2002年10月12日掲載分




○ 中国へ中国へ、と草木もなびく昨今。その一方で、中国で成功した、あるいは大儲けしたという話はあまり聞こえてこない。この中国ブームに乗るべきか否か。フグは食いたし命は惜しし、といった心情の企業経営者は少なくないだろう。

情報を求めようにも、中国について書かれた本は、絶賛論と破滅論のどちらかに偏っていることが多い。その点、『チャイナ・リスク』(藍正人/NTT出版)は、ミクロからマクロまでの「中国特有の」リスクに目配りをしつつ、慎重な楽観論を提起している。

中国経済は都市における国有部門と民間部門との格差、そして都市と農村の格差という2つの不均衡を抱えている。国有部門の経済は衰退過程にあり、その部分の人員をすみやかに民間部門へとシフトしていかなければならない。さもなくば都市は失業者であふれてしまう。現時点でも実際の失業率は8.2%と算出できるという。

失業による政情不安を回避するためには、現状の7%成長を続けなければならない。これは中国共産党が政権を維持するための最低目標。そのためには、たとえばモータリゼーションによる需要喚起を図らざるを得ない。ゆえに中国は、石油輸入大国への道を歩むだろう。その結果、経常収支は確実に悪化する。中国は果たして、経済、環境、エネルギーの3つを調整できるのか。これは隣国の日本にとっても重要な問題だ。

それでも中国はこの困難を克服するだろう、と本書は結論する。著者はその原動力を、有能な指導者と、人々の潜在能力への深い信頼に求めている。

それでも中国はこの困難を克服するだろう、と本書は結論する。著者はその原動力を、有能な指導者と、人々の潜在能力への深い信頼に求めている。

○分析力の大家が、初めて中国に取り組んだのが『チャイナ・インパクト』(大前研一/講談社)。「メガリージョン」「大中華圏」などの概念を駆使して、中国経済の破竹の勢いを解き明かしている。歯切れのよさは相変わらずだが、11月の共産党大会を前に、「中国共産党がなくなる」「台湾と中華連邦を形成する」などの予言は、いささか無謀だったんじゃないだろうか。中国の変化はあまりにも早い。「中国本」も鮮度が命といえるかもしれない。


○資料として有益な本を紹介しておこう。『中国第十次五カ年計画』(田中修/蒼蒼社)には、中国経済を読み解くヒントが満載されている。統計の信憑性に疑問を投げかけた章などは、文字どおり目から鱗が落ちる。「官が数字を作り、数字が官を作る」ために、水増し、過大報告は当たり前。その年のGDP成長率は、12月末に発表されてしまう。
著者は中国での経験が豊富な財務官僚。観察の重厚さに敬意を表したい。


(価格は順に1700円+税、1600円+税、2800円+税)


編集者敬白





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