2007年1月4日掲載分



〇小泉官邸秘録 (飯島勲/日本経済新聞社)1800円+税


 安倍首相の支持率低下が止まらない。原因はマネジメント能力の不足、もしくはコントロールセンターの不在であろう。だから論功行賞大臣と大勢作った補佐官にまとまりがない。小泉時代であれば、豪腕総理秘書官がバシバシしきっていたものなのだが。

 その飯島氏が回顧録を出版した。たぶんに計算づくと思しきところもあるが、小泉時代5年半を振り返るに格好の資料である。「丸投げ」「ワンフレーズ」と呼ばれた小泉首相が、実は随所で強力な指導力を発揮し、ブレない姿勢でさまざまな政策課題に取り組んだ様子が描かれている。

 冒頭から強調されているのは、官邸における「チーム小泉」の存在。通常の4人の事務秘書官に加え、その他の省庁から連絡室参事官と呼ばれる5人を集め、政務秘書官である飯島氏を合わせた10人が総理の手足となった。豪腕秘書官はチームワークを重視し、官僚を上手に使っていたことになる。

 それにしても、もっとも近い距離から、もっとも長く見てきた著者でさえ、これだけ畏怖させてしまう小泉純一郎氏とは、なんという孤独な人物だったのか。その点がもっとも心に残る。




○アメリカの終わり (フランシス・フクヤマ 講談社)1800円+税


 フクヤマ氏といえば、現代米国を代表する思想家の一人。1990年代には『歴史の終わり』という著書で冷戦終了後の論議に一石を投じたことで知られる。昨今はネオコンの一人と見なされてきたが、本書は「ネオコンとの訣別宣言」として欧米論壇の注目を集めている。

 ネオコンの来歴や今後の世界秩序を語っている部分は、一線級の知識人ならではの厚みを感じさせる。他方、イラク戦争を批判している部分は、どこかで聞いたような「後知恵」みたいである。それでも米国外交の裏に、この手のイデオロギー論争が常に行われていることは、知っておく必要があるだろう。








編集者敬白





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