<2月1日>(日)
〇最近の小ネタから。
〇その1。今年は厳冬で、豪雪地帯ではクルマの運転に苦労する話をよく聞きます。実は首都圏でも、商業車はスタッドレスタイヤに替えていることが多いので、道路が削れて「飛び石」が起きやすくなっているそうです。
〇道路を走行中に、車体に石がぶつかる「飛び石」。あれでフロントガラスを直撃されたりすると厄介です。最近の自動車部品は高品質なので、滅多なことでは割れないそうですけど、いざ直すとなると高くつくし、保険を使うかどうかも悩ましいところ。くれぐれもご注意を・・・と言っても、あれはなかなか避けられるものではありませんけどね。
〇その2。最近は新橋駅を使うことが多くなって、構内を通るたびに「あれって何だろう?」と思っていたのが、「カプセルトイショップ」である。要は「ガチャガチャ」をJR東日本が売ってるわけでありまして、秋葉原店などもあるんですね。
〇最近の「ガチャ」は本当に種類が増えていて、実は「第5次ブーム」が訪れているのだとか。「大人買い」をする人が増えていて、外国人観光客にも受けているそうです。考えてみたら、場所は取らないし、売り子は要らないし、宣伝はSNSで勝手に広がるし、現金商売だし、「売れ筋」がすぐにわかるから、なかなかに効率がいいビジネスですなあ。
〇その3。20代の頃から通っている赤坂の土佐料理「祢保希」(ねぼけ)。ここのクエ鍋というものを、初めて食べました。クエはスズキ目ハタ科でマハタ属だそうですが、幻の魚とも言われておりまして、確かに実物をみた記憶はありません。身がでっかくて、骨もぶっとくて、出汁がよく出てまことに美味でありました。
〇「クエとフグはどちらが旨いか」とはよく出てくる話であります。確かにフグはポン酢の味で食べているような感じになるけれども、クエは身自体に甘味があって、鍋比べならクエが上だと思いますな。ただしフグは一種の総合芸術みたいなところがありますから、ふぐ刺しや白子も含めてどうだ、と言われるとこれはまた勝負にならんわけでして。
〇その昔、とある場所で、「これ内緒だからね、書いちゃダメだよ」と言われて食べたフグの肝が、とっても美味だったことを突然思い出しました。いかんですねえ。
<2月2日>(月)
〇いろんな人の訃報が続きます。
●モーリー・ロバートソンさん(63歳)・・・ほぼ同じ世代の富山県関係者なので、いつかどこかで会うだろうと思っていたのに、一度もお目にかかることなく亡くなられました。会えば、きっと共通の知人や話題が一杯見つかったことでしょう。とりあえず、10代の頃に立山連峰を見ていたことだけは共通しているはず。
死因は食道癌というから、ぐっちーさん、山崎元さんと同じ。よくよく気を付けなければいけません。要するになかなか気づきにくく、なおかつ転移しやすい癌なのですね。胃カメラ検査、またやっておこうと思います。
●長谷川和彦さん(80歳)・・・監督として世に送った『青春の殺人者』(76年)『太陽を盗んだ男』(79年)は、いずれも素晴らしい映画でした。前者は何と30歳だった時の作品なんですな。水谷豊の演技、ゴダイゴの曲とともに細かい部分まで覚えています。近日中に柏シアターが遺作を上映してくれることに期待します。
これだけの才能が、その後、1本も映画を撮ることなく終わったのは、日本映画界の損失でありましょう。もっとも破滅型のキャラだったようですから、自業自得だったのかもしれませぬ。愛称が「ゴジ」でけんかっ早く、しょっちゅうゴールデン街で暴れていたとか。コンプラもパワハラもない、本当に楽しい時代でありましたなあ。
●落合信彦さん(84歳)・・・あいにく作品は一冊も読んでませんが、「インテリジェンス」なんて言葉がまだ浸透していなかった頃に、国際情勢モノで多くのファンを持っておられました。アサヒスーパードライのCMをよく覚えています。あれを見てチェチェン・イツァーに行こうと思っていたのに、まだ果たしておりませぬ。
思い出すのは当時、いしいひさいちが漫画でネタにしていたこと。落合氏がCIAがどうしたこうしたと語っていて、最後の落ちが「そこで彼らはドバイの公民館を完成させたのだ」。高野孟さんが当時、『インサイダー』で面白がっていたことを覚えています。時は流れて、今は息子さんの時代ですよね。
〇実は先月はウチの親戚にも物故者がおりまして、「ちゃんと会えるうちに会っておくべし」ということを身につまされました。合掌。
<2月3日>(火)
〇本日は茨城新聞政経懇話会で水戸市へ。
〇会場となったホテルザガーデン水戸さんの粋な計らいで、本日のお昼ご飯は「恵方巻」でした。さすがに1本丸ごとではなくて、ちゃんと切ってありましたけれども。
〇そうでなかったら、今日が2月3日であることもまったく気が付かないままに過ごしていたでしょう。お昼の講演会でランチが出る場所は多いですが、こう言ってはなんですけれども無難な箱弁当が多いです。そんな中にあって、こういう心遣いはありがたく感じます。
〇食べている最中に、「で、今年はどっちの方角を向けばいいんですか?」とホテルの方に伺いました。今年は南南東なんですね。ところが慣れない場所だけに方角がわからない。まあね、こういうのは縁起ものですから。
〇ということで、本日の講演会では「総選挙の最中だが、こんなに外交の話が出ない選挙戦でいいのかああああああ?」というお話をさせていただきました。ちょっと思考停止が過ぎてはいませんかねえ。
<2月4日>(水)
〇城崎に来ている。城崎というからには、兵庫県豊岡市の城崎温泉である。但馬地方を訪れるのはこれが初めてである。新幹線で京都駅まで来て、そこから山陰本線に乗り換えて「きのさき号」で到着する。山陰本線はここまでは電化されているが、鳥取県に向かうこの先はディーゼルとなるらしい。
〇こちらに来る途中で、志賀直哉『小僧の神様/城の崎にて』(新潮文庫)を読んできた。高校生のときに読んだはずだが、果てさてこんなに短い話であっただろうか。ちょっと意外感がある。心境小説であって、城崎温泉の情景や人物などはほとんど描かれていない。これでは何の参考にもならぬではないか。
〇『城の崎にて』という短編小説は、冒頭の書き出しが「山手線の電車に跳ね飛ばされて怪我をした、その後養生に、ひとりで但馬の城崎温泉へ出かけた」とある。そこで「自分」は生と死を見つめなおす体験をするのであるが、これは志賀直哉自身の経験をもとにしている。まことに簡潔な文体である。
〇志賀直哉が当地を訪れたのは1913年のことである。湯治は成功裏に終わり、健康を取り戻す。最後の部分で「三週間いて、自分は此処を去った」とある。その3年後に同人誌『白樺』に発表されたのが本作である。
〇城崎温泉は、629年にコウノトリが傷をいやしていることで発見されたという古い歴史を持つ。ところが1925年の北但馬地震で温泉街は全焼した。関東大震災の2年後のことである。現在の町並みはその後に再建されたものである。ワシが泊っている和風木造三階建の旅館も含めて、比較的新しいのである。
〇今の城崎温泉はインバウンドも多くて繁栄している。旅館はカニ尽くし料理が売りである。おそらく志賀直哉がこちらで3週間を過ごした頃には、カニなどを食べる余裕はなかったのではないか。果てさて、大正時代の湯治客たちは何を食べていたのだろう。誰か調べてくれませんかねえ。
〇そうそう、新潮文庫を読むときは、昔の本を探すよりは、新しいバージョンを買うといいみたいです。先日の『老人と海』もそうですが、訳が新しくなっていたり、旧仮名遣いが変わっていたりしますので。世の中は日進月歩なのでありますよ。
〇明日は神戸新聞主催、但馬政経懇話会の講師を務めます。
<2月5日>(木)
〇こちらで泊まった宿は木造三階建の由緒ある和風旅館「まつや」さんで、着いてそうそうにひと風呂浴びたのだが、内湯はさほど広くはなく、先客もおらずで独占状態であった。が、城崎においては外湯を巡り歩くのがデフォルトであって、旅館が内湯を作るようになったのは「北但馬地震」の後のことなのだそうだ。それどころか、「内湯など許すべからず」と当初は訴訟まで起きたとのこと。
〇ということで、城崎に来たからには、外湯を楽しまない手はない。本日は朝飯前に「一の湯」、朝飯後に「地蔵湯」さんを試してみました。いずれも広いです。しかも2階は休憩所が作ってあって、これがまことに贅沢な空間なのである。しかも懐かしや、コーヒー牛乳を売ってたりします。これ、若い人にはわからんだろうなあ。
〇外湯に出かけるときは、旅館の浴衣と雪駄で出かけるのが「正装」であります。朝の空気はちょっと寒いけど、まあ、思い切り温まってしまえばどうということはない。外国人観光客も多いです。
〇城崎では旅館に泊まると、「〇〇屋」と書かれたQRコードを発行してくれるので、それを使えばどこの外湯も無料で入れる。ちなみに全部で7つある外湯は、休みの日や時間帯が違ったりするので、「コンプリートしたい」と思ったらある程度、泊まらないと難しいみたいです。
〇こんな風に便利な外湯があると、地元民のおうちには「そもそも風呂がない」とか、「風呂があっても沸かすのがもったいない」ということになるらしい。もちろんおカネをかけて、温泉を家に引くこともできるらしいのですけどね。子どもさんたちが、学校帰りに「今日は××湯に集合な!」などと言い合っているそうですから、それくらい定着しているということです。
〇ところで、これから城崎温泉を訪れる方にアドバイスを一点。当地には「但馬こうのとり空港」がありまして、伊丹空港からJAL便が飛んでおりますが、欠航が多いので信頼性に欠けます。「帰りの便ならいいだろう」と思って予約を入れたのですが、午前中に欠航の知らせが来ました。今日なんて別に天気は悪くなかったのにねえ。
〇しょうがないから、帰りもJRになりまして、新幹線の中でこれを書いております。まあね、仕事ができるからこっちの方がいいのさっ。
<2月6日>(金)
〇今宵はエコノミスト有志の定例飲み会。
〇麻布台ヒルズって初めて行きましたけど、あまりにも広大で、予約のお店にたどり着くまでにヘトヘトになりました。まあ、何と言うか森ビルらしい作りでありますねえ。
〇さしたる話が飛び交うわけではないのですが、「どの政党に好感を持つか?」という話題になりましたら、圧倒的多数を占めたのが「チームみらい」でした。さもありなん。
〇はてさて、週明け、選挙後の株価と金利と為替の動きやいかに。ボラティリティが高いことだけは間違いありません。総選挙結果は市場に何をもたらすか。静かに見守りたいと思います。
<2月7日>(土)
〇対米投資第1弾が発表されました。そろそろだと思ったんだよな。中身もだいたい予想通りです。
●対米投資、第1弾はガス発電・港湾・人工ダイヤ 総額6〜7兆円で調整(日本経済新聞)
〇全体の規模は5500億ドルですので、合意ができた当初は「80兆円」と言っておりましたが、現在では「86兆円」ということになります。政治家は円安の恐ろしさを、もっと身に沁みて感じてほしいです。円安で喜ぶのは製造業の大企業と大口の投資家くらいです。生活者の視点では、「ほくほく」などとは言っていられないはずです。
〇「こんなお金があったら、日本国内で投資すべきだ」みたいな声が聞こえて来そうです。でも、今の日本にはそんな供給力はありません。どこだって人手不足で資材高騰で、ラピダスを期限内に完成させるために北海道新幹線の延伸を遅らせる、みたいなことが起きている。
