2006年12月7日掲載分



〇中国の「核」が世界を制す (伊藤貫/PHP)1400円+税


 北朝鮮の核実験以来、日本の核保有に関する論議が喧しい。とはいえ、「自分自身は核保有に反対だけど、論議は必要ではないか」式の腰の引けた意見が多く、核保有を強力に推進する論者は多くない。居たとしても、単に勇ましいだけの浅薄な議論であったりする。

 そんな中で、「日本の核保有」を正面から主張しているのが本書である。著者のメッセージを単純化して紹介すると、「中国は皆が思っているより邪悪であり、強力である。米国は皆が思っているより無責任であり、脆弱である。ゆえに日本は核による自主防衛を図るべきである」となる。

 この主張を否定することは、思いのほか難しい。シンプルで歯切れのいい語り口は、「日本版ネオコンサーバティブ」といったところか。良かれ悪しかれ、知的な刺激に満ちた挑戦であり、本書でバッサリと斬られている「現実逃避主義の左翼」はもちろん、「米国依存主義の保守派」も、この議論を黙殺してはならないだろう。




○市場浄化 (田原総一朗/講談社)1575円


 本書はご存知、田原総一朗氏が挑むメディアの同時代史だ。ホリえもんや村上ファンドに対する「国策捜査」に異議を唱え、NHK改革と「地デジ」で揺れる民放を撃ち、「失敗王」孫正義、「USEN」宇野、楽天三木谷などと語らい、最後はグーグルの前でメディアの未来を考える。

 思えば今年もネットやメディアが大荒れの1年だった。ホリえもんや村上ファンドは「去るもの日々に疎し」となりつつあるが、そうだとしたら「国策捜査」としては思う壺ということになる。






編集者敬白





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