2005年5月16日掲載分




○『つくば科学万博クロニクル』(洋泉社MOOK)1200円+税

 愛知万博の人気はいまひとつのようで、連休の出足も予想を下回ったとか。この際、目の前の万博はさておくとして、今年はつくば科学万博からちょうど20年。こんな本を手にとって、往時を振り返って懐旧の念に浸ってみるのも一興というものだ。「トリビアの泉」になりそうなネタがいっぱい詰まっている。

・ 開会当時の万博中央駅は、現在はひたちの牛久駅になっている。

・ マスコットになったコスモ星丸君は、愛知県一宮市の中学1年生の作品だった。

・ 開会式では西条秀樹がテーマソング「一万光年の愛」を熱唱した。

・ ソニーのジャンボトロンに、まだ無名時代のビル・ゲイツが訪ねてきた。

・ C&Cパビリオンを訪れた中曽根首相は、隕石を撃ち落す射撃でA判定をとった。

・ 芙蓉ロボットシアターのロボットを、閉会後にディズニーが引き取りたいと申し出た。

 1970年の大阪万博は、遠い21世紀に思いを馳せた。1985年のつくば博は、現実的な近未来を描いて見せた。プラザ合意直前の日本企業はまだ元気一杯。盛大なお祭りの中で、各社が技術を競いあった。ここでの実験が、90年代の発明や新製品に大いに役立ったことだろう。

 それに比べ、2005年の愛知博では、未来よりも過去の方が輝いて見えるらしい。なにしろ売り物が冷凍マンモスと「となりのトトロ」の家というくらいである。いっそのこと、過去を追想する万博にすれば良かったかもしれない。

 20年前の記録を見てしみじみ思う。「日本にもこんな元気な時代があったんだなあ」。



○『わたし、かわいいお金を海外投資でふやしました』(浅川夏樹/実業之日本社)1400円+税

 20代の頃は「空からマンションが降ってくるかもしれない」と思っていた銀座ホステスのが、ある日、この仕事には退職金も労災もないと気づく。それから始まる徒手空拳での資産形成への試行錯誤の日々。なんとオフショア取引まで実践してしまう。

 大袈裟な成功を吹聴するマネー本は多いが、本書はその点では控えめ。むしろ、人との縁に投資することの大切さを教えてくれる。



○『「裸のサル」の幸福論』(デズモンド・モリス/新潮新書)680円+税

 動物学者のモリスが、「人間にとって幸せとは何か」に迫る。ヒトは狩猟生活を営むうちに、幸福を知るようになったという。そして幸福には17の種類がある。麻薬もテロリズムも、やってる人たちは「幸福」を求めているのである。唖然としながら読んでいるうちに、はたと思い当たることがあったりする。ひょっとすると、あなたの人生を変えてしまう1行が見つかってしまうかも。





編集者敬白





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