2006年11月2日掲載分



〇経済財政諮問会議の戦い (大田弘子/東洋経済新報社)1800円


 安倍内閣の人事で最大のサプライズは、経済財政担当大臣に経済学者の大田弘子氏が選ばれたことだろう。大学から内閣府に入り、竹中平蔵大臣を補佐してきた大田氏の入閣は、「小泉改革を継続する」という安倍政権の意思表明でもあった。

 本書はその大田氏が、小泉政権下で経済財政諮問会議がどんな役割を果たしてきたかをまとめたもの。この会議は橋本行革の成果として、2001年1月の省庁再編とともに誕生した。ひとつ間違えばサロン風の懇談会になったかもしれないが、小泉政権の発足によって政策の立案・決定の場となった。そしてこの会議を足がかりとして、「骨太の方針」が作られ、予算、税制、行革といった政策決定プロセスが「官邸主導」になっていく。

 国会議員や官僚たちとの激しい折衝を繰り返して、著者は「政策とは妥協だ」という確信を抱いたという。おそらく今後の大田大臣にも、より多くの折衝と妥協が必要になるのだろう。




○ニヒリズムの宰相 小泉純一郎論 (御厨貴/PHP新書)720円


 わずか1ヶ月前に首相を辞めた小泉さんは、もうほとんど話題に上らない。これだけ去り際がキレイな権力者もめずらしいが、そんな人だと見抜いていたからからこそ、国民は最後まで高い支持率を与えたのであろう。

 ところがこの首相は、学者やジャーナリストなどの「政治のプロ」にとっては、ずっと謎の存在であった。本書では気鋭の歴史学者が、「説得も調整も妥協も拒絶した首相が、なぜ偉業を成し遂げたのか」と、分かりやすい筆致で小泉内閣の歴史的意味づけを試みている。

 しかし、「ニヒリズムの宰相」という形容はどうだろうか。やはり小泉さんのことは、巷の「小泉ファン」がいちばん良く理解していたような気がする。






編集者敬白





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