〇日本企業は、単に合理的な判断をしているだけなんです。これから持続的に人口が減ることが分かっていて、なおかつ「働き方改革」も進む国の中で、新たな投資をしたところで儲かるとは思えない。なおかつ、撤退するときのコストが大き過ぎる。海外で投資する方が、ずっと条件が恵まれている上に、いざとなったら逃げ出すことができる(除く中国)。
〇今回の対米投資においては、JBICとNEXIが融資と融資保証をしてくれる。だったら企業としては条件は悪くはありません。政府の側はもうちょっと真剣に案件を精査する方がいいと思います。2つの政府系金融機関には、財投債などの形で公的資金を入れるわけですから。
〇さて、天気予報を素直に信じて、本日は期日前投票を済ませてまいりました。夜、防犯活動をしていたら粉雪が降り出しました。明日は積もっているかもしれませんぞ。
<2月8日>(日)
〇開票速報を見ておりますが、あまりに決定的な勢いに言葉を失います。与党の勝ちっぷりというよりも、野党の負けっぷりがスゴイ。
〇特に中道の負けが壮絶です。安住さん、枝野さん、岡田さん、馬淵さん、これでは旧民主党政権時代を知る幹部は、ほとんど生き残らないのではないですか。このまま行くと、野田佳彦さんは「一度ならずも二度までも、最大野党をぶっ潰した人」になってしまうかもしれませぬ。
〇公明党と合流したことによって、立憲民主党の本来の支持者が融解してしまったのかもしれませんね。考えてみたら来年は統一地方選、再来年は参院選もあるわけなんで、政界再編はますます加速していくように思われます。
〇与党がこれだけ勝ってしまうと、参議院で過半数割れしていてもあんまり関係なさそうですね。とりあえず、予算は通るでしょう。こんな風になると、国民民主党のように中途半端な数を持つ政党は、一気に埋没することになりかねません。
〇気になるのは明日の市場の反応ですが、株価は上げそうですなあ。さて、そろそろオリンピックに切り替えましょうか。
<2月9日>(月)
〇選挙の翌日は、いつもの作業をしなければなりません。比例代表の得票数の集計です。衆院は参院と違って、ブロック別の集計をしなきゃいけないから面倒なんですよねえ。今年はこういうことになりました。
| 2026年 衆院選 |
% | 2024年 衆院選 |
% | 2021年 衆院選 |
% | 2017年 衆院選 |
% | ||
| 自民党 | 21,026,139 | 36.72 | 自民党 | 14,581,690 | 26.63 | 19,914,883 | 34.66 | 18,555,717 | 33.28 |
| 維新の会 | 4,943,331 | 8.63 | 公明党 | 5,964,415 | 10.89 | 7,114,282 | 12.38 | 6,977,712 | 12.51 |
| 希望の党 | 9,677,524 | 17.36 | |||||||
| 中道改革連合 | 10,438,801 | 18.23 | 立憲民主 | 11,564,217 | 21.12 | 11,492,115 | 20.00 | 11,084,890 | 19.88 |
| 共産党 | 2,519,807 | 4.40 | 共産党 | 3,362,966 | 6.14 | 4,166,076 | 7.25 | 4,404,081 | 7.90 |
| 社民党 | 728,601 | 1.27 | 社民党 | 934,598 | 1.71 | 1,018,588 | 1.77 | 940,823 | 1.69 |
| 国民民主 | 5,572,951 | 9.73 | 国民民主 | 6,172,427 | 11.27 | 2,593,375 | 4.51 | ― | |
| 減税ゆうこく | 814,874 | 1.42 | 維新の会 | 5,105,127 | 9.32 | 8,050,830 | 14.01 | 3,387,597 | 6.08 |
| れいわ | 1,672,499 | 2.92 | れいわ | 3,805,060 | 6.95 | 2,215,648 | 3.86 | ||
| 日本保守党 | 1,455,563 | 2.54 | 日本保守党 | 1,347,392 | 2.46 | ||||
| 参政党 | 4,260,620 | 7.44 | 参政党 | 1,870,347 | 3.42 | ||||
| みらい | 3,813,749 | 6.66 | |||||||
| その他 | 13,014 | 0.02 | 42,239 | 0.08 | 900,181 | 1.57 | 729,207 | 1.31 | |
| 合計 | 57,260,009 | 100.00 | 54,750,478 | 100.00 | 57,465,978 | 100.00 | 55,757,551 | 100.00 | |
| 投票率 | 56.25 | 53.84 | 55.93 | 53.68 |
〇自民党は前回と比べて実に10%も増えました。650万票も増えたことになります。比例代表の得票数が2000万票を超えるのは、2005年の郵政解散以来の快挙です。それでは新しい650万票がどこから来たのか。その謎解きは後に回したいと思います。
〇問題は中道改革連合です。前回、わずか1年と4か月前の選挙では立憲民主が21%、公明が11%を得票していました。合計32%です。それが今回は18%になった。1足す1が2どころか、1以下になってしまった。「減税ゆうこく」の1.4%を足しても2割に届きません。今回はとにかく「中道が信じられないくらいに負けた選挙だった」ということになります。
