●かんべえの不規則発言



2026年1月






<1月1日>(木)

〇あけましておめでとうございます。2026年が始まりました。

〇いやあ、清々しいほどに年賀状が減っている。そりゃそうだ。1枚85円なんだもん。「俺は今年から年賀状を出すぞ!」なんて人はもう存在しなくて、今まで出していた人が枚数を減らし続けて、かろうじて維持しているという状況だろう。ワシだって毎年、枚数を減らしながら今年も続けている。

〇賀状の中で「年賀状じまい」を宣言している人もいる。この調子では来年も減りますなあ。でも、考えてみたら年賀状の下り坂状態、何年も前からずっと続いているわけで、われわれの日本社会or日本経済って、こういうのが得意ですわなあ。

〇もっと言えば、年末年始の行事の多くがそういうのばっかりである。「紅白」はもうオワコンだと言われて久しく、他の番組も似たようなものである。「おせち料理」もどんどん簡略化され、「初詣」も当家では柏神社でおみくじを引くのが関の山である。

〇それでも午前中からお酒が飲めてしまうし、天気も良かったら文句を言ったら罰が当たります。とりあえず、(株)溜池通信の四半期仮決算をやったり、2026年カレンダーを修正したりして過ごしております。

〇問題は四月から始まる大阪経済大学の客員教授の仕事で、シラバスを完成させなければいけないのだが、どうしてもシステムが「編集完了」にならないので作業が止まっておる。果てさて、どうしたものか。

〇もっともこんな風に、「新しいことに嫌でも慣れなければいけない」という状況に置かれることは、たぶん悪いことではないのだと思う。ほっとくと、だんだん右肩下がりになっていくのが世の常というものですから。


<1月2日>(金)

〇とりあえず以下は例年の習慣ということで。


●2026年(令和8年丙午)の主要政治日程

1 月  高市首相が伊勢神宮参拝(1/5)
    デジタル技術見本市「CES 2026」(ラスベガス、1/6-9)
    米トランプ政権が次期FRB議長を公表(初旬)
    米最高裁がトランプ関税に対する判決(初旬)
    李在明韓国大統領が訪日(奈良、中旬)
    メローニ伊首相が訪日(1/16頃)
    世界経済フォーラム(スイス・ダボス、1/19-23)
    柏崎・刈羽原発が再稼働(1/20)
    通常国会召集(1/23)
    福井県知事選挙投開票(1/25)
    米一般教書演説(下旬)
    米「つなぎ予算」が失効(1/30)→再び政府閉鎖へ?
    スティーブン・ミランFRB理事が退任(1/31)
    日中韓サミット?(議長国・日本が呼び掛けるも中国が拒否)

2 月  ミラノ・コルティナ冬季五輪(2/6-22)
    ミュンヘン安保会議(2/13-15)
    中国春節(2/17)→休暇は2/15〜2/23
    竹島の日(2/22)
    ウクライナ戦争が4年目に(2/24)

3 月  日本全国で皆既月食(3/3)
    中国全人代(3/5〜1週間程度)
    WBC一次ラウンド開幕(東京ドーム、3/5)
    自民党大会(3/15)
    WBC決勝戦(マイアミ、3/17)
    春闘集中回答日(中旬)
    F1 日本グランプリ(三重・鈴鹿、3/27-29)
    日銀、野口旭審議委員が任期切れ(3/31)
    高市首相が訪米、日米首脳会談(月内)
    令和8年度予算、税制改正関連法案が成立(月内)


4 月  通常国会では国家情報庁設置、皇室典範改正、旧姓使用の法制化など審議
    IMF世銀春季総会(ワシントン、4/13~18)
    トランプ大統領が訪中
    ハンガリー総選挙(月内)

5 月  パウエルFRB議長の任期切れ(5/15)→新議長にバトンタッチ
    コロンビア大統領選挙(5/31)
    2025年国勢調査の公表(月内)

6 月  FIFAワールドカップ(北米、6/11〜7/19)
    G7サミット(仏エビアン、6/14-16)→中国を招待へ
    通常国会会期末(下旬)
    日本企業の株主総会シーズン(下旬)
    日銀、中川順子審議委員が任期切れ(6/29)

7 月  米建国250周年(米フィラデルフィア、7/4)
    NATO首脳会議(トルコ・アンカラ、7/7-8)
    BRICS首脳会議(インド)
    USMCAの定期見直し期限(月末)

8月  北戴河会議(中国、月内)
    ジャクソンホール会議(米カンザス州、下旬)

9月   レイバーデイ(9/7)→米中間選挙が終盤戦入り
    同時多発テロ事件から25周年(ニューヨーク、9/11)
    上海協力機構(SCO)首脳会議(キルギス・ビシュケク)
    シルバーウィーク(9/19-23と11年ぶりの5連休)
    国連総会一般討論(ニューヨーク、下旬)

10月  ビール系飲料の税率一本化、東証の上場維持基準未達企業の上場廃止(10/1)
    ノーベル賞ウィーク(上旬)
    ブラジル大統領選挙(10/4)
    IMF世銀総会(バンコク、10/12〜18)

秋    ASEAN関連会議(議長国はフィリピン)

11 月  米中間選挙(11/3)
     COP31(11/9-20、トルコ・アンタルヤ)
     APEC首脳会議(11/18-19、中国・深セン)→トランプ大統領訪中
     ブラックフライデー(11/27)
     台湾統一地方選挙(11/28)

12 月  G20首脳会議(米国・マイアミ、12/14-15)→習近平主席訪米
     日本の国連加盟70周年(12/18)


〇問題はこれをどんな風に読み解くかですなあ。それはまあ、おいおいと。


<1月4日>(日)

〇年末年始の間に、雑煮を食ったり酒を飲んだり、はたまた駅伝を見たり孫と遊んだりもするのであるが、この間に仕事も着々としていたのである。

〇年明け締め切りの原稿3本はどうにか格好がついた。1月6日朝の「モーサテ」の準備と、今週2件ある講演会資料もだいたい完成していたのであるが、昨日、アメリカのベネズエラ侵攻があったものだから、かなりの部分は書き直しである。もう、最近はこういうことがしょっちゅうですなあ。

〇もっとも予想外のことが起きたわけではないので、そんなに慌てることはないのである。トランプ政権の「NSS2025」はやっぱり本気だ、とか、「史上初のフロリダ政権」が本領を発揮しつつある、ということだ。とはいえ、この先は嫌な予感しかしませんなあ。

〇今のトランプ政権が中南米でやろうとしていることは、彼が激しく非難していたネオコン連中が中東でやっていたこととどう違うのか。「アメリカがベネズエラを運営する」と言っているけれども、そりゃあ無理だろう。しかもイラク戦争をおっぱじめるとき、アメリカは一応、国連で安保理決議を通している。今回はそういう手続きは一切無視のストリートファイトである。

〇これ、日本外交としても悩ましいところである。「アメリカの行動を支持する」とはとても言えそうにないし、「理解する」だって怪しいところだ。案の定、外務省からは「邦人の安全確保」とか「情報収集に努める」とか、「ベネズエラにおける民主主義が回復されることの重要性」などと、いかにもお茶を濁すような感じのコメントが出ている。


●ベネズエラ情勢への外務報道官談話(1月4日)


〇案の定、ロシア外務省が「アメリカの武力侵攻に懸念」と言っている。これだけ絵に描いたような「おまゆう」はないだろう。されど、ウクライナ戦争はまだしも兄弟国相手のドメスティック・バイオレンス的なところがあるのに対し、米軍がベネズエラ大統領を拘束して、アメリカ国内に連れてきて裁判にかける、というのはどう見ても国家主権の侵害である。

〇トランプ大統領の岩盤支持層たる「MAGA派」も、昨年秋以降は内部で亀裂が入っている。大きく言って3つの論点がある。@対イスラエル肩入れ外交(アメリカは正しく孤立主義に向かうべきではないのか)、Aエプスタイン問題(トランプもディープステーツの一部だったのか)、B関税(やっぱり物価が上がってしまったじゃないか)の3点である。

〇それでは彼らは、今回のベネズエラ侵攻をどのように受け止めるのか。たぶん賛否両論で収拾がつかなくなってしまうのだろう。どこかで行き詰ったら、新しい戦線を作って関心を他へ逸らす、というのはトランプさんの常套手段である。

〇逆に言えば、新しい事件を起こすのなら年初のうちであった。もうしばらくすると、IEEPA関税をめぐる最高裁判決が出るし、エプスタイン文書の中からさらにヤバいネタが飛び出すかもしれない。FRBの次期議長なんて、もうどうでもよく良い感じになってきましたなあ。

〇だんだん嫌気がさしてきて、午後から中山競馬場へ。今日は中山金杯である。有馬記念から1週間しかたっていないというのに、とにかく人が多過ぎ。パドックで馬を見るのも一苦労。スタンドでアイスを買うにも行列である。

〇「1年の計は金杯にあり」という。ただし普通の買い方をしていては当たらないのがこのレース。京都金杯の本命は5番人気のファーヴェント、中山金杯は7番人気のカラマティアノスとする。どちらも馬番は11番で、そこから手広く買ってみる。

〇京都のファーヴェント、うまい具合に先頭で戻ってきたが、ゴール直前でブエナオンダに差されてアタマ差の2着。問題は3着に入ったショウナンアデイブで、18頭中の18番人気であった。お陰で三連複は24万円馬券となったが、そんなん買えんわ。その後ろの3頭のどれが来ていても、おいしい馬券が取れていた。まったくなんと余計なことを。

〇中山のカラマティアノス、これまた先頭で戻ってきて、追い上げられてアンゴラブラックと並んでゴール。写真判定の結果、ハナ差で勝利。しめしめ、馬連と三連複ゲットで浮いた。中山金杯ゲットだぜ。今年のラッキーナンバーは11番ということにしておこう。


<1月5日>(月)

〇いやあ、今日は株価が上がりました。こんなことを言うと顰蹙モノですが、相場格言「遠くの戦争は買い」というヤツですな。しかるにベネズエラを巡る問題は、ウクライナや台湾経由で確実に日本にも飛び火してくるでしょうから、いつまで呑気にしていられるのか。

〇率直に言って、この先は嫌な予感しかしないのでありますが、こういう不透明な情勢になるとワクワクしてくるのは、われながら職業病でしょうか。明日朝はモーサテに登場いたします。考えてみたら、先週も「大納会特番」に出たばっかりなのですが、1週間でかなり状況は変わったような気がします。

〇さて、今年もたくさん講演会の機会を頂戴しておりますが、クローズドのお客さん相手のものがほとんどです。以下は数少ない例外でありまして、どなたでもご参加できます。「かんべえさんの予想を聞いてみたい」という方がいらっしゃいましたら、どうぞお出かけください。


●1月10日(土)13時から コングレスクエア日本橋 どうなる?2026年の金融マーケット


――マネースクエアさんの新春セミナーです。不肖かんべえの出番は13時40分から。いつもの西田明弘さんの司会で、安田佐和子さんと一緒にFRBやら中間選挙やら、今年のアメリカ情勢について語ります。ベネズエラ問題も、当然、語らなければいけませんなあ。

(→後記:すいません、会場はもう満杯になってしまったとのこと。ただしWeb視聴用はまだ間に合うとのことです)。


●1月13日(火)17時15分から19時15分 北海道大学 学生交流ステーション 111室  講演会「どうする?2026年世界と日本」


――これで3年連続、札幌にお邪魔いたします。北海道大学の高等教育推進機構、国際教育研究部研修事業の一環です。毎年、活発なご意見をいただける、とってもいい雰囲気の会合でありまして、札幌にお住まいの方、よろしければお出かけください。


〇ときどき、「かんべえさんはユーチューブはやらないの?」と聞かれるのですが、どうも自分からはやる気にはならんのです。誰かに誘われれば出ますけど。やっぱりリアルで、人に会って話すのがいいですなあ。古いタイプの人間なのかもしれませんが。


<1月6日>(火)

〇今朝はモーサテへ。本日の「プロの眼」のお題は「高市総理の『2026年戦略』を読む」でありました。

〇番組途中のコメントで、「アメリカのベネズエラ侵攻は、国内法的には辻褄が合っている」ことをご紹介しました。まるでマジックのような話なんですが、「ケル=フリスビー法理」というものがありまして、アメリカ国内で訴えが出ている被告人は、いかなる経緯で連れてこられても、その後の裁判の有効性を妨げるものではない、という原則があるのです。元ネタはこちらをご参照。


●デュポン・サークル便り(1月5日)CIGS


〇昨晩、「明日はモーサテだから早く寝なきゃなあ」と思いつつ、ふっと「辰巳由紀さんが何か書いているかもしれない」と上記を発見しただけのことです。今朝のモーサテでの解説はほとんど受け売りです。とはいえ、ルビオ国務長官が、「これは戦争ではなく、法執行(Law Enforcement)である」と言っているのは、もちろん議会への報告義務がなくなるからでもありますが、かなり計画的な犯行と言えますね。下記の記事なんかを読んでみても、今回のベネズエラ侵攻はかなりの部分が「ルビオの戦争」という面があるように思われます。


