2006年10月5日掲載分



〇テレビ政治 国会報道からTVタックルまで (星浩・逢坂厳/朝日新聞社)1260円


 発足したばかりの安倍政権は、ビックリするほど支持率が高い。新聞、雑誌系はずいぶん辛口の評価なのだけど、ほとんど影響がない。それよりもテレビに映る安倍さんが、「真面目そうで、ちょっといい感じ」というのが大切であるらしい。こんなふうになってしまうと、昔の鈴木善幸さんとか小渕恵三さんのようなタイプは、永遠に首相にはなれないかもしれない。

 いつしか政治は、テレビ抜きでは語れなくなってしまった。テレビ番組も、『ニュースステーション』のような報道番組から、『TVタックル』のようなエンタテイメントに変化している。今や政治家がテレビを使い、テレビも政治家を利用する時代である。

 その背景にあるものは何か。朝日新聞の政治記者である星氏(テレビのコメンテーターもやっている)とメディア学者の逢坂氏のコンビが取り組んでいる。豊富なデータを駆使して描く「ワイドショー政治」と「小泉劇場」の姿には説得力がある。




○カウンターから日本が見える 板前文化論の冒険 (伊藤洋一/新潮新書)


 カウンター越しに料理を出す店は、世界でも日本にしかない。と言われると、最初にエッと思うけれども、なるほど確かにそうだ。板前さんが目の前で料理をさばいて提供してくれるのは、和食ならではの楽しみというもの。さて、このスタイルはいつ頃、どうやって誕生したのだろうか。

 食通の著者がこの疑問に答えたのが本書である。食の本場は関西であった、板前さんの地位はとても高かった、カウンターのよさは上座下座がないこと、など膝を打ちたくなるような指摘が続出。日本文化の魅力を再発見できる。






編集者敬白





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