野口悠紀雄氏といえば、経済学者としての仕事はもちろん、『超・整理法』や『超・勉強法』のベストセラーが有名である。野口氏のノウハウは平易で、万人が真似できるところが画期的だった。
その野口氏が新たに提案するのは、「自分のホームページを持ちましょう」という知的生産術である。個人ホームページを運営している人は急増中(評者を含む)だが、その多くは趣味の範囲内にとどまっている。これをいかに仕事の生産性向上に結びつけるか。なにしろ「野口悠紀雄Online」は一日のアクセスが四〜五万件というお化けサイト。サーバーをレンタルし、サポーターを動員しているというだけに、ここで公開されているノウハウは示唆に富む。
本書の主要なメッセージは、「ホームページは自分だけが使うつもりで作ると良い」。他人に読んでもらおう、と工夫したり宣伝する努力は二の次でいい。自分が使って便利なホームページは、他の人が使っても便利なのだから。
ホームページを持つことのメリットは、学者だけにはとどまらない。自分の日頃の業務内容から、オフィスへの道順に至るまで、「詳しいことはホームページを見てください」と言えば用は足る。また、リンク集などの機能をホームページ上に作っておけば、自分がどこにいても使えるという便利さがある。
さらにアクセス数が増えて、読者から感想が来るようになると、メリットはますます高まる。ちなみにアクセスを増やし、リピーターを確保するためには、「一に更新、二に更新、三に更新」だという。
すでにインターネット上には、さまざまな形の自己表現があふれている。ホームページ上の表現は、マスメディアと違って制限がない。従来であれば注目を浴びなかったような才能が、一気に花開く可能性もある。これはグーテンベルグの印刷術のような効果をもたらすのではないか。
インターネットという技術が、個人の才能のルネッサンスを可能にするかもしれない。IT不況のさなかといえども、われわれが刺激的な時代の変革期にあることは間違いないだろう。
「私はIT革命に関する限り、傍観者の立場にはいたくない」という野口氏の態度には、強い共感を覚える。
編集者敬白
書評欄へ