●トランプ氏の変心、マドゥロ氏追放に懐疑的だった半年前から一転(WSJ)


〇ゆえに今回のマドゥロ大統領は、1989年にあったパナマのノリエガ将軍のケースとまったく同じ扱いになるというわけ。あのときも米国は麻薬問題を理由に、国際法を無視してパナマの独裁者を一方的に連れ去り、国内法で処罰してしまったわけであります。それにしても皆さん、1989年(平成元年)といえば、天安門事件とベルリンの壁は覚えているのに、ノリエガ将軍のことはほとんど覚えていないんですねえ。

〇夕方から時事通信の新年互例会へ。高市首相がお見えになっておられました。何しろ今朝の公共の電波で言いたい放題を言った後だけに、当方としては少々、気まずいものを感じるわけであります。今日の総理あいさつでは、「日本経済の供給面を強化していく」と言っておられましたので、従来の路線から少し変わってきた感がありますね。かならずしも「リフレ派路線で初志貫徹」、というわけではなさそうです。

〇高市首相、もちろん今宵は外交に関してはまったく触れませんでした。それでいいんです。1月2日に電話会談した直後に、トランプさんはベネズエラ強襲を決断したんですけど、そんなややこしい話はしちゃダメですよね。こういうときに声高に正義の議論を始める人は、あんまりセンスがよろしくないと思いますぞ。


<1月7日>(水)

〇こういうのってどうですかね?


「戦狼外交官が裸足で逃げ出す鈍狼主義」


〇「モンロー主義のトランプ系論」こと「ドンロー主義」は、世界に衝撃を与えつつある。トランプさんはベネズエラですっかり味をしめてしまったらしく、次はグリーンランドが欲しいという。武力行使もありですと。

〇われわれはメルカトル図法の世界地図を見慣れているので、なんとなくグリーンランドが欧州に近くて、デンマーク領であっても違和感を覚えない。歴史的に言えば、かつてのバイキングが大西洋を渡って植民した結果であって、今でもそういうことになっている。

〇しかし地球儀で見たら、明らかにグリーンランドはカナダにくっついている新大陸の一部である。つまり「NSS2025」が重視する西半球に属するのだ。北極海を介してロシアと直面するアメリカにとって、いわばグリーンランドは「盾」のような存在になり得る。

〇トランプ氏の考えは確かに変だけど、それなりに鋭いところもある。カナダを51番目の州として、グリーンランドを領有することができれば、アメリカ合衆国は北方に巨大なバッファーゾーンを持つことができる。これが帝国主義時代であれば、充分に合理性がある考え方でありましょう。

〇こんな「鈍狼」の戦略に対しては、中国あたりの戦狼外交官たちは、きっとなすすべもありませぬ。トランプさんはマドゥロを倒せばいいわけですけど、中台統一のためには上陸作戦を行うだけでは足りず、台湾人2000万人の心を掴まねばなりません。難易度が高過ぎますわなあ。それこそ「もう1回、国共で内戦やりますか?」てなことになってしまう。

〇大新聞の社説などでは、「ドンロー主義で中ロが勢いづく」という論調を多く見かけますけど、意外とそんなことはないのかもしれませんぞ。


<1月9日>(金)

〇本日発売の中央公論2月号の特集「令和の『保守』を読み解く」に寄稿しました。なかなかに壮観なラインナップです。


*排外主義の危機に保守が果たすべき「責任」(宇野重規×遠藤晶久)

*保守とは謙虚な思想である(伊吹文明)

*「横のナショナリズム」時代に必要な国民の物語(辻田真佐憲)

*アメリカを分断する対立軸と政策観(グレン・フクシマ×渡辺靖)

*トランプ政権を動かす「保守派の抑制主義」(渡部恒雄)

*財政保守主義の伝統は死に絶えるのか(吉崎達彦)


〇結構、喧嘩を売るようなことを書いてしまいましたが、ネット上で「保守が、ホシュが」と言ってるような手合いは、間違ってもこんな雑誌は読みませんので、大変に心安らかに感じております。

〇今週は立食の新年会に4回参加。帝国ホテル、ニューオータニ、オークラ、霞山会館に伺いました。やはり、客が少ない霞山会館がいちばん居心地が良かったですな。鮨やローストビーフは、本来、並んでまで食うものではありませぬ。などと言いつつ、3回ずつ食ってしまいましたなあ。ちと反省。


<1月10日>(土)

〇朝、やけに円安が進んでおるのう、昨晩の雇用統計はそんなに反響があったのか、と思ったら違っていた。読売新聞の報道を受けてのことであった。


●高市首相が衆院解散を検討、23日通常国会の冒頭に…2月上中旬に投開票の公算 2026/01/09 23:00


〇ワシは今週6日のモーサテで、「年内解散はない」と言ってしまったのだが。ぐぬぬ。

〇しかしどうするんだろう。2月8日から10日の予定で、UAEのムハンマド大統領が国賓で訪日する。選挙期間中に国賓が来た、なんてことは前代未聞である。解散だからと言って、宮中のご予定を動かすわけにはいかんだろう。ちゃんとその辺は下調べしてあるんだろうか。最近は詰まっていない人たちが多いんで、ワシ的にはちょっと心配じゃ。

〇ちなみに六曜もチェックしておこう。以下の2通りのパターンが考えられます。

解散   公示日   投票日  
1月23日(金) 仏滅 1月27日(火) 友引 2月8日(日) 友引
1月23日(金) 仏滅 2月3日(火) 先負 2月15日(日) 先負


〇2024年秋の石破内閣の解散は、「先負〜先負〜先負」という珍しいパターンで、投票日を急いで日程をセットしたら、本当に負けて「先負」になってしまった。ゲンが悪いので、友引の方が良さそうに思えます。知らんけど。

〇「1月解散〜2月総選挙」というパターンは、1990年の海部内閣以来です。平成初の選挙で、人呼んで「消費税解散」。小沢一郎幹事長の指揮の下、意外にも自民党は安定多数を大きく上回る議席を獲得しました。まあ、あの頃は確かに景気も良かったしね。しかし2月の選挙は寒いですぞ。全国で投開票の業務に携わる方々、ご苦労様に存じます。

〇それにしても、高市内閣の支持率が高いからと言って、選挙で勝てるとは限らない。高市ファンの人たちは、ホントに選挙に行くんだろうか。あるいは、「自分の選挙区の自民党候補者に投票することが、高市さんを助けることになる」と正しく理解しているだろうか。これは結果に聴いてみなければわかりません。

