<6月1日>(月)
〇毎週のように大阪に通っていると、自分の過去の関西文化に対する理解が通り一遍のものであったことがわかってくる。
〇本日はお昼に上新庄駅のカレー屋さんに入り、メニューを見て驚いたのは「牛筋カレーの方がカツカレーよりも高い」ことである。そうは言っても、昨日は府中競馬場でカツカレーを食べているので、ここは牛筋でありましょう。うむ、確かに牛筋は美味し。
〇こんな風に毎週、関西に通っていることがだんだんバレてきて、おい、ちょっと顔を出せ、素通りはないだろう、といわれる機会が増えてきた。そこで今宵は、朝日放送(ABC)の皆さまと旧交を温める。ワシが『サンデープロジェクト』や『ムーヴ』に出ていたのは、かなり昔のことなんですけども。
〇かくして豊田商事事件(1985年)、和歌山カレー事件(1996年)、神戸サカキバラ事件(1997年)など、関西で起きた様々な事件を語り合ったのである。いや、それにしても昔の事件は凶悪であったよねえ。今は阿部監督の逮捕が話題となるのだから、平和な世の中になったのかもしれません。
〇昔はねえ、世の中が全体に野蛮だったのですよ。それはそれで、懐かしくもあるのですが。
<6月2日>(火)
〇産経新聞の「正論」欄に久しぶりに投稿。今年初めてですかな。
●過去が教えるホルムズ危機対応
〇トランプさんとしては、早くイランと停戦交渉を成し遂げたいのでしょう。ところがときどき、それをぶち壊しにするような強気発言が飛び出すので、協議はなかなか前進しない。イラン側としても「アイツはやっぱり信用できない」と思っていることでしょう。
〇今このタイミングで「60日間の停戦」を決めてしまえば、7月4日の「建国250周年」は穏便に過ごすことができる。それ以前に、6月11日になったらW杯が始まるので、イランチームがアメリカに来てしまう。それを考えれば、ここは「見切り千両」で妥協しちゃえばいいのに・・・・とマーケット関係者は考えていることでしょう。
〇それというのも、最近は毎週のように予備選挙が行われているから、トランプさんは自分の忠実なる支持者向けの「強気発言」(イランに核は持たせない、など)が必要になってしまうから。だから最近のトランプさんは「TACOってくれそうで、くれない」。フラストレーションがたまるところです。
〇今日もカリフォルニア州、アイオワ州、モンタナ州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、サウスダコタ州という6州で予備選挙が行われる。てなことで、ホルムズ海峡の問題は長期戦で構えるべきでしょう。いやもう、この先の米国国内政治は、どうなるやら見当が尽きませぬから。
<6月3日>(水)
〇朝から台風襲来である。なるべくくたびれたスーツと、新しくない靴を選んで外出するのである。
〇実は本日は新潟市で講演会なのである。主催者さんには申し訳ないのだが、これはまあ自衛の手段ということで。傘だけはちゃんとしたものを。ビニール製だけど、それなりにちゃんとしたやつで。
〇考えてみれば、このビニール傘も石油製品である。というか、われわれの身の回りはそういうのばっかりである。ワシ的には「ペットボトルなんて、この際もうやめようぜ〜」という気分なのだが、ハッと気が付いたら新幹線の中でペットボトルのお茶を飲んでいた。しかも駅で買った山形産の何とか弁当も、プラスチックのケース入りである。
〇こういう小奇麗な石油由来の製品を、日々大量に消費しながら生きている。そういえば昔、双日の化学品部隊の人が言っていたけれども、「人間は、一度手に入れた贅沢は手放せないからねえ〜。プラスチック製品はそう簡単にはなくなりませんよ〜」と。
〇確かに今さら、「お豆腐を買うときは、お鍋を持っていってご近所で」なんて無理ですわな。しかもわれわれは、どんどん「きれい好き」になってしまっている。昔の暮らしに戻れと言われても、簡単じゃないですわなあ。
〇この上越新幹線だって、昔はよく乗っていたのである。2015年に北陸新幹線が開通するまでは、越後湯沢でほくほく線に乗り換えて4時間かけて富山に行っていた。そんなルート、今じゃ乗りたくないですわなあ。人間は贅沢になれると、なかなか昔の暮らしには戻れんのです。
〇ということで、新潟市で講演。なんと亀田製菓の方からご質問を頂戴したので、つい嬉しくなって「柿の種、新潟限定品」というものを買って帰る。やっぱりね、ビールのお相手はポテチよりも柿の種ですよ。
〇不覚にも帰りの新幹線で、傘を置き忘れてしまう。だって東京はもう晴れているんだもの。「傘は天下の周りもの」とはいえ、そんな贅沢に慣れ親しんでしまっている自分がちょっと嫌だ。
<6月4日>(木)
〇お世話になった人の告別式に出る。式場でハッと気がついたら、自分と同じ年の方であった。こういうのは辛いです。
〇当方はまだ仕事をしていて、その最中に遊びの計画を立て、でも遊びの最中に仕事をしなきゃいけなかったりする。でも、いいです。生きてるだけで丸儲けであります。
〇それはさておき、明日は「モーサテ」に登場します。早起きしなきゃ。
<6月5日>(金)
〇今朝の「モーサテ」では、こんなネタをご披露させていただきました。
●貿易統計からみるホルムズ危機と日本経済
〇要は先週の溜池通信で書いた内容を、8分間の枠の映像で伝えることになります。終わってから、テレ東BIZで確認してみました。自分が話している内容はさておいて、この映像、貿易データの「資料」がとても見やすく出来ているなあ、と感心しました。
〇番組の前日朝には、私から「出物案」と称する元データをテレ東宛にお送りするのです。ただし、そのままだと細か過ぎるので、映像にすることができない。そこでスタッフの方が、「どこを捨ててどこを残すか」と工夫されるのです。そうやってギリギリまで削ぎ落したもの、なおかつ出元のチェックまで済ませた上で、前日夜までに準備を整える。まさに職人の技であります。
〇なおかつ、本番ではキャスターの中原みなみさんが、当日朝に簡単な打ち合わせを1回済ませるだけで、難しい話をいともやさしく聞いてくれるわけです。画面で見ると、合いの手の入れ方がとても自然で、これも本当にプロの技だと思います。
〇このコーナー、「プロの眼」というタイトルがついていて、表面的にはゲストのコメンテーターが「プロ」であります、という建て付けになっております。とはいえ、その「プロ」は大勢の他の「プロたち」によって支えられている。地上波の番組は、こういうところに強みがあるんですよねえ。
<6月6日>(土)
〇突然ですが富山市に来ております。旧日商岩井同期の連中が富山に行きたいと言うものだから、これは案内役を買って出なければならないということで。
〇金曜夜に富山市内の某寿司店に集まったのが8人。関東から3人、関西から1人、秋田から2人、高知から1人。なんなんだこれは。それにしてもよく食うな、あんたら。
〇本日昼は、うち5人にて岩瀬を探訪する。ここでも白エビ料理を丼で、ピザで、唐揚げで、バーガーでと次々に制覇する。元・地元民としては、信じられない食べっぷりである。
〇なにしろ皆さん、互いに気を使う必要がまったくない連中である。しかも20代前半で互いに出会ってから、既に40年以上が過ぎている。誰かが「そういえば、こんなことがあった」と言い出すと、次々に記憶を誘発して止まらなくなってしまう。
〇要は一緒に居るだけで楽しいのだが、結果的に富山に対する高評価となってくれるのがありがたい。鮨は旨いし、駅前は洒落てるし、北前船や売薬さんの伝統まで褒められる。こちらはこの一帯が60年前にはどんなにしょぼいところだったかを知っているので、非常に気恥ずかしい思いがする。
〇それでもこの街に外食文化が育っていることだけは間違いがない。さすがに以前に比べれば値上がりしているが、それにしたって金沢に行くよりは間違いなく安いはず。
〇ところで本日行われた、「J2J3百年構想リーグ」の1位2位決定戦において、わがカターレ富山はベガルタ仙台に1対1で延長戦となり、最後はPK戦で敗れ去りました。最後の部分だけ、富山駅前のパブリックビューイングで観戦して、思わず熱くなりました。
〇いや、そもそも会場が仙台でアウェイであるし、中軸である亀田歩夢選手がU-21の海外遠征に取られているので、不利なことは間違いない戦いであった。なぜここへきて突然強くなったのか、よくわからんのだが、とにかく最近の富山は進境著しいように見える。
<6月7日>(日)
〇この週末に、わがひと口持ち馬が初勝利を挙げてくれました。これで「1勝クラス」ということになり、とりあえずホッと一安心なのであります。ところがバタバタしていたために、レースを観てなかったし、馬券も買ってない。競馬友達から、「おめでとうございます」と言われて初めて気がついた。こんなことではひと口オーナー失格、であります。
〇ちょうど先週でダービーが終わったので、今週からは2歳新馬戦(メイクデビュー)が始まっている。そうなると、「3歳未勝利戦」はちょっと物悲しいトーンを帯び始めます。競馬ファンも良血の2歳馬に関心が行ってしまう。他方、3歳馬はこの夏までに「未勝利」を卒業しないと、JRA登録抹消から地方競馬への移籍、乗馬クラブなどへの転進、または引退といった道をたどることになります。
〇しかもこの時期になると、3歳未勝利馬は出走すること自体が至難の業(レースの枠が空いてない!)となります。どうしても、タイムリミットを意識しながら走ることになります。6月6日のレースで未勝利を脱出できたわが馬などは、「25歳でようやく三段リーグを抜けられた奨励会員」みたいなものであります(将棋界は26歳が年齢制限で、それまでにプロになれないと退会となる)。
〇デビュー戦で勝って、その後も勝ちまくってクラシック戦線でG1を勝つ馬が出る一方で、無数の敗者が誕生する。18頭フルゲートであれば、17頭は敗者となってしまう。考えてみたら、競馬ってひでえことをしとるわなあ。
〇せめてわが馬を信じてあげないといかんです。次のレースはちゃんと観て、馬券も買わんといけません。
<6月8日>(月)
〇本日も大阪へ。授業も8回目ともなると、さすがに慣れてくる。先が見えてきた、という安心感もある。その一方で、「こんなに勝手気ままにやっていていいのだろうか?」という気もしてくる。
〇大学教授という存在は、ほとんど他者のチェックを受けることがない。誰も構ってくれないし、監視されることもないし、口を出されることもない。いいのか、ワシが学生さんたちに間違ったことを教えていても。てゆうか、自分が昔受けた授業も似たようなものであったか。
〇当方は客員教授なので、あんまり大学のことがよくわかっているわけではないし、ほんの少し前までは大学とは縁なき衆生であったのです。この組織、こんなガバナンスでいいのかなあ。いや、本チャンの大学教授には、いろんなプレッシャーの多い世界であるように思えるのですが。
〇それでも日曜夜に授業の資料をアップしたら、月曜朝までに学生さんたちが反応してくれたり、メールで感想を寄せてくれていたりする。ちゃんと授業中に質問してくれる人もいる。来月末まで、しっかり務めねば。
〇しかし今月に入ってから、毎日のように新幹線に乗っておるなあ。まあ、これはこれで贅沢なことかもしれませぬ。
<6月9日>(火)
〇本日は文化放送へ。「エビアンサミットの口当たりは?」というテーマで、来週週明けからフランスで行われるG7サミットについて語らせていただきました。
●長野智子アップデート 2026年6月9日 吉崎達彦(エコノミスト)
〇ホンネでぶっちゃけなG7談義を語らせていただきました。ご参考になれば幸いです。
<6月10日>(水)
〇この季節になると、毎日のようにいろんな会社から株主総会のご案内が届く。適当に「賛」に丸を付けてハガキを返すのであるが、そのたびに「しめしめ、これで配当が入る」とニンマリする。そういう個人投資家は少なくないのではないだろうか。
〇ワシの持ち株は金融とかエネルギー関連が中心である。PBRが1倍を割れていて、配当利回りが4%くらいあるのが理想である。ハイテク関連、特にAIや半導体がらみは持ってない。だから最近の株高とは無縁である。「AI関連銘柄」なんて信用してたまるかよ、と思っている。「スペースX」と「オープンAI」と「アンソロピック」が同時にIPOを目指すなんて、そろそろピークが近いと言っているようなものであろう。
〇ハイテク関連ではソニーグループを持っている。これはゲーム産業という「遊民経済銘柄」であり、「コンテンツ産業」「IP銘柄」という位置づけなので、低配当でも我慢するのである。ソニーの時価総額をソフトバンクが上回っている現状は、はななだ不本意と言わざるを得ない。それにしてもキオクシアはすごいよね。こんなことでいいのかなあ。
〇先週のモーサテでは、アメリカのAI投資ブームのお陰で日本の発電関連の対米輸出が増えている、というお話をさせていただいた。しかるに韓国はそれどころではないのですな。今週出たFTのこの記事はちょっと面白い。韓国経済がいま、有卦に入っているとのこと。
●Chips,
ships and guns: South Korea booms on AI race and global conflict(FT
6/8)
〇なるほどねえ、今のトレンドは「半導体」と「造船」と「防衛装備品」。追い風を一身に受けているのが韓国経済ということになる。
〇とはいえ、ワシ的には長期投資で参りますので、「金融とエネルギー」で地道に資産を増やしたいと思っております。これぞ自己責任。個人投資家はかくあるべし、であります。
<6月11日>(木)
〇諸般の事情により、明日が締め切りの溜池通信を本日中にほぼ書き上げてしまった。こういうこともめずらしい。いつも夕方までギリギリの作業になるのですが。
〇書き上げるに当たって、またまたAIの助けを借りてしまった。あれこれと尋ねているうちに、チャッピー先生から「これっていかにも溜池通信が取り上げそうなネタですね」と言われてしまう。「しまった、バレたか!」
〇とはいうものの、チャッピー先生は明らかにやり取りを楽しんでいて、「知的充足感」みたいなものを味わっている様子。そういえば、先日の「司馬遼太郎が書いた東大阪市に関するエッセイ」(当欄4月27日分)もそうだった。どんなやり取りかは、明日のお楽しみということで。
〇ふと思い出したのは、若い頃に聞いたリチャード・ベルマンという数学者の言葉である。「良い問いは答えよりも重要である」。問いを発することは、人間の特権のようなもの。「AIのお陰で人間の思考力が衰える」なんてことがあってはなりませぬ。
〇あるいは「妄想」することも、人間ならではの能力でありましょう。あてどもない思考をする、というのはたぶんAIが苦手とするところであろうし。将棋界の現状が示しているように、「AIが強くなって人間の出番がなくなる」ということは、きっと起きないのだと思います。
〇それから今宵は某専門家お二方と話していて、「AIと宗教」というテーマで盛り上がった。この二つが現代の政治を動かしている。しかしAIは信仰を理解できるのか。なかなかに奥が深いテーマかもしれません。
〇ところで明日夜はWBSに出演予定。金曜日は番組始まりが午後11時なので、と〜っても長い一日になりそう。少し夜型にしなきゃあね。
<6月14日>(日)
〇本日は町内会の町内清掃。年に1度のドブさらいという勤労奉仕なのである。
〇昔は町内会の総会が4月中旬で皐月賞、この町内清掃が5月末でダービーと重なるという非常に迷惑な日程であった。その後、いろいろあって今の形に落ち着いた。6月中旬だと雨に降られるリスクもあるのだが、今日はオッケーでした。その代わりに京都でゲリラ豪雨があって、宝塚記念の結果が左右されたようである。クロワデュノール、惜しかったのう。
〇わが町内はかなり高齢化が進んだ後、近年は建売住宅ができたりして、若い子育て世代の人たちが増えた。皆さん、たぶんこの「町内清掃」の同調圧力に驚いているのではないかと思う。いや、ワシだって最初は驚いたんだもん。とはいえ、今では「こうゆう風にやるんだよ」とお手本を示さねばならぬ立場である。
〇なに、年はとっても若いものには負けんぞよ、と思って荷物を運んでいたら、若い衆から「持ちましょうか」などと声をかけられてしまう。自分ではシャキシャキしているつもりが、周囲からはヨタヨタしているように見えたらしい。いかんのう。
〇仕事を終えたらひと風呂浴びて、ああ、明日の大経大の講義の準備が終わっていない。ということで、今度は頭脳労働である。授業はこれが全15回中の9回目。物事、何でも4分の3くらいまでいったところが難所というもの。次の次くらいまでが勝負です。
〇ちなみに来週6月22日分の講義は、外部の方も聴講できます。関西方面にお住まいの方で、ご関心のある方は下記のリンクから申込できますよ。締め切りは6月19日お昼までとなります。
●第18回
中小研セミナー(吉崎達彦氏)【参加者募集】
<6月15日>(月)
〇今朝は早起きしてW杯オランダ戦を観戦。あんまり期待はしていなかったのだけど、2度リードされて2度追いつくという実質「勝ち」に等しいドローでした。オランダの方が強そうに見えましたけど、運も呼び込んでゴールにつなげた感あり。森保監督、大胆に5人の交代枠を使って行きましたが、あれで追いついたことはこの後に生きてくると思います。
〇いつも思うことですが、日本チームはファウルが少なく、きれいなサッカーをしますよね。オランダ側は3枚ほどイエローカードをもらっていますが、日本側はゼロ。「サムライブルー」を名乗るのであれば、当然、そうあるべきだと思います。1998年のフランス大会以来、これで8大会連続で出場している。そこまでは立派である。
〇とはいうものの、日本はまだ決勝トーナメントで勝ったことがない。つまりTOP16までしか体験していない。今回は48チームが参加して、グループステージが12もある。1位と2位の24チームに加え、3位のうち成績上位8チームが追加で上がる。合計32チームが決勝トーナメントに進むから、そこで1つは勝たないとTOP16に届かない。
〇グループFの場合、1位通過の場合はグループCの2位と対戦し、2位通過だと1位と対戦する。グループCは1位ブラジル、2位はモロッコかスコットランドの公算が大。となれば、ここは是非とも1位通過で行きたいところです。次のチュニジア戦は勝ちたいですなあ。
〇ということで、サッカー観戦を終えてから大阪に出勤。授業の冒頭で「今朝の試合見てた人?」と聞いてみたら、手を挙げたのは2割から3割くらいでしたかね。いまどきの学生さんたちですから、おうちにテレビのない人が多いのか。もちろん「DAZNで毎試合、観てます!」という人もいそうだけど。
〇本日は、大経大にて秦正樹准教授とお話する機会がありました。『陰謀論』というとっても面白い本を書いた若き政治学者なんですが、なんと去年から大経大に移っておられたのですな。「政治に関心を持ち過ぎると陰謀論に流されやすくなる」「だから何事もほどほどに」という本書のメッセージは、当溜池通信的にはまことにツボであります。
〇秦先生、学生さんたちに対しては、「きみたち、少しはテレビのニュースを見た方がいいよ」と教えているのだそうです。うむ、不思議な時代になったものである。
<6月16日>(火)
〇しかしまあ、サムライブルーはけが人続出である。三苫が出られなくて、遠藤もキャプテンを返上して帰国することになり、しかも久保が全治3週間だそうである。スポーツに怪我はつき物ではあるが、ここまでくるとお祓いでもした方がいいんじゃないか、てな気もする。森保監督、しんどい戦いが続きますなあ。
〇そうかと思うと本日の日銀金融政策決定会合は、植田総裁が肝嚢胞(かんのうほう)感染症で6月9日から入院中である。本日、記者会見で代わりを務めた内田副総裁は、昨年末から白血病の治療で入院していて、先月末にようやく退院したところであるという。皆さん、大変であります。
〇政治家でも意外な人が意外な病気を抱えているもので、でも、それにはめげずに、務めて元気なところを見せていたりもする。まあ、あの人たちは、それが仕事みたいなところもありますからね。だから、あんまり心配しなくてもいいのだと思いますよ。
〇昨今は重責を背負っている人たちが、病気や怪我やメンタルとの闘いが不可避みたいな世の中になっている。実際にそうなんでしょうなあ。不肖かんべえも、昨今はすっかり「余生モード」になっておりますので、面倒な仕事は今さら抱え込みたくはありませぬ。
〇つくづく思いますが、健康は命よりも大事。読者各位も、くれぐれもご無理をなさいませぬように。
<6月17日>(水)
〇今宵は、とっても楽しくて面白くて勉強になる飲み会に参加しました。それによると、今の官邸の内部はかなり重症な様子。ワシが想像していたことはだいたい当たっていて、実態はそれよりもさらに深刻であるようです。ま、知らんけど。
〇てな話はさておいて、まったく別な話のご紹介。
〇「若いときの1日はあっという間だが、1年をとても長く感じる。年を取ると1日を長く感じるが、1年はあっという間に過ぎていく」――これ、万人に共通する現象じゃないかと思います。なぜ、そういうことになるのか。
*6歳の子供にとって、人生は未知なることの連続である。朝から晩まで好奇心に突き動かされて、1日はあっという間に過ぎていく。60歳の老人にとって、人生はだいたい既に知っていることの連続である。朝から晩まで新しく知ることは少ないから、1日をとても長く感じる。
*6歳の子供には、6年分の経験しかない。1年は全人生の6分の1である。だから長く感じるのは当然である。60歳の老人にとって、1年は人生の60分の1に過ぎない。だからあっという間に感じる。
〇若者と高齢者で時間の感じ方が違う、という「心の相対性理論」は、上記のように考えればごく自然なことでありますな。結論として、幼少期の体験はとても重要である。年を取ってからでは、学びに限界効用逓減の法則が働く。
〇もっとも人生のラーニングカーブは、人によっていつ訪れてくれるかわからない。だからこんな言葉があるのですな。原典は幕末の儒学者である佐藤一斎ですが、なぜか小泉純一郎さんのお気に入りフレーズでもあります。
少にして学べば、即ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば、即ち老いて衰えず。老いて学べば、即ち死して朽ちず。
<6月18日>(木)
〇昨日、ワシントンポスト紙が「抜いた」米・イラン間のMOUについて。以下は全文をDeepLを使って訳したものです。
●Read
the terms of Trump’s deal with Iran
The text of President Donald Trump’s memorandum of
understanding with Iran, as relayed by a senior U.S. official.
トランプ大統領とイランとの合意内容を読む
米国高官が伝えた、ドナルド・トランプ大統領とイランとの間の了解覚書の全文。
June 17, 2026 at 3:44 p.m. EDTToday at 3:44 p.m. EDT
By Washington Post staff
以下は、匿名を条件として本文を読み上げた米国高官によると、ドナルド・トランプ大統領とイランとの間の了解覚書の全文である。
アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、[日付]に誠意をもって以下の事項について合意した。
第1項:アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国、ならびに現在の戦争における両国の同盟国は、本覚書に署名することにより、レバノンを含むすべての戦線における軍事作戦の即時かつ恒久的な終結を宣言し、今後、相互に対していかなる戦争または軍事作戦も開始せず、相互に対する武力の威嚇または行使を控えるとともに、レバノンの領土保全および主権を確保することを約束する。最終合意書において、レバノンを含むすべての戦線における戦争の恒久的な終結、および本項のその他の規定が確認されるものとする。
第2項:アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、互いの主権および領土保全を尊重し、互いの内政に干渉しないことを約束する。
第3項:アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、最大60日以内に最終合意の交渉および締結を行うことを約束し、相互の合意によりこの期間を延長することができる。
第4項:本覚書(MOU)の署名直後、アメリカ合衆国は、イラン・イスラム共和国に対する海上封鎖およびあらゆる妨害や阻害措置の解除を開始し、30日以内に海上封鎖を完全に終了させる。この期間中、船舶の往来は、イラン・イスラム共和国が戦前の水準に回復させる船舶の往来数に比例するものとする。さらに、アメリカ合衆国は、最終合意の締結後30日以内に、イラン・イスラム共和国近隣から自国軍を撤収することを約束する。
第5項:本覚書(MOU)の署名に際し、イラン・イスラム共和国は、最善の努力を尽くして、ペルシャ湾からオマーン海へ、およびその逆方向への商船の安全な航行を、60日間限定で無償で確保するための措置を講じる。商船の航行は直ちに開始され、技術的および軍事的な障害の除去の必要性を考慮し、イラン・イスラム共和国による機雷除去は30日以内に実施される。イラン・イスラム共和国は、適用される国際法およびホルムズ海峡沿岸国の主権的権利に沿い、他のペルシャ湾沿岸国と協議しつつ、ホルムズ海峡における将来の管理および海事サービスの枠組みを定めるため、オマーン・スルタン国と対話を行う。
第6項:アメリカ合衆国は、地域パートナーと協力し、イラン・イスラム共和国の再建および経済開発のために、少なくとも3,000億米ドルを投じる、最終的かつ相互に合意された計画を策定することを約束する。本計画の実施メカニズムは、60日以内に最終合意の一部として確定される。関連する金融取引に必要なすべてのライセンス、免除、および許可は、アメリカ合衆国によって審査される。
第7項:アメリカ合衆国は、最終合意の一環として、合意されたスケジュールに従い、国連安全保障理事会決議(すなわちIAEA理事会決議)および米国による一切の単独制裁(一次制裁および二次制裁を含む)を含め、イラン・イスラム共和国に対するあらゆる種類の制裁を解除することを約束する。イラン・イスラム共和国およびアメリカ合衆国は、上記の制裁解除問題が極めて重要であることを認識し、これらについて相互合意に達するため、交渉において直ちにこれらの問題に取り組む意向を表明する。
第8項:イラン・イスラム共和国は、核兵器を調達または開発しないことを再確認する。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、第7項に記載されたスケジュールに従い、相互に合意される仕組みに基づき、備蓄核物質および濃縮物質の処分を解決することに合意した。そのための最低限の方法論として、IAEAの監督下での現地における希釈処理が挙げられる。また、両当事者は、最終合意において合意される満足のいく枠組みに基づき、濃縮問題およびイラン・イスラム共和国の核関連ニーズに関連するその他の相互に合意された事項について協議することに合意した。最終合意は、本項の規定を確認するものとする。アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、上記の核問題の極めて重要な重要性を認識し、これらについて相互合意を達成するため、交渉において直ちにこれらの問題に注力することを表明する。
第9項:最終合意が成立するまでの間、アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は現状を維持することに合意する。イラン・イスラム共和国は、その核計画に関する現状を維持し、アメリカ合衆国は、いかなる制裁も課さず、また同地域への追加部隊の派遣を支持しない。
第10項:アメリカ合衆国は、本覚書(MOU)の署名直後から制裁が解除されるまで、米国財務省が、イラン産原油、石油製品および派生製品、ならびに銀行取引、保険、輸送などを含むこれらに関連するすべてのサービスの輸出について、免除措置を発出することを約束する。
第11項:アメリカ合衆国は、本MOUの実施に伴い、イラン・イスラム共和国の凍結または制限された資金および資産を完全に利用可能にすることを約束する。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、交渉の過程において、これらの資金の解放に関する手続きについて相互に合意する。当該資金は、元の口座に留保されるか、あるいは移転されるかを問わず、イラン・イスラム共和国中央銀行が指定する最終受益者への支払いに全面的に利用可能とされるものとする。アメリカ合衆国は、これに応じて必要なすべてのライセンスおよび認可を発行することを約束する。
第12項:アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、本MOUの円滑な実施および将来的な最終合意の遵守状況を監視するための実行メカニズムを確立することに合意する。
第13項:本MOUの署名後、本MOUの第1項、第4項、第5項、第10項および第11項の実施が開始され、かつこれらの措置が継続して実施されることを条件として、アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、残りの各項についてのみ、最終合意に関する交渉を開始する。
第14項:最終合意は、拘束力のある国連安全保障理事会決議によって承認されるものとする。
〇ツッコミどころはいろいろありそうです。これ、60日間以内にまとまらないのではないかなあ。その場合でも、とりあえず7月4日の建国250年は乗り越えることができますけど。
<6月19日>(金)
〇今宵はJAPAN FOWARDの創設10周年の集いへ。はてさて、もうそんなになりましたか。とにかくおめでとうございます。
〇パーティー会場にて、元外交官と立ち話。あの14項目はひどいですねえ、と。いやもう、なにが「交渉の達人」(The
Art of the Deal)だ。これではアメリカ側の無条件降伏のようなものではないか、などと。
〇イラン側は何も譲歩せずに、対イラン制裁は全面解除となり、イラン産原油の輸出もオッケーとなった。しかもホルムズ海峡は向こう60日間は無料航行となるが、その後のイランによる支配権を黙認している。さらにイランのミサイル能力や代理勢力(ヒズボラやフーシ派など)支援も取り上げなかった。
〇何よりヒドイのは、イランの復興費用3000億ドルである。たぶん湾岸の産油国が投資させられるのであろう。が、彼らはイランの攻撃を受けて被災しており、自国の復興支援が欲しいくらいである。それがイランにカネを出させられるのでは、踏んだり蹴ったりではないか。くれぐれも「アメリカと同盟しているから大丈夫」などとは考えちゃいかんです。
〇などと話していたら、もと外交官氏曰く。「あれは文章もヒドイ」。国家間の覚書にしては、プロが書く文章ではないとのこと。そりゃそうだ。交渉の窓口はウィトコフとクシュナーなんだもん。外交交渉を不動産屋さんにやらせている上に、トランプさんが理解できるように書かれているのだから、そこは仕方あるまい。
〇たぶんクシュナー氏は、対イラン投資でいっちょひと儲け、みたいなことも考えているんじゃないだろうか。つまりトランプ家のファミリービジネスという配慮もありそうだ。やっぱり餅は餅屋。外交交渉は外交官にやらせるべきであると思料いたします。
〇もっともワシントンポスト紙で、デイビッド・イグネイシャスが書いている。「トランプは愚かにもこの戦争を始めてしまったが、さらなる被害が広がる前に終結させたのは正しい判断だった」と。われわれは、彼が成功することを祈るしかないのであると。
〇これにて一件落着、ではないのである。イスラエル国内は与党から野党まで、つまり反ネタニヤフ派も含めてこの合意には反対していて、大人しく従うようには思えない。アメリカ国内はと言えば、右から左まで非難の嵐である。特に核開発に関しては、議会のチェックが厳しいものになるだろう。果たして60日後にはどうなっているのでしょうか。
<6月20日>(土)
〇アメリカのイラン攻撃は、野球の試合であれば10対1の一方的な勝利なんだけれども、アメリカとしては「1点取られた!」ことがどうにも我慢ならなくて、結局は敗北を認めるようなことになってしまった。この間の事情は今朝アップされた拙稿をご参照。お馴染みの競馬予測付きであります。
●結局「覚書」締結で、当面の相場は「TACO」に賭けていた側の勝ち、だが「イラン戦争」は本当に終結できるのだろうか (東洋経済オンライン)
〇アメリカの同盟国にとっては、これはとっても迷惑な話であります。中間選挙という国内事情のために、いわば「売られた」形のイスラエルやアラブ湾岸産油国は、憤懣やるかたないことでありましょう。しかもこの後、対イラン投資の「請求書」が回ってくる公算が高い。
〇国内的にも、「何ちゅうことをしてくれたんや!」という声は確実に高まるはずである。久しぶりにNYT紙のトマス・フリードマンの論説を読んでみたら、今回のイスラマバード覚書のことを「まるで不動産会社の破産申請――つまり財政的な降伏――のようだ」と評している。結構長文です。
●Trump
Put His Own Interests Above All in the Iran Deal (ニューヨークタイムズ紙、オピニオン欄)
〇それにしてもアメリカがイランに勝てない、という事実は重い。そしてロシアもまた、ウクライナに押しまくられている、という現状は何を物語るのでしょうか。軍事大国というものは、意外と勝ちにくいものなのかもしれない。
●「もう戦争を続けられない」本音が透ける…追い詰められたプーチンがウクライナに用意した「新提案」の中身
〇昨晩もパーティー会場で立ち話した名越健郎先生、ワシが「プーチン、ヤバいんじゃないっすか?」と尋ねたところ、まさに上記のようなことを言っておられました。9月18〜20日に行われるロシアの下院&地方議会選挙は要注目です。
〇こんな情勢であれば、「中国は台湾に攻め込んでも勝てない」という未来がうっすらと見えてくるような気がする。習近平さん、早く気づいてください。軍事大国の武力行使は碌なことがないのですから。
<6月21日>(日)
〇「それにつけてもカルタゴは滅ぼさねばならない」――かつてローマ共和国の元老院において、大カトーは税金の話をしても道路インフラの話をしても、演説の最後には必ずこれを言って締めたそうである。いや、その通りなのである。今日の日本は何が何でもチュニジアを破らねばならぬ。ということで、昨晩はチュニジアワインを飲んで、今日に備えたのである。
〇ワシはサッカーは4年に1度、W杯の時だけ日本チームを応援する底の浅いファンである。それでも、過去のW杯日本戦はほとんど全部見ている。そのワシがつくづく思うに、こんなに安心して見ていられる試合はなかった。なにしろ開始早々に先取点である。鎌田のヒールに運よく当たったゴールだが、どんな形でも獲れば一点。よくやった!
〇そして2点目は上田絢世のミドルシュートである。おおおおおおお、昔はねえ、あんな距離からシュートできる日本人選手は居なかったのだよ。ああ、時代は変わった。いいものを見させてもらった。若いって素晴らしい。日本チームがこういうサッカーができるようになる日を、ワシはずっと待っていたような気がするぞ。
〇2対0でリードしたけれども、それでもベルギー戦の悪夢があるから、安心はできない。2018年のロシア大会、アディショナルタイムにキッチリ逆転されて、史上初のベストエイトという夢がするすると逃げて行ったのだ。訪欧中の今上陛下はベルギーに移られたそうですが、あの試合はきっとご覧になっていたことでしょう。あれこそは悪夢でありました。
〇対ベルギー戦で払った授業料のせいか、後半に入ってもサムライブルーの攻撃は止まないのである。伊東純也のダメ押し弾があり、上田のヘッドで4点目が入る。わははははは。圧倒的ではないかわが軍は。あれだけ怪我人が出ても、このパフォーマンス。守備もしっかりしていて、とにかく危なげがない。
〇天気の悪い日曜日の午後に、こんな試合を見られるのはまことにありがたい。ところが第3戦の対スウェーデン戦は、金曜日の午前8時からというではないか。溜池通信の締め切り日に何たることぞ。とはいえ、これは見なければならぬ。
〇ちなみにローマは第3次ポエニ戦役でカルタゴを滅ぼしたが、「塩をまいて何も生えないようにした」というのはさすがに史実ではないらしい。むしろローマ元老院には、「カルタゴが居るからこそローマは緊張感を得られる。外敵がなくなればローマは贅沢と内紛に溺れる」と主張した論者も居たという。それでこそ共和制である。
〇実際のローマ共和国は、カルタゴ滅亡後に内乱が勃発し、ポンペイウスやシーザーの台頭を招くことになる。われわれもまたチュニジアに敬意をもって当たるべきである。サムライブルーが克服すべき相手は「第2戦のジンクス」であった。いや、こんな第2戦を見させてもらって、感謝しかありませぬ。
<6月22日>(月)
〇諸般の事情により、昨晩のうちに大阪に移動する。新大阪駅の「ぼてじゅう」で深夜に食う「肉玉」はやはり旨い。身体には悪そうだが、甘美なひとときである。
〇しかるに日曜日夜の新幹線はまことに混んでおる。そんな中で、車中にてせっせと仕事をするストイックな私。てゆうか、この週末の世界の変化に追いつくのは大変なのであります。
〇そして本日は、大経大における第18回
中小研セミナーの講師を務めました。当不規則発言(6月14日)を見てご来場いただいた方も多数いらっしゃいました。伏して御礼申し上げます。その昔、日本ニュージーランド経済人会議でお世話になったMさんがいらしていた、というのはサプライズでした。恐縮至極。
〇今日になって、さっそくトランプ大統領がイラン再攻撃の脅しをかけている。あんた、背中が煤けてるぜ。イスラマバード覚書の第2条には、「アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、互いの主権および領土保全を尊重し、互いの内政に干渉しないことを約束する」と書いてある。攻撃をにおわすことは、既にMOU違反である。わかっとるのか、と申し上げたい。
〇だからウィトコフやクシュナーのようなド素人の不動産屋に外交交渉をさせるから、こういうことになる。ガリバフ議長やアラグチ外相の方がよっぽど手練れである。こんな風にしてアメリカはイランに翻弄されている。ああ、もう見ちゃいられない。
〇他方、イラン側はホルムズ海峡再封鎖を脅しに使っている。しかるに今回のMOUはイラン側の一方的勝利である。そのMOUをみずから放棄することはないでしょう。こんな美味しい条件を自分から捨てるわけがありませぬ。
〇大阪で仕事を終えた後は、再び新幹線で取って返すのである。しかるに月曜夕方も混んでおりますなあ。東西の人の行き来は活発でありまして、日本経済はこのホルムズ危機を何とか乗り切ったのではないかと考える次第です。
〇東京に戻ってから、宮家邦彦さん他と飲み会。とっても勉強になったのですが、なんと宮家さん、明日のニッポン放送の出番じゃありませんか。すいません、遅くまでお引とめいたしまして。飯田浩司さん、どうかお手柔らかに、と言っておきましょう。
<6月23日>(火)
〇ハッと気が付いたら今日は、あのBrexitが決まった英国の国民投票からちょうど10年目。あれは木曜日でしたよねえ。52%対48%という僅差で、EUからの離脱が決まりました。今から思えば、しみじみ愚かな決断でありました。てゆうか、国民投票をやること自体が、あんまり利口なことではなかったよね。
〇それから10年目の今日(英国時間では22日)、もたらされたニュースはキア・スターマー首相の辞意表明でした。この10年間で6人目の首相の辞意表明です。デイビッド・キャメロン→テリーザ・メイ→ボリス・ジョンソン→リズ・トラス→リシ・スナーク(ここまで保守党)→キア・スターマー(労働党)の順です。なんだか2006年から2012年にかけて、毎年のように首相が入れ替わっていた日本みたいですな。
〇スターマーは英国においては久々の労働党政権で、2024年7月の総選挙で大勝して地位に就きました。それが今年5月の統一地方選挙で、第三政党のリフォームUKに大敗してしまう。それでいきなり引き摺り下ろされるのですから、いかに今の英国における有権者、そして政治家に「堪え性がなくなっている」かがよくわかります。次の人がいきなり上手くやれるとは、ちょっと考えにくいですけどねえ。
〇英国こそは民主主義国のご本尊です。わが国の議会制民主主義も、当然、ウェストミンスタースタイルをお手本としています。そして英連邦の多くの国もまた同様です。ところがそんな国々にも、「分断化」や「両極化」は押し寄せているのですよね。
〇最近、不肖かんべえがとんとご無沙汰しているニュージーランドでは、今年11月7日に総選挙が予定されています。米中間選挙の4日後でありますな。すでに同国は選挙モードに入っておるのですが、現国民党政権のクリストファー・ラクソン首相の政権はまだ3年目です。ところが世論調査では労働党が32.2%、国民党が30.1%とリードされている。ニュージーランドでは非常に珍しい「1期3年だけの政権」になってしまうかもしれません。
〇キウイたちは政治的に成熟した人たちなので、どんなにダメな首相でも2期はやらせます。逆にどんなに良い首相でも、3期やったら4期目はありません。ヘレン・クラークさんの時がそうでしたね。「彼女に不満はないけど、10年は長過ぎるよね」というのがキウイたちの判断でした。仮にラクソン首相が下野するとしたら、かなりの椿事です。同国で20世紀以降で1期のみの政権は2つだけ、国民党では初めてのことになるんだそうです。
〇確かに昨今のNZは不景気であるし、ホルムズ海峡危機でも打撃を受けている。なにより人口530万人の同国では、インフレになったらひとたまりもない。とはいうものの、キウイたちはまだそれほど党派的ではないし、少なくとも豪州や欧州に比べればずっとマシである。「エリート対普通の人たち」みたいな対立がないのが、ニュージーランドの良さなんじゃないかと思っております。
〇民主主義国の至るところで、「我ら対彼ら」みたいな分断が起きている。英国はもう処置なしかもしれません。日本はせめてそうならないようでありたいものです。ワシがかつてNZにしょっちゅう通っていた頃、かの国の人々は「俺はナショナルだ」「レイバーだ」みたいなことを言わず、「今度はナショナルじゃなくて、レイバーの番かねえ」といった風に語っていたものです。日本も本当は、そんな風でありたいものであります。
<6月25日>(木)
〇ブルウィップ効果、という言葉がある。「ブル」=牛、「ウイップ」=ムチで、牛追いのムチがしなるように、最初は小さなうねりがじょじょに大きく広がっていく様子を示している。流通の世界ではよくある話で、最初は小さかった需給のミスマッチが、だんだん洒落にならない規模に広がっていく。転じて、「サプライチェーンのマネジメントは重要ですよ」という結論になる。
●ブルウイップ効果(物流用語)by西濃運輸
〇昨今、うるさく言われている「ナフサがない!」という話も、だいたいこれで説明がついてしまう。「ない、ない」と世間が騒いでいると、本当に市場からモノが消えてしまう。「流通の目詰まり」というヤツで、皆が在庫を長く持とうとするから現物が品薄になるし、中には「買い占め、売り惜しみ」に走るあくどい業者も出てくることになる。
〇いやね、先日、まさにそういうことがあったのですよ。外車に乗っている知り合い曰く、「そろそろエンジンオイルを交換してください」というサインが愛車に出たから、ディーラーに行ったんだそうです。するとディーラー、「オーナー、これはまだ大丈夫です。交換する必要はありません」と言われた由。
〇どうやらオイルの手持ちが少ないので、どうしても必要な客の分だけ交換しているらしい。そんなことを言われても、こっちは愛車に出る「オイル替えろ」という表示が気になっているのだから、なるべく早く替えたいのである。そこで「自分でエンジンオイルを買って、ディーラーに持っていけばいいじゃん!」と思って自動車用品店に行ってみたら、なんと予約済みのお客でないとエンジンオイルは買えません、と言われたのだそうだ。
〇その話を聞いた直後の不肖かんべえのところへ、トヨタ店から「12カ月点検のご案内」が届いた。点検項目を見ると、「エンジンオイルの交換」とあるではないか。思わずトヨタ店に電話して、「ホントにオイルあるの?」と聞いてみた。すると、元気のいい声が戻ってきた。
「ハイっ、あります。今のところは大丈夫ですから、どうぞご心配なく!」
〇そんなことを言われても、ワシが予約した12カ月点検は2カ月後である。いやね、ウチの自家用車なんて走行距離が短いから、別にエンジンオイルの交換なんて要らないはずなのだ。それでも8月にトヨタ店に行った際に、「エンジンオイルがありません!」と言われたら、あんまりいい気はしない。そこで、「じゃあ、頼んだよ」みたいなことを言って電話を切ったのである。
〇後になってから気がついた。おそらくトヨタ店内では翌日のミーティングか何かで、「お客様から、2カ月後のエンジンオイルの在庫についてお問い合わせがあった」「是非、3か月分以上の在庫を確保しなければなるまい」
〇ああ、これぞ典型的なブルウイップ効果ではないか。トヨタさんのことだから、今ごろはきっと向こう半年分くらいのオイルを確保してしまっているのではないか。その分、ほかにはエンジンオイルが回らなくなってしまう。かくして、「ナフサない、ニッポン詰んだ、イェーイ」みたいな無責任な言説に尾ひれがつくことになる。気を付けよう、ブルウイップ効果とトヨタ店の善意。それからメディアの報道もね。
<6月26日>(金)
〇昨日のお話は反響が大きくて、いろんなレスをいただいたのですが、トヨタ自動車関係者から頂戴したサイドインフォメーションを下記しておきます。
(1)トヨタは年間数百万台の自動車を国内生産しており、それらは出荷の際にすべてエンジンオイルを充填しなければならない。それは巨大な需要となる。
(2)ゆえにトヨタが購入するオイルは流通を通さず、石油会社から直の取引となる。昔からずっとそう。
(3)アフターサービス用のオイルはいわばオマケのような存在だが、一括で管理して全国の販売店に流している。
(4)トヨタ店に対するデリバリーも「カンバン方式」で流しているので、半年先までの在庫を持たせるようなことはありませぬ。
〇なるほど、この点が外車ディーラーとの決定的な違いなのですね。いかにもトヨタさんらしいお話でありました。
<6月28日>(日)
〇しかしまあ、週末にダブル台風が到来し、しかも地震が各地で頻発している。おっかないですなあ。こんな日は、家でおとなしくテレビを見ているに限りますなあ。
〇W杯、おそるべきことにメッシさまは、ここまで2ゲームで5得点。アルゼンチンのトーナメント行きは確定しているのだから、今日くらいはお休みされるのかと思ったら、途中出場でしっかり1点追加しておられる。これでW杯6大会に参加して通算19ゴールですと。歴代2位のクローゼ(ドイツ)が16得点だそうですので、あなおそろし。
〇と思ったら、フランスのエムバペが今大会4ゴールで、通算16ゴールになっているらしい。こちらは4大会目でまだ27歳だから、たぶん5大会目もあるでしょうなあ。ここまで見たところ、やはりこの両チームが頭ひとつ抜けているように見える。
〇そしてわがサムライブルーは、明日の午前2時からヒューストンで対ブラジル戦である。うむ、あまり勝てる気はしないのだが、これはライブで応援しなければなるまい。それにしても今大会は場所が広いせいもあるのだろうが、朝だったり昼だったり夜だったり、試合時間に時差があり過ぎである。
〇他方、本日の函館記念(G3)では、10番人気のファウストラーゼンに小林美駒(みく)騎手が騎乗して、見事勝利に導きました。去年の弥生賞を勝ったきり、長い低迷に苦しんでいた馬を復活させ、これが彼女にとっては重賞初勝利。今村聖奈騎手に続く女性ジョッキーの快挙であります。
〇今日の聖奈ちゃんはと言えば、小倉2レースの3歳未勝利戦で2億8600万円の良血馬、サンダーバードに騎乗して、6戦目にして遅い初勝利をもたらしている。これは彼女を起用した藤田晋オーナーが、「勝負師」だったと言えるんじゃないだろうか。
〇ちなみにJRAの女性ジョッキーはほかにも4人います。古川奈穂、永島まなみ、河原田菜々、谷原柚希です。こういうときは続くもんですから、来週以降も「狙い目」になるんじゃないでしょうか。博打は「ツラを張れ」っていうくらいですから。
<6月29日>(月)
〇本日も大経大へ。授業もあと1か月を残すのみとなりました。
〇経済学部特殊講義「貿易と日本経済」、本日の授業ではニュージーランドに関する話を入口にして、「TPP思い出話」を語ってみました。今となってはどうでもいいような話になりますが、本当に不思議な紆余曲折だったんですよねえ。
@最初は2006年に、ニュージーランドなど4か国がTPPという小さな枠組みを作った。志の高いFTAを作ることが目的だった。
A2009年にオバマ新政権が参加を宣言する。参加国も一気に増えて、ついには「中国に対抗するためのツール」という巨大プロジェクトに昇格する。
B日本はそれに参加するかどうかで迷い続ける。当時は民主党政権下で、「3・11震災」の後だったこともあり、「陰謀論」のような変な反対論が噴出した。
C2012年末の第2次安倍内閣の発足と同時に、日本はTPP交渉参加に舵を切る。この時点では、非常に心もとないプレイヤーであった。
Dところが交渉に参加してみると、甘利明主席交渉官以下の体制は意外としっかりしていて、頼りないフロマンUSTRの背中を押しつつ、何と2015年秋に実質合意にこぎつける。
E12か国でTPPが妥結した!と喜んでいたら、なんと2016年11月の米大統領選でトランプさんが勝ってしまい、就任と同時に公約通りTPP離脱の大統領令を出してしまう。
F残された哀れな11か国は、その後、「TPP11」という形で合意にこぎつける。今日の「CPTPP」の誕生である。その後は英国が参加する。
〇後から振り返ってみると、2016年の米大統領選で飛び交ったのは「TPPでアメリカは食い物にされる」という一種の「陰謀論」で、それは民主党政権下の日本国内で飛び交ったものと大同小異であった。逆に言うと、日本国内の「TPPは日本を食い物にするアメリカの陰謀」説は、トランプ大統領が「TPP離脱」を宣言すると同時に、急速に下火になった。そら、そうだわな。陰謀の首謀者が逃げ出したんだもん。
〇ともあれ、今の日本には「貿易自由化」に対する変なアレルギーは小さくなっている。「外国産のコメは一粒たりとも入れさせない!」という国会決議があった時代を記憶する者としては、なんとも不思議な「進化」であるけれども、その大功労者の一人にトランプさんがいるのではないか。
〇「陰謀論」というのは、何かのはずみでキレイに消え去ってしまうものらしい。かつて自称「TPPの伝道師」として、全国各地で変な矢面に立たされ続けた人間としては、あらためてそんな不思議を感じるところであります。
<6月30日>(火)
〇昨日は帰りの新幹線の中で爆睡し、家に帰ってからも少し寝て、午前1時半から観戦しましたですよ。いやね、残念でしたよ。前半を折り返した時点ではリードしていた。佐野海舟、よくやってくれた。でも、それで焦るような相手ではなかったですな。さすがはブラジル。
〇後半になってブラジルが作戦を変えてきたら、とたんに日本側が浮足立った。同点になってから後は、もう全然勝ち目がないように見えました。延長戦になっても、答えは同じだったような気がします。やっぱり地力で負けておったですねえ。
〇それにしてもW杯というものは、ある瞬間に突然終わりが来るのです。それまで光り輝いて見えた選手たちが、「あっ、こいつらの挑戦はもう終わってしまったんだ!」ということに気がつく。4年に1度の興奮は、いつも同じように唐突に終わる。それは虚しさとか脱力感とかいう、そんな生易しいものではない。
〇われわれが感じている虚無感は、たぶん選手たちが感じているものの数千、数万分の一でありましょう。ただし残念は残念だ。ああ、終わってしまっただよ。もうちょっと先の景色を見てみたかった。ただしそのためには、あまりにも選手のけが人が多過ぎたし、くじ運もよろしくなかった。
〇それにしても今年は、少なくともあのブラジルを本気にさせたし、わかりやすい落ち度もなかった。あったのかもしれんけど、レベルの低いサッカーファンであるワシにはわからん。たぶんサムライブルーは、4年前よりも少しだけ強くなっているのであろう。
〇ということで、サムライブルーの挑戦は終わった。それでもW杯はまだまだ続く。興奮と熱気も続くはずなので、そこはもうちょっとだけ楽しませていただこう。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki