2005年4月18日掲載分




○『通貨燃ゆ―円、元、ドル、ユーロの同時代史』(谷口智彦/日本経済新聞社)1800円+税

 政治と経済の接点を追った英国人学者に、スーザン・ストレンジというその名も奇 妙な女性がいた。彼女が切り開いた「政治経済学」は、ときに異端の扱いを受けつつ も、独自の地位を占めて今日に至っている。そのストレンジに生前、最後にインタ ビューした記者が、本書の著者である谷口智彦氏だった。

 その谷口氏が挑んだテーマは、副題にある通り「円・元・ドル・ユーロの同時代 史」。本の帯には「通貨の本質は国際政治そのものだ」とある。まさにその通りの歴 史が描かれている。

 ブレトンウッズ会議は、第2次世界大戦後の世界経済の秩序を決定するが、英国を 代表して参加したのはケインズであった。しかし偉大な経済学者は、米国との交渉に 翻弄されて失意のうちに憤死する。英国は「マネー敗戦」を体験し、ドルは基軸通貨 の地位をポンドから奪い取ったのであった。

 ほかにもニクソン・ショックやアジア通貨危機など、通貨をめぐる様々なドラマが 取り上げられる。その姿は、「権力があって、初めて通貨がある。権力なきところ、 紙幣は一枚の紙片に過ぎない」と著者が語る通りである。

 通貨をめぐる戦いは今も日々続いている。双子の赤字でドルは暴落するのか。人民 元の切り上げはいつ行われるのか。これらの問いに答えるためには、本書のように政 治と経済の間を融通無碍に行き来する必要がある。

 それに成功している点では、本書はおそらく船橋洋一氏の『通貨烈烈』以来かもし れない。「和製ストレンジ」の今後に期待したい。



○『ブッシュのアメリカ改造計画』(小野亮・安井明彦/日本経済新聞社)1900円+税

 コワモテ風の題名と黒い表紙から、陰謀論の本に見間違うかもしれない。が、著者 は若手のみずほ総合研究所の研究員であり、内容はごくまっとうなブッシュ政権への 分析となっている。生臭い米国政治の内幕に、きっちりしたマクロ経済の分析が備 わっている。

 とくにブッシュ政権2期目の内政の柱となる「オーナーシップ社会」について、詳 しい説明を行っているのがお値打ち。知ったかぶりできるネタがたくさん載ってい る。



○『3年後に笑う!』(今井澂/ビジネス社)1500円+税

 間もなく引退を迎える団塊の世代に向けて、ご存知、マネードクターが書き下ろし た投資の指南書。人もうらやむ老後を暮らすには、「できれば2億円、最低でも4〜5 千万円は貯めておきましょう」という。本書には向こう3年間で資産を増やす、短期 決戦型の運用方法がいっぱい。目指すは「年金は妻に任せて生活費にあて、それ以外 の出費を自分でやりくりする老後」だ。





編集者敬白





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