

○それにしても、以上の話は集団的自衛権の行使を認めれば一発で済む話なのだが、従来の政府解釈(権利を保有するけど行使できない)があるから苦しんでいる。だいたい、行使できない権利なんて概念を発明したのがおかしい。それに集団的自衛権を認めない国、なんてほかにはないんですけどね。


<11月28日>(木)

○日経平均株価が久々に9000円台乗せ。めでたいことなのかと思ったら、明日から日銀の銀行持ち株買い入れが始まるというので、通常なら引け時に売り浴びせるはずの銀行が手控え、そのために高く終わったのではないかとの説明。持ち株をマーケットで売れば相場は下がるけど、日銀が買ってくれるならその方が高くなるからいいですわな。これってモラル・ハザードじゃないかしらん?

○銀行側としては、自分がいっぱい持っている株をむしろ買い上げ、値段を釣り上げた上で日銀に買わせたいところだろう。この手の思惑が入るから、結局は市場を捻じ曲げることになるんじゃなかろうか。この際、その辺は目をつぶってでも、とにかく需給バランスを回復させてほしいということになるのかもしれないけど。

○ここ1〜2週間で、アメリカ経済に関する明るいニュースが増えている。株も10月が底値だったかもしれないね。注目したいのはIT関連。アジア向けの半導体関連輸出が高い伸びを示している。IT不況の底入れを宣言するには早そうだが、動意づく瞬間を見逃さないようにしたい。


<11月29日>(金)

○今日でめでたく「一の会」が卒業式、ないしはご臨終である。会場の四谷「スカッシュ2」はいつもにも増して満員御礼でした。4年間にわたって幹事を務められた田中さん岡本さん、ほんにご苦労様でした。

○会の最後を飾るために、今宵登場したのが「モエ・エ・シャンドン マグナムボトル」である。なんと6リットル入り。これだけの量となると、瓶を持ち上げるだけで大変な重労働である。50人くらいで乾杯したが、それでもまだ半分以上残っていた。こんなもの、どうやって会場に持ち込んだのかと思ったら、なんと「楽天」で購入して、クール宅急便で会場まで直接送ってもらったという。アッタマいい〜!6万円くらいしたらしいけど、どれだけ人数が多くても簡単にはなくならないし、バカ受け間違いなしなので、物好きな方は試してみてください。

○モエ・エ・シャンドンといえば、しょうもない話を思い出した。友人のS氏に待望の長女が誕生し、「もえ」という名をつけた。それで「子供ができました。モエ・エ・シャンドンの“もえ”というんです」と触れ歩き、親バカぶりを天下に公言していた。某日、近所のお酒の安売り店で3000円のモエ・エ・シャンドンなるものを発見し、ふだんからお世話になってるからとS氏の自宅に送ってみた。たちどころに電話が入り、「このたびは高価なものを・・・」と言うからこっちが恐縮したが、「あれだけ触れ歩いたのに、本物のモエ・エ・シャンドンを送ってくれた人は初めてでした」と言う。それにしても、あれは本物のモエちゃんだったのかなぁ・・・・。

○高校生の頃に(恥ずかしいけど)クイーンが好きで、「月を見て熱心に祈る猿」とか、「ママ、僕は人を殺しちゃった」とか、「そして彼女はiにドットを打たない」などという歌詞にしびれた。キラー・クイーンは、いつもキャビネットにモエ・エ・シャンドンを切らさなかったはずである。当時は見たこともなかった高級シャンパンは、今ではありふれたものになってしまった。この次に子供ができたら、いっそ「ロマネちゃん」にしたらどうかしらん。


<11月30日>(土)

○そういえば、「今週中にも民主党に激変があるだろう」と角谷浩一氏が言っていました。本当にその通りの展開ですな。

○この夏くらいからの民主党は本当に見苦しいと思う。いくら不人気だからといって、自分たちの手で選んだばかりの代表を引き摺り下ろそうとするのは、民主的ではないし、そもそも組織として体をなしていない。両院議員総会を欠席する議員が大勢いたのにも驚いた。それに対して罰則を与えることもしない。金丸信流の汚い表現で言うと、「馬糞の川流れ」ですな。

○民主党は1996年の創設から、比較的順調に勢力を伸ばしてきた。それが次の選挙が危ないとなったら、議員が本当に浮き足立ってしまったようだ。政党への支持率が落ちたからといって、個々の議員が政党から距離を置こうとする。その結果、政党が機能不全になり、ますます政党への信頼が地に落ちる。自分たちの首を絞めている。民主党の支持率が落ちているのは、鳩山さんのせいだけではないはずだ。

○金融問題に対し、竹中流ハード路線で行くのか柳澤流ソフト路線で行くのか。税制はいかにあるべきか。対イラク戦争にどんな形で協力するのか。有事法制と個人情報保護法に賛成なのか、反対なのか。民主党の考えはサッパリ分からない。自由党と合流するそうだが、政策調整はどうするのか。まるで危ない銀行同士が合併するみたいな話で、あんまり見通しがあるようには思えません。









編集者敬白



不規則発言のバックナンバー

***2002年12月へ進む

***2002年10月下旬へ戻る

***最新日記へ


溜池通信トップページへ


by Tatsuhiko Yoshizaki