2003年2月8日掲載分




○2006年から日本の総人口は減少に転じる。これは市場の減少、売上の減少を意味する。これではデフレ経済化も無理はない。今こそ、真に消費者が必要とするものを提供するためのマーケティングが必要になってくる。

 80年代の「第四山の手論」以来、一貫して消費社会の分析をリードしてきた三浦展氏の新著が『団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!』(中経出版)だ。著者はいう。従来のマーケティングは、団塊世代という単一で数の大きな市場に甘やかされてきた。団塊世代向けファミリー市場を念頭に置いて作れば、まず外れなかった。しかしそれは大量消費社会の「1955年体制」のマーケティング。これから必要になるのは、精神面も含めた最適な豊かさを実現する「2005年体制」のマーケティングであると。

たとえばデジタルハイビジョンの広告で、大画面に金髪美人をアップするCMがある。こんな手法はもう時代遅れ。こんなデラックス感(死語!)では若者に訴えることはできない。キムタクが暗い部屋でごそごそやっているような光景の方が、今の若者にはピンと来るんだそうだ。

団塊ジュニア世代は、親たちの世代のように「ワンランク上」の生活を目指したりはしない。彼らは人から見てどうではなく、自分にとって最適な生活を重視する。60万円のロレックスを買うこともあるが、ジーンズやTシャツは破れた古着でもいい。重要なのは「自己最適化」である。

世代論こそはマーケティング戦略の基本。モノを売るにはまず消費者を知らなければ。


○今年も『日本経済の進路2003年版』(みずほ総合研究所/中央公論新社)が出た。昨年までは富士総合研究所が出していたシリーズの新作である。2001年版は楽観ムードで書かれていて、類書とは一線を画していた。それが2002年版では憂色が濃くなり、本年度版では悲観一色となっている。エコノミストの歯ぎしりの音が聞えてくるようで、良くも悪くも、シンクタンクが出す経済本にしては旗幟鮮明である。国語辞書なら新明解、総研の経済予測は本シリーズを推薦しよう。


○田中耕一さんの陰に隠れてしまった感があるが、小柴昌俊東大名誉教授こそは真の癒し系ではないだろうか。あんなおじいさんが親戚にいたら、お正月はとっても楽しいものになるだろう。『やれば、できる。』(小柴昌俊/新潮社)は、この素敵な先生の一代記。田中さんのノーベル賞が青天の霹靂なら、小柴さんのは1988年から延々15年間待ち続けた受賞だったそうだ。読めば必ずあなたも幸せになれる。



(価格は順に1500円+税、1600円+税、1200円+税)


編集者敬白





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