かんべえのライブラリー(1)


「書評の本棚」財界編



かんべえは、『財界』という雑誌で書評を連載しています。原則として、新刊から半年以内のビジネス関連の本を中心に取り上げています。以下はこれまでに寄稿した分です。何がしかのご参考になるのではないかと思い、ここに一挙掲載する次第です。新作は、本誌掲載後にここで掲示します。






『台湾の主張』
李登輝

<1999年9月28日号>

某日、かねて懇意のS編集長から突然の電話で、「明日までに書評を1本書けませんか?」――レギュラー執筆者が急死されて、原稿が落ちてしまったとのこと。気の毒なのでその日のうちに書き上げる。といっても、溜池通信に書いた記事を流用しているわけだけど。



『ローマ人の物語[――危機と克服』
塩野七生

<1999年10月26日号>

とりあえずS編集長への義理は果たしたと思っていたら、「1回だけではなく連載でお願いします」。気を取り直して、この本を取り上げてみた。塩野七生さんは何度かお目にかかったことがあります。コワイ人です。われながらいい度胸してます。



『日本の近代5−政党と軍部』
北岡伸一

<1999年11月9日号>

全集本を取り上げてみました。中央公論新社の良心が感じられます。この時代については興味はあるんだけど、意外とよく分からないことが多いんですよね。でも今読むと、自分のことを「若い世代は」なんて書いているのが気恥ずかしい。



『陸奥宗光とその時代』
岡崎久彦

<1999年12月7日号>

岡崎研究所の「門前の小僧」を自認しておりますので、岡崎氏の「近代史プロジェクト」をヨイショしてみました。詳しいことを知りたい人は、ここをどうぞ。



『毛沢東秘録』
産経新聞社

<2000年1月4日号>

文句なしに面白かった。中国は面白い国ですが、中国共産党はいかに愚劣で、救いのない組織化がよく分かります。しかしこうしてみると、ワシが取り上げる本は歴史モノで、思想的には右寄りが多いんだな。



『日本の大チャンス』
ピーター・タスカ

<2000年2月1日号>

まったく注目を浴びていないのが不思議なくらいの名著だと思う。とくに内閣総理大臣の架空演説は絶品。1999年の株高を正確に予測した。



『金融行政の敗因』
西村吉正

<2000年2月15日号>

官僚OBがみずからの業績を「敗因」だと書いちゃうんだから、世の中変わった。マスコミはこういうことをきちんと評価すべきだよね。



『ウォール街のランダム・ウォーカー』
バートン・マルキール

<2000年3月14日号>
書評なんだか、「株式選手権」の伊藤さんの宣伝記事なんだかよく分からない。でもこの本はいい本ですよ。勉強になりました。



『日本を決定した百年』
吉田茂

<2000年3月28日号>

こういう本があったとは知らなかった。この本が初めて出たときは小学生だったもの。周囲に聞いてみたら、知っている人は知っていた。あたり前か。



『日本の公安警察』
青木理

<2000年4月25日号>

最後のひとことがいいたくて、この本を取り上げたようなもの。あはは。それにしても、新書は書評が書きやすくていいわ。(←不真面目)



『笑いの経済学』
木村政雄

<2000年5月9日号>

最近、テレビにもよく出る吉本興業常務、木村政雄氏の経済論と経営論。やることなすこと大当たりの経営者は、話をさせればまず間違いなく面白い。それが吉本興業なのだから、ますますたまりまへん。



『戦後史のなかの日本社会党』
原 彬久

<2000年5月23日号>

すでにその歴史的な役割を終えてしまったから、まっとうな研究の対象になるということがある。本書はそういう着眼がいい。ところで、社会民主党と新社会党は合併したらいいんじゃないか。新しい党名は「旧社会党」。とっても懐かしいかも。



『幣原喜重郎とその時代』
岡崎久彦

<2000年6月27日号>

なんとこの本の書評は、これが初めてだったそうだ。シリーズ3作目ともなると気の毒な扱いである。そもそも陸奥や小村に比べ、幣原は知名度が低い。歴史の教科書だって、陸奥・小村は写真付きだったが幣原はそうではない。書店の店員さんの中には、「しではら・きじゅうろう」が読めない人だっているかもしれない。でもシリーズ1、2よりも面白かった。



『オランダモデル』
長坂寿久

<2000年7月25日号>

本誌5月19日号「オランダモデルへの招待」のネタ本。筆者は保守的な人間ですから、「アングロサクソンモデル」の方が好きです。でも日本の現実的改革論として、オランダモデルは有力だと思う。世間の「リベラル派」と呼ばれる人たちが、なんでこの本を取り上げないのか不思議です。



『秘密のファイル(上・下)』
春名幹男

<2000年8月8日号>

本書は掛け値なしの労作ですから、取り上げて推奨することに何の抵抗もないのですが、3回続けて知り合いが書いた本を取り上げているのは、立場を利用しているようでちょっと・・・・。ま、いっか。



『通貨が堕落するとき』
木村剛

<未掲載>

本書はすでに『財界』本誌で取り上げ済み・・・・だったもので、せっかく書いたけど没になりました。ほかの人が何を書いているか、ちゃんとチェックをしていない自分が悪い。それはさておき、本書は恐ろしい予言の書だが、小説としては今ひとつ。予言の書として読んでください。



『二十一世紀日本の国家戦略』
中曽根康弘

<2000年9月12日号>

上記のような次第で、『通貨が・・・』が駄目になったので、なるべく簡単に書評が書けそうな本を選んで買ってきた。誉める気にもならないが、けなすほどのこともなし。それでも大勲位のかくしゃくたるところには脱帽せねばなりますまい。



『超少子化――危機に立つ日本社会』
鈴木りえこ

<2000年9月26日号>

西原理恵子&鴨志田穣の『アジアパー伝』があんまり面白いので取り上げたかったのだが、掲載の際に社名が出ることに気づいてやっぱり自粛することにした。かわりに同じ理恵子さんの本を取り上げる。すいませんね、鈴木さん。



『東京アンダーグラウンド』
ロバート・ホワイティング

<2000年10月24日号>

かなり話題になっている本である。マーチン・スコセッシが本書を映画化するそうだが、その場合はやはりデ・ニーロが主演なんだろうか。



『プロメテウスの墓場〜ロシア軍と核のゆくえ』
西村陽一

<2000年11月7日号>

ニュージーランド出張直前になって編集部から「書きなおし」をくらい、たまたま友人のNさんに借りていた本を急きょ取り上げた。少し古い本なのだが、まあ許してもらおう。注目してもらう値打ちは十分にある本です。



『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』
岡本呻也

<2000年12月5日号>

すでにさんざん騒いだ後のなので、「またか」と思われるかもしれませんが、まぁそう言わずに付き合ってやってください。「読めばなにかできるような気になる本」という帯の文句は伊達じゃありませんぜ。



『ローマ人の物語\ 賢帝の世紀』
塩野七生

<2001年1月2日号>

本シリーズ8作目に当たる「危機と克服」を取り上げたのが、書評連載の2冊目だった。思えば長いこと書いているものだなあ。来年は本シリーズの10作目を取り上げているのだろうか。年内の宿題はあと1冊。



『特許封鎖』
岸 宣仁

<2001年1月30日号>

ビジネスモデル特許、ヒトゲノム、エコカー、GMOなど、技術の問題の最先端を分かりやすくコンパクトにまとめてあるありがたい本。「このままでは日本は危ない」というメッセージが込められているが、「日本も捨てたものではない」という読み方もできる。『税の攻防』以来、この著者はいい仕事が続いていると思う。



『代議士のつくられ方』
朴 母、

<2001年2月13日号>

不規則発言でたびたび触れたように、1996年の葛飾区で小選挙区選挙の実態をリサーチした労作。KSDについての解説があったのは拾い物でした。こういう研究がもっと増えて欲しいですね。



『企業メガ再編』
ポール・シェアード

<2001年3月13日号>

本誌2月16日号「日本型制度改革のゆくえ」のもとになった本。「財界」編集部から「これ、どうですか?」と言われて選んだもの。いつもは自分で選ぶのだが、たまには宿題を与えられてみるのも変化があっていいかな。



『ポケモンストーリー』
畠山けんじ・久保雅一

<2001年3月27日号>

本誌愛読者にとっては、真新しいことは何にもない書評です。とはいっても、ポケモンの成功についてなるべく多くの人に知ってもらうことは、十分に意義のあることと思います。



『日本よ、台湾よ』
金美齢・周英明

<2001年4月24日号>

余計なことは申しません。著者の金美齢さん、周英明さんに深い敬意を表したいと思います。




『海の友情』
阿川尚之

<2001年5月8日号>

4月26日、海上自衛隊がペルシャ湾岸に掃海艇を派遣してから10周年になります。海上自衛隊のことを、もっと多くの人に知ってもらいたいと思います。





『日本経済の罠』
小林慶一郎、加藤創太

<2001年6月12日号>

またこの本を紹介してしまった。とはいえ、日本経済ならぬ日本の経済学の「空白の10年」を埋めるのは、本書しかないと思っておりますので、宣伝することに一種の使命感を感じております。





『石原慎太郎 次の一手』
大下英治

<2001年6月26日号>

「何で?」と聞かれるかもしれないけど、「財界」の編集長に頼まれたんだもーん。と、正直に書いてしまうワタシ。ときには義理もありますがな。慎太郎さんは嫌いじゃないけど、首相になって欲しいとはあんまり思いませんね。





『円の支配者』
リチャード・ヴェルナー

<2001年7月24日号>

金融界の心有る人たちが笑いモノにしているこんな本が、15万部も売れて、結構ちゃんとした人たちまでが本気にしかかっている。かんべえが喧嘩売ってどうなるもんじゃありませんけど、はっきり言っちゃいます。これはトンデモ本ですよ〜!





『外資の常識』
藤巻健史

<2001年8月7日号>

実はこの著者が出席する勉強会に参加を予定していて、「溜池通信」執筆が手間取って出られなかったのです。そのときは大変悔しかったのだ。





『重光・東郷とその時代』
岡崎久彦

<2001年9月11日号>

靖国神社参拝問題で揺れた夏でした。そんなときにぴったりの読書。自虐史観をはっきりと排しつつ、自由主義史観ほど極端な見方をしない。こういう副読本があれば、高校の教科書が少しくらい左右にぶれても大丈夫だなと感じます。





『検証・経済迷走――なぜ危機が続くのか』
西野智彦

<2001年9月25日号>

落ち着いた筆致のノンフィクションです。新しく発掘した事実もたくさん盛り込まれています。問題はここからどんな教訓を導き出して、現在に活かすかということですね。ハイ。





『きのう異端あす正統』
玉置和宏

<2001年11月6日号>

正直に言うと、そんなに面白い本ではなかったな。それでもすごく面白いところが1箇所あれば、本を読んだ時間は無駄にはならない。本書は「小泉さんは異端者だ」という指摘が価千金。「小泉=タリバン説」はこれを読んで思いついたんです。





『将棋の子』
大崎善生

<2001年12月4日号>

不規則発言でも書いたとおりです。泣かせようと思って書かれた本なのに、つい泣けてしまいます。『聖の青春』もそうでしたが、この著者はぎりぎりの生活での幸福感みたいなものを上手に描きますね。





『慮る力』
岡本呻也

<2002年1月1日号>

四酔人の岡本氏のフリー転向後の第2作。誉めてあげたいし、けなしてもあげたいし、引き裂かれるような思いで書き上げたのがこの書評。自分では愛情あふれるメッセージだと思っているのですが。





『ホームページにオフィスを作る』
野口悠紀雄

<2002年1月29日号>

えー、ながらく務めてきた『財界』の書評ですが、誌面刷新に伴って今後は出番が不定期になります。われながら2年半もよく書いたわな、と感心しております。「書評の本棚」については、また別途考えますのでしばしお待ちを。



『青年の大成』
安岡正篤

<2002年7月23日号>

久しぶりに編集部から依頼を受けちゃいました。安岡正篤や中村天風といった人の本は、自分ではけっして選ばないと思いますけど、それだけにかえって得難い機会というものかもしれません。



『愛国者の地雷』
田中光二

<2003年1月28日号>

忘れた頃にやってくる財界の書評。夕刊フジだと経済の本にかぎられるが、こっちは何でもありなのがいいね。








編集者敬白




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