2006年9月7日掲載分



○『自民党改造プロジェクト650日』(世耕弘成/新潮社)1300円


 「安倍晋三総裁」の実現に向けて、広報戦略を担当するキーマンは世耕弘成参議院議員。NTT広報室勤務の経験を生かし、広告代理店とともに昨年の「9・11総選挙」を仕切った過程は前著『プロフェッショナル広報戦略』などで有名だ。その世耕氏が、自民党改革に携わった課程を公開している。

 2003年末、自民党は安倍幹事長(当時)の下で組織改革に乗り出す。が、翌年6月の参院選で自民党は敗北してしまう。これで党内の危機感が高まり、「候補者の公募制」「資金は現金でなく、銀行振込で」「シンクタンクを作る」などの改革が進み始める。

 思うに組織改革には、トップの決意などとともに、「多数派が危機感を共有すること」が欠かせない。普通の企業ではこれが難物だが、自民党では各議員が「選挙で負ければタダの人」と思うがゆえに、改革へのコンセンサスが醸成されたようだ。

 日頃の政治報道からは伝わってこない、政党内部の姿が窺えて興味深い。




○『不運のすすめ』(米長邦雄/角川Oneテーマ21)686円


 将棋ファンであれば、人生や運に関する米長永世棋聖のエッセイを読んだことがあるはず。そのヨネさんは今、日本将棋連盟会長職にあり、名人戦の毎日新聞から朝日新聞への移籍問題で非難の渦中にある。その心中やいかに。

 と、本書を手にとってみたところ、ほとんどはかつて読んだ内容の焼き直し。「名人戦問題」のくだりは自己弁護に終始する。ヨネさん、しっかりしておくれ。ファンが心配しているのはアンタの評判じゃなくて、将棋連盟の評判なんだよ。






編集者敬白





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