不祥事が頻発し、株価も低迷し、行き詰まりが気になる日本経済。あそこが悪い、ここが駄目だという議論は尽きず、日曜朝の討論番組などは毎回似たような話を繰り返している。が、指摘されている点は実は昔からまるで変わっていないんじゃないか、と感じさせてくれるのが『敗戦真相記』(永野護/バジリコ)。
本書は昭和20年9月、当時のインテリの一人である永野氏が、敗戦の直後に行った講演の記録。なぜ日本は戦争に負けたのか。「有史以来の大人物の端境期に」「器用に目先の雑務をごまかしていく式の官僚がたくさん集まって」「世界的大波乱の中に巻き込まれ、押し流されてしまった」という。いつの話かと、思わずドキッとしてしまうではないか。
太平洋戦争の敗因が次々と挙げられていく。自給自足主義という思いあがりが戦線の拡大を招き、戦争には納得できる大義名分がなく、科学力で米英に後れをとり、情報も筒抜けだった。加えて「陸軍が右ネジなら海軍は左ネジ」という無意味な縄張り争い。
大戦末期、政府は木造船計画を打ち出し、港も乗組員も石油もないのに全国各地で船体だけを作った。反対を押し切り、貴重な資材と労力を浪費して、作った船はもちろん無駄に終わる。ところがこの責任をだれもとらず、「官吏は在任中、木造船計画をたてたという功績でもって、どこかに栄転している」という。
唖然とするような、それでいて身に覚えのあるようなエピソードの数々。われわれは同じ失敗を繰り返しつつあるのだろうか。
小泉改革の評判が悪い昨今だが、そもそも肝心なのは道路公団や郵政事業をどうこうすることじゃなくて、民間部門ではないのか。『日本経済 企業からの改革』(野口悠紀雄/日本経済新聞)では、IT革命とアジアの工業化という現実の前に、停滞している日本企業にこそ問題ありとする。打開のカギは、専門性のある小さな組織へ生まれ変わること。合併による企業の巨大化は最悪の選択ということか。
サラリーマン生活20年、43歳、転職11回、といえば、金融コンサルタントの山崎元氏のこと。近著『僕はこうやって11回転職に成功した』(文芸春秋)は、転職のノウハウ本として読まれているようだが、運用という仕事一筋に生きてきた記録は、そのまま波乱続きのわが国金融界の同時代史となっている。それにしても山崎氏のような才能を組織内で使いこなせないことに、日本の金融界の問題点があるような気がする。
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編集者敬白
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