〇それだけではありません。共産+社民+れいわの左派3政党を足した比例票は、前回は6+2+7=15%ありました。それが今回は4+1+3=8%へ半減しております。今となっては信じられませんが、共産党は2014年には600万票も獲得していたんですよ。2026年選挙は、リベラル派の総崩れということに本質がありそうです。
〇今度は右派政党を見てみましょう。参政党は得票を倍以上に増やしていますし、日本保守党も微増です。維新の会だってそんなに大きく減らしたわけではない。2024年選挙では、「自民党の岩盤保守層が他党に流れた」という解説をよく聞きました。ところが2026年選挙を見ると、少なくとも右派政党の票は減っていません。
〇ということは、今回、自民党が増やした650万票は、「岩盤保守層が戻ってきた」わけではないように思われます。というか、「そもそも他党に流れるような票を『岩盤』と呼ぶのは変じゃないのか?」というツッコミは、ここではさておくことにいたしましょう。
〇容疑者のひとつは「ニューカマー」です。今回、投票率は前回比2.4%増えております。票数にすれば250万票くらい。「今回、初めて投票に行きました」という若い有権者の票が、「高市支持」ということで自民党に流れたことが考えられます。これはいかにもありそう。
〇次なる容疑者は「センターレフト」です。国民民主党が1.5%くらい得票を減らしておりますから、この分が自民党に流れた公算は大ですね。加えて「立憲民主+公明」支持者の票も、一部は自民に流れていたのではないでしょうか。だって減り方があまりにも大きいですから。
〇公明党は今回、どれくらい真面目に選挙活動をしたのでしょうか。考えてみたら、来年4月には統一地方選挙があるのです。地方議会は自公相乗りのところが多いですよね。党中央からは「立民の候補者を支援しろ!」と言ってきたけど、地方支部が「偉い人たちはわかってねえなあ」と真面目に動かなかった可能性がありますね。
〇3番目の容疑者は「女性票」です。あいにく投票用紙には、「男」とか「女」とは書いてありませんから、男女比がどうだったのかはわかりません(出口調査などである程度はトラックできるでしょうが)。普段だったら野党に流れる浮動者層の女性票が、今回は「高市さんを応援したい」と自民に流れたというのはありそうなことです。
〇ここから先は筆者の想像ですが、高市支持者はそれなりによく理解していて、「高市さんは言動が不安定で、危なっかしいところがある」→「でも自分の考えがあって、自分の言葉で語っている」と思っている。「ほっといたら、自民党の中で埋没していくかもしれない」→「それだったら今までと同じこと」→「でも、自分が1票を投じれば、世の中を変えられるかもしれない」と考えたのではないか。こういうときに、投票行動は大きなうねりを伴うものです。
〇もうひとつだけ、触れておかねばならないのが「チームみらい」の大躍進です。ただしこの政党、今回は北陸甲信越・中国・四国の3ブロックでは候補者を立てておらんのです。だから「上海馬券王先生」のように、富山市在住で「チームみらい」に投票したかった人ができなかった。この点は惜しまれますね。
〇さて、今宵は都内で「伊藤隆敏先生をしのぶ会」が行われました。わが国の金融政策、財政政策にかかわる多くの元官僚、学者、メディア関係者などが参集されました。こういう集まりに不肖かんべえが呼ばれるのも不思議なご縁ではありますが、おそらく「高市さんのことをよく知っている」という人は誰も居なかったんじゃないかと思います。
〇逆に高市支持者から見れば、ここに集まっているような人たちこそ、「失われた30年を招いた専門家集団」ということになるのではないか。そういうお歴々と一緒になって、「消費税の減税って、ホントにできるんですかねえ?」などという話をしていたのですから、ワシも「忌むべきエリート層」の一員となるのかもしれませぬ。くわばらくわばら。
〇日本もだんだんトランプ政治みたいになっていくのでしょうか。その辺はまた次の機会に。
<2月10日>(火)
〇本日昼は定例の政治オタク放談会。一昨日の選挙結果を語り合う目的なのだが、「なんかもう、俺たち時代に取り残されちゃったんじゃない?」という自虐ネタが飛び交う。
〇そりゃそうなんですよ。今までは「もっとSNSに投入しなきゃダメだよね」みたいな技術論を語っていたのだけれど、ここまで来ちゃうともっと本質的なイノベーションが起きてしまって、ゴトウケンジさんやタサキシローさんのように、賞味期限が切れちゃったんじゃない?てな気がしてしまう。
〇昨日も某エスタブリッシュメントの方が、いみじくもこんな風にもらしておられました。
「あれだけ四方八方に迷惑をかける解散、男性だったら決断できなかっただろうね」
〇いや、そうなんです。男性はしがらみがあるから、遠慮しちゃうんです。その点、高市さんは女性だし、党内の付き合いも悪いし、「鉄の女」サッチャーを尊敬している人でもある。だから思い切ったことができてしまう。その善悪は別にして、ですが。
〇そういう理屈が全然わかっていなかった。なおかつ、有権者の反応も読めていなかった。当溜池通信にとっても、令和8年総選挙は「黒歴史」です。
〇もうねえ、恥の上塗りになるから、これ以上、国内政治を語りたくねえなあ、という気がしております。それでも語ってしまうのだから、とっても業が深いというか何というか。今日は文化放送でこんな妄言を吐いております。どうかお許しを。
●「自民党圧勝の理由は3つ」(長野智子アップデート)
<2月11日>(水)
〇総選挙の余波が続いていて、もうちょっとだけ厭世的なことを連ねておきます。
〇今回の総選挙についてネット記事を書くときは、「高市スゴイ!」と書いても読者はあんまり増えなくて、「中道はこんなに負けた。ヒッヒッヒ」と書く方が読まれるのだそうです。ネット世論というか、ネット民がどういう人たちか、これだけでも察せられますよね。
〇今日は早起きして、夕方まで原稿を書いて、なんとか5600字を埋める。明後日の講演資料も作る。その間に男子ショートプラグラムをチラ見したりする。鍵山くん、フリーがんばってね。マリニンにはきっと死角があると思うから。いやはや、オリンピックは選挙と同じように面白い。やっている当人たちが命賭けてるからだろうね。
〇高市内閣の積極財政に対する一番ふさわしい言葉は、「ジリ貧を避けんとしてドカ貧にならぬように」だと思う。これは言うまでもなく、太平洋戦争開戦直前の御前会議において米内光政元首相が語った言葉である。それでも東條内閣は開戦に向かい、結果的に日本はドカ貧に陥るわけであるが、これ、若い人には通じないのね。
〇ウチの孫たちも、ことによると「ドカ貧」の日本経済を生きることになるのかもしれんが、まあ許してくれい。この国は下々はまあまあでも、偉い人たちがあんまり賢くはないのだよ。
〇さて、嘆きモードはここまでにしておきましょう。絶望は愚か者の結論。
<2月12日>(木)
〇インフレも今年で5年目となりますと、今年の「賃上げ」がどうなるかが重要になってきます。なかなか実質賃金がプラスにならないところを見ると、いまひとつ労働組合の要求が手緩いのではないか、今年の春闘はもっと頑張らないといかんではないか、てなことになってきます。
〇今となっては古い記憶ですが、1980年代に会社の組合の役員をやっておりました。徹夜の労使交渉なんぞも体験しましたぞ。当時はまだちゃんと物価が上がっていて、賃金もそれなりに上がっておりました。まだデフレどころか、バブルになる以前の記憶です。
〇当時の組合には「生活給理論」というものがありまして、「こんな給料では、やってられない」ということにして、要求水準を決めたものでした。とはいえ、言ってる本人たち自身があまり信じていない。まあ、CPIに少しくらい上乗せして要求水準を決めましょう、みたいにおおらかな時代でありました。
〇今から考えてみると、会社側は年間の人件費をあらかじめ予算化していて、春闘の時期には「どうせこんなもんだろう」という財源しか用意していない。組合側もそれがわかっていて、「それでも、取れるだけは取ろう」と考えて粘る。最初から、ストライクゾーンは狭かったのであります。
〇なおかつ、人事部側は社長の手前、組合側は組合員の手前、「こんなに頑張りました!」というポーズは取らなければならない。客観的に見れば出来レースである。それが春闘の本質だったんじゃないのかなあ、と今となっては感じるところです。
〇とにかくこの国は、いろんなことが「4月はじまりの3月締め」になっている。だから賃上げも、1年に1回きりということになっている。ただし1年間にインフレが加速したら、春闘とは別に秋闘があってもいいだろう。あるいは複数年度の賃上げもありだろう。とにかく「年に1度のセレモニー」という形式では、大胆な変更をもたらすには向いていない。
〇もうひとつ、当時と比べるとワーキングスタイルが決定的に変わっている。今はとにかく、若い社員がどんどん辞めますから、彼らは会社の賃金テーブルへの関心が乏しい。「賃上げは転職で勝ち取ります」みたいな人たちもいますので。そんな時代には、ますます「春闘」にこだわる理由はますます乏しくなる。
〇もっとも「5年目のインフレ」ということを考えると、今から「抜本的な構造改革」をやっている余裕はないので、あるものはとにかく使わねばならない。参加率が低くても、若い社員の関心は低くても、ないよりはマシである。あと1か月くらいで、集中回答日がやってくる。
<2月13日>(金)
〇この2日間、3か所で「ドンロー主義」のお話をする。
〇「モンロー主義宣言(1823年)の延長線上に、ペリーの黒船来航(1853年)があった」というのは、興味深い指摘だと思う。勝海舟や福沢諭吉は文字通りアメリカを「仰ぎ見た」わであるが、フロンティアに乗り出していったアメリカは、結構えげつないことをいっぱいやっている。日米関係は、「西から」見たときと「東から」見たときではずいぶんと姿を変えるようである。
〇たまたま本日、前嶋和弘先生から『現代アメリカ政治外交』をご恵送いただいた。第1章の「日米関係」をしみじみと拝読しました。本書は編著ですが、アメリカ研究の若い俊秀が育ってきているのだなあ、と感じるところです。
〇そうそう、日本経済新聞が前号の溜池通信を取り上げてくれています。
●3月日銀利上げへ「外圧」も 日米首脳会談が決定会合直後に 編集委員 清水功哉 (2026年2月10日
17:00)
溜池通信の吉崎達彦氏も首脳会談で米側が求めるであろう項目のひとつとして「財政健全化と長期金利の安定」を挙げ、「米国としては防衛費以外の日本の歳出増は認めがたい」と指摘する(6日号のリポート)。そこで重要になるのは、日本の過度のインフレ懸念を背景とした望ましくない為替・金利の変動を防ぐため、日銀の金融政策正常化も適切な形で進んでほしいという考えが米側にかねて強いことだ。
〇これから先、3月19日の日米首脳会談に向けて、この辺が今後の市場の注目点になっていくでしょうな。
<2月15日>(日)
〇今日は府中競馬場へ。武蔵野線で行くととっても遠いのだが、いつも行く中山競馬場と違ってとっても豪勢であり、若いお客が多くて、繁栄している。「これぞ経済大国!」と胸を張って言える景色が広がっている。なにしろ昨今の競馬は成長産業ですので。
〇しかもわが国競馬界は、本日未明に快挙を成し遂げている。世界最高賞金のサウジカップで、日本のフォーエバーヤングが連覇を達成したのである。いやあ、日本馬は強い。そして藤田晋オーナー、矢作調教師、坂井瑠星騎手は、まさに「黄金のトリオ」というべきではあるまいか。イエィ!16億円ゲットだぜ!
〇つまり競馬は産業として伸びているだけでなく、日本馬の実力も伸びている。この原動力は何かといえば、ファンが多くて熱いことにある。ちょうど冬季五輪において、なぜ日本の男子フィギュアが強いかと言えば、羽生結弦選手の永年の活躍のお陰で、「フィギュアスケートを熟知するとっても熱いファン」が育ったから、というのと似ている。
〇逆に言えば、ファンが多くない競技は選手が強くなれない。同じスキーでも、アルペン種目は押しなべて弱く、ジャンプはみんな大好きである。1972年の「日の丸飛行隊」で味をしめて、1998年の長野五輪「原田の失敗ジャンプ」というドラマを味わったお陰である。ジャンプでは今後も才能が誕生するはずである。
〇ということで、競馬界は繁栄を遂げているのであるが、この世界でどうしても欠かせないのは「馬主」さんたちである。長い目で見たら絶対に儲からないはずのこの仕事に、なぜか他の世界で功成り名遂げた人たちが次々に入ってきて、「名馬」のオーナーたらんとして散財してくれるのである。そのお陰でファンは、長く競馬を楽しんでいるわけでありまして。
〇この辺の事情は『ザ・ロイヤルファミリー』に描かれている通り。馬主さんは高度な道楽であるとともに、孤独な戦いでもある。多くの人の協力、特に家族の支えがなかったらやっていけない。本当にご苦労様です。今日はいつもの編集F氏とともに、馬主席で過ごしたこともあって、馬主さんたち高度な犠牲精神に思いをはせてしまいました。
〇で、今日の戦績はって? もちろん負けましたよ。博打はね、負けて帰るときがいいんですよ。帰りの武蔵野線はとっても長く感じるのでありました。
<2月16日>(月)
〇今日は朝食会と昼食会で実り多い情報交換をし、ルーティーンの情報源に接してインプットの一日。少し先に締め切りはあるけど、まだ考えなくていい。ああ、ホッとする。
〇明日からはまた連日講演会やら何やらでアウトプットの日々なので、こういう一日は貴重であります。あ、今日はQEだったのか。忘れてたよ。どれ、明日にでもチェックしよ。
<2月17日>(火)
〇本日は財務総合研究所の「中国研究会」に呼ばれて財務省4階に出頭する。1993年から続く研究会で、ワシも以前は良くこのHPからネタを仕込んだものである。しかも現メンバーは、半分以上が古くから知っている(お世話になっている)方々である。こんな恐ろしいところで、いったい何を話せばいいというのか。
〇と嘆いていてもしょうがないので、いつものように「ドンロー主義」のお話をさせていただく。基本的にトランプ政権に関する話は「トランプ占い」になってしまうので、「われながらいい加減なことを言っておるなぁ」という気もするのだが、そうは言ってもこれが現下の世界の関心事であることも間違いない。
〇ということで、いろいろ刺激を受ける2時間でありました。ありがたいことであります。
〇思うに米中関係は、今年は安定の1年になるのでありましょう。だって米中首脳会談が4回も予定されているのだから。ただし来年がどうなるかはわからない。むしろ米中がディールできるのは11月の中間選挙までであって、来年以降は米中対立ということになっても不思議はない。台湾で何かあるとしても、たぶんそれ以降でしょうな。
〇もっとも中国側になってみれば、「なんで来年になれば喧嘩することがわかっている相手と、いま取引しなきゃいかんのか」という思いもあるだろう。他方、彼らには「2025年の対立は自分たちが勝利した」という認識がある様子。だったらここは腹八分目でいいのかもしれない。
〇ともあれ、中国は分からないし、米国も読めない。こんな状態が当分続きそうである。困ったものです。
<2月18日>(水)
〇本日は講演会で広島市へ。とっても久しぶりである。
〇会場は広島駅に隣接するホテルグランヴィアである。近くにはシェラトンもできている。へえ〜、昔の広島駅は、新幹線口にはほとんど何もなかったんですけどねえ。新幹線が通る駅は必然的に栄えるし、人の往来も増えるし、新しい建物もできるし、不動産価格も上昇する理屈である。
〇ただし広島市は駅から離れたところに中心街があって、それこそ原爆ドームがあり、平和記念公園があり、広島城もある。こんな風に街の中心が2つある街は強いよね。こういうのも(焦点が2つある)「楕円の理論」というべきなんでしょうか。
〇しかもしばらく来なかったうちに、広島駅の2階部分に市内電車が乗り入れていることを発見する。おお、何たるイノベーション。ここから市内中心部にも行ける、世界遺産の宮島にも行ける、そして広島港にも行けてしまうのである。
〇やはり広島市畏るべし。駅の土産物売り場で、生のもみじ饅頭を少しだけ買ってみる。ついでにあなご飯と賀茂鶴の小瓶を買って、帰りの新幹線でちびちびと頂戴するのである。
〇藤井六冠対永瀬九段の王将戦第4局を見ながら一杯やる。このところ永瀬九段が好調で、ここまで2勝1敗。逆に藤井六冠が精彩を欠いている。案の定、だんだん形勢が傾いて、永瀬九段が貴重な3勝目を挙げる。七番勝負で1勝3敗なんて、いままでの藤井聡太にはなかった展開である。
〇てなことで、新幹線車中にて当不規則発言を更新。ホントは広島で一泊したかったのだけれど、明日も午前からいろいろありますので日帰りやむなしなのであります。牡蠣料理、行きたかったですねえ。
<2月19日>(木)
〇昨日、訪日外客数(2026年1月推計値)が公表されました。こんな感じです。
●1月の訪日外客数は3,597,500人で、前年同月比では4.9%減となった。また、韓国においては前年同月比21.6%増の1,176,000人となり、全市場で初めて単月110万人を超えた。
●2025年は1月下旬であった旧正月(春節)が今年は2月中旬となったことによる影響が一部市場で見られた一方、多くの市場でスノーシーズン需要等の高まりが見られたことにより、東アジアでは、韓国、台湾、東南アジアでは、タイ、インドネシア、欧米豪では米国、豪州を中心に訪日外客数の増加が見られた。
●韓国、台湾、豪州で単月過去最高を更新したほか、米国、インドネシア、フィリピンなど17市場で1月として過去最高を記録した。
●2023年3月に策定された第4次観光立国推進基本計画では3つの柱「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」が示されるとともに、旅行消費額・地方部宿泊数等に関する新たな政府目標が掲げられているところ、これらの実現に向けて、市場動向を綿密に分析しながら、戦略的な訪日旅行プロモーションに取り組んでいく。
〇前年同期比でマイナスになったとはいえ、それは去年は旧正月が1月だったから。今年は2月なので、その部分は調整が必要でしょう。ともあれ、中国から減った分が、韓国や台湾からの訪日客増加が相殺している、というのが興味深い現象です。
〇ところで、中国政府は「日本は危ない」「中国人に対する嫌がらせが起きている」という理由で、自国民に対して渡航自粛を呼び掛けている。その変な副作用が起きていて、中国に居る日本人駐在員の身辺の安全度が改善しているのだとか。日本人が多く住む地域で警備員が増員されたりして、「変な事件は絶対に起こさせないぞ!」ということになっている。
〇言われてみればなーんだ、ということでありまして、中国国内で「日本人学校の生徒が襲われた」みたいな事件が起きてしまうと、自分たちが言っていることが急に嘘くさくなってしまう。それでは政府のメンツが丸つぶれになってしまうから、なんだそうです。
〇さてもさても、中国人のメンツとは不便なものよのう。もしくは「忖度社会」は難儀なものであります。そこまで意地を張らなくてもいいのにねえ。
<2月21日>(土)
〇今朝、起きたら米最高裁の「トランプ関税違憲判決」が出ておりました。年初からずいぶん待たされましたが、とりあえずは予想通りの内容でホッとしました。
〇去年11月に書いた拙稿の見通しがだいたい正確でした。リンクを貼っておきましょう。
●急に寒風が吹き始めたトランプ政権、もし頼りにしている「保守派最高裁」が「相互関税」に違憲判決を下したら、その後には何が待っているのか(東洋経済オンライン 25/11/22)
〇ちょうどこの判決が出る直前を見透かすかのように、日米合意に基づく対米投資3件が決まったのは面白いタイミングでした。トランプさんとしては、「お前たちも日本を手本にしろ!」と言いたかったわけだが、これで欧州などは対米投資を見合わせるだろう。韓国はどうするのか。たぶんしばらくは「様子見」でしょうね。
〇それでは日本政府は馬鹿を見たのか。たぶん違法判決が出ることは、事前に想定していたことでしょう。最高裁判決はIEEPA関税のみを取り上げておりますので、日本にとって重要な自動車関税など、通商拡大法232条を基にする関税にはお咎めがないのです。それを値切ることも日米合意の狙いでしたから、ここはやっぱり投資を決めておいて良かったんじゃないかと思います。
〇最悪、この後で怒り狂ったトランプさんが、「分野別関税も全部引き上げだ」と言い出した時に、「ウチまで一緒にしないでくださいよ」と言い張ることはできる。あるいは「関税引き上げなら、追加の対米投資は差し控えます」と脅しをかけることもできる。そこはこちらもジャパン・ファーストでなきゃいけません。
〇何しろ第一陣の投資は全部足しても400億ドル程度。5500億ドルという全体の枠からいえばまだ1割未満です。この後の投資案件の審査は、まあ、ゆるゆるとやればいいのではないでしょうか。
〇ちょうど同じタイミングで出た25年10−12月期GDP速報値は、前期比+1.4%とあんまりよくなかった。トランプさんとしては面目丸つぶれで、「全世界に追加関税だ!」と言っておられる。とはいえ、IEEPAみたいに都合のいい法律はほかにないので、そんなに簡単ではないはず。
〇これで週明け2月24日には一般教書演説となります。最高裁判事たちも会場にお見えになりますが、果てさてどんな風に火花が飛び散るか。トランプ劇場、見ものです。
<2月22日>(日)
〇本日は「朝まで生テレビ」に出演。テーマは「『高市一強』ド〜する!? ニッポン」でした。
〇今日は久しぶりに神保哲生さんとご一緒しました。番組開始10分前にテレビ朝日社内の自動販売機で、「セブンティーンアイス」を買って一緒に立ち食いしたことが思い出深いです。お互いに「不良老人だね」などと言っておったのですが、何しろ今日のパネリスト陣ではわれわれが最年長。まあ、田原さんから見たら、全員が小僧みたいなものでありますけどね。
〇お互いに20代で出会った頃は、神保さんはAP通信の記者で、こちらは日商岩井広報室でした。神保さんはそれからすぐに独立してビデオニュースドットコムを立ち上げられたのですが、こちらはようやくサラリーマンを辞めてフリーランスになったところです。まあね、これだけ長く続けて今でも元気だというだけで、お互いに丸儲けというものであります。
〇隣の席の豊田真由子さんは、何か「炎上ネタ」を提供してくれるのではないかと内心、楽しみにしておりましたが、結局、無難に過ごしておられましたね。いや〜、参政党はなかなかに奥の深い組織であるようです。
〇思うに高市さんへの支持は、かならずしも強いものではないと思うんですよね。ただし高市さんをつぶそうとする勢力に対しては、ネット界や若者層から強烈な反発が来る。野党の批判なども、ほとんどが「単なるカスハラ親父」と思われてしまった様子。攻め方は難しいですぞ。
〇その一方で、高市さん自身は大きな組織を動かした経験がなく、党内基盤は元より乏しく、そういう知恵を持つ側近も見当たらない。「予算の年度内成立」を目指すと掛け声をかけるのはいいけれども、3月末になってできていなかったら、いきなりモメンタムを失うことになる。ああ、もったいない。
〇ともあれ、これだけの勝ちを収めてしまった後では、自民党に「次なるチャンス」はなかなか来ないはず。それだけに「今のチャンス」を大事にしなければならない。こういうのって「老婆心」というんでしょうかね。
<2月23日>(月)
〇トランプ関税への違法判決を受けて、果たして米国政治はどう動くか。よくわからないことが多いですが、現時点での見通しを書いておきましょう。
〇トランプさんは2月24日から、1974年通商法122条に基づく10%の代替関税を課す、と宣言しました。そして1日後には「やっぱり15%だ」と言い出した。どっちになるかはよくわからないが、この法律が定める関税は150日間までと決まっていて、延長する際には議会の同意が必要である。さて、今から5か月後にはどうなっているだろうか。
〇150日後の7月下旬になると、中間選挙の予備選挙はほぼ終わっている。つまり議会共和党の面々が、トランプさんの脅威を感じなくなる頃である。彼らは「自分の選挙区に対抗馬を立てられる」ことを恐れているわけで、夏になる頃にはもうその心配は消えている。だから大統領に逆らってもオッケーなのである。
〇共和党議員たちにとっては、今回の最高裁判決は「渡りに船」だろう。なにしろ関税は評判が悪いので。IEEPA関税が撤廃されて、122条関税が導入されれば、中国やインドからの輸入品は確実に安くなる。景気にも物価にもプラスである。つまり与党に有利に働くはずだ。
〇ジョンソン下院議長としては、なんとか関税の延長を目指す「振り」をするでしょう。しかし共和党と民主党の議席差はわずかに5つ。わずかな造反で延長は成立しなくなる。ということで、122条関税の延長は「ない」と考えます。このことも夏以降の米国経済にはプラスに働きますね。
〇ほかにも1974年通商法301条とか、1962年通商拡大法232条とか、手段がないわけではありません。が、いずれも既に実施済み。1930年関税法(悪名高きスムート・ホーレイ法)338条というのもあります。が、これまでIEEPAが使われてきたは、いちばん「使い勝手がいい」法律だったから。それを封じられたことによる打撃は小さくないでしょう。
〇つまりトランプ政権を最初に止めたのは、「終身」という身分保障を持つ最高裁でした。これから議会もじょじょに逆らうようになるでしょう。だって中間選挙という締め切りがあるのだもの。かくしてトランプさんのレイムダック化はどんどん進むことになる。
〇もうひとつ、既に支払われた関税の返還はどうなるか。最高裁はこの件に触れませんでした。今回の場合はNYの米国際貿易裁判所(CIT)に差し戻されることになります。下手をすれば金融不安を招きかねない案件ですので、扱いは慎重にしなければなりません。それでもCITが昨年4月に訴えを受けた際に、5月末には結審して「既に支払った関税の返還」を命じたことを考えれば、どういう結論になるかは目に見えている。つまり政府側が敗訴するということであります。
〇トランプ政権は返還を先延ばしにしようとするだろう。できれば任期いっぱい粘って、次の政権に先送りしたいと考えるのではないか。あるいは別の戦線(例えばイラン攻撃)を切り開いて目先を逸らすのもよくある手口です。とりあえずは2月24日(日本時間25日昼)の一般教書演説に注目ですね。ちなみに25日夜のかんべえは「WBS」に出演予定です。
〇それから2月26日(木)夜21時から、「オデッセイ」の「峯村健司のインテリジェンスサロン」に出没いたします。米関税をはじめ、日中関係などディープなやり取りが飛び出しそうですので、よろしければ覗いてみてくださいまし。
<2月24日>(火)
〇昨日公表された菅原琢先生の衆議院選挙分析が「さすが!」の内容になっている。長い話をごく短く勝手にまとめると、以下のようになる。
*今回の自民党勝利は比例区ではさほどではない。2005年の郵政解散よりはるかに小さく、2021年の岸田選挙をわずかに上回るくらい。
*自民が圧勝したのは小選挙区である。これは小選挙区制度の問題というよりは、単に野党に魅力がなく、しかも多党に分裂していたからだ。
〇ゆえに自民党勝利は「高市人気」が決定的な勝因ではなかった、というものである。実も蓋もないような物言いであるが、すごく納得感がある。
〇それにしても、選挙の前と後ではすっかり政界の景色が変わってしまった。例えば選挙前は自民党が少数与党であったから、「給付付き税額控除を導入するために国民会議を開きましょう」などと言っていた。要は自公政権が立憲を誘い込むために言っていたのである。
〇ところが選挙後になったら、いきなり自民党が衆院の3分の2以上の議席を得てしまった。これだったらいちいち「国民会議」など開く必要はない。国会で堂々と議論して、数の力で押し切ればいい。まあ、参議院をどうするかという問題があるので、そう話は簡単ではないのだが、ともあれ今でも「国民会議」と言っているのは意味不明である。
〇自民党の個々の議員にとっても状況は複雑である。新人議員は66人も居る。齋藤健さんが教育係になっている、という状況に面食らうものがあるけれども、この人たちのうち、かなりの部分に「次」はないだろう。特に比例で当選した人が選挙区を求めても、そもそも空いている選挙区がほとんどない。今よりもさらに勝つ、ということがほとんど非現実的なのである。
〇同時に、これから政治を目指そうという若者にとっては、もはや自民党という選択肢はなくなったも同然である。一方で野党は分裂したままである。しかも彼らはおカネがない。次の選挙は当分先であろうから、ほっとけばどんどん組織が細っていく。これは日本政治の危機ではないのか。
〇今宵、政治オタク数人でああでもない、こうでもないという話になって、「まあ、3か月後には状況は一変しているだろう」という結論でお開きとなった。いや、どういうことになっているかは、見当もつかないのですけどね。
<2月25日>(水)
〇一般教書演説、本日は1時間47分。昨年の議会合同演説の1時間40分をさらに超えてきました。この間、噛まず、声もかすれず、途中で水さえ飲まない。しかも多彩なゲストを呼び、趣向を凝らし、アドリブを入れ、民主党議員をいじる。トランプさん79歳、ますますお盛んです。
〇目立つ場所に明らかなご老人を呼んでいて、「この人を一体いつ使うんだろう?」と思っていたら、なんと御年100歳の米海軍パイロットで、朝鮮戦争ではソ連軍機を4機も撃墜した功労者であった。最後の最後にこの人を紹介し、その場で勲章を差し上げる。喜んでおられたようだが、2時間近くも待たせておいて、その間に集中力が途切れたらどうするつもりだったんだろう。なんかもう、ついていけません〜。
〇真面目な話はまた別の機会に書きましょう。ああ、疲れた。
<2月27日>(金)
〇本日は大阪出張。大阪経済大学の教務課に立ち寄って、4月からの講義についていろいろご説明いただく。と言っても、「いまどきの大学生」のことはよく分かっていないので、いきなり知らない世界に飛び込んで刺激を受けることになりそう。それも春からの楽しみということで。
〇終わってから阪急線と御堂筋線を乗り継いで淀屋橋へ。旧日商岩井大阪本社のすぐ手前、適塾のすぐ隣にある中華屋さんで同期入社社員の集まり。なぜか秋田や東京や高知から出張してきた顔ぶれも。40年前の昔話から、今どこで何をやっているかまで、話題は尽きず。
〇終わってから、「同期LINE」で今宵の写真が送られてきた。客観的に見ると、単なる爺さんたちの寄り合いである。が、なんと楽しそうな人たちであることか。ホントはね、この年になると体調的にはみんな色々抱えているんだよね。でも、ちょっとだけ若返りました。
〇明日はグランキューブ大阪にて、「FPフェアOsaka」に登場いたします。
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by Tatsuhiko Yoshizaki