『検証・経済迷走――なぜ危機が続くのか』 西野智彦
岩波書店、(一八〇〇円)




 「失業率は戦後最悪を記録」、「日経平均はバブル後の最安値を更新」といったニュースが流れている。が、有効求人倍率で見れば、〇・五まで落ちた九八年が最悪であったし、株価もTOPIXで見れば九八年が最安値である。日経平均が安く見えるのは、昨年四月の銘柄変更で継続性が崩れているから。日本経済のボトムは九八年だった。 

この年、橋本政権は財政構造改革法を棚上げし、景気重視へ転換を図る。金融不安の高まりに対し、公的資金の導入へと大きく舵を切る。しかしときすでに遅く、参院選敗退で橋本首相は退陣に追い込まれ、長銀・日債銀の経営が破綻する。代わって登場した小渕政権は、恒久減税を含む財政支出で危機を乗り切ろうとするが、財政規律は損なわれて今日に至っている。

 本書に描かれているのは、わずかに三年前のこと。日本経済は最悪の状況を体験し、政治は迷走を続けた。読んでいてやり切れない気持ちになるが、ここから目をそむけるわけにはいかない。今日の問題のうち、かなりの部分がこのときに種を撒かれているからだ。

 印象に残ったエピソードを二点紹介したい。

@九八年には大蔵省、日銀に対する過剰接待問題が浮上し、逮捕者や処分者が出た。金融危機管理の主役たちがほとんど姿を消し、金融当局者の間には、「リスクを取らなかった人間だけが無傷だった」という印象が残ったという。

おかげで金融問題の処理は大いに遅れた。ある地検関係者は、「あの捜査は失敗だった」と語っているという。それでは何のための金融スキャンダルだったのか。

A九八年四月、景気対策のために法人税率を国際水準並みに引き下げる案が出る。これは税体系全般にかかわる重要事項なので、自民党税調での討議が欠かせない。

 ここで秘書官が「おみくじを引いてみよう」と言い出し、山中貞則氏に連絡を取った。すると税の神様たる山中氏は、あっけなくOKしてくれたので、景気重視への路線転換が可能になった。

 現在、株式市場活性化のために証券税制の見直しが議論されている。が、山中氏など党税調は否定的らしい。山中神社の「おみくじ」は、なぜあのときは吉と出て、今回は凶なのか。神様に聞いてみたいものである。



編集者敬白



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