〇内閣支持率調査については、下記の論考が面白いです。いちいち納得です。


●菅原琢の政治分析 内閣支持率は必ず下落する(2026.1.8)


*メディアはパーセントを温度か何かと思っている
*日ごろから内閣への支持・不支持を決めている人は多くない
*内閣発足直後は不支持を留保しているだけ
*高支持率は下落のサイン
*いい加減な世論調査報道が世論の邪魔をする


〇あんまりいい予感はしませんなあ。イランでは反政府デモが広がって、ハメネイさんの体制に動揺が広がっている。今年はホントに何が起きるかわかりませぬぞ。


<1月12日>(月)

〇この3連休は全国的に天気が荒れる、北の大地はふぶくぞ、飛行機は飛ばんかもしれんぞ、と脅かされていたので、本当は今日の午後便に乗る予定だったのだけれども、慌てて午前の便に替えたのである。

〇ところがお昼に新千歳空港に降り立ってみると、何と言うことぞ、晴れているではないか。雪もそんなに積もってはいない。な〜んだと拍子抜けする。まあ、これで明日の仕事でご迷惑をおかけする怖れはなくなったのだが。

〇あ、ちなみに明日の講演会は、17時15分から北海道大学学生交流ステーション大講義室(111教室)であります。リアルだけで、リモートはありませんので、誤解なきようにお願いいたします。

〇1年ぶりに訪れた札幌市内は、あちこちでビルの建て替え工事が行われている。1972年の札幌冬季五輪に合せて出来た建物が多いので、さすがに半世紀たっているし、耐震基準なども変わっているので致し方ないとのこと。それでも、五輪誘致が消えたのはさすがに痛いのではないか。

〇と思ったら、札幌市はこの間に「eスポーツの聖地」を目指している。旧札幌ドーム、現在は「大和ハウス プレミストドーム」において、Apex Legends Global Series Championship なる大会を開催するとのこと。去年は大阪万博だったけれども、今年は名古屋市が9月にアジア大会を開催するし、横浜市は来年グリーンEXPOを開催する。こういう都市間競争は、これからますます熱を帯びるのではないでしょうか。

〇さて、ホテルについて荷物を預けるも、まだ部屋の準備はできてはいない時間帯である。だったら時間を有効活用するためにも、行くしかありませんな。いざ、札幌競馬場へ。今日はシンザン記念なのである。

〇札幌競馬場のパークウインズは、地元ファンで結構な人出であった。でもワシはちゃんと飛行機の中で、200円の指定席を買ってあるのだ。外は小雪がちらつく中で、中山と京都のレースを検討する。場内はレースに合わせてときどき歓声が起きる。いやあ、いい雰囲気ですなあ。

〇まあ、しかしこういう遠征をやったときは、得てして馬券は当たらないものである。シンザン記念、サンダーストラックなんて、まったく眼中にありませんでしたがな。昨日のフェアリーステークスもとんでもない大荒れ馬券だったし。

〇去年の三歳馬はミュージアムマイル、マスカレードボール、クロワデュノールとまことに豊作で、「最強世代」なんて声も上がっている。それに比べると、今年の三歳馬はどうも不作であるのかもしれない。クラシックレースで期待したくなるような馬が今のところ見当たりませんなあ。

〇馬券を外すとなると、急に帰り道の寒さが身に沁みるのである。いや、実際に気温が低いのである。当地は最高気温が零度に達しないそうですので。ところで飛行機の中で、『ザ・ロイヤルファミリー』の原作を読み出したら、これがまことに面白いのである。うーむ、これはドラマも観なければならんだろうか。競馬を盛り上げることも、北海道にとっては重要なことではないかと思料いたします。


<1月13日>(火)

〇朝は普段と同様に「モーサテ」とともに起きるのであるが、北海道は寒いのである。ホテルの外はしんしんと雪が降っている。

〇この雪の降り方は、かつて知ったる北陸の雪空とはまったくの別物である。ワシは富山の子なので、ちゃんと折り畳み傘を持ち歩いているのであるが、この雪の中を傘を差している人はほとんどいない。それよりは、ダウンジャケットのフードをかぶって歩く方が得策である。あまりにも寒いので雪が溶けないのである。

〇午前はNHK札幌支局にお伺いする。巨大なオフィスである。中に居る人たちも半端なく多い。この人たち、これから2月の総選挙の取材をすることになるかもしれないのだが、広大な北海道、そして厳冬の季節の投票所に詰めたり、選挙カーを追いかけたり、出口調査をやったりすることになるのだろうか。しみじみお疲れ様としか言いようがない。

〇冬の総選挙は1990年以来であるから、36年ぶりのことになる。ということは、選対本部でも投票所でも取材陣でも、冬の選挙のノウハウは途絶えているだろう。おそらくは「久しぶりにやってみたけど、二度と御免だ」という結論になるんじゃないだろうか。知らんけど。

〇午後からますます雪の勢いは増してくる。いや〜、これでは明日の飛行機はちゃんと飛んでくれるんだろうか。いや、その前に、北海道大学での講義を皆さん、聞きに来てくれるんだろうか。家に帰れるかどうかわからん状態で、ワシだったらこんな日は義理を欠いてでも早めに帰るけどなあ。

〇蓋を開けてみると、大勢の聴講者にご来場いただいたし、3年連続で活発な質疑もいただきました。ありがたいことでありまする。こういうことが楽しみで、いつもやっておるわけでありまして。

〇夜になったら雪は小降りになっておりました。たぶん明日の飛行機は飛んでくれるでしょう。いや、そうでないとワシが困るのでありますが。札幌はつくづくいいところなのであります。


<1月14日>(水)

〇今日は小樽に住んでいるM君を訪ねていく予定であった。ところがその前にM君は東京で仕事があって、昨日のうちに帰ってくる予定であったところ、なんと悪天候でJAL便が欠航になってしまい、昨晩は急きょ羽田近辺に泊まったとのこと。

〇うまく落ち合えるかどうか心配だったのだが、幸いにも朝一番の新千歳行きがちゃんと飛んでくれて、札幌駅で小樽行きの快速エアポートライナーで無事に落ち合うことができました。よかった、よかった。そのまま一緒に小樽市へ。

〇昨年夏に北海道に行った際に、ワシはこんな駄文を書いておる。当時はわりと評判になったんじゃないかと思う。


●「海鮮丼ランチがなんと1万2000円!!」北海道のニセコで考えた<日本で「外国人恐怖症」が蔓延する理由>


〇ところがこのコラム、冒頭の写真(編集F氏が撮ってくれた)と、北海道民であるM君からのメッセージによって、きわどく成立する内容となっている。というか、M君のアイデアがなかったら、こんな風には書けなかった。そういう恩義があるので、そのうち小樽に行くから一緒に鮨でも食おう、という約束になっていたのである。

〇かくして海が近く、日中でも零下8度の小樽市内で、会社の元同期であるM君と鮨を食うのである。20代で知り合った同士だが、それぞれにいろいろあって、今はともに60代になっていて、会社はリタイア済みである。それが昔話をし、仲間のことを語らい、ついでに孫の自慢もするのである。

〇少林寺拳法の達人であり、かつては社内でも「武闘派」と位置づけられていたM君なのであるが、その後は小樽商科大学で修士課程を卒業し、現在は晴耕雨読の日々を過ごしていて、今では完全に「北の哲人」である。とりあえず、彼の読書録はちょっとしたものだと思う。

〇M君は元ロシアンスクールである。1991年のソ連邦崩壊と1998年のロシア国債デフォルトは現地で体験した。「そのうち3度目があるな」とのこと。それは確かにありそうなことだと思う。たぶん、まだわれわれが生きているうちにね。


<1月15日>(木)

〇都内にいるときは、ダウンジャケットの前をいちいち締めたりはしない。そこまでしなくても用は足りるのである。ところが北海道では、外に出る前にちゃんとジャケットを着こんで、喉元までジッパーを上げておかないと危うい。中と外で、気温差があまりにも大きいのである。

〇雪道を歩くときに、ビジネスシューズはもってのほかである。だからウォーキングシューズで出かけたのであるが、もっと頑丈なブーツを履いている人を多く見かけた。あんなの、内地じゃ売ってませんがな。準備を怠ることは恥ずかしいが、準備し過ぎて恥ずかしいということはない。

〇手袋もなるべくしておいた方がいい。なんとなれば、足もとが凍っていて滑ったときは、とっさに地面に手をつかねばならない。そういうときに素手だと、ついひるんでしまうことがある。それは大けがのもとである。

〇ほんの二泊三日を冬の北海道で過ごしただけで、その程度のことは理解するのである。ところがが、戻ってきたらすぐに忘れる。人間ってつくづくそんなもんである。安全保障にかけるコストがあほらしく思えてくる。用心深い人間になるためには、ときどき痛い思いをしなければならない。あるいは、なるべく冬に北海道を訪ねるべきである。

〇それにしても、本当に地球温暖化が進んでいるのであれば、冬はもう少し暖かくなってもいいのではないかねえ?


<1月16日>(金)

〇今日は澤昭裕さんの没後10年ということで、こんなシンポジウムがありました。


●次世代電力システムへの道と原子力 基盤再構築に向けて 〜澤 昭裕氏 没後10年に考える


〇澤さんに最初にお会いしたのは、2009年8月の「朝まで生テレビ」のパネリストとしてだった。気候変動問題がテーマで、正直、そんなに詳しいわけじゃないので、「弱ったなあ〜」と思いながら登壇したのであるが、ここで出会った澤さんと東電OBの桝本さんとのお付き合いは、その後も長く続いた。澤さんは既に経済産業省を辞めて家業を継いでおられたが、この問題に関してはダントツに詳しく、とても現実的なスタンスであり、なおかつとってもいい人であった。

〇それから2011年に震災と福島第一原発の事故があり、当溜池通信でも真面目に電力について取り上げるようになった。ごく自然に、澤さんとはいろんなところでご一緒するようになった。「呑み」の席も多かった。澤さんは新しい店を開拓するのが好きで、「やはり『ぐるなび』よりも『食べログ』の方が信用できるなあ」などと言っていた。ご一緒するたびに、エネルギー問題に関する知見を共有していただいた。今から思えばあれは貴重な経験であったなあ。

〇どこかの媒体で、一緒にエネルギー問題に関する対談をやったとき、収録が終わった後にあの温厚な澤さんが突然、怒り出したことがあった。その場に立ち会っていた電力業界の人たちに対して、「君たちはそんなことでいいのか!」という怒りであった。そりゃあ原子力災害を起こしてしまったのだから、申し開きができるわけがない。ああ、この人は自分も事故の責任を感じているのだな、とそのときになって気がついた。

〇少し時間がたってから、「澤さんはやっぱり行政マンなんですね」と話しかけてみた。口に出した瞬間に、あ、俺、とっても失礼なことを言ったかも、と反省したのだが、澤さんは「え?そうかなあ」と、別に怒ったわけではなさそうであった。監督官庁と業界というのは、しみじみ難しい関係なのだということを学習した(監督が緩い商社業界に永年居たもので、そういう基本的なことが分かっていない)。

〇澤さんは膵臓癌で、2016年1月16日に逝去された。まだ58歳であった。ちょうどワシが台湾に行って、総統選挙を見物していた時である。帰ってきてから澤さんが亡くなられたと聞いて、ああ、お通夜に行かなきゃと思っていたら、別の出張からの戻りの飛行機が遅れたかなんかで間に合わなかった。あの頃のワシは元気だったなあ。

〇今般、澤さんの没後10年を機に、公益事業学会、日本原子力学会、電気学会という3つの学会が共同でシンポジウムを開催した。純粋に澤さんの人望がなせる業である。そのこと自体が、一種の奇跡ではないかと思う。会場の日経ホールには、澤さんにお世話になった方が大勢見えていた。

〇冒頭のあいさつをしたのは、澤さんの一番弟子である竹内純子さんである。当然ですな。竹内さんに、「会社を離れて独立しましたよ」と声をかけたら、「ご同業にようこそ」と返されてしまいました。いえね、当方はまだ始めて3か月なんですけど、自営業ってとってもいいなあ、と思い始めているところなんです。


<1月17日>(土)

〇本日は「日経サタデー ニュースの疑問」に出演。ゲストが田中浩一郎さんと小谷哲男さんなので、「ああ、これは勉強になるから出よう」と思ったくらいである。

〇番組の最中になって気が付いたんですが、今日の3人は岡崎研究所つながりなのである。田中さんに最初に会ったのは1995年頃の岡崎研究所のサロンであった。小谷さんは、岡崎研の主任研究員をやっていた。

〇岡崎研究所のサロンを運営していた小川彰さんは、2001年に癌で亡くなっている。岡崎久彦氏も2014年に亡くなられた。2026年になって、両人のご恩を感じているのだから、人の縁というものはつくづくありがたい。

〇ということで、田中さんのことは30年前から知っていて、折に触れてその判断を重視してきた。その田中さんによるイラン情勢の「今後のシナリオ」は、番組でも紹介された通り以下の3点である。


@デモを制圧してハメネイ体制存続

Aアメリカの軍事介入でハメネイ体制から転換

Bイラン革命防衛隊によるクーデター


〇長い付き合いに免じて言わせていただくと、今はこういう専門家の読みが外れるときなのではないかなあ、と思っている。と言って、ワシも上記3点以外のシナリオはまったく思い浮かばないし、間違ってもレザ・パーレビ元皇太子が復権したりはしないだろう。もちろんロシアの軍事介入もあり得ない。

〇今年は始まってまだ17日目だというのに、マドゥロ大統領の拘束あり、通常国会の冒頭解散あり、「中道」野党の再編あり、とビックリするようなことの連続である。イラン情勢だって、何が起きるかわからない。そういうもんだと、今から思っておいた方がいいんじゃないだろうか。

〇アメリカではすっかりベネズエラの話は「済んだこと」になっていて、イランやグリーンランドの懸念が中心になっているらしい。ドンロー(貪狼)主義畏るべし、である。


<1月18日>(日)

〇年明け早々の「モーサテ」で、ワシはこんなことを語ってしまいました。


●高市総理の2026年戦略を読む(プロの眼・1月6日)


〇要は「今年は解散はないでしょう」と申し上げたのであります。だって「議員定数削減問題」を抱えたままで総選挙に突入した場合、公明党が全部敵に回っちゃうでしょ?(今のままなら半分程度は味方でいてくれるのに・・・)というのが最大の論拠でありました。

〇そしたら高市さんは、本当に冒頭解散に打って出ることにしたようです。途端に公明党は、立憲民主党と合流する道を選びました。当方としては、「ほーら、やっぱりね」、としか言いようがありません。高い支持率を背景に、確実に勝てるはずだった選挙が、わけのわからんことになってしまいました。

〇公明党さんの内部でどういう議論があったかは知りませんが、これは千載一遇の好機だと思ったのでしょう。創価学会の集票力が低下する中にあって、「お前たち、ここまで馬鹿にされて悔しくはないのかあ!」と支持者向けに発破をかけられるわけであります。低下の一途をたどっていた党勢に、これでムチを入れることができる。つまり組織防衛のための選挙ということになる。

〇自民党内からは、「せめて3月末、予算が成立するまで待てなかったのか?」という声が洩れるところです。立憲民主党と公明党が「中道改革連合」になってしまっただけではない。補正予算に賛成してくれた国民民主党は、これで本予算への賛成が難しくなりました。連立相手の維新の会は、大阪ダブル選挙とかわけのわからんことをおっぱじめる始末。ここまでくると、単独過半数どころか、現有勢力維持が関の山という感じになってきました。

〇やはり考えれば考えるほど、高市さんの通常国会冒頭解散は愚策なのです。なぜ、そんなことになってしまったのか。昨年12月25日に、通常国会の1月23日召集を決めた時点では、たぶん解散するつもりはなかったのでしょう。予算審議の日程があまりにも苦しくなりますからね。「年末年始のどこかの時点で、高市さんが考えを改めた」というのが自然な読み筋となります。

〇何が起きたのか。ひとつは統一教会の内部文書が韓国で公表され、自民党議員への選挙支援の実態が明るみに出たこと。もうひとつは、高市氏自身の政治資金問題です。下記のニュースはかなり根が深そうで、たぶん通常国会の予算委員会では、高市さん自身が厳しい追及を受けることになりそうです。


●首相の答弁、実態と乖離 支部から個人へ6千万円超(共同通信・1月8日)


〇つまり、「今回の解散は『攻め』ではなく、『守り』の解散なのだ」と考えると辻褄があってきます。衆議院選挙で自民党が単独過半数を取れれば、総選挙後の第2次高市内閣において、予算委員長の首を挿げ替えることができる。実は安住委員長(→後記:枝野委員長の間違いでした。失礼しました)をクビにするための解散なんじゃないの?ということになります。

〇明日の記者会見において、高市首相はそれなりの解散の大義を述べることでしょう。それが説得力のあるものになるかどうか。すべてはそこに懸かってくるでしょうね。うまく語れば自民党は大勝する。下手すりゃ政権交代まであるかもしれない。世紀の記者会見となるでしょう。

〇さらに頭が痛いのは、与野党がこぞって「消費税の食品非課税」を公約しかねないこと。「ドンロー(貪狼)主義」で世界が大揺れの中にあって、この国はなんちゅう「丸ドメ」選挙をやろうとしておるのか。まあ、今に始まったことではないので、それは言っても詮無いことと承知をしておりますが。

〇とはいえ解散となれば、2月にイタリアで冬季五輪をやっている最中の選挙戦となります。北国の皆様におかれましては、なるべく天気のいい日に期日前投票をなさいますように。悪天候の中を突いて、わざわざ無理をして出かけるほどの値打ちはないように存じます。


<1月19日>(月)

〇今日はIMFのWEO1月版が公表されました。日本語版にリンクを張っておきましょう。


●世界経済:さまざまな力が働く中、安定的に推移


〇パッと見ただけですが、予想通り上方修正ですね。貿易政策の逆風をAIによる技術革新が相殺する、というのが全体感です。そんな中で、日本経済は1.1%(25年)→0.7%(26年)→0.6%(27年)と低成長が続くことになっている。

〇さてさて、これをちゃんと読み解かねばなりませぬ。明日は大阪に参りますので、新幹線の中で読むことにいたしましょう。今週は高松にも行くんですが、本当に溜池通信が出せるのか。ちょっと心配になってきた。

〇そうそう、解散前日の1月22日はWBSに出演です。何を言ってやろうかしらん?


<1月20日>(火)

〇今日は大阪へと日帰り出張。池田泉州銀行グループ&自然総研さん2026年TOYRO新春セミナーで講師を務めました。帰りの新幹線車中にてこれを書いております。

〇新大阪駅への往復は慣れたこととはいえ、あらためて感じるのは「のぞみ」の片道2時間30分はそこそこ長いのである。PCを持ち込めば仕事もできるし、読書するにも環境は悪くない。ちゃんと目的意識を持っていれば、そこそこ有意義な時間を過ごせるはずである。

〇ワシは大阪経済大学の客員教授を引き受けてしまったので、今年4月から7月にかけて15週間、大阪に通わねばならない。考えてみれば、結構な試練であるかもしれない。幸いなことに大阪経済大学は大阪市東淀川区にあり、キャンパスが新大阪駅から割と近い。摂津の国の範囲内であるから、いちいち淀川を越えなくてもよいのである。

〇せっかく会社を離れたんだから、今までやったことがないことを始めてみたいと考えたのである。2000年代生まれの学生さんたちと向き合う経験は、前期高齢者に仲間入りしたワシにはきっと刺激的であるに違いない。大学って、面倒なこともいっぱいあるみたいなんですけどね。

〇ところで大阪では、これからダブル選挙が行われる。ほっといても来年4月に任期を迎える府知事と市長が、わざわざ辞職して再出馬する。「大阪都構想」をもう一回公約することが目的であるらしい。なんかもう「中二病」みたいに思えてしまいますが、これはこれで彼らなりの「筋」なのでしょう。

〇ひょっとすると、対抗馬が立たずに無投票当選になる可能性があるらしい。自民党としては、今さら連立相手に喧嘩を売る理由はなく、野党も下手に戦って「どうだ!参ったか」と言われるよりは、むしろ不戦敗にしておいた方が後々有利になるかもしれない。そもそも選挙するとカネもかかるし。

〇かくして高市自民党と維新の会は、やたらと「気合ワード」を発しつつ、賑やかなことになるらしい。知らんけど。


<1月21日>(水)

〇今日はLINEヤフーの方とランチしたのですが、教えてもらってとっても驚いたこと。

〇LINEの画面の下にある右側から3つめのボタンに「AI」と書いてある。ここを押すと、「AIトークサジェスト」が出てくる。この中にある「返信を提案」を押してみると、前後の会話をAIが読み込んで、ふさわしいお返事の「文例」が出てくるのです。こんな機能があるの、全然知らんかった!

〇なおかつ驚いたのは、ワシの「日商岩井84年入社同期」というサークルで、AIに提案を求めてみたら、「おおきに、動画ありがとう!後でじっくり見てみるわ〜」というお返事例が出てきた。このサークルは関西人が多いので、ちゃんと関西弁になっているのである。

〇いやあ、恐ろしい。AIはどこまで進化してしまうのか。そのうち「適当に返事しておいて」と頼むと、全部お任せできてしまうのかも。しかしそれでは本当に人間が不要になってしまう。こんなことしていていいのだろうか?


<1月23日>(金)

〇今週は毎日、どこかで講演会をやっている。本日は高松市へ。今日で国会が冒頭解散ということで、高松市内ではフライング気味の演説カーが走っていたりする。「気分はもう選挙」ですな。

〇前後の空き時間にちょこまかとPCを開けて作業し、「溜池通信」の本日締め切り分を完成させる。そのまま高松空港の有料待合室にてHPにアップしました。ああ、しんど。

〇てなことで、今回は観光の余地はまったくなかったのですが、昨年1月に当地に来た時に噂になっていた「あなぶきアリーナ」はちゃんとオープンし、好評を博しているそうです。これが「香川県立」であるというのは、箱モノとしてはちょっとした快挙じゃないかと思います。、

〇それから2027年には、直島と高松にマンダリンホテルが開業するのだそうです。瀬戸内海は現代アートの聖地ですからね。直島に行ったのは10年以上前のことですから、これはもう一度行ってみてもいいかもしれませんねえ。

〇ちなみに本日の解散については、以下のインタビューをご参照ください。かなり遠慮のないことを言っております。


インタビュー:「逃げの解散」、金利上昇続けば路線変更も=溜池通信・吉崎氏(ロイター、1/23)


<1月25日>(日)

〇しかしまあ、世の中にはお馬鹿な人がなんと多いことか。

〇消費税減税の財源を、政府ファンドで作ると言っている政党がある。今の日本は巨額の住宅ローンを背負った家計のようなもの。今までは低金利のお陰でバレなかったけれども、これからはどんどん金利が上がって返済に苦労するはずである。新たに投資をしてリターンを目指すよりも、少しでも借金を返済しておく方が家計としては賢いはず。なぜ、政府レベルになると皆が勘違いをするのだろう。

〇「そもそも緊縮財政が『失われた30年』を招いた」などと言っている阿呆もおる。これだけ財政赤字を作っておいて、今の日本のどこが緊縮なのだ。「不甲斐ない日本経済」の犯人はいろいろあるけれども、少なくとも財政当局が主犯だった、ということはないと思うぞ。誰かを断罪してそれで景気がよくなるのなら、こんなに苦労はしませんって。

〇しかしまあ、貧すれば鈍するというか、総選挙を控えて慌てて与野党が消費税を下げる公約を競い合っているという現実がある。借金してでも「危機管理投資」をやらねばならない、という理屈ならばまだしも、食品消費税を減税した場合は後には何も残らない。こんな政治に国民が騙されてしまうかも、と思うと片腹痛い。日本の有権者は、もう少しレベルが高いと思っていたのだが。

〇そんな中で少しだけホッとさせられるのは、内閣支持率の「高いうち解散」はあんまり意味がなくて、大事なのは政党支持率の方ですよ、と言っている下記の分析である。


●高い内閣支持率という幻覚が引き起こしたリセマラ解散(菅原琢の政治分析)


〇今度の選挙、たぶん自民党は比例ではあまり得票できない。野党が乱立してくれるお陰で、小選挙区では漁夫の利を得る可能性がある。ただまあ、今度の解散は世間的な評判が悪いので、どうなるかわかりませぬぞ。お金はとっておけるが、人気はある瞬間から急に消え去ることがある。それもほんの一瞬でね。


<1月26日>(月)

〇この週末から「レートチェック」、という言葉が盛んに飛び交っている。具体的にどういう行為を指すのでしょうか。どうもこんな感じらしいです。


●通貨当局:ドル300本プライス下さい。

●外為デスク:×××円××〜××銭です

●通貨当局:@"MINE!"(買い)→買い介入、A"Yours!"(売り)→売り介入、B"Nothing"(じゃあ、いいですぅ〜)→レートチェック


〇要するに実弾が動かなくても、その筋の方が銀行に電話をかけただけで、こんなに相場が動いてしまう。それも米財務当局さまが動くと、効果は絶大な模様です。片山財務大臣はダボスでベッセント財務長官に叱られ、なおかつ途方もない借りを作ってしまいました。

〇しかも、それで一件落着ではないのです。今週末、1月30日になると「つなぎ予算」が切れてしまうのです。幸いなことに、現在は2026年度予算が下院を通過していて、後は上院が認めてくれればそれで"Done!"になるのです。ところがこの週末に、またまたミネソタ州でICE職員が発砲して、当人は正当防衛だと言っているのですが、どうやら丸腰の民間人を撃ってしまったらしい。現地はもう大変な騒ぎです。

〇これで上院民主党が態度を硬化させている。どうなるかわかりませぬぞ。これでこの週末、またまた政府閉鎖になって、米財務省の動きが止まった状態で、投機筋が一斉に円売りに動いたらどうなるのか。われらが財務省は、孤独な戦いに出ざるを得ないのでしょうか。

〇かくしてお馬鹿な政治家を選ぶと、国がどんどん貧しくなっていくのであります。当人たちは、いいことをしているつもりなんでしょうけどねえ。


<1月27日>(火)

〇先週末、アーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』(新潮文庫*新訳版)を読んでいた。北の哲人ことM君が、「ひとが老いに抗う物語」だと言っていたからである。

〇若い頃に読んだ時は、そんなことはつゆほどにも感じなかった。カリブ海を舞台に繰り広げられる、カッコいい老人の冒険物語だと思っていた。ところが自分が今のような老境になって読み返してみると、なるほど違う物語になってしまうのである。

〇『老人と海』は、ピュリッツァー賞とノーベル文学賞を得た傑作である。筋書きはほとんどの人が知っているだろう。名作というものは、いろんな読み方ができるものであって、なるほど60代になって読んでみると、「ああ、わかる、わかる」ということがたくさん出てくる。

〇老いた漁師、サンチャゴは、自分の肉体がもうピーク時を過ぎてしまっていることを知っている。昔のような剛速球は投げられないが、それでも打たせて取るコツは知っているベテランのピッチャーのようなものだ。海で漁をしてきた長いキャリアがあるから、戦うためのノウハウを持っている。

〇だから老人は冷静である。腹が減っていなくても、ここは何か食べておかなきゃいけないとか、思い通りに動いてくれない自分の左手が、いつ頃、どうやったら回復するかもわかっている。そうやってだましだまし、巨大な獲物に立ち向かう。

〇老人は格闘の末に、巨大なカジキを仕留める。ところがせっかくの獲物は、サメたちの狙うところとなり、港に戻る前にあらかた食いつくされてしまう。せっかくの成果はすっかり無駄になってしまう。そうなのだ。人が老いるというのはそういうことなのだ。最後は必ず敗北に終わることがわかっているのに、最後まであきらめずに歯向かい続ける。

〇また、老人は船の上で孤独な戦いを続けながら、ああ、少年がここに居てくれれば、と思っている。教える相手がいる、ということは素晴らしいことなのだ。少年は素直に老人を尊敬している。老人の一挙手一投足から、いろんなことを学んでいる。しかし同時に教える側も、また何かを得ている。自分が人生で獲得した何かを、誰かに与えることができる者は幸いである。

〇・・・という、物語は良いのである。愕然としたのは、本書の解説文を読んだときである。この小説を書いた時のヘミングウェイは51歳。老いの兆候はあったものの、既に何人目かの妻が居て、子どもも居て、だのに20歳のイタリア娘、アドリアーナに恋していたのだそうだ。そしてこんなことを嘯いていたという。


「いちばん筆が進むのは恋をしている時だな」


〇いやもう、かないません。この完成原稿を最初に読んだのは、ヘミングウェイのメアリー夫人であった。そしてこう言ったという。ここまで書けたのなら、これまでのひどい仕打ちを全部許してあげてもいいわ、と。

〇老いに歯向かう究極の手段は恋愛なり。まあ、凡人には及びもせぬ境地ではありますが、そういう心意気が世の中に存在するということは、覚えておきましょう。うーむ、やっぱりパパはカッコいいのだなあ。


<1月29日>(木)

〇本日は読売と日経が衆院選序盤情勢を報道。実は両紙は、情勢調査を一緒にやっているという噂も聞く。両紙の見出しを比べてみるとこんな風になる。


●一面

<読売> 自民、単独過半数うかがう 中道伸び悩み 国民横ばい、参政大幅増

<日経> 自民、単独過半数の勢い 中道、議席減の可能性 維新・国民振るわず 参政・みらい、比例で伸長


●二面

<読売> 「高市人気」自民勢い 中道「公明票」見通せず 比例 自民大幅減 中道、維新は苦戦

<日経> 自民に保守層回帰 参政と競合の小選挙区7割で「有力」「優勢」 中道、北海道・東北「有力」ゼロ 公明票の影響見えにくく


〇なるほど、確かに同じような感じですな。今後は朝日新聞NHKのサイトがどう書くかが気になるところです。

〇今朝の読売新聞本紙が、「小選挙区・比例の序盤情勢」を載せているので、ついつい熟読してしまう。こういうときは、やっぱり紙に限りますな。私が知ってるあの人は、この人はどうなっているのか。いろんな表現にドキッとさせられます。

〇2024年の衆院選も、例の「2000万円配布問題」が浮上するまではこんな感じだった。「小選挙区5割接戦」(日経)という観測もあるので、まだまだ先はわからないと考えておくべきでしょう。ただし、両紙の報道を見てちょっとだけ拍子抜けした感はありますな。


<1月30日>(金)

〇本日は溜池通信の締め切り日ではなく、東洋経済オンラインの原稿も昨夕、つつがなく提出しておるので、心置きなく過ごせるはずの金曜日である。

〇しかるに朝から試練が到来。常磐線が止まってしまって、柏から北千住まで行くのに1時間を要するという難行苦行でありました。停電が原因とのことなので、いろんなところで古いインフラにガタが来ておる様子であります。大消耗ですなあ、ご同輩。

〇本日は(一社)経済倶楽部での講演会である。東洋経済新報社の外郭団体でありまして、東洋経済さんには本誌でもオンラインでも昔からお世話になっている。経済倶楽部への登壇も通算すると結構な回数になるはずだが、本日は4年ぶりでお呼びいただきました。

〇演題は「6年目のトランプ政権〜金融・外交・内政の注目ポイント)である。でまあ、いつものようなお話をするのである。数えてみたら、今月14回目の講演会である。われながら、どんだけやっておるのか。と言っても、日に日にトランプさんがやることは過激化しているので、どんどん中身を変えていかなければならない。そういうことに慣れてしまっている自分がコワい。

〇この会は毎週土曜日の午後1時から始まって、講演が1時間と少々で後は質疑応答となります。本日は質問が途切れずに、なんと2時半までやっておりました。気分はほとんど「K点越え」ですな。

〇東洋経済さんでは、来月は創刊130周年を記念する「みらい経済会議」なんてのもありまして、会田弘継さんとご一緒に「グローバルの潮流」を語る予定であります(エントリー募集中です)。話し出したら止まらなくなる会田さんに、不肖かんべえがどうやって割り込むか。何か作戦を考えねばなりませんな。








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki