2004年4月3日掲載分




○『織田信長の経営塾』(北見昌朗/講談社)1500円+税

世に信長ファンは多い。とくに誰もが「一国一城」である中小企業経営者は、多かれ少なかれ独裁者にならなければならない立場なわけで、織田信長の発想や行動に学ぶべき点は普通の人より多いかもしれない。

 本書は企業コンサルタントが、織田信長をネタにしながら、中小企業向けに経営の要諦を説く、という趣向。一昔前なら「プレジデント」誌が得意とした企画で、同工異曲のものは数多く出ているはずだが、「戦国時代の恩賞」に焦点を当てているところが面白い。いつの世も部下を本気にさせるものは「ご褒美」というわけだ。

 信長は、自らの周りを務める「母衣」衆を20人選ぶときに、わざと19人だけ選んで最後の1人は「該当者なし」にした。部下たちが空席を目指して、「そのうち俺も」と競わせるためだ。そうかと思うと、柴田勝家を越前に赴任させるときに「2、3の所領は空けておけ。忠節に励むものに恩賞として与える予定地だと宣伝せよ」と伝えているという。ご褒美は美味しいところを残しておき、部下たちの目に見えるようにしておく。信長殿がこんな「小技」を使っていたとは、信長ファンの評者も知らなかった。

 経営指南書とはいえ、楽しく読める本である。なにしろ、「やり手の営業部長が若い女子社員と不倫しまして」てな経営者の悩みに対して、信長殿がお答えくださるのだから。この場合、「信賞必罰というのは、上に厳しく、下に優しくなければいけない」のだそうだ。御意。


○『中央銀行の独立性と金融政策』(速水優/東洋経済新報社)1800円+税

 前日銀総裁の速水氏が、総裁として行った講演のなかから19本を収録したもの。1998年から2003年まで、日本経済が大荒れだった時期の主要な経済テーマを網羅している。今すぐよりも、5年後に資料的価値を生む本かもしれない。

 現時点での速水時代への評価としては、末尾に掲載されている吉野俊彦氏の手による回顧が簡にして要を得ているといえよう


○『世界の紛争地ジョーク集』(早坂隆/中公新書ラクレ)720円+税

 あるイスラエル兵たちの会話。

「アラブ人たちは俺たちが出身国に帰るまで、闘争を止めないと言っているぜ」
「それで世界中が俺たちを支持するわけか」

 ――世界のヤバイ地域ばかりを選んで取材しているジャーナリストが、足で稼いだジョーク集。先進国のジョークとは一味違い、暖かさやほのぼの感がある。でも、最後は「やがて悲しき」世界が見えてくる。




編集者敬白





書評欄へ




溜池通信トップページへ