メディナに行く。
ここで言うメディナとは、アラブの旧市街の事である。
ここスースにも、大きなメディナが残っている。その大きさは、首都のチュニスにあるメディナと同じくらいらしい。
南北700メートル、東西500メートルくらいの城壁に囲まれている。
このメディナは、緩やかな丘の斜面に建築されている。幾つもの迷路の様な小道を登っていくと真っ青な海を眺める事が出来る。そこがこのメディナの素敵なところだろう。
メディナの城壁は茶色だが、その中にある家々の壁は白い。窓などは所々スカイブルーに塗られている。この白とスカイブルーがこの街の特徴だ。
青い空に映えてとてもきれい。
ヨーロッパもそれなりに良かったが、やはり太陽と青い空は重要だ。
ヨーロッパでも、さんざん旧市街を見ており完全に飽きていた為、いささか抵抗があったが、さすがはアラブ、雰囲気が全く違うので新鮮。
観光客を相手にする個人商店のお土産屋さんが並ぶということでは同じなのだが、扱っている商品、漂ってくる匂い、人々の活気、流れるコーランなどがアラブにいることを感じさせる。
商品は革製品や布、皿、香辛料、絨毯などが多い。
私が通ると、
「ヘイ、マイフレンド!」
「ニイハオ」、
「コンニチハ」、
「ナカタ、ナカタ」
「チーノ?」
「ヤスイヨ」
などと話し掛けてくる。
中には、「カワサキ、カナザワ、xxxx」
などと知っている日本の都市名を並びたてる者がいる。
この辺りの商売の仕方は、アジアに共通するようだ。
「取りあえず入って見てくれ、見るだけでいいから。君だけにまけるから、他のお店より安いよ…」
ヨーロッパより積極的で商売熱心だ。
このスースでは、まだ東洋人を見かけていない。それだけに私はとても目立つようなのだが、日本語で挨拶する人間がいるということは、ごくたまに日本人が訪れるということか。
街には土産物ばかりでなく、観光客と、地元住民や店の人たち用の食堂や屋台などがある。甘くないホットケーキに辛いソースを塗り、オムレツの様な卵料理を挟んで食べる地元食など。1ディナール(89円)。20センチ大なので、これだけでお腹がいっぱいだ。この店の店員の一人がどこからともなくやってきた一人のアラブ人と掴み合いの喧嘩をいきなり始めて驚いた。チュニジア人は日本人より背がやや低い。喧嘩している2人はたまたま体がさらに小さく、なんだか子供の喧嘩のようで最初は穏やかに見ていたが、当人達は本気のようだ。
結局、私も含め皆で止めに入ったのだが、ヨーロッパ人の体の大きさに慣れていたせいか、何かあってもぶっ飛ばされないという、変な安心感を、妙なところで感じてしまった。
次に行ったのが床屋。モンゴルで切った髪がそろそろうっとうしくなってきたのだった。恐らく、観光客は誰も行かないだろうという、うす汚いお店に思い切って入ってみた。
価格は4ディナール(358円)。この金額でしっかり切って、剃って、整えてくれる。腕は上々だ。
さすがにビールを飲ませるところはないが、カフェが所々にあって、白いテーブルと椅子を通りに出してオープンテラスにしている。歩きつかれた観光客で結構どのカフェも繁盛している。
アルコール類について
一方、メディナから程近いホテルでは、テラスで客が日光浴を楽しみながら、それぞれ飲み物を飲んでいる。
私もここで一休みし、ビールを飲んだ。1.4ディナール(125円)。
チュニジアで最も有名なアルコールビール、【セルティア、Celtia】である。ホテルのバーで出しているやつと同じだ。ちょっと苦めで、それでいてライトな口当たりというところだろうか。日本人にも受ける味だと思う。
これをあっという間に飲んでしまう。歩き回って喉が渇いている上に、300ミリリットルビンなのであった。
実はこのビール、チュニジアエアーの機内でも飲んでいた。こちらは缶で、240ミリリットル。日本のコーヒー缶をちょっとだけ長くした様な缶で、今まで飲んだ缶ビールの中で一番小さいものだった。
調べてみると、ホテル以外の場所では、スースの場合、どうやら3ヶ所でしかアルコールの販売を認められていないらしい。その1つに行き、買い求めてみた。
ビール1缶0.84ディナール(75円)だ。銘柄はもちろん【セルティア】。500ミリリットルに換算すると156円になる。さすがアラブ、東欧より大分高く、倍くらいする。
セルティアの他に、フランスから輸入されたレーベンブロイ、および地元の【”33”】とか言う名前のやつ、合計3種類がチュニジアにあるようだ。「333(バーバーバー)」という名のビールはベトナムにあったが、こちらは1つ3が少ない。でも何て読むのかわからない。これも240ミリリットルの缶。値段は1ディナール(89円)。味はドライ系。
因みに、スーパーでの手ごろなワインの価格は、4.5ディナール(402円)ほどである。もちろんチュニジア製。
ここはアラブ。誰が工場でテイスティングしているのか気になるが、結構美味い
映画館へ行こう
もう4ヶ月ほど映画を見ていない。何だか衝動的に映画が見たくなった。
ターミネーター3を見ることにした。価格は3ディナール(268円)。
まだ10分前だというのに、映画はまさに始まった所だった。その時間の感覚にびっくり。
お客はまだほとんどいない。
何と、アーノルドシュワルツネッガーはフランス語を話しているではないか。さすがに州知事になると違うものだ。
マシンガンをぶっ放す姿も、なんだかとても洗練されている気がする。
気がつくと、登場人物は全員フランス語だ。
西洋人がフランス語を話していると、なんだかフランス人のように見えてくるから不思議だ。
字幕のアラブ表示を楽しみにしていたのだが、完全に吹き替えだった。
フランスの植民地だったといえ、チュニジア人全員がフランス語を理解するとは思えないのだけれど、少ないながらいるお客は当たり前のように映画を見ていた(逆に、だから客が少ないのかも)。
チュニス&カルタゴツアー
チュニジアに来て、首都チュニスとカルタゴは外せない。
チュニスまでは、スースから列車で2時間程度なのだが本数が少ない。加えてカルタゴまで見ようと思うと、どこかで一泊する羽目になる恐れがあった。ツアーは、52ディナール(4650円)と高いのだが効率重視で参加することにした。
バスは朝の7時にホテルへやってきた。
に乗ろうとすると、ガイドが、今日のツアーはドイツ語とフランス語だという。
現地旅行代理店のミスだ。私の他に、イギリス人がいたので、このガイド、最初は無理だと言っていたが、何とかしようと言う。
チュニスに向かうバスの中でガイドは、ツアーの概要に加え、途中のオリーブ畑だとか、チュニジアの歴史だとかをいつものように説明する。
しかし今日は、ドイツ語→フランス語→英語の順で同じ事を3回話すのだった。その語学力のすごさもさる事ながら、高速に乗っている為、話しているうちに見所が通り過ぎる恐れがある。無茶苦茶早口で、かつ切れ目なく話すので、聞いている方もたいへんだ。
チュニスのメディナ(これはスースと同じで特にどおってことない場所)の次に行ったのが、バルドー美術館。モザイクで有名だ。
何でも紀元前のものも多いそう。さすがに、青・赤・黄色みたいな原色の色使いは無いのだが、この細かい細工から、当時、相当高い文明を持っていた事がよく分かる。
他のヨーロッパの美術館のように、キリスト教をほとんど感じさせず、むしろローマ帝国という感じなのだが、所々でやはりキリスト色が出てくる。この辺りがまさに歴史ってやつなのだろう。
ツアーの昼食
一緒のテーブルにいたのはインド系イギリス人の母娘とドイツ人カップル。
休暇についてドイツ人と話した。
ドイツは6週間の休みが取れるらしい。彼女の方は、このチュニジアにもう20数回来ているとの事だった。何でもフランクフルト空港の近くに住んでいて、空港まではすぐ。そしてフランクフルトからチュニジアにはわずか2時間。
そしてツアーは大体200ユーロほどなので、たいした金額ではない。いつでも来られると言い放ってくれた。
大分日本とは事情が違う様だ。何とうらやましいことだろう。
調べたら、チュニジアの翼、チュニジエアーが飛んでいるドイツの空港は、このフランクフルトだけでなく、何と19の空港と結んでいる事が分かった。そしてそれぞれ、恐らくチャーター機が離発着しているんだろう。
そしてシーズンが終わると、きっとその飛行機がブタペストやワルシャワに飛んでくるのだろう。
インド系イギリス人は、完全ベジタリアン。事前に言ってあったらしいが、まず出てきたスープは肉のエキスが入っているとかでキャンセル。
次に出てきたトマトソースのパスタと鶏肉の焼いたやつはパスタのみ。
スープの代わりにサラダを用意する様にお願いしていたが、ツアーバスの発車時間になったので途中で終わり。実にベジタリアンと言うのは旅行一つとってもたいへんだ。
シディ・ブ・サイド
ツアーは、【シディ・ブ・サイド:Sidi Bou Said】と呼ばれる場所に寄る。
ここは真っ白な壁と青い窓やドア、そして空のスカイブルーが映える街だ。
なんでもチュニジアの中で最も美しいといわれているらしい。地中海に面した岬にあり、ロケーションは最高だ。
完全に観光地の為、客引きがうるさいが、一歩道を外れると観光客もいなくなり、文字通りチュニジアンブルーを満喫できる。
なんでもここには、世界でも最も古いカフェがあるという事だった。その店に入る階段は、観光客でいっぱい。シーズンオフでこれなのだから、シーズン中はさぞかし込んでいることだろう。
しかし、太陽というのは本当に有り難い。街が生き生きとしている。
エストニア/タリンの街も素晴らしかったが、あいにく曇っていた。だから比較は出来ないかもしれないが、こちらの方に軍配が上がる。
こんな街を作ってみたいものだ。
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