退職のち放浪 ライブ(8)

街へ行こう 北京編A

ビールフェスティバル

『2003北京工体国際碑酒祭』へ行った。北京で有名なホールというか体育館の様なところでやっているビールフェスティバルが目的である。この体育館は昔グレイがコンサートをした会場としても有名だ。体育館ではサッカーも出来るらしい。(注:碑という字は正しくは口へん)

このイベントは入場料を取らない。幾つものビール会社のブースがこの体育館の回りにあり、ここで各自好きなビールを有料で注文するというイベントだった。私が行ったのは平日の午後の早い時間で、さすがにあまり人はいなかったが、この日はとても暑く、歩き回っていて喉の渇いた私にはうってつけのイベントだ。というか、このイベントの為にバスに乗らずに延々と歩いて来てきたとも言える。

国内産外国産を問わず、いろいろな種類のビールがあって妙にうきうきしたが、やはり飲みたいのはスーパードライだった。国産のビールとして燕京ビールというのがあるが、微妙に炭酸が弱い。こういう暑い日には炭酸が強く辛口が向いている。ここ北京でも大きなスーパーに行けばスーパードライは手に入るのだった。だからイベントにも朝日碑酒は出しているはずだ。

この体育館は結構大きく、カールスバーグ〜北京ではメジャーなビール〜あたりで浮気をしそうになった頃、朝日碑酒のブースを見つけた。

朝日碑酒のブースにいるスタッフは男性3人、女性3人の計6名。間の悪い事に揃って昼食を取っているところで、私は恐縮しながらスーパードライを注文した。一人が昼食を中断し対応してくれたのだが、330mlのビンが15元という(215円)。それでは日本の値段と同じではないか。それでもまあイベントだし、しかたがないかと思って払おうとすると、その気持ちを感じ取ったのかその横のケースからビンを取り出し、こちらはどうだとスタッフが言う。

それは大瓶で“清爽”と書かれた朝日の別のビールであった。それは日本では見かけない種類で、こちらは10元(143円)であった。何でもこちらの方が、スーパードライよりもさらに“清爽”という事らしい。飲んでみると確かに軽い味で、オリオンビールに近いのかもしれない。十分うまい。

私が一人でぼんやり飲みながら幸せを味わっていると、その6人がこっちへ来いと手招きをする。彼らは彼らで、何故かカールスバーグを飲みながら持ち帰り用のパックに包まれた中華料理を食べていて、私にもさかんに勧めてくれる。最初は遠慮していたが、彼らももう満腹気味のようだったので頂いた。

彼らは、【日本―中国 友好】と紙に書き、『君と我々は朋友』だと示す。そして日本はいい国だと褒める。一方、美国アメリカは徹底して嫌っていた。彼らはイラクを攻撃したからというのも理由の1つだ。

一方、北朝鮮については、中国と北朝鮮は友好であり、金正日は偉大なリーダーという様な事を言う。

さらに台湾は中国の一部だと平然と答えた。何だか中国政府のスポークスマンみたいな解答だった。

この6人の年齢は、下が18から上が33まで。全員が煙草を吸う。しかし女性三人はビールを飲まない。単に嫌いなのか、酒に対するタブーが強いのかわからないが、その一方で煙草に対して寛容であるのは驚いた。

この6人の中で1組夫婦がいる。その新婚カップルの妻は18歳、旦那は25歳という。

聞くと中国人の平均の結婚年齢は、男性が23歳、女性が21歳という事だった。とりわけ都市部では結婚が遅いという事なので、彼女はだいぶ若くして結婚した事になる。しかし他の中国女性と同じように気が強く、旦那は尻に敷かれているようだった。

彼らは私に興味を持ってくれていて、話が進むうちにどんどんとブースのビールを開けてくれたので、昼間っからすっかりいい気分になってしまった。時々通るフェスティバルの客が、異様に盛り上がっている我々を遠巻きに見ていた気がする。そして誰も寄りつかない。ごめんなさいアサヒビールさん。

麻婆豆腐

宿から30メートル先にある食堂へ行く。ちょうど昼食の時間なのでお店はごった返していた。ただ行列ができるほどではない〜中国人がきちんと行と列を作るとは思えないが〜。満席の場合は、お弁当にしてもらっているほど繁盛している。ほとんどは近くの工事現場の作業員だろうと思う。みんなそんななりだ。その労働者達の何人がビールを飲んでいる。中国も裕福になったものだ。

今日食べたのは、

・麻婆豆腐 8元 114円

・回鍋肉 8元 114円

・白飯 1元 14円

・ビール 3元 43円

(合計 20元 285円)

この店に来たのは始めてではない。ここの中華は実にうまいのだ。フロアーには従業員の女の子が3人にて、とても可愛く、甲斐甲斐しく働いていた。

実は、この店の麻婆豆腐に病みつきになっている。東京/お台場の陳麻婆豆腐店もうまいが、ここのも相当うまい。唐辛子の“辛さ”よりも山椒の“しびれ”が強い麻婆豆腐だ。せめて写真だけでもお伝えすべく、スタッフの女性が運んできたところを取らせてもらった。今日も昼から満腹になってしまった。辛いのとうまいのが手伝って、この麻婆豆腐だけはつい全部食べてしまう(注:ちなみにその行為は、中華料理屋に独りで行く場合とんでもない事で、異常に満腹になります)。

今日、宿を代えようと思っていたので、次回の為にこの食堂の名前と電話番号が入った伝表なりカードなりをもらおうと思ったがそんなものないという。すると彼女が伝票に店の電話番号だけを書いてくれた(因みに85111750)。

「お店の名前は」と英語で聞くと、彼女は何故かとても照れ始め、それでも二文字の名前を書いてくれた。そう、それは彼女の名前だったのだ。彼女に持ってもらった麻婆豆腐の写真を撮ってしまったので、勘違いしたのだろう。私が、若き日の毛沢東に似ているからというのも相当影響しているのだろう(見た事無いが…)。今更お店の名前を聞き返す事はできない。

中国人とのネゴ

のんびりしていてチェックアウトが遅れた(というか実は確信犯だった。次の宿の事情で夕方に移動したかったのだ)。すると年配の宿の女性が、半額払えと言って聞かない。半額と言えば、85元である。麻婆豆腐10皿とビールを飲んでもお釣が来るという金額だ。とんでもない。でも、雨も降っているのでどうせならまだ部屋の中にいようと考え交渉する事にした。

中国人との交渉でとても嫌な事がある。私の経験で言えば、こういう時に相手は、大声でのっけからこちらの要求を拒絶する。こちらがちょっと交渉を持ち掛けると一切妥協せずに机をバンバンたたいて応戦してくる。実は今回もそうだった。

私は【No money、No Payよ〜、メイヨウはメイヨウ】攻撃で対抗。

そして彼女のボスを呼び、妙なロジックで対抗する。つまり24時間で170元なら、6時間ではえっと42.5元だよね、じゃあ40元でいいよね、と。

ボスの方はやさしいタイプの女性で、いろいろ内輪で相談していたが、最後は笑って許してくれた。

しかし、この連係プレーで40元を貧乏日本人からせしめる中国人、油断ならない。

結婚式

今日の昼飯は、うまいと評判の四川料理屋へ行った。このレストランのビルは、一階がマクドナルドになっている。二階がメインフロアーで三階は一部が吹き抜けになっているため、わずかに10ほどのテーブルが通路脇にある。

今日の良き日、メインフロアーでは結婚式の披露宴が執り行われていた。この為、一般客は3階に案内される。そして披露宴の様子を眺める事ができるのであった。

【喜】という赤い文字が2つ並んだ漢字が正面に大きく飾られている。

招待客は百人弱。料理や飲み物が既に運ばれていて各テーブルで乾杯が続く。中国の庶民の結婚式はこの様なレストラン貸し切りで行われる事が多いという話だ。招待客は普段着で来ている。日本のように長い挨拶、歌や踊りは無いようだ。

新郎か新婦のご両親らしいご夫婦が各テーブルを回り招待客に挨拶をしているところは日本と同じだ。

新郎新婦が登場し、各テーブルを回り始めた。新郎もそして新婦も乾杯を受ける。この新婦、なかなかいける口みたいだ。先日58度という中国の酒を飲んだ。小さなお猪口の様なグラスだが、2杯も飲むと胃の辺りがジーンとして、そして次第に酔っ払ってくるが、この新婦は何だか平気みたいだ。新婦の年齢は推定20歳、新郎は24歳というところだろう。

乾杯の返礼は、キャンディーやチョコレートだ。新婦が包みをむいて招待客の口に入れてあげる。男性で煙草を吸う人は、やはり新婦がライターで火をつけてあげる。

それが一種の習わしということらしい。

最後のテーブルは悪友の集団だった。客の一人が、テーブルの下から隠してあったステンレスのボールをおもむろに取り出す。と同時に新婦の靴を一つ脱がせ、それを新郎にボールと共に持たせる。新郎は新婦を背負い、同時に、ドラの様にボールを靴のかかとで叩き、テーブルを回る。大喝采である。どういう意味があるのか知らないが、定番の催しみたいだ。『夫婦手と手を取りあって一緒に生きていきましょう』という雰囲気だった。

足揉みマッサージ

マッサージ屋へ行く。中年のおやじに揉んでもらった。なかなかうまい。単発だと38元だが、10回つづりのチケットだと300元なので、一回あたり430円になる。足のマッサージの場合は小一時間、全身マッサージは30分で一枚使う。

台湾で行った足のマッサージ屋と比較しても、力量、揉み方など互角だ。ただこの店の周囲にも同じような店があるので、いつも空いていて貸し切り状態であるのがいい。あまりに気持ちいいので、つい10回つづりを買ってしまうところが痛た悲しい。

ビューティーサロン

ずっと髪を切りたいと思っていた。台湾よりも中国の方が安いと思って我慢していたのだ。ちょっと上品なビューティーサロンに入る。ビューティーサロンにしたのは台湾で素敵な女性に会えたからという訳ではない(いやちょっとはある)。基本的には中国にも床屋は無数にあるが、どれも清潔ではない気がしていた。ちなみにその清潔でない方の床屋の値段は大体10元程度。約140円だ。

受付の男性スタッフに値段交渉をし、40元で頭のマッサージ付き、という事になった。570円だ。店の中に入ると、なんといるのは男性スタッフ3人だった。別に何を期待していたわけではないが、どうせ頭を揉まれるなら、いかつい男じゃあないほうが良かった気もする。そしてこうなるとやっぱり10元でもよかった気がした。